(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
繊維密度が異なる粗層と密層とを有する二層構造、または、粗層、中間層、密層とがこの順で積層された三層構造を有し、各層が機械的絡合法によって一体化された不織布濾材であって、
前記密層がその一部又は全部にシリコーンオイルが付着した基材繊維と、この基材繊維よりも融点が30℃以上低い低融点繊維とを含み、前記中間層が少なくとも低融点繊維を含み、
密層中の低融点繊維の割合が57重量%以上100重量%未満であり、中間層中の低融点繊維の割合が40重量%以上であり、
密層中及び中間層中の低融点繊維の融点がそれぞれ50〜180℃であることを特徴とする濾材。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<<濾材>>
図1は、本発明に係る濾材の実施態様の一例を示す概略断面図である。本発明に係る濾材10は、繊維密度が異なる粗層3、中間層2、密層1とがこの順で積層された三層構造を有し、各層が機械的絡合法によって一体化された不織布濾材である。なお前記中間層2は任意の層であるため、本発明において濾材10は、中間層2を有しない粗層3と密層1とを有する二層構造であってもよい。
【0015】
密層1、中間層2、粗層3はいずれも不織布からなる。密層1は粒径の小さな微粒子を捕捉する機能を有している。また粗層3は、比較的粒径の大きな塵埃を捕捉する機能を有している。そして中間層2は、粗層3で捕捉できなかった塵埃を捕捉したり、フィルタライフを長くするために、密層1で捕捉される塵埃の量を調整する機能を有している。すなわち濾材10は、粗層3、中間層2、密層1の順(中間層2を設けない場合には、粗層3、密層1の順)で高密度となる密度勾配を有している。
なお密層1、中間層2、及び粗層3はいずれも不織布であるが、後述するように、濾材10は、機械的絡合法によって、ウェブと不織布を含む積層体を一体化する方法、ウェブの積層体を一体化する方法、不織布の積層体を一体化する方法等により製造される。
【0016】
本発明において、前記密層はその一部又は全部にシリコーンオイルが付着した基材繊維と、この基材繊維よりも融点が低い低融点繊維とを含み、密層中の低融点繊維の割合は57重量%以上100重量%未満であり、中間層中の低融点繊維の割合は40重量%以上である。密層にシリコーンオイルが付着した基材繊維が含まれないと、ニードルパンチ加工の際に繊維の絡合が進み、薄い濾材となってしまうため、高い捕集効率や高捕集量を達成できない虞がある。また密層が低融点繊維のみから構成されると、加熱処理後の低融点繊維がフィルムのようになってしまい、塵埃を捕集できる空間が減少してしまうため捕集効率や捕集量が低下してしまう。
前記密層は、更にシリコーンオイルが付着していない基材繊維を含んでいてもよい。
【0017】
また中間層を設ける場合、前記中間層は少なくとも低融点繊維を含んでおり、中間層中の低融点繊維の割合は40重量%以上である必要がある。中間層における低融点繊維の割合が低下すると、濾材自体の剛性が低下してしまい、高い捕集効率や高捕集量を達成できない虞がある。前記中間層は、更にその一部又は全部にシリコーンオイルが付着した基材繊維及びシリコーンオイルが付着していない基材繊維を含んでいてもよい。
【0018】
前記粗層は、その一部又は全部にシリコーンオイルが付着した基材繊維、シリコーンオイルが付着していない基材繊維、及びこの基材繊維よりも融点が低い低融点繊維を含んでいてもよい。
【0019】
本発明において各層(密層、中間層及び粗層)に含まれる繊維の繊度は、繊維の種類を問わず、0.8〜33dtexが好ましく、より好ましくは1.3〜17dtexであり、更に好ましくは1.5〜10dtexである。繊度が前記範囲内であれば、濾材に適度な剛性を付与することができ、繊維も充分に絡合することが可能となる。
【0020】
また各層に用いる繊維は、繊維長が100mm以下の短繊維(より好ましくは20〜100mm、更に好ましくは32〜76mm)であることが好ましい。上限値を超えると、カード機での解繊性が悪くなるため好ましくない。
【0021】
以下、本発明の濾材について詳述するが、明細書中「中間層」とは、任意で設けられる、との意味で用いることとする。
【0022】
<シリコーンオイルが付着した基材繊維(Si繊維)>
本発明において各層の骨格を形成する繊維(以降、「基材繊維」と称す)には、シリコーンオイルが付着した基材繊維及びシリコーンオイルが付着していない基材繊維が含まれる。
【0023】
シリコーンオイルが付着した基材繊維とは、任意の繊維表面に、シリコーンオイルが被覆されている繊維である。シリコーンオイルが付着した基材繊維を用いることにより、繊維−繊維間及び/又は繊維−金属(例えば、ニードル)間の摩擦抵抗が小さくなる。摩擦抵抗が小さくなると、繊維が滑りやすく繊維同士の絡みが悪くなり、繊維間が疎な不織布となる。繊維間が必要以上に過密化しないことで、塵埃(特に粒径の小さなダスト)を効率よく捕集できる上塵埃との帯電列間差を大きくする効果が発揮されるため、結果として塵埃の捕集量を向上することが可能となる。
【0024】
前記繊維としては、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリ乳酸繊維、ポリアリレート繊維等のポリエステル繊維;ナイロン6、ナイロン66、アラミド繊維(パラ系アラミド繊維、メタ系アラミド繊維等)等のポリアミド繊維;ポリアクリロニトリル繊維、ポリアクリロニトリル−塩化ビニル共重合体繊維等のアクリル繊維;ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等のポリオレフィン繊維;ポリフェニレンサルファイド繊維;等の各種合成繊維が挙げられる。中でも、性能と価格のバランスが良いことから、ポリエステル繊維が好ましく用いられ、特にポリエチレンテレフタレート繊維が好ましい。
