(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6681003
(24)【登録日】2020年3月25日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】給湯器の取付け構造およびこれに用いられる給湯器用のブラケット
(51)【国際特許分類】
F24H 9/06 20060101AFI20200406BHJP
【FI】
F24H9/06 301A
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-104151(P2016-104151)
(22)【出願日】2016年5月25日
(65)【公開番号】特開2017-211135(P2017-211135A)
(43)【公開日】2017年11月30日
【審査請求日】2019年4月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100120514
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 雅人
(72)【発明者】
【氏名】菱谷 好宣
(72)【発明者】
【氏名】奥田 守
(72)【発明者】
【氏名】滝村 智
【審査官】
吉澤 伸幸
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−285376(JP,A)
【文献】
実開昭60−077963(JP,U)
【文献】
実開昭62−005296(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3049650(JP,U)
【文献】
英国特許出願公開第02458501(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 9/02 − 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給湯器と、
この給湯器の取付け対象に取付けられる枠状部を有し、かつこの枠状部の内側に前記給湯器を配置させた状態で前記給湯器を前記枠状部に固定可能とされた給湯器用のブラケットと、
を備えている、給湯器の取付け構造であって、
前記ブラケットの前記枠状部の上板部は、前部よりも後側の領域が前記前部の下面よりも上方に位置するように屈曲または湾曲した形態とされていることにより、前記上板部の下側には、前記上板部の前部の下面よりも高い位置に存在する空間部が形成されており、
前記給湯器の上部は、前記空間部に進入していることを特徴とする、給湯器の取付け構造。
【請求項2】
請求項1に記載の給湯器の取付け構造であって、
前記給湯器の取付け対象は、集合住宅のパイプシャフト内に設置された固定フレームであり、
前記固定フレームの前面側には、前記給湯器の前面部を覆うことが可能な扉が設置され、かつこの扉には、前記給湯器の前面部に設けられている排気筒を前記扉の前方側に露出させるための開口部が設けられている、給湯器の取付け構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載の給湯器の取付け構造であって、
前記ブラケットの前記上板部の前部は、上下高さ方向に起立し、かつ前後方向に隙間を隔てて互いに対向する前側および後側の一対の起立壁部と、これら一対の起立壁部の下部どうしを繋ぐ連接部とを有する断面略コ字状または略U字状であり、
前記隙間は、前記給湯器の取付け対象に設けられた受け片部が進入するスペースとされ、かつ前記前側の起立壁部は、前記受け片部の前側に配置された状態で前記受け片部への固定が可能とされている、給湯器の取付け構造。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の給湯器の取付け構造であって、
前記ブラケットの前記上板部には、この上板部の前部よりも後側の領域から下向きに突出した取付け片が設けられており、
前記給湯器は、この給湯器の上面部から上向きに突出する突出片を有し、かつこの突出片は、前記取付け片に重ねられて固定可能とされ、
この固定の位置は、前記上板部の前部の下面よりも高い位置とされている、給湯器の取付け構造。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の給湯器の取付け構造であって、
前記ブラケットの前記上板部の前部は、前記上板部の他の部分とは別体で形成され、かつ前記他の部分から取り外し可能とされている、給湯器の取付け構造。
【請求項6】
給湯器の取付け対象に取付けられる枠状部を有し、
この枠状部の内側に前記給湯器を配した状態で前記給湯器を前記枠状部に支持させることが可能とされている、給湯器用のブラケットであって、
