(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
[黄色発光蛍光体および青色発光蛍光体の組成]
一実施形態にかかる蛍光体混合物は、黄色発光蛍光体と青色発光蛍光体とを含むものである。この蛍光体に含まれる黄色発光蛍光体は、250〜460nmの波長範囲内に発光ピークを有する励起光で励起した際に、510〜570nmの波長範囲内に発光ピークを有する光、すなわち黄緑色から橙色にわたる領域の光を放射する。この黄色発光蛍光体は、Sr2Si7Al3ON13の結晶構造と実質的に同じ結晶構造を有する母体を含み、この母体はCeで付活されている。本実施形態において、黄色発光蛍光体の組成は、下記一般式(a)で表わされる。
((Sr
paMa
1−pa)
1−xaCe
xa)2
yaSi10−zaAlzaO
uaN
wa (a)
ここで、
M
aは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の少なくともひとつであり、
0≦pa≦1、
0<xa≦1、
0.8≦ya≦1.1、
2≦za≦3.5、
0<ua≦1、
1.8≦za−ua、
13≦ua+wa≦15
である。
【0011】
((Sr
pbM
b1−pb)
1−xbCe
xb)
3−ybSi
13−zbAl
3+zbO
2+ubN
21−wb (b)
ここで
M
bは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の少なくともひとつであり、
0≦pb≦1、
0<xb≦1、
−0.1≦yb≦0.6、
−3.0≦zb≦0.4、
−1.5<ub≦−0.3、
−3.0<ub−wb≦1.0
である。
【0012】
上記一般式(b)に示されるように、発光中心元素Ceは蛍光体結晶を構成する金属元素の一部を置換する。M
bはアルカリ金属またはアルカリ土類金属の少なくとも一つであり、好ましくは、Ba、Ca、およびMgから選ばれる少なくとも一種である。pbが0.85以上、より望ましくは0.9以上であれば、異相の生成が促進されることはない。なお、蛍光体の発光特性の最適化のために、pbが1であることが望ましい場合もあるが、そのような場合であっても不可避不純物として、SrまたはCe以外の金属が含まれる場合がある。このような場合には、一般に本発明の効果が十分に発揮される。
【0013】
Sr、M
b、およびCeの合計の0.1モル%以上がCeであれば、十分な発光効率を得ることができる。SrおよびMを含まなくてもよい(xb=1)が、xbが0.5未満の場合には、発光効率の低下(濃度消光)を極力抑制することができる。したがって、xbは0.001以上0.5以下が好ましい。発光中心元素Ceが含有されることによって、本実施形態にかかる蛍光体は、前記励起光で励起した際、青色領域の発光、すなわち430〜500nmの波長範囲内にピークを有する発光を示す。なお、Ceの一部が、不可避不純物的な他の金属元素に置換されていても所望の特性が損なわれることはない。このような不可避不純物としては、例えば、Tb、Eu、およびMnなどが挙げられる。具体的には、Ceと不可避不純物の合計に対する不可避不純物の割合が15モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましい。
【0014】
ybが0.6以上の場合には、結晶欠陥が多くなることがある。一方、ybが−0.1未満であると、過剰なアルカリ土類金属が異相として析出するため、発光特性の低下を招くことがある。ybは、−0.05≦yb≦0.4であることが好ましい。
【0015】
zbが−3.0未満または0.4よりも大きい場合には、過剰なSiまたは過剰なAlが異相として析出することがある。一般に−3.0≦zb≦0.4であり、−1.5≦zb≦0.2であることが好ましい。
【0016】
ubが−1.5以下であると、結晶欠陥が多くなることがある。uは、−1.2≦ub≦0であることが好ましい。
【0017】
