特許第6681058号(P6681058)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6681058建築構造物における凍害により形成せしめられた外装材の腐食欠落箇所の凍害用塗装補修方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6681058
(24)【登録日】2020年3月25日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】建築構造物における凍害により形成せしめられた外装材の腐食欠落箇所の凍害用塗装補修方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20200406BHJP
   E04F 13/02 20060101ALI20200406BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20200406BHJP
   B05D 7/14 20060101ALI20200406BHJP
   B05D 1/36 20060101ALI20200406BHJP
【FI】
   E04G23/02 H
   E04F13/02 J
   B05D7/00 L
   B05D7/14 S
   B05D1/36 Z
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-170820(P2018-170820)
(22)【出願日】2018年9月12日
(65)【公開番号】特開2020-41353(P2020-41353A)
(43)【公開日】2020年3月19日
【審査請求日】2018年11月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】316019244
【氏名又は名称】株式会社アル・テックス
(74)【代理人】
【識別番号】100066821
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 建治
(74)【代理人】
【識別番号】100180149
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 修
(72)【発明者】
【氏名】蒲原 敏樹
【審査官】 西村 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−269039(JP,A)
【文献】 特開2006−168279(JP,A)
【文献】 特開2001−295426(JP,A)
【文献】 特開2013−253015(JP,A)
【文献】 特開2015−074564(JP,A)
【文献】 特開2017−166194(JP,A)
【文献】 国際公開第02/038888(WO,A1)
【文献】 特開2018−162651(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/02
E04F 13/02
E04D 7/00
B05D 7/00
B05D 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築構造物における凍害により形成せしめられた外装材の腐食欠落箇所の凍害用塗装補修方法において、
冬季において前記外装材が、融雪等による水分によって前記外装材の内部に含まれている水分が凍結膨張し、前記凍結膨張によって前記外装材の内部が爆裂し、前記の爆裂が原因で剥離が発生し、前記剥離が原因で劣化が進行して凍害により形成せしめられた前記外装材の腐食欠落箇所に、前記欠落箇所の劣化部を除去し、且塗料の付着を良好にせしめるための第1の下地処理作業工程を施し、
前記第1の下地処理作業工程後、繊維質強化プラスチック構造体のマトリクス樹脂と、ガラス繊維集束繊維からなる樹脂塗料を、塗布手段を介して所定の厚さに塗布してプライマー処理層を形成せしめる第2の下塗り処理工程を施し、
前記第2の下塗り処理工程後、前記プライマー処理層の表面部に、着色顔料を添加した樹脂塗料を、塗布手段を介して所定の厚さに塗布して下地材料の健全な部分との色調を整え且耐久性を著しく高める着色・耐久化処理層を形成せしめる第3の中塗り処理工程を施し、