前記枠状部の上板部は、前部よりも後側の領域が前記前部の下面よりも上方に位置するように屈曲または湾曲した形態とされていることにより、前記上板部の下側には、前記上板部の前部の下面よりも高い位置に存在し、かつ前記給湯器の上部を進入可能とする空間部が形成されていることを特徴とする、給湯器用のブラケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば集合住宅のパイプシャフト(パイプスペースとも称する)内に給湯器を設置するような場合に好適な給湯器の取付け構造、およびこれに用いられる給湯器用のブラケットに関する。
【背景技術】
【0002】
集合住宅のパイプシャフト内に給湯器を設置する場合、
図5(a)に示すような手段がよく採用されている(たとえば、特許文献1)。
同図においては、パイプシャフト内に設置されている固定フレーム1に、給湯器用のブラケットBaが取付けられている。このブラケットBaは、給湯器3Aの上下左右を囲む枠状部4を有しており、固定フレーム1への取付けは、たとえば固定フレーム1の上部から下向きに突出した受け片部12に、枠状部4の上板部4aの前部から上向きに突出した取付け片59をネジ体90を用いてネジ止めすることにより図られている。給湯器3Aは、枠状部4の内側に配された状態で複数のネジ体91を用いてブラケットBaに取付けられている。固定フレーム1には、給湯器3Aの前面部を覆うことが可能な回転式の扉2が取付けられおり、この扉2には、給湯器3Aの排気筒30を外部に露出させるための開口部21が形成されている。
このような構成によれば、給湯器3Aの上下左右の周囲がブラケットBaの枠状部4によって囲まれた状態となるため、ブラケットBaの実質的な占有スペースを小さくしつつ、ブラケットBaによって給湯器3Aを安定的に固定させることが可能である。また、給湯器3Aの正面などからの見栄えもよいものとすることが可能である。
【0003】
しかしながら、前記従来技術においては、次に述べるように、改善すべき余地があった。
【0004】
すなわち、給湯器3Aについては、故障やその他の理由により、
図5(b)に示すように、新たな給湯器3Bに取り替える場合がある。ここで、新たな給湯器3Bとしては、先の給湯器3Aとは同一サイズのものではなく、先の給湯器3Aよりも大型のものとされる場合がある。この場合、新たな給湯器3Bの上面部から排気筒30aまでの寸法L1が、先の給湯器3Aの上面部から排気筒30までの寸法L2よりも大きい場合が多い。したがって、ただ単にブラケットBaとして、給湯器3Bに対応したサイズのものを使用しただけでは、給湯器3Bの排気筒30aの高さ(排気筒30aの基部の高さ)が、扉2の開口部21よりも低い位置となり、そのままでは排気筒30aを開口部21から外部に露出させることが困難となる。
これを解消する手段として、前後両端に高低差を有するように屈曲した排気アダプタ30bを用いる手段があるが、このような手段を採用したのでは、コスト的に不利となる他、給湯器3Bの排気抵抗が大きくなる不具合も生じる。これとは異なり、扉2を交換するといったことも考えられるが、このような手段を採用したのでは、コスト的に一層不利となるばかりか、扉2の交換工事は容易ではなく、現実的でない。
【0005】
前記した例は、給湯器を交換した場合に、給湯器の排気筒と扉の開口部とが位置ずれする不具合を生じる例であるが、このような不具合は、新たな給湯器の取付け高さを高くすることによって解消することが可能である。これに対し、従来においては、ブラケットBaの枠状部4のうち、上板部4aの前部40eの下面(枠状部4の内側に形成された前面開口部の上縁部)よりも高い位置に給湯器3Bを配置させることができない構成とされている。給湯器3Bを固定フレーム1またはこれ以外の所望の取付け対象に取付ける場合、給湯器3Bの全体をできる限り高い位置に配置させたいような場合があるが、従来におい
ては、そのような要望に的確に応え得るものとはなっていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−285376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、給湯器の取付け高さを従来よりも高くすることを、簡易な構成によって適切に図ることが可能な給湯器の取付け構造、およびこれに用いられる給湯器用のブラケットを提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0009】
本発明の第1の側面により提供される給湯器の取付け構造は、給湯器と、この給湯器の取付け対象に取付けられる枠状部を有し、かつこの枠状部の内側に前記給湯器を配置させた状態で前記給湯器を前記枠状部に固定可能とされた給湯器用のブラケットと、を備えている、給湯器の取付け構造であって、前記ブラケットの前記枠状部の上板部は、前部よりも後側の領域が前記前部の下面よりも上方に位置するように屈曲または湾曲した形態とされていることにより、前記上板部の下側には、前記上板部の前部の下面よりも高い位置に存在する空間部が形成されており、前記給湯器の上部は、前記空間部に進入していることを特徴としている。
