特許第6681114号(P6681114)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6681114
(24)【登録日】2020年3月25日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】導電回路の作製方法及び導電回路
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/18 20060101AFI20200406BHJP
   H05K 3/24 20060101ALI20200406BHJP
【FI】
   H05K3/18 B
   H05K3/18 E
   H05K3/18 G
   H05K3/18 J
   H05K3/24 A
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-169827(P2018-169827)
(22)【出願日】2018年9月11日
(65)【公開番号】特開2020-43234(P2020-43234A)
(43)【公開日】2020年3月19日
【審査請求日】2019年8月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000197975
【氏名又は名称】石原ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113712
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 裕弘
(72)【発明者】
【氏名】南原 聡
(72)【発明者】
【氏名】三田 倫広
(72)【発明者】
【氏名】川戸 祐一
(72)【発明者】
【氏名】有村 英俊
【審査官】 齊藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0141665(US,A1)
【文献】 国際公開第2008/016142(WO,A1)
【文献】 特開2009−123408(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C18/00−18/54
H05K1/00−3/46,9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、導体層のパターンとを有する導電回路の作製方法であって、
基材上に接着性樹脂層のパターンを形成する工程と、
銅微粒子が分散媒に分散された銅微粒子分散液から成る液膜を前記接着性樹脂層上に形成する工程と、
前記液膜中の前記分散媒を乾燥して銅微粒子層を形成する工程と、
前記銅微粒子層をシード層として無電解銅めっきを施して導体層のパターンを形成する工程とを備え、
前記基材は、透光性を有する透明基材であり、
前記接着性樹脂層は、前記銅微粒子を前記基材に接着する接着性樹脂を含有し、
前記接着性樹脂は、フェノキシ型エポキシ樹脂とビスフェノール型エポキシ樹脂の混合、フェノキシ型エポキシ樹脂と多官能特殊ノボラック型エポキシ樹脂の混合、及びフェノキシ型エポキシ樹脂とビスフェノール型エポキシ樹脂と多官能エポキシ樹脂の混合からなる群から選ばれるエポキシ樹脂であることを特徴とする導電回路の作製方法。
【請求項2】
基材と、導体層のパターンとを有する導電回路の作製方法であって、
基材上に接着性樹脂層のパターンを形成する工程と、
銅微粒子が分散媒に分散された銅微粒子分散液から成る液膜を前記接着性樹脂層上に形成する工程と、
前記液膜中の前記分散媒を乾燥して銅微粒子層を形成する工程と、
前記銅微粒子層をシード層として無電解銅めっきを施して導体層のパターンを形成する工程とを備え、
前記基材は、透光性を有する透明基材であり、
前記接着性樹脂層は、前記銅微粒子を前記基材に接着する接着性樹脂を含有し、
前記接着性樹脂は、ポリオレフィン樹脂であることを特徴とする導電回路の作製方法。
【請求項3】
前記基材は、ガラス、ポリエチレンテレフタラート、ポリカーボネート及び環状オレフィンコポリマーからなる群から選ばれる透明な絶縁材料から成ることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の導電回路の作製方法。
【請求項4】
前記接着性樹脂層は、黒色物をさらに含有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の導電回路の作製方法。
