(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6681004
(24)【登録日】2020年3月25日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】圧縮機用カバー
(51)【国際特許分類】
F04B 39/00 20060101AFI20200406BHJP
F04C 29/06 20060101ALI20200406BHJP
F24F 1/12 20110101ALI20200406BHJP
【FI】
F04B39/00 101V
F04C29/06 B
F24F1/12
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-113614(P2016-113614)
(22)【出願日】2016年6月7日
(65)【公開番号】特開2017-218964(P2017-218964A)
(43)【公開日】2017年12月14日
【審査請求日】2019年5月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】100083404
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 拓也
(72)【発明者】
【氏名】春日井 聡
(72)【発明者】
【氏名】水口 力生
(72)【発明者】
【氏名】廣田 晴樹
【審査官】
田谷 宗隆
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−173769(JP,A)
【文献】
特開2012−122700(JP,A)
【文献】
特開2015−224824(JP,A)
【文献】
実開平2−137577(JP,U)
【文献】
特開平1−159476(JP,A)
【文献】
特開平5−60069(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/00
F04C 29/06
F24F 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉された円筒状の圧縮機の側周面に巻き付けられた筒状の胴体カバーと、上記胴体カバーの上方開口を塞ぐ蓋カバーとを有し、上記蓋カバーには、上記圧縮機に接続されている冷媒配管を挿通するための配管挿通孔と、上記配管挿通孔から上記蓋カバーの外周縁まで貫通する切り込みが形成され、上記切り込みによる切断面の一方の端面を第1端面とし、他方の端面を第2端面として、上記蓋カバーの上面には、上記配管挿通孔と上記第1端面と上記第2端面に沿って上方に延出するリブが形成されていることを特徴とする圧縮機用カバー。
【請求項2】
上記リブは、上記配管挿通孔の周りに形成されるリブを第1リブ、上記第1端面に形成されるリブを第2リブ、上記第2端面に形成されるリブを第3リブとして、上記第2リブと上記第3リブを密着させる綴じ具を備えるとともに、上記リブは上記綴じ具を受けられる厚みを備えていることを特徴とする請求項1に記載の圧縮機用カバー。
【請求項3】
上記リブの内面には防水シールが貼着されていることを特徴とする請求項1または2に記載の圧縮機用カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒状の密閉シェルを縦置きに配置してなる圧縮機に適用される圧縮機用カバーの防水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和機の冷凍サイクルに用いられる圧縮機は、運転時に大きな駆動音が発生することから、例えば特許文献1に記載されているように、その駆動音が外部に漏れないように圧縮機全体をカバーで覆うようにしている。
【0003】
カバーは、例えば不織布等の内部の空気孔を音で吸収する吸音材とゴムの遮音・振動吸収材を積層した防音材からなり、吸音材を内側として、圧縮機の底面を除く全体を覆うことで、圧縮機から出る音を吸音、防音している。
【0004】