本発明において、前記給湯器の取付け対象は、集合住宅のパイプシャフト内に設置された固定フレームであり、前記固定フレームの前面側には、前記給湯器の前面部を覆うことが可能な扉が設置され、かつこの扉には、前記給湯器の前面部に設けられている排気筒を前記扉の前方側に露出させるための開口部が設けられている構成とすることができる。
【0010】
本発明の前記構成によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、ブラケットの枠状部の内側に給湯器を固定させる場合、給湯器の上部を枠状部の上板部の下側に形成されている空間部に進入させることによって、ブラケットに対する給湯器の取付け高さを従来よりも高くすることができ、給湯器の取付け高さを高くしたいという要望に適切に対応し得ることとなる。具体例を挙げると、給湯器の取付け高さを高くすることにより、給湯器の排気筒の配置高さを高くすることが可能であり、このことにより前記扉に設けられている排気筒露出用の開口部の高さに比較して給湯器の排気筒の高さが低くなる従来の不具合を好適に解消することが可能となる。本発明において、給湯器の取付け高さを高くする手段としては、給湯器の取付け対象に対するブラケット自体の取付け高さを変更するような必要はなく、ブラケットの取付け作業の煩雑化もない。
【0011】
本発明において、好ましくは、前記ブラケットの前記上板部の前部は、上下高さ方向に起立し、かつ前後方向に隙間を隔てて互いに対向する前側および後側の一対の起立壁部と、これら一対の起立壁部の下部どうしを繋ぐ連接部とを有する断面略コ字状または略U字状であり、前記隙間は、前記給湯器の取付け対象に設けられた受け片部が進入するスペースとされ、かつ前記前側の起立壁部は、前記受け片部の前側に配置された状態で前記受け片部への固定可能とされている。
【0012】
このような構成によれば、給湯器の取付け対象に設けられた受け片部に対し、ブラケットの上板部の一部を適切に固定させることができる。また、給湯器の取付け対象に対するブラケット自体の取付け高さが、従来と比較して低くなるといったことも生じないように
し、給湯器の取付け高さを高くする上で一層好ましいものとなる。
【0013】
本発明において、好ましくは、前記ブラケットの前記上板部には、この上板部の前部よりも後側の領域から下向きに突出した取付け片が設けられており、前記給湯器は、この給湯器の上面部から上向きに突出する突出片を有し、かつこの突出片は、前記取付け片に重ねられて固定可能とされ、この固定の位置は、前記上板部の前部の下面よりも高い位置とされている。
【0014】
このような構成によれば、前記した取付け片と突出片とを利用して、ブラケットへの給湯器の取付けを適切に図ることができることに加え、それら取付け片と突出片との固定の位置を高い位置に設定できるため、給湯器の取付け高さを高くする上で、やはり好ましいものとなる。
【0015】
本発明において、好ましくは、前記ブラケットの前記上板部の前部は、前記上板部の他の部分とは別体で形成され、かつ前記他の部分から取り外し可能とされている。
【0016】
このような構成によれば、ブラケットへの給湯器の取付け、および取り外しを行なう際に、上板部の前部を取り外しておくことにより、それらの作業の容易化を図ることかできる。また、後述の実施形態で説明するように、給湯器の本体部をブラケットに取付けたままでフロントカバーを外し、給湯器のメンテナンスを容易に行なうといったことも可能となる。
【0017】
本発明の第2の側面により提供される給湯器用のブラケットは、給湯器の取付け対象に取付けられる枠状部を有し、この枠状部の内側に前記給湯器を配した状態で前記給湯器を前記枠状部に支持させることが可能とされている、給湯器用のブラケットであって、前記枠状部の上板部は、前部よりも後側の領域が前記前部の下面よりも上方に位置するように屈曲または湾曲した形態とされていることにより、前記上板部の下側には、前記上板部の前部の下面よりも高い位置に存在し、かつ前記給湯器の上部を進入可能とする空間部が形成されていることを特徴としている。
【0018】
このような構成の給湯器用のブラケットは、本発明の第1の側面により提供される給湯器の取付け構造を構築するのに好適に使用することが可能であり、本発明の給湯器の取付け構造について述べたのと同様な効果が得られる。
【0019】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係る給湯器の取付け構造の一例を示す要部断面図である。
【
図4】
図1に示す構造の一部分解要部断面図である。
【
図5】(a),(b)は、従来技術の例を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
なお、以降の説明においては、理解を容易にするため、
図5に示した従来技術と同一または類似の要素には、前記従来技術と同一の符号を用いることとする。
【0022】
図1〜
図3に示す給湯器の取付け構造Aは、集合住宅のパイプシャフト内に設置される
