特許第6681162号(P6681162)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6681162パワーコンディショナおよびパワーコンディショナの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6681162
(24)【登録日】2020年3月25日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】パワーコンディショナおよびパワーコンディショナの制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20200406BHJP
   G05F 1/66 20060101ALI20200406BHJP
【FI】
   H02M7/48 R
   G05F1/66 Z
【請求項の数】4
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-177151(P2015-177151)
(22)【出願日】2015年9月9日
(65)【公開番号】特開2017-54273(P2017-54273A)
(43)【公開日】2017年3月16日
【審査請求日】2018年5月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(72)【発明者】
【氏名】増山 しおり
(72)【発明者】
【氏名】松永 俊祐
(72)【発明者】
【氏名】小坂 忠義
【審査官】 白井 孝治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−208131(JP,A)
【文献】 特開2014−180182(JP,A)
【文献】 特開2009−148014(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 1/66〜 1/67
H02M 7/42〜 7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池からの直流電力を平滑化する直流部コンデンサと前記直流部コンデンサにて平滑化した直流電力を交流電力に変換するインバータ部を備える主回路部と、
前記主回路部のインバータ部にスイッチング指令を送るスイッチングパルス生成部と、
前記スイッチングパルス生成部により送られたスイッチング指令に基づき、前記インバータ部で電力を消費している際の前記直流部コンデンサの直流電圧値と前記直流部コンデンサの開放電圧値との差分と、予め定めた運転可能降下電圧値とを比較する比較部とを備える起動判定処理部と、
を備えるパワーコンディショナ。
【請求項2】
請求項記載のパワーコンディショナであって、
前記起動判定処理部は、前記直流部コンデンサの開放電圧と予め設定した基準電圧値とを比較し、比により得られた結果に基づき前記スイッチングパルス生成部から前記インバータ部にスイッチング指令を送るか否かを決定することを特徴とするパワーコンディショナ。
【請求項3】
パワーコンディショナの制御方法であって、
前記パワーコンディショナは、太陽電池からの直流電力を交流電力に変換するインバータ部及び該太陽電池からの直流電力を平滑化する直流部コンデンサを備える主回路部を備えており、
スイッチングパルス生成部にて生成したスイッチング指令をインバータ部に出力する出力工程と、
前記出力工程にて出力したスイッチング指令に基づき該インバータ部で電力を消費している際の前記直流部コンデンサの直流電圧値と前記直流部コンデンサの開放電圧値との差分と、予め定めた運転可能降下電圧値とを比較する比較工程と、
を備えるパワーコンディショナの制御方法。
【請求項4】
請求項記載のパワーコンディショナの制御方法であって、
該直流部コンデンサの開放電圧と予め設定した基準電圧値とを比較し、比により得られた結果に基づき前記スイッチングパルス生成部から前記インバータ部にスイッチング指令を送るか否かを決定する工程と、
を備えることを特徴とするパワーコンディショナの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーコンディショナおよびパワーコンディショナの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、特開2012−205328号公報(特許文献1)がある。この公報には、「連系運転が可能な電力を太陽電池が供給できるか否かを判定する際に電力が供給される負荷やスイッチ回路について、耐圧の低いものが利用できる系統連系装置を提供する。」と記載されている。また、特許第3762036号公報(特許文献2)がある。この公報には、「太陽電池の出力特性が変化してもパワーコンディショナを安定的に運転可能とする。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−205328号
