特許第6681154号(P6681154)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6681154表示装置用カバーウィンドウ、これを備える表示装置、および表示装置用カバーウィンドウの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6681154
(24)【登録日】2020年3月25日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】表示装置用カバーウィンドウ、これを備える表示装置、および表示装置用カバーウィンドウの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/00 20060101AFI20200406BHJP
   G02F 1/1333 20060101ALI20200406BHJP
   B05D 3/02 20060101ALI20200406BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20200406BHJP
   C08J 7/04 20200101ALI20200406BHJP
【FI】
   G09F9/00 302
   G02F1/1333
   B05D3/02 Z
   B32B27/18 Z
   C08J7/04 Z
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-127087(P2015-127087)
(22)【出願日】2015年6月24日
(65)【公開番号】特開2016-14876(P2016-14876A)
(43)【公開日】2016年1月28日
【審査請求日】2018年6月6日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0077608
(32)【優先日】2014年6月24日
(33)【優先権主張国】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】512187343
【氏名又は名称】三星ディスプレイ株式會社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Display Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】鄭 ▲ヨン▼鐵
(72)【発明者】
【氏名】南 承郁
(72)【発明者】
【氏名】任 志▲ヒョク▼
【審査官】 西島 篤宏
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/084686(WO,A1)
【文献】 特開2007−237483(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/059702(WO,A1)
【文献】 特開2004−202996(JP,A)
【文献】 特開2011−231243(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 9/00
B05D 3/02
B32B 27/18
C08J 7/04
G02F 1/1333
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースフィルムと、
前記ベースフィルムの上に配設されるコーティング層と、
を備え、
前記コーティング層は、ヨウ素系開始剤およびホウ酸系開始剤のうちのいずれか1種以上の開始剤を含むコーティング液の塗布によって形成され、
前記コーティング層は、モノマーとして、下記の一般式1で表わされる化合物を含み、
前記ヨウ素系開始剤は、下記の一般式2で表わされる化合物を含み、前記ホウ酸系開始剤は、下記の一般式3で表わされる化合物を含む表示装置用カバーウィンドウ。



式中、RはCHであり、前記R'はエポキシ基である。



【請求項2】
前記コーティング液は溶媒をさらに含む請求項1に記載の表示装置用カバーウィンドウ。
【請求項3】
前記ヨウ素系開始剤は光硬化性を帯び、
前記ホウ酸系開始剤は光硬化性および熱硬化性を帯びる請求項1に記載の表示装置用カ
バーウィンドウ。
【請求項4】
表示パネルと、
前記表示パネルの上に配設されるカバーウィンドウと、
を備え、
前記カバーウィンドウは、
ベースフィルムと、
前記ベースフィルムの上に配設されるコーティング層と、
を備え、
前記コーティング層は、ヨウ素系開始剤およびホウ酸系開始剤のうちのいずれか1種以上の開始剤を含むコーティング液の塗布および硬化によって形成され、
