(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような保持装置を用いて片状や板状の物品を保持する場合、物品の表裏いずれかの主面に磁石を吸着させることによって、吸着時の物品の姿勢を安定させることができる。ところが、工程の都合によっては、片状や板状の物品が「立った」姿勢、すなわち主面が垂直になった姿勢で供給されることがある。多くの物品が近接して並べられていると、物品の側方から保持装置を主面に近づけることが難しく、物品を直接取り上げることが難しい。
【0005】
このような場合、一旦物品を平行クランプなどで掴んで台上に「寝た」状態で置き、改めて保持装置で取り上げることができる。しかし、平行クランプを用いて物品を台上に寝かせるためには、複雑な動作が必要となる。
【0006】
本発明は、上記を考慮してなされたものであり、微小な物品を取り上げるのに適した斜面構造を提供することを目的とする。また、その斜面構造を用いた物品の取上方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の斜面台は、非磁性材からなる斜面と、前記斜面に埋め込まれた磁石とを有し、前記磁石は、前記斜面側の端面が第1磁極である。ここで、第1磁極はN極またはS極である。
【0008】
好ましくは、前記斜面は、下に向かって傾斜が小さくなる第1部分と、前記第1部分の下端から滑らかに連続して、傾斜が一定である第2部分を有し、前記磁石が前記第2部分に埋め込まれている。
【0009】
好ましくは、前記磁石がNd−Fe−B系磁石である。また、好ましくは、前記磁石による前記斜面の表面における磁束密度が300mT以上である。
【0010】
本発明の物品取上方法は、上記いずれかの斜面台と保持装置を用いる。その保持装置は、1個の永久磁石または少なくとも1個の永久磁石を含む複数の磁性部材の組み合わせによって構成され、前方端面に第1磁極が形成された磁石ユニットを有し、該磁石ユニットがスリーブ内を直線運動可能な保持装置である。本発明の物品取上方法は、前記斜面の上部に物品を落下させるステップと、前記斜面を滑り落ちる前記物品を前記磁石に吸引させて静止させるステップと、前記磁石ユニットが後退した状態で前記スリーブを前記静止した物品に当接させるステップと、前記磁石ユニットを前進させて前記物品を前記保持装置に吸着させるステップと、前記保持装置の全体を前記斜面から引き離すステップとを有する。
【0011】
ここで、前方とは保持装置から見て保持する物品のある方向をいい、後方とはその反対方向をいう。磁石ユニットが前方に移動することを前進するといい、後方に移動することを後退するという。また、磁性部材とは磁性材からなる部材であり、磁性材とは永久磁石と軟質磁性材を含む概念である。
【0012】
好ましくは、前記保持装置は、前記磁石ユニットを構成する部材のうち最も前方にある部材が、前記スリーブの軸方向に貫通する穴を有する環状または筒状である。あるいは、好ましくは、前記保持装置は、前記磁石ユニットの前方端面の少なくとも中央部が、前方に凸の球面である。
【0013】
また、好ましくは、前記保持装置は、前記磁石ユニットを構成する部材のうち最も前方にある部材が永久磁石である。
【0014】
また、好ましくは、前記保持装置は、前記永久磁石がNd−Fe−B系磁石である。また、好ましくは、前記保持装置は、前記磁石ユニットの前方端面における磁束密度が300mT以上である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の斜面台または物品取上方法によれば、単純な構造を用いて、微小な物品を容易に取り上げることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の物品取上用斜面台の実施形態を
図1および
図2に基づいて説明する。
【0018】
図1および
図2において、斜面台20は、斜面21と斜面に埋め込まれた磁石25を有する。斜面21は、下に向かって傾斜が小さくなる第1部分22と、第1部分の下端から滑らかに連続して、傾斜が一定である第2部分23とからなる。磁石25は第2部分に埋め込まれている。取り上げようとする物品を斜面の上部から落下させると、物品が斜面を滑り落ち、磁石に吸着されて止まるので、これを別途用意した保持装置で吸着して取り上げることができる。
【0019】
