(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態のリアクトルについて説明する。
【0018】
[1.第1の実施形態]
[1−1.概略構成]
図1は、PCUケースに固定された本実施形態に係るリアクトルの全体構成を示す斜視図であり、
図2は、その分解斜視図である。
図3は、PCUケースの裏側から見た図である。
【0019】
リアクトルは、電気エネルギーを磁気エネルギーに変換して蓄積及び放出する電磁気部品であり、電圧の昇降圧等に使用される。本実施形態のリアクトルは、例えばハイブリッド自動車や電気自動車の駆動システム等で使用される大容量のリアクトルである。リアクトルは、これら自動車に搭載される昇圧回路の主要部品である。
【0020】
リアクトルは、磁性体を含み構成される環状コア10と、環状コア10の一部の外周に装着されたコイル5と、環状コア10の外周を覆い、環状コア10とコイル5とを絶縁する樹脂部材2を有するリアクトル本体1と、リアクトル本体1を収容するリアクトルケース4(以下、単にケース4とも称する。)と、を備える。ケース4は、リアクトル本体1が取り付けられる取付体の一例である。
【0021】
樹脂部材2には、固定具31、32が埋め込まれており、リアクトル本体1は、樹脂部材2から突出した固定具31、32でネジ締結により、ケース4に収容された状態でケース4に固定されてリアクトルを構成する。
【0022】
このリアクトルは、PCUケース6に収容され、固定される。PCU(Power Control Unit)とは、ハイブリッド自動車や電気自動車においてモータを駆動させるためにバッテリーの出力を制御する電気部品であり、PCUケース6は、PCUを構成する各部品を収容するケースであり、リアクトルが固定される被設置対象物である。本実施形態のリアクトルは、PCUの一部としてPCUケース6に収容される部品である。なお、
図1〜
図4では、PCUケース6はその一部のみ示している。
【0023】
リアクトルとPCUケース6との間には、放熱性のグリスや放熱シートなどの放熱膜(不図示)が介在する。リアクトルは、放熱膜を介在させた状態で、PCUケース6の裏側からネジにより締結固定される。すなわち、ケース4の底面には、ネジ締結するための固定穴が設けられており、PCUケース6の裏側からPCUケース6及び放熱膜を介してネジを固定穴に差し込んで締結し、リアクトルをPCUケース6に固定する。なお、PCUケース6の裏側とは、リアクトルが固定される面とは反対側を指し、例えばPCUケースの外部である。
【0024】
図3に示すように、PCUケース6の裏面には、冷却構造としてウォータージャケット7が設けられている。ウォータージャケット7内の冷却媒体が流れることで、PCUケース6に収容されたリアクトル含む各部品を冷却する。本実施形態のリアクトルは、このウォータージャケット7を跨ぐようにしてPCUケース6に固定される。
【0025】
[1−2.詳細構成]
本実施形態のリアクトルの各部の詳細構成と、リアクトルが固定されるPCUケース6の詳細構成について、
図1〜
図6を用いて説明する。なお、本明細書において、
図1に示すz軸方向を「上」側、その逆方向を「下」側とする。各部材の構成を説明するのに、「下」は「底」や「裏」とも称する。
【0026】
[1−2−1.リアクトル]
(環状コア)
環状コア10は、環状形状を有する。本実施形態では、環状コア10は、
図2に示すように、環状の一部に一対の平行な直線部分と、これら直線部分を繋ぐU字形状の連結部分とを有し、角が丸みを帯びた環状形状である。従って、リアクトル本体1の形状も環状コア10に倣い、角が丸みを帯びた環状形状である。
【0027】
図1に示すように、環状コア10のうち、コイル5が巻回された直線部分は、磁束が発生する脚部である。コイル5が巻回されていないU字形状の連結部分は、脚部で発生した磁束が通過するヨーク部である。すなわち、ヨーク部は、一対の直線部分を繋ぐ。環状コア10内には、脚部で発生した磁束がヨーク部を通過することで、環状の閉じた磁気回路が形成される。
