特許第6681043号(P6681043)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6681043油圧装置及び該油圧装置の油圧シリンダ内の異物を除去する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6681043
(24)【登録日】2020年3月25日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】油圧装置及び該油圧装置の油圧シリンダ内の異物を除去する方法
(51)【国際特許分類】
   F15B 21/041 20190101AFI20200406BHJP
   F15B 15/14 20060101ALI20200406BHJP
【FI】
   F15B21/041
   F15B15/14 310
   F15B15/14 335A
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-53052(P2016-53052)
(22)【出願日】2016年2月29日
(65)【公開番号】特開2017-155931(P2017-155931A)
(43)【公開日】2017年9月7日
【審査請求日】2018年12月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】500408854
【氏名又は名称】株式会社ユーテック
(72)【発明者】
【氏名】上▲西▼ 幸雄
【審査官】 谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/144412(WO,A1)
【文献】 特開2012−041953(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 21/041
F15B 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと前記シリンダの中空部に嵌入されシリンダ中心軸が伸びる方向に往復移動するピストンとを有し、前記シリンダ内に前記ピストンによってシリンダ中心軸が伸びる方向に互いに仕切られた第1油室及び第2油室が形成され、前記ピストンの第2油室側端面にピストンロッドが連結され、前記ピストンロッドが前記シリンダの第2油室側端壁を貫通してシリンダ外部に伸びていて、加圧された作動油が前記第1油室に供給されたときに前記ピストンが第2油室側に移動して前記第2油室内の作動油がシリンダ外に排出される一方、加圧された作動油が前記第2油室に供給されたときに前記ピストンが第1油室側に移動して前記第1油室内の作動油がシリンダ外に排出される片ロッド形複動式の油圧シリンダと、
前記第1油室に作動油を給排する第1作動油通路に介設された第1開閉弁と、前記第2油室に作動油を給排する第2作動油通路に介設された第2開閉弁と、前記第1、第2開閉弁に対して前記油圧シリンダと反対側の位置で前記第1作動油通路と前記第2作動油通路とを接続するバイパス油路と、前記バイパス油路を開閉するバイパス開閉弁と、前記第1、第2開閉弁に対して前記油圧シリンダと同じ側の位置においてそれぞれ前記第1作動油通路及び前記第2作動油通路に介設され作動油通路外への流体の流出を係止する第1逆止弁及び第2逆止弁と、前記第1、第2開閉弁に対して前記油圧シリンダと反対側の位置においてそれぞれ前記第1作動油通路及び前記第2作動油通路に介設され作動油通路外への流体の流出を係止する第3逆止弁及び第4逆止弁とを有する油路切換機構とを備えている油圧装置であって、
前記油圧シリンダに、前記第1油室に接続され該第1油室を外部に開放することが可能な第1油室開閉弁と、前記第2油室に接続され該第2油室を外部に開放することが可能な第2油室開閉弁とが設けられ、
該油圧装置は、一方の端部に前記第1〜第4逆止弁と接続されたときに該逆止弁を開弁するように構成された第1接続具が設けられる一方、他方の端部に前記第1、第2油室開閉弁と接続することが可能な第2接続具が設けられた、前記第1〜第4逆止弁及び前記第1、第2油室開閉弁に対して着脱自在な管状部材を備えていることを特徴とする油圧装置。
【請求項2】
前記油路切換機構は、ブロック状の本体部の内部に、前記バイパス油路と、それぞれ前記第1、第2作動油通路の一部をなし又は前記第1、第2作動油通路に介在する第1、第2油路とが孔の形態で形成され、前記第1油路に対して前記第1開閉弁と前記第1、第3逆止弁とが設けられ、前記第2油路に対して前記第2開閉弁と前記第2、第4逆止弁とが設けられた一体構造物であることを特徴とする、請求項1に記載の油圧装置。
【請求項3】
前記管状部材は、可撓性材料で形成されたホースであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の油圧装置。
【請求項4】
前記第1、第2油室開閉弁は、油室外への流体の流出を係止する逆止弁であり、
前記管状部材の前記第2接続具は、前記第1、第2油室開閉弁と接続されたときに該油室開閉弁を開弁するように構成されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1つに記載の油圧装置。
【請求項5】
前記管状部材の前記第1接続具と前記第2接続具とが同一の構造又は形状を有していて、
前記第1〜第4逆止弁及び前記第1、第2油室開閉弁は、前記管状部材の前記第1、第2接続具と接続することができるように構成されていることを特徴とする、請求項4に記載の油圧装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の油圧装置において、第1、第2油室内に存在する異物を除去する方法であって、