斜面21は、非磁性材からなる。非磁性材としては、プラスチックや木材を用いることが好ましい。物品を落下させたときに、物品を傷つけにくいからである。
【0020】
斜面の大きさは特に限定されないが、取り上げようとする物品の大きさによって好ましい範囲が規定される。磁石に対して物品が大きすぎると、物品を磁石で静止させることができない。本実施形態の斜面台が好適に適用できる物品の大きさを考慮すれば、斜面の幅は好ましくは100mm以下であり、より好ましくは50mm以下である。また、斜面が小さすぎると斜面台を製造することが難しくなるので、斜面の幅は好ましくは2mm以上であり、より好ましくは5mm以上である。また、斜面の長さは、物品の加速を抑えるため短い方がよい。斜面の長さは、物品のサイズ以上であり、物品のサイズよりわずかに大きい程度あればよい。本実施形態の斜面台が好適に適用できる物品の大きさを考慮すれば、斜面の長さは、好ましくは100mm以下、より好ましくは50mm以下であり、好ましくは2mm以上、より好ましくは5mm以上である。
【0021】
また、本実施形態の斜面21は傾斜が一定の第2部分23を有するが、これに限られるものではなく、斜面全体が、下に向かって傾斜が小さくなる第1部分22のみから構成されていてもよい。また、物品を落下させる場所の傾斜が小さすぎると、物品が斜面で跳ねて、なめらかに滑り落ちない虞がある。したがって、斜面最上部の傾斜は、好ましくは70度以上であり、より好ましくは80度以上である。
【0022】
斜面21の傾斜が大きすぎると、物品を磁石で吸着・停止させることが難しくなる。したがって、斜面の傾斜は、磁石25が埋め込まれた位置で、好ましくは60度以下であり、より好ましくは50度以下である。また、物品を十分に減速させるためにも、磁石を埋め込む位置の傾斜は小さい方がよい。しかしその場合、斜面の全長が長くなり、斜面台の設置スペースが大きくなる。この点から、斜面の傾斜は、磁石25が埋め込まれた位置で、好ましくは15度以上であり、より好ましくは30度以上である。
【0023】
本実施形態の磁石25は永久磁石である。磁石としては、磁力の強いものを用いることが好ましい。これにより、より多種の材質からなる物品を吸着して停止させることができるからである。磁石は、好ましくはNd−Fe−B系の磁石(ネオジム磁石)である。あるいは、磁石の種類に関わらず、その磁石による斜面表面における磁束密度が、好ましくは300mT以上であり、より好ましくは400mT以上であり、特に好ましくは500mT以上である。これにより、一般的な磁石に吸着されないオーステナイト系のステンレス鋼や、鉄、コバルト、ニッケル、クロム、マンガンなどを成分として含む多くの合金からなる物品を吸着して、停止させることができる。なお、入手の容易さの点からは、磁石の磁束密度は700mT以下であることが好ましい。
【0024】
磁石25は、内部の磁化の向きが斜面21と略直交しており、斜面側の端面26が第1磁極(例えばN極)であり、反対側の、斜面台内部の端面27が第2磁極(例えばS極)である。このように斜面に面して磁極を形成することにより、斜面表面における磁束密度を大きくすることができる。
【0025】
磁石25は、斜面側端面26が斜面21に露出していてもよい。このとき、斜面側端面が斜面からわずかに凹んでいてもよい。他方、磁石は、斜面全体に貼り付けられたフィルムやシートに覆われていてもよい。これにより、物品が、磁石が埋め込まれた凹部に引っ掛らず、なめらかに滑り落ちることができる。磁石を覆うシートとして、例えば、厚さ1mmのポリテトラフルオロエチレンシートを好適に用いることができる。
【0026】
なお、物品が磁石25の上部に一定して滑り落ちてくるように、斜面の左右両側に下流に向かって左右の幅が狭くなるような案内壁(図示しない)を設けてもよい。これにより滑走してきた物品を正確に磁石25の中央部に案内することができる。また物品が磁石によって停止しなかった場合に備えて斜面終端部にゴムや樹脂製の弾性体を用いた停止部材を設けてもよい。
【0027】
次に、物品の取り上げに用いる保持装置の第1の実施形態を
図3に基づいて説明する。
【0028】
図3において、保持装置10は、スリーブ30と、エアシリンダー35と、磁石ユニット40とを有する。スリーブは、前方(
図3の下側)の端に開口32を有する。エアシリンダーは、本体36がフランジ38を介してスリーブに固定されており、可動ロッド37がスリーブ内に収容されている。磁石ユニットはエアシリンダーの可動ロッドの先端に固定されている。エアシリンダーが伸びると、磁石ユニットが前進して、開口部で物品を吸着することができる。