前記コーティング層は、モノマーとして、下記の一般式1で表わされる化合物を含み、
前記ヨウ素系開始剤は、下記の一般式2で表わされる化合物を含み、前記ホウ酸系開始剤は、下記の一般式3で表わされる化合物を含む表示装置。



式中、RはCHであり、前記R'はエポキシ基である。



【請求項5】
前記コーティング液は溶媒をさらに含む請求項に記載の表示装置。
【請求項6】
前記ヨウ素系開始剤は光硬化性を帯び、前記ホウ酸系開始剤は光硬化性および熱硬化性
を帯びる請求項4または5に記載の表示装置。
【請求項7】
前記開始剤の含有量は、0.5質量%〜8.0質量%であり、
前記モノマーの含有量は、40質量%〜90質量%である請求項4または5に記載の表示装置。
【請求項8】
ベースフィルムを用意するステップと、
前記ベースフィルムの上にコーティング液を塗布するステップと、
前記コーティング液を乾燥および硬化させるステップと、
前記硬化されたコーティング液をアニーリングするステップと、
を含み、前記アニーリングするステップは、常湿条件下で行われ、
前記コーティング液は、ヨウ素系開始剤およびホウ酸系開始剤のうちのいずれか1種以上の開始剤を含み、また、モノマーとして、下記の一般式1で表わされる化合物を含み、
前記ヨウ素系開始剤は、下記の一般式2で表わされる化合物を含み、前記ホウ酸系開始剤は、下記の一般式3で表わされる化合物を含むカバーウィンドウの製造方法。



式中、RはCHであり、前記R'はエポキシ基である。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置用カバーウィンドウ、これを備える表示装置、および表示装置用カバーウィンドウの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、携帯電話、ナビゲーション、デジタルカメラ、電子書籍、携帯用ゲーム機、または各種の端末などのように、液晶表示装置(Liquid Crystal Display;LCD)や有機電界発光表示装置(Organic Light Emitting Diode;OLED)が表示装置として適用された様々なモバイル電子機器が用いられている。
【0003】
このようなモバイル機器に用いられる通常の表示装置において、表示パネルの前方には、ユーザーが表示部を覗けるように透明なカバーウィンドウが配設されている。前記カバーウィンドウは装置の最外部に配設されているため、機器の内部の表示パネルなどを保護できるように外部の衝撃に強くなければならない。
【0004】
また、スイッチやキーボードを入力装置として用いていた従来の方式の代わりに、最近には、表示画面と一体に形成されるタッチパネルを用いる構造が広く普及されて、従来のモバイル機器に比べてカバーウィンドウの表面が指などと接触することが頻繁に起こって、より強い強度が求められている。
【0005】
さらに、最近には、フレキシブル表示装置への取り組みが盛んに行われており、このような表示装置に適用されるカバーウィンドウは折り畳み可能な柔軟性を有する部材からなることが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2013−0083496号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、現状のカバーウィンドウでは、上記の要求に十分に応えることができなかった。本発明は、このような問題点を解決するために案出されたものであり、折り畳むことができながらも所定のレベル以上の表面硬さを有し、黄変現象を防ぐことのできる表示装置用カバーウィンドウ、これを備える表示装置、および表示装置用カバーウィンドウの製造方法を提供するところにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、本発明の一実施形態によるカバーウィンドウは、ベースフィルムと、前記ベースフィルムの上に配設されるコーティング層と、を備え、前記コーティング層は、ヨウ素系開始剤およびホウ酸系開始剤のうちのいずれか1種以上の開始剤を含むコーティング液の塗布によって形成される。
【0009】
ここで、前記コーティング液は、モノマーおよび溶媒をさらに含んでいてもよい。
【0010】
さらに、前記モノマーは、下記の一般式1で表わされる化合物を含んでいてもよい。
【0011】
【化1】
【0012】
式中、RはCHであり、前記R'はエポキシ基である。
【0013】
また、前記ヨウ素系開始剤は、下記の一般式2で表わされる化合物を含んでいてもよい。
【0014】
【化2】
【0015】
