(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アノード体と、前記アノード体を覆う誘電体と、前記誘電体を覆う固体電解質とを備えた固体電解コンデンサであって、前記固体電解質が内側層及び外側層を含み、前記外側層が、複数のナノフィブリル及び導電性ポリマーマトリックスを有するナノコンポジットを含み、前記ナノフィブリルが、約500ナノメートル以下の数平均断面寸法及び約25乃至約500のアスペクト比を有し、前記導電性ポリマーマトリックスが、予備重合された導電性ポリマー粒子を含み、前記ナノフィブリルと前記導電性ポリマーマトリックスとが、前記ナノコンポジットの別個の層を形成することを特徴とする固体電解コンデンサ。
前記ナノフィブリルが、約1ナノメートル乃至約100ナノメートル、好ましくは約2ナノメートル乃至約40ナノメートルの数平均断面寸法を有することを特徴とする、請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
前記外側層が、約50ナノメートル乃至約500ナノメートル、好ましくは約80ナノメートル乃至約250ナノメートル、より好ましくは約100ナノメートル乃至約200ナノメートルの平均サイズを有する予備重合された導電性ポリマー粒子を含むことを特徴とする、請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
前記アノード体に電気的に接続するアノード端子と、前記固体電解質に電気的に接続するカソード端子とをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
請求項1に記載の前記固体電解コンデンサを形成する方法であって、前記誘電体の上に前記ナノフィブリルを塗工するステップと、その後に、予備重合された導電性ポリマー粒子の分散液を塗工するステップとを含むことを特徴とする方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書及び図面における参照文字の反復使用は、本発明の同じ又は類似の特徴又は要素を表すことを意図したものである。
【0009】
本説明は例示的な実施形態のみの説明であり、例示的な構成において具体化される本発明の広い態様を限定することを意図したものではないことを当業者であれば理解するはずである。
【0010】
一般的に言えば、本発明は、アノード体と、アノード体を覆う誘電体と、誘電体を覆う固体電解質とを含む固体電解コンデンサに向けられる。この固体電解質は、複数のナノフィブリルと導電性ポリマーマトリックスとを含んだナノコンポジットを含む。ナノフィブリルは、マトリックス内に分散させることもでき、又は別の層としてナノコンポジット内に存在することもできる。いずれにしてもナノフィブリルは比較的小さいサイズ及び高いアスペクト比を有し、本発明者らは、このことが、得られるコンデンサの熱機械的安定性及び堅牢性を劇的に向上させることができることを発見した。ナノフィブリルは、例えば、約500ナノメートル以下、幾つかの実施形態においては約1乃至約100ナノメートル、及び幾つかの実施形態においては約2乃至約40ナノメートルの数平均断面寸法(例えば、直径)を有するものとすることができる。同様に、ナノフィブリルは、約25乃至約500、幾つかの実施形態においては約50乃至約300、及び幾つかの実施形態においては約100乃至約200のアスペクト比(平均長さを平均直径で割ったもの)を有するものとすることができる。ナノフィブリルは、例えば、約0.1乃至約10マイクロメートル、幾つかの実施形態においては約0.2乃至約5マイクロメートル、及び幾つかの実施形態においては約0.5乃至約3マイクロメートルの数平均長さを有するものとすることができる。数平均直径及び長さは、ソフトウェア画像解析技術と連結した透過電子顕微鏡法(「TEM」)などの当業者に既知の任意の技術によって決定することができる。
【0011】
次に、本発明の種々の実施形態をより詳しく説明する。
【0012】
I.
ナノコンポジット
上記のように、本発明の特定の実施形態において、ナノフィブリルを導電性ポリマーマトリックス内に分散させることができる。他の実施形態において、ナノフィブリルと導電性ポリマーマトリックスは、ナノコンポジットの別々の層として存在することができる。そのような実施形態においては、ナノフィブリル層は誘電体を覆うことができ、導電性ポリマーマトリックスは、ナノフィブリル層を覆うか又は誘電体とナノフィブリル層の間に配置することができる。いずれにしても、ナノコンポジット内のナノフィブリルの相対量は、所望の機械的特性を、他の特性に悪影響を及ぼさずに達成する役に立つように選択的に制御することができる。例えば、ナノフィブリルは、ナノコンポジットの約0.5wt%乃至約40wt%、幾つかの実施形態においては約1wt%乃至約30wt%、及び幾つかの実施形態においては約5wt%乃至約20wt%を構成することができる。同様に、導電性ポリマーマトリックスは、ナノコンポジットの約60wt%乃至約99.8wt%、幾つかの実施形態においては約70wt%乃至約99wt%、及び幾つかの実施形態においては約80wt%乃至約95wt%を構成することができる。
【0013】
A.
ナノフィブリル
上記の特性を有する様々なナノフィブリルのいずれかを本発明において用いることができる。そのようなナノフィブリルの例として、例えば、ガラスナノフィブリル、鉱物ナノ粒子(例えば、タルク、雲母、粘土、アルミナ,シリカなど)などのような非導電性ナノフィブリル、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバ、金属ナノ小板などのような導電性ナノフィブリル、並びにそれらの組合せを挙げることができる。導電性ナノフィブリルは、得られるコンデンサのESRを最小化するのに特に適している。具体的な一実施形態において、例えば、カーボンナノチューブがナノコンポジットにおいて使用される。「カーボンナノチューブ」という用語は、一般に、中空円筒形状の少なくとも1つのグラフェン層を含むナノ構造体を指す。円筒は、特定の離散的なカイラル角で巻かれたものとすることができ、一端又は両端がフラーレンで閉ざされているものとすることができる。カーボンナノチューブは、グラフェン単層を1つだけ含むものとすることができ、その場合は単層ナノチューブ(「SWNT」)として知られる。カーボンナノチューブは、異なる直径の幾つかの単層ナノチューブの同軸の組立体とすることもでき、その場合は一般に多層ナノチューブ(「MWNT」)として知られる。例えば2乃至100、及び幾つかの実施形態においては5乃至50の同軸単層ナノチューブを含む多層ナノチューブが、本発明での使用に特に適している。そのような多層ナノチューブは、Nanocyl(登録商標)という商品名で市販されている。例えば、Nanocyl(登録商標)NC210及びNC7000は、それぞれ平均直径が3.5ナノメートル及び9.5ナノメートルの(長さが1マイクロメートルと10マイクロメートルとの間の)多層ナノチューブである。
【0014】
触媒による炭素気相堆積などの様々な既知の技術のいずれかを用いてカーボンナノチューブを形成することができる。いずれにしても、得られるカーボンナノチューブは、典型的には、より良く制御された狭いサイズ分布をもたらす高レベルの炭素純度を有する。例えば、炭素純度は、約80%以上、幾つかの実施形態においては約85%以上、及び幾つかの実施形態においては約90%乃至100%とすることができる。所望であれば、カーボンナノチューブを随意に官能基によって化学的に修飾し、例えば、その親水性特性を高めることができる。適切な官能基としては、例えば、カルボキシル基、アミン基、チオール基、ヒドロキシ基などを挙げることができる。
【0015】
B.
