特許第6680862号(P6680862)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6680862
(24)【登録日】2020年3月24日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】外科用アーム
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/30 20160101AFI20200406BHJP
   B25J 17/02 20060101ALI20200406BHJP
【FI】
   A61B34/30
   B25J17/02 A
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-243117(P2018-243117)
(22)【出願日】2018年12月26日
(62)【分割の表示】特願2016-555692(P2016-555692)の分割
【原出願日】2014年11月28日
(65)【公開番号】特開2019-72520(P2019-72520A)
(43)【公開日】2019年5月16日
【審査請求日】2019年1月16日
(31)【優先権主張番号】1404065.3
(32)【優先日】2014年3月7日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】516263638
【氏名又は名称】シーエムアール サージカル リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CMR SURGICAL LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】特許業務法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(72)【発明者】
【氏名】ヘアーズ,ルーク デイビッド ロナルド
(72)【発明者】
【氏名】ランドル,スティーブン ジェイムズ
【審査官】 後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−145634(JP,A)
【文献】 特表2011−530373(JP,A)
【文献】 特表2012−527276(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/055745(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0167061(US,A1)
【文献】 中国実用新案第202146362(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 34/30−34/37
B25J 1/00−21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科用ロボットは、ベースと、前記ベースから延び出しかつ外科用器具のためのアタッチメントをその上に有するリストの遠位端で終端されているアームと、前記アタッチメントに取り付けられた前記外科用器具と、を備え、
前記アームは、その長さに沿って一連の回転ジョイントによってつながれている一方、アームジョイントは、前記ベースから順番に、(i)第1軸を有する第1ジョイントと、(ii)前記第1軸を横切るように配置されている第2軸を有する第2ジョイントと、(iii)前記第2軸を横切るように配置されている第3軸を有する第3ジョイントと、(iv)前記第3軸を横切るように配置されている第4軸を有する第4ジョイントと、を含んで構成されており、
前記リストは、前記アームの前記遠位端が前記外科的器具のための前記アタッチメントと一直線となるような構成において、その長さに沿って第2の一連の回転ジョイントによってつながれている一方、前記リストの前記ジョイントは、前記アタッチメントに向かって順番に、(v)第5軸を有する第5ジョイントと、(vi)前記第5軸を横切るように配置されている第6軸を有する第6ジョイントと、(vii)前記第6軸と交差し前記第5軸と前記第6軸の双方を横切るように配置されている第7軸を有する第7ジョイントと、(viii)前記第5軸に平行な第8軸を有する第8ジョイントと、を含んで構成されており、
前記外科用器具は、実質的に前記第8軸に沿って延びる軸を有している外科用ロボット。
【請求項2】
前記第1ジョイントから前記第8ジョイントが前記アームの関節接合の唯一の手段である請求項1に記載の外科用ロボット。
【請求項3】
前記第1ジョイントと前記ベースの間に第1追加回転ジョイントを備え、前記第1追加回転ジョイントが前記第1軸と直交している第1追加軸を有している請求項1に記載の外科用ロボット。
【請求項4】
前記第1追加回転ジョイントと前記ベースとの間に第2追加回転ジョイントを備え、前記第2追加回転ジョイントが前記第1追加軸と直交している第2追加軸を有している請求項3に記載の外科用ロボット。
【請求項5】
前記第2ジョイントと前記第3ジョイントとの間に第3追加回転ジョイントを備え、前記第3追加回転ジョイントが前記第1軸を横切るように配置されている軸を有している請求項1,3または4に記載の外科用ロボット。
【請求項6】
前記第3追加回転ジョイントが前記第2軸に平行である請求項5に記載の外科用ロボット。
【請求項7】
前記第6ジョイントと前記第7ジョイントが、基部に対しては第1球面ジョイント周りにかつ遠位部に対しては第2球面ジョイント周りに動作可能な中間部材を有するジョイント構造によって構成されており、前記第1球面ジョイントと前記第2球面ジョイントが前記中間部材に対して同一平面内で動作するようにされている請求項1〜6の何れか1項に記載の外科用ロボット。
【請求項8】
前記中間部材内に含まれかつそれぞれ前記第1球面ジョイントと前記第2球面ジョイントによって前記基部と前記遠位部に対して連結されたフォロワーを備え、前記フォロワーが前記中間部材に対して直線的に動作するようにされている請求項7に記載の外科用ロボット。
【請求項9】
前記第軸と前記第軸周りに前記遠位部と前記基部の相対的な回転をもたらすために、前記基部と前記中間部材の間に配置された多数のリニアアクチュエータを備えている請求項7または8に記載の外科用ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外科的処置を行うためのロボットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
外科的処置を実行または支援するための様々なロボットが提案されている。しかしながら、多くのロボットは、広範囲に亘る外科的処置を実行するには適していない。これらに共通する理由は、外科用ロボットが広範囲に亘る外科的状況で良好に動作するためには、ロボットが外科的環境に特有の多くの要求項目とバランスを取らなければならないためである。
【0003】
通常、外科用ロボットは、ロボットアームと、ロボットアームの遠位端に取り付けられた外科用器具を有している。
【0004】
