(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6681135
(24)【登録日】2020年3月25日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】検眼鏡の改良
(51)【国際特許分類】
A61B 3/10 20060101AFI20200406BHJP
【FI】
A61B3/10 300
【請求項の数】8
【外国語出願】
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-94973(P2014-94973)
(22)【出願日】2014年5月2日
(65)【公開番号】特開2014-217756(P2014-217756A)
(43)【公開日】2014年11月20日
【審査請求日】2017年4月27日
(31)【優先権主張番号】1307936.3
(32)【優先日】2013年5月2日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】509012991
【氏名又は名称】オプトス ピーエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】ゴンサロ ムヨ
(72)【発明者】
【氏名】デレク スワン
【審査官】
山口 裕之
(56)【参考文献】
【文献】
特表2009−543585(JP,A)
【文献】
特表2006−502443(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/095620(WO,A1)
【文献】
特表2010−508932(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0143391(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼(22)の網膜を走査するための走査レーザ検眼鏡(10)であって、
光ビーム(13)を照射する光源(12)と、
複数の走査リレー要素と、
前記複数の走査リレー要素の少なくともいくつかの走査リレー要素の収差の矯正を与えるよう規定される形状を有すると共に、前記複数の走査リレー要素の少なくともいくつかの走査リレー要素の収差の矯正を与えるように前記走査レーザ検眼鏡(10)の中に位置される静的収差矯正要素(30)と、
を具えており、
前記光源(12)及び前記複数の走査リレー要素が、眼(22)の瞳孔点における見かけの点光源から眼の網膜まで伝えられる前記光ビーム(13)の2次元走査を与え、
前記静的収差矯正要素(30)は、前記眼の瞳孔点における前記見かけの点光源から前記眼(22)の網膜までの前記光ビーム(13)の伝達が維持されるように配置されており、
前記静的収差矯正要素(30)が、前記光ビーム(13)の位相を変更して、前記複数の走査リレー要素の少なくともいくつかの走査リレー要素の収差の矯正を与えるように、構成され、
前記静的収差矯正要素(30)が、前記静的収差矯正要素(30)の長軸及び短軸に沿った空間的に変動する前記静的収差矯正要素(30)の厚さの結果である前記静的収差矯正要素(30)の1以上の光学的特性を課すことによって収差の矯正を与えるように、構成される、
ことを特徴とする走査レーザ検眼鏡。
【請求項2】
前記静的収差矯正要素(30)の深さが、少なくとも1の所定の数学関数によって規定されることを特徴とする請求項1に記載の走査レーザ検眼鏡。
【請求項3】
前記所定の数学関数が、少なくとも1の多項式関数を具えることを特徴とする請求項2に記載の走査レーザ検眼鏡。
【請求項4】
前記所定の数学関数が、Nを級数の多項式係数の番号とし、aiを多項式の項piのi番目の係数とすると、式
【数1】
を具えており、
当該多項式は、x及びyのべき級数であり、初項がx、第2項がy、第3項がx*x、第4項がx*y、第5項がy*yであることを特徴とする請求項
3に記載の走査レーザ検眼鏡。
【請求項5】
前記静的収差矯正要素(30)の前記走査レーザ検眼鏡(10)の中の位置が、前記静的収差矯正要素の長軸が前記複数の走査リレー要素の楕円ミラーの前記長軸と略平行となるように、選択されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の走査レーザ検眼鏡。
【請求項6】