【0025】
シリコーンオイルとしては、繊維−繊維間及び/又は繊維−金属間の摩擦抵抗を小さくできるものであれば特に限定されないが、繊維用の処理剤(例えば、繊維の風合い改良用の処理剤等)として広く用いられるシリコーンオイルが好ましい。前記シリコーンオイルとしては、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、アミノ変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルキル・ポリエーテル変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル等が挙げられ、中でもポリジメチルシロキサンが好ましい。
【0026】
シリコーンオイルは、繊維100重量%中、0.05〜5重量%含まれることが好ましく、より好ましくは0.1〜3重量%である。シリコーンオイルの量が前記範囲内であれば、絡合時の摩擦抵抗が充分に低下し、また繊維の絡合度合が適切なため、濾材の形状を維持することも可能となる。
【0027】
またシリコーンオイルが付着した基材繊維は、各層100重量%中、1〜45重量%含まれることが好ましく、より好ましくは5〜40重量%である。含有量が前記範囲内であれば、摩擦抵抗が充分に低下しながら、繊維を充分に絡合することが可能となる。
特に、密層100重量%中、シリコーンオイルが付着した基材繊維は、1重量%以上含まれることが好ましく、より好ましくは5重量%以上であり、更に好ましくは8重量%以上である。上限は、43重量%以下が好ましく、より好ましくは30重量%以下であり、更に好ましくは15重量%以下である。含有量が前記範囲内であれば、通気抵抗と捕集性能のバランスに優れる濾材が得られるため好ましい。
同様に、中間層100重量%中、シリコーンオイルが付着した基材繊維は、1重量%以上含まれることが好ましく、より好ましくは2重量%以上であり、更に好ましくは4重量%以上である。上限は、45重量%以下が好ましく、より好ましくは20重量%以下であり、更に好ましくは15重量%以下であり、特に好ましくは12重量%以下である。含有量が前記範囲内であれば、通気抵抗と捕集性能のバランスに優れる濾材が得られるため好ましい。シリコーンオイルが付着した基材繊維が規定範囲を超えて含有されると、繊維間の接着強度が低下して剛性が維持できなくなったり、濾材を必要な寸法にカットする際に摩擦抵抗が低くなるため、綺麗な断面にカットできない虞があるため好ましくない。
加えて粗層は、シリコーンオイルが付着した繊維の含有率が20重量%以下のシリコーンオイルフリー層であることが好ましく、より好ましくは12重量%以下であり、更に好ましくは8重量%以下であり、特に好ましくは5重量%以下である。粗層に用いる繊維は、密層及び中間層で用いる繊維と比べると太いため、元々繊維を交絡させ難い。そのため、粗層中の繊維を充分に絡合するため、粗層においては、シリコーンオイルが付着した基材繊維が実質的に含まれていなくても(すなわち0〜2重量%、より好ましくは0〜1重量%、特に好ましくは0重量%であっても)よい。
【0028】
シリコーンオイルが付着した基材繊維(「Si繊維」と称す)の繊度は、0.8〜33dtexが好ましく、より好ましくは1.3〜17dtexであり、更に好ましくは1.5〜10dtexである。繊度が前記範囲内であれば、濾材に適度な剛性を付与することができ、繊維も充分に絡合することが可能となる。
密層に含まれるSi繊維の繊度は、0.8〜3dtexが好ましく、より好ましくは1.5〜2.8dtexであり、更に好ましくは1.7〜2.5dtexである。
また中間層に含まれるSi繊維の繊度は、3〜7dtexであり、より好ましくは3.5〜5.5dtexであり、更に好ましくは4〜4.6dtexである。
更に粗層に含まれるSi繊維の繊度は、3〜5dtexであり、より好ましくは3.5〜4.8dtexであり、更に好ましくは4〜4.6dtexである。
【0029】
濾材の捕集効率を上げる観点からは、密層が、シリコーンオイルが付着した基材繊維を20〜43重量%含んでいることが望ましく、好ましくは35〜43重量%であり、このとき密層を構成する他の繊維は低融点繊維であることが望ましい。
濾材の通気抵抗を下げる観点からは、密層が、シリコーンオイルが付着した基材繊維を5〜15重量%含んでいることが望ましく、好ましくは5〜10重量%であり、このとき密層を構成する他の繊維は低融点繊維であることが望ましい。
【0030】
<シリコーンオイルが付着していない基材繊維(R繊維)>
シリコーンオイルが付着していない基材繊維としては、合成繊維、再生繊維、または天然繊維等が挙げられる。
合成繊維としては、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリ乳酸繊維、ポリアリレート繊維等のポリエステル繊維;ナイロン6、ナイロン66、アラミド繊維(パラ系アラミド繊維、メタ系アラミド繊維等)等のポリアミド繊維;ポリアクリロニトリル繊維、ポリアクリロニトリル−塩化ビニル共重合体繊維等のアクリル繊維;ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等のポリオレフィン繊維;ポリフェニレンサルファイド繊維;等が例示できる。