前記バイパス開閉弁を閉弁状態とするステップと、
前記ピストンを前記シリンダの第2油室側端部近傍に配置し、前記第1開閉弁を閉弁状態として前記第1接続具を前記第3逆止弁に接続し、前記第2接続具を前記第2油室開閉弁に接続し、加圧された作動油を前記第1作動油通路に供給し前記管状部材を経由して前記第2油室に導入し、前記第2油室内を流通した作動油を、前記第2開閉弁を開弁状態として前記第2作動油通路を介して排出することにより、前記第2油室内に存在する異物を除去するステップと、
前記ピストンを前記シリンダの第1油室側端部近傍に配置し、前記第2開閉弁を閉弁状態として前記第1接続具を前記第4逆止弁に接続し、前記第2接続具を前記第1油室開閉弁に接続し、加圧された作動油を前記第2作動油通路に供給し前記管状部材を経由して前記第1油室に導入し、前記第1油室内を流通した作動油を、前記第1開閉弁を開弁状態として前記第1作動油通路を介して排出することにより、前記第1油室内に存在する異物を除去するステップとを有することを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の油圧装置において、第1、第2油室内に存在する異物を除去する方法であって、
前記バイパス開閉弁を閉弁状態とするステップと、
前記ピストンを前記シリンダの第2油室側端部近傍に配置し、前記第1開閉弁を開弁状態として前記第1接続具を前記第1逆止弁又は前記第3逆止弁に接続し、前記第2接続具を前記第2油室開閉弁に接続し、加圧された作動油を前記第1作動油通路に供給し前記管状部材を経由して前記第2油室に導入し、前記第2油室内を流通した作動油を、前記第2開閉弁を開弁状態として前記第2作動油通路を介して排出することにより、前記第2油室内に存在する異物を除去するステップと、
前記ピストンを前記シリンダの第1油室側端部近傍に配置し、前記第2開閉弁を開弁状態として前記第1接続具を前記第2逆止弁又は前記第4逆止弁に接続し、前記第2接続具を前記第1油室開閉弁に接続し、加圧された作動油を前記第2作動油通路に供給し前記管状部材を経由して前記第1油室に導入し、前記第1油室内を流通した作動油を、前記第1開閉弁を開弁状態として前記第1作動油通路を介して排出することにより、前記第1油室内に存在する異物を除去するステップとを有することを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項5に記載の油圧装置において、第1、第2油室内に存在する異物を除去する方法であって、
前記バイパス開閉弁を閉弁状態とし、前記第1、第2開閉弁を開弁状態とし、前記第1、第2接続具のうちの一方の接続具を前記第1油室開閉弁に接続するとともに他方の接続具を前記第2油室開閉弁に接続するステップと、
前記ピストンを前記シリンダの第2油室側端部近傍に配置し、加圧された作動油を、前記第1作動油通路と前記第1油室と前記管状部材とを経由して前記第2油室に導入し、前記第2油室内を流通した作動油を、前記第2作動油通路を介して排出することにより、前記第2油室内に存在する異物を除去するステップと、
前記ピストンを前記シリンダの第1油室側端部近傍に配置し、加圧された作動油を、前記第2作動油通路と前記第2油室と前記管状部材とを経由して前記第1油室に導入し、前記第1油室内を流通した作動油を、前記第1作動油通路を介して排出することにより、前記第1油室内に存在する異物を除去するステップとを有することを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧シリンダの油室内に存在する異物を除去する機構を備えた油圧装置と、該油圧装置の油圧シリンダの油室内に存在する異物を除去する方法とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、シリンダ内に嵌入されたピストンが、油圧ポンプから吐出された作動油の圧力により往復運動をする油圧シリンダは、同様の往復運動をする機械式アクチュエータ、例えばラックピニオン機構やボールねじ機構などと比べて、構造が簡素であり、出力が高く、かつ寿命が長いといった利点を有する。このため、油圧シリンダは、種々の機械装置や土木建設用車両などのアクチュエータとして幅広く用いられている。そして、このような油圧シリンダの1つとして、とくに構造が簡素であり、ピストンをキャップ側及びロッド側の両方向に油圧で駆動することができる片ロッド形複動式の油圧シリンダが知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
この種の片ロッド形複動式の油圧シリンダに対しては、通常、油圧ポンプから吐出された作動油を油圧シリンダに給排するための作動油給排装置が設けられる。そして、作動油給排装置には、作動油タンクと油圧シリンダとの間に配設される複数の作動油通路(ないしは油路)と、これらの作動油通路に介設される油圧ポンプ、油路切換弁、流量調整弁、リリーフ弁、逆止弁等の種々の油圧機器とが設けられる。
【0004】
ところで、このような作動油給排装置から油圧シリンダに供給される作動油には若干の異物、例えば微細な気泡や固体粒子などが混在することがある。そして、例えば気泡を含む作動油が油室に供給された場合、気泡が油室内、とくにピストンの下側(ロッド側)の油室の上端部近傍に滞留する。このように、油室内の作動油中に気泡が存在すると、気泡が圧縮性を有するので、ピストンの動作に同期不良等の不具合が生じたり、気泡の断熱圧縮により作動油が過熱状態となって劣化したりするおそれがある。また、油圧シリンダに供給される作動油に気泡以外の異物、例えば金属粒子等の微細な固体粒子が混在する場合、このような固体粒子が油室内に滞留すると、ピストンとシリンダの摺接部に固体粒子が侵入して、ピストン外周面ないしはシリンダ内周面に損傷が生じるおそれがある。