前記静的収差矯正要素(30)が、前記走査リレー要素の第1の走査要素(14)に設けられた窓(32)に取り付けられ、又は当該窓(32)の代わりに設けられていることを特徴とする請求項1に記載の走査レーザ検眼鏡。
【請求項7】
前記静的収差矯正要素(30)が、前記光ビーム(13)の位相を変更するように構成される透過位相マスクを具えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の走査レーザ検眼鏡。
【請求項8】
前記静的収差矯正要素(30)が、前記複数の走査リレー要素の少なくともいくつかの走査リレー要素の収差の矯正及び眼の収差の矯正を与えるよう規定される形状を有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の走査レーザ検眼鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検眼鏡の改良に関し、特に、検眼鏡システムによって導入される像の収差の矯正に関する。
【背景技術】
【0002】
検眼鏡は、一般に、光線源から対象者の網膜の一部に光線を向け、検眼鏡の対物面と一致し、対象者の網膜の一部から反射した光線を検出器で集めるためのシステムを具える。多くの光学要素及び走査要素、集合的に走査リレー要素が、光線を向け且つ集めるのに一般的に使用され、集められた光線を使用して、対象者の網膜の一部の像を形成する。走査リレー要素の光学的特性により、特に広視野走査リレー要素と結び付く場合に、検眼鏡システムの中に収差が存在する。この結果として、網膜空間情報が失われ、あるいは理論的に可能なものよりも低忠実度の形式で記録される可能性がある。特に、検眼鏡によって導入される像の周囲の部分で「ぼやけ」及び減光が見られ、望むものよりも低品質の像をもたらす。
【発明の概要】
【0003】
本発明の第1の態様によれば、眼の網膜を走査するための走査レーザ検眼鏡が提供されており、この検眼鏡は、ビーム光を照射する光源と、複数の走査リレー要素と、走査リレー要素の少なくともいくつかの収差の矯正を与えるよう規定される形状、及び走査リレー要素の少なくともいくつかの収差の矯正を与えるよう選択される検眼鏡の中の位置を有する静的収差矯正要素と、を具えており、光源及び走査リレー要素が、眼の瞳孔点における見かけの点光源から眼の網膜まで伝えられるビーム光の2次元走査を与え、前記位置が、眼の瞳孔点における見かけの点光源から眼の網膜までのビーム光の伝達を維持する。
【0004】
静的収差矯正要素の形状が、当該要素の長軸及び短軸に沿って空間的に変動する深さを有するよう規定される。長軸及び短軸に沿った静的収差矯正要素の深さが、少なくとも1の所定の数学関数によって規定される。所定の数学関数が、少なくとも1の多項式関数を具える。所定の数学関数が、多項式関数の組み合わせを具える。所定の数学関数が、Nを級数の多項式係数の番号とし、a
iを多項式の項p
iのi番目の係数とすると、式
を具えている。当該多項式は、x及びyのべき級数である。初項から順にx、y、x*x、x*y、y*y等のように続く。
【0005】
静的収差矯正要素は、この要素の長軸に沿って数ミクロンから数百ミクロンまで変動する深さを有する。静的収差矯正要素は、当該要素の長軸に沿って例えば130ミクロンといった数ミクロンから数百ミクロンまで変動する最大垂下量を有する。静的収差矯正要素は、当該要素の短軸に沿って例えば50ミクロンといった数ミクロンから数十ミクロンまで変動する最大垂下量を有する。静的収差矯正要素は、例えば1.5mmといったミリメートルオーダーの幅を有する。静的収差矯正要素は、例えば12mmといったミリメートルオーダーの長さを有する。
【0006】
静的収差矯正要素の検眼鏡の中の位置が、静的収差矯正要素の長軸が走査リレー要素の走査補償要素の長軸と略平行となるように、選択される。静的収差矯正要素の位置が、走査リレー要素の走査補償要素と第1の走査要素との間にある。
【0007】
静的収差矯正要素の位置が、第1の走査要素に近接してある。静的収差矯正要素の位置が、第1の走査要素に隣接してある。静的収差矯正要素を、第1の走査要素に取り付けてもよい。静的収差矯正要素を、第1の走査要素に設けられた窓に取り付け、又は当該窓の代わりに設けてもよい。
【0008】