再生繊維としては、レーヨン、ポリノジック、キュプラ、リヨセル等が例示できる。
天然繊維としては、綿、パルプ、カポック、麻、毛、絹等が例示できる。
中でも、性能と価格のバランスが良いことから、シリコーンオイルが付着していない基材繊維としては、ポリエステル繊維が好ましく、特にポリエチレンテレフタレート繊維が好ましい。また、各層における基材繊維は、同一であっても異なっていてもよい。
【0031】
密層においてシリコーンオイルが付着した基材繊維(「Si繊維」と称す)とシリコーンオイルが付着していない基材繊維(通常の繊維という意味で、レギュラー繊維「R繊維」と称す)の含有率は、重量比(Si繊維:R繊維)で、0:100〜100:0が好ましく、Si繊維を用いると捕集性能がアップするため、好ましくは45:55〜100:0であり、より好ましくは90:10〜100:0であり、更に好ましくは95:5〜100:0であり、特に好ましくは100:0である。
中間層においてSi繊維とR繊維の含有率は、重量比(Si繊維:R繊維)で、0:100〜100:0が好ましく、繊維の絡合度合いを調整するため、より好ましくは20:80〜80:20であり、更に好ましくは30:70〜70:30であり、特に好ましくは40:60〜60:40である。
粗層においてSi繊維とR繊維の含有率は、重量比(Si繊維:R繊維)で、0:100〜100:0が好ましく、繊維の絡合を促進するため、より好ましくは10:90〜0:100であり、更に好ましくは5:95〜0:100であり、特に好ましくは0:100である。
【0032】
シリコーンオイルが付着していない基材繊維(「R繊維」と称す)の繊度は、0.8〜33dtexが好ましく、より好ましくは5〜25dtexであり、更に好ましくは10〜20dtexである。繊度が前記範囲内であれば、濾材に適度な剛性を付与することができ、繊維も充分に絡合することが可能となる。
【0033】
なお前述した基材繊維は、中実繊維、中空繊維の何れも使用できる。また繊維の断面形状も特に限定されるものではなく、丸断面;三角断面、星型断面、Y字断面、十字断面等の異型断面;等も使用できる。異型断面繊維は、濾材の繊維密度を調整する手段として有効である。
【0034】
また前述した基材繊維は、コイル形状、スパイラル形状等の立体捲縮を有する繊維であってもよい。特に粗層が立体捲縮繊維を含んでいると、通風やダスト負荷による厚さの低減を抑制でき、捕集量を大きくすることが可能になるため好ましい。
【0035】
<低融点繊維>
また、形成されるプリーツがシャープな形状となるように、各層を構成する繊維には、各層の骨格を形成する基材繊維よりも融点が低く、熱溶融性の繊維(以降、「低融点繊維」と称す。例えば、低融点部を有する複合繊維等である)が含まれていてもよい。低融点繊維は、熱処理により繊維の一部又は全部が溶融するため、この溶融した繊維(樹脂)が、濾材を構成する繊維を接着する機能を有する。熱処理後の冷却により、溶融した低融点繊維は固化して、繊維の接着強度を高めると共に、濾材に適度な強度を付与することができるため、濾材の寸法が安定し、且つ濾材に適度な剛性を付与することが可能となる。また、繊維の固着には、接着剤樹脂を含むエマルジョンやラテックス等を用いて含浸加工、噴霧加工、泡加工等による処理を行うことが一般的であるが、これらの方法ではエマルジョンやラテックスに含まれる水分を乾燥させる必要があり、多大なエネルギーを要してしまう。しかし、低融点繊維を用いれば、このような問題も解消されるため好ましい。なお本発明において、低融点繊維は、密層、中間層、粗層の全てに含まれていることが望ましい。
【0036】
低融点繊維の融点は、上限が基材繊維の融点から30℃以下が好ましい。融点差が小さく(例えば、30℃以下に)なると、低融点繊維を溶融すべく熱処理を施した際に、何らかのトラブルによって温度に異常が生じた場合に、繊維が軟化又は溶融する等の熱劣化を起こす可能性があるため好ましくない。一方、低融点繊維が十分に軟化又は溶融するよう、低融点繊維の融点の下限は、繊維の融点から150℃以下が好ましく、より好ましくは繊維の融点から100℃以下である。低融点繊維の融点は、50〜180℃が好ましく、より好ましくは70〜120℃である。
【0037】
また低融点繊維としては、ポリエチレン−ポリプロピレン、ポリエステル−変性ポリエステル等の融点の異なる複数の樹脂からなる芯鞘構造、偏心構造、あるいはサイドバイサイド構造を有する複合繊維;変性ポリエステル繊維;変性ポリアミド繊維;変性ポリプロピレン繊維等の変性ポリオレフィン繊維;等が使用できる。本発明においては、低融点部分の樹脂が接着剤として働き、高融点部分の繊維が濾材を構成する繊維として機能するよう複合繊維が好ましく、特に力学的特性に優れる芯鞘構造を有するものが好ましい。
【0038】
低融点繊維の繊度は、0.8〜40dtexであることが好ましく、より好ましくは1.5〜25dtexである。低融点繊維の繊度が前記範囲内であれば、低融点繊維が容易に溶融し、加熱処理時間を短縮できる。低融点繊維と各層を構成する基材繊維とは、繊度が同じであっても異なっていてもよい。
低融点繊維も、密層、中間層、粗層で勾配を有していることが好ましい。
密層に含まれる低融点繊維の繊度は、0.8〜3dtexが好ましく、より好ましくは1.5〜2.8dtexであり、更に好ましくは1.7〜2.5dtexである。密層に細繊度の低融点繊維を混綿することにより、高剛性で、低融点繊維が溶融した後に残る細繊度の芯部によって低圧損且つ高捕集効率な濾材が得られる。