【0029】
スリーブ30は、非磁性材からなる。非磁性材としては、プラスチック、銅、アルミニウム等を用いることができる。なかでも、プラスチックを用いることが好ましい。スリーブの開口端31が物品に当接するときに、物品を傷つけにくいからである。
【0030】
また、スリーブ開口端31には、物品のずれを抑制するためにすべり止め部を設けてもよい。すべり止め部は、例えば、厚さ0.1mm〜0.3mm程度のゴムや樹脂製の弾性体シートを開口端31に貼着して形成することができる。
【0031】
スリーブ30の形状は特に限定されないが、円筒形であることが好ましい。同じ断面積に対して、外径を最も小さくすることができるからである。
【0032】
エアシリンダー35は、本体36がフランジ38を介してスリーブ30に固定されている。エアシリンダーをフランジに固定する方法およびスリーブを固定する方法は、ねじ留め等公知の方法を用いることができる。また、フランジを用いず、エアシリンダー本体を直接スリーブに固定してもよい。本体36がスリーブに固定されていることによって、エアシリンダーが伸縮すると、スリーブ内に収容された可動ロッド37がスリーブに対して相対的に、その軸方向に直線運動することができる。
【0033】
エアシリンダー35はリニアアクチュエーターの一種である。リニアアクチュエーターは、種々のエネルギーを直線運動に変換する装置である。リニアアクチュエーターとしては、エアシリンダーの他に、油圧シリンダー、電動シリンダー、リニアモーターを用いたもの、モーターの回転運動を運動変換機構により直線運動に変換するものを用いることができる。なかでも、小型化が可能で、精確な制御が容易であることから、エアシリンダーを用いるのが好ましい。
【0034】
磁石ユニット40は、可動ロッド37の先端に固定されている。これにより、エアシリンダー35が伸縮すると、可動ロッドの直線運動に伴って、磁石ユニットがスリーブ30内面に案内されて、スリーブの軸方向に直線運動する。
【0035】
磁石ユニット40は、本実施形態では単一の永久磁石50からなる。磁石ユニットの前方端面47が、斜面台に埋め込まれた磁石の斜面側端面(
図2の26)と同種の第1磁極(例えばN極)であり、反対側の後方端面48が第2磁極(例えばS極)である。このように開口32に面して磁極を形成することにより、磁石ユニットの前方端面から出る磁束密度が大きくなり、強い吸着力が得られる。
【0036】
なお、磁石ユニットは、少なくとも1個の永久磁石を含む複数の磁性部材の組み合わせによって構成されていてもよい。磁石ユニットの他の構成例は後述する。
【0037】
永久磁石50としては、磁力の強いものを用いることが好ましい。これにより、より多種の材質からなる物品を吸着することができるからである。永久磁石は、好ましくはNd−Fe−B系の磁石(ネオジム磁石)である。あるいは、永久磁石の種類に関わらず、磁石ユニット40の前方端面47における磁束密度が、好ましくは300mT以上であり、より好ましくは400mT以上であり、特に好ましくは500mT以上である。これにより、一般的な磁石に吸着されないオーステナイト系のステンレス鋼からなる物品や、鉄、コバルト、ニッケル、クロム、マンガンなどを成分として含む多くの合金からなる物品を吸着することができる。また、強い磁力で強力に保持することで、微小な物品を高速に搬送できる。なお、入手の容易さの点からは、永久磁石の磁束密度は700mT以下であることが好ましい。
【0038】
次に、本実施形態の斜面と保持装置を用いた物品の取上方法を
図4に基づいて説明する。
【0039】
図4Aにおいて、物品90を、図示しないパレット等から平行クランプ70等で掴み上げ、斜面21の上方に移動させて、落下させる。物品は、自重により斜面を滑落し(
図4B)、磁石25によって吸着されて、斜面の途中で停止する(
図4C)。
【0040】
次いで、
図4Dにおいて、保持装置10を、磁石ユニット40が後退した状態で、物品90に正対させて、スリーブ30の開口端31を物品に当接させる。保持装置をロボットアーム等によって操作する場合は、カメラで物品の位置を確認しながら保持装置の姿勢、位置を調整することにより、正確な動作が可能である。
【0041】
次いで、
図4Eにおいて、エアシリンダーを伸ばし、可動ロッド37と磁石ユニット40を前進させて、物品を保持装置に吸着させる。
【0042】
次いで、