静的収差矯正要素のこのような位置決めは、多くの効果を有する。静的収差矯正要素の位置は、眼の瞳孔点における見掛けの点光源から眼の網膜までビーム光の伝達を保持する。静的収差矯正要素は、第1の走査要素によって生成されるビーム光の走査が空間的に解像される面に位置する。静的収差矯正要素を第1の走査要素の窓に取り付けることで、あるいは、第1の走査要素の窓を静的収差矯正要素に代えることで、後方散乱の原因となり又は検眼鏡に光学的損失を与えてしまう、検眼鏡への付加的な光学面の導入を防止する。特に広視野検眼鏡において、少なくとも第1の走査要素に近接させた静的収差矯正要素の位置決めは、矯正要素によって受信されるビーム光の走査の空間的範囲を減し、これにより、必要とする矯正要素の空間次元を減らす。
【0009】
静的収差矯正要素がビーム光の位相を変更して、少なくともいくつかの走査リレー要素の収差の矯正を与える。静的収差矯正要素が当該要素の1又はそれ以上の位相特性をビーム光の位相に課して、収差の矯正を与える。静的収差矯正要素が、当該要素の長軸及び短軸に沿って空間的に変動する当該要素の深さに必然的な1又はそれ以上の位相特性を課す。
【0010】
静的収差矯正要素が、ビーム光の屈折によってビーム光の位相を変更する透過位相マスクを具える。透過位相マスクが、電磁スペクトルの可視光部から近赤外線部まで延在する分光透過を具える光学ガラスを具える。
【0011】
静的収差矯正要素及び走査リレー要素は、眼の瞳孔点における見掛けの点光源においてほぼ平行になり収差の無いビーム光を与える。眼はビーム光の焦点を合わせて、眼の網膜のほぼ総ての走査ポイントにおいて集束ビームスポットを与える。これは、例えば20ミクロン以下といった約数ミクロン又は数十ミクロンの直径を有する。静的収差矯正要素及び走査リレー要素は、網膜における構成された照射の複数のスポットにビーム光を集束させ(焦点を合わせ)、検眼鏡の像の網膜の空間的情報をエンコードする。
【0012】
本発明の走査レーザ検眼鏡は、少なくともいくつかの走査リレー要素の矯正を補償する一方、眼の瞳孔点における見掛けの点光源から眼の網膜へのビーム光の伝達を保持するための手段を提供する。これにより、眼の瞳孔点における見掛けの点光源において、ほぼ平行且つ収差の無いビーム光の提供が可能となり、眼の網膜のほぼ総ての走査ポイントにおいてビーム光のスポットに集束され、これにより、検眼鏡の網膜像のほぼ総ての部分において、所望の空間情報を保持する。走査レーザ検眼鏡は、広視野又は超広視野検眼鏡を具え得る。
【0013】
本発明の走査レーザ検眼鏡は、さらに、眼の収差を補償する手段を提供する。収差矯正要素は、少なくともいくつかの走査リレー要素の収差の矯正及び眼の収差の矯正を提供するよう規定される形状を有する。静的収差矯正要素の形状は、この要素の長軸及び短軸に沿って空間的に変動する深さを有するよう規定され、少なくともいくつかの走査リレー要素及び眼の収差の矯正を与える。眼は、実際の眼に関して規定される正常眼である。
【0014】
本発明の第2の態様によれば、本発明の第1の態様の検眼鏡で使用するための収差矯正要素が提供される。
【0015】
本発明の第3の態様によれば、本発明の第1の態様の検眼鏡で使用される収差矯正要素の形状を規定する方法が提供され、この方法は、
(i)前記検眼鏡を具えるシステムの光学的記述を構成するステップと、
(ii)前記システムを通して複数の光線を通過させるステップと、
(iii)前記システムを通した光線の経路を判定するステップと、
(iv)前記光線の経路を用いて、角度の関数として、前記検眼鏡の少なくともいくつかの前記走査リレー要素の収差を測定するステップと、
(v)収差の測定値を用いて、前記収差矯正要素の形状を規定する数学関数を判定するステップと、を具える。
【0016】
規定される収差矯正要素の形状は、長軸及び短軸に沿って空間的に変動するこの要素の深さを具える。
【0017】
この方法は、さらに、眼の矯正の補償を提供する。この方法は、
(i)前記検眼鏡を具えるシステム及び正常眼の光学的記述を構成するステップと、
(ii)前記システムを通して複数の光線を通過させ、前記正常眼の表面に複数の角度を作用させるステップと、
(iii)前記システムを通した光線の経路を判定するステップと、
(iv)前記光線の経路を用いて、角度の関数として、前記検眼鏡の少なくともいくつかの前記走査リレー要素及び前記正常眼の収差を測定するステップと、
(v)収差の測定値を用いて、前記収差矯正要素の形状を規定する数学関数を判定するステップと、を具える。
【図面の簡単な説明】
【0018】
ここで、添付図面を参照し、単に例として本発明の実施例を説明する。
【