固定フレーム1、扉2、給湯器3、およびこの給湯器3を固定フレーム1に取付けるための枠状のブラケットBを備えている。
【0023】
図3によく表われているように、固定フレーム1は、金属製の複数の角パイプ材などを接合して構成された門型状の部材であり、上下高さ方向に延びる左右一対の支柱部10、およびこれら一対の支柱部10の上部どうしの間に架け渡された梁部11を備えている。扉2は、給湯器3の前面部を覆うためのものであり、固定フレーム1に蝶番20を介して取付けられた水平回転式である。この扉2には、給湯器3の排気筒30を外部に露出させるための開口部21が設けられている。
【0024】
給湯器3は、たとえば瞬間式ガス給湯器であり、前面開口状の略直方体状の外装ケース31内にバーナや熱交換器などの各種の機器(
図3では不図示)が組み込まれた本体部32と、その前面開口部分を塞ぐためのフロントカバー33とを備えている。外装ケース31へのフロントカバー33の組み付けは、これらに設けられているフランジ部34a,34bを対向接触させ、かつこれらを複数のネジ体9aを用いてネジ止め(ネジ締結)することにより図られている。
【0025】
ブラケットBは、正面視略矩形の枠状部4を備えており、この枠状部4は、上板部4a、下板部4b、および左右一対の側板部4cが互いに繋がった構成である。このブラケットBは、固定フレーム1に取付けられる。そのための手段として、固定フレーム1の梁部11には、ネジ止め用孔部12aを有する下向き突出状の受け片部12が設けられているとともに、ブラケットBの上板部4aに設けられている後述する前側起立壁部43にはネジ止め用孔部45aが設けられ、これらの部分がネジ体9bを利用してネジ止めされる手段が採用されている。また、ブラケットBの一対の側板部4cの前部に連設されたフランジ部46には、複数のネジ体9cが挿通するネジ止め用孔部45bが設けられている。これに対し、固定フレーム1には、ネジ止め用孔部13aが設けられた複数の受け片部13が設けられ、この部分にフランジ部46が当接可能とされている。これらの部分は、ネジ体9cを用いてネジ止め締結される。
【0026】
ブラケットBの枠状部4の内側には、給湯器3を嵌入させた状態で取付けることが可能である。そのための手段として、
図3の部分拡大図に示すように、給湯器3の外装ケース31の上面部には、ネジ体9dが挿通するネジ止め用孔部35aを有する上向き突出状の突出片35が設けられているのに対し、ブラケットBの上板部4aの後部には、ネジ止め用孔部50aを有する下向き突出状の取付け片50が設けられ、これらがネジ体9dを用いてネジ止め可能とされている。突出片35には、取付け片50に設けられた係合用孔部50bに進入する係合用凸部35bも設けられており、これら係合用の凸部35bおよび孔部50bの係合により、ブラケットBと給湯器3との位置決めが可能となっている。これは、ブラケットBに対する給湯器3のネジ止め作業を容易にする効果をもたらせる。ブラケットBに対する給湯器3の他の取付け手段としては、給湯器3の外装ケース31の下面部に、ネジ体9eが挿通するネジ止め用孔部36aを有する下向き突出状の突出片36が設けられているのに対し、ブラケットBの下板部4bの後部寄り領域には、ネジ止め用孔部51aを有する上向き突出状の取付け片51が設けられ、これらをネジ体9eを用いてネジ止め可能とする手段も採用されている。
【0027】
図1に示すように、ブラケットBの上板部4aは、その前部40よりも後側の領域41が、前部40の下面40a(枠状部4の内側に形成された前面開口部の上縁部)よりも上方に位置するように屈曲または湾曲した断面形状であり、上板部4aの下側には、前部40の下面40aよりも高い位置に存在する空間部48が形成されている。給湯器3は、フランジ部34a,34bの上部や突出片35が空間部48に進入した状態でブラケットBへの取付けが図られている。突出片35と取付け片50とのネジ体9dによるネジ止め位
置は、前部40の下面40aよりも高い位置とされている。
【0028】
ブラケットBの上板部4aの前部40は、上板部4aの他の部分とは別体で形成され、他の部分から取り外し可能とされている。
より具体的には、
図1の要部拡大図に示すように、前部40は、断面略コ字状または略U字状であり、上下高さ方向に起立して前後方向に隙間42を隔てて対向する前側および後側の一対の起立壁部43,43a、およびこれらの下部どうしを繋ぐ連接部44を有している。このような前部40は、上板部4aのうち、前部40よりも後側の領域41の平板状部分の前端に連設された下向き屈曲部41aに後側の起立壁部43aが重なるように位置決めされた状態で枠状部4に取付けられている。この取付けは、連接部44の左右両端部を、補助片部52にその下方からネジ体9fを用いてネジ止めすることにより図られている。補助片部52は、