また、前記ホウ酸系開始剤は、下記の一般式3で表わされる化合物を含んでいてもよい。
【0016】
【化3】
【0017】
また、前記ヨウ素系開始剤は、光硬化性を帯びてもよい。
【0018】
また、前記ホウ酸系開始剤は、光硬化性および熱硬化性を帯びてもよい。
【0019】
また、前記開始剤の含有量は、0.5質量%〜8.0質量%であってもよい。
【0020】
また、前記モノマーの含有量は、40質量%〜90質量%であってもよい。
【0021】
また、前記溶媒は、メチルエチルケトン(Methyl Ethyl Ketone;MEK)であってもよい。
【0022】
本発明の他の観点による表示装置は、表示パネルと、前記表示パネルの上に配設されるカバーウィンドウと、を備え、前記カバーウィンドウは、ベースフィルムと、前記ベースフィルムの上に配設されるコーティング層と、を備え、前記コーティング層は、ヨウ素系開始剤およびホウ酸系開始剤のうちのいずれか1種以上の開始剤を含むコーティング液の塗布および硬化によって形成される。
【0023】
ここで、前記コーティング液は、モノマーおよび溶媒をさらに含んでいてもよい。
【0024】
また、前記モノマーは、下記の一般式1で表わされる化合物を含んでいてもよい。
【0025】
【化4】
【0026】
式中、RはCHであり、前記R'はエポキシ基である。
【0027】
また、前記ヨウ素系開始剤は、下記の一般式2で表わされる化合物を含んでいてもよい。
【0028】
【化5】
【0029】
また、前記ホウ酸系開始剤は、下記の一般式3で表わされる化合物を含んでいてもよい。
【0030】
【化6】
【0031】
ここで、前記ヨウ素系開始剤は、光硬化性を帯びてもよい。
【0032】
また、前記ホウ酸系開始剤は、光硬化性および熱硬化性を帯びてもよい。
【0033】
また、前記開始剤の含有量は、0.5質量%〜8.0質量%であってもよく、前記モノマーの含有量は、40質量%〜90質量%であってもよい。
【0034】
本発明の他の観点によるカバーウィンドウの製造方法は、ベースフィルムを用意するステップと、前記ベースフィルムの上にコーティング液を塗布するステップと、前記コーティング液を乾燥および硬化させるステップと、前記硬化されたコーティング液をアニーリングするステップと、を含む。
【0035】
ここで、前記アニーリングするステップは、常湿条件下で行われてもよい。
【0036】
本発明の他の観点によれば、ヨウ素系開始剤およびホウ酸系開始剤のうちのいずれか1種以上の開始剤を含むコーティング液が提供される。
【0037】
本発明の他の観点によれば、上記コーティング液をベースフィルム上に塗布することで作製される、フィルムが提供される。
【発明の効果】
【0038】
上記の如き本発明の一実施形態による表示装置用カバーウィンドウ、これを備える表示装置および表示装置用カバーウィンドウの製造方法は、下記のような効果を奏する。ベースフィルムの上に所定の物質を含むコーティング層を形成することによって、
折り畳むことができながらも所定のレベル以上の表面硬さを有し、黄変現象が抑えられるカバーウィンドウを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明の一実施形態による表示装置の分解斜視図である。
図2】本発明の一実施形態によるカバーウィンドウの断面図である。
図3】本発明の一実施形態によるカバーウィンドウの製造工程による断面図である。
図4】本発明の一実施形態および比較例に対する黄変指数のグラフである。
図5】本発明の一実施形態および比較例に対する黄変指数のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、添付図面に基づき、本発明の好適な実施形態について本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が実施できる程度に詳細に説明する。しかしながら、本発明は、ここで説明される実施形態に何ら限定されるものではなく、他の形態に具体化可能である。
【0041】
図中、様々な層及び領域の厚さは、明確性を図るために誇張されている。明細書全体に亘って同じ部分に対しては同じ図面符号を付する。なお、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上」にあるとしたとき、それは、他の部分の「真上」にある場合だけではなく、これらの間にさらに他の部分がある場合も含む。逆に、ある部分が他の部分の「直上」にあるとしたときには、これらの間に他の部分がないことを意味する。
【0042】
まず、図1に基づき、本発明の第1の実施形態による表示装置について説明する。
【0043】