図1】
図1は、本発明の第1の態様に係る検眼鏡の概略図である。
【
図2】
図2は、
図1の検眼鏡とともに使用するための本発明の第2の態様に係る収差矯正要素の概略図である。
【
図3】
図3は、走査要素に取り付けられた
図2の収差矯正要素の概略図である。
【
図4】
図4は、本発明の第3の態様の方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1を参照すると、検眼鏡10は、ビーム光13を放射する光源12と、第1の走査要素14、第2の走査要素16、走査補償手段18及び走査伝達手段20を具える走査リレー要素とを具える。第1の走査要素14は回転式ポリゴンミラーを具えており、第2の走査要素16は振動平面ミラーを具える。走査補償手段18は楕円ミラーを具えており、走査伝達手段20は非球面ミラーを具える。検眼鏡10は、さらに、収差矯正要素(図示せず)を具える。
【0020】
光源12は、入射ビーム光13を第1の走査要素14に向ける。これにより、第1の垂直な方向に、(光線A、B及びCで示す)ビームのスキャンを生成する。この入射ビームは走査補償手段18に作用し、そこから第2の走査要素16に反射する。これにより、第2の水平な方向に、入射ビームのスキャンを生成する。そして、この入射ビームは2つの焦点を有する走査伝達手段20に作用し、第2の走査要素16が第1の焦点に設けられ、対象者の眼22が第2の焦点に設けられる。走査移動手段20に作用する第2の走査要素16からの入射ビームは眼22に向けられ、眼の瞳孔を通過して、眼の網膜の一部に作用する。検眼鏡10の光源12及び走査リレー要素は、眼の瞳孔点における見掛けの点光源からの入射ビーム光13の2次元の走査を与えるよう結合し、見掛けの点光源からの入射ビーム光の2次元走査を眼の網膜に伝える。入射ビーム光が網膜にわたって走査されると、網膜から反射して検眼鏡10の構成要素を通って戻るように伝えられ、1又はそれ以上の検出器(図示せず)によって受信される、反射ビーム光を生成する。対象者の眼22の網膜の部分の像を受け取るために、光源12からの入射ビーム光が、互いに垂直に動作する第1及び第2の走査要素14、16によって生成されるラスター走査パターンで、網膜部にわたって走査され、反射ビーム光が1又はそれ以上の検出器によって受信される。検出器からの測定値の時系列を用いて、網膜のデジタル画像を形成する。
【0021】
検眼鏡10の走査リレー要素の少なくともいくつかが、検眼鏡10によって取得される像の中に収差を導入してしまう。たとえば収差は、走査補償要素18及び走査伝達要素20によって入射ビーム光13の中に導入される。この収差は主に一次の焦点収差であり、ビーム光の角度にしたがって変動する。検眼鏡10を通ってそれが通過する際に、入射ビーム光13は、検眼鏡の中に設けられた収差矯正要素とも相互作用する。これは、検眼鏡の中に成形され且つ設けられており、走査リレー要素、特に走査補償要素18及び走査伝達要素20の少なくともいくつかの収差の矯正を与える一方、眼の瞳孔点における見掛けの点光源から眼22の網膜へのビーム光13の伝達を維持する。
【0022】
図2は、
図1の検眼鏡での使用のための静的収差矯正要素を示す。静的収差矯正要素は、透過位相マスク30を具える。この透過位相マスク30は、その長さ方向(y方向)に沿った長軸及び幅方向(x方向)に沿った短軸を有する略矩形の形状である。透過位相マスク30の形状は、当該マスクの長軸及び短軸に沿って空間的に変動する深さを有するよう規定される。透過位相マスク30の深さは、下式で示される少なくとも1の所定の数学関数によって規定される。
ここで、Nが級数の多項式係数の番号であり、a
iは多項式の項p
iのi番目の係数である。当該多項式は、x及びyのべき級数であり、初項から順にx、y、x*x、x*y、y*y等のように続く。本実施例では、N=20であり、係数(R=100mmの規格化半径で割ったものであるため、無次元である)については、a
1=0、a
2=1.515、a
3=9.981、a
4=0、a
5=15.486、a
6=0、a
7=−2342.830、a
8=0、a
9=−635.766、a
10=1026163.828、a
11=0、a
12=−30279.492、a
13=0、a
14=−5695.243、a
15=0、a
16=23929093.583、a
17=0、a
18=−145044.106、a
19=0、a
20=−14564.76025249である。