【特許文献2】特許第3762036号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
太陽光発電システムにおいて、パワーコンディショナは、起動時に電力系統と連系し、太陽電池が出力する直流電力を交流電力に変換することで、電力系統に供給する。
【0005】
パワーコンディショナは、太陽電池の出力電力が、パワーコンディショナの起動に必要な電力を上回ると起動し、太陽電池の出力電力が減少してパワーコンディショナの起動に必要な電力を下回ると停止する。
【0006】
このパワーコンディショナの起動において、電力系統と連系を行う前の状態では、通常、太陽電池の開放電圧(電流が流れていないのときの直流電圧)しか得られる情報がない。そのため、温度によって開放電圧値が変化してしまう太陽電池の特性により、太陽電池の出力電力が、パワーコンディショナの起動に必要な電力を上回っているかが、開放電圧からは明解にわからない。そのため、太陽電池の出力電力が不十分だと、パワーコンディショナの起動と同時に、パワーコンディショナが太陽電池の出力電力を消費し、低下した直流電圧がパワーコンディショナの運転条件を満足しないため、パワーコンディショナは停止する。この際、電力系統と連系する際に投入する系統連系用リレー(以下、MC)の、不要な開閉動作が発生する。MCの不要な開閉動作が発生すると、MCの寿命低下や騒音の影響があるため、避けることが望ましい。
【0007】
前記特許文献1には、パワーコンディショナの外部に設けた交流負荷回路に電力を消費させ、太陽電池がパワーコンディショナの運転に必要な電力を出力しているかを判断する手段を記載している。また、前記特許文献2には、パワーコンディショナの内部に追加で設けた放電回路内の放電抵抗に電力を消費させ、太陽電池がパワーコンディショナの運転に必要な電力を出力しているかを判断する手段を記載している。
【0008】
しかし、前記特許文献1においては、パワーコンディショナの外部に、起動判定用の交流負荷回路や、回路切替装置等の追加部品が必要となる。また、前記特許文献2においては、直流部に放電抵抗が別途必要となる。
【0009】
そこで、本願では、信頼性が高く、また、より安価に、太陽電池がパワーコンディショナの運転に必要な電力を出力しているかを判断し、パワーコンディショナの起動と停止の繰り返しを避けるパワーコンディショナおよびパワーコンディショナの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲の構成を採用する。
【0011】
太陽電池からの直流電力を交流電力に変換するインバータ部を備える主回路部と、前記主回路部のインバータ部にスイッチング指令を送るスイッチングパルス生成部と、前記スイッチングパルス生成部により送られたスイッチング指令に基づき前記インバータ部で電力を消費している際の直流電圧値と予め定めた運転可能最小電圧値とを比較する比較部と、を備える起動判定処理部と、を備えるパワーコンディショナである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、信頼性が高く、また、より安価なパワーコンディショナおよびパワーコンディショナの制御方法を提供することができる。
【0013】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例1におけるパワーコンディショナの構成図の例である。
図2】起動判定処理部150の処理を説明するフローチャートの例である。
図3】発電電力量が少ない場合と多い場合とを比較したP−Vカーブの例である。
図4】比較演算部152の判定基準を説明するためのP−Vカーブの例である。
図5】有効電力(P)と周波数(f)の関係を表す図の例である。
図6】スイッチングパルス生成部160で行われる動作の例である。
図7】スイッチングパルス生成部160で行われる動作の例である。
図8】実施例2におけるパワーコンディショナの構成図の例である。
図9】起動判定処理部250の処理を説明するフローチャートの例である。
図10】パワーコンディショナ内部で電力を消費した際のP−Vカーブの例である。
図11】実施例3におけるパワーコンディショナの構成図の例である。
図12】起動判定処理部350の処理を説明するフローチャートの例である。
図13】ある条件下での太陽電池のP−Vカーブの例である。
図14】ある条件下での太陽電池のI−Vカーブの例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施例を図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0016】
本実施例では、連系運転を行う前に、パワーコンディショナの内部に備えた交流負荷を用いて電力を消費し、太陽電池が、パワーコンディショナの運転に必要な最小電力(以下、運転可能最小電力)を発電可能かどうかを判断する方法について説明する。
【0017】
図1は、本実施例のパワーコンディショナの構成図の例である。
【0018】