特許文献1において、カバーは、圧縮機の外周面に沿って配置される円筒状の側面防音カバーと、側面防音カバーの上部開口を覆う天面防音カバーとを備えている。天面防音カバーは、楕円形に打ち抜かれた1枚の防音材(特許文献1の
図3参照)の一部をV字状に切り欠き、その切欠端面同士を互いに密着することによって傘状に形成されている。
【0005】
切欠端面の基端部には、冷媒配管(例えば冷媒吐出管)を天面防音カバーの外に引き出すための配管挿通孔が設けられており、配管挿通孔から冷媒配管を引き出した後、切欠端面同士を互いに密着させて粘着テープなどで固定することにより、圧縮機の上部開口が覆われる。
【0006】
しかしながら、圧縮機を用いる空気調和機の室外機には、送風ファンの吹出口を天面に有することで、圧縮機に直接雨が降りかかるものがある。そのため、降雨時に天面カバーの切欠端面間の隙間や配管挿通孔から水が入り込む。隙間から水が入り込むと吸音材の内部の空気孔が水を吸い吸音効果が低くなり、その結果、防音効果が低減する。
【0007】
また、従来の防音材はシート厚さが薄く、切欠端面同士を完全に密着させて固定することが困難であったため、特に隙間ができやすかった。また、ゴムは熱膨張係数が大きいため、圧縮機の駆動による熱サイクルによって、隙間固定用の粘着テープが剥がれたり、隙間が拡大して、防水能力が低下するおそれもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2014−118905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明の課題は、蓋カバーの冷媒配管挿通用の隙間から水が内部に浸入することを防止した圧縮機用カバーを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するため、本発明は、密閉された円筒状の圧縮機の側周面に巻き付けられた筒状の胴体カバーと、上記胴体カバーの上方開口を塞ぐ蓋カバーとを有し、上記蓋カバーには、上記圧縮機に接続されている冷媒配管を挿通するための配管挿通孔と、上記配管挿通孔から上記蓋カバーの外周縁まで貫通する切り込みが形成され、上記切り込みによる切断面の一方の端面を第1端面とし、他方の端面を第2端面として、上記蓋カバーの上面には、上記配管挿通孔と上記第1端面と上記第2端面に沿って上方に延出するリブが形成されていることを特徴としている。
【0011】
より好ましい態様として、上記リブは、上記配管挿通孔の周りに形成されるリブを第1リブ、上記第1端面に形成されるリブを第2リブ、上記第2端面に形成されるリブを第3リブとして、上記第2リブと上記第3リブを密着させる綴じ具を備えるとともに、上記リブは上記綴じ具を受けられる厚みを備えている。
【0012】
さらに好ましい態様として、少なくとも上記リブの内面には防水用のシールが貼着されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、蓋カバーの上面には配管挿通孔と第1端面と第2端面に沿って上方に延出するリブが形成されていることにより、第1端面と第2端面の密着面積が大きくなって密着性が向上し、その結果、防水性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る圧縮機用カバーの分解斜視図。
【
図2】上記圧縮機用カバーの(a)平面図,(b)
図2(a)のA−A線断面図。
【
図3】蓋カバーの案内路を開いた状態の部分拡大斜視図。
【
図4】蓋カバーの防水シールを示す部分拡大斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0016】
図1,
図2に示すように、本発明の圧縮機用カバー1が適用される圧縮機Cは、上端がドーム状のエンドキャップにて閉塞された円筒状の密閉シェルSを有し、密閉シェルSの下端に縦置き用の固定脚Tを備えている。圧縮機Cの上部中央には、圧縮機1内に低圧冷媒を吸入する冷媒吸入管(以下冷媒配管P1とする)が接続されている。また、圧縮機Cの側部には、圧縮機1で圧縮された高圧冷媒を吐出する冷媒吐出管(以下冷媒配管P2とする)が、側面から上方に向かって90°折り曲げられた状態で引き出されている。