また中間層に含まれる低融点繊維の繊度は、3〜5dtexが好ましく、より好ましくは3.5〜4.8dtexであり、更に好ましくは4〜4.6dtexである。
更に粗層に含まれる低融点繊維の繊度は、3〜40dtexが好ましく、より好ましくは3.5〜25dtexであり、更に好ましくは4〜20dtexである。
【0039】
本発明では、濾材に剛性を付与するために、低融点繊維の含有率は多いほど好ましいが、多すぎると繊維間の空間が減少する等してダストの捕集量が低下する場合がある。そのため低融点繊維の含有率は、密層では、57重量%以上100重量%未満であり、好ましくは75重量%以上であり、より好ましくは85重量%以上であり、好ましくは98重量%以下であり、より好ましくは95重量%以下である。密層における低融点繊維の含有率を高くすると、プリーツした時にシャープな形状を維持しやすくなり、通風時に形状が変化して襞接触を起こすことがないため好ましい。
中間層では、40重量%以上であり、好ましくは57重量%以上であり、より好ましくは75重量%以上であり、更に好ましくは85重量%以上であり、好ましくは100重量%以下であり、より好ましくは98重量%以下であり、更に好ましくは95重量%以下である。
粗層では、20重量%以上が好ましく、好ましくは57重量%以上であり、より好ましくは75重量%以上であり、更に好ましくは85重量%以上であり、好ましくは100重量%以下であり、より好ましくは98重量%以下であり、更に好ましくは95重量%以下である。
低融点繊維の含有率は前記の通りであるが、各層における低融点繊維以外の残部は、シリコーンオイルが付着した基材繊維及び/又はシリコーンオイルが付着していない基材繊維の、一成分系又は二成分系であることが好ましい。
【0040】
なお、低融点繊維にも前述したシリコーンオイルを付着させてもよい。
【0041】
<目付>
濾材の目付は、180〜550g/m
2であり、より好ましくは230〜500g/m
2であり、更に好ましくは280〜450g/m
2である。目付が前記範囲内であれば、捕集効率及び捕集量が良好で、プリーツの山と谷をシャープに形成できる濾材が得られるため好ましい。
密層の目付は、100〜350g/m
2が好ましく、より好ましくは140〜260g/m
2であり、更に好ましくは160〜250g/m
2である。密層の目付が下限値を下回ると、塵埃の捕集効率が下がる虞があるため好ましくなく、上限値を超えると濾材の通気抵抗が上がる虞があるため好ましくない。
中間層の目付は、密層の目付より小さく、粗層の目付より大きいことが好ましく、40〜130g/m
2が好ましく、より好ましくは60〜120g/m
2であり、更に好ましくは70〜100g/m
2である。目付が下限値を下回ると、粗層で捕集できなかった粗塵の捕集効率が下がる虞があるため好ましくなく、上限値を超えると、濾材が厚くなりパッケージに収まらない虞があるため好ましくない。
粗層は比較的粒径の大きな塵埃の捕捉を目的とするため、ある程度の嵩高さが必要となる。そのため、粗層の目付は、30〜100g/m
2が好ましく、より好ましくは40〜80g/m
2であり、更に好ましくは50〜70g/m
2である。目付が下限値を下回ると、比較的粒径の大きな塵埃の捕集効率が低下する恐れがあるため好ましくない。また上限値を超えると、濾材が厚くなりパッケージに収まらない虞があるため好ましくない。
【0042】
<厚さ>
濾材の厚さは、好ましくは4〜8.5mm、より好ましくは4.5〜7.5mm、更に好ましくは5〜7.0mmである。厚さが前記範囲内であれば、適度な剛性を有し、プリーツが変形したり、破損することのない濾材が得られる。
密層の厚さは、0.7〜2mmが好ましく、より好ましくは1.0〜1.5mm、更に好ましくは1.0〜1.3mmである。
中間層の厚さは、0.7〜3mmが好ましく、より好ましくは1.1〜2mm、更に好ましくは1.1〜1.5mmである。
粗層の厚さは、1.5〜5mmが好ましく、より好ましくは2.0〜4.5mm、更に好ましくは2.5〜4.0mmである。
【0043】
<繊維密度>
濾材の繊維密度は、0.050〜0.070g/cm
3が好ましく、より好ましくは0.052〜0.065g/cm
3であり、更に好ましくは0.055〜0.063g/cm
3である。濾材の繊維密度が前記範囲内であれば、高捕集効率及び高捕集量を達成できる。
特に密層の繊維密度は、0.100〜0.250g/cm
3が好ましく、より好ましくは0.140〜0.200g/cm
3であり、更に好ましくは0.145〜0.180g/cm
3である。
中間層の繊維密度は、0.030〜0.100g/cm
3が好ましく、より好ましくは0.055〜0.080g/cm
3であり、更に好ましくは0.060〜0.075g/cm
3である。
粗層の繊維密度は、0.005〜0.030g/cm
3が好ましく、より好ましくは0.013〜0.025g/cm
3であり、更に好ましくは0.015〜0.022g/cm
3である。
なお、各層の繊維密度は、目付を厚さで除することにより求められる。
【0044】
<勾配>
本発明では、塵埃を含むエア流入側から繊維密度が徐々に高くなるように、各層に配合される繊維の繊度を変えている。そのため各層は、層間で、含まれる繊維の平均繊度に差を有している。微小な塵埃を効率良く且つ大量に捕捉するためには、各層間の繊維の平均繊度差は0.1〜9dtexが好ましく、より好ましくは0.1〜6dtexである。前記範囲内であれば、特に自動車用エンジンフィルタ用途に要求される高いレベルの性能を発揮できるため好ましい。