本実施例のパワーコンディショナは、パワーコンディショナ主回路部100と起動判定処理部150を備えて構成され、太陽電池1と電力系統2はパワーコンディショナ主回路部100に接続される。
【0019】
パワーコンディショナ主回路部100は、絶縁トランス11、MC12、系統側ブレーカ13、直流側ブレーカ14、直流部コンデンサ15、インバータ部20を備えて構成される。インバータ部20は、主素子21、主回路フィルタ30を有し、主回路フィルタ30はリアクトル31、ダンパ抵抗32、フィルタコンデンサ33を有する。
起動判定処理部150は、推定処理起動判定部151、比較演算部152、スイッチングパルス生成部160を有する。
【0020】
太陽電池1は、発電した直流電力をパワーコンディショナ主回路部100へ出力する。電力系統2は、交流電力をパワーコンディショナ主回路部100と受け渡しする。絶縁トランス11は、インバータ部20と電力系統2との間に設けられたトランスであり、インバータ部20と電力系統2とを絶縁する。MC12は、系統側ブレーカ13を介して、インバータ部20と電力系統2とを連系させる際に投入する。系統側ブレーカ13は、電力系統2とパワーコンディショナ主回路部100とを接続する際に投入するブレーカであり、交流側の保護としても使用する。直流側ブレーカ14は、太陽電池1とパワーコンディショナ主回路部100とを接続する際に投入するブレーカであり、直流側の保護としても使用する。直流部コンデンサ15は、パワーコンディショナ主回路部100の直流側に設けられたコンデンサであり、直流電圧の平滑化を行う。また、このコンデンサを監視することで、太陽電池1が出力する直流電圧を計測することができる。
【0021】
主素子21はスイッチングパルス生成部160よりスイッチング指令を受け、太陽電池1が出力した直流電力を交流電力に変換し、主回路フィルタ30へ出力する。主回路フィルタ30は、主素子21が出力した交流電流の高調波を除去する。出力された電力は、絶縁トランス11、MC12、系統側ブレーカ13を介して電力系統2へ出力される。リアクトル31、ダンパ抵抗32、フィルタコンデンサ33は、交流電力の高調波を抑制するための部品として主回路フィルタ30の内部に搭載されている。主素子21がスイッチングを行った際は、後述のようにダンパ抵抗32にて電力が消費される。
【0022】
推定処理起動判定部151は、直流部コンデンサ15の開放電圧(直流電流が流れていないときの直流電圧)を監視し、推定処理を起動するかどうかの判定を行う。推定処理を起動可能と判断した場合に、スイッチングパルス生成部160へ推定処理起動指令を出力する。
【0023】
スイッチングパルス生成部160は、推定処理起動判定部151より推定処理起動指令を入力されると、主素子21へスイッチング指令を出力する。この詳細については後述する。
【0024】
比較演算部152は、ダンパ抵抗32が電力を消費している時の直流部コンデンサ15の直流電圧(以下、負荷投入時の直流電圧)と、運転可能最小電圧を比較し、負荷投入時の直流電圧が運転可能最小電圧を上回っている場合には起動可能と判断して起動指令を出力する。
【0025】
運転可能最小電圧とは、直流電力を交流電力に変換する際、必要とされる直流電圧の最小値である。直流電力を交流電力に変換する際には、変調率を変化させることで、変換される交流電圧値を調整することが可能だが、電力系統2の交流電圧は定められているため、変換に必要とされる直流電圧の最小値が存在する。この直流電圧の最小値が運転可能最小電圧である。運転可能最小電圧は、例えば工場出荷時に予め定められる値である。
【0026】
図2は起動判定処理部150の処理を説明するフローチャートの例である。図2を用いて、起動判定処理部150が行う処理について説明する。
【0027】
まず、推定処理起動判定部151にて、直流部コンデンサ15の開放電圧と、予め設定されていた基準電圧とを比較し(S201)、開放電圧が基準電圧より大きい場合に推定処理起動指令を出力する(S202)。この際、系統連系規程上の理由等から、電力系統2が復帰状態であることを条件に追加してもよい。また、安全上の理由から、運転指令を条件に追加してもよい。
【0028】
スイッチングパルス生成部160は推定処理起動判定部151から推定処理起動指令を入力されると、主素子21をスイッチングするためのスイッチングパルスを生成し(S203)、主素子21へスイッチング指令を出力する(S204)。
【0029】
主素子21がスイッチングを行うと、太陽電池1が発電した直流電力が交流電力へと変換される。変換された交流電力は主回路フィルタ30内のダンパ抵抗32が消費する。
【0030】
このとき、パワーコンディショナの内部で消費する電力の合計が運転可能最小電力を超えるよう、ダンパ抵抗32の消費電力を調整することとする。運転可能最小電力とは、パワーコンディショナの運転時に最小限必要な電力で、主素子21の無負荷状態でのスイッチングロスや、冷却ファン、各種回路の電源等の消費電力の合計となる。例えば、起動判定処理中の動作状態が、主素子21はスイッチングし、冷却ファンは停止し、各種回路の電源は投入されているような場合、ダンパ抵抗32に消費させる電力は、冷却ファンの駆動のために消費される電力と、その他運転を開始することによって追加で発生する消費電力を加えたものとする。ダンパ抵抗32が消費する電力の調整方法は後述する。