導電性ポリマーマトリックス
導電性ポリマーマトリックスは一般に1つ又はそれ以上の導電性ポリマーを含む。マトリックス内に使用される導電性ポリマーは、通常π共役型であり、酸化又は還元後に導電性を有し、例えば、少なくとも約1μS/cmの導電率を有する。そのようなπ共役型導電性ポリマーの例としては、例えば、ポリ複素環式化合物(例えば、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリンなど)、ポリアセチレン、ポリ−p−フェニレン、ポリフェノラートなどが挙げられる。一実施形態において、例えば、ポリマーは、以下の一般構造を有するような置換ポリチオフェンである。
【化1】
式中、
TはO又はSであり、
Dは、随意に置換されたC
1からC
5までのアルキレンラジカル(例えば、メチレン、エチレン,n−プロピレン、n−ブチレン、n−ペンチレンなど)であり、
R
7は、直鎖又は分岐の、随意に置換されたC
1からC
18までのアルキルラジカル(例えば、メチル、エチル、n−又はiso−プロピル、n−、iso−、sec−又はtert−ブチル、n−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1−エチルプロピル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、2-エチルヘキシル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、n−トリデシル、n−テトラデシル、n−ヘキサデシル、n−オクタデシルなど)、随意に置換されたC
5からC
12までのシクロアルキルラジカル(例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロへプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシルなど)、随意に置換されたC
6からC
14までのアリールラジカル(例えば、フェニル、ナフチルなど)、随意に置換されたC
7からC
18までのアラルキルラジカル(例えば、ベンジル、o−、m−、p−トリル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−、3,5−キシリル、メシチルなど)、随意に置換されたC
1からC
4までのヒドロキシアルキルラジカル、又はヒドロキシルラジカル、であり、
qは、0から8まで、幾つかの実施形態においては0から2までの整数であり、一実施形態においては0であり、
nは、2から5,000まで、幾つかの実施形態においては4から2,000まで、及び幾つかの実施形態においては5から1,000までである。ラジカル「D」又は「R
7」に対する置換基の例としては、例えば、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、アルコキシ、ハロゲン、エーテル、チオエーテル、ジスルフィド、スルホキシド、スルホン、スルホネート、アミノ、アルデヒド、ケト、カルボン酸エステル、カルボン酸、炭酸塩、カルボン酸塩、シアノ、アルキルシラン及びアルコキシシラン基、カルボキシルアミド基などが挙げられる。
【0016】
特に適したチオフェンポリマーは、「D」が随意に置換されたC
2からC
3までのアルキレンラジカルであるポリマーである。例えば、ポリマーは、以下の一般構造を有する随意に置換されたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)である。
【化2】
【0017】
上記のような導電性ポリマーを形成する方法は、当該技術分野では周知である。例えば、Merker他による特許文献5は、モノマー前駆体から置換ポリチオフェンを形成するための種々の技法を記載している。モノマー前駆体は、例えば、以下の構造を有する。
【化3】
式中、
T、D、R
7、及びqは上記で定義されている。特に適したチオフェンモノマーは、「D」が随意に置換されたC
2からC
3までのアルキレンラジカルであるモノマーである。例えば、以下の一般構造を有する随意に置換された3,4−アルキレンジオキシチオフェンを使用することができる。
【化4】
式中、R
7及びqは上記で定義されている。特定の一実施形態において、「q」は0である。3,4−エチレンジオキシチオフェンの市販の適切な一例は、Heraeus Precious Metals GmbH&Co.KGからClevios(商標)Mの名称で市販されている。他の適切なモノマーは、Blohm他による特許文献6及びGroenendaal他による特許文献7に記載されている。これらのモノマーの誘導体、例えば上記のモノマーの二量体又は三量体もまた使用することができる。より分子量が大きい誘導体、即ち、モノマーの四量体、五量体などが本発明において使用するのに適している。誘導体は同じ又は異なるモノマーユニットで構成することができ、純粋な形で使用することも、又は、相互の混合物として及び/又はモノマーとの混合物として使用することもできる。これらの前駆体の酸化型又は還元型を使用することもできる。
【0018】
様々な技術のいずれかを一般的に用いて導電性ポリマーマトリックスを形成することができる。具体的な一実施形態において、例えば、導電性ポリマーは、随意に、導電率を高めることを補助するドーパントの存在下で、化学的又は電気化学的重合法によってコンデンサ上でインサイチュで重合させることができる。例えば、カチオン(例えば、遷移金属)及びアニオン(例えば、スルホン酸)を含むことで酸化機能をも有するドーパントの存在下で、モノマーを重合させることができる。例えば、ドーパントは、鉄(III)カチオンを含む遷移金属塩、例えばハロゲン化鉄(III)(例えば、FeCl
3)又は他の無機酸の鉄(III)塩、例えばFe(ClO
4)
3又はFe
2(SO
4)
3、並びに、有機酸及び有機ラジカルを含む無機酸の鉄(III)塩とすることができる。有機ラジカルを含む無機酸の鉄(III)塩の例としては、例えば、C
1からC
20までのアルカノールの硫酸モノエステルの鉄(III)塩(例えば、ラウリル硫酸の鉄(III)塩)が挙げられる。同様に、有機酸の鉄(III)塩の例としては、例えば、C
1からC
20までのアルカンスルホン酸(例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、又はドデカンスルホン酸)の鉄(III)塩、脂肪族ペルフルオロスルホン酸(例えば、トリフルオロメタンスルホン酸、ペルフルオロブタンスルホン酸、又は、ペルフルオロオクタンスルホン酸)の鉄(III)塩、C
1からC
20までの脂肪族カルボン酸(例えば、2−エチルヘキシルカルボン酸)の鉄(III)塩、脂肪族ペルフルオロカルボン酸(例えば、トリフルオロ酢酸又はペルフルオロオクタン酸)の鉄(III)塩、C
1からC
20までのアルキル基で随意に置換された芳香族スルホン酸(例えば、ベンゼンスルホン酸、o−トルエンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、又はドデシルベンゼンスルホン酸)の鉄(III)塩、シクロアルカンスルホン酸(例えば、カンファースルホン酸)の鉄(III)塩などが挙げられる。これら上記の鉄(III)塩の混合物を使用することもできる。鉄(III)−p−トルエンスルホン酸塩、鉄(III)−o−トルエンスルホン酸塩及びこれらの混合物が特に適している。鉄(III)−p−トルエンスルホン酸塩の1つの市販の適切な例は、Heraeus Precious Metals GmbH&Co.KGからClevios(商標)Cの名称で市販されている。
【0019】
モノマー及びドーパントを順番に又は一緒に塗工して、インサイチュで重合反応を開始することができる。これらの成分を塗工するための適切な塗工方法としては、スクリーン印刷、浸し塗り、電気泳動被覆、及びスプレー塗りが挙げられる。一例として、最初にモノマーをドーパントと混合して前駆体溶液を形成することができる。ひとたび混合物が形成されると、これをアノード部分に塗工し、次いで重合させて、導電性被膜を表面上に形成することができる。代替的に、ドーパントとモノマーとを順次塗工することができる。一実施形態において、例えば、ドーパントは有機溶媒(例えば、ブタノール)に溶解され、次いで浸し塗り溶液として塗工される。次にアノード部分を乾燥させて溶媒が除去される。その後、この部材を、モノマーを含む溶液に浸すことができる。いずれにしても、重合は、使用される酸化剤及び所望の反応時間に応じて、典型的には約−10℃乃至約250℃、及び幾つかの実施形態においては約0℃乃至約200℃の温度で行われる。上記の様な適切な重合方法は、Bilerによる特許文献8に、より詳細に記載されているであろう。かかる導電性被膜を塗工するさらに他の方法は、Sakata他による特許文献1、Sakata他による特許文献2、Sakata他による特許文献3、及びKudoh他による特許文献4に記載されているであろう。