より具体的には、密層と中間層における繊維の平均繊度差は、0.1〜5dtexが好ましく、より好ましくは1〜4dtexであり、更に好ましくは1.5〜3dtexである。比率としては、中間層における繊維の平均繊度は、密層中の繊維の平均繊度に対し、1.2〜2.5倍が好ましく、より好ましくは1.5〜2.3倍であり、更に好ましくは1.8〜2.2倍である。
また、中間層と粗層における繊維の平均繊度差は、0.1〜8dtexが好ましく、より好ましくは0.5〜6dtexであり、更に好ましくは1〜4dtexである。比率としては、粗層における繊維の平均繊度は、中間層における繊維の平均繊度に対し、1.01〜3倍が好ましく、より好ましくは1.1〜1.7倍であり、更に好ましくは1.15〜1.5倍である。
【0045】
また、密度勾配を有する積層構造とするためには、密層を構成する繊維の平均繊度は、0.8〜3dtexが好ましく、より好ましくは1.5〜2.8dtexであり、更に好ましくは1.7〜2.5dtexである。
また中間層を構成する繊維の平均繊度は、2〜10dtexであり、より好ましくは3.5〜7dtexであり、更に好ましくは4〜4.6dtexである。
更に粗層を構成する繊維の平均繊度は、5〜20dtexであり、より好ましくは5.2〜12dtexであり、更に好ましくは5.4〜10dtexである。
【0046】
なお本発明において、各層に含まれる繊維の平均繊度は、各層に含まれる全繊維の重量平均で求めることとする。
【0047】
また本発明に係る濾材は、粗層、中間層、密層の順で密度が上昇する密度勾配を有していることが望ましい。
中間層を設ける場合、密層と中間層の繊維密度差は、0.076〜0.120g/cm
3が好ましく、より好ましくは0.078〜0.100g/cm
3であり、更に好ましくは0.080〜0.095g/cm
3である。
また中間層と粗層の繊維密度差は0.040〜0.067g/cm
3が好ましく、より好ましくは0.045〜0.065g/cm
3であり、更に好ましくは0.050〜0.060g/cm
3である。
【0048】
要求品質に応じて、濾材を難燃化、抗菌化、防汚化することも可能である。このような各種機能の付与は、濾材を製造した後、樹脂加工などの方法により行ってもよい。特に、高度な機能が要求される場合には、ベースとなるバインダー樹脂に各種難燃剤、抗菌剤、防汚剤等の高機能化剤を添加して処理液を調製し、該濾材を該処理液に含浸する、該濾材に該処理液を塗布する(コーティング)、該濾材に該処理液をスプレーなどで噴霧する等の樹脂加工を行うとよい。また、構成する繊維として、難燃化、抗菌化、防汚化等の各種処理が施された繊維を各層に配合する方法も採用でき、予め処理が施された繊維を用いれば、フィルタ用不織布を製造する段階から効果を享受できるため好ましい。
【0049】
また濾材は、更に不織布層を積層してもよく、また他の層を含んでいてもよい。例えば密層面には、剛性や繊維密度を更に向上させるために、ネット、網状体、不織布(例えば、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、ナノファイバ不織布等)の単体または積層体を積層してもよい。
【0050】
本発明に係る濾材は、優れた剛性を有するため密層面山高さで31mm以上、より好ましくは35mm以上、更に好ましくは40mm以上を達成できる。密層面山高さの上限は特に限定されないが、通常、46mm以下である。なお密層面山高さの測定方法は実施例の欄で詳述する。
【0051】
JIS D1612(自動車用エアクリーナ試験方法)に準じて測定される濾材の通気抵抗は、365Pa以下、より好ましくは330Pa以下、更に好ましくは310Pa以下を達成できる。通気抵抗の下限は特に限定されないが、通常、180Pa以上である。測定方法の詳細は実施例の欄で詳述する。
【0052】
JIS D1612(自動車用エアクリーナ試験方法)及びJIS D1612 9.4(3)で規定するフルライフ清浄効率試験に準じて測定される濾材の捕集効率は、97.5%以上、より好ましくは97.7%以上、更に好ましくは98.0%以上を達成できる。捕集効率の上限は100%であるが、99.5%以下であっても問題ない。測定方法の詳細は実施例の欄で詳述する。
【0053】
JIS D1612(自動車用エアクリーナ試験方法)及びJIS D1612 10に準じて測定される濾材の捕集量は、139g以上、より好ましくは141g以上、更に好ましくは142g以上を達成できる。捕集量の上限は特に限定されないが、通常、250g以下である。測定方法の詳細は実施例の欄で詳述する。
【0054】
<<濾材の製造方法>>
本発明に係る濾材の製造方法について説明する。本発明に係る濾材、不織布の積層構造を有している。前記不織布の製造方法は特に限定されるものではなく、本発明では、乾式不織布、湿式不織布、スパンボンド不織布等の各種不織布が適宜使用できる。ウェブの結合方法も特に限定されるものではなく、ニードルパンチ法、スパンレース法(水流絡合法)等の機械的絡合法;不織布に予め低融点繊維を混綿しておき、この低融点繊維の一部又は全部を熱溶融させて、繊維交点を固着する方法(サーマルボンド法);等の各種結合方法を採用できる。中でも、ニードルパンチ法により繊維を交絡させて、その後加熱処理を行うニードルパンチ及びサーマルボンド法の併用タイプが好ましい。本発明では、密層の絡合密度が、粗層の絡合密度よりも高いことが望ましい。密層の絡合密度が粗層よりも高くなると、密層がより高密度になるため好ましい。
【0055】