【0005】
そこで、ピストンの内部に気泡等の異物の除去機構を設けた油圧シリンダが提案されている(例えば、特許文献4、5参照)。例えば、特許文献4、5に開示された油圧シリンダでは、ピストンの内部に、ピストンの下側(ロッド側)の油室(以下「下側油室」という。)と上側(キャップ側)の油室(以下「上側油室」という。)とを連通する連通路と、該連通路を開閉する制御弁とが設けられている。そして、ピストンがシリンダ内で最上位置に到達したときに、シリンダの上端面によって制御弁が開かれ、下側油室内の作動油が連通路を介して上側油室に流れ、これにより下側油室内の気泡が上側油室を経由して排出されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−110710号公報
【特許文献2】特開2003−74518号公報
【特許文献3】特開2004−68863号公報
【特許文献4】特開2006−207792号公報
【特許文献5】特開2013−007407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、例えば特許文献4、5に開示されている、ピストンの内部に、連通路と制御弁とを有する気泡除去機構を設けた油圧シリンダでは、ピストンの構造が非常に複雑なものとなるといった問題があり、またピストンの強度が十分に確保されないおそれがあるといった問題がある。また、油室内に滞留する固体粒子、とくに下側油室の下部に滞留する固体粒子の異物を効果的に除去することが困難であるといった問題がある。
【0008】
本発明は、上記従来の問題を解決するためになされたものであって、油圧シリンダの油室内に滞留する気泡、固体粒子等の異物をすべて効果的に除去することを可能にする簡素な構造の手段を提供すること解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するためになされた本発明に係る油圧装置は、片ロッド形複動式の油圧シリンダ(油圧シリンダ装置)と、油路切換機構とを備えている。ここで、油圧シリンダは、シリンダ(円筒部材)と、このシリンダの中空部に嵌入されシリンダ中心軸が伸びる方向に往復移動するピストンとを有し、シリンダ内にピストンによってシリンダ中心軸が伸びる方向に互いに仕切られた第1油室及び第2油室が形成されている。ピストンの第2油室側端面(下端面)にピストンロッドが連結され、このピストンロッドは、シリンダの第2油室側端壁(下端壁、ロッド側端壁)を貫通してシリンダ外部に伸びている。この油圧シリンダにおいては、加圧された作動油が第1油室に供給されたときにピストンが第2油室側に移動して第2油室内の作動油がシリンダ外に排出される一方、加圧された作動油が第2油室に供給されたときにピストンが第1油室側に移動して第1油室内の作動油がシリンダ外に排出される。
【0010】
油路切換機構は、第1油室に作動油を給排する第1作動油通路に介設された第1開閉弁と、第2油室に作動油を給排する第2作動油通路に介設された第2開閉弁と、第1、第2開閉弁に対して油圧シリンダと反対側の位置で第1作動油通路と第2作動油通路とを接続する(連通させる)バイパス油路と、バイパス油路を開閉するバイパス開閉弁と、第1、第2開閉弁に対して油圧シリンダと同じ側の位置においてそれぞれ第1作動油通路及び第2作動油通路に介設され作動油通路外への流体の流出を係止する第1逆止弁及び第2逆止弁と、第1、第2開閉弁に対して油圧シリンダと反対側の位置においてそれぞれ第1作動油通路及び第2作動油通路に介設され作動油通路外への流体の流出を係止する第3逆止弁及び第4逆止弁とを有する。
【0011】
本発明に係る油圧装置においては、油圧シリンダに、第1油室に接続され該第1油室を外部に開放することが可能な第1油室開閉弁と、第2油室に接続され該第2油室を外部に開放することが可能な第2油室開閉弁とが設けられている。油圧装置は、さらに、一方の端部に第1〜第4逆止弁と接続されたときに該逆止弁を開弁するように構成された第1接続具が設けられる一方、他方の端部に第1、第2油室開閉弁と接続することが可能な第2接続具が設けられた、第1〜第4逆止弁及び第1、第2油室開閉弁に対して着脱自在な(別体の)管状部材を備えている。
【0012】
本発明に係る油圧装置において、油路切換機構は、ブロック(塊状物)状の本体部の内部に、バイパス油路とそれぞれ第1、第2作動油通路の一部をなす(又は第1、第2作動油通路に介在する)第1、第2油路とが孔(穴)の形態で形成され、第1油路に対して第1開閉弁と第1、第3逆止弁とが介設され、第2油路に対して第2開閉弁と第2、第4逆止弁とが設けられた一体構造物(多ポートバイパス弁)であるのが好ましい。また、管状部材は、可撓性材料(弾性材料)で形成されたホースであるのが好ましい。
【0013】
本発明に係る油圧装置において、第1、第2油室開閉弁は、それぞれ油室外への流体の流出を係止する逆止弁であり、管状部材の第2接続具は、第1、第2油室開閉弁と接続されたときに該油室開閉弁を開弁するように構成されているのが好ましい。
【0014】
前記油圧装置においては、下記の第1〜第3ステップを有する方法により、第1、第2油室内に存在する異物(気泡、固体粒子等)を除去することができる。第2、第3ステップは、第1ステップの後で実施される。なお、第2、第3ステップは、どちらのステップを先に実施してもよい。