外科用ロボットに対する第1の共通の要求項目は、外科用器具(エンドエフェクタ)の作業を行う先端部が所望の手術部位に到達できるように、位置と方向に関し広い範囲で外科用器具を配置できる十分な機械的柔軟性を有するロボットアームを提供しなければならないことである。この要求項目だけであれば、図1に示すように、6自由度を有する従来の十分に柔軟なロボットアームによって容易に達成することができる。しかしながら、第2の要求項目として、外科用ロボットは、過大あるいは過重になることなく、手術器具のエンドエフェクタを非常に正確に位置されるようにそのアームを配置することができなければならない。かかる要求項目は、他の多くの用途で使用されている大型のロボットとは異なり、(a)外科用ロボットが人間に近接して安全に作業する必要があること(ここでいう人間とは患者だけではなく麻酔医や外科助手のような外科のスタッフも含む)、と、(b)多くの腹腔鏡手術を実行するために多数のエンドエフェクタを一緒に非常に接近させて使用する必要があることから、外科用ロボットアームは、それらが接近することができるように十分に小さいことが望ましいこと、に起因している。図1に示すロボットのもう一つの問題は、いくつかの外科的環境においては、手術台のそばの便利な場所にロボットのベースを設置するための十分なスペースがないということである。
【0005】
多くのロボットは、リスト(すなわち、関節でつながれたアームの末端部)を有しており、かかるリストは、通常アームに沿った軸周りの回転を可能にする2つのジョイント(ロールジョイント)と、それらのジョイントの間に設けられ通常アームを横切るように配置されている軸周りの回転を可能にする1つのジョイント(ピッチジョイント)と、を含んで構成されている。このようなリストは図2に示されており、ロールジョイントが1および3として示されている一方、ピッチジョイントが2として示されている。図2に示す構造におけるリストの場合、1〜3のジョイントの軸はそれぞれ4〜6として表わされている。このリストは、器具7に、基端部が軸4を中心とする半球を占めるような運動の自由を与える。しかし、このリストは、外科用ロボットでの使用には適していない。その理由の1つは、ピッチジョイント2が図2に示す直線上の位置からわずかに小さい角度だけオフセットされた場合に、器具の先端部の比較的小さな横方向の動きを生成するためにジョイント1の大きな回転が必要とされるからである。かかる状態において、ピッチジョイントがほぼ真っ直ぐである場合には、妥当な時間内にスムーズにエンドエフェクタを移動させるためには、ジョイント1は非常に高速な動作が可能でなければなりません。この要求項目はアームの小型軽量化と容易には両立しない。なぜならそれは、アームがガタガタ揺れることなくモータが反応できるように、比較的大きな駆動モータと十分な剛性を持つアームを必要とするからである。
【0006】
すなわち、既存のアームよりも広範囲に亘る外科的処置を実行することができるロボットアームが必要とされる。
【発明の概要】
【0007】
本発明の第一の態様によれば、外科用ロボットは、関節でつながれたアームを備え、前記アームは末端部を有する一方、前記末端部は、外科用器具のためのアタッチメントを有する遠位部と、中間部と、前記末端部が前記アームの残り部分に結合される基部と、前記遠位部と前記中間部の間に設けられ、第1軸周りの前記遠位部と前記中間部の相対的な回転を許容する第1関節と、前記中間部と前記基部の間に設けられ、第2軸周りの前記中間部と前記基部の相対的な回転を許容する第2関節と、を備え、前記中間部が、第3軸および第4軸周りの前記遠位部と前記基部の相対的な回転を可能にする第3関節を含み、第1,第2および第3関節が、第3関節の少なくとも1つの形状において前記第1軸と前記第2軸が平行でかつ前記第3軸と前記第4軸が前記第1軸を横切るように配置されていることを特徴とする。
【0008】
前記構成において、前記第3軸と前記第4軸は、前記第1軸と直交していてもよい。
【0009】
前記構成において、前記第1軸と前記第2軸は同一直線上にあってもよい。
【0010】
前記第3軸と前記第4軸は、前記アームのすべての構成またはいくつかの構成において互いに交差している。
【0011】
前記第3軸と前記第4軸は、前記アームのすべての構成またはいくつかの構成において互いに直交していてもよい。
【0012】
前記第1関節が回転ジョイントであってもよい。また、前記第2関節が回転ジョイントであってもよい。前記第3関節は、球面ジョイントであってもよいし、一組の回転ジョイントであってもよい。また、前記第3関節は、例えば、ユニバーサルジョイント(すなわちカルダンジョイント)や等速ジョイントやボールジョイント、あるいはヒンジ軸が互いに横切るように配置されたダブルヒンジジョイントであってもよい。さらに、前記第3関節がユニバーサルジョイントである場合には、前記ユニバーサルジョイントの軸は交差していてもよいし、オフセットされていてもよい。
【0013】
ある配置において、前記基部に対して外科用器具のためのアタッチメントを関節でつなぐ唯一の手段が、第1,第2と第3関節であってもよい。一方、他の実施形態では、回転ジョイントあるいは並進ジョイントが追加されていてもよい。
【0014】
外科用器具のためのアタッチメントは、前記アームのすべての構成またはいくつかの構成において、前記第1軸上に配置されてもよい。また、前記外科用器具のためのアタッチメントは、前記アームの動きとは独立して関節運動できるように、前記外科用器具内に1つ以上のジョイントに起因する動力を伝動できるようになっていてもよい。さらに、前記外科用器具が、腹腔鏡および/または関節鏡器具であってもよいし、前記外科用ロボットが、腹腔鏡および/または関節鏡ロボットであってもよい。
【0015】
前記外科用ロボットが、アタッチメントに取り付けられた外科用器具を含んで構成されていてもよい。また、前記外科用器具は、前記アームのすべての構成またはいくつかの構成において、実質的に前記第1軸に沿った方向に延び出していてもよい。
【0016】
本発明の第二の態様は、前記第一の態様に記載の外科用ロボットにおいて、前記アームは、ベースと、該ベースと前記アームの前記末端部の前記基部との間に延び出す近位部を備え、前記近位部は、その長さ方向に沿って関節でつながれておりかつ前記基部に対して堅固に連結されている。
【0017】
前記近位部は、第1アーム部と、第1アーム関節によって前記第1アーム部に結合されかつ第1アーム軸周りに前記第1アーム部に対して回転できるようにされている第2アーム部と、第2アーム関節によって前記第2アーム部に結合されかつ第2アーム軸周りに前記第2アーム部に対して回転できるようにされている第3アーム部と、第3アーム関節によって前記第3アーム部に結合されかつ第3アーム軸周りに前記第3アーム部に対して回転できるようにされている第4アーム部と、第4アーム関節によって前記第4アーム部に結合されかつ第4アーム軸周りに前記第4アーム部に対して回転できるようにされている第5アーム部と、を備えていてもよく、前記第2アーム軸が前記第1アーム軸を横切るように配置され、また前記第3アーム軸が前記第2アーム軸を横切るように配置され、さらに前記第4アーム軸が前記第3アーム軸を横切るように配置されており、前記第2アーム部と前記第3アーム部が共に前記第3アーム軸に沿った方向に延び出す細長い手足の如き形状を構成していることを特徴とする。
【0018】