本発明に係る濾材は、粗層と密層とを有する二層構造、または、粗層、中間層、密層とがこの順で積層された三層構造を含む積層体であり、濾材では各層が機械的絡合法により一体化されていることが好ましい。各層を一体化する方法としては、(i)密層又は粗層のいずれかについて、ウェブから不織布(好ましくはニードルパンチ不織布)を製造しておき、形成された不織布の上に、中間層用ウェブ、及び、粗層又は密層用ウェブを順に積層した後、ニードルパンチ法等の機械的絡合法を施し、ウェブと不織布を含む積層体を一体化する方法、(ii)予め密層用ウェブ、中間層用ウェブ、粗層用ウェブをそれぞれ製造しておき、各層のウェブを順に積層後、ニードルパンチ法等の機械的絡合法を施し、ウェブの積層体を一体化する方法、(iii)密層、中間層、粗層用の不織布(好ましくはニードルパンチ不織布)をそれぞれ製造しておき、得られた各不織布を積層し、その後、不織布の積層体を一体化する方法、等が挙げられる。本発明では特に、(i)または(ii)のように、少なくとも一部にウェブを含む積層体をニードルパンチ法等の機械的絡合法により一体化する方法が好ましく、密度勾配を大きくするために、ニードルパンチ法により密層用の不織布を製造し、形成されたニードルパンチ不織布の上に、任意の中間層用ウェブ、及び、粗層用ウェブを順に積層した後、更にニードルパンチ法等の機械的絡合法を施してウェブと不織布を含む積層体を一体化する(i)の方法が好ましい。このようにして濾材を製造すると、密層には、中間層及び粗層と比べてより多い回数のニードルパンチが施されることとなり、密層の繊維の交絡が進む。これにより密層の絡合密度が粗層の絡合密度よりも高くなり、密層をより高密度化できるため好ましい。また中間層と粗層とでニードルパンチの密度を変えることにより、中間層の絡合密度を粗層の絡合密度よりも高く調整してもよい。
【0056】
(i)のように、予めニードルパンチ不織布の密層又は粗層を製造する際の加工条件は、ニードルパンチ針番手36〜42番、針深さ8〜17mm(好ましくは10〜15mm)、打ち込み本数80〜150本/cm
2(好ましくは90〜130本/cm
2)が好ましい。特にこの条件で予めニードルパンチ不織布の密層を形成しておくことにより、密層が高密度になることで捕集効率が向上し、風下側の密層の剛性が保たれるため、プリーツ形状が崩れにくくなり、結果として襞接触を抑制して通気抵抗の上昇を抑えることができる。
【0057】
なお、各層を一体化する際のニードルパンチ加工は、密層側から針を刺し込むことが好ましい。密層側からニードルパンチ加工を行うと、密層中の繊維が粗層側(すなわち風上側)に突き出すようにして交絡されるため、塵埃の通過を抑制できるためである。また密層にシリコーンオイルが付着した基材繊維が含まれているため、該繊維の低摩擦抵抗特性によって、密層と中間層又は粗層間の繊維交絡は緩やかとなる。また中間層と粗層も同様に層間の繊維交絡は緩やかとなる。特に粗層にはかなり太繊度の繊維が使用されるため、もともと繊維を交絡させにくい状況にあるが、層間の繊維交絡はかなり緩やかとなるため、捕集効率向上目的でニードルパンチ条件を強くしても、密層は高密度になりながら粗層の厚さ比率を大きく維持できる。そのため、捕集効率を向上させる機能を有する密層、大粒径ダストを捕捉し長寿命化させる機能を有する粗層、及びこれら2層の密度勾配を緩やかにする機能を有する中間層がそれぞれ、本来の目的通りの役割を果たして高捕集効率と高ダスト捕集量を両立できる。このときのニードルパンチ加工は、ニードルパンチ針番手36〜42番、針深さ7〜12mm(好ましくは8〜11mm)、打ち込み本数50〜110本/cm
2(好ましくは60〜80本/cm
2)の条件が好ましい。
【0058】
ニードルパンチ法等の機械的絡合法により各層が一体化された後、各層間の接合強度を高めるため、加熱処理により低融点繊維を熱溶融させて繊維間を接着させてもよい。密層に低融点繊維を57重量%以上100重量%未満と多量に混綿し、更にシリコーンオイルが付着した基材繊維を用いているため、密層面からのみ(従来よりも強い生産条件で)ニードルパンチ加工した後にサーマルボンド加工すると、高捕集効率でありながら、剛性が増して従来のエアフィルタユニットよりもプリーツの形態を長期にわたって維持できるため低圧力損失を達成でき、更に各層の繊維間絡合度が下がることで粗層の比率を大きくできるため、ダスト保持容量が拡大するという従来にはない濾材が得られる。また、強い生産条件でニードルパンチ加工をしてもニードルによる針孔も形成されにくいため捕集効率の向上に寄与する。
【0059】
加熱処理における温度は、基材繊維の融点以下且つ低融点繊維のガラス転移温度超であり、具体的には、175〜225℃が好ましく、より好ましくは190〜220℃である。また、濾材の風合いを硬くするために、加熱温度は、混綿している低融点繊維の融点T
Lに対し、T
L+10(℃)〜T
L+110(℃)が好ましく、より好ましくはT
L+35(℃)〜T
L+90(℃)である。加熱温度が前記範囲内であれば、低融点繊維を適度に溶融することが可能となる。加熱時間は、混綿する低融点繊維の融点や含有率を考慮して適宜設定するとよいが、15〜180秒が好ましく、より好ましくは40〜120秒である。
【0060】
形成された濾材は、所望の温度に調整した熱処理機(例えば、循環式熱風乾燥機)内を通過させて加熱処理するとよい。このとき、濾材の寸法を整えるため、濾材の端部(好ましくは両端部)及び濾材の上下面(好ましくは、表面と裏面の両方)を固定し得るエンドレスのベルトコンベアで挟みこみながら、幅及び厚さを保って加熱処理することが好ましい。
【0061】