(ub−wb)が−3.0未満の場合、または1.0を超える場合、本実施形態において特定される結晶構造が維持できなくなることがある。場合によっては、異相が生成して、本実施形態の効果が発揮されない。ubは、−2.0≦ub−wb≦0.5であることが好ましい。
【0018】
本実施形態による黄色発光蛍光体および青色発光蛍光体は、AlおよびSiを含む。ここで、AlおよびSiは本発明による効果を損なわない範囲で、類似元素によって置換されていてもよい。具体的にはSiの一部が、Ge、Sn、Ti、Zr、およびHf等に置換されていてもよく、Alの一部がGa、In、Sc、Y、La、Gd、およびLu等によって置換されていてもよい。これらの元素は、Si、Al、および類似元素の合計の10モル%以下であることが好ましい。
【0019】
本実施形態による黄色発光蛍光体および青色発光蛍光体は、上述した好ましい条件を全て備えているので、前記励起光で励起した際に、それぞれ黄色光および青色光を高い効率で発光することができる。
【0020】
[黄色発光蛍光体および青色発光蛍光体の構造]
本実施形態における黄色発光蛍光体は、Sr
2Si
7Al
3ON
13結晶をベースとして、その構成元素であるSr、Si、Al、O、またはNが他の元素で置き換わったり、Ceなどのほかの金属元素が固溶したものであるということもできる。本実施形態において、このような結晶をSr
2Si
7Al
3ON
13属結晶とよぶ。このような置き換え等によって、結晶構造が若干変化することがあるものの、骨格原子間の化学結合が切れるほどに原子位置が大きく変わることは少ない。原子位置は、結晶構造と原子が占めるサイトとその座標によって与えられる。
【0021】
Sr
2Si
7Al
3ON
13結晶は単斜晶系、特に斜方晶系に属し、格子定数は、a=11.8Å、b=21.6Å、c=5.01Åである。また、空間群Pna21に属する。Sr
2Si
7Al
3ON
13における化学結合の長さ(Sr−NおよびSr−O)は、下記表1に示した原子座標から計算することができる。
【0023】
本実施形態における黄色発光蛍光体とSr
2Si
7Al
3ON
13結晶の構造が同一であるか否かは、XRDや中性子回折により判断することができる。本実施形態において、黄色発光蛍光体は、Cu−Kα線を用いたBragg−Brendano法によるX線回折パターンにおいて、特定の回折角度(2θ)にピークを有する。本実施形態における黄色発光蛍光体は、CuKα特性X線(波長1.54056Å)を用いたX線回折において、15.05〜15.15、23.03〜23.13、24.90〜25.00、25.70〜25.80、25.98〜26.08、29.29〜29.39、30.94〜31.04、31.61〜31.71、31.88〜31.98、33.05〜33.15、33.62〜33.72、34.40〜34.50、35.25〜35.35、36.09〜36.19、36.52〜36.62、37.16〜37.26、および56.42〜56.52の回折角度(2θ)、17箇所のうち、好ましくは、少なくとも10箇所に同時に回折ピークを示すことが好ましい。
【0024】
本実施形態において、青色発光蛍光体は、Sr
3Si
13Al
3O
2N
21結晶をベースとして、その構成元素であるSiとAlとが、またはOとNとが相互に置き換わったり、Ceなどのほかの金属元素が固溶したものであるということもできる。本実施形態において、このような結晶をSr
3Si
13Al
3O
2N
21属結晶とよぶ。このような置き換え等によって、結晶構造が若干変化することがあるものの、骨格原子間の化学結合が切れるほどに原子位置が大きく変わることは少ない。原子位置は、結晶構造と原子が占めるサイトとその座標によって与えられる。
【0025】
本実施形態による青色発光蛍光体の基本的な結晶構造が変化しない範囲において、本実施形態の効果を奏することができる。本実施形態にかかる蛍光体は、格子定数およびSr−NおよびSr−Oの化学結合の長さ(近接原子間距離)が、Sr
3Si
13Al
3O
2N
21の場合とは異なることがある。それぞれ対応する化学結合の長さの差分が、Sr
3Si