前記第3の中塗り処理工程によって形成せしめられた着色・耐久化処理層の上面部に、アクリルウレタンクリヤー塗料を、塗布手段を介して所定の厚さに塗布してトップコート層を形成せしめる第4の上塗り処理工程を施し、凍害により形成せしめられた前記外装材の腐食欠落箇所を耐久性、耐候性を有し、下地材料の健全な部分との色調をも整えることができるようにしたことを特徴とする、建築構造物における凍害により形成せしめられた外装材の腐食欠落箇所の凍害用塗装補修方法。
【請求項2】
建築構造物における凍害により形成せしめられた外装材の腐食欠落箇所の凍害用塗装補修方法において、
冬季において外装材を構成する屋根を構成する屋根材及び外壁を構成する外壁材に積った積雪の融雪によって、前記屋根材、外壁材の内部に含まれている水分、及び、前記外壁の内部に含まれている水分が凍結膨張し、前記凍結膨張によって前記屋根及び外壁の内部が爆裂し、前記の爆裂が原因で剥離が発生し、前記剥離が原因で劣化が進行して凍害により形成せしめられた前記屋根材及び外壁材の腐食欠落箇所に、前記欠落箇所の劣化部を除去し、且塗料の付着を良好にせしめるための第1の下地処理作業工程を施し、
前記第1の下地処理作業工程後、繊維質強化プラスチック構造体のマトリクス樹脂と、ガラス繊維集束繊維からなる樹脂塗料を、塗布手段を介して所定の厚さに塗布してプライマー処理層を形成せしめる第2の下塗り処理工程を施し、
前記第2の下塗り処理工程後、前記プライマー処理層の表面部に、着色顔料を添加した樹脂塗料を、塗布手段を介して所定の厚さに塗布して下地材料の健全な部分との色調を整え且耐久性を著しく高める着色・耐久化処理層を形成せしめる第3の中塗り処理工程を施し、
前記第3の中塗り処理工程によって形成せしめられた着色・耐久化処理層の上面部に、アクリルウレタンクリヤー塗料を、塗布手段を介して所定の厚さに塗布してトップコート層を形成せしめる第4の上塗り処理工程を施し、凍害により形成せしめられた前記屋根及び外壁等の腐食欠落箇所を耐久性、耐候性を有し、下地材料の健全な部分との色調をも整えることができるようにしたことを特徴とする、建築構造物における凍害により形成せしめられた外装材の腐食欠落箇所の凍害用塗装補修方法。
【請求項3】
前記第3の中塗り処理工程によって形成せしめられた着色・耐久化処理層が、アクリルウレタン塗料の塗布によって形成せしめられていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の建築構造物における凍害により形成せしめられた外装材の腐食欠落箇所の凍害用塗装補修方法。
【請求項4】
前記マトリクス樹脂が、不飽和ポリエステル樹脂又はエポキシ樹脂又はウレタン樹脂からなっていることを特徴とする、請求項1又は2又は3に記載の建築構造物における凍害により形成せしめられた外装材の腐食欠落箇所の凍害用塗装補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冬季において外装材として例えば屋根を構成する屋根材及び外壁を構成する外壁材が、前記屋根に積った積雪の融雪水分もしくは前記外壁の内部に含まれている水分が凍結膨張し、凍結膨張によって前記屋根及び外壁等の内部が爆裂し、前記の爆裂が原因で剥離が発生し、前記剥離が原因で劣化が進行して凍害により形成せしめられた前記屋根材及び外壁材の腐食欠落箇所に、下地処理作業工程を施し、前記下地処理作業工程後、プライマー処理層を形成せしめる下塗り処理工程を施し、さらに色調を整え、且耐久性を十分有する着色・耐久化処理層を形成せしめる中塗り処理工程を施し、さらに前記中塗り処理工程後、トップコート層を形成せしめる上塗り処理工程を施し、3層構造とせしめる建築構造物における凍害により形成せしめられた外装材の腐食欠落箇所の凍害用塗装補修方法の技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、防水用複合被覆体の施工法が、特開2004−84466公報特許公報として開示されている。
【0003】
前記公開特許公報に開示されている防水用複合被覆体の施工法の発明は、土木、建築物等の床面や壁面のライニング工法であって、樹脂組成物とガラス繊維等により繊維強化樹脂層を形成した後3日以上経た後に、密着性を発現させるための下地処理をせずにトップコートを塗布してなる防水ライニング工法に関するものである。
【0004】