前記第2アーム軸は、前記アームのすべての構成またはいくつかの構成において、前記第1アーム軸と直交している。
【0019】
前記第3アーム軸は、前記アームのすべての構成またはいくつかの構成において、前記第2アーム軸と直交していてもよい。
【0020】
前記第4アーム軸は、前記アームのすべての構成またはいくつかの構成において、前記第3アーム軸と直交していてもよい。
【0021】
前記第1アーム部は、前記ベースに対して堅固に取り付けられていてもよい。
【0022】
前記第1,前記第2,前記第3および前記第4アーム関節はそれぞれ、回転ジョイントであってもよい。また、ある配置において、前記ベースに対して第前記5アーム部を関節でつなぐ唯一の手段が、前記第1,前記第2,前記第3と前記第4アーム関節であってもよい。
【0023】
前記外科用ロボットが、前記第1アーム部と前記ベースとの間に第1追加関節を有していてもよい。前記第1追加関節は、前記第1アーム軸を横切るように配置された第1追加軸周りにおける前記第1アーム部と前記ベースの相対回転を許容してもよい。
【0024】
前記外科用ロボットが、前記第1アーム部と前記ベースとの間に第2追加関節を有していてもよい。前記第2追加関節は、前記第1追加軸を横切るように配置された第2追加軸周りにおける前記第1アーム部と前記ベースの相対回転を許容してもよい。
【0025】
前記第2アーム部が第3追加関節を備え、これにより第2アーム部が前記第3アーム軸を横切るように配置された軸周りに屈曲可能とされていてもよい。
【0026】
前記第2アーム軸が、前記アームのすべての構成またはいくつかの構成において、前記第1アーム軸と直交する方向において、前記第1アーム軸からオフセットされていてもよい。
【0027】
前記第2アーム軸が、前記アームのすべての構成またはいくつかの構成において、前記第3アーム軸と直交する方向において、前記第3アーム軸からオフセットされていてもよい。
【0028】
前記第4アーム軸は、前記アームのすべての構成またはいくつかの構成において、前記第3アーム軸と直交する方向において、前記第3アーム軸からオフセットされていてもよい。
【0029】
前記ベースは、前記第1軸が、少なくとも20°だけ垂直から固定的にオフセットされていてもよい。
【0030】
前記第5アーム部は、前記アームの前記末端部の前記基部に対して堅固に取り付けられていてもよい。
【0031】
前記第5アーム部と前記基部は共に、前記第2軸に沿った方向に延び出す細長い手足の如き形状を提供してもよい。
【0032】
前記第2軸は、前記第4アーム軸を横切るように配置されていてもよい。また、前記第2軸は、前記アームのすべての構成またはいくつかの構成において、前記第4アーム軸と直交していてもよい。
【0033】
前記第4アーム軸は、前記第2軸に直交する方向において、前記第2軸からオフセットされていてもよい。
【0034】
前記アームは、前記アームの前記遠位端が前記アームの前記近位端に対して回転することができるように8つの回転ジョイントを備えていてもよい。かかる8つの回転ジョイントが、前記アームの前記近位端に対する6自由度を前記アームの前記遠位端を提供するようにしてもよい。
【0035】
本発明の第三の態様によれば、外科用ロボットは、ベースと、前記ベースから延び出しかつ外科用器具のためのアタッチメントをその上に有するリストの遠位端で終端されているアームと、を備え、前記アームは、その長さに沿って一連の回転ジョイントによってつながれている一方、前記アームジョイントは、前記ベースから順番に、(i)第1軸を有する第1ジョイントと、(ii)前記第1軸を横切るように配置されている第2軸を有する第2ジョイントと、(iii)前記第2軸を横切るように配置されている第3軸を有する第3ジョイントと、(iv)前記第3軸を横切るように配置されている第4軸を有する第4ジョイントと、を含んで構成されており、前記リストは、その長さに沿って第2の一連の回転ジョイントによってつながれている一方、前記リストの前記ジョイントは、前記アタッチメントに向かって順番に、(v)第5軸を有する第5ジョイントと、(vi)前記第5軸を横切るように配置されている第6軸を有する第6ジョイントと、(vii)前記第5軸と前記第6軸の双方を横切るように配置されている第7軸を有する第7ジョイントと、を含んで構成されていることを特徴とする。
【0036】
前記第5軸と前記第6軸は、前記アームのすべての構成またはいくつかの構成において交差していてもよい。
【0037】
前記第1〜前記第7ジョイントが、前記アームの関節接合の唯一の手段であってもよい。
【0038】
前記リストが、前記第5ジョイントと前記第4ジョイントの間に第8回転ジョイントを含んで構成されていてもよい。前記第8ジョイントの軸が、前記第5軸と前記第6軸の双方を横切るように配置されていてもよい。
【0039】
前記第5ジョイントと前記第6ジョイントの1つの構成において、前記第8軸と前記第7軸が平行であってもよい。
【0040】
前記第5ジョイントと前記第6ジョイントの1つの構成において、前記第8軸と前記第7軸が同一直線上にあってもよい。
【0041】
前記第1〜前記第8ジョイントが、前記アームの関節接合の唯一の手段であってもよい。
【0042】
前記外科用ロボットが、前記第1ジョイントと前記ベースとの間に第1追加回転ジョイントを含んで構成されていてもよい。前記第1追加ジョイントは、前記第1軸に対して直交する第1追加軸を有していてもよい。
【0043】
前記外科用ロボットが、前記第1追加回転ジョイントと前記ベースとの間に第2追加回転ジョイントを含んで構成されていてもよい。前記第2追加ジョイントは、前記第1追加軸に対して直交する第2追加軸を有していてもよい。
【0044】
前記外科用ロボットが、前記第2ジョイントと前記第3ジョイントとの間に第3追加回転ジョイントを含んで構成されていてもよい。前記第3追加ジョイントは、前記第1軸を横切るように配置されている軸を有していてもよい。
【0045】
前記第3追加ジョイントの前記軸が、前記第2軸に対して平行であってもよい。
【0046】
前記第3関節あるいは前記第5および前記第6ジョイントが、前記基部に関して第1球面ジョイント周りにかつ前記遠位部に対しては前記第2球面ジョイント周りに動作可能となる前記中間部材を有するジョイント構造によって構成されていてもよい。前記第1および前記第2球面ジョイントは、前記中間部材に対して同一平面内で動作するようにされている。
【0047】
前記ジョイント構造が、前記中間部材内に含まれかつそれぞれ前記基部と前記遠位部に対して前記第1および前記第2球面ジョイントによって連結されたフォロワーを有して構成されていてもよい。前記フォロワーは、前記中間部材に対して直線的に動作するように構成されている。
【0048】
前記外科用ロボットが、前記第3軸および前記第4軸周りに前記遠位部と前記基部に関連した回転をもたらすように、前記基部と前記中間部材の間に配置された多数のリニアアクチュエータを含んで構成されていてもよい。
【0049】
以下、本発明を、例示としての図面を参照しつつ説明する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】従来技術のロボットアームを示す。
図2】従来技術のロボットリストを示す。