【0015】
(1) 第1ステップ
第1ステップでは、バイパス開閉弁を閉弁状態とする。なお、本明細書において、「閉弁状態とする」は、開弁状態から閉弁すること又は閉弁状態を維持することを意味し、「開弁状態とする」は、閉弁状態から開弁すること又は開弁状態を維持することを意味する。
(2) 第2ステップ
第2ステップでは、ピストンをシリンダの第2油室側端部近傍(下端部近傍)に配置し、第1開閉弁を閉弁状態として第1接続具を第3逆止弁に接続し(又は第1開閉弁を開弁状態として第1接続具を第1逆止弁又は第3逆止弁に接続し)、第2接続具を第2油室開閉弁に接続し、加圧された作動油を第1作動油通路に供給し管状部材を経由して第2油室に導入し、第2油室内を流通した作動油を、第2開閉弁を開弁状態として第2作動油通路を介して排出することにより、第2油室内に存在する異物を除去する。
(3) 第3ステップ
第3ステップでは、ピストンをシリンダの第1油室側端部近傍(上端部近傍)に配置し、第2開閉弁を閉弁状態として第1接続具を第4逆止弁に接続し(又は第2開閉弁を開弁状態として第1接続具を第2逆止弁又は第4逆止弁に接続し)、第2接続具を第1油室開閉弁に接続し、加圧された作動油を第2作動油通路に供給し管状部材を経由して第1油室に導入し、第1油室内を流通した作動油を、第1開閉弁を開弁状態として第1作動油通路を介して排出することにより、第1油室内に存在する異物を除去する。
【0016】
本発明に係る油圧装置は、管状部材の第1接続具と第2接続具とを同一の構造又は形状を有するように構成し、第1〜第4逆止弁及び第1、第2油室開閉弁を、管状部材の第1、第2接続具と接続することができるように構成してもよい。この構成によれば、下記のステップ1〜3を有する方法により、第1、第2油室内に存在する異物を除去することができる。この場合、ステップ2、3は、ステップ1の後で実施される。なお、ステップ2、3は、どちらのステップを先に実施してもよい。この構成においても、第1〜第3ステップを有する前記の方法により第1、第2油室内に存在する異物を除去することができるのはもちろんである。
【0017】
(1) ステップ1
ステップ1では、バイパス開閉弁を閉弁状態とし、第1、第2開閉弁を開弁状態とし、第1、第2接続具のうちの一方の接続具を第1油室開閉弁に接続するとともに他方の接続具を第2油室開閉弁に接続する。
(2) ステップ2
ステップ2では、ピストンをシリンダの第2油室側端部近傍(下端部近傍)に配置し、加圧された作動油を、第1作動油通路と第1油室と管状部材とを経由して第2油室に導入し、第2油室内を流通した作動油を、第2作動油通路を介して排出することにより、第2油室内に存在する異物を除去する。
(3) ステップ3
ステップ3では、ピストンをシリンダの第1油室側端部近傍(上端部近傍)に配置し、加圧された作動油を、第2作動油通路と第2油室と管状部材とを経由して第1油室に導入し、第1油室内を流通した作動油を、第1作動油通路を介して排出することにより、第1油室内に存在する異物を除去する。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る油圧装置又は異物を除去する方法によれば、油圧シリンダを含む油圧装置の構造を簡素なものとしつつ、着脱自在の管状部材の第1、第2接続具を第1〜第4逆止弁及び第1、第2油室開閉弁のうちの所定のものに接続するとともに、第1、第2開閉弁及びバイパス開閉弁の開閉状態を所定の態様にセットした上で、第1油室及び第2油室に交互に作動油を供給することにより、第1、第2油室内に滞留する気泡、固体粒子等の異物をすべて効果的に除去することができる。これにより、油圧シリンダの性能ないしは信頼性を高めることができ、例えば油圧シリンダの同調の精度を高める(同調の狂いをなくす)ことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る油圧装置及び該油圧装置に対して作動油を給排する作動油給排装置の概略構成を示す油圧回路図である。
図2】本発明に係る油圧装置の模式的な立面図であり、第2油室内の異物を除去するときの状態を示している。
図3】本発明に係る油圧装置の模式的な立面図であり、第1油室内の異物を除去するときの状態を示している。
図4】本発明に係る油圧装置の模式的な立面図であり、第2油室内の異物を除去するときのもう1つの状態を示している。
図5】本発明に係る油圧装置の模式的な立面図であり、第1油室内の異物を除去するときのもう1つの状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付の図面を参照しつつ、本発明の典型的な実施形態を具体的に説明する。
図1に示すように、本発明の実施形態に係る油圧装置Sは、片ロッド形複動式の油圧シリンダ1を有している。油圧シリンダ1は、略円筒形のシリンダ2と、シリンダ2の中空部(円柱形空間部)に嵌入された略円柱形のピストン3とを有している。この油圧シリンダ1は、シリンダ中心軸が上下方向(鉛直方向)を向くように配置された縦置き型の油圧シリンダである。ピストン3の下端面(ロッド側端面)にはピストンロッド4が連結され、このピストンロッド4は、シリンダ2の下端壁(ロッド側端壁)を貫通してシリンダ外部に伸びている。ピストンロッド4の下端部は、油圧シリンダ1によって、例えば上下方向に移動させられる負荷5(例えば、水門の扉体等)に連結されている。
【0021】