【0031】
比較演算部152では、負荷投入時の直流電圧と、運転可能最小電圧とを比較する(S205)。運転可能最小電圧より負荷投入時の直流電圧の方が大きい場合には、後述の理由により、太陽電池1の発電電力は運転可能最小電力を上回る。よって、運転可能最小電圧より負荷投入時の直流電圧の方が小さい場合には、運転不可と判断し、スイッチング指令の出力を止め、一定時間の待機を行い(S206)、起動判定処理部150の最初から判定処理をやり直す。
【0032】
一方、運転可能最小電圧より負荷投入時の直流電圧の方が大きい場合には、運転可能と判断し、比較演算部152は起動指令を出力する(S207)。
【0033】
このように、太陽電池1の発電電力と運転可能最小電力の比較を行った上で運転の可否を判定することで、パワーコンディショナの起動と停止の繰り返しを回避することが可能となる。
【0034】
以下、比較演算部152が起動指令を出力する判定基準の根拠について説明する。
【0035】
図3は太陽電池1の出力電力(P)と出力電圧(V)の関係を表すP−Vカーブの例である。太陽電池1の発電電力量が少ない場合と多い場合とを比較する。
【0036】
図3に示す記号はそれぞれ、VOPが開放電圧、VRUNが運転可能最小電圧、PCOMがダンパ抵抗32が電力を消費した際にパワーコンディショナ全体で消費される電力、VCOMがPCOM消費時の電圧、PMAXがP−Vカーブ上で電力が最大となる点、とする。
まず、図3において、PCOMよりPMAXの方が小さい場合のパワーコンディショナの動作について説明する。起動判定処理部150の処理が始まる時点で、太陽電池1は直流電流を出力できていないため、開放電圧点であるVOPをとる。VOPがVRUNより大きいため、起動判定処理が開始する。ダンパ抵抗32が電力を消費すると、対応する直流電力が太陽電池から放出される。結果、直流部コンデンサ15の直流電圧が下がり、太陽電池1の出力する直流電力はP−Vカーブに沿って徐々に上昇する。しかし、PCOMを供給できる電圧点は存在しないため、直流電力はPMAXを超えて0点まで減少する。
【0037】
次に、PCOMよりPMAXの方が大きい場合のパワーコンディショナの動作について説明する。上述の場合と同様に、ダンパ抵抗32が電力を消費すると、対応する直流電力が太陽電池から放出される。結果、直流部コンデンサ15の直流電圧が下がり、太陽電池1の出力する直流電力はP−Vカーブに沿って徐々に上昇する。直流電圧がVCOMなった時点で、直流部コンデンサ15へ流入する電力が、放出される直流電力と一致するため、平衡状態となる。よって、この時点のP−Vカーブ上の点で安定して動作する。
【0038】
電力を消費すると、その電力に見合ったP−Vカーブ上の点をとるため、電力消費時の電圧は開放電圧より小さくなる。よって、さらにVCOMとVRUNを比較し、後述のように運転に必要な電圧があるかを確認する必要がある。
【0039】
図4を用いて比較演算部152の判定基準について説明する。
【0040】
図4は、図3のPCOMよりPMAXの方が大きい場合のP−Vカーブに対して、VOPがVRUNに比較的近い値をとる場合のP−Vカーブの例である。図4に示す記号は、図3で示された同一の記号名と同一の意味をとる。図4より、VOPはVRUNより大きいが、ダンパ抵抗32が電力を消費すると、VCOMはVRUNより小さくなることがわかる。このように、電力を消費すると、その電力に見合ったP−Vカーブ上の点をとるため、電力消費時の電圧は開放電圧より小さくなる。よって、比較演算部152では、VCOMとVRUNの比較を行い、運転に必要な電圧があるかを確認する。
【0041】
次に、ダンパ抵抗32に電力を消費させる方法について説明する。
【0042】
数1は、RLC回路の電力を求める式である。
【0043】
【数1】
【0044】
正弦波の交流電圧を印加した時のダンパ抵抗32で消費される電力は、数1で求められる。
【0045】
数1において、Pはダンパ抵抗32に消費させる有効電力、Vは印可電圧(相電圧の振幅値)、Lはリアクトル31のインダクタンス、Rはダンパ抵抗32の抵抗値、Cはフィルタコンデンサ33の静電容量、ωは角速度である。L、R、Cの値として相換算値を用いれば、一相当たりの電力が数1より算出されるので、3倍することで三相合計の電力となる。L、R、Cを固定値とすると、有効電力Pは角速度ωと印可電圧Vの関数となる。
【0046】
図5は、印可電圧Vを一定とした場合の有効電力Pと周波数fの関係を表した図の例である。ここで、周波数fは角速度ωを2πで除したものであり、fは共振周波数である。図5より、周波数を変更することで、共振周波数fでの最大電力以下の、任意の電力Pを消費することが可能となる。