【請求項5】
前記導体層のパターンは、線幅が5μm以下の線状パターンを有することを特徴とする請求項乃至請求項4のいずれか一項に記載の導電回路の作製方法。
【請求項6】
導体層のパターンを形成する前記工程において、前記銅微粒子層をシード層として前記無電解銅めっきを施した後、無電解ニッケルめっきをさらに施すことを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載の導電回路の作製方法。
【請求項7】
導体層のパターンを形成する前記工程において、前記銅微粒子層をシード層として前記無電解銅めっきを施した後、電気めっきをさらに施すことを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載の導電回路の作製方法。
【請求項8】
基材と、導体層のパターンとを有する導電回路であって、
基材上の接着性樹脂層のパターンと、
前記接着性樹脂層上の銅微粒子層と、
前記銅微粒子層と結合して前記接着性樹脂層に接着された導体層のパターンとを備え、
前記基材は、透光性を有する透明基材であり、
前記接着性樹脂層は、前記銅微粒子層の銅微粒子を前記基材に接着する接着性樹脂を含有し、
前記接着性樹脂は、フェノキシ型エポキシ樹脂とビスフェノール型エポキシ樹脂の混合、フェノキシ型エポキシ樹脂と多官能特殊ノボラック型エポキシ樹脂の混合、及びフェノキシ型エポキシ樹脂とビスフェノール型エポキシ樹脂と多官能エポキシ樹脂の混合からなる群から選ばれるエポキシ樹脂であり、
前記導体層は、前記銅微粒子層をシード層とする無電解銅めっきによって形成される金属の層を有することを特徴とする導電回路。
【請求項9】
基材と、導体層のパターンとを有する導電回路であって、
基材上の接着性樹脂層のパターンと、
前記接着性樹脂層上の銅微粒子層と、
前記銅微粒子層と結合して前記接着性樹脂層に接着された導体層のパターンとを備え、
前記基材は、透光性を有する透明基材であり、
前記接着性樹脂層は、前記銅微粒子層の銅微粒子を前記基材に接着する接着性樹脂を含有し、
前記接着性樹脂は、ポリオレフィン樹脂であり、
前記導体層は、前記銅微粒子層をシード層とする無電解銅めっきによって形成される金属の層を有することを特徴とする導電回路。
【請求項10】
前記基材は、ガラス、ポリエチレンテレフタラート、ポリカーボネート及び環状オレフィンコポリマーからなる群から選ばれる透明な絶縁材料から成ることを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の導電回路。
【請求項11】
前記接着性樹脂層は、黒色物をさらに含有することを特徴とする請求項8乃至請求項10のいずれか一項に記載の導電回路。
【請求項12】
前記導体層のパターンは、線幅が5μm以下の線状パターンを有することを特徴とする請求項乃至請求項11のいずれか一項に記載の導電回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電回路の作製方法及びその作製方法で作製される導電回路に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンやタブレット端末等にタッチパネルが使われている。タッチパネルは、ディスプレイとタッチセンサを統合した電子部品である。タッチセンサには、ディスプレイの視認性を確保するために透明導電回路が用いられる。透明導電回路は、透明に見える電気回路である。従来から、ITO(インジウム−錫酸化物)から成る透明導電膜を有する透明導電回路が知られている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、このような透明導電回路は、ITOから成る導電膜の電気抵抗が高いので、タッチセンサの大型化に対応することが困難である。
【0003】
ITOを用いずに、金属膜の線状パターンから成る透明導電膜を有するタッチセンサが知られている(例えば、特許文献2参照)。金属膜の線状パターンは、例えばメッシュ状であり、肉眼で透明に見えるように細く形成される。しかしながら、この透明導電膜は、作製においてエッチングによって金属膜の不要部分を除去する工程を有するので、作製が容易ではなく、また、エッチングで発生する廃液の処理等にコストがかかる。
【0004】