図3】本発明の一実施形態に従うロボットアームに外科用器具が取り付けられた状態を示す。
図4a図3に示すロボットリストの3つの異なる構成の1つを示す。
図4b図3に示すロボットリストの3つの異なる構成の別の1つを示す。
図4c図3に示すロボットリストの3つの異なる構成のさらに別の1つを示す。
図5】外科用器具を示す。
図6】ロボットアームの他の態様を示す。
図7】ロボットリストの他の態様を示す。
【発明を実施するための形態】
【0051】
図3および図4に示す外科用ロボットアームはリストを有しており、かかるリスト内では、アームの遠位部を通常横切るように配置されている軸周りの回転を許容する2つのジョイントが、通常アームの遠位部に対して平行となる軸周りの回転を許容する2つのジョイントの間に置かれている。このような配置が、器具に、基端部がアームの遠位部分を中心とする半球状の領域内の運動を許容するが、エンドエフェクタ(外科用器具)をスムーズに動かすためにジョイントの1つを高速で動かす必要がなく、しかもアームの他のいずれの部分の動きも必要としない。
【0052】
より詳細には、図3には、そこに取り付けられた外科用器具11を有するロボットアーム(通常10で表示されている)が示されている。ロボットアームは、ベース12から延び出すように構成されている。ここでベース12は、手術室の床あるいは固定された台座に備え付けられていてもよいし、可動性のワゴンやカートの一部であってもよいし、ベッドに備え付けられていてもよいし、手術室の天井に備え付けられていてもよい。手術が実行される際には、ベースは、患者のベッドあるいは椅子に対する場所に固定される。ロボットアームは、通常13で表されるリスト部と、通常14で表される本体部を含んで構成されている。かかる本体部は、アームの大部分を構成しており、かつ遠位端にリスト部が取り付けられることにより終端されている。本体部の近位端は、ベースに取り付けられている。リスト部は、アームの遠位部分を構成しかつ本体部の遠位端に取り付けられている。
【0053】
アームの本体部は、4つのジョイント15,16,17,18と3つのシャフト部19,20,21を含んで構成されている。ここで、ジョイントは回転ジョイントである。シャフト部は、シャフト部19,20それぞれにセットされるジョイント15,17を除いて、堅固とされている。各シャフト部は、実質的な長さを有していてもよく、これによりアームは長さを持ち、リストをベースから横方向および/または垂直方向にオフセットさせることができる。ベースが適切な場所に置かれた場合、特にベースが床から持ち上げられている場合には、第2および第3シャフト部に対して第1シャフト部の先端部を切り縮めてもよい。
【0054】
第1シャフト部19は、ベース12に取り付けられている。具体的には第1シャフト部は、好適にはベース12からほぼ直立方向に延び出しているが、垂直あるいは水平に対して所定の勾配で延び出していてもよい。
【0055】
ジョイント15は、第1シャフト部に配置されている。かかるジョイント15は、第1シャフト部の近位部の相対的回転を許容している一方、第1シャフト部は、ベースと、軸22周りのアームの残りの部分に固定されている。好適には、軸22は、ベースからジョイント16に向かって延びるアームを構成する第1シャフト部の主要範囲と平行、または実質的に平行である。したがって、アームを構成する際に第1シャフト部の主要範囲に対する軸22の角度は、好適には30°未満または20°未満もしくは10°未満となっている。軸22は、垂直または実質的に垂直であってもよい。また、軸22は、ベースとジョイント16の間に延び出していてもよい。
【0056】
ジョイント16は、第1シャフト部19の遠位端に配置されている。かかるジョイント16は、第1シャフト部19と第2シャフト部20の相対的回転を許容している一方、かかる第2シャフト部20は、第1シャフト部19および/あるいは第2シャフト部20を横切るように配置されている軸23に対して、ジョイント16の遠位端に取り付けられている。好適には、軸23は、第1シャフト部19と第2シャフト部20のどちらか一方または両方と直交または実質的に直交している。したがって、第1シャフト部19と第2シャフト部20のどちらか一方または両方の主要範囲に対する軸23の角度は、好適には、30°未満または20°未満、もしくは10°未満となっている。より好ましくは、軸23は、軸22および/または以下で述べる軸24と直交もしくは実質的に直交している。
【0057】
ジョイント17は、第2シャフト部に配置されている。かかるジョイント17は、軸24周りにおける第2シャフト部の近位部とアームの残りの部分の相対的回転を許容している。好適には、軸24は、第2シャフト部の主要範囲と平行または実質上平行である。したがって、第2シャフト部の主要範囲に対する軸24の角度は、好適には、30°未満または20°未満、もしくは10°未満となっている。軸24は、(例えば50mm以内で)以下で述べる軸23および軸25と交差もしくは実質的に公差していてもよい。図3に示すように、ジョイント17は、第2シャフト部の近位端よりも遠位端の近くに配置されている。これによりジョイント17で回転させる必要がある質量を減らすことができるが、ジョイント17は、第2シャフト部上の任意のポイントに配置されていてもよい。好適には、第2シャフト部は、第1シャフト部よりも長くなっている。
【0058】
ジョイント18は、第2シャフト部20の遠位端に配置されている。かかるジョイント18は、第2シャフト部20とジョイント18の遠位端に設けられた第3シャフト部21の軸25周りの相対的回転を許容しており、軸25は第2シャフト部20および/あるいは第3シャフト部21を横切るように配置されている。好適には、軸25は、第2シャフト部20と第3シャフト部21のどちらか一方あるいは両方と直交または実質的に直交している。したがって、第2シャフト部20と第3シャフト部21のどちらか一方あるいは両方の主要範囲に対する軸25の角度は、好適には30°未満または20°未満、もしくは10°未満となっている。好適には、軸25は、軸24および/または以下で述べる軸29と直交もしくは実質的に直交している。
【0059】
要約すると、一例としてアームの本体部は、ベースから本体部の遠位端の順に、以下のものから構成することができる。
1.実質的または非実質的な長さを有し、かつアーム(「ロールジョイント」)を形成する第1シャフト部の長さ(もしあれば)にほぼ沿うような軸周りの回転を許容するジョイント15を含む第1シャフト部19。
2.第1シャフト部および/または前述のジョイント(ジョイント15)の軸および/または次のジョイント(ジョイント17)(「ピッチジョイント」)の軸を横切るような回転を許容するジョイント16。
3.実質的な長さを有し、かつ第2シャフト部にほぼ沿った軸周りの回転および/または前述のジョイント(ジョイント16)の軸に対する回転および/または次のジョイント(ジョイント18)(「ロールジョイント」)に対する回転を許容するジョイント17を含む第2シャフト部20。
4.第2シャフト部および/または前述のジョイント(ジョイント17)および/または次のジョイント(ジョイント28)(「ピッチジョイント」)を横切るような回転を許容するジョイント18。