【0047】
次に、上記電力Pを消費するときの周波数とその際のコンデンサ両端の電圧Vについて示す。接続される電力系統2の周波数より高い周波数領域では、コンデンサの電圧Vは印可電圧Vよりも高くなり得る。結果、通常運転時以上の電圧がコンデンサ両端に発生する可能性がある。ここで、周波数としては連系される系統の周波数を含んだ共振周波数fよりも小さい領域を利用するものと仮定する。電力Pを消費するときの周波数は数1を角速度ωについて解くことで得られる。これは数2のようになる。
【0048】
【数2】
【0049】

この角速度ωでのコンデンサ両端の電圧Vは数3で表されるが、数3の角速度ωに数2を代入すると、印可電圧Vで電力Pを消費する場合のコンデンサ両端の電圧Vが求まる。
【0050】
【数3】
【0051】
この式により、印可電圧Vによるコンデンサ両端の電圧Vの調整が可能となりコンデンサの部品定格範囲内での電力消費が可能となる。
【0052】
主素子21のスイッチングによってPWM変調を行ったPWM交流電圧を印加する場合は、電圧波形に高周波成分を含む。この高周波成分を含む場合の電力の計算について説明する。まず、フーリエ変換にてPWM電圧波形中に含まれる周波数成分を求めれば、それぞれの周波数ごとに数1より電力を計算できる。この電力を含有される全ての周波数について積算することで計算可能となる。また、実際の出力条件に従う環境を準備して予め電力を計測しておくことで周波数と電力の関係を把握してもよい。
【0053】
ダンパ抵抗32に電圧を印加してから、実際に数1で示される電力が発生するまでの概略の時間は主回路フィルタのLとRから構成されるLR回路の時定数で求めることができる。この時定数は通常、約1秒以下となる。
【0054】
実際に数1で示される電力が発生した後に直流電圧の計測を行うが、通常、前記時定数と同程度以下の時間で行うことが可能である。また、運転開始判定のためのスイッチング指令出力の間隔は数秒から数分と思われるが、この間隔を調整すればダンパ抵抗32の使用率を決めることができる。
【0055】
数1で示される電力が発生するまでの時間と、直流電圧の計測を行う時間と、ダンパ抵抗32の使用率が短時間定格の範囲であれば、短時間定格での電力消費を行うことが可能となる。短時間定格は通常、連続定格の数倍であるので、正弦波フィルタの目的で供されるダンパ抵抗であっても、多くの場合運転可能最小電力と同程度の電力消費が可能となる。
【0056】
ここで、ダンパ抵抗32に電力を消費させた際の、フィルタコンデンサ33の電圧を求める。ダンパ抵抗32に電力を消費させる際の周波数を共振周波数より小さい周波数とする場合、主回路フィルタ30内において、フィルタコンデンサ33にかかる電圧がより大きくなる。そのため、以下のようにフィルタコンデンサ33にかかる電圧を求めることで、フィルタコンデンサ33の故障を防ぐことが可能となる。
【0057】
次に、スイッチングパルス生成部160が行う動作について説明する。
【0058】
図6はスイッチングパルス生成部160内で行われる動作の具体例である。図6において、スイッチングパルス生成部160は、積算部161、変換部162、及び、PWMパルス生成部163を有する。スイッチングパルス生成部160は、推定処理起動判定部151から推定処理起動指令を入力されると、以下の動作を行う。
【0059】
まず、積算部161に角速度2πf(fは周波数)を入力し、時間積算を行い、位相θを出力する。
【0060】
次に、変換部162に位相θとd軸の電圧指令Vとq軸の電圧指令Vを入力する。ただし、Vの電圧指令値は0とする。変換部162にて、V、Vのdq軸上の電圧が三相の交流電圧信号に変換され、PWMパルス生成部164へ出力する。PWMパルス生成部164では、三相の交流電圧からPWMパルスとなる6本のスイッチングパルス信号を生成し、主素子21へスイッチング指令として出力する。
【0061】
また、電圧フィードバック処理を備えた場合のスイッチングパルス生成部160の動作について説明する。
【0062】
図7は、電圧フィードバック処理を備えた場合のスイッチングパルス生成部160内で行われる動作の具体例である。図7において、スイッチングパルス生成部160は、積算部161、変換部162、PWMパルス生成部163、電力演算部164、周波数演算部165を有する。
【0063】
スイッチングパルス生成部160は、図6のスイッチングパルス生成部160に加えて、電力演算部164と周波数演算部165を備えたものである。すでに説明した図6に示された同一の符号を付された構成と、同一の機能を有するので、それらの説明は省略する。
【0064】
電力演算部164は、主素子21と主回路フィルタ30間の交流電流と交流電圧から電力演算を行う。このとき、交流電圧は変換部162に入力した電圧指令から換算することも可能である。また、電力演算部164で使用する電流と電圧は、直流側で検出してもよい。
【0065】