透明導電回路における基材は、透光性を有する透明基材である。透明基材は、表面を粗化すると光が乱反射するので、表面は平滑であることが望ましい。このため、金属膜の線状パターンを平滑な透明基材上に形成する場合、金属膜は、透明基材への密着性の確保が問題になり、透明基材上に形成することが容易ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−291726号公報
【特許文献2】特開2015−65376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題を解決するものであり、導電回路の作製方法及び導電回路において、基材が透明基材であっても、金属から成る導体層のパターンをその基材上に容易に形成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の導電回路の作製方法は、基材と、導体層のパターンとを有する導電回路の作製方法であって、基材上に接着性樹脂層のパターンを形成する工程と、銅微粒子が分散媒に分散された銅微粒子分散液から成る液膜を前記接着性樹脂層上に形成する工程と、前記液膜中の前記分散媒を乾燥して銅微粒子層を形成する工程と、前記銅微粒子層をシード層として無電解銅めっきを施して導体層のパターンを形成する工程とを備え、前記接着性樹脂層は、前記銅微粒子を前記基材に接着する接着性樹脂を含有することを特徴とする。
【0008】
この導電回路の作製方法において、前記基材は、透光性を有することが好ましい。
【0009】
この導電回路の作製方法において、前記基材は、ガラス、ポリエチレンテレフタラート、ポリカーボネート及び環状オレフィンコポリマーからなる群から選ばれる透明な絶縁材料から成ることが好ましい。
【0010】
この導電回路の作製方法において、前記接着性樹脂層は、黒色物をさらに含有することが好ましい。
【0011】
この導電回路の作製方法において、前記導体層のパターンは、線幅が5μm以下の線状パターンを有することが好ましい。
【0012】
この導電回路の作製方法において、前記接着性樹脂は、エポキシ樹脂、ポリオレフィン樹脂及びポリアミド樹脂からなる群から選ばれる合成樹脂であることが好ましい。
【0013】
この導電回路の作製方法において、導体層のパターンを形成する前記工程において、前記銅微粒子層をシード層として前記無電解銅めっきを施した後、無電解ニッケルめっきをさらに施してもよい。
【0014】
この導電回路の作製方法において、導体層のパターンを形成する前記工程において、前記銅微粒子層をシード層として前記無電解銅めっきを施した後、電気めっきをさらに施してもよい。
【0015】
本発明の導電回路は、基材と、導体層のパターンとを有するものであって、基材上の接着性樹脂層のパターンと、前記接着性樹脂層上の銅微粒子層と、前記銅微粒子層と結合して前記接着性樹脂層に接着された導体層のパターンとを備え、前記接着性樹脂層は、前記銅微粒子層の銅微粒子を前記基材に接着する接着性樹脂を含有し、前記導体層は、前記銅微粒子層をシード層とする無電解銅めっきによって形成される金属の層を有することを特徴とする。
【0016】
この導電回路において、前記基材は、透光性を有することが好ましい。
【0017】
この導電回路において、前記基材は、ガラス、ポリエチレンテレフタラート、ポリカーボネート及び環状オレフィンコポリマーからなる群から選ばれる透明な絶縁材料から成ることが好ましい。
【0018】
この導電回路において、前記接着性樹脂層は、黒色物をさらに含有することが好ましい。
【0019】
この導電回路において、前記導体層のパターンは、線幅が5μm以下の線状パターンを有することが好ましい。
【0020】
この導電回路において、前記接着性樹脂は、エポキシ樹脂、ポリオレフィン樹脂及びポリアミド樹脂からなる群から選ばれる合成樹脂であることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の導電回路の作製方法によれば、銅微粒子分散液を用いるので、印刷法等によって銅微粒子層を形成することができる。その銅微粒子層をシード層として無電解銅めっきによって導体層のパターンを形成するので、金属から成る導体層のパターンを容易に形成することができる。本発明の導電回路によれば、接着性樹脂層が銅微粒子層の銅微粒子を基材に接着するので、基材が透明基材であっても、銅微粒子層をシード層とする無電解銅めっきによって形成される導体層は、接着性樹脂層を介して基材との密着性が確保される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】(a)〜(e)は本発明の一実施形態に係る導電回路の作製方法を時系列順に示す断面構成図。