【0017】
この実施形態において、圧縮機Cはスクロール圧縮機であるが、ロータリー圧縮機であってもよい。また、密閉シェルSの側部に気液分離器(アキュムレータ)が配置されていてもよい。また、冷媒吸入管P1と冷媒吐出管P2が逆の場合もある。
【0018】
同様に、この実施形態においては、空気調和機用の冷媒回路を担う圧縮機Cを一例として例示しているが、これ以外に冷蔵庫や洗濯機、除湿器などの冷媒回路に用いられる圧縮機に適用されてもよい。
【0019】
図1および
図2に示すように、圧縮機用カバー1は、圧縮機Cの密閉シェルSの側面を覆う胴体カバー2と、胴体カバー2の上部開口24を覆う蓋状の蓋カバー3とを備えている。
【0020】
胴体カバー2は、例えばガラス繊維などをシート状に形成した不織布の吸音材21の表面(外面)にゴムの遮音・振動吸収材を積層した防音材22を重ねて一体的に積層した1枚の長方形状の防音材からなり、吸音材21が内側(圧縮機C側)を向くようにして、圧縮機Cの側周面に沿って巻き付けられる。
【0021】
胴体カバー2の両端側(
図1では左右両端)には、胴体カバー2を圧縮機Cの周りに巻き付けた状態を保持するために止め具23が上下に2箇所設けられている。
【0022】
この実施形態において、止め具23は、胴体カバー2の一端側(
図1では左端側)に固定された固定紐231と、胴体カバー2の他端側(
図1では右端側)に取り付けられた巻付ボビン232とからなり、胴体カバー2を圧縮機Cの周りに円筒状に丸めた状態で固定紐231を巻付ボビン232に巻き付けることにより、胴体カバー2が圧縮機Cに保持される。巻き付けられた胴体カバー2は上から見てほぼ楕円形状となる。この実施形態において、止め具23はいわゆる文化鋲であるが、このほかに両面粘着テープや面ファスナーなどを用いて固定してもよく、胴体カバー2を巻き付けた状態で保持可能であればよい。
【0023】
次に、胴体カバー2の上部開口24を塞ぐ蓋カバー3について説明する。蓋カバー3は、胴体カバー2の上部開口24を覆う楕円形状のハット部31と、ハット部31の外周縁31aから胴体カバー2の外周に沿って下方に延在するスカート部32とを有し、下面が開放された筒状に形成されている。
【0024】
この実施形態において、蓋カバー3は、防音材を用いたハット部31とスカート部32とが一体成形されている。ハット部31は、少なくとも胴体カバー2の上部開口24を閉塞可能な大きさを有し、この実施形態において、その底面(上部開口24に対向する面)には不織布の吸音材が一体的に貼り合わせられている。なお、以下の説明で、蓋カバー3で防音材を用いた部分を防音材部3aとし、不織布の吸音材を用いた部分を吸音材部3bとする。
【0025】
ハット部31には、冷媒配管を挿通するための配管挿通孔4が設けられている。
図2に示すように、この実施形態において、冷媒配管P1を挿通するための第1配管挿通孔41がハット部41の中央寄りに配置され、冷媒配管P2を挿通するための第2配管挿通孔42が外寄りに配置されている。配管挿通孔4は防音材部3aと吸音材部3bを貫通している。なお、防音材部3aにおける第1配管挿通孔41と第2配管挿通孔42の内面をそれぞれ第1配管挿通孔面41aと第2配管挿通孔面42aとする。また、吸音材部3bにおける第1配管挿通孔41と第2配管挿通孔42の内面をそれぞれ第1配管挿通孔面41bと第2配管挿通孔面42bとする。
【0026】
蓋カバー3には、第1配管挿通孔41から第2配管挿通孔42を通ってスカート部32まで貫通する切り込み43が形成されている。切り込み43は、ハット部31の第1配管挿通孔41からスカート部32の下端に至るまで連続して形成されている。また、切り込み43は防音材部3aから吸音材部3bまて貫通している。
【0027】
これによれば、
図3に示すように、蓋カバー3の切り込み43を左右に押し拡げると、第1配管挿通孔41および第2配管挿通孔42に冷媒配管P1と冷媒配管P2とを案内する案内路44となる。
【0028】
なお、切り込み43によってできた切断面のうち、防音材部3aにおける一方の端面(
図3では案内路44の右側)を第1端面43aとし、他方の端面(