【0020】
インサイチュ重合に加えて、導電性ポリマーマトリックスは、予備重合粒子の分散液から形成することもできる。分散液を使用することの1つの利点は、従来のインサイチュ重合プロセス中に生じるイオン種(例えば、Fe
2+又はFe
3+)の存在を最小にすることができることである。従って、導電性ポリマーを分散液として塗工することにより、得られるコンデンサは比較的高い破壊電圧を示すことができる。分散液中の粒子の形状は、様々にすることができる。具体的な一実施形態において、例えば、粒子は球形である。しかし、プレート、ロッド、ディスク、バー、チューブ、不規則形状などの他の形状も本発明では意図されていることを理解されたい。分散液中の粒子の濃度は、分散液の所望の粘度、及び分散液をコンデンサに塗工する具体的な方法に応じて変えることができる。しかし、典型的には、粒子は、分散液の約0.1乃至約10wt%、幾つかの実施形態においては約0.4乃至約5wt%、及び幾つかの実施形態においては約0.5乃至約4wt%を構成する。同様に、溶媒は、分散液の約90wt%乃至約99.9wt%、幾つかの実施形態においては約95wt%乃至約99.6wt%、及び幾つかの実施形態においては約96wt%乃至約99.5wt%を構成することができる。溶媒の性質は、意図した塗工方法に応じて変えることができる。例えば、一実施形態において、水を主溶媒として用いることができるので、分散液は「水性」分散液と見なされる。そのような実施形態において、水は、分散液で使用される溶媒の少なくとも約50wt%、幾つかの実施形態においては少なくとも約75wt%、及び幾つかの実施形態においては約90wt%乃至約100wt%を構成することができる。しかし、他の実施形態において、有機溶媒(例えば、メタノール、エタノール、アセトン、2−ブタノン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなど)を分散液で用いることができる。例えば、有機溶媒が、使用される主溶媒であり、分散液で使用される溶媒の少なくとも約50wt%、幾つかの実施形態においては少なくとも約75wt%、及び幾つかの実施形態においては約90wt%乃至約100wt%を構成する。
【0021】
ポリマー分散液は、粒子の安定性を高める対イオンを含むことができる。すなわち、導電性ポリマー(例えば、ポリチオフェン又はその誘導体)は、典型的には中性又は正(カチオン)電荷を主ポリマー鎖上に有する。ポリチオフェン誘導体は、例えば、典型的には主ポリマー鎖内に正電荷を有する。幾つかの場合には、ポリマーは、構造単位内に正電荷及び負電荷を有することができ、正電荷は主鎖上に位置し、負電荷は、随意に、スルホン酸基又はカルボン酸基のようなラジカル「R」の置換基上に位置する。主鎖の正電荷は、部分的に又は完全に、随意に存在するラジカル「R」上のアニオン基によって飽和される。全体として見ると、これらの場合には、チオフェンは、カチオン性、中性、又はアニオン性にさえなることがある。いずれにしても、これらは全て、チオフェン主鎖が正電荷を有するのでカチオン性ポリチオフェンと見なされる。
【0022】
対イオンは、導電性ポリマーの電荷を打ち消すモノマー性又はポリマー性アニオンとすることができる。ポリマー性アニオンは、例えば、ポリマーカルボン酸(例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸など)、ポリマースルホン酸(例えば、ポリスチレンスルホン酸(「PSS」)、ポリビニルスルホン酸など)などのアニオンとすることができる。酸は、コポリマー、例えば、ビニルカルボン酸及びビニルスルホン酸と、アクリル酸エステル及びスチレンのような他の重合性モノマーとのコポリマーとすることもできる。同様に、適切なモノマー性アニオンとしては、例えば、上記のようなスルホン酸が挙げられる。使用される場合、分散液中及び得られる層内における、このような対イオンの導電性ポリマーに対する重量比は、典型的には約0.5:1乃至約50:1、幾つかの実施形態においては約1:1乃至約30:1、及び幾つかの実施形態においては約2:1乃至約20:1である。上記の重量比に関する導電性ポリマーの重量は、重合中に完全な転化が起ると仮定して、秤量されて加えられる使用されるモノマーの部分に対応する。
【0023】
導電性ポリマー及び随意の対イオンに加えて、分散液は、ポリマー層の接着性を高め、そしてまた分散液内の粒子の安定性を高めるために、1つ又はそれ以上の結合剤を含むこともできる。結合剤は、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチレート、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリル酸アミド、ポリメタクリル酸エステル、ポリメタクリル酸アミド、ポリアクリロニトリル、スチレン/アクリル酸エステル、酢酸ビニル/アクリル酸エステル及びエチレン/酢酸ビニルコポリマー、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、メラミンホルムアルデヒド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂又はセルロースなど、本質的に有機物とすることができる。結合剤の接着能力を強化するために架橋剤を用いることもできる。そのような架橋剤としては、例えば、メラミン化合物、マスクされたイソシアネート、又は官能性シラン、例えば、3−グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン、テトラエトキシシラン及びテトラエトキシシラン加水分解物、又は、架橋性ポリマー、例えば、ポリウレタン、ポリアクリレート又はポリオレフィン、及びその結果生じた架橋を挙げることができる。
【0024】
ポリマー分散液は、スピンコーティング、含浸、流し込み、液滴塗工(dropwise application)、注入、吹付け塗り、ドクターブレード、刷毛塗り、印刷(例えば、インクジェット、スクリーン、又はパッド印刷)又は浸漬などの様々な既知の技術を用いて部材に塗工することができる。分散液の粘度は、使用する塗工技術に応じて変えることができるが、典型的には約0.1乃至約100,000mPa・s(100s
-1の剪断速度で計測)、幾つかの実施形態においては約1乃至約10,000mPa・s、幾つかの実施形態においては約10乃至約1,500mPa・s、及び幾つかの実施形態においては約100乃至約1000mPa・sである。ひとたび塗工されると、層を乾燥させ洗浄することができる。
【0025】
導電性ポリマーマトリックスを形成する方法に関わらず、様々な技術のいずれかを用いてナノフィブリルをコンデンサに組み込むことができる。例えば、ナノフィブリルを単に水性分散液として付与することができ、導電性ポリマーマトリックスをその後で塗工することができる。代替的に、ナノフィブリルは、ポリマーマトリックスを形成するのに用いられる溶液又は分散液に混合することができる。具体的な一実施形態において、ナノフィブリルは、前述の予備重合導電性ポリマー粒子を含む分散液に混合される。塗工プロセスを支援するために、ナノフィブリルを分散液の形態で準備することもできる。そのような実施形態において、ナノフィブリルは、典型的には分散液の約0.1乃至約10wt%、幾つかの実施形態においては約0.4乃至約5wt%、及び幾つかの実施形態においては約0.5乃至約4wt%を構成する。同様に溶媒は、分散液の約90wt%乃至約99.9wt%、幾つかの実施形態においては約95wt%乃至約99.6wt%、及び幾つかの実施形態においては約96wt%乃至約99.5wt%を構成することができる。溶媒の性質は、上記のように様々なものとすることができる。一実施形態において、例えば、水を主溶媒とすることができるので、分散液は「水性」分散液と見なされる。
【0026】
C.