5.そして、実質的な長さを有する第3シャフト部21。
【0060】
リスト部13は、第3シャフト部の遠位端に取り付けられている。リスト部13の詳細は、図4に示されている。図4において、図4aは直線形状とされたリストを示す一方、図4bはジョイント26における動きにより折り曲げ形状とされたリストを示し、また図4cはジョイント25における動きにより折り曲げ形状とされたリストを示している。なお、図3および図4における同様の部位については、同じ符号で示されている。直線形状は、リストのトランスバースジョイント26,27の動きの中点を表している。
【0061】
第3シャフト部の遠位部が、図4において21aで示されている。リストは、ジョイント28によって第3シャフト部の遠位端に取り付けられている。ジョイント28は回転ジョイントであって、リストが軸29周りにアームの遠位端に対して回転することを許容している。好適には、軸29は、第3シャフト部の主要範囲と平行または実質的に平行である。したがって、第3シャフト部の主要範囲に対する軸29の角度は、好適には、30°未満または20°未満、もしくは10°未満となっている。軸29は、(例えば50mm以内で)軸25と交差または実質的に公差していてもよい。好適には、軸29は、軸25を横切るように配置されている。
【0062】
リストの近位端は、リストベースブロック30によって構成されている。かかるリストベースブロック30は、ジョイント28に取り付けられている。リストベースブロック30は、第3シャフト部21の遠位端に接している。リストベースブロック30は堅固で、ベース33を含んで構成されており、かかるベース33によってジョイント28に取り付けられている。リストベースブロック30はまた、隙間を隔てて離隔配置された一対のアームを含んで構成されており、かかる一対のアームは、第3シャフト部21から離隔する方向に向かってリストベースブロック30のベース33から延び出して形成されている。中間部材34は、軸35周りでアーム31,32に対して回転できるように、アーム31,32間に回転可能な状態で懸架されている。これが、リストの回転ジョイント27を構成している。好適には、中間部材34は、十字架形状を形成できるように堅固とされている。リストヘッドブロック36は、中間部材34に取り付けられている。リストヘッドブロック36は堅固とされており、以下で述べるジョイント38に取り付けるために用いられるヘッド37と、中間部材34に向かってヘッド37から延び出し隙間を隔てて離隔配置された一対のアーム39,40と、を含んで構成されている。アーム39,40は、中間部材34を取り囲むように設けられていると共に、リストヘッドブロック36が軸41周りに中間部材34に対して回転できるように枢着されている。このことが、リストの回転ジョイント26を提供するのである。軸35と41は、実質的な角度で互いにオフセットされている。好適には、軸35,41は、互いに横切るように配置されており、さらに好適には、互いに直交している。また、好適には、軸35と41は、(例えば50mm以内で)交差しているまたは実質的に交差していてもよい。しかし、中間部材34は、それらの軸が長手方向にオフセットされるよういくらかの長さを有していてもよい。また、好適には、軸35と29は、互いに横切るように配置されていてもよく、さらに好適には、互いに直交していてもよい。また、好適には、軸35と29は、(例えば50mm以内で)交差しているまたは実質的に交差していてもよい。さらに、好適には、軸35と41は、一点で軸41に交差している、または(例えばすべて半径50mm内で交差することにより)3つの軸が実質的に一点で交差していてもよい。
【0063】
このようにして、リストベースブロック、中間部材とリストヘッドブロックが全体としてユニバーサルジョイントを形成している。かかるユニバーサルジョイントは、リストヘッドブロックが半球内のあらゆる方向に向くことを許容しており、半球の基端部がジョイント28の軸29と直交している。リストベースブロックとリストヘッドブロック間の結合は、例えばボールジョイントや等速ジョイントのような異なるタイプの機械的結合によって構成されていてもよい。そのような動作がジョイント28と38によってなされていることからリストベースブロックとリストヘッドブロックの相対的な軸上の回転が許容されていることは必要ではないが、好ましくは、結合は通常、球面ジョイントとして作動することが望ましい。あるいは、ジョイント26と27と28が、共同で球面ジョイントを形成していると見なしてもよい。かかる球面ジョイントは、ボールジョイントとして提供されていてもよい。図3のリストが運動学的冗長性を有していることは、高く評価される。器具11は、単にジョイント28と27の動きによって軸29周りの球面内の広範囲の位置に配置されていてもよい。しかし、ジョイント26の追加が、一対のジョイント28,27のみに起因する運動学的特異点を除去し多数のロボットアームがより接近して作業できるように患者の内部でエンドエフェクタを動かす機構を簡素化することにより、外科用途におけるロボットの運転を大いに改善することが見出されている。このことは、以下に詳述する。
【0064】
端末装置42は、回転ジョイント38によってリストヘッドブロックのヘッド37に取り付けられている。ジョイント38は、端末装置が軸43周りでヘッドブロックに対して回転することを許容している。好適には、軸43と軸41は互いに横切るように配置されており、より好適には、軸43と軸41は互いに直交している。さらに、好適には、軸35と29は、(例えば50mm以内で)交差しているまたは実質的に交差していてもよい。また、好適には、軸35と29は、軸41に一点で交差している、または(例えばすべて半径50mm内で交差することにより)3つの軸が実質的に一点で交差していてもよい。
【0065】
端末装置は、外科用器具11が取り付けられるソケットあるいはクリップのようなコネクタを有している。外科用器具は、図5に詳細が示されている。器具は、器具ベース50内に、延長器具シャフト51と、オプションで1つ以上のジョイント52と、エンドエフェクタ53を含んで構成されている。エンドエフェクタが、例えば、把持部や一対の剪断機やカメラやレーザやナイフであってもよい。器具ベース50と、端末装置42のコネクタは、器具ベースが、器具ベースから離れる方向に延び出すシャフトを有するコネクタに対して離脱可能に取り付けられるように、協調的に設計されている。好適には、シャフトは、ジョイント26の軸を横切るような方向、および/あるいは平行あるいは実質的に平行な方向、および/あるいはジョイント38の軸43と同軸あるいは実質的に同軸の方向、で器具ベースから離れるように延び出している。このことは、エンドエフェクタがリストのジョイントのおかげで十分な範囲の動作が可能となっており、また好適にはリストのジョイントがエンドエフェクタを配置することを可能としている。例えば、軸43に沿って延びる器具シャフトの延長部を含めて、ジョイント38は、シャフトが手術部位に到達するように挿入された際に通過する患者の組織の破壊の原因となる横方向の部材を有する器具シャフト51の一部あるいは全体を動かすことなく、単にエンドエフェクタの向きを正しい位置に合わせることを可能としている。上述のように器具シャフトの延長部がリストから離れる方向に延び出すという事実は、リストが人間の外科医の手首に類似したある程度の関節を有していることを意味している。この結果は、人々によって実行された多くの外科技術は、容易にこのロボットアームの動きに移すことができることを示している。このことは、既知の外科的手法のロボットに特化したバージョンを考案する必要性を減らす。好適には、シャフトは、実質的に線形で堅固なロッドによって構成されている。