ピストン3は、シリンダ2の中空部内で上下方向(シリンダ中心軸方向)に摺動ないしは滑動することができ、シリンダ2の中空部は、ピストン3によって上下に仕切られ、ピストン3の上側に第1油室6が形成され、ピストン3の下側に第2油室7が形成されている。そして、油圧シリンダ1においては、加圧された作動油が第1油室6に供給されたときには、作動油の圧力によってピストン3及びピストンロッド4が下向きに移動させられ、加圧された作動油が第2油室7に供給されたときには、作動油の圧力によってピストン3及びピストンロッド4が上向きに移動させられ、これによって負荷5が下向き又は上向きに移動させられるようになっている。なお、油圧装置Sは、さらに、後で詳しく説明する油路切換機構8と、可撓性を有するメンテナンスホース9(管状部材)とを有している。
【0022】
油圧シリンダ1に対して、加圧された作動油を該油圧シリンダ1の任意の一方の油室(すなわち、第1油室6又は第2油室7)に供給するとともに、他方の油室(すなわち、第2油室7又は第1油室6)から作動油を排出する作動油給排装置10が設けられている。作動油給排装置10には、4ポート3位置方向制御弁である電磁式の油路切換弁11が設けられている。油路切換弁11の第1ポートP1及び第2ポートP2は、それぞれ、第1作動油通路12及び第2作動油通路13を介して、油圧シリンダ1の第1油室6及び第2油室7に接続されている。また、油路切換弁11の第3ポートP3及び第4ポートP4には、それぞれ第3作動油通路14及び第4作動油通路15が接続され、これらの第3作動油通路14及び第4作動油15の先端(油路切換弁11に接続されていない方の端部)は、作動油を貯留する作動油タンク16内に導入されている。
【0023】
第3作動油通路14の先端には、該第3作動油通路14に吸入される作動油中の固体の異物を除去するオイルフィルタ17が取り付けられ、このオイルフィルタ17は、常時、作動油タンク16内に貯留された作動油に浸漬されている。さらに、第3作動油通路14には、電動機18(又はガソリンエンジン等の原動機)によって駆動される油圧ポンプ19が介設されている。油圧ポンプ19は、作動油タンク16内の作動油を吸入し、加圧して油路切換弁11の第3ポートP3に供給する。作動油の流れ方向に関して、油圧ポンプ19より下流側(油路切換弁側)の第3作動油通路14と第4作動油通路15とを接続する第1バイパス作動油通路20が設けられている。そして、第1バイパス作動油通路20に、油圧ポンプ19から吐出された作動油の圧力を設定値以下に調整するリリーフ弁21が介設されている。
【0024】
油路切換弁11は、油圧シリンダ1への作動油の給排経路を切り換える。詳しくは図示していないが、油路切換弁11は制御装置(図示せず)によって制御されるソレノイド弁であり、油圧ポンプ19によって加圧され第3ポートP3に供給された作動油を、第1作動油通路12を介して油圧シリンダ1の第1油室6に供給する第1の状態と、第2作動油通路13を介して油圧シリンダ1の第2油室7に供給する第2の状態と、油圧シリンダ1には作動油を供給しない第3の状態のいずれかにセットすることができる。
【0025】
第1の状態では、第2油室7内の作動油は、第2作動油通路13と第4作動油通路15とを介して作動油タンク16に還流し、第2の状態では、第1油室6内の作動油は、第1作動油通路12と第4作動油通路15とを介して作動油タンク16に還流する。また、第3の状態では、第1作動油通路12及び第2作動油通路13の油路切換弁側の端部は閉止される。なお、油路切換弁11を、第3の状態では第3作動油通路14と第4作動油通路15とが連通するように構成してもよい。また、油路切換弁11を、第3の状態では第1作動油通路12及び第2作動油通路13が第4作動油通路15と連通するように構成してもよい。
【0026】
第1作動油通路12には、油路切換弁側から油圧シリンダ側に向かって順に、基本的には油圧シリンダ側から油路切換弁側への作動油の流れを係止(阻止)する第1パイロット操作式逆止弁25と、互いに並列に接続された流量調整弁26aと逆止弁26bとで構成される第1逆止弁付流量調整弁26とが直列に介設されている。第1逆止弁付流量調整弁26は、油路切換弁側から油圧シリンダ側への作動油の流れはとくには規制しないが、油圧シリンダ側から油路切換弁側への作動油の流量を調整する。なお、第2作動油通路13に設定圧以上の油圧(パイロット圧)がかかっているときには、第1パイロット操作式逆止弁25は開弁され、第1作動油通路12における油圧シリンダ側から油路切換弁側への作動油の流れを許容する。
【0027】
他方、第2作動油通路13には、油路切換弁側から油圧シリンダ側に向かって順に、基本的には油圧シリンダ側から油路切換弁側への作動油の流れを係止(阻止)する第2パイロット操作式逆止弁27と、互いに並列に接続された流量調整弁28aと逆止弁28bとで構成される第2逆止弁付流量調整弁28とが直列に介設されている。第2逆止弁付流量調整弁28は、油路切換弁側から油圧シリンダ側への作動油の流れはとくには規制しないが、油圧シリンダ側から油路切換弁側への作動油の流量を調整する。なお、第1作動油通路12に設定圧以上の油圧(パイロット圧)がかかっているときには、第2パイロット操作式逆止弁27は開弁され、第2作動油通路13における油圧シリンダ側から油路切換弁側への作動油の流れを許容する。
【0028】
油圧シリンダ1と第1、第2逆止弁付流量調整弁26、28との間において、第1、第2作動油通路12、13には、油圧装置Sの一部をなす油路切換機構8が介設されている。この油路切換機構8は、第1作動油通路12に介設された第1開閉弁30と、第2作動油通路13に介設された第2開閉弁31と、第1、第2開閉弁30、31よりも油路切換弁側の位置で第1作動油通路12と第2作動油通路13とを接続する(連通させる)バイパス油路32と、バイパス油路を開閉するバイパス開閉弁33とを有している。