13Al
3O
2N
21の結晶が有する構造の格子定数、およびSr
3Si
13Al
3O
2N
21における化学結合の長さ(Sr−NおよびSr−O)の±15%以内であれば、結晶構造が変化していないと定義する。格子定数は、X線回折や中性子線回折により求めることができ、Sr−NおよびSr−Oの化学結合の長さ(原子間距離)は、原子座標から計算することができる。
【0026】
Sr
3Si
13Al
3O
2N
21結晶は単斜晶系、特に斜方晶系に属する。格子定数は、a=14.8Å、b=7.5Å、c=9.0Åである。
【0027】
本実施形態における青色発光蛍光体は、このような結晶構造を有することを必須とする。この範囲を超えて化学結合の長さが変化すると、その化学結合が切れて別の結晶構造となり、本実施形態に係る効果を得ることができなくなることがある。
【0028】
本実施形態における青色発光蛍光体は、Sr
3Si
13Al
3O
2N
21と実質的に同一の結晶構造を有する無機化合物を基本とし、その構成元素Srの一部が発光中心イオンCeに置換されたものであり、各元素の組成が所定の範囲内に規定されている。このときに量子効率が高いという好ましい特性を示す。
【0029】
本実施形態における青色発光蛍光体とSr
3Si
13Al
3O
2N
21結晶の構造が同一であるか否かは、XRDや中性子回折により判断することができる。本実施形態による蛍光体は、Cu−Kα線を用いたBragg−Brendano法によるX線回折パターンにおいて、特定の回折角度(2θ)にピークを有する。本実施形態による青色発光蛍光体は、CuKα特性X線(波長1.54056Å)を用いたX線回折において、15.3〜15.5°、25.7〜25.9°、29.6〜29.8°、30.84〜31.04°、30.95〜31.15°、31.90〜32.10°、および37.35〜37.55°の回折角度(2θ)、7箇所のうち、好ましくは、少なくとも5箇所に同時に回折ピークを示すことが好ましい。
【0030】
[黄色発光蛍光体および青色発光蛍光体の物性]
本実施形態にかかる黄色発光蛍光体は、その粒径が好ましくは5μm以上40μm以下、より好ましくは10μm以上38μm以下である。また、青色発光蛍光体については、黄色発光蛍光体に比べて粒径が大きいことが一般的である。ただし、青色発光蛍光体を粉砕することにより、または温度や時間等の焼成条件の調整をすることにより、黄色発光蛍光体と同等の粒径にすることも可能である。本実施形態にかかる黄色発光蛍光体または青色発光蛍光体は、その粒径が小さいことにより、発光装置の製造に際して、蛍光体を含む組成物を供給するためのディスペンサの詰まりを抑制することができ、また、組成物中で結晶粒子が沈降しにくいので、製造の歩留まりが改良されるという利点がある。さらに、形成された発光装置においては、粒子が小さいために蛍光体が発光層に均一に分布しやすく、発光の色むらが少ないという利点もある。
【0031】
実施形態による青色発光蛍光体は、青色発光蛍光体として広く商用化されているBAM蛍光体と比較して発光スペクトの半値幅が広く、実施形態による蛍光体を用いることで演色性の高い白色発光装置を得ることが可能となる。
【0032】
実施形態における青色発光蛍光体は、波長450nm付近の吸収が少ない。このため、青色発光蛍光体から放射される青色光、あるいは励起光源から放射される青色光は外部に放射されるので、発光装置から放射される光の一部となる。このような光を有効に利用することで、演色性に優れた発光装置が得られるとともに、後述する色割れがおこりにくくなる。
【0033】
実施形態による黄色発光蛍光体および青色発光蛍光体の、青色光の屈折率は、1.8 〜2.3の範囲にある。通常、蛍光体層を形成させる場合にマトリックスを構成するシリコーン樹脂の屈折率は1.4〜1.6程度であり、黄色発光蛍光体および青色発光蛍光体の屈折率よりも低い。このため、蛍光体層のマトリックスを構成する樹脂の屈折率と蛍光体の屈折率の差が散乱を大きくし、色割れ抑制の効果があると考えられる。
【0034】