【0066】
上述のように、リストベースブロック30の長さは、ロボットアームの最終シャフト部21の長さよりも短い。このことは利点である、というのは、ジョイント28において回転する必要のある質量を減らすことができるからである。しかしながら、ジョイント28が、ジョイント26と27よりもジョイント26の近くに配置されていてもよい。
【0067】
アームの各ジョイントは、電気モータあるいは油圧ピストンのような1つ以上の駆動装置によって他のジョイントとは独立して動かすことができる。駆動装置は、それぞれのジョイントに対する特定の位置に配置されていてもよいし、あるいはロボットのベースに近接するように配置されてケーブルやリンケージのような継手によってジョイントに連結されていてもよい。駆動装置は、ロボットのユーザによってコントロール可能である。ユーザは、ジョイスティックのような1つ以上の人工の入力装置や、ユーザによって動かされるアームのレプリカ上を動くセンサから得られる入力信号によって、リアルタイムで駆動装置をコントロールしてもよい。あるいは、駆動装置は、外科的処置を行うために前もってプログラムされたコンピュータによって自動的にコントロールしてもよい。コンピュータが、非破壊記憶装置に収容されたコンピュータ読み取り可能なプログラムを読み取り、ロボットアームが1つ以上の外科的処置を実行できるようにかかるプログラムをコンピュータによって実行できるようにしてもよい。
【0068】
図6に、外科的アームの他のデザインを示す。図6に示すアームは、ベース112、4つのジョイント115,116,117,118、3つのシャフト部119,120,121とリストユニット113を含んで構成されている。ジョイントは、回転ジョイントである。シャフト部は、ジョイント115と117を除いて、堅固とされている。外科用器具111は、リストユニットの末端部に取り付けられている。
【0069】
第1シャフト部119は、ベース112から延び出し、ジョイント115を含んで構成されている。第1シャフト部119は、ジョイント116によって第2シャフト部120に取り付けられている。第2シャフト部120は、ジョイント117を含んで構成されている。第2シャフト部は、ジョイント118によって第3シャフト部121に取り付けられている。第3シャフト部121は、回転ジョイント128で終端されており、それによりリストユニット113に取り付けられている。リストユニットは、協調してユニバーサルジョイントと終端の回転ジョイント138を構成する、回転ジョイント126,127の中間のペアを含んで構成されている。
【0070】
図3のロボットアームにおける類似のジョイントと同様に、次に述べるジョイントのペアのそれぞれの軸は、互いに横切るように独立して配置されていてもよく、実質的に互いに直交するように配置されていてもよい(例えば、直角に対して30°,20°,あるいは10°以内で)し、あるいは互いに(115と116,116と117,117と118,118と128,128と126,128と127,126と138,127と138,126と127)直交するように配置されていてもよい。図3のロボットアームにおける類似のジョイントと同様に、次に述べるジョイントの軸は、独立して一直線に(例えば30°,20°,あるいは10°以内で)並べられていてもよいし、あるいはそれら(シャフト部120を有するジョイント117とシャフト部121を有するジョイント128)がセットされるシャフトの延長部の主要軸と平行であってもよい。図3のロボットアームにおける類似のジョイントと同様に、アームの1つ以上の構成においてジョイント128と138の軸が一直線に並べられるように、リストが構成されていてもよい。好適には、一直線に並べられるのを、リストがサイド側の動きの中間の段階にある時に起こるようにしてもよい。図3のロボットアームにおける類似のジョイントと同様に、好適には、器具111の延長部の軸は、(例えば30°,20°,あるいは10°以内で)一直線に並べられていてもよいし、あるいはジョイント138の軸と平行であってもよい。また、器具の延長部の軸は、ジョイント138の軸と完全に一致していてもよい。
【0071】
図6におけるロボットアームは図3におけるロボットアームとは異なっており、アーム部119,120,121が、ジョイント116の軸がジョイント115と117の軸から実質的に横方向のオフセットを持つように、かつジョイント118の軸がジョイント116と118の軸から実質的に横方向のオフセットを持つように構成されている。それらのオフセットのおのおのは独立して、例えば50mmや80mmや100mmを超える値を有していてもよい。このような配置は有利である、それは、器具の先端部近傍の動作質量を増加させることなくアームの移動性を高められるからである。
【0072】
図6のロボットアームにおいて、ベースに最も近い回転ジョイント(ジョイント115)の軸は、例えば少なくとも30°だけ、垂直から実質的に一定量オフセットされている。このことは、ベースを適当な方位に固定することによってなされていてもよい。図6に示されているように、ジョイント115の軸がエンドエフェクタからほぼ離れる方向に向くようにアームがセットアップされている場合には、このことは、運転中のジョイント115と117の間に運動学上の特異点が表れる機会を減らす。
【0073】
したがって、図6のアームは、手術用ロボットアームに有利なかなりの数の一般的な特性を有している。
−アームは、長さ方向に沿って配置された一連の回転ジョイントを含んでおり、かかる一連の回転ジョイントは、順番にアームに沿って配置された一連の4つのジョイントを含んでいる。一連の4つのジョイントは、(a)シーケンスにおける次のジョイントにほぼ向かって延び出す軸を有するもの(「ロールジョイント」)と、(b)シーケンスにおける次のジョイントの軸をほぼ横切るように延び出す軸を有するもの(「ピッチジョイント」)の間で、交互に配置されている。したがって、図6のアームは、ロールジョイント115と117およびピッチジョイント116と118を含んで構成されている。この一連のジョイントが、重いあるいは大きいあるいは高価な多数のジョイントを含む必要のあるアームを用いることなしに高い移動度を有するアームを提供している。上述のように、交互に配置されたジョイントが、互いに横方向にオフセットするのに有効である。
−アームは、ロールジョイント128で始まり2つのピッチジョイント126,127を有するリスト部を含んで構成されている。リストのピッチジョイントは、それらの軸がアームの全ての構成において交差するように同一場所に配置されていてもよい。この一連のジョイントが、アームの端部周りで高い移動性を有するエンドエフェクタを提供し得る。