さらに、前記従来開示の防水用複合被覆体の施工法は、前記公報の段落番号[0005]に記載のとおり、建築物の屋根、屋上、庇、開放廊下、ベランダ、外壁、地下外壁、室内及び屋外の水層、プール類、工場床等があげられ、材質として、コンクリート、アスファルト、石綿スレート、発砲コンクリート、プラスチック、木材、金属等を基体(A)とし、さらに段落番号[0009]に記載のとおり、前記基体(A)上に、少なくとも繊維強化樹脂層(B)とトップコート樹脂層(C)とを積層してなる防水用複合被覆体の施工方法であって、該防水用複合被覆体の施工方法は、該繊維強化樹脂層(B)形成後少なくとも3日経過後に、密着性を発現させるための下地処理をせずに、トップコート樹脂層(C)を施工することを特徴とする防水用複合被覆体の施工方法(請求項1)である。
【0005】
また、前記した従来開示の公開特許公報に開示されている発明は、段落番号[0046]に記載のとおり、その発明の効果として、本発明の防水用複合被覆体の施工法は、上述の構成よりなるので、耐候性、耐水性等の防水性能や平滑性等の美観に優れるうえに、繊維補強樹脂層形成後も表面のベタツキがなく、一週間以上掛かる壁、柱、扉等の内装建材等の工事や備品などの移動が容易に出来、しかもその後トップコートも密着良く施工できるという効率の良いライニングをすることを可能とし、屋上、駐車場等の建築空間や道路等の床面のライニング工法として有用である。
としたものである。
【0006】
そして、従来開示の防水用複合被覆体の施工法に関する発明の構成要件は、前記基体(A)上に、繊維強化樹脂層(B)とトップコート樹脂層(C)とを積層してなる2層構造に関する防水用複合被覆体の施工法である。
【0007】
さらに、前記従来開示の発明の作用、効果は、上述したように、基体(A)の表面をライニングする工程において、樹脂組成物とガラス繊維等による繊維強化樹脂層(B)を形成して、3日以上経た後、実質的にプライマーを使用せずにトップコート層(C)を積層せしめ、屋上、駐車場等の建築空間や道路等の床面のライニング工法において、耐候性、耐水性等の防水性能や平滑性等の美観に優れ、さらに、効率よくライニングすることが可能となったとされたものである。
【0008】
上記のとおり、従来開示の発明は、耐候性、耐水性等の防水性能や平滑性の美観と、高い効率化を目的として開発されたものであって、下地材との色調を整えたりする着色層を形成せしめる中塗り工程が採用されたものではない。
【0009】
また従来開示の防水用複合被覆体の施工法は、屋根もしくは壁面等が、冬季における著しく気温が下がり、屋根もしくは壁面等に含んでいる水分が凍り、凍結膨張により外壁もしくは屋根等の内部が爆裂し、剥離現象が発生し、劣化の進行によって欠けたり、あるいは陥没によって形成せしめられた大きさが著しく異なる種々様々な形状をした凍害により形成せしめられた腐食欠落箇所を耐久性、耐候性にすぐれ、且色調をも整え、塗装補修を確実且迅速に行うことを目的として創作された発明ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−84466公開公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来、冬季において、建築構造物における外装材である、屋根を構成する屋根材に積った積雪の融雪水分もしくは建築構造物における外壁を構成する外壁材の内部に含まれている水分が爆裂し、前記爆裂が原因で劣化が進行して前記屋根材もしくは外壁材の表面が剥離する現象が多発していた。
【0012】
そして、前記のように、屋根材もしくは外壁材等の表面剥離と云う劣化現象が進行すると、前記した屋根材もしくは外壁材等が欠けたり、あるいは陥没が起き、それらの塗装補修方法として、従来は2層構造(下塗りプラス中上塗り)からなる再塗装処理が施されていた。
【0013】
しかし、前記のような再塗装処理の対処方法では、短期間で欠けたり、あるいは陥没が再発して、工事費の昂騰を招く貼り替え工事を選択せざるを得なかった。
【0014】
そのため、積雪の多い雪国においては、建築構造物における屋根を構成する屋根材や外壁を構成する凍害により形成せしめられた外壁材の腐食欠落箇所が多発し、それらの修繕、修復費用がネックとなっていた。
【0015】
そこで、本発明は、前記のように、雪害等によって発生する部分的な凍害により形成せしめられた腐食欠落箇所を、安価な費用で、簡単且迅速に、耐水性と、耐候性と、屋根材もしくは外壁材等の下地材料の健全な部分の色調と色調を整えることができる低価格で、工事費を著しく節減して塗装補修する施工方法がないかと様々な分野の技術を合せて検討し創作し、本発明を開発するに至った経緯がある。
【0016】