図1は、本発明の一実施形態による表示装置の分解斜視図である。
【0044】
図1を参照すると、本発明の一実施形態による表示装置100は、映像を表示する表示パネル10と、表示パネル10および表示パネル10の前方に配置されて表示パネル10を保護するカバーウィンドウ20と、を備える。
【0045】
表示パネル10は、有機発光表示パネルであってもよい。他方で、表示パネル10は、有機発光表示パネルに加えて、他の表示パネル、例えば、液晶表示パネルであってもよく、表示パネル10が別途の上部基板を有しておらず、下部基板に電場生成電極および液晶の両方が配設される表示パネルであってもよい。すなわち、この実施形態においては、説明しやすさのために、有機発光表示パネルを例にとって説明するが、本発明がこれに限定されることはない。
【0046】
表示パネル10は、可撓性プリント回路30を介してプリント回路基板50と電気的に接続される。
【0047】
表示パネル10の第1の基板13の上には、映像表現の基本単位である画素がマトリックス状に配列されており、第2の基板14が封止部材(図示せず)を介して第1の基板13に貼着されて画素を保護する。第1の基板13が背面基板となり、第2の基板14が前面基板となってもよい。
【0048】
例えば、能動駆動型有機発光表示パネルにおいて、画素は、アノード電極と有機発光層およびカソード電極を有する有機発光素子(図示せず)と、有機発光素子を駆動する駆動回路部(図示せず)と、を備える。駆動回路部は、薄膜トランジスタであってもよい。薄膜トランジスタのソース端子にはデータラインが接続され、ゲート端子にはゲートラインが接続される。なお、ドレイン端子には有機発光素子のアノード電極およびカソード電極のうちのいずれか一方の電極が接続される。
【0049】
データラインおよびゲートラインは、可撓性プリント回路30を介してプリント回路基板50に接続される。プリント回路基板50を介して薄膜トランジスタのソース端子およびゲート端子に電気信号が入力されると、薄膜トランジスタは、信号の入力に応じてターンオンまたはターンオフされて画素の駆動に必要な電気信号をドレイン端子に出力する。
【0050】
集積回路チップ26は第1の基板13の上に実装されて表示パネル10を制御する。集積回路チップ26は、データ駆動信号およびゲート駆動信号を適切な時期に印加するためのタイミング信号を発生させる。また、これらの信号をそれぞれ表示パネル10のデータラインおよびゲートラインに印加する。集積回路チップ26の周りには保護膜25が形成されて集積回路チップ26を保護する。
【0051】
プリント回路基板50には、駆動信号を処理するための電子素子(図示せず)が実装される。プリント回路基板50はコネクタ51および延長部52を備え、延長部52はコネクタ51の一方の端に設けられて外部の信号をプリント回路基板50に伝送する。
【0052】
表示パネル10の前方には、表示パネル10を保護するカバーウィンドウ20が配設される。カバーウィンドウ20は、表示パネル10が外部の衝撃によって割れないようにこれを保護する役割を果たす。また、カバーウィンドウ20は、所定の接着層(図示せず)によって表示パネル10に貼り付けられる。これとは異なり、表示パネル10およびカバーウィンドウ20が空気層を間に挟んで離れて形成されてもよい。
【0053】
カバーウィンドウ20は、ベースフィルム21およびベースフィルム21の上に形成されているコーティング層22を備える。
【0054】
ベースフィルム21は、表示パネル10の表示部11に対応する領域に表示部11が外部から視認できるように透明に形成された透明部211と、表示パネル10の非表示部12に対応する領域に非表示部12が外部から視認されることを防ぐために不透明に形成された不透明部212と、を備える。不透明部212は、表示パネル10の非表示部12に形成された配線や部品などが、外部から覗けないように覆う役割を果たす。不透明部212には、製品のロゴや装飾用模様などが刻まれていてもよい。この明細書においては、透明部211および不透明部212に画成されるベースフィルム21について説明したが、本発明はこれに何ら制限されるものではなく、透明部211のみを有するベースフィルム21も採用可能であるということはいうまでもない。
【0055】
ベースフィルム21は、ポリエチレンテレフタレート(PET:polyethyleneterephthalate)、トリアセチルセルロース(TAC:triacetyl cellulose)、ポリイミド(PI:polyimide)、ポリカーボネート(PC:polycarbonate)、熱可塑性ポリウレタン(TPU:temperature polyurethane)、シリコンゴム(silicon rubber)などによって形成されてもよい。