−外科用器具の延長軸と軸が完全に一致した回転ジョイント(138)で終端されたリスト部。最も好適には、器具シャフト51は直線状に延びて、ジョイントの軸はシャフトと一直線とされている。かかる配置は、エンドエフェクタが、患者の創傷チャンネルを過度に崩壊することなく単一のジョイントにおける動きを介して所望の向きに容易に回転することを可能にしている。このことはまた、器具自体に同等の機能を果たすジョイントを有する必要性を減らすことができる。
−実質的に垂直からオフセットされており、より好適には患者の手術部位から離れる方向に向けられている近位の回転ジョイント(115)。このことは、ジョイントがアームのもう1つのジョイントと運動学上の特異点を持つ機会を減らしている。
【0074】
図7は、図3および図6に記載のように、アームにおいてリストジョイントとして使われているジョイントの他のデザインを示している。
【0075】
図7において、アームのシャフト部は、200で示されている。これは、例えば、図3におけるシャフト部21や、図3におけるシャフト部21に対して回転ジョイントによって接続されたシャフト部や、あるいは図6におけるシャフト部113であってもよい。多数のリニアアクチュエータが、シャフト部200の中心部の縦軸周りに配置されている。リニアアクチュエータは、中心軸廻りに周方向にオフセットされた位置に配置されている。それらは、中心軸廻りに規則正しく一定間隔を隔てて配置されていてもよい。2つ、3つ、4つ、あるいはそれ以上のアクチュエータがあってもよい。図7の例では、中心軸廻りに周方向にオフセットされた位置に配置された4つのリニアアクチュエータがある。なお、図7では、2つ(201,202)のみ図示されており、他は明確になるように図示が省略されている。各リニアアクチュエータは、シャフト部200の遠位端に対してそこから突出するように球面ジョイントによって連結されている。リニアアクチュエータの代わりに、2つのエンドポイントを一緒にあるいは別々に描くための力を加え得る他の機構が用いられていてもよい。適当な機構の例として、ピストン/シリンダーの取り合わせや、リニアモータや、コンパスのような相互に回転可能なアームが含まれる。各リニアアクチュエータの1つのエンドポイントは、球面ジョイントに取り付けられており、かかる球面ジョイントによって各リニアアクチュエータはシャフト部200に取り付けられている。各リニアアクチュエータのもう1つのエンドポイントは、別の球面ジョイントに取り付けられており、かかる別の球面ジョイントによってリニアアクチュエータは中間部材212に取り付けられている。
【0076】
ガイドロッド203は、アーム部200に対して堅固に取り付けられており、かつアーム部200の外へ延び出している。ガイドロッドの遠位端において、ガイドロッドはフォロワーエレメント208と共に球面ジョイント205に終端されている。フォロワー208は、中間部材212内に含まれている。フォロワーは、中間部材212に対する単一の平面内のみに移されている。このことは、中間部材212に堅固に取り付けられかつ中間部材212内部の空洞の径方向内方に延びて環状の壁207上にぴったりとスライド嵌合する円周状の溝部206を有するフォロワー208によって達成されていてもよい。
【0077】
ガイドロッドのシャフトに沿って、中間部材自体と共にスライド球面ジョイント204がある。スライド球面ジョイント204は、ガイドロッドのシャフトがスライドできるようなボールによって構成されている。ボールの外面が、中間部材212と共に球面ジョイントを構成している。ガイドロッドの遠位端とフォロワーの間に配置された中間部材212と球面ジョイント205については、フォロワー208の平面的に制約された動きと併せて、このジョイント204が決まった場所に中間部材を保持している一方、中間部材は、ジョイント204がジョイント205周りにシャフト部200に対して回転することを可能としている。かかる回転動作は、例えばリニアアクチュエータ201,202によって行われていてもよい。
【0078】
フォロアの遠位側には、第2ガイドロッドが球面ジョイント213を介してフォロワーに係合されている。ジョイント204に類似のスライド球面ジョイント213は、中間部材212を第2ガイドロッドに対して相対的に回転可能とすると共に、その軸に沿って第2ガイドロッドに対して直線的な動作を可能としている。
【0079】
端末アーム片210は、堅固に第2ガイドロッドに対して取り付けられている。
【0080】
図7に示す機構の働きは、端末アーム片が、ジョイント205,209の間の領域周りの2つの直交軸周りでシャフト部200に関してほぼ回転運動することを可能にしている。かかる動きは、リニアアクチュエータによって駆動されていてもよい。これらは、上述のモータのように、制御装置の制御下で駆動されていてもよい。あるいは、リニアアクチュエータは、アームのベースから延びる圧力ラインを介して、油圧または空気圧によって駆動されていてもよい。中間部材212によって構成されるジョイントの性質は、フォロワー208が、端末アーム片のかなりの角度偏差を容易に実現することができるように、端末アーム片の角変位を誇張する傾向があることを意味している。
【0081】
端末アーム片は、単一部材であってもよい。あるいは、図7におけるジョイント138と同種の回転ジョイント211周りに互いに対して回転可能な2つの個別部分210aと210bによって構成されていてもよい。214で部分的に示した外科用器具は、端末アーム片に取り付けられていてもよい。
【0082】
上述したように、図3および図6に示すアームにおける近位の一連のジョイントは、アームの遠位端に向かって順番に、上記で定義された用語を用いて、ロールジョイント、ピッチジョイント、ロールおよびピッチジョイントとなる。この一連のジョイントはRPRPと表してもよい、ここで「R」はロールジョイントを表し、「P」はピッチジョイントを表し、そしてジョイントはアームの近位端から遠位端に向かって連続して記載されている。同じ用語法を用いると、外科用アームのための他の使いやすいジョイント配列として以下のものが含まれる。
1.PRPRP:すなわち、図3および図6に示すロボットアームにおけるジョイント配列であるが、RPRPジョイント配列とベースの間に追加のピッチジョイントを含むものである。
2. RPRPR:すなわち、図3および図6に示すロボットアームにおけるジョイント配列であるが、RPRPジョイント配列とリストの間に追加のロールジョイントを含むものである。
3. RPRPRP:すなわち、連続する一連の3組のRPであって、図3および図6に示すロボットアームにおけるジョイント配列に類似しているが、RPRPジョイント配列とベースの間に追加のピッチジョイントを含むと共に、RPRPジョイント配列とリストの間に追加のロールジョイントを含むものである。
アームに対してさらにジョイントを加えてもよい。これらのアームはそれぞれ、図3または図7に示すタイプのリストを有していてもよい。ジョイント28,38の1つが、リストから省かれていてもよい。
【0083】