図2】同導電回路の断面構成図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の一実施形態に係る導電回路の作製方法を図1(a)〜(e)を参照して説明する。図1(e)に示すように、この方法は、導電回路1を作製する方法である。導電回路1は、基材2と、導体層5のパターンとを有する。図1(e)は、導電回路1の断面構成を示しており、導電回路1において、導体層5のパターンは、平面視における回路パターンである。
【0024】
図1(a)に示すように、基材2は、材料を板状に形成したものである。本実施形態では、基材2は、透光性を有し、透明な絶縁材料から成る。その透明な絶縁材料は、例えば、ガラスであり、ポリエチレンテレフタラート、ポリカーボネート、又は環状オレフィンコポリマー等であってもよい。
【0025】
先ず、図1(b)に示すように、基材2上に接着性樹脂層3のパターンが形成される。接着性樹脂層3は、接着性樹脂を含有する。接着性樹脂は、後述する銅微粒子を基材2に接着する樹脂である。
【0026】
接着性樹脂層3に含有される接着性樹脂は、例えば、エポキシ樹脂である。接着性樹脂をポリオレフィン樹脂又はポリアミド樹脂(ナイロン樹脂)としてもよい。
【0027】
本実施形態では、接着性樹脂層3は、黒色物をさらに含有する。その黒色物は、例えば、炭素微粒子(カーボンブラック)であり、接着性樹脂層3を黒くする。炭素微粒子の粒径は、例えば、BET換算粒径で13nm〜24nmであり、それに限定されない。また、黒色物は、染料、顔料、又は黒色樹脂であってもよい。
【0028】
接着性樹脂層3のパターンは、例えば、溶媒中に溶解した接着性樹脂をインクとして用い、印刷法によって基材2上に形成される。また、ナノインプリント法などで溝を形成した基材2に、溶媒中に溶解した接着性樹脂をスキージなどで埋め込んでもいい。なお、接着性樹脂層3は、単層に限定されず、成分の異なる複数層を積層してもよい。
【0029】
そして、図1(c)に示すように、銅微粒子分散液から成る液膜4が接着性樹脂層3上に形成される。その銅微粒子分散液は、銅微粒子41が分散媒42に分散されている。
【0030】
銅微粒子41は、例えば、メジアン径(中心粒子径)が1nm以上100nm未満のナノ粒子である。銅微粒子41は分散媒42に分散されればよく、銅微粒子41の粒径は限定されない。銅微粒子分散液に、銅微粒子41を分散媒42中で分散させる分散剤を添加してもよい。
【0031】
分散媒42は、例えば、プロトン性分散媒又は比誘電率が30以上の非プロトン性の極性分散媒である。分散剤は、銅微粒子41を分散媒中で分散させるものであり、例えば、少なくとも1個の酸性官能基を有し、分子量が200以上100000以下の化合物又はその塩である。
【0032】
プロトン性分散媒としては、例えば、3−メトキシ−3−メチルブタノール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル、2−オクタノール、2−メチルペンタン−2,4−ジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、ソルビトール等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
比誘電率が30以上の非プロトン性極性分散媒としては、例えば、プロピレンカーボネート、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ヘキサメチルフォスフォラミド、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、ニトロベンゼン、N、N−ジエチルホルムアミド、N、N−ジメチルアセトアミド、フルフラール、γ−ブチロラクトン、エチレンスルファイト、スルホラン、ジメチルスルホキシド、スクシノニトリル、エチレンカーボネート等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
分散剤は、例えば、リン酸基、ホスホン酸基、スルホン酸基、硫酸基、又はカルボキシル基等を酸性官能基として有する化合物である。
【0035】