図3では案内路44の左側)を第2端面43bとする。また、吸音材部3bにおける一方の端面(
図3では案内路44の右側)を第3端面43cとし、他方の端面(
図3では案内路44の左側)を第4端面43dとする。
【0029】
蓋カバー3の上面には、第1配管挿通孔面41aと第2配管挿通孔面42bと第1端面43aと第2端面43bに沿って上方に向かって延出するリブ33が設けられている。リブ33は、各配管挿通孔41,42の周りに形成される第1リブ33aと、第1端面43aと連続して上方に形成される第2リブ33bと、第2端面43bと連続して上方に形成される第3リブ33cとを備えている。第2リブ33bと第3リブ33cは第1配管挿通孔41の周りに形成される第1リブ33aで連結されている。
【0030】
これによれば、第1配管挿通孔面41aと第2配管挿通孔面42aと第1端面43aと第2端面43bに沿って上方に延出するリブ33が形成されていることにより、第1配管挿通孔面41aと第2配管挿通孔面42aと第1端面43aと第2端面43bの面積が大きくなる。その結果、案内路44を閉じた状態で、冷媒配管P1,P2と配管挿通孔4の密着性が向上するとともに、第1端面43aと第2端面43bとの密着性が向上し、防水性が向上する。
【0031】
第1端面43aと第2端面43bの密着性をさらに高めるため、
図1と
図2に示すように、リブ33は綴じ具5(バインダとも言う)によって挟持されている。綴じ具5は、鋼線を門形に折り曲げ、その両端で第2リブ33bと第3リブ33cをクランプすることにより、密着させた状態を維持することができる。この実施形態において、綴じ具5は第2リブ33bと第3リブ33cに所定の間隔をもって3箇所設けられている。リブ33は、綴じ具5を支えるとともに、綴じ具5の締め付け力を受けられる一定の厚みWを備えている。
【0032】
図4に示すように、リブ33の内面には配管挿通孔4と切り込み43から内部に水が浸入することを防止する防水シール45が貼着されている。この実施形態において、防水シール45はEPTシート(エチレンプロピレンゴム)である。防水シール45は、防音材部3aの第1配管挿通孔面41aと第2配管挿通孔面42aと第1端面43aと第2端面43bに沿って設ける。また、吸音材部3bの第1配管挿通孔面41bと第2配管挿通孔面42bと第3端面43cと第4端面43dまで覆うように設けても良い。防水シール45により第1端面43aと第2端面43bの隙間と、配管挿通孔4と冷媒配管P1,P2との隙間が密着して閉塞される。
【0033】
なお、スカート部32に形成された切り込み43にリブ33を合わせて形成してもよいが、この実施形態では、スカート部32は、胴体カバー2の外周面を覆っているため、胴体カバー2で防水性は確保されており、特にスカート部32にリブ33を形成する必要はない。
【0034】
本発明において、各配管挿通孔41,42は切り込み43上に配置されているが、配管挿通孔41それぞれに切り込み43を形成して、その各々にリブ33を設けてもよい。
【0035】
以上説明したように、本発明によれば、第1配管挿通孔面41aと第2配管挿通孔面42aと第1端面43aと第2端面43bに沿って上方に延出するリブ33が形成されていることにより、第1配管挿通孔面41aと第2配管挿通孔面42aと第1端面43aと第2端面43bの面積が大きくなる。その結果、案内路44を閉じた状態で、冷媒配管P1,P2と配管挿通孔4の密着性が向上するとともに、第1端面43aと第2端面43bとの密着性が向上し、防水性が向上する。
【符号の説明】
【0036】
1 圧縮機用カバー
2 胴体カバー
24 上部開口
3 蓋カバー
3a 防音材部
3b 吸音材部
31 ハット部
31a 外周縁
32 スカート部
33 リブ
33a 第1リブ
33b 第2リブ
33c 第3リブ
4 配管挿通孔
41 第1配管挿通孔
41a 第1配管挿通孔面
42 第2配管挿通孔
42a 第2配管挿通孔面
43 切り込み
43a 第1端面
43b 第2端面
44 案内路
45 防水シール
5 綴じ具(バインダー)
C 圧縮機
S 密閉シェル
T 固定脚
P1 冷媒配管(冷媒吸入管)
P2 冷媒配管(冷媒吐出管)