図4Fにおいて、保持装置10の全体を、物品90を保持したまま、斜面から引き離す。以上により、物品を取り上げることができた。
【0043】
ここで重要なことは、斜面に埋め込まれた磁石と、吸着装置の磁石ユニットが反発するように、両者が反対向きに磁化されていて、磁石25の斜面側の端面26と磁石ユニット40の前方端面47が、ともに第1磁極(
図4ではN極)であることである。これにより、
図4Eにおいて、磁石ユニット40に吸着した物品90と磁石25が反発し、
図4Fにおいて、物品を吸着したまま保持装置を斜面から引き離すことができる。
【0044】
もし、磁石25の斜面側の端面26と磁石ユニット40の前方端面47が逆の磁極であると、
図4Fにおいて、保持装置を引き離すときに、磁石25と物品90が引き合い、物品が保持装置から外れることがある。
【0045】
本実施形態の斜面台は、斜面に磁石を埋め込むことによって、物品を一定した位置に停止させることができる。また、本実施形態の斜面台は、その単純な構造によって、小型化が容易である。もし、磁石を埋め込まない斜面台を用いるとすると、斜面の傾斜の小さい部分を長くして物品を減速させ、斜面の終端部や停止部材で止まった物品を取り上げることになろう。しかし、微小で軽量な物品では、斜面や停止部材で跳ねて裏返しになったり、停止する位置が一定しないことが多い。本実施形態の斜面台と保持装置を用いることによって、より確実に物品を取り上げることができる。
【0046】
次に、保持装置のいくつかの変形例を説明する。
【0047】
物品の取り上げに用いる保持装置の第2の実施形態を
図5〜7に基づいて説明する。本実施形態の保持装置は、磁石ユニットの構成が第1の実施形態と異なる。
【0048】
図5において、保持装置11の磁石ユニット41は2つの部材からなる。前方の部材は永久磁石51である。後方の磁性部材61は、永久磁石であっても軟質磁性材からなる軟質磁性部材であってもよい。軟質磁性材としては、透磁率の高い、鉄などの各種公知の材料を用いることができる。好ましくは、磁石ユニットの最も前方にある部材は永久磁石である。これにより、より強い吸着力が得られるからである。
【0049】
なお、磁石ユニットの構成は、
図5のものに限られない。例えば、第1の実施形態のように、磁石ユニットが単一の永久磁石からなるものであってもよい。また、例えば、
図6に示すように、磁石ユニット43は、前方に軟質磁性部材63を配置し、後方に永久磁石53を配置してもよい。より一般的には、磁石ユニットは、1個の永久磁石、または少なくとも1個の永久磁石を含む複数の磁性部材の組み合わせによって構成されていればよい。
【0050】
図5に戻って、本実施形態のように磁石ユニットが複数の磁性部材からなる場合も、永久磁石としては、磁力の強いものを用いることが好ましい。これにより、より多種の材質からなる物品を吸着することができるからである。永久磁石51は、好ましくはNd−Fe−B系の磁石(ネオジム磁石)である。あるいは、永久磁石の種類に関わらず、磁石ユニット41の前方端面47における磁束密度が、好ましくは300mT以上であり、より好ましくは400mT以上であり、特に好ましくは500mT以上である。これにより、一般的な磁石に吸着されないオーステナイト系のステンレス鋼からなる物品や、鉄、コバルト、ニッケル、クロム、マンガンなどを成分として含む多くの合金からなる物品を吸着することができる。また、強い磁力で強力に保持することで、微小な物品を高速に搬送できる。なお、入手の容易さの点からは、永久磁石の磁束密度は700mT以下であることが好ましい。
【0051】
磁石ユニット41をエアシリンダーの可動ロッド37の先端に固定する方法は特に限定されず、接着剤を用いて接着する方法や、ねじ等を用いた機械的な方法などを用いることができる。
【0052】
磁石ユニット41を構成する部材同士の接合方法も特に限定されない。
図5では、前方にある永久磁石51は、後方に隣接する磁性部材61に、磁力により吸着されて結合している。この構造を採用するためには、磁石ユニット41と物品との吸着力に比べて、永久磁石51と磁性部材61との吸着力が格段に大きい必要がある。例えば、永久磁石51がNe−Fe−B系磁石で、物品が一般的な磁石に着かないものなら、永久磁石51と磁性部材61の吸着力が格段に大きいので、この構造を採用することができる。この構造により、永久磁石51の交換を極めて容易に行うことができる。
【0053】