他の成分
ナノフィブリル及び導電性ポリマーマトリックスに加えて、ナノコンポジットは随意に他の成分を含むことができることもまた理解されたい。一実施形態において、例えば、接着度を高めるために、架橋剤をナノコンポジット中に使用することもできる。適切な架橋剤は、例えばMerker他による特許文献9に記載されており、例えば、アミン(例えば、ジアミン、トリアミン、オリゴマーアミン、ポリアミンなど)、多価金属カチオン、例えば、Mg、Al、Ca、Fe、Cr、Mn、Ba、Ti、Co、Ni、Cu、Ru、Ce又はZnの塩又は化合物、ホスホニウム化合物、スルホニウム化合物などが挙げられる。特に適切な例としては、例えば、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、エチレンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,4−ブタンジアミンなど、並びにこれらの混合物が挙げられる。架橋剤は、通常、25℃で計測されたpHが、1乃至10、幾つかの実施形態においては2乃至7、幾つかの実施形態においては3乃至6である溶液又は分散液から塗工される。所望のpHレベルの達成を助けるために酸化合物を用いることができる。架橋剤のための溶媒又は分散媒の例としては、水、又はアルコール、ケトン、カルボン酸エステルなどの有機溶媒が挙げられる。架橋剤は、いずれかの既知のプロセス、例えば、スピンコーティング、含浸、キャスティング、液滴塗り、吹付け塗り、気相堆積、スパッタリング、昇華、ナイフコーティング、ペイント又は印刷、例えば、インクジェット、スクリーン、又はパッド印刷などによって塗工することができる。
【0027】
所望であれば、ナノコンポジットは、ヒドロキシ官能性非イオン性ポリマーを含むこともできる。「ヒドロキシ官能性」という用語は、一般に、その化合物が少なくとも1つのヒドロキシル官能基を含むか、又は溶媒の存在下でそうした官能基を有することができることを意味する。理論によって制限されることを意図しないが、ヒドロキシ官能性非イオン性ポリマーは、ポリマーと、内側の誘電体表面との間の接触の度合いを改善することができると考えられ、この誘電体表面は、典型的にはより高い形成電圧の結果として本質的に比較的平滑である。このことは、得られるコンデンサの破壊電圧及びウェット対ドライ(wet−to−dry)静電容量を予期せぬほど向上させる。さらに、特定の分子量を有するヒドロキシ官能性ポリマーの使用は、高電圧における化学的分解の可能性を小さくすることができると考えられる。例えば、ヒドロキシ官能性ポリマーの分子量は、約100乃至約10,000グラム毎モル、幾つかの実施形態においては約200乃至2,000グラム毎モル、幾つかの実施形態においては約300乃至約1,200グラム毎モル、及び幾つかの実施形態においては約400乃至約800グラム毎モルとすることができる。
【0028】
この目的のために、様々なヒドロキシ官能性非イオン性ポリマーのいずれかを一般的に用いることができる。一実施形態において、例えば、ヒドロキシ官能性ポリマーはポリアルキレンエーテルである。ポリアルキレンエーテルは、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエピクロロヒドリンなど)、ポリオキセタン、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルケトンなどを含むことができる。ポリアルキレンエーテルは、末端ヒドロキシ基を有する典型的には主として直鎖の非イオン性ポリマーである。特に適しているのは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びポリテトラメチレングリコール(ポリテトラヒドロフラン)であり、これらは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド又はテトラヒドロフランの水に対する重付加によって生成される。ポリアルキレンエーテルは、ジオール又はポリオールから重縮合反応によって調製することができる。ジオール成分は、具体的には、5乃至36個の炭素原子を含む飽和若しくは不飽和の分岐若しくは非分岐型脂肪族ジヒドロキシ化合物、又は芳香族ジヒドロキシ化合物、例えば、ペンタン−1,5−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、ネオペンチルグリコール、ビス−(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ビスフェノールA、ダイマージオール、水素化ダイマージオール、又は上記のジオールの混合物から選択することができる。さらに、例えば、グリセロール、ジ及びポリグリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール又はソルビトールを含む多価アルコールを重合反応に用いることもできる。
【0029】
上記のものに加えて、他のヒドロキシ官能性非イオン性ポリマーを本発明において用いることもできる。そのようなポリマーの幾つかの例としては、例えば、エトキシ化アルキルフェノール;エトキシ化又はプロポキシ化C
6−C
24脂肪族アルコール;一般式CH
3−(CH
2)
10-16−(O−C
2H
4)
1-25−OHを有するポリオキシエチレングリコールアルキルエーテル(例えば、オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル及びペンタエチレングリコールモノドデシルエーテル);一般式CH
3−(CH
2)
10-16−(O−C
3H
6)
1-25−OHを有するポリオキシプロピレングリコールアルキルエーテル;一般式C
8H
17−(C
6H
4)−(O−C
2H
4)
1-25−OHを有するポリオキシエチレングリコールオクチルフェノールエーテル(例えば、Triton(商標)X−100);一般式C
9H
19−(C
6H
4)−(O−C
2H
4)
1-25−OHを有するポリオキシエチレングリコールアルキルフェノールエーテル(例えば、ノノキシノール−9);C
8−C
24脂肪酸のポリオキシエチレングリコールエステル、例えば、ポリオキシエチレングリコールソルビタンアルキルエステル(例えば、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレート、PEG−20メチルグルコースジステアレート、PEG−20メチルグルコースセスキステアレート、PEG−80ひまし油、PEG−20ひまし油、PEG−3ひまし油、PEG600ジオレート、及びPEG400ジオレート)及びポリオキシエチレングリセロールアルキルエステル(例えば、ポリオキシエチレン−23グリセロールラウレート及びポリオキシエチレン−20グリセロールステアレート);C
8−C
24脂肪酸のポリオキシエチレングリコールエーテル(例えば、ポリオキシエチレン−10セチルエーテル、ポリオキシエチレン−10ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン−20セチルエーテル、ポリオキシエチレン−10オレイルエーテル、ポリオキシエチレン−20オレイルエーテル、ポリオキシエチレン−20イソヘキサデシルエーテル、ポリオキシエチレン−15トリデシルエーテル、及びポリオキシエチレン−6トリデシルエーテル);ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのブロックコポリマー(例えば、ポロキサマー)など、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0030】
II.
コンデンサの構成
前述のように、本発明のナノコンポジットは、一般にコンデンサの固体電解質内に組み入れられ、この固体電解質は、アノード体と誘電体とを含むアノードを覆う。ナノコンポジットを固体電解質内に組み入れる方法は、所望の用途に応じて変えることができる。とはいえ、コンデンサの種々の実施形態を以下でより詳しく説明する。
【0031】
A.