さらに密層面を加熱ロールや加熱板間を通して平滑処理をしてもよい。平滑処理をすることで、不織布の剛性向上や密層面の密度アップにより捕集効率をさらに向上できる。前記平滑処理としては、カレンダー加工等が挙げられる。カレンダー加工は、密層面側の表面に施されていることが好ましい。また予め密層を不織布(好ましくはニードルパンチ不織布)としておき、そこへウェブを重ねて機械的絡合法で各層を一体化して濾材を製造する際には、カレンダー加工された密層用の不織布の上に、他層用のウェブを積層してもよい。加熱ロール及び金属板の加熱温度は、低融点繊維の溶融開始温度よりも高い温度であれば特に限定されないが、70〜200℃が好ましく、より好ましくは100〜190℃である。
【0062】
<プリーツ加工>
濾材にプリーツ加工を施すときは、前述した方法によって得られた濾材を、その用途に応じて所定の大きさに調整した後に実施する。プリーツ加工法は特に限定されないが、濾材の密層面を内側にして、プリーツ加工するとよい。ピッチと山高さは、ピッチは10〜25mmが好ましく、山高さは30〜100mmが好ましい。
【0063】
本発明の濾材は、高剛性、低通気抵抗、高捕集効率及び高捕集量の性能を有するため、濾材の使用面積を、従来品に比べて、例えば、10〜20%程度低減させることが可能となる。これにより、エアフィルタエレメントを小型化・軽量化でき、省スペース化や燃費向上にも寄与する。
【0064】
なお本発明に係る濾材は、不織布に含まれる繊維に由来する細かな凹凸があるのみの比較的平滑な表面を有していることが望ましい。具体的には、前記密層の表面が突起のない平坦面であることが望ましい。
【実施例】
【0065】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0066】
実施例での測定方法は以下の通りである。
1.目付;JIS L1913 6.2に準じた。
2.厚さ;JIS L1913 6.1に準じた。
3.繊維密度;目付を厚さで除し、単位を換算した。
4.繊維密度差;密層の繊維密度と中間層の繊維密度の差、及び、中間層の繊維密度と粗層の繊維密度の差をそれぞれ求めて繊維密度差とした。
【0067】
5.密層面山高さ;
濾材を、幅50mmに切断した後、高さ50mm、ピッチ16mmでプリーツ加工を行った。プリーツ後の濾材における任意の連続する3山分について、
図1に示すように、濾材の密層側の2つの頂部p,qを結んで形成される底部bから濾材の密層面rまでの高さhを3山それぞれで測定し、3点の平均値として求める。
【0068】
6.通気抵抗;JIS D1612(自動車用エアクリーナ試験方法)に準じ、以下の条件で通気抵抗試験を実施した。
有効濾過面積:1760cm
2
投影面積:281cm
2
空気量:5.7m
3/分
空気速度:54cm/秒
濾材の有無による空気の流れにくさをPaで表す。
【0069】
7.捕集効率・捕集量;JIS D1612(自動車用エアクリーナ試験方法)に準じ、以下の条件で濾過性能試験を実施した。
有効濾過面積:1760cm
2
空気量:5.7m
3/分
空気速度:54cm/秒
ダスト:JIS Z8901 8種
ダスト濃度:1g/m
3
捕集効率:JIS D1612 9.4(3)で規定するフルライフ清浄効率試験に準じた。尚、試験終了条件は、増加抵抗300mmAq時とした。
捕集量:JIS D1612 10に準じた。捕集効率と同様に、試験終了条件は、増加抵抗300mmAq時とした。
なおエレメントは以下の方法で作成した。
エレメントの作成方法;実施例に記載の方法で得られた濾材を、幅110mmで切断した後、濾材の密層面を内側にして、高さ45mm、ピッチ16mmでプリーツ加工を行った。このようにして得られたプリーツ後の濾材の周囲をシーリング材を用いてプラスチックボードに密封固定し、エレメントを作成した(幅150mm×長さ290mm×高さ45mm)。
【0070】
なお性能評価においては、以下の基準に基づいて合格を決定した。
・密層面山高さ;31mm以上を合格とする
・通気抵抗;365Pa以下を合格とする
・捕集効率;97.5%以上を合格とする
・捕集量;139g以上を合格とする
【0071】
実施例1
(1)ニードルパンチ不織布の作製
繊度2.2dtex、繊維長51mmのレギュラーポリエステル繊維にシリコーンオイルが付着した基材繊維10重量%(クラレ製P−800HX)と、繊度2.2dtex、繊維長51mm、融点160℃で芯鞘タイプのポリエステル複合繊維90重量%を、それぞれ計量、混綿後、カーディングして、クロスラッピングした後、針番手40番のニードル(オルガン製FPD1−40)でもって針深さ14mm、打ち込み本数110本/cm
2にてニードルパンチ加工を行い、密層用不織布を作製した。
該密層用不織布の上に、繊度4.4dtex、繊維長51mmのポリエステル繊維5重量%と、繊度4.4dtex、繊維長51mmのレギュラーポリエステル繊維にシリコーンオイルが付着した基材繊維5重量%(クラレ製P−800HX)、及び繊度4.4dtex、繊維長51mm、融点160℃で芯鞘タイプのポリエステル複合繊維90重量%を、それぞれ計量、混綿後、カーディングして、クロスラッピングして、中間層用ウェブを積層した。
次いで、中間層用ウェブの上に、繊度17dtex、繊維長51mmのポリエステル繊維10重量%、繊度4.4dtex、繊維長51mm、融点130℃で芯鞘タイプのポリエステル複合繊維90重量%を、それぞれ計量、混綿後、カーディングして、クロスラッピングして、粗層用ウェブを積層した。
得られた積層体を、密層側からニードルパンチ針番手40番(オルガン製FPD1−40)で針深さ9mm、打ち込み本数65本/cm
2にてニードルパンチ加工を行い、ニードルパンチ不織布を作成した。
(2)加熱処理