【0023】
本実施例では、透過位相マスク30の深さがマスクの長軸又は長さに沿って変動し、マスクの最大垂下量(山から谷への深さ)は、約110ミクロンである。透過位相マスク30は、約1.5mmの幅及び約12mmの長さを有する。透過位相マスク30は、電磁スペクトルの可視光部から近赤外線部まで広がる、ある分光透過率を具える光学ガラスを具える。
【0024】
図3を参照すると、検眼鏡の中における透過位相マスク30の位置が、検眼鏡の走査補償要素18と第1の走査要素14の間の第1の走査要素14に近接する位置にある。透過位相マスク30は、第1の走査要素14の窓32に取り付けられており、マスク30の長軸が、検眼鏡の走査リレー要素の走査補償要素18の長軸と平行である。
【0025】
第1の走査要素14は回転式ポリゴンミラーである。入射ビーム光13が窓32を通過し、ポリゴンミラーで反射して、透過位相マスク30を通過し対象者の眼に至る。回転式ポリゴンミラー14は様々な角度で入射ビーム光13を反射させ、
図1の光線A、B及びCで示される第1の鉛直な方向に沿った入射ビーム光13の走査を与える。ポリゴンミラー14の窓32における透過位相マスク30の位置は、入射ビーム光13が透過位相マスク30を通して走査されるような位置になっている。
【0026】
透過位相マスク30は、マスクの長軸及び短軸に沿った変動する深さを有しており、これにより、マスクの長軸及び短軸に沿った空間的に変動する深さ及び屈折を含む対応する空間的に変動する光学的特性を与える。入射ビーム光13が透過位相マスク30を通して走査されると、マスクが屈折によってビーム光の位相を変える。マスクの深さに必然的なマスクの位相特性が、ビーム光の位相に課せられる。マスクの深さがマスクの長軸及び短軸に沿って変動すると、入射ビーム光の位相変化がビーム光の2つの直交軸を通して変わる。入射ビーム光の走査によるこの位相変化が、ビーム光が検眼鏡10の残りの部分を通過する際にビーム光の走査が受ける、少なくともいくつかの変化する収差を扱うのに必要である。ビーム光13の走査が出会う検眼鏡10の次の走査リレー要素は、走査補償要素18である。この要素の収差は、その長軸及び短軸に沿って変わる。透過位相マスク30の変化する深さを規定し、マスク30の長軸を走査補償要素18の長軸と略平行に配置することによって、マスク30が、走査補償要素18の変化する収差に対する矯正を与え得る。また、ビーム光13の走査は、検眼鏡10の走査リレー要素の走査伝達要素20に出会う。また、走査伝達要素20の収差は、その長軸及び短軸に沿って変わる。また、透過位相マスク30の変化する深さをマスクの2つの直交する軸に沿って規定することによって、マスク30が、走査伝達要素20の変化する収差に対する矯正を与え得る。
【0027】
さらに、透過位相マスク30の位置が、ビーム光13の走査の方向の偏差の原因とはならない。これにより、眼の瞳孔点における見掛けの点光源から眼の網膜までのビーム光13の伝達が維持される。
【0028】
透過位相マスク30の形状は、ビーム光13の走査の位相を変え、検眼鏡を通って伝播した後は、眼の瞳孔点における見掛けの点光源において、ほぼ平行になり収差の無いビーム光を具え、眼22の中に伝達され、対象者の眼22の網膜と一致する検眼鏡10の対物面の視野のほぼ総ての走査ポイントについて、鋭い点(約20ミクロン以下)に向けて眼によって集束される。現状の検眼鏡の像において「ぼやけ」や減光の原因となる収差が減少且つ防止され、これにより、本発明の検眼鏡の網膜像のほぼ総ての部分において、所望の空間的情報を保持する。
【0029】
図4を参照すると、検眼鏡10で使用するための収差矯正要素の深さを判定する方法が記載されている。検眼鏡を具えるシステムの光学的記述が、最初に構築される(ステップ50)。そして、複数の光線がシステムを通過する(ステップ52)。複数の角度は、光線が、ほぼ全面的な且つ一様なポイントにわたって眼のモデルの表面に作用するようにする必要がある。そして、システムを通る光線の経路が判定され(ステップ54)、光線の経路を使用して、角度の関数として、検眼鏡の走査リレー要素の少なくともいくつかの収差を測定する(ステップ56)。そして、収差の測定値を用いて、収差矯正要素の長軸及び短軸に沿って空間的に変動する深さを規定する数学関数を判定する(ステップ58)。
【0030】
上記の検眼鏡、収差矯正要素及び方法を用いて、眼の収差の矯正も与え得ることが明らかであろう。