固体電解質
コンデンサの固体電解質は、1つ又はそれ以上の導電性ポリマー層を含むことができ、そのうちの少なくとも1つが本発明のナノコンポジットを含む。具体的な一実施形態において、例えば、固体電解質は、内側導電性ポリマー層と外側導電性ポリマー層とを含むことができる。内側層はアノード体の孔に含浸するように設計され、他方、外側層はコンデンサ本体の縁部領域を覆うように設計され、それにより誘電体への接着性を高めて、より機械的に堅牢な部材をもたらすようになっている。本明細書で用いられる「外側」という用語は、単にその層が内側層の上に重なっていることを意味するものと理解されたい。付加的なポリマー層を、外側層の上又は内側層の下、並びに内側層と外側層との間に配置することもできる。
【0032】
いずれにしても、内側層及び外側層の少なくとも1つに用いられる導電性ポリマーは、典型的には上記のような予備重合粒子の形態をとる。例えば、一実施形態において、内側層はモノマーのインサイチュ重合によって形成されるが、外側層は予備重合粒子から形成される。さらに他の実施形態において、両方の層が予備重合粒子から形成される。アノード体の良好な含浸を可能にするために、内側層に用いられる導電性ポリマーは、比較的小さいサイズ、例えば、約1乃至約150ナノメートル、幾つかの実施形態においては約2乃至約50ナノメートル、及び幾つかの実施形態においては約5乃至約40ナノメートルの平均サイズ(直径)を有するものとすることができる。外側層に用いられる粒子は、一般に縁部被覆度を高めることを目的とするので、内側層に用いられるものよりも大きいサイズを有するものとすることができる。例えば、外側層に用いられる粒子の平均サイズの内側層に用いられる粒子の平均サイズに対する比は、典型的には約1.5乃至約30、幾つかの実施形態においては約2乃至約20、及び幾つかの実施形態においては約5乃至約15である。外側層の分散液中に用いられる粒子は、約50乃至約500ナノメートル、幾つかの実施形態においては約80乃至約250ナノメートル、及び幾つかの実施形態においては約100乃至約200ナノメートルの平均サイズを有するものとすることができる。複数の内側層及び外側層を分散液から形成して、目標の全厚を達成することができることを理解されたい。例えば、形成される内側層の全厚は、約0.1乃至約5μm、幾つかの実施形態においては約0.1乃至約3μm、及び幾つかの実施形態においては約0.2乃至約1μmである。同様に、外側層の全厚は、約1乃至約50μm、幾つかの実施形態においては約2乃至約40μm、及び幾つかの実施形態においては約5乃至約20μmの範囲にすることができる。
【0033】
所望であれば、内側層と外側層との間に中間層を用いることができる。一実施形態において、例えば、上記のようなヒドロキシ官能性ポリマーと組み合せた予備重合粒子の分散液から形成される中間層が用いられる。そのような実施形態においては、内側層及び/又は外側層は一般に、そうしたヒドロキシ官能性非イオン性ポリマーを含まない。
【0034】
その具体的な構成に関わらず、本発明のナノコンポジットは、一般に固体電解質のいずれの部分に用いることもできる。特定の実施形態において、例えば、ナノコンポジットを用いて固体電解質の1つ又はそれ以上の外側層を形成して、所望の機械的堅牢性を達成することができる。もちろん、ナノコンポジットは、1つ又はそれ以上の内側層、1つ又はそれ以上の中間層、並びにそれら層の組合せに用いることもできることを理解されたい。
【0035】
B.
アノード
アノードのアノード体は、バルブ金属組成物から形成することができる。組成物の比電荷は、様々にすることができ、例えば、約2,000μF*V/g乃至約250,000μF*V/g、幾つかの実施形態においては約3,000μF*V/g乃至約200,000μF*V/g、及び幾つかの実施形態においては約5,000μF*V/g乃至約150,000μF*V/gとすることができる。当該技術分野で知られているように、比電荷は、静電容量に、使用されるアノード酸化電圧を掛け、次にこの積をアノード酸化される電極体の重量で割ることによって求めることができる。バルブ金属組成物は、一般に、バルブ金属(即ち、酸化することができる金属)又はバルブ金属をベースとする化合物、例えば、タンタル、ニオブ、アルミニウム、ハフニウム、チタン、これらの合金、これらの酸化物、これらの窒化物などを含む。例えば、バルブ金属組成物は、ニオブの導電性酸化物、例えば、ニオブ対酸素の原子比が1:1.0±1.0、幾つかの実施形態においては1:1.0±0.3、幾つかの実施形態においては1:1.0±0.1、及び幾つかの実施形態においては1:1.0±0.05である酸化ニオブを含むことができる。酸化ニオブは、NbO
0.7、NbO
1.0、NbO
1.1、及びNbO
2とすることができる。そのようなバルブ金属酸化物の例は、Fifeによる特許文献10、Fife他による特許文献11、Fife他による特許文献12、Fifeによる特許文献13、Kimmel他による特許文献14、Fife他による特許文献15、Kimmel他による特許文献16、及びKimmel他による特許文献17、並びに、Schnitterによる特許文献18、Schnitter他による特許文献19、Thomas他による特許文献20に記載されている。
【0036】
アノード体を形成するために、バルブ金属組成物の粉末が一般に使用される。粉末は、ノジュラー形、角ばった形(angular)、フレーク状など様々な形状のいずれか、並びにこれらの混合物を含むことができる。特定の付加成分を粉末に含めることもできる。例えば、圧縮してアノード体を形成するときに粒子が互いに確実に適切に粘着するようにするために、粉末を随意に結合剤及び/又は潤滑剤と混合することができる。適切な結合剤としては、例えば、ポリ(ビニルブチラール);ポリ(酢酸アセテート);ポリ(ビニルアルコール);ポリ(ビニルピロリドン);セルロースポリマー、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びメチルヒドロキシエチルセルロース;アタクチックポリプロピレン、ポリエチレン;ポリエチレングリコール(例えば、Dow Chemical Co.のCarbowax);ポリスチレン、ポリ(ブタジエン/スチレン);ポリアミド、ポリイミド、及びポリアクリルアミド、高分子量ポリエーテル;エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのコポリマー;フルオロポリマー、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、及びフルオロ−オレフィンコポリマー;アクリルポリマー、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリ(低級アルキルアクリレート)、ポリ(低級アルキルメタクリレート)、及び低級アルキルアクリレートとメタクリレートとのコポリマー;並びに、脂肪酸及びワックス、例えば、ステアリン酸及び他の石けん脂肪酸、植物性ワックス、マイクロワックス(精製パラフィン)、などを挙げることができる。結合剤は、溶媒に溶解させ分散させることができる。例示的な溶媒としては、水、アルコールなどを挙げることができる。使用する場合、結合剤及び/又は潤滑剤の割合は、全質量の約0.1重量%から約8重量%まで変化させることができる。しかし、結合剤及び/又は潤滑剤は本発明においては必ずしも必須ではないことを理解されたい。
【0037】
次に、得られた粉末を任意の従来の粉末プレス装置を用いて圧縮して、ペレットを形成することができる。例えば、ダイと1つ又は複数のパンチとを含むシングルステーション圧縮プレスであるプレス成形を使用することができる。代替的に、ダイと単一の下部パンチのみを用いるアンビル型圧縮プレス成形を使用することができる。シングルステーション圧縮プレス成形は、カム、トグル/ナックル、及び偏心/クランクプレスといった幾つかの基本型式で、単動、複動、フローティングダイ、可動盤、対向ラム、ねじ、衝撃、ホットプレス、コイニング又はサイジングといった種々の機能を有するものを利用することができる。粉末は、アノードリード(例えばタンタル線)の回りに圧縮することができる。アノードリードは、別の選択肢として、アノード体のプレス成形及び/又は焼結の後でアノード体に取付ける(例えば、溶接する)ことができることを理解されたい。