[黄色発光蛍光体と青色発光蛍光体を含む蛍光体混合物]
本実施形態による黄色発光蛍光体と青色発光蛍光体を含んでなる混合物の混合比率は特に限定されないが、質量比で、好ましくは、98:2〜2:98であり、より好ましくは、10:90〜90:10である。
また、蛍光体混合物は、黄色発光蛍光体および青色発光蛍光体以外の蛍光体を含んでもよい。たとえば、緑色発光蛍光体や赤色発光蛍光体が挙げられる。
【0035】
[蛍光体混合物の製造方法]
本実施形態による蛍光体混合物は、任意の方法で製造することができる。たとえば、黄色発光蛍光体と青色発光蛍光体を後述の別々に製造し、その後任意の割合で混合することができる。また、黄色発光蛍光体と青色発光蛍光体を同時に単一のプロセスで製造することもできる。通常、黄色発光蛍光体または青色発光蛍光体を製造する場合には、その設計組成に併せて、原料を配合する。すなわち、黄色発光蛍光体であれば、Sr
2Si
7Al
3ON
13またはそれに近似した組成にあわせて原料が配合され、青色発光蛍光体であればSr
3Si
13Al
3O
2N
21属またはそれに近似した組成となるように原料が配合される。これに対して、単一のプロセスで製造しようとする場合には、黄色蛍光体と青色蛍光体が同時生成する焼成条件の範囲内で、原料のSi含有率を高くすると青色蛍光体の生成比率が高くなる傾向がある。さらに、単一のプロセスで製造した蛍光体混合物に対して、さらに黄色発光蛍光体または青色発光蛍光体のいずれか、または両方を混合することもできる。
【0036】
本実施形態にかかる蛍光体混合物またはそれに用いられる黄色もしくは青色発光蛍光体は、任意の方法で製造することができるが、たとえば各元素を含む原料粉体を混合し、焼成することによって製造することができる。
【0037】
Sr含有原料は、Srの窒化物、珪化物、炭化物、炭酸塩、水酸化物、および酸化物から選択することができる。M含有原料は、Mの窒化物、珪化物、炭化物、炭酸塩、水酸化物、および酸化物から選択することができる。Al含有原料は、Alの窒化物、酸化物および炭化物から選択することができ、Si含有原料は、Siの窒化物、酸化物および炭化物から選択することができる。Ce含有原料は、Ceの塩化物、酸化物、窒化物および炭酸塩から選択することができる。
【0038】
原料混合物の焼成は、大気圧以上の圧力で行なうことが望ましい。大気圧以上の圧力で焼成が行なわれると、窒化ケイ素が分解しにくい点で有利となる。窒化ケイ素の高温での分解を抑制するためには、圧力(絶対圧)は5気圧以上であることがより好ましく、焼成温度は1400〜2000℃の範囲が好ましい。こうした条件であれば、材料または生成物の昇華といった不都合を引き起こさずに、目的の焼結体が得られる。後述するように焼成工程が複数ある場合には、その焼成工程の一部またはすべてを加圧条件下に行うことが好ましく、焼成工程のすべてを加圧条件下に行うことがより好ましい。
【0039】
なお、本実施形態にかかる蛍光体の製造法は、焼成温度を変更した2段階以上の焼成工程を含むことがこのましく、最初の焼成工程の焼成温度より、その後の焼成工程の温度が高いことが好ましい。
【0040】
このため、原料混合物を1400〜1700℃、好ましくは1500〜1700℃の焼成温度で焼成する1次焼成工程と、1次焼成工程で得られた中間生成物を、1800〜2000℃、好ましくは1800〜1900℃の焼成温度で焼成する2次焼成工程とを組み合わせることが好ましい。また、黄色発光蛍光体と青色発光蛍光体を同時に単一のプロセスで製造する場合には、焼成温度範囲は1700−1900℃が好ましいが、焼成温度を低くすると青色蛍光体の生成比率が高くなる傾向がある。
【0041】
また、焼成の雰囲気は、いずれの焼成工程においても、酸素含有率が低いことが好ましい。これは、Sr
3N
2、 AlNなどの原料の酸化を避けるためであり、具体的には、窒素雰囲気、高圧窒素雰囲気、脱酸素雰囲気中で焼成を行なうことが望まれる。また、雰囲気中には、50vol%程度までの水素分子が含まれていてもよい。
【0042】