永久磁石51の大きさは、強い磁力が得られるという点からは、大きい方が好ましい。一方、微小な物品を対象とする本実施形態の保持装置では、保持装置自体も小型であることが望ましく、スリーブの軸に垂直な断面における外径は、好ましくは40mm以下であり、より好ましくは20mm以下である。実際には、物品の種類やハンドリングの内容に応じて、所要の吸着力を得るための磁石の種類・サイズ等を決め、磁石の外形に合わせてスリーブを選択することになろう。永久磁石のスリーブ軸方向への長さは特に限定されない。磁石が長いほど磁力が強くなるので、必要に応じて適当な長さのものを選択することができる。
【0054】
本実施形態では、永久磁石51は環状である。物品の吸着面に穴が存在する場合、磁石ユニットの最も前方にある部材が環状または筒状であると、この形状が、物品の磁気的な位置決め手段として作用する。以下に説明する。
【0055】
物品を磁石に吸着させる場合、磁石からでる磁力線がなるべく物品内を通るように、物品が位置や向きを変えようとする力が働く。微小な部品には固定のために穴が形成されているものが多い。そして、吸着時に位置や向きを変えようとする傾向は、物品の吸着面に物品を貫通する穴が形成されていると、特に顕著になる。
【0056】
図7Aに穴97が形成された物品91の平面図を示す。このような物品を、穴のない磁石、例えば円柱状の磁石50に吸着させる場合、吸着の瞬間に物品が動いて、位置がずれたり向きが変化しやすい(
図7Bから
図7Cへの変化)。また、一旦吸着しても、搬送中に物品が動きやすく、物品を解放する瞬間にも物品が動きやすい。この現象は、穴57のある環状や筒状の磁石51を用いた場合にも起こり得る(
図7Dから
図7Eへの変化)。しかし、磁石の穴57を物品の穴97と同心にして、吸着面に垂直に磁石を近づけて、一旦吸着がされると、物品の位置および向きが安定する(
図7F)。本実施形態の保持装置では、永久磁石51の穴と物品の穴が同心になるように物品をスリーブで押さえながら、磁石ユニット41を近づけて吸着することができるので、以後は、搬送中にも物品が動きにくい。高速搬送による物品のずれを抑制するには、前述のとおり、スリーブ開口端31にすべり止め部を設けることが好ましい。
【0057】
本実施形態の保持装置11を用いる物品取上の動作は、基本的に、第1実施形態のそれと同じである。本実施形態では、取り上げ動作において、永久磁石51の穴57と物品91の穴97が同心になるように保持装置11が操作される点で、第1実施形態と異なる。保持装置11を用いる場合、スリーブを物品に当接させて、物品を押さえながら、磁石ユニットを吸着させるので、吸着の瞬間に物品が動くことがなく、永久磁石51の穴と物品の穴を同心にして、磁石ユニットを吸着させることができる。そして、2つの穴が同心になって吸着が完了すると、以後は、搬送中に物品の位置がずれたり、向きが変わったりすることが起こりにくい。
【0058】
次に、物品の取り上げに用いる保持装置の第3の実施形態を
図8に基づいて説明する。
【0059】
図8において、本実施形態の保持装置15は、永久磁石55が球形である点で第2の実施形態と異なる。このように、磁石ユニット45の前方端面47の中央部が、前方に凸の球面であることによって、穴を有する物品を吸着するときに、物理的に位置決めができる。なお、永久磁石55の形状は、球形に限られず、例えば半球形であってもよい。
【0060】
本実施形態でも、磁石ユニット45の前方端面47に第1磁極(例えばN極)が形成されている。球形の永久磁石55を後方に隣接する磁性部材65に磁力のみによって結合する場合は、磁性部材として棒状の永久磁石を用いることにより、前方端面に正しく第1磁極がくるように永久磁石55の向きを合わせることができる。なお、その場合の棒磁石の磁力は弱くてもよい。
【0061】
本実施形態の保持装置15の動作は、基本的に、第1および第2実施形態のそれと同じである。本実施形態では、取り上げ動作において、永久磁石55の球面が物品90の穴97に嵌るように保持装置15が操作される点で、第1および第2実施形態と異なる。保持装置15を用いる場合、永久磁石55の球面が物品の穴に少し入った状態で物品が保持されるので、搬送中に物品の位置がずれることがなく、向きが変わりにくい。
【0062】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で、様々な変形が可能である。
【0063】
例えば、斜面に埋め込まれた磁石は電磁石であってもよい。