【0038】
圧縮後、得られたアノード体を次に、正方形、長方形、円形、楕円形、三角形、六角形、八角形、七角形、五角形など、任意の所望の形状に切断することができる。アノード体は、表面積対体積比を大きくしてESRを最小化し、静電容量の周波数応答を拡張するために、1つ又はそれ以上の皺(furrow)、溝(groove)、凹み、又は圧痕を含む点で「溝付き(fluted)」形状を有するものとすることもできる。次に、アノード体を、全てではなくとも大部分の結合剤/潤滑剤が除去される加熱ステップに供することができる。例えば、アノード体を、典型的には、約150℃乃至約500℃の温度で動作する炉によって加熱することができる。代替的に、結合剤/潤滑剤を、Bishop他による特許文献21に記載されているように、ペレットを水溶液に接触させることによって除去することもできる。その後、多孔質体を焼結して、一体になった集塊が形成される。焼結の温度、雰囲気、及び時間は、アノードのタイプ、アノードのサイズなど、様々な因子に依存し得る。典型的には、焼結は、約800℃乃至約1900℃、幾つかの実施形態においては約1000℃乃至約1500℃、及び幾つかの実施形態においては約1100℃乃至約1400℃の温度において、約5分乃至約100分、及び幾つかの実施形態においては約30分乃至約60分の時間にわたって行われる。所望であれば、焼結は、アノードへの酸素原子の移動を制限する雰囲気内で行うことができる。例えば、焼結は、真空、不活性気体、水素などの還元雰囲気中で行うことができる。還元雰囲気は、約10トル乃至約2000トル、幾つかの実施形態においては約100トル乃至約1000トル、及び幾つかの実施形態においては約100トル乃至約930トルの圧力にすることができる。水素と他の気体(例えば、アルゴン又は窒素)との混合物を用いることもできる。
【0039】
得られるアノードは、比較的低い炭素及び酸素含量を有する。例えば、アノードは、約50ppm以下の炭素、幾つかの実施形態においては約10ppm以下の炭素しか有さないものとすることができる。同様に、アノードは、約3500ppm以下の酸素しか有さず、幾つかの実施形態においては約3000ppm以下の酸素しか有さず、及び幾つかの実施形態においては約500乃至約2500ppmの酸素を含むものとすることができる。酸素含量は、LECO酸素分析装置によって計測することができ、タンタル表面上の自然酸化膜内の酸素及びタンタル粒子内のバルク酸素を含む。バルク酸素含量は、タンタルの結晶格子の周期によって制御することができ、これは、タンタル内の酸素含量が増加するにつれて溶解限度に達するまで直線的に増大する。この方法は、非特許文献1に記載されており、そこではタンタルの結晶格子の周期を計測するためにX線回折分析(XRDA)が用いられる。焼結されたタンタルアノード内の酸素は、薄い自然表面酸化膜に限られるものとすることができ、他方、タンタルのバルクは実質的に酸素を含まない。
【0040】
前述のように、アノード体には、その長手方向に延びるアノードリードを接続することもできる。アノードリードは、ワイヤ、シートなどの形状にすることができ、タンタル、ニオブ、酸化ニオブなどのバルブ金属化合物から形成することができる。リードの接続は、リードをボディに溶接するか又は形成中に(例えば、圧縮及び/又は焼結の前に)アノード体の中にリードを埋め込むなど、既知の技術によって達成することができる。
【0041】
誘電体もまた、アノード体を覆う又は被覆する。誘電体は、焼結アノードを陽極酸化(アノード酸化処理)して、誘電体層がアノード体の上に及び/又は内部に形成されるようにすることによって形成することができる。例えば、タンタル(Ta)アノード体をアノード酸化して、五酸化タンタル(Ta
2O
5)にすることができる。典型的には、アノード酸化は、初めに、例えばアノード体を電解質溶液に浸すなどして、アノード体に溶液を塗工することによって行われる。水(例えば、脱イオン水)などの溶媒が一般に使用される。イオン伝導率を高めるために、溶媒中で解離してイオンを形成することができる化合物を使用することができる。そのような化合物の例としては、例えば、電解質に関連して後述するような酸が挙げられる。例えば、酸(例えば、リン酸)は、アノード酸化溶液の約0.01wt%乃至約5wt%、幾つかの実施形態においては約0.05wt%乃至約0.8wt%、及び幾つかの実施形態においては約0.1wt%乃至約0.5wt%を構成することができる。所望であれば、酸の混合物を使用することもできる。
【0042】
アノード酸化溶液中を通して電流を流して、誘電体層を形成する。化成電圧値により、誘電体層の厚さが管理される。例えば、電源は、初めは必要な電圧に達するまで定電流モードに設定することができる。その後、電源を定電圧モードに切替えて、所望の誘電体厚がアノード体の表面全体に確実に形成されるようにすることができる。もちろん、パルス又はステップ定電圧法などの他の既知の方法を用いることもできる。アノード酸化が起る電圧は、典型的には約4V乃至約250V、幾つかの実施形態においては約9V乃至約200V、及び幾つかの実施形態においては約20V乃至約150Vの範囲にある。酸化中、アノード酸化溶液を、例えば約30℃以上、幾つかの実施形態においては約40℃乃至約200℃、及び幾つかの実施形態においては約50℃乃至約100℃の高温に保持することができる。アノード酸化は、室温又はそれ以下で行うこともできる。生じる誘電体層は、アノードの表面及びその孔の内部に形成され得る。
【0043】
C.
他の層
所望であれば、コンデンサは、当該技術分野で既知のように他の層をさらに含むことができる。例えば、比較的絶縁性の樹脂材料(天然又は合成)から作られる接着層のような接着層を誘電体と固体電解質との間に随意に形成することができる。そのような材料は、約10Ω・cmを上回る、幾つかの実施形態においては約100Ω・cmを上回る、幾つかの実施形態においては約1000Ω・cmを上回る、幾つかの実施形態においては約1×10
5Ω・cmを上回る、及び幾つかの実施形態においては約1×10
10Ω・cmを上回る、比抵抗を有するものとすることができる。本発明において用いることができる幾つかの樹脂材料としては、ポリウレタン、ポリスチレン、不飽和又は飽和脂肪酸のエステル(例えば、グリセリド)などが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、適切な脂肪酸エステルとしては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、エレオステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アロイリット酸、シェロール酸などのエステルが挙げられるが、これら限定されない。これらの脂肪酸のエステルは、比較的複雑な組合せで用いて、生じる膜を迅速に重合させて安定な層にすることができる「乾性油」を形成するときに、特に有用であることが見出されている。このような乾性油は、モノ、ジ、及び/又はトリグリセリドを含むことができ、これらはそれぞれ1つ、2つ、及び3つのエステル化される脂肪酸アシル残基を有するグリセロール骨格を有する。例えば、用いることができる幾つかの適切な乾性油としては、オリーブ油、アマニ油、ヒマシ油、キリ油、大豆油、及びシェラックが挙げられるが、これらに限定されない。これら及び他の保護被覆材料は、Fife他による特許文献22により詳しく記載されている。
【0044】
所望であれば、部材に炭素層(例えばグラファイト)及び銀層をそれぞれ施工することができる。例えば、銀被覆は、コンデンサのはんだ付け可能導電体、コンタクト層、及び/又は集電体として機能することができ、炭素被覆は、銀被覆と固体電解質との接触を制限することができる。かかる被覆は、固体電解質の一部分又は全体を覆うことができる。
【0045】
D.