また焼成時間は特に限定されないが、たとえば4〜80時間、好ましくは6〜60時間である。黄色発光蛍光体と青色発光蛍光体を同時に単一のプロセスで製造する場合には、焼成時間を長くするほど、黄色蛍光体の生成比率が高くなる傾向がある。
【0043】
[発光装置]
実施形態による発光装置は、励起光源である発光素子と、その発光素子から照射される光によって励起されて蛍光を発する、前記の黄色発光蛍光体(Y)と青色発光蛍光体(B)を含む蛍光体混合物との組み合わせを具備する
。
【0044】
発光装置に用いられる発光素子、たとえばLED素子は、それから放射される光が、用いられる蛍光体を励起することができるものであることが必要である。
【0045】
このような観点から、蛍光体として黄色蛍光発光体および青色発光蛍光体を含む蛍光体混合物を用いた蛍光装置においては、発光素子は、250〜460nm、高演色性を求める場合は好ましくは250〜400nm、高効率を求める場合は好ましくは430〜460nmの領域に発光ピークを有する波長の光を放射するものが選択される。
【0046】
なお、実施形態による発光装置は、前記蛍光体混合物の他に、他の波長領域の光を放射する蛍光体を組み合わせることもできる。このような蛍光体としては、490〜580nmの波長範囲内にピークを有する発光を示す蛍光体(緑色発光蛍光体(G))、600〜660nmの波長範囲内にピークを有する発光を示す蛍光体(赤色発光蛍光体(R))などが挙げられる。これらの蛍光体は、前記発光素子からの照射される光で励起されるものであっても、黄色発光蛍光体および青色発光蛍光体から放射される光によって励起されるものであってもよい。これらの蛍光体は、目的とする発光装置から放射される光の色、色温度、演色性などに応じて、適切に組み合わせて用いられる。
【0047】
実施形態による発光装置は、従来知られている任意の発光装置の形態とすることができる。
図3は、本発明の一実施形態にかかる発光装置の断面を示すものである。
【0048】
本発明の実施形態による発光装置は、従来知られている任意の発光装置の形態とすることができる。
図3は、本発明の一実施形態にかかる発光装置の断面を示すものである。
【0049】
図3に示された発光装置においては、基材300はリードフレームを成形してなるリード301およびリード302と、これに一体成形されてなる樹脂部303とを有する。樹脂部303は、上部開口部が底面部より広い凹部305を有しており、この凹部の側面には反射面304が設けられる。
【0050】
凹部305の略円形底面中央部には、発光素子306がAgペースト等によりマウントされている。発光素子306としては、例えば発光ダイオード、レーザダイオード等を用いることができる。この発光素子は、用いられる蛍光体の組み合わせに応じて、適当な波長の光を放射するものから選択される。例えば、GaN系等の半導体発光素子等を用いることができる。発光素子306の電極(図示せず)は、Auなどからなるボンディングワイヤー307および308によって、リード301およびリード302にそれぞれ接続されている。なお、リード301および302の配置は、適宜変更することができる。
【0051】
蛍光層309は、必要な蛍光体310を、例えばシリコーン樹脂からなる樹脂層311中に5〜70量%の割合で分散、もしくは沈降させることによって形成することができる。ここで、蛍光体は、実施形態による黄色発光蛍光体(Y)および青色発光蛍光体(B)の混合物に、他の蛍光体、例えば緑色発光蛍光体(G)などを組み合わせて用いることができる。実施形態にかかる蛍光体には、共有結合性の高い酸窒化物が母体として用いられている。このため、本発明の実施形態による蛍光体は一般に疎水性であり、樹脂との相容性が極めて良好である。したがって、樹脂と蛍光体との界面での散乱が著しく抑制されて、光取出し効率が向上する。
【0052】