【0056】
コーティング層22は、所定のコーティング液をベースフィルム21の上に塗布および硬化させて形成してもよい。本発明の一実施形態によるコーティング層22は、所定のレベル以上の硬さを有し、UVなどを用いてコーティング層22に発生する黄変現象を低減することができる。コーティング層22の詳細については、後述する。
【0057】
この実施形態による表示装置100は、折り曲げ可能な材質によって作製されてもよい。例えば、A−A線に沿って表示装置100を折り曲げることができ、これにより、カバーウィンドウ20もA−A線に沿って折り曲げることができる。
【0058】
以下、図2に基づき、本発明の一実施形態による表示装置100のカバーウィンドウ20について詳述する。
【0059】
図2は、本発明の一実施形態によるカバーウィンドウ20の断面図である。図2に示すように、カバーウィンドウ20は、ベースフィルム21およびベースフィルム21の上に配設されるコーティング層22を備える。
【0060】
本発明の一実施形態においては、ベースフィルム21の真上に配設されるコーティング層22のみについて説明したが、本発明はこれに何ら限定されるものではなく、いかなるカバーウィンドウの形態も採用可能である。例えば、この明細書において説明する構成(すなわちコーティング層22と同等の構成)を有するコーティングフィルムと、ベースフィルムと、コーティングフィルムとベースフィルムを貼り合わせる接着層と、を備える構成も採用可能である。
【0061】
本発明の一実施形態によるコーティング層22は、所定のコーティング液をベースフィルム21の上に塗布および硬化させて形成する。
【0062】
本発明の一実施形態によるコーティング液は、モノマー(Monomer)と、開始剤(initiator)および溶媒(solvent)を含んでいてもよい。ここで、本実施形態における「開始剤」は、いわゆる「硬化開始剤」を意味する。
【0063】
まず、本発明の一実施形態によるモノマーは、有機−無機のハイブリッド物質であるハイブレマー(hybrimer)であってもよく、特に、下記の一般式1で表わされる化合物を含んでいてもよい。
【0064】
【化7】
【0065】
式中、RはCHであり、前記R'はエポキシ基である。エポキシ基であるR’は硬化工程において開環され、開環されたエポキシ基によって架橋結合が行われる。
【0066】
コーティング液の総質量に対して前記モノマーの含有量は約40質量%〜約90質量%であってもよく、好ましくは、約60質量%であってもよい。
【0067】
本発明の一実施形態によるコーティング液は開始剤を含み、特に、ヨウ素系開始剤およびホウ酸系開始剤のうちのいずれか1種以上を含んでいてもよい。
【0068】
前記ヨウ素系開始剤は、下記の一般式2で表わされる化合物を含んでいてもよく、前記ホウ酸系開始剤は、下記の一般式3で表わされる化合物を含んでいてもよいが、本発明はこれに何ら限定されない。
【0069】
【化8】
【0070】
【化9】
【0071】
前記ヨウ素系開始剤は光硬化性を帯びてもよく、前記ホウ酸系開始剤は光硬化性および熱硬化性を帯びてもよい。このため、前記開始剤はコーティング層を形成する工程において光や熱によって活性化され、活性化された開始剤によって前記モノマーが重合できるようになる。
【0072】
前記開始剤の含有量は、コーティング液の総質量に対して約0.5質量%〜約8.0質量%であってもよいが、約2〜4質量%であることが好ましく、約2質量%であることがより好ましい。これは、このような含有量を有する場合、光または熱に対する反応速度を適切に調節することができるためである。
【0073】
本発明の一実施形態による溶媒は、メチルエチルケトン(MEK)であってもよいが、本発明はこれに何ら限定されない。
【0074】
上述したコーティング液によって形成されたコーティング層22は、表示装置の外面に求められる硬さを有するだけではなく、UVなどに長時間に亘って露出される場合に発生する黄変現象も顕著に低減することができる。すなわち、信頼性および耐久性が向上したカバーウィンドウが提供可能である。
【0075】
図3は、本発明の一実施形態による表示装置用カバーウィンドウを製造する工程に対する断面図である。
【0076】
まず、ポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリイミド(PI)、ポリカーボネート(PC)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、シリコンゴムなどを用いてベースフィルム21を形成する。
【0077】