このような銅微粒子分散液から成る液膜4は、例えば、グラビアオフセット印刷や付着力コントラスト印刷のような印刷法によって形成される。液膜4は接着性樹脂層3上に形成され、接着性樹脂層3がパターンを有するので、液膜4も同じパターンを有する。
【0036】
そして、液膜4中の分散媒42を乾燥して、図1(d)に示すように、銅微粒子層43が形成される。
【0037】
液膜4の乾燥によって、銅微粒子41が接着性樹脂層3上に残り、銅微粒子41から成る銅微粒子層43が接着性樹脂層3上に形成される。液膜4がパターンを有するので、銅微粒子層43も同じパターンを有する。銅微粒子層43は、接着性樹脂層3に接着される。接着性樹脂層3の接着性樹脂は、硬化又は溶媒の蒸発によって、接着力が維持される。
【0038】
そして、図1(e)に示すように、銅微粒子層43をシード層として無電解銅めっきを施して導体層5のパターンが形成される。銅微粒子層43がパターンを有するので、導体層5も同じパターンを有する。
【0039】
この無電解銅めっきにおいて、銅微粒子層43は、めっき液に含まれる還元剤の酸化反応に対して触媒活性なシード層となる。
【0040】
導体層5は、複数の金属層を有してもよい。例えば、導体層5のパターンを形成する工程において、銅微粒子層43をシード層として無電解銅めっきを施した後、無電解ニッケルめっきをさらに施してもよい。ニッケルは酸化によって黒色化するので、導体層5の表面に入射する光の反射を低減することができる。
【0041】
また、導体層5のパターンを形成する工程において、銅微粒子層43をシード層として無電解銅めっきを施した後、電気めっきをさらに施してもよい。
【0042】
電気めっきにおいて、無電解銅めっきが施された銅微粒子層43は、めっき液に浸漬され、陰極となる。電気めっきにおけるめっき金属は、銅、ニッケル、錫、クロム、パラジウム、金、ビスマス、コバルト、鉄、銀、鉛、白金、イリジウム、亜鉛、インジウム、ルテニウム、ロジウム等が挙げられるが、これらに限定されない。電気めっきは、導体層5の厚さを増大する。また、この電気めっきにおいて、例えば、めっき金属を金とすることによって、導体層5の防蝕効果が得られる。
【0043】
本実施形態では、導体層5のパターンは、線幅が5μm以下の線状パターンを有する。
【0044】
導体層5の線状パターンを細く形成することによって、導体層5が肉眼で透明に見える。本実施形態の導電回路の作製方法は、銅微粒子分散液を用いるので、線幅が5μm以下の線状パターンを形成することができる。導電回路1において、導体層5が線幅が5μm以下の線状パターンを有する部分は、透明感がいっそう向上する。線幅が細いと電気抵抗が高くなるので、線状パターンの線幅は、例えば1〜5μm程度とされる。
【0045】
以上、本実施形態に係る導電回路の作製方法によれば、銅微粒子分散液を用いるので、印刷法等によって銅微粒子層43を形成することができる。その銅微粒子層43をシード層として無電解銅めっきによって導体層5のパターンを形成するので、エッチングの工程が不要であり、金属から成る導体層5のパターンを容易に形成することができる。
【0046】
上記のように作製される導電回路1について、図2を参照して説明する。導電回路1は、基材2と、導体層5のパターンとを有する電気回路である。この導電回路1は、基材2上の接着性樹脂層3のパターンと、接着性樹脂層3上の銅微粒子層43と、導体層5のパターンとを備える。導体層5のパターンは、銅微粒子層43と結合して接着性樹脂層3に接着されている。接着性樹脂層3は、接着性樹脂を含有する。接着性樹脂は、銅微粒子層43の銅微粒子を基材2に接着する樹脂である。導体層5は、銅微粒子層43をシード層とする無電解銅めっきによって形成される金属の層を有する。
【0047】
なお、銅微粒子層43は、無電解銅めっきによって導体層5と一体化するが、導体層5と接着性樹脂層3との境界において、接着性樹脂層3に接着された銅微粒子の痕跡が残る。
【0048】
導体層5は、銅微粒子層43をシード層とする無電解銅めっきによって形成された層の上に、同一又は異なるめっき金属によるめっき層をさらに有してよい。
【0049】
基材2は、材料を板状に形成したものである。本実施形態では、基材2は、透光性を有し、透明な絶縁材料から成る。その透明な絶縁材料は、例えば、ガラスであり、ポリエチレンテレフタラート、ポリカーボネート、又は環状オレフィンコポリマー等であってもよい。
【0050】