発光素子306としては、n型電極とp型電極とを同一面上に有するフリップチップ型のものを用いることも可能である。この場合には、ワイヤーの断線や剥離、ワイヤーによる光吸収等のワイヤーに起因した問題を解消して、信頼性の高い高輝度な半導体発光装置が得られる。また、発光素子306にn型基板を用いて、次のような構成とすることもできる。具体的には、n型基板の裏面にn型電極を形成し、基板上の半導体層上面にはp型電極を形成して、n型電極またはp型電極をリードにマウントする。p型電極またはn型電極は、ワイヤーにより他方のリードに接続することができる。発光素子306のサイズ、凹部305の寸法および形状は、適宜変更することができる。
【0053】
青色発光蛍光体として慣用さているBaMgAl:Eu
2+蛍光体を用いた発光装置は500nmあたりの発光強度が低い。しかし、本実施形態による黄色発光蛍光体および青色発光蛍光体の混合物を、赤色発光蛍光体および波長365nmの発光素子を組み合わせた白色光を放射する発光装置を製造すると、この発光装置は、500nm付近における発光が多く、演色性が高くなる。
【0054】
白色光を放射する発光装置を製造する場合、一般に、青色LEDに黄色発光蛍光体を組み合わせる。この場合、発光素子の直上部分の発光強度が高く、周辺部の発光強度が低い、いわゆる色割れが問題となることがある。そこで、従来の黄色発光蛍光体に代えて、本発明による蛍光体混合物を使用した場合に、蛍光体混合物中の青色発光蛍光体は、屈折率が樹脂より高く、発光素子から放射される青色光、および黄色発光蛍光体の発光をほとんど吸収しないため、樹脂中で散乱体として機能し、白色発光装置の色割れを抑制すると考えられる。
【0055】
以下、諸例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例のみに限定されるものではない。
【0056】
実施例1
Sr含有原料、Ce含有原料、Si含有原料、Al含有原料として、SrSi
2、CeCl
3、Si
3N
4、およびAl
2O
3、およびAlNを用意し、それぞれ秤量した。配合質量は、4.120g、0.333g、3.400g、0.510g、および0.820gとして原料混合物を得た。このときの蛍光体の設計組成は、(Sr
0.955Ce
0.045)
3Si
13Al
3O
2N
21であった。この原料混合物をそれぞれBNるつぼに充填して焼成した。実施例1においては、まずH
2:N
2の混合比(モル比)が1:1である雰囲気下、1気圧1500℃で12時間加熱し、得られた焼成物を破砕した。これを3回繰り返した後、窒素雰囲気下、7.5気圧1850℃で10時間加熱し、得られた焼成物を破砕して、実施例1の蛍光体混合物に含まれる青色発光蛍光体B1が得られた。得られた蛍光体はいずれも365nmの励起光を照射したところ、青色の発光を示した。
【0057】
また、Sr含有原料、Ce含有原料、Si含有原料、Al含有原料として、Sr
3N
2、CeCl
3、Si
3N
4、およびAlNを用意し、バキュームグローブボックス中でそれぞれ秤量した。Sr
3N
2、CeCl
3、Si
3N
4、およびAlNの配合質量は、それぞれ2.902g、0.148g、5.262g、および1.537gとした。このときの蛍光体の設計組成は、(Sr
9.98Ce
0.02)
2Si
7.5Al
2.5N
14であった。配合された原料粉体は、乾式混合した。
【0058】
得られた混合物を窒化ホウ素るつぼに収容し、7.5気圧の窒素雰囲気中、1850℃8時間焼成して、実施例1の蛍光体混合物に含まれる黄色発光蛍光体Y1が得られた。
【0059】
Sr、Si、AlおよびCeは、例えば誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP発光分光分析といわれることもある)により測定することができる。具体的には、酸窒化物蛍光体の試料を白金ルツボに計量し、アルカリ融解によって分解し、内標準元素Yを添加して測定溶液を調製し、ICP発光分光分析により測定する。測定装置には、Sr、Si、およびCeに関しては、例えばSPS−3520UV4000型ICP発光分光分析装置(商品名、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製)、を用いることができる。
【0060】