次いで、ベースフィルム21の上にコーティング層22を形成するためのコーティング液を塗布(coating)し、熱などを用いて乾燥(drying)させた後、UVを照射して硬化(UV hardening)させる。ここで、コーティング液の組成は上述したとおりである。
【0078】
次いで、硬化されたコーティング液にアニーリング工程(Annealing)を行ってコーティング層22を形成する。このとき、前記アニーリング工程は、別途の高湿条件が不要であり、常湿条件下で行うことができる。ここで、常湿とは、例えば相対湿度が45〜85%であることを意味する。このため、上述したコーティング液の塗布および乾燥などの工程と同じ単動設備を用いて製造することができる。このような製造工程によれば、製造時間およびコストが省かれる。
【実施例】
【0079】
次いで、図4および図5に基づき、本発明の実施例(Example)および比較例(Comparative Example)に対する黄変指数について説明する。図4のグラフは、下記表1に基づくグラフであり、横軸は開始剤の含有量を示し、縦軸は黄変指数(Yellowing index)を示す。図5のグラフは、下記表2に基づくグラフであり、横軸は開始剤の含有量を示し、縦軸は黄変指数(Yellowing index)を示す。
【0080】
まず、図4および表1を参照すると、本発明の実施例によるコーティング層は、ヨウ素系開始剤を含むコーティング液を用いて形成したものであり、比較例は、硫黄系開始剤を含むコーティング液を用いて形成したものである。なお、コーティング液におけるモノマーと溶媒とは8:2の混合比(質量比)で混合した。また、コーティング層を作製する際のベースフィルムとしては、フッ素系透明ポリイミドフィルムを使用した。
【0081】
コーティング液に含まれる開始剤の含有量(コーティング液の総質量に対する質量%)を異ならせて黄変指数△YIを調べてみたところ、硫黄系開始剤を含む比較例のコーティング層は、開始剤の含有量が増加すれば増加するほど黄変現象が著しく現れ、最も少ない含有量を含む場合にも約1.53の黄変指数を示すということが分かる。
【0082】
これに対し、ヨウ素系開始剤を含むコーティング層は、開始剤の含有量に伴う黄変指数の変化が僅かであった。特に、最も大きな値の黄変指数を示す場合(開始剤の含有量が8質量%である場合)が比較例の最も低い指数(開始剤の含有量が0.5質量%である場合)と略同じであるということが分かる。
【0083】
すなわち、本発明の一実施形態によりヨウ素系開始剤を含む場合、UVによる黄変現象が顕著に低減されるということが分かる。なお、黄変指数は、コーティング層にUV−Bを72時間照射した際の黄変指数とした。
【0084】
【表1】
【0085】
次いで、表2および図5を参照すると、比較例は、硫黄系開始剤を含むコーティング層に対して実験を行った場合であり、実施例1は、ヨウ素系開始剤を含むコーティング層に対して実験を行った場合である。実施例2は、ホウ酸系開始剤を含むコーティング層に対して実験を行った場合であり、実施例3は、ヨウ素系開始剤およびホウ酸系開始剤を両方とも含むコーティング層に対して実験を行った場合である。
【0086】
【表2】
【0087】
表2および図5を参照すると、比較例に比べて、本発明の実施形態によるコーティング層の黄変指数が顕著に低い(特に、単位厚さ当りの黄変指数が低い)ということが分かる。すなわち、ヨウ素系またはホウ酸系開始剤を含む場合、UVによってコーティング層の黄変現象が防がれる。
【0088】
表2に示すように、ヨウ素系開始剤のみを含む実施例1は、硬さがやや低くなることがある。しかしながら、実施例2および実施例3のようにホウ酸系開始剤を含む場合、所定のレベルの硬さが提供可能であるということが確認されたため、ホウ酸系開始剤の含有量の制御によって黄変の信頼性だけではなく、硬さが制御可能である。なお、表2の鉛筆硬さは、鉛筆でコーティング層表面をこすって傷が付いた時の鉛筆硬さを意味する。
【0089】
要するに、本発明の一実施形態によるコーティング層は、表示装置の外面に求められる硬さを有するだけではなく、UVなどに長時間に亘って露出される場合に発生する黄変現象も顕著に低減することができて、信頼性および耐久性が向上したカバーウィンドウが提供可能である。
【0090】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の権利範囲はこれに何ら限定されるものではなく、下記の特許請求の範囲において定義している本発明の基本概念を用いた当業者の種々の変形および改良形態もまた本発明の権利範囲に属するものであるといえる。
図1
図2
図3
図4
図5