図3に示すように、ブラケットBの左右両側板部4cのそれぞれの上部から短い寸法で内向きに突出した部分であり、ネジ体9fを緩めることにより、前部40を上板部4aから取り外すことが可能である。補助片部52は、給湯器3よりも左右の両側板部4c寄りに位置しており、ブラケットBの左右幅方向において給湯器3との干渉を避けることができるように設けられている。このことにより、
図4を参照して後述するように、給湯器3のフロントカバー33を取り外す際には、フロントカバー33が補助片部52に干渉しないようにすることが可能となっている。
【0029】
固定フレーム1の受け片部12に、ネジ体9bを用いてブラケットBの上板部4aをネジ止めする構造は、受け片部12が前部40に形成された隙間42に進入し、かつ前側の起立壁部43が受け片部12の前面側に重なるように配置した状態で行なわれている。
【0030】
次に、前記した給湯器の取付け構造Aの作用について説明する。
【0031】
まず、
図1を参照して説明したように、給湯器用のブラケットBの上板部4aの下側には、前部40の下面40aよりも高い位置に存在する空間部48が設けられ、かつこの空間部48に給湯器3の上部が進入するように設定されている。このため、給湯器3の取付け高さを高くすることが可能である。その結果、給湯器3の上面から排気筒30までの寸法Laが、比較的大きい場合であっても、排気筒30が開口部21よりも低い高さにならないようにし、これらの高さを一致させることによって、排気筒30を開口部21から扉2の前方側に適切に露出させることが可能となる。
図5(b)に示した排気アダプタ30bを用いる必要はない。したがって、コスト的に有利であり、また排気アダプタ30bを用いた場合に生じる給湯器3における排気抵抗の増大も防止することができる。
【0032】
上板部4aの前部40は、
図4に示すように、上板部4aの他の部分から取り外すことが可能である。この場合、受け片部12に対する前部40の連結も解除されることとなるが、ブラケットBは、
図3を参照して説明したように、固定フレーム1の受け片部13に別途ネジ止めされているため、前部40を取外したことに起因して、固定フレーム1に対するブラケットBの取付け状態が不当に解除されるようなことはない。前記したように前部40を取り外すと、給湯器3のフロントカバー33をブラケットBの手前側に取り外すことが可能である。前部40が上板部4aに組み付けられている状態においては、フロントカバー33をブラケットBの手前側に取り外そうとした際に、フロントカバー33が前部40に干渉し、フロントカバー33を取り外すことは困難であるが、前部40を取り外すことにより、そのようなことを解消することができる。フロントカバー33を取り外すと、給湯器3の本体部32をブラケットBに取付けた状態のまま、給湯器3のメンテナンスをその正面側から行なうことが可能となり、便利である。また、前部40を本実施形態のように着脱自在とすれば、ブラケットBへの給湯器3の組み付け作業や、給湯器3の全体の取り外し作業なども一層容易かつ適切に行なうことが可能となる。
【0033】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る給湯器の取付け構造、および給湯器用のブラケットの各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。
【0034】
給湯器用のブラケットの上板部の前部は、上板部の他の部分から取り外し可能とすることが好ましいものの、やはりこれに限定されず、上板部の全体を、たとえば単一部材を利用して一体的に形成した構成とすることもできる。なお、上板部の前部を取外し可能とする手段に代えて、または加えて、ブラケットの枠状部の下板部を、枠状部の他の部分から取り外し可能にするといった手段を採用することもできる。
【0035】
上述の実施形態においては、各部の固定手段として、ネジ止め手段を用いた場合を説明しているが、これに限定されず、リベット、カシメなどとすることもできる。
固定フレームに対するブラケットの具体的な取付け構造、およびブラケットに対する給湯器の具体的な取付け構造は、上述した実施形態とは異なる構造とし得ることは勿論である。
本発明に係る給湯器の取付け構造は、集合住宅のパイプシャフト内に給湯器を設置する用途に適するが、これ以外の場所に給湯器を設置する場合にも用いることが可能である。したがって、給湯器の取付け対象は、パイプシャフト内に設置された門型状などの固定フレームに限定されない。給湯器は、ガス給湯器の他、オイル給湯器などとすることもでき、その種類なども限定されない。
【符号の説明】
【0036】
A 給湯器の取付け構造
B ブラケット(給湯器用のブラケット)
1 固定フレーム(給湯器の取付け対象)
12 受け片部
2 扉
21 開口部(扉の)
3 給湯器
30 排気筒
35 突出片
4 枠状部(ブラケットの)
4a 上板部(枠状部の)
40 前部(上板部の)
40a 下面(前部の)
41 後側の領域(上板部の前部よりも後側の領域)
42 隙間
43,43a 前側および後側の起立壁部
44 連接部
48 空間部
50 取付け片