電力演算部164が出力した電力と、予め設定されていたダンパ抵抗32に消費させる電力とが比較され、差分の電力が出力される。周波数演算部165は、電力演算部164から出力された差分の電力に比例係数と積分係数をかけて和をとることで、周波数指令を出力する。
【0066】
図7のようなスイッチングパルス生成部160を備えることで、ダンパ抵抗32に、固体間の抵抗誤差や温度等による抵抗変化が発生した場合にも、所望の電力を消費させることが可能となる。
【0067】
また、パワーコンディショナ主回路部100の直流側に昇圧チョッパ回路を搭載した場合においても、本発明は有効である。
【0068】
また、本発明では、電力系統2との接続は三相としているが、単相接続でも同様の手法が適応可能である。
【実施例2】
【0069】
本実施例では、連系運転を行う前に、パワーコンディショナの内部に備えた交流負荷を用いて電力を消費し、電力を消費する前と後の直流電圧の降下分から、太陽電池が、パワーコンディショナの運転に必要な最小電力を発電可能かどうかを判断する方法について説明する。
【0070】
図8は、本実施例のパワーコンディショナの構成図の例である。
【0071】
本実施例のパワーコンディショナは、パワーコンディショナ主回路部100と起動判定処理部250を備えて構成され、太陽電池1と電力系統2はパワーコンディショナ主回路部100に接続される。
【0072】
パワーコンディショナ主回路部100は、絶縁トランス11、MC12、系統側ブレーカ13、直流側ブレーカ14、直流部コンデンサ15、インバータ部20を備えて構成される。インバータ部20は、主素子21、主回路フィルタ30を有し、主回路フィルタ30はリアクトル31、ダンパ抵抗32、フィルタコンデンサ33を有する。
【0073】
起動判定処理部250は、推定処理起動判定部151、比較演算部252、スイッチングパルス生成部160を有する。
【0074】
図1のパワーコンディショナの構成図のうち、比較演算部152を比較演算部252に変更したものである。その他の構成は、すでに説明した図1に示された同一の符号を付された構成と、同一の機能を有するので、それらの説明は省略する。
【0075】
比較演算部252は、直流部コンデンサ15の開放電圧と、負荷投入時の直流部コンデンサ15の直流電圧と、予め定められた運転可能降下電圧を比較する。開放電圧と負荷投入時の直流電圧の差(以下、直流降下電圧)が運転可能降下電圧よりも小さい場合に、起動指令を出力する。
【0076】
運転可能降下電圧とは、任意の固定電圧や、開放電圧をもとに算出した電圧の割合であり、起動指令を出力する条件の比較に使用する直流降下電圧である。
【0077】
図9は起動判定処理部250の処理を説明するフローチャートの例である。図9を用いて、起動判定処理部250が行う処理について説明する。
【0078】
推定処理起動判定部151、スイッチングパルス生成部160が行う処理については、実施例1で説明した内容と同一のため省略する。
【0079】
ただし、ダンパ抵抗32が消費する電力は、運転可能最小電力を超える必要はなく、任意の固定電力とする。本実施例では、ダンパ抵抗32が消費する電力を、運転可能最小電力より小さい電力とする。
【0080】
しかし、ダンパ抵抗32が消費する電力には、例えば、電圧検出精度、あるいはその他の推定方法等によって制約がある。
【0081】
比較演算部252では、直流降下電圧と運転可能降下電圧とを比較する(S905)。
【0082】
運転可能降下電圧より直流降下電圧の方が大きい場合には、スイッチング指令の出力をやめ、一定時間の待機を行い(S906)、起動判定処理部250の最初から判定処理をやり直す。運転可能降下電圧より直流降下電圧の方が小さい場合には、後述の理由により、太陽電池1の発電電力は運転可能最小電力を上回る。よって、比較演算部252は起動指令を出力する(S907)。
【0083】
したがって、比較演算部252が起動指令を出力してから運転を開始することで、パワーコンディショナの起動と停止を繰り返すことなく運転を継続させることが可能となる。
【0084】
ここで、比較演算部252が起動指令を出力する判定基準の根拠について説明する。
【0085】
図10は、パワーコンディショナ内部で電力を消費した際の、P−Vカーブの例である。図10に示す記号はそれぞれ、VOPが開放電圧、Vが運転可能降下電圧、PRUNが運転可能最小電力、Pが電圧降下消費電力、とする。
【0086】
また、Cは電力の最大点がPRUNを十分に超えるP−Vカーブ、Cは電力の最大点がPRUNを少し超えるP−Vカーブ、Cは電力の最大点がPRUNは超えないが、Pを超えるP−Vカーブ、Cは電力の最大点がPを超えないP−Vカーブとする。CにてPを消費した際の直流電圧をV、CにてPを消費した際の直流電圧をV、CにてPを消費した際の直流電圧をV、CにてPを消費した際の直流電圧をV(0点)とする。
【0087】
図10において、CとCで電力Pを消費した際の電圧VとVは、Vよりも大きく、CとCで電力Pを消費した際の電圧VとVは、Vよりも小さいことがわかる。
【0088】