OおよびNは、例えば不活性ガス融解法により測定することができる。具体的には、酸窒化物蛍光体の試料を黒鉛ルツボ中で加熱融解し、試料に含まれるOを不活性ガス搬送法によりCOとし、さらにそれをCO
2に酸化した後、赤外線吸収法で酸素の含有量を測定し、さらにCO
2を除去した後に熱伝導法でNの含有量を測定する。測定装置には、例えばTC−600型酸素・窒素・水素分析装置(商品名、LECOコーポーレーション(米国)製)を用いることができる。
【0061】
蛍光体Y1およびB1について組成分析を行った結果は表2に示す通りであった。表中に記載された組成はY1についてSi+Al=10となるように、B1についてはSi+Al=16となるように規格化されている。
【0063】
また、同様の方法により製造した蛍光体のY1およびB1のXRDプロファイルは、それぞれ
図5および
図6に示す通りであった。これらの蛍光体は、CuKα特性X線(波長1.54056Å)を用いたBragg−Brendano法によるX線回折パターンにおいて、特定の回折角度(2θ)にピークを有する。
【0064】
上述の黄色発光蛍光体Y1と、青色発光蛍光体B1を混合した蛍光体混合物BY1と、赤色蛍光体(SCASN)と、波長365nmの発光素子とを組み合わせた白色光を放射する、実施例1の発光装置を製造した。また、比較例として、青色発光蛍光体として慣用されているBaMgAl:Eu
2+蛍光体を用いて比較の発光装置を製造した。これらの発光装置の発光スペクトルのシミュレーション結果は
図7に示すとおりであった。実施例1の蛍光体混合物を用いた発光装置は、500nm付近における発光が多く、演色性が高いことが確認された。
【0065】
原料の配合比以外は上述と同様の方法で製造され、以下の表3に記載された組成をもつ蛍光体混合体BY2、BY3、およびBY4を用いて、上述と同様の発光装置を製造した。また、比較例は上記と同じものを使用した。これらの発光装置の発光スペクトルのシミュレーション結果は
図8に示す通りであった。
【0067】
実施例2
蛍光体混合物BY1と、波長450nmの発光素子とを組み合わせた白色光を放射する発光装置を製造した場合、蛍光体混合物中の青色発光蛍光体は、屈折率が樹脂より高く、発光素子の青色光、および黄色発光蛍光体の発光をほとんど吸収しないため、樹脂中で散乱体として機能し、白色発光素子の色割れが少ない。
【0068】
実施例3
原料の配合比以外は上述と同様の方法で製造され、以下の表4に記載された組成をもつ蛍光体混合体BY5、BY6、およびBY7のいずれかと、赤色蛍光体(SCASN)と、波長450nmの発光素子とを組み合わせた白色光を放射する、実施例3の発光装置を製造した。これらの発光装置の発光スペクトルのシミュレーション結果は
図9に示すとおりであった。
【0070】
実施例4
原料に所望の配合比となるように秤量および混合して、原料混合物を得る。この原料混合物をそれぞれBNるつぼに充填して焼成する。焼成後、得られた焼成物を破砕すると、黄色発光蛍光体および青色発光蛍光体を含む蛍光体混合物BY8が得られる。得られる蛍光体混合物は365nmの励起光を照射すると、青色から黄色の領域の発光を示す。
【0071】
この蛍光体混合物BY8と、および赤色蛍光体(SCANAN)と、波長365nmの発光素子とを組み合わせた白色光を放射する発光装置を製造する。実施例3の蛍光体混合物を用いた発光装置は、500nm付近における発光強度が高く、演色性が高い。
【0072】
実施例5
蛍光体混合物BY8と、波長450nmの発光素子を組み合わせた白色光を放射する発光装置を製造した場合、蛍光体混合物中の青色発光蛍光体は、屈折率が樹脂より高く、発光素子の青色光、および黄色発光蛍光体の発光をほとんど吸収しないため、樹脂中で散乱体として機能し、白色発光素子の色割れが少ない。
【0073】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行なうことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。