次いで熱風の温度215℃に保ったコンベア式連続熱処理機の中にて47秒間加熱処理を行い、低融点繊維を融解・固着し、表に示す特性を有する濾材を作成した。この濾材を用いて、密層面山高さ、通気抵抗、捕集効率・捕集量を測定した。結果を表に示す。
【0072】
実施例2
密層用不織布を作製する際に、予め密層用のウェブをニードルパンチ法による絡合を実施せず、密層用ウェブ、中間層用ウェブ、粗層用ウェブの積層体を表に示す条件でニードルパンチ加工により一体化したこと以外は実施例1と同様にして濾材を作成した。結果が示すように、密層は他の層と一体化する際に、ウェブの状態であっても不織布の状態であってもよいことが理解できる。また比較例2と比べると、シリコーン繊維を用いた上に強い条件でニードルパンチ加工を実施しているため、密層面山高さ、通気抵抗、捕集効率・捕集量の全ての点で優れた効果が発揮されている。
【0073】
比較例1
シリコーンオイルが付着した基材繊維をポリエステル繊維に変更したこと以外は実施例1と同様にして濾材を作成した。シリコーンオイルが付着した基材繊維を使用していないため、実施例1と同様の条件でニードルパンチ加工を行うと、厚さが減少し、通気抵抗が上昇してしまった。また捕集効率及び捕集量の点で満足できるものではなかった。
【0074】
比較例2
シリコーンオイルが付着した基材繊維をポリエステル繊維に変更し、積層時のニードルパンチ加工の条件を変更したこと以外は実施例2と同様にして濾材を作成した。シリコーンオイルが付着した基材繊維を使用していないが、絡合条件が弱いため、濾材は適度な厚さを有し通気抵抗もさほど上昇してはいない。しかし、捕集効率及び捕集量の点で満足できるものではなかった。
【0075】
比較例3
シリコーンオイルが付着した基材繊維をポリエステル繊維に変更したこと以外は実施例2と同様にして濾材を作成した。シリコーンオイルが付着した基材繊維を使用していないため、実施例2と同様の条件でニードルパンチ加工を行うと、厚さが減少し、通気抵抗が上昇してしまった。また捕集効率及び捕集量の点で満足できるものではなかった。
【0076】
比較例4
密層、中間層及び粗層における繊維の比率、密層の目付、及びニードルパンチ加工の条件を表に示すように変更したこと以外は、比較例2と同様にして濾材を作成した。比較例4では、全層において低融点繊維の重量比率が低いため剛性が低く(密層面山高さが低い)、比較例2に比べて通気抵抗が高い。また密層の目付が小さいため、比較例2に比べて捕集効率及び捕集量も悪くなっている。
【0077】
結果を表にまとめる。なお各表において、繊維の略称は以下の意味で用いることとする。
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】
実施例3〜5
繊度の異なる繊維を用いて濾材を作成した。結果を、実施例1の結果と共に表に示す。実施例3のように、特に密層に細繊度の繊維を混綿すると捕集効率が大きく向上する。
【0081】
【表3】
【0082】
実施例6〜8、比較例5〜6
密層におけるSi繊維の重量比率を変更して濾材を作成した。結果を、実施例1及び実施例4の結果と共に表に示す。密層における低融点繊維の重量比率を増やすと、濾材の剛性が上がるため通気抵抗が低下する。しかし低融点繊維が100重量%となると、溶融した繊維が膜のような形態になってしまい、濾材が薄くなってしまうため、捕集効率及び捕集量の点で満足する不織布とはならなかった(比較例5)。一方、密層における低融点繊維の重量比率が下がると、濾材は厚くなるものの、濾材の剛性が低下するため、通気抵抗が上昇する結果となった(比較例6)。
また密層におけるSi繊維と低融点繊維との含有比率を調整することで、捕集効率と通気抵抗のバランスを調整することができる。捕集効率がよいのはSi繊維が密層に20〜43重量%程度含まれる濾材(最もよいのはSi繊維が密層に35〜43重量%程度含まれる実施例7)であり、通気抵抗がよいのはSi繊維が密層に5〜15重量%程度含まれる濾材(最もよいのはSi繊維が密層に5〜10重量%程度含まれる実施例1及び4)である。
更に密層における低融点繊維の重量比率が同じでも、Si繊維の重量比率が低いと、濾材が若干薄くなる(実施例8)。通気抵抗、捕集効率、捕集量等の観点からは、Si繊維の含有比率が高い濾材が好ましい(実施例7)。
【0083】
【表4】
【0084】
実施例9〜10
密層における目付の影響を検討するために、表に示す構成の濾材を作成した。結果を実施例1と共に表に示す。密層の目付が増えると、通気抵抗は上がるものの、捕集効率及び捕集量の点で優れた濾材が得られることがわかる(実施例10)。
【0085】
【表5】
【0086】
実施例11〜15、比較例7
中間層の影響を検討するために、中間層におけるSi繊維の重量比率、及び、繊度を変更して濾材を作成した。結果を実施例1及び比較例1と共に表に示す。中間層におけるSi繊維の重量比率は濾材の性能にそれほど大きな影響を与えるものではない(実施例1、11〜15)。しかし中間層における低融点繊維の重量比率が低くなると、中間層がやわらかすぎるため、密層面山高さ、通気抵抗、捕集効率、捕集量のいずれの項目においてもよい結果は得られなかった(比較例7)。
【0087】
【表6】
【0088】
実施例16〜19
実施例16では粗層にSi繊維を加えて濾材を作成した。実施例17〜18では中間層の目付を変更して濾材を作成した。実施例19では中間層のない濾材を作成した。結果を、実施例1の結果と共に表に示す。実施例19が示すように、密層及び粗層の構成によっては、中間層を設けなくても所望の性能が発揮されることがわかる。
【0089】
【表7】