【0029】
さらに、油路切換機構8は、第1、第2開閉弁30、31より油圧シリンダ側の位置において、それぞれ第1、第2作動油通路12、13に介設された第1、第2逆止弁34、35と、第1、第2開閉弁30、31より油路切換弁側の位置において、それぞれ第1、第2作動油通路12、13に介設された第3、第4逆止弁36、37とを有している。第1〜第4逆止弁34〜37は互いに同一の構造又は形状を有し、それぞれ、対応する作動油通路(第1作動油通路12又は第2作動油通路13)内が外部に対して高圧状態にあるときには閉弁し、基本的には作動油通路内の流体の作動油通路外への流出を係止ないしは阻止するように構成されている。ただし、第1〜第4逆止弁34〜37は、後で説明するメンテナンスホース9の第1、第2接続具41、42が接続されたときには開弁し、作動油通路内の流体の作動油通路外への流出が可能となる。
【0030】
油路切換機構8は、第1、第2作動油通路12、13に介設された一体構造物(多ポートバイパス弁)であってもよい。この場合、例えば金属製の略直方体ブロック(中実の塊状物)状の本体部の内部に、第1作動油通路12の一部をなす(又は第1作動油通路12に介在する第1油路と、第2作動油通路13の一部をなす(又は第2作動油通路13に介在する)第2油路と、バイパス油路32とが、孔ないしは穴の形態で形成される。そして、第1油路に対して第1開閉弁30と第1、第3逆止弁34、36とが設けられ、第2油路に対して第2開閉弁31と第2、第4逆止弁35、37とが設けられ、バイパス油路32に対してバイパス開閉弁33が設けられる。
【0031】
また、作動油給排装置10には、油路切換機構8と第1、第2逆止弁付流量調整弁26、28との間の位置において、第1作動油通路12から分岐する第1分岐油路43と第2作動油通路13から分岐する第2分岐油路44とが設けられている。さらに、一方の端部が第1、第2分岐油路43、44に接続され、他方の端部が油路切換弁11より作動油タンク側の位置で第4作動油通路15に接続された迂回油路45が設けられている。そして、第1分岐油路43には第1分岐油路開閉弁46が介設され、第2分岐油路44には第2分岐油路開閉弁47が介設されている。第1、第2分岐油路43、44及び迂回油路45は、後で説明するように、油圧シリンダ1から排出された作動油を、油路切換機構8より作動油タンク側の種々の油圧機器を迂回して作動油タンク16に還流させるための油路である。
【0032】
なお、第1逆止弁付流量調整弁26を、第1作動油通路12ではなく、第2作動油通路13に介設してもよい。この場合、第1逆止弁付流量調整弁26は、第2パイロット操作式逆止弁27と第2逆止弁付流量調整弁28の間に介設され、かつ逆止弁26bは、油路切換弁側から油圧シリンダ側への作動油の流れを係止するように構成される。
【0033】
油圧シリンダ1のシリンダ2には、第1油室6内が外部に対して高圧状態にあるときには閉止され基本的には第1油室6内の流体の油室外への流出を係止ないしは阻止するように構成された逆止弁からなる第1油室開閉弁51(例えば、エア抜きバルブ)と、第2油室7内が外部に対して高圧状態にあるときには閉止され基本的には第2油室7内の流体の油室外への流出を係止ないしは阻止するように構成された逆止弁からなる第2油室開閉弁52(例えば、エア抜きバルブ)とが付設されている。ただし、第1、第2油室開閉弁51、52は、後で説明するメンテナンスホース9の第1、第2接続具41、42が接続されたときには開弁し、第1、第2油室6、7内の流体の油室外への流出が可能となる。なお、第1油室開閉弁51と第2油室開閉弁52は、互いに同一の構造又は形状を有している。
【0034】
ここで、第1油室開閉弁51はシリンダ2の上端部近傍(キャップ側端部近傍)に配設され、第2油室開閉弁52はシリンダ2の下端部近傍(ロッド側端部近傍)に配設されている。なお、第1、第2作動油通路12、13は、それぞれ、シリンダ中心軸方向に関して、第1、第2油室開閉弁51、52と同じ位置(同じ高さの位置)でシリンダ2に接続されている。また、第1、第2作動油通路12、13は、それぞれ、平面視では(シリンダ中心軸と垂直な平面上では)、シリンダ中心に対して第1、第2油室開閉弁51、52と点対称の位置(シリンダ直径を挟んで対向する位置、すなわちシリンダ直径の両端位置)でシリンダ2に接続されている。
【0035】
メンテナンスホース9の一方の端部には第1接続具41が取り付けられ、他方の端部には第2接続具42が取り付けられている。第1、第2接続具41は互いに同一の構造又は形状を有し、それぞれ、第1〜第4逆止弁34〜37及び第1、第2油室開閉弁51、52のいずれに対しても接続してこれを開弁することができるように構成されている。つまり、メンテナンスホース9は、第1〜第4逆止弁34〜37及び第1、第2油室開閉弁51、52のうちの任意の2つのものを接続して連通させることができる。なお、メンテナンスホース9の第1接続具51を第1〜第4逆止弁34〜37のみに接続してこれを開弁することができるように構成し、第2接続具52を第1、第2油室開閉弁51、52のみに接続してこれを開弁することができるように構成してもよい。ただし、この場合は、第1油室開閉弁51と第2油室開閉弁52とを互いに接続することができないので、後で説明する図4及び図5に示すような異物の除去方法を用いることはできない。
【0036】