さらに、本発明を創作するに至った経緯を説明すると、下記のとおりである。
【0017】
本発明は、第1工程である下地塗装であるプライマー処理層として、防水性重視の見地から、下地に防水関連の分野の技術であるFRP構造を使用したことである。
【0018】
さらに、本発明は、前記したプライマー処理層の上面部に、着色・耐久化処理層を形成せしめる中塗り工程として、コスト面と耐久性の両立を解消せしめると共に、健全な下地材料の色調とも整えることができるように、アクリルウレタン塗料を使用して本発明を開発するに至った。
【0019】
また、本発明は、前記した第3の着色・耐久化処理層を形成せしめた後、前記着色・耐久化処理層のコスト面と耐久性の両立が出来ると云うメリットを生かして、前記着色・耐久化処理層の上面に、第4のトップコート層を形成せしめるアクリルウレタンクリヤー塗料を塗装せしめることによって、従来施工の通常塗装仕様の着色方法(下塗り+中上塗り)の2層構造と比較して、色あせに明らかな差が生じ、高い耐候性が得られたので、本発明を出願するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明における課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、建築構造物における凍害により形成せしめられた外装材Aの腐食欠落箇所1の凍害用塗装補修方法において、
冬季において前記外装材Aが、融雪等による水分によって前記外装材Aの内部に含まれている水分が凍結膨張し、前記凍結膨張によって前記外装材Aの内部が爆裂し、前記の爆裂が原因で剥離が発生し、前記剥離が原因で劣化が進行して凍害により形成せしめられた前記外装材Aの腐食欠落箇所1に、前記欠落箇所1の劣化部を除去し、且塗料の付着を良好にせしめるための第1の下地処理作業工程を施し、
前記第1の下地処理作業工程後、繊維質強化プラスチック構造体のマトリクス樹脂と、ガラス繊維集束繊維からなる樹脂塗料を、塗布手段を介して所定の厚さに塗布してプライマー処理層aを形成せしめる第2の下塗り処理工程を施し、
前記第2の下塗り処理工程後、前記プライマー処理層aの表面部に、着色顔料を添加した樹脂塗料を、塗布手段を介して所定の厚さに塗布して下地材料の健全な部分との色調を整え且耐久性を著しく高める着色・耐久化処理層bを形成せしめる第3の中塗り処理工程を施し、
前記第3の中塗り処理工程によって形成せしめられた着色・耐久化処理層bの上面部に、アクリルウレタンクリヤー塗料を、塗布手段を介して所定の厚さに塗布してトップコート層cを形成せしめる第4の上塗り処理工程を施し、凍害により形成せしめられた前記外装材Aの腐食欠落箇所1を耐久性、耐候性を有し、下地材料の健全な部分との色調をも整えることができるようにしたことを特徴とする建築構造物における凍害により形成せしめられた外装材の腐食欠落箇所の凍害用塗装補修方法である。
【0021】
課題を解決するための手段として、請求項2に記載の発明は、建築構造物における凍害により形成せしめられた外装材Aの腐食欠落箇所1の凍害用塗装補修方法において、
冬季において外装材Aを構成する屋根dを構成する屋根材2及び外壁eを構成する外壁材3に積った積雪の融雪によって、前記屋根材2、外壁材3の内部に含まれている水分、及び、前記外壁eの内部に含まれている水分が凍結膨張し、前記凍結膨張によって前記屋根d及び外壁eの内部が爆裂し、前記の爆裂が原因で剥離が発生し、前記剥離が原因で劣化が進行して凍害により形成せしめられた前記屋根材2及び外壁材3の腐食欠落箇所1に、前記欠落箇所1の劣化部を除去し、且塗料の付着を良好にせしめるための第1の下地処理作業工程を施し、
前記第1の下地処理作業工程後、繊維質強化プラスチック構造体のマトリクス樹脂と、ガラス繊維集束繊維からなる樹脂塗料を、塗布手段を介して所定の厚さに塗布してプライマー処理層aを形成せしめる第2の下塗り処理工程を施し、
前記第2の下塗り処理工程後、前記プライマー処理層aの表面部に、着色顔料を添加した樹脂塗料を、塗布手段を介して所定の厚さに塗布して下地材料の健全な部分との色調を整え且耐久性を著しく高める着色・耐久化処理層bを形成せしめる第3の中塗り処理工程を施し、
前記第3の中塗り処理工程によって形成せしめられた着色・耐久化処理層bの上面部に、アクリルウレタンクリヤー塗料を、塗布手段を介して所定の厚さに塗布してトップコート層cを形成せしめる第4の上塗り処理工程を施し、凍害により形成せしめられた前記屋根d及び外壁e等の腐食欠落箇所1を耐久性、耐候性を有し、下地材料の健全な部分との色調をも整えることができるようにしたことを特徴とする建築構造物における凍害により形成せしめられた外装材の腐食欠落箇所の凍害用塗装補修方法である。