組立て
コンデンサには、特に表面実装用途に使用される場合に、端子を設けることもできる。例えば、コンデンサは、コンデンサ素子のアノードリードが電気的に接続されるアノード端子と、コンデンサ素子のカソードが電気的に接続されるカソード端子とを含むことができる。任意の導電性材料、例えば、導電性金属(例えば、銅、ニッケル、銀、ニッケル、亜鉛、錫、パラジウム、鉛、銅、アルミニウム、モリブデン、チタン、鉄、ジルコニウム、マグネシウム、及びこれらの合金)を用いて端子を形成することができる。特に適した導電性金属としては、例えば、銅、銅合金(例えば、銅−ジルコニウム、銅−マンガン、銅−亜鉛、又は銅−鉄)、ニッケル、及びニッケル合金(例えば、ニッケル−鉄)が挙げられる。端子の厚さは、一般に、コンデンサの厚さを最小にするように選択される。例えば、端子の厚さは、約0.05乃至約1ミリメートル、幾つかの実施形態においては約0.05乃至約0.5ミリメートル、及び幾つかの実施形態においては約0.07乃至約0.2ミリメートルの範囲にすることができる。1つの例示的な導電性材料は、Wieland(ドイツ)から市販されている銅−鉄合金プレートである。所望であれば、当該技術分野で知られているように、最終部材を回路基板に確実に取付けることができるように、端子の表面をニッケル、銀、金、錫などで電気めっきすることができる。具体的な一実施形態において、両方の端子表面がニッケル及び銀でそれぞれフラッシュめっきされ、他方、取付け表面もまた錫半田層でめっきされる。
【0046】
図1を参照すると、コンデンサ素子33に電気的に接続したアノード端子62及びカソード端子72を含む電解コンデンサ30が示されている。コンデンサ素子33は、上面37、下面39、前面36、及び背面38を有する。カソード端子72は、コンデンサ素子33のいずれの表面に電気的に接触することもできるが、図示した実施形態においては下面39及び背面38と電気的に接触する。より具体的には、カソード端子72は、第2の構成要素74にほぼ垂直に配置された第1の構成要素73を含む。第1の構成要素73は、コンデンサ素子33の下面39に概ね平行に電気的に接触する。第2の構成要素74は、コンデンサ素子33の背面38に概ね平行に電気的に接触する。これらの部分は、一体のものとして描かれているが、代替的に、互いに直接に又は付加的な導電性要素(例えば金属)を介して接続される別個の部片とすることができる。また、特定の実施形態において、第2の構成要素74をカソード端子から省くことができることを理解されたい。同様に、アノード端子62は、第2の構成要素64にほぼ垂直に配置された第1の構成要素63を含む。第1の構成要素63は、コンデンサ素子33の下面39に概ね平行に電気的に接触する。第2の構成要素64は、アノードリード16を支える領域51を含む。図示した実施形態において、領域51は、リード16の表面接触及び機械的安定性をさらに高めるように「U形」を有する。
【0047】
端子は、当該技術分野で既知のいずれかの技法を用いてコンデンサ素子に接続することができる。一実施形態において、例えば、カソード端子72及びアノード端子62を定めるリードフレームを設けることができる。電解コンデンサ素子33をリードフレームに取付けるために、初めに導電性接着剤をカソード端子72の表面に塗工することができる。導電性接着剤は、例えば、樹脂組成物に含有された導電性金属粒子を含むことができる。金属粒子は、銀、銅、金、白金、ニッケル、亜鉛、ビスマスなどとすることができる。樹脂組成物は、熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂)、硬化剤(例えば、酸無水物)及びカップリング剤(例えば、シランカップリング剤)を含むことができる。適切な導電性接着剤は、Osako他による特許文献23に記載されているであろう。様々な技法のいずれかを用いて導電性接着剤をカソード端子72に塗工することができる。例えば、実用的かつコスト節約の恩恵があるので、プリント技術を用いることができる。
【0048】
端子をコンデンサに取付けるには、一般に様々な方法を用いることができる。一実施形態において、例えば、初めにアノード端子62の第2の構成要素64及びカソード端子72の第2の構成要素74を上向きに曲げて
図1に示す位置にする。その後、コンデンサ素子33を、その下面39が接着剤に接触し、アノードリード16が上向きU形の領域51に収容されるように、カソード端子72の上に配置する。所望であれば、プラスチックパッド又はテープのような絶縁材料(図示せず)をコンデンサ素子33の下面39とアノード端子62の第1の構成要素63との間に配置して、アノード端子とカソード端子とを電気的に絶縁することができる。
【0049】
次に、アノードリード16を、機械的溶接、レーザ溶接、導電性接着剤などの当該技術分野で既知の任意の技術を用いて領域51に電気的に接続する。例えば、アノードリード16は、レーザを用いてアノード端子62に溶接することができる。レーザは、一般に、誘導放出によって光子を放出することができるレーザ媒体と、レーザ媒体の要素を励起するエネルギー源とを含む。適切なレーザの1つのタイプは、レーザ媒体がネオジウム(Nd)でドープされたアルミニウム及びイットリウムガーネット(YAG)からなるレーザである。励起される粒子は、ネオジウムイオンNd
3+である。エネルギー源は、レーザ媒体に連続エネルギーを供給して連続レーザビームを放出するか、又はエネルギー放電してパルスレーザビームを放出することができる。アノードリード16をアノード端子62に電気的に接続すると、次に導電性接着剤を硬化させることができる。例えば、熱プレスを用いて熱及び圧力を加え、電解コンデンサ素子33が接着剤によってカソード端子72に確実に適切に接着されるようにすることができる。
【0050】
ひとたびコンデンサ素子が取り付けられると、リードフレームは樹脂ケーシング内に入れられ、次にこれをシリカ又は他の任意の既知の封入材料で充填することができる。ケースの幅及び長さは、目的とする用途に応じて変えることができる。適切なケーシングとしては、例えば、「A」、「B」、「C」、「D」、「E」、「F」、「G」、「H」、「J」、「K」、「L」、「M」、「N」、「P」、「R」、「S」、「T」、「V」、「W」、「Y」、「X」、又は「Z」ケース(AVX Corporation)を挙げることができる。使用するケースサイズに関わらず、コンデンサ素子は、アノード及びカソード端子の少なくとも一部分が回路基板への実装のために露出するように封入される。例えば、
図1に示すように、コンデンサ素子33は、アノード端子62の一部分及びカソード端子72の一部分が露出するようにケース28内に封入される。
【0051】