以下、油圧装置Sないしは油圧シリンダ1における気泡、固体粒子等の異物の除去方法を具体的に説明する。まず、第1の異物の除去方法を説明する。この第1の異物の除去方法は、メンテナンスホース9の第1接続具51を第1〜第4逆止弁34〜37のみに接続することができるように構成する一方、第2接続具52を第1、第2油室開閉弁51、52のみに接続することができるように構成した場合でも用いることができる。第1の異物の除去方法は、下記の第1〜第3ステップを有する。第2、第3ステップは、第1ステップの後で実施される。なお、第2、第3ステップは、どちらのステップを先に実施してもよい。
【0037】
(1) 第1ステップ
第1ステップでは、バイパス開閉弁33を閉弁状態とする。バイパス開閉弁33は、油圧シリンダ1の稼動時には閉弁され、第1、第2作動油通路12、13のフラッシング(清掃)を行うときに開弁される開閉弁である。したがって、油圧シリンダ1の稼動を停止した後、第1、第2作動油通路12、13のフラッシングを行うことなく油圧シリンダ1内の異物の除去を行う場合は、バイパス開閉弁33を閉弁するための動作は、とくには必要とされない。
【0038】
なお、第1、第2作動油通路12、13のフラッシングは、例えば下記のような手順で行うことができる。まず、第1、第2開閉弁30、31を閉弁状態とし、バイパス開閉弁33を開弁状態とし、第1分岐油路開閉弁46を閉弁状態とし、第2分岐油路開閉弁47を開弁状態とする。この後、油路切換弁11を第1の状態にセットし、油圧ポンプ19によって加圧され第3ポートP3に供給された作動油を、第1ポートP1を経由して第1作動油通路12に供給する。その結果、作動油が、順に、第1作動油通路12(一部)と、バイパス油路32と、第2作動油通路13(一部)と、第2分岐油路44と、迂回油路45と、第4作動油通路15(一部)とを介して作動油タンク16に還流する。
【0039】
次に、第1分岐油路開閉弁46を開弁状態とし、第2分岐油路開閉弁47を閉弁状態とし、油路切換弁11を第2の状態にセットして、油圧ポンプ19によって加圧され第3ポートP3に供給された作動油を、第2ポートP2を経由して第2作動油通路13に供給する。その結果、作動油が、順に、第2作動油通路13(一部)と、バイパス油路32と、第1作動油通路12(一部)と、第1分岐油路43と、迂回油路45と、第4作動油通路15(一部)とを介して作動油タンク16に還流する。これにより、第1、第2作動油通路12、13にフラッシング(清掃)が施される。なお、上記2つのフラッシング操作の順序を逆にしてもよい。
【0040】
(2) 第2ステップ
図2に示すように、第2ステップでは、ピストン3をシリンダ2内で最下位置又はその近傍(第2油室側端部近傍)に配置し、第1開閉弁30を閉弁状態とし、第2開閉弁31を開弁状態とする。また、第1分岐油路開閉弁46を閉弁状態とし、第2分岐油路開閉弁47を開弁状態とする。そして、第1接続具41を第3逆止弁36に接続し、第2接続具42を第2油室開閉弁52に接続する。この後、油路切換弁11を第1の状態にセットし、油圧ポンプ19によって加圧され第3ポートP3に供給された作動油を、第1ポートP1を経由して第1作動油通路12に供給する。その結果、作動油が、第1作動油通路12(一部)とメンテナンスホース9とを経由して第2油室7に導入される。なお、第1接続具41と第2接続具42とが同一の構造ないしは形状を有する場合は、第2接続具42を第3逆止弁36に接続し、第1接続具41を第2油室開閉弁52に接続してもよいのはもちろんである。
【0041】
第2油室7内においては、油室上端部近傍ないしはピストン下端面近傍に気泡が滞留する一方、油室下端部近傍に金属粒子等の固体粒子が滞留する傾向があるが、第2油室7の体積が非常に小さいので、気泡ないしは固体粒子は第2油室7内に比較的密集した状態で滞留している。そして、この状態では、作動油は体積が小さい第2油室7内を横断して高速で流通し、第2作動油通路13に排出される。その結果、第2油室7内に存在する気泡、固体粒子等の異物は、高速で流れる作動油によって第2油室7から第2作動油通路13に排出される。この後、第2作動油通路13内の異物を伴った作動油は、順に、第2分岐油路44と迂回油路45と第4作動油通路15(一部)とを介して作動油タンク16に流入する(図1参照)。かくして、第2油室7内の異物は効果的に除去される。
【0042】
なお、第2ステップにおいて、第1開閉弁30を開弁状態として第1接続具41を第1逆止弁34又は第3逆止弁36に接続してもよい。この場合、ピストン3がシリンダ2内で最下位置又はその近傍に位置し、第1油室6はほぼ最大限に膨張(拡大)した状態にあるので、第1作動油通路12に供給された作動油はほとんどメンテナンスホース9を経由して第2油室7に導入され、第2油室7内の異物は効果的に除去される。
【0043】
(3) 第3ステップ
図3に示すように、第3ステップでは、ピストン3をシリンダ2内で最上位置又はその近傍(第1油室側端部近傍)に配置し、第1開閉弁30を開弁状態とし、第2開閉弁31を閉弁状態とする。また、第1分岐油路開閉弁46を開弁状態とし、第2分岐油路開閉弁47を閉弁状態とする。そして、第1接続具41を第4逆止弁37に接続し、第2接続具42を第1油室開閉弁51に接続する。この後、油路切換弁11を第2の状態にセットし、油圧ポンプ19によって加圧され第3ポートP3に供給された作動油を、第2ポートP2を経由して第2作動油通路13に供給する。その結果、作動油が、第2作動油通路13(一部)とメンテナンスホース9とを経由して第1油室6に導入される。なお、第1接続具41と第2接続具42とが同一の構造ないしは形状を有する場合は、第2接続具42を第4逆止弁37に接続し、第1接続具41を第1油室開閉弁51に接続してもよいのはもちろんである。
【0044】