接着性樹脂層3に含有される接着性樹脂は、例えば、エポキシ樹脂である。接着性樹脂をポリオレフィン樹脂又はポリアミド樹脂(ナイロン樹脂)としてもよい。エポキシ樹脂を用いる場合は、硬化剤が添加される。
【0051】
本実施形態では、接着性樹脂層3は、黒色物をさらに含有する。その黒色物は、例えば、炭素微粒子(カーボンブラック)であり、接着性樹脂層3を黒くする。炭素微粒子の粒径は、例えば、BET換算粒径で13nm〜24nmであり、それに限定されない。また、黒色物は、染料、顔料、又は黒色樹脂であってもよい。
【0052】
本実施形態では、導体層5のパターンは、線幅が5μm以下の線状パターンを有する。
【0053】
上記のように構成された導電回路1は、接着性樹脂層3が銅微粒子層43の銅微粒子を基材2に接着する。導体層5は、銅微粒子層43をシード層とする無電解銅めっきによって形成される金属の層を有するので、基材が透明基材であっても、接着性樹脂層3を介して基材2との密着性が確保される。
【0054】
また、接着性樹脂層3に含有される黒色物が光を吸収するので、導電回路1は、基材2の側から見たとき、導体層5の金属によるキラキラ光る反射が防がれる。
【0055】
本発明の導電回路の作製方法を用い、実施例として導電回路1を作製した。
【実施例1】
【0056】
基材2としてガラスを板状に成形したものを用いた。基材2の表面は、平滑であり、粗化していない。接着性樹脂としてフェノキシ型エポキシ樹脂(三菱ケミカル(株)製、商品名「jER1256」)とビスフェノール型エポキシ樹脂(三菱ケミカル(株)製、商品名「jER828」)の混合を用いた。その混合割合は、95:5とした。そのエポキシ樹脂に硬化剤(三菱ケミカル(株)製、2−エチル−4−メチルイミダゾール、商品名「EMI24」)を添加した。硬化剤の添加量は、エポキシ樹脂固形分重量の0.5〜1重量%である。黒色物として炭素微粒子(カーボンブラック)を用いた。印刷法によって基材2上に接着性樹脂層3を形成した。メジアン径(中心粒子径)40nmの銅微粒子を含有する銅微粒子分散液(石原ケミカル(株)製)を用いて、印刷法により接着性樹脂層3上に銅微粒子分散液から成る液膜4を形成した。その液膜4中の分散媒42を加熱乾燥し、銅微粒子層43を形成した。接着性樹脂層3に接着された銅微粒子層43をシード層として無電解銅めっきを施した。無電解銅めっきは可能であり、めっき金属から成る導体層5のパターンが形成された。
【0057】
導体層5の密着性をクロスカット法(JIS K5600)で試験した。この試験において、所定の面積を有する導体層5の試験面に100マスの格子パターンを切り込み、粘着テープを貼り付け、粘着テープを引き剥がし、試験面を観察した。100マスのうち剥離しなかったマスは、100マスであった。
【実施例2】
【0058】
接着性樹脂としてフェノキシ型エポキシ樹脂(三菱ケミカル(株)製、商品名「jER1256」)と多官能特殊ノボラック型エポキシ樹脂(三菱ケミカル(株)製、商品名「jER157S70」)の混合を用いた。その混合割合は95:5とした。そのエポキシ樹脂に実施例1と同じ硬化剤を添加した。それ以外の条件は実施例1と同じとした。接着性樹脂層3に接着された銅微粒子層43をシード層として無電解銅めっきを施した。無電解銅めっきは可能であり、めっき金属から成る導体層5のパターンが形成された。
【0059】
実施例1と同様に、導体層5の密着性をクロスカット法で試験した。100マスのうち剥離しなかったマスは、100マスであった。
【実施例3】
【0060】
接着性樹脂としてフェノキシ型エポキシ樹脂(三菱ケミカル(株)製、商品名「jER1256」)とビスフェノール型エポキシ樹脂(三菱ケミカル(株)製、商品名「jER828」)と多官能エポキシ樹脂(三菱瓦斯化学(株)製、商品名「TETRAD−X」)の混合を用いた。その混合割合は、45:5:50とした。そのエポキシ樹脂に実施例1と同じ硬化剤を添加した。それ以外の条件は実施例1と同じとした。接着性樹脂層3に接着された銅微粒子層43をシード層として無電解銅めっきを施した。無電解銅めっきは可能であり、めっき金属から成る導体層5のパターンが形成された。
【0061】
導体層5の密着性をクロスカット法で試験した。100マスのうち剥離しなかったマスは、100マスであった。
【実施例4】
【0062】
接着性樹脂としてポリアミド樹脂(ナイロン樹脂)(東亜合成(株)製、商品名「アロンマイティFS−175SV10」)を用いた。硬化剤は不要である。それ以外の条件は実施例1と同じとした。接着性樹脂層3に接着された銅微粒子層43をシード層として無電解銅めっきを施した。無電解銅めっきは可能であり、めっき金属から成る導体層5のパターンが形成された。