形成される特定の方法には関わらず、得られるコンデンサは優れた電気特性を示すことができる。等価直列抵抗(ESR)は、2.2ボルトのDCバイアス、及び高調波のない周波数100kHzにおける0.5ボルトのピークピーク正弦波信号を用いて計測したとき、例えば、約1,200ミリオーム以下、幾つかの実施形態においては約300ミリオーム以下、幾つかの実施形態においては約200ミリオーム以下、及び幾つかの実施形態においては約1乃至約100ミリオームであり得る。さらに、漏れ電流は、一般に1つの導電体から絶縁体を通して隣の導電体に流れる電流を指すものであるが、これを比較的低いレベルに維持することができる。例えば、漏れ電流は、約40μA以下、幾つかの実施形態においては約25μA以下、及び幾つかの実施形態においては約15μA以下にすることができる。コンデンサの規格化された漏れ電流の数値は、同様に、約0.2μA/μF*V以下、幾つかの実施形態においては約0.1μA/μF*V以下、及び幾つかの実施形態においては約0.05μA/μF*V以下とすることができ、ここでμAはマイクロアンペアであり、μF*Vは静電容量と定格電圧との積である。ESR及び規格化漏れ電流の値は、比較的高い温度においても維持することができる。例えば、これらの値は、約100℃乃至約350℃、及び幾つかの実施形態においては約200℃乃至約300℃(例えば240℃)の温度におけるリフロー(例えば、10秒間)後に維持することができる。
【0052】
このコンデンサはまた、約35ボルト以上、幾つかの実施形態においては約50ボルト以上、及び幾つかの実施形態においては約60ボルト以上といった比較的高い「破壊電圧」(コンデンサが故障する電圧)を示すことができる。このコンデンサはまた、雰囲気湿度の存在下においても小さい静電容量損失及び/又は変動しか有さないようにすることを可能にする、比較的高い百分率のウェット静電容量(wet capacitance)を示すことができる。この性能特性は、「ウェット対ドライ静電容量百分率」によって定量化することができ、次式で決定される。
ウェット対ドライ静電容量=(ドライ静電容量/ウェット静電容量)×100
【0053】
本発明のコンデンサは、例えば、約50%以上、幾つかの実施形態においては約60%以上、幾つかの実施形態においては約70%以上、及び幾つかの実施形態においては約80%乃至100%のウェット対ドライ静電容量パーセンテージを示すことができる。
本発明は、以下の実施例を参照することによってより良く理解することができる。
【実施例】
【0054】
試験手順
等価直列抵抗(ESR)
等価直列抵抗は、Keithley3330精密LCZメータを使用し、ケルビン・リード2.2ボルトDCバイアス及び0.5ボルトのピークピーク正弦波信号を用いて計測することができる。動作周波数は100kHzとすることができ、温度は23℃±2℃とすることができる。
【0055】
静電容量(CAP)
静電容量は、Keithley3330精密LCZメータを使用し、ケルビン・リード2.2ボルトDCバイアス及び0.5ボルトのピークピーク正弦波信号を用いて計測することができる。動作周波数は120Hzとすることができ、温度は23℃±2℃とすることができる。
【0056】
漏れ電流(DCL)
漏れ電流は、漏れ試験メータを使用し、温度23℃±2℃及び定格電圧において、最短で60秒後に計測することができる。
【0057】
安定性は、リフロー温度において実行した。個々のコンデンサのESR、CAP及びDCLを、1回目、2回目及び3回目の各リフロー後に記録した。
【0058】
実施例1
40,000μFV/gのタンタル粉末を用いてアノード試料を形成した、各アノード試料をタンタル線と共に埋め込み、1500℃で焼結し、5.3g/cm
3の密度に圧縮した。得られたペレットは、1.20×1.85×2.50mmのサイズを有していた。ペレットを、温度85℃で、導電率8.6mSの水/リン酸電解質内で75ボルトまでアノード酸化して誘電体層を形成した。次に、アノードをトルエンスルホン酸鉄(III)(Clevios(商標)C、H.C.Starck)のブタノール溶液に5分間浸し、次いで3,4−エチレンジオキシチオフェン(Clevios(商標)M、H.C.Starck)に1分間浸すことによって、導電性ポリマー被覆を形成した。45分間の重合の後、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)の薄膜が誘電体の表面に形成された。部材をメタノール中で洗浄して、反応副生成物を除去し、液体電解質中でアノード酸化し、再びメタノールで洗浄した。重合サイクルを6回繰り返した。その後、部材を、固形分2%及び粘度20mPa・sを有する分散されたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(Clevios(商標)K、H.C.Starck)に浸した。被覆後、部材を125℃で20分間乾燥させた。このプロセスは繰返さなかった。その後、部材を固形分2%及び粘度160mPa・sを有する分散されたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(Clevios(商標)K、H.C.Starck)に浸した。被覆後、部材を125℃で20分間乾燥させた。このプロセスを8回繰り返した。
次に部材をグラファイト分散液に浸し、乾燥させた。最後に、部材を銀分散液に浸し、乾燥させた。このようにして、10μF/25Vコンデンサの複数の部材(250個)を作成した。
【0059】
実施例2
異なる導電性ポリマー被覆を用いたこと以外は実施例1で説明した方法で、コンデンサを形成した。より具体的には、分散されたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)で被覆した後、部材を、固形分2%及び粘度1250mPa・s(Aquacyl(商標)、Nanocyl)を有する水混合液中に分散された多層ナノチューブに浸した。被覆後、部材を125℃で20分間乾燥させた。このプロセスを2回繰り返した。次に部材をグラファイト分散液に浸し、乾燥させた。最後に、部材を銀分散液に浸し、乾燥させた。このようにして、10μF/25Vコンデンサの複数の部材(250個)を作成した。
【0060】
実施例3
異なる導電性ポリマー被覆を用いたこと以外は実施例1で説明した方法で、コンデンサを形成した。より具体的には、分散されたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)で被覆した後、部材を、固形分2%及び粘度160mPa・sを有するポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(Clevios(商標)K、H.C.Starck)及び固形分2%を有する多層ナノチューブ(Nanocyl)を含む分散液に浸した。被覆後、部材を125℃で20分間乾燥させた。このプロセスを8回繰り返した。次に部材をグラファイト分散液に浸し、乾燥させた。最後に、部材を銀分散液に浸し、乾燥させた。このようにして、10μF/25Vコンデンサの複数の部材(250個)を作成した。
【0061】
次に、実施例1〜3の完成したコンデンサをリフロー安定特性に関して試験した。ESR、CAP及びDCLの中央値の結果を以下の表1、2、及び3に示す。
【表1】
【表2】
【表3】
示されるように、多層ナノチューブから形成された部材は、改善されたESRのリフロー安定性を有した。
【0062】
当業者であれば、本発明の趣旨及び範囲から逸脱せずに、本発明のこれら及び他の改変及び変形を実施することができるであろう。さらに、種々の実施形態の態様は全体的に又は部分的に交換することができることを理解されたい。さらに、当業者であれば、前述の説明は例示のみを目的としたものであり、添付の特許請求の範囲においてさらに説明される本発明をそのように限定することを意図したものではないことを理解するであろう。