このことから、Pを消費した際の直流降下電圧を、Vと比較することで、太陽電池がPRUNを超える電力を発電可能かどうかが判定できる。
【0089】
本実施例では、交流側の負荷としてダンパ抵抗32を例に挙げたが、パワーコンディショナの内部に予め備えられている部品により、交流側の電力を消費する手段であればこの限りではない。また、交流側の負荷の代わりに、直流側の負荷を用いて電力を消費しても良い。
【実施例3】
【0090】
本実施例では、連系運転を行う前に、パワーコンディショナの内部に備えた交流負荷を用いて電力を消費し、消費した電力と、電力を消費した際の直流電圧と、開放電圧から、太陽電池が発電可能な最大電力を推定する方法について説明する。
【0091】
図11は、本実施例のパワーコンディショナの構成図の例である。本実施例のパワーコンディショナは、パワーコンディショナ主回路部100と起動判定処理部350を備えて構成され、太陽電池1と電力系統2はパワーコンディショナ主回路部100に接続される。
【0092】
パワーコンディショナ主回路部100は、絶縁トランス11、MC12、系統側ブレーカ13、直流側ブレーカ14、直流部コンデンサ15、インバータ部20を備えて構成される。インバータ部20は、主素子21、主回路フィルタ30を有し、主回路フィルタ30はリアクトル31、ダンパ抵抗32、フィルタコンデンサ33を有する。
【0093】
起動判定処理部350は、推定処理起動判定部151、スイッチングパルス生成部160、比較演算部352、太陽電池最大電力推定処理部353を有する。
【0094】
図1のパワーコンディショナの構成図のうち、比較演算部152を比較演算部352に変更し、起動判定処理部350に太陽電池最大電力推定処理部353を備えたものである。その他の構成は、すでに説明した図1に示された同一の符号を付された構成と、同一の機能を有するので、それらの説明は省略する。
【0095】
比較演算部352は、太陽電池最大電力推定処理部353が出力した推定最大電力と、運転可能最小電力とを比較する。運転可能最小電力より推定最大電力の方が大きい場合に、起動指令を出力する。
【0096】
太陽電池最大電力推定処理部353は、負荷投入時の消費電力と、負荷投入時の直流部コンデンサ15の直流電圧から、推定最大電力(太陽電池1が発電できる最大電力を計算により求めた値)を算出して出力する。
【0097】
負荷投入時の消費電力とは、ダンパ抵抗32が消費する電力のことであり、消費させる電力は予め定められた電力とする。
【0098】
図12は起動判定処理部350の処理を説明するフローチャートの例である。図12を用いて、起動判定処理部350が行う処理について説明する。
【0099】
推定処理起動判定部151、スイッチングパルス生成部160が行う処理については、実施例1で説明した内容と同一のため省略する。
【0100】
ただし、ダンパ抵抗32が消費する電力は、運転可能最小電力を超える必要はなく、任意の固定電力とする。本実施例では、ダンパ抵抗32が消費する電力を、運転可能最小電力より小さい電力とする。
【0101】
太陽電池最大電力推定処理部353では、負荷投入時の消費電力と、開放電圧と、負荷投入時の直流電圧から、最大電力を推定し、比較演算部352へ出力する(S1205)。最大電力の推定方法は後述する。
【0102】
比較演算部352では、太陽電池最大電力推定処理部353から入力された推定最大電力と、運転可能最小電力とを比較する(S1206)。
【0103】
推定最大電力が運転可能最小電力より小さい場合には、スイッチング指令の出力を止め、一定時間の待機を行い(S1207)、起動判定処理部350の最初から判定処理をやり直す。
【0104】
推定最大電力が運転可能最小電力より大きい場合には、後述の理由により、太陽電池1の発電電力は運転可能最小電力を上回る。よって、比較演算部352は起動指令を出力する(S1208)。
【0105】
したがって、比較演算部352が起動指令を出力してから運転を開始することで、パワーコンディショナの起動と停止を繰り返すことなく運転を継続させることが可能となる。
【0106】
ここで、太陽電池最大電力推定処理部353が出力する最大電力の推定方法について説明する。
【0107】
数4、数5は、それぞれ太陽電池の動作方程式である。
【0108】
【数4】
【0109】
【数5】
【0110】
数4、数5において、Iは直流電流、Vは直流電圧、Iphは日射による起電流、Rは直列抵抗、Rshは並列抵抗、Iは逆方向飽和電流、qは素荷量、nは接合定数、kはボルツマン定数、Tは温度、I(T)は温度Tにおける逆方向飽和電流、I(T)は温度T0における逆方向飽和電流、XTIは飽和電流温度係数、Nはエミッション定数、Eはエネルギーギャップである。
【0111】
図13は、ある条件下での太陽電池のP−Vカーブの例である。
【0112】
図14は、図13と同様の条件下での太陽電池のI−Vカーブの例である。
【0113】
I−Vカーブとは、太陽電池の直流電流(I)と直流電圧(V)の関係を表すカーブのことである。
【0114】