第1油室6内においては、油室上端部近傍ないしはシリンダ上端面近傍に気泡が滞留する一方、油室下端部近傍ないしはピストン上端面近傍に金属粒子等の固体粒子が滞留する傾向があるが、第1油室6の体積が非常に小さいので、気泡ないしは固体粒子は体積が小さい第1油室6内に比較的密集した状態で滞留している。そして、この状態では、作動油は体積が小さい第1油室6内を横断して高速で流通し、第1作動油通路12に排出される。その結果、第1油室6内に存在する気泡、固体粒子等の異物は、高速で流れる作動油によって第1油室6から第1作動油通路12に排出される。この後、第1作動油通路12内の異物を伴った作動油は、順に、第1分岐油路43と迂回油路45と第4作動油通路15(一部)とを介して作動油タンク16に流入する。かくして、第1油室6内の異物は効果的に除去される。
【0045】
なお、第3ステップにおいて、第2開閉弁31を開弁状態として第1接続具41を第2逆止弁35又は第4逆止弁37に接続してもよい。この場合、ピストン3がシリンダ2内で最上位置又はその近傍に位置し、第2油室7はほぼ最大限に膨張(拡大)した状態にあるので、第2作動油通路13に供給された作動油はほとんどメンテナンスホース9を経由して第1油室6に供給され、第1油室6内の異物は効果的に除去される。
【0046】
以下、第2の異物の除去方法を説明する。なお、第2の異物の除去方法は、メンテナンスホース9の第1接続具51を第1〜第4逆止弁34〜37のみに接続することができるように構成する一方、第2接続具52を第1、第2油室開閉弁51、52のみに接続することができるように構成した場合には用いることができない。この第2の異物の除去方法は、下記のステップ1〜ステップ3を有する。ステップ2、3は、ステップ1の後で実施される。なお、ステップ2、3は、どちらのステップを先に実施してもよい。
【0047】
(1) ステップ1
図4に示すように、ステップ1では、バイパス開閉弁33を閉弁状態とし、第1、第2開閉弁30、31を開弁状態とし、第1接続具41を第1油室開閉弁51に接続するとともに第2接続具42を第2油室開閉弁52に接続する。なお、第1接続具41を第2油室開閉弁52に接続するとともに第2接続具42を第1油室開閉弁51に接続してもよい。
【0048】
(2) ステップ2
ステップ2では、ピストン3をシリンダ2内で最下位置又はその近傍(第2油室側端部近傍)に配置する。そして、第1分岐油路開閉弁46を閉弁状態とし、第2分岐油路開閉弁47を開弁状態とする。この後、油路切換弁11を第1の状態にセットし、油圧ポンプ19によって加圧され第3ポートP3に供給された作動油を、第1ポートP1を経由して第1作動油通路12に供給する。その結果、作動油が、第1作動油通路12と第1油室6とメンテナンスホース9とを経由して第2油室7に導入される。これにより、前記の第1の異物の除去方法の第2ステップの場合と同様に、第2油室7内の異物が効果的に除去される。
【0049】
(3) ステップ3
図5に示すように、ステップ3では、ピストン3をシリンダ2内で最上位置又はその近傍(第1油室側端部近傍)に配置する。そして、第1分岐油路開閉弁46を開弁状態とし、第2分岐油路開閉弁47を閉弁状態とする。この後、油路切換弁11を第2の状態にセットし、油圧ポンプ19によって加圧され第3ポートP3に供給された作動油を、第2ポートP2を経由して第2作動油通路13に供給する。その結果、作動油が、第2作動油通路13と第2油室7とメンテナンスホース9とを経由して第1油室6に導入される。これにより、前記の第1の異物の除去方法の第3ステップの場合と同様に、第1油室6内の異物が効果的に除去される。
【0050】
以上、本発明に係る油圧装置又は異物を除去する方法によれば、油圧シリンダ1を含む油圧装置Sの構造を簡素なものとしつつ、着脱自在のメンテナンスホース9の第1、第2接続具41、42を第1〜第4逆止弁34〜37及び第1、第2油室開閉弁51、52のうちの所定のものに接続するとともに、第1、第2開閉弁30、31、バイパス開閉弁33及び第1、第2分岐油路開閉弁46、47の開閉状態を所定の態様にセットした上で、第1作動油通路12と第2作動油通路13とに交互に作動油を供給することにより、第1、第2油室6、7内に滞留する気泡、固体粒子等の異物をすべて効果的に除去することができる。これにより、油圧シリンダ1の性能ないしは信頼性を高めることができ、例えば油圧シリンダ1の同調の精度を高める(同調の狂いをなくす)ことができる。
【符号の説明】
【0051】
S 油圧装置、P1 第1ポート、P2 第2ポート、P3 第3ポート、P4 第4ポート、1 油圧シリンダ、2 シリンダ、3 ピストン、4 ピストンロッド、5 負荷、6 第1油室、7 第2油室、8 油路切換機構、9 メンテナンスホース(管状部材)、10 作動油給排装置、11 油路切換弁、12 第1作動油通路、13 第2作動油通路、14 第3作動油通路、15 第4作動油通路、16 作動油タンク、17 オイルフィルタ、18 電動機、19 油圧ポンプ、20 バイパス作動油通路、21 リリーフ弁、25 第1パイロット操作式逆止弁、26 第1逆止弁付流量調整弁、26a 流量調整弁、26b 逆止弁、27 第2パイロット操作式逆止弁、28 第2逆止弁付流量調整弁、28a 流量調整弁、28b 逆止弁、30 第1開閉弁、31 第2開閉弁、32 バイパス油路、33 バイパス開閉弁、34 第1逆止弁、35 第2逆止弁、36 第3逆止弁、37 第4逆止弁、41 第1接続具、42 第2接続具、43 第1分岐油路、44 第2分岐油路、45 迂回油路、46 第1分岐油路開閉弁、47 第2分岐油路開閉弁、51 第1油室開閉弁、52 第2油室開閉弁。
図1
図2
図3
図4
図5