【0063】
導体層5の密着性をクロスカット法で試験した。100マスのうち剥離しなかったマスは、100マスであった。
【実施例5】
【0064】
基材2としてPET(ポリエチレンテレフタラート)を板状に成形したものを用いた。接着性樹脂として実施例1と同じエポキシ樹脂を用いた。そのエポキシ樹脂に硬化剤(三菱ケミカル(株)製、商品名「YN100」)を添加した。それ以外の条件は実施例1と同じとした。接着性樹脂層3に接着された銅微粒子層43をシード層として無電解銅めっきを施した。無電解銅めっきは可能であり、めっき金属から成る導体層5のパターンが形成された。
【0065】
導体層5の密着性をクロスカット法で試験した。100マスのうち剥離しなかったマスは、100マスであった。
【実施例6】
【0066】
接着性樹脂として変性ポリオレフィン樹脂(ユニチカ(株)製、商品名「アローベースSD−1200」)を用いた。硬化剤は不要である。それ以外の条件は実施例5と同じとした。接着性樹脂層3に接着された銅微粒子層43をシード層として無電解銅めっきを施した。無電解銅めっきは可能であり、めっき金属から成る導体層5のパターンが形成された。
【0067】
導体層5の密着性をクロスカット法で試験した。100マスのうち剥離しなかったマスは、100マスであった。
【実施例7】
【0068】
接着性樹脂として実施例6とは異なる変性ポリオレフィン樹脂(ユニチカ(株)製、商品名「アローベースSD−1205J2」)を用いた。それ以外の条件は実施例6と同じとした。接着性樹脂層3に接着された銅微粒子層43をシード層として無電解銅めっきを施した。無電解銅めっきは可能であり、めっき金属から成る導体層5のパターンが形成された。
【0069】
導体層5の密着性をクロスカット法で試験した。100マスのうち剥離しなかったマスは、100マスであった。
【実施例8】
【0070】
接着性樹脂として実施例6、7とは異なる変性ポリオレフィン樹脂(ユニチカ(株)製、商品名「アローベースSD−1210J2」)を用いた。それ以外の条件は実施例6と同じとした。接着性樹脂層3に接着された銅微粒子層43をシード層として無電解銅めっきを施した。無電解銅めっきは可能であり、めっき金属から成る導体層5のパターンが形成された。
【0071】
導体層5の密着性をクロスカット法で試験した。100マスのうち剥離しなかったマスは、100マスであった。
【0072】
上記の実施例1〜8から、接着性樹脂層3を形成することによって、接着性樹脂層3に接着された銅微粒子層43をシード層として無電解銅めっきを施すことができ、密着性を有する導体層5を形成できることが確認された。
【0073】
比較例として、接着性樹脂層3を省略して試験を行った。
【0074】
(比較例1)
基材としてガラスを板状に成形したものを用いた。基材の表面は、平滑であり、粗化していない。メジアン径(中心粒子径)40nmの銅微粒子を含有する銅微粒子分散液(石原ケミカル(株)製)を用いて、印刷法により基材上に銅微粒子分散液から成る液膜を形成した。その液膜中の分散媒を加熱乾燥し、銅微粒子層を形成した。その銅微粒子層をシード層として無電解銅めっきを施した。しかし、めっき中にめっき金属が基材から剥離し、めっき金属から成る導体層を形成することができなかった。
【0075】
(比較例2)
基材としてPET(ポリエチレンテレフタラート)を板状に成形したものを用いた。それ以外の条件は比較例1と同じとした。めっき中にめっき金属が基材から剥離し、めっき金属から成る導体層を形成することができなかった。
【0076】
上記の比較例1、2から、接着性樹脂層を形成しない場合、導体層の基材に対する密着性が十分でなく、無電解銅めっきを施すことができないことが確認された。
【0077】
なお、本発明は、上記の実施形態の構成に限られず、発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、例えば、基材2は、透明基材でなくても構わない。また、基材2の形状は、板状に限られず、任意の3次元形状であってもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 導電回路
2 基材
3 接着性樹脂層
4 液膜
41 銅微粒子
42 分散媒
43 銅微粒子層
5 導体層
図1
図2