【0022】
課題を解決するための手段として、請求項3に記載の発明は、前記第3の中塗り処理工程によって形成せしめられた着色・耐久化処理層bが、アクリルウレタン塗料の塗布によって形成せしめられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の建築構造物における凍害により形成せしめられた外装材の腐食欠落箇所の凍害用塗装補修方法である。
【0023】
課題を解決するための手段として、請求項4に記載の発明は、前記マトリクス樹脂が、不飽和ポリエステル樹脂又はエポキシ樹脂又はウレタン樹脂からなっていることを特徴とする請求項1又は2又は3に記載の建築構造物における凍害により形成せしめられた外装材の腐食欠落箇所の凍害用塗装補修方法である。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、上述のとおりの構成なので、建築構造物における外装材である屋根もしくは外壁等に発生した凍結膨張による爆裂が原因の凍害により形成せしめられた腐食欠落箇所のみ、もしくはその周辺個所を、下塗り工程として、繊維質強化プラスチック構造体のマトリクス樹脂と、ガラス繊維集束繊維からなる樹脂塗料を、塗布手段を介して所定の厚さに塗布してプライマー処理層を形成せしめたことによって、下地素地に対し防水塗膜が形成され、寒冷期に爆裂の原因となっていた水分の侵入を防禦する役割を果し、塗装補修を十分に施すことができる優れた効果がある。
【0025】
さらに本発明は、前記プライマー処理層の表面部に、着色顔料を添加した樹脂塗料を、塗布手段を介して所定の厚さに塗布して下地材料の健全な部分との色調を整え且耐久性を著しく高める着色・耐久化処理層を形成せしめたので、下地材料(下地素地)の健全な部分との色調をも整えることができると共に、前記プライマー処理層のFRP構造である繊維質強化プラスチック構造体の樹脂塗料の紫外線による劣化を防止することができる利点がある。
【0026】
また、本発明は、前記着色・耐久化処理層の上面部に、アクリルウレタンクリヤー塗料を、塗布手段を介して所定の厚さに塗布してトップコート層を形成せしめる第4の上塗り処理工程を施すことによって、紫外線防止層を形成し、変色をも防止し、且耐候性と、耐薬品性と、耐水性と、下地材料の健全な部分との色調をも整えることができるようにした利点がある。
【0027】
本発明は、さらに前記のように塗装補修方法が、3層構造としたことによって、前記した凍害により形成せしめられた腐食欠落箇所のみの塗装補修で、屋根材等の高額となる全面貼替え工事をすることなく、簡単且迅速に、しかも安価な費用で工事を行うことができる利点がある。
【0028】
本発明は、上述のとおり3層構造としたことによって、従来の塗装方法である一般的な塗料で下塗りするプライマー処理層では、屋根材等の下地に浸透しにくいため、塗装ごとに剥離してしまう傾向があり、さらに塗膜に薄い部分ができやすいため、防水性塗料でも一定期間しか防水性を保持できないのに対し、本発明のFRP樹脂塗料を使用し、長期間にわたり、強靭な塗膜を形成し、耐水性、耐酸性雨、耐食性にすぐれ、耐塩水性、耐凍害性にもすぐれ、下地のひび割れ等に対する追従性にもすぐれた利点が多数有している。
【0029】
さらに、従来の上塗りとしての中塗り着色層は、前記下塗りのプライマー処理層に使用した同質の塗料を2回塗っていたので、早期に色あせが起きてしまっていた。
【0030】
これに対し、本発明は、中塗りは着色・耐久化処理層とトップコート層の前記した塗料をもって塗装し、着色・耐久化処理層を形成せしめているので、前記した着色・耐久化処理層により、紫外線によるFRP樹脂の劣化を防止し、且UVクリアコートを使用することによって、紫外線防止層を形成し、変色を防止し、耐候性、耐薬品性、耐水性にすぐれた利点を多数有している。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の建築構造物における凍害により形成せしめられた外装材の腐食欠落箇所の凍害用塗装補修方法によって、腐食欠落箇所が塗装補修された建築構造物の一部切欠拡大縦断面図である。
【0032】