太陽電池が、図13のP−Vカーブ上の動作点をとる場合、I−Vカーブでは、図14に示されるI−Vカーブ上の動作点をとる。このI−Vカーブ上の動作点の直流電圧をV、直流電流をIとする。同様に、開放電圧点の直流電圧をVとする。
【0115】
数4に、温度T1と開放電圧点の直流電圧V、動作点の直流電圧Vと動作点の直流電流Iをそれぞれ代入し、数6と数7を導く。
【0116】
【数6】
【0117】
【数7】
【0118】
数7と数6の差をとると、数8が導かれ、数8に数5を代入すると、数9が導かれる。
【0119】
【数8】
【0120】
【数9】
【0121】
数9において、Rsの項と右辺の第2項は、微小な値となるため、本計算から除外すると、数10が求められる。
【0122】
【数10】
【0123】
数10において未知数は温度T1のみとなるため、温度T1が求められる。
【0124】
ここで、数6を数11のように変形させ、求めた温度T1を代入することで、日射による起電流Iphが求められる。このとき、右辺の第2項は微小な値となるため、計算から除外する。
【0125】
【数11】
【0126】
最大電力点において、∂(VI)/∂V=0が成り立つことから、数12が導かれる。数12におけるVは最大電力点の直流電圧、Iは最大電力点の直流電流を表す。
【0127】
【数12】
【0128】
数4の両辺をVで偏微分すると、数13が求められ、数13に数12を代入すると、数14が導かれる。
【0129】
【数13】
【0130】
【数14】
【0131】
数14において、RsIの項は微小な値となるため、本計算からは除外し、数15を導く。
【0132】
【数15】
【0133】
数15を数4に代入すると、数16となり、未知数がVのみとなるため、最大電力点の直流電圧Vが求まる。
【0134】
【数16】
【0135】
求めた最大電力点の直流電圧Vを数15に代入することで、最大電力点の直流電流Iが求まるため、最大電力点を推定することができる。
【0136】
以上の内容より、ダンパ抵抗32が電力を消費している際のP−Vカーブ上の点を動作点とし、計算を行うことで、最大電力点を推定することができる。
【0137】
負荷投入時の消費電力を求める方法を明記していないが、同様の条件下にて前もって計測しておいてもよいし、負荷投入時の直流電圧と、負荷投入時の直流電流を計測して掛け合わせてもよい。
【0138】
本実施例においては、電流検出は行わないが、負荷投入時の消費電力と負荷投入時の直流電圧が得られることから、動作点の直流電流は求められる。
【0139】
本実施例では、交流側の負荷としてダンパ抵抗32を例に挙げたが、パワーコンディショナの内部に予め備えられている部品により、交流側の電力を消費する手段であればこの限りではない。また、交流側の負荷の代わりに、直流側の負荷を用いて電力を消費しても良い。
【0140】
上述した実施例より、パワーコンディショナの外部に、太陽電池1の発電電力を消費するための、起動判定時に用いる負荷回路や、回路切替装置等を備えることなく、パワーコンディショナ内部に予め備えられている部品を使用することで、太陽電池がパワーコンディショナの運転に必要な最小電力を発電可能かどうかを判断することができる。
【0141】
また、日射強度や温度等の天候に影響を受けることがなく、新たな部品追加も無いため、安価で、信頼性の高いパワーコンディショナを実現できる。
【0142】
本実施例の内容は、連系運転時のみでなく、自立運転時にも利用可能である。
【0143】
自立運転時のパワーコンディショナの発電電力は、ユーザが取り付けた任意の負荷で消費される電力と等しい。そのため、自立運転時に一定の電圧にて交流電圧を出力するためには、パワーコンディショナは、前記負荷が消費する電力を超える電力を発電する必要がある。しかし、取り付けられた負荷が消費する電力を知る手段がないため、太陽電池の発電可能な電力が、前記負荷が消費する電力を超えていなければ、運転と同時に停止してしまう。
【0144】
そこで、負荷の電力をユーザが入力できる手段を設け、入力された電力よりパワーコンディショナの推定最大電力が大きい場合に運転を開始する条件とすることで、運転開始を判断することが可能となる。
【0145】
また、パワーコンディショナの推定最大電力をユーザに出力する手段もある。この場合、ユーザにて運転の可否を判断できるということに加え、詳細な起動やシステム全体の動作条件をユーザにて決定できることから、利用範囲が拡大する。
【0146】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0147】
100…パワーコンディショナ主回路部
1…太陽電池
20…インバータ部
160…スイッチングパルス生成部
150…起動判定処理部
152…比較演算部
15…直流部コンデンサ
151…推定処理起動判定部
252…比較演算部
352…比較演算部
353…太陽電池最大電力推定処理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14