上記に示したように、外科用器具は、その先端付近に一つ以上のジョイント52を有していてもよい。ロボットアームが本明細書に記載のタイプのものである場合には、好適には、外科用器具は、2つのジョイントだけを含んでいてもよい。また好適には、それらは、その器具シャフト51を横切るように延びる軸を有する回転ジョイントであってもよい。これらのジョイントの軸は、ユニバーサルジョイントを形成するように交差していてもよいし、あるいは器具シャフトの延長部の方向に対してオフセットされていてもよい。器具のジョイントは、アーム内の駆動手段や、器具内のケーブルあるいは結合を介してジョイントに伝達された動き、によって駆動されていてもよい。リストユニットの終端部におけるコネクタや器具ベース50が、そのような動きを器具に伝え得るように構成されていてもよい。好適には、器具上のジョイントは、器具シャフトに対して一直線とされた軸を有する回転ジョイントを含んでいなくてもよい。そのようなジョイントによって提供される動きは、好適には、ロボットアームのリスト上のジョイント38によって供給され得る。多くの外科的処置において、そのような動きは必要ではない。器具はしばしば使い捨てを意図して形成されている:それゆえ、器具からジョイントのような部分を省くことによってコストが低減されている。ジョイントのような部分を省くことはまた、器具とアーム間に必要とされる機械的な相互作用を簡素化する、というのはジョイント用の動きは器具に伝達する必要がないからである。
【0084】
手術に使用する際には、ロボットアームは、患者から分離または密閉されるようにアームを保持するために、滅菌ドレープによってカバーされていてもよい。これにより、手術の前にアームを滅菌する必要性を回避することができる。対照的に、器具は、ドレープの患者の側に露出されることになる。すなわち、器具がドレープ内の密閉空間を貫いて延び出す状態となるか、またはドレープがリストユニットの終端部分におけるコネクタと器具ベース50の間に挟まれる状態となるか、である。一旦器具がアームに取り付けられたら、手術を実行できるようになっている。手術を行う際には、アームは最初に、器具シャフト51の軸が、患者の外面上の所望の開始位置(例えば、患者の皮膚の切開位置)と所望の手術部位の間の軸と一直線になるように操作され得る。次に、ロボットアームは、エンドエフェクタが手術部位に到達するまで器具シャフトの軸に平行な方向に向かって切開部を通して器具を挿入するために操作され得る。他のツールは、他のロボットアームによって、同様の方法で挿入することができる。一旦必要なツールが手術部位に置かれたら手術を行うことができ、手術後にはツールが患者の体から引き抜かれて、切開部(S)が例えば縫合によって閉じることができる。器具が患者内に配置されている場合で、器具シャフトの軸を横切るような方向にエンドエフェクタを移動させることが望まれる際には、このような運動は、好ましくは、器具が通過する切開部における動作中心周りに器具シャフトを回転させることによって行われることが望ましい。このことは、切開部が大きくなることを回避している。
【0085】
上述したようなタイプのロボットアームは、外科的処置を実行するための広範囲に亘る利点を提供することができる。まず第1に、全体としての器具、特に広範囲に亘る位置と方向を有する器具のエンドエフェクタを配置するために必要な様々な動きを今まで通り提供する間、過剰な数のジョイントを含んでいないことから、ロボットアームは比較的スリムかつ軽量化が可能となっている。このことが、例えば看護師がアームの近くで作業している時や手術室が患者を受け入れるためにセットアップされている時に、アームの望ましくない動きによって人間が負傷する機会を減らすことを可能としている。このことはまた、特に一般的に多数の器具が小さな開口部を通して手術部位にアクセスしなければならないENT(耳や鼻やのど)のような部位において、手術部位に対する多数のそのようなアームのアクセスし易さの改善を可能にしている。同様の考察は、例えば、多数の器具が臍付近の領域から患者に入れられて、患者の腹部内の胸郭の内部で拡張することが一般的である腹部の処置でも生じる。そして、骨盤エリアにおける処置の場合には、器具が手術部位に接近することが、骨盤の骨やその他の内部構成を避ける必要性から制限されている。同様に、改善された動作範囲を有するアームは、手術スタッフがロボットのベースが配置された場所の上方でより自由にふるまえることから、手術部位付近に多くのロボットのベースを容易に配置できる。このことは、ロボットを収容するために、既存の手術室のワークフローを再設計する必要性を回避するのに役立つことができる。第2に、アームは、ロボットのベースの患者に対する位置決めを手術スタッフが柔軟に考えられるように、十分に冗長な動作を提供する。このことは、多数のロボットが小さな手術部位で作業する必要がある場合や、手術室に追加の設備がある場合や、あるいは患者が異常な寸法を有している場合に重要である。第3に、リスト部が、図4のように、一対の交差軸ピッチジョイントの近位に位置するロールジョイントを含む場合であって、特にさらにアームと器具が、器具シャフトがそれらピッチジョイントから離れる方向に真っ直ぐに延びるように構成されている場合に、従来の外科的処置をロボットにできるように直すことが容易にできるように、リストの動きは人間の動きに近づく。リストと器具との間のこの関係はまた、主たるアーム構成部材(例えば、21および121)の終端部が、器具シャフトの動きの自由度を損なうことなく、器具シャフトに対して角度をもって曲げられ得ることから、複数のアームが手術部位の近傍で互いに密接に接近することを可能にするのに役立っている。このことは、1つの理由として、患者に挿入される器具シャフトの患者の外面上の開始位置を中心とした回転によってエンドエフェクタが患者内で動く必要がある場合、かかる回転は、本発明のアームの好適な実施形態において、空間的にオフセットされた軸を有する多数のジョイントの間の運動学的特異点あるいは複雑な相互作用によって阻害されることなく、もっぱらリストによって提供され得る。一方、アームの残りの部分は、単にリストを所望の位置に移すだけである。ロボットがコンピュータの制御下にある場合には、コンピュータのプログラムは、ロボットが、器具のシャフトに沿ったポイント周りのエンドエフェクタの回転によってエンドエフェクタの位置を移すように定めてもよい。このポイントは、患者の切開部の遠位側と完全に一致していてもよい。プログラムは、リスト用の駆動ドライバーに対してジョイント26および/あるいはジョイント27がかかるポイント周りに器具を回転させるように命じることによって、エンドエフェクタの移動を成し遂げるようにされていてもよいし、アームの残りの部分用の駆動ドライバーに対してリストを移動させるように同時に命じてもよい。
【0086】
出願人はこれによって、ここに記載の分離した各個別の特徴および2つ以上のそのような特徴の任意の組み合わせを開示しており、そのような特徴または特徴の組み合わせが当業者の共通の一般的な知識に照らして全体として本明細書に基づいて実施されることが可能な程度に開示している。なお、そのような特徴または特徴の組合せが本明細書に開示される任意の問題を解決するかどうかは関係がなく、またかかる具体的記載が特許請求の範囲を限定するものでもない。出願人は、本発明の態様は、このような個々の特徴または特徴の組み合わせから成ってもよいことを示している。以上の説明に鑑みて、種々の改変が本発明の範囲内でなされ得ることは当業者にとって明らかであろう。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図4c
図5
図6
図7