図2】同腐食欠落した建築構造物である外壁の塗装補修前の一部切欠斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明の請求項1〜4に記載の発明に関する実施の形態は、共通しているので、一括して以下のとおり説明する。
【0034】
図において、Aは本発明の腐食欠落箇所1に対し、塗装補修を行う建築構造物における外装材であり、該外装材Aは、屋根dであったり、外壁eであったりする。
【0035】
図において、aは冬季において前記外装材Aが、融雪等による水分によって前記外装材Aの内部に含まれている水分が凍結膨張し、前記凍結膨張によって前記外装材Aの内部が爆裂し、前記の爆裂が原因で剥離が発生し、前記剥離が原因で劣化が進行して凍害により形成せしめられた前記外装材Aの腐食欠落箇所1に、前記欠落箇所1の劣化部を除去し、且塗料の付着を良好にせしめるための第1の下地処理作業工程を施し、前記第1の下地処理作業工程後、繊維質強化プラスチック構造体のマトリクス樹脂と、ガラス繊維集束繊維からなる樹脂塗料と、炭素繊維からなる樹脂塗料と、ミルコン(増粘剤)とを材料として、前記腐食欠落箇所1の劣化具合や状況において変動するが、塗布量として、0.2kg〜/mを、塗布手段を介して所定の厚さ(70〜80μ)に塗布して形成せしめられたプライマー処理層である。
【0036】
前記のようにして、塗布し形成せしめられたプライマー処理層aの形成前の第1の下地処理作業工程を施すことによって、前記プライマー処理層aを形成せしめ塗布したFRP構造の樹脂塗料が、前記外装材Aの腐食欠落箇所1の下地材と前記樹脂塗料との密着性と、上塗りの着色・耐久化処理層bとの密着性を極めて良好にし、さらに下地材との防錆処理と防水処理が良好となった。
【0037】
さらに、前記プライマー処理層aによって、屋根dを構成する屋根材2に、雪国(新潟等)等の寒冷期における爆裂の原因となっていた水分の屋根材2や外壁材3等への侵入を未然に防止することができる利点がある。
【0038】
図において、bは前記第2の下塗り処理工程後に、前記プライマー処理層aの表面部に、着色顔料を添加した樹脂塗料である、アクリルウレタン樹脂を、所定量として例えば塗布量0.11〜0.15kg/mを塗布手段を介して所定の厚さ(25〜35μ)に塗布し形成せしめた着色・耐久化処理層である。
【0039】
前記第3の中塗り処理工程である着色・耐久化処理層bによって、下地材料の健全な部分の色調とも整えられると共に、前記のようにアクリルウレタン樹脂塗料(低汚染形セラミック変性ターペン可溶ウレタン樹脂塗料)を使用したので、コスト面と機能面でのバランスが、他の樹脂塗料に比べて良好である。
【0040】
図において、cは前記第3の中塗り処理工程によって形成せしめられた着色・耐久化処理層bの上面部に、アクリルウレタンクリヤー塗料(セラミック変性ターペン可溶ウレタン樹脂クリヤー塗料)を、塗布手段を介して所定の厚さに塗布して形成せしめられたトップコート層である。
【0041】
前記のトップコート層cは、塗布量として、0.11〜0.15kg/mを25〜35μの厚さに塗布して該トップコート層cを形成せしめる。
【0042】
前記トップコート層cの形成によって、クリア色で中塗りの着色・耐久化処理層bに影響せず、日光(紫外線)を反射し、また紫外線吸収剤を配合しているため、着色・耐久化処理層bの劣化および紫外線に弱い前記プライマー処理層aのFRP層を保護する効果を発揮する。
【0043】
本発明は、上記のとおり、従来の2層塗り構造と全く異なり、本発明の凍害用塗装補修方法は、前記したプライマー処理層aと前記したトップコート層cの2点が最も重要な構成要件となっており、前記トップコート層cによって、前記プライマー処理層aとして使用したFRP構造体の樹脂塗料の作用によって、屋根材2もしくは外壁材3の保護と同時に強化を図り、且前記トップコート層cの塗布した樹脂塗料によって、耐候性を向上せしめ、形成塗膜の耐久性を向上せしめることができた。
【0044】
そのため、従来再塗装ができなかった下地素地にも塗装を可能とし、且塗装時の外観も長期間保持することが可能となった。
【0045】
以上、実施形態を図面に基いて説明したが、本発明は、図示例の限りではなく、その技術的思想を逸脱しない範囲において、当業者が通常に行う設計変更、応用バリエーションの範囲を含むことを念のために言及する。
【符号の説明】
【0046】
A 外装材
a プライマー処理層
b 着色・耐久化処理層
c トップコート層
d 屋根
e 外壁
1 腐食欠落箇所
2 屋根材
3 外壁材
図1
図2