【0028】
環状コア10は、圧粉磁心、フェライトコア、又は積層鋼板などの磁性体である。環状コア10は、
図2に示すように、複数のコア部材11〜13と、複数のスペーサ14とを有し、各コア部材11〜13間にスペーサ14を配置して接着剤によって環状になるように接続されている。
【0029】
本実施形態のコア部材は、左右の脚部を構成する複数のI字型コア13と、ヨーク部を構成する2つのU字型コア11、12である。I字型コア13は、概略直方体の圧粉磁心である。
【0030】
スペーサ14は、板状のギャップスペーサである。このスペーサ14は、各コア部材11〜13間に配置されており、接着剤によってスペーサ14の両側のコア部材11〜13の接続面と接着固定される。
【0031】
スペーサ14は、コア部材11〜13間に所定幅の磁気的なギャップを与え、リアクトルのインダクタンス低下を防止する。スペーサ14の材料としては、非磁性体、セラミック、非金属、樹脂、炭素繊維、若しくはこれら二種以上の合成材又はギャップ紙を用いることができる。なお、スペーサ14は必ずしも設けなくても良い。
【0032】
(樹脂部材)
樹脂部材2は、環状コア1の外周を樹脂により被覆している部材である。従って、樹脂部材2は、環状コア1の形状に倣って環状に形成されている。すなわち、一対の直線部分とこれら直線部分を繋ぐ連結部分とを有している。
【0033】
樹脂部材2を構成する樹脂の種類としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ウレタン樹脂、BMC(Bulk Molding Compound)、PPS(Polyphenylene Sulfide)、PBT(Polybutylene Terephthalate)等が挙げられる。
【0034】
本実施形態では、樹脂部材2は、二分割されて構成されており、樹脂体21と樹脂体22とを有する。すなわち、樹脂部材2は、略U字形状の樹脂体21と、略C字形状の樹脂体22とを別々に成形しておき、互いの端部を向かい合わせることで構成される。樹脂体21と樹脂体22とを別々に成形するのは、互いの端部を向かい合わせる前に環状コア10の脚部を構成するI字型コア13を樹脂体21内部に収容するため、及び、コイル5を直線部分にはめ込んで樹脂部材2にコイル5を装着するためである。
【0035】
樹脂体21は、一対の直線部21a、21bとこれら直線部21a、21bを繋ぐC字形状の連結部21cとを有する。樹脂体22は、C字形状の連結部22aとフック22bを有する。直線部21a、21bはコイル5が装着される部分であり、ボビンとも称される。一対の直線部21a、21bが樹脂部材2の一対の直線部分であり、連結部21c、22aが一対の直線部分を繋ぐ連結部分である。
【0036】
樹脂体21、22は、樹脂により一体成形された部材である。すなわち、樹脂体21を構成する直線部21a、21b及び連結部21cも同様に継ぎ目なく一続きに構成されている。樹脂体22を構成する連結部22aとフック22bは継ぎ目なく一続きに構成されている。フック22bは、連結部22aからリアクトル内部に向けて延びており、例えば、後述のリード線9bを有する温度センサ9をリアクトルに取り付ける際に、そのリード線9bを巻き回すために用いられる。
【0037】
連結部21c、22aの内部には、U字型コア11、12がモールド成形法によって埋め込まれている。換言すれば、連結部21c、22aは、U字型コア11、12の被覆部であり、連結部21c、22aに覆われたU字型コア11、12の外周部分が、連結部21c、22aの内周と密着している。但し、U字型コア11、12の接続面は露出している。
【0038】
直線部21a、21bは、環状コア1の直線部分を被覆する被覆部である。すなわち、直線部21a、21bの内部には、環状コア1の直線方向に沿って、I字型コア13、スペーサ14が交互に積層して配置されている。直線部21a、21bの先端には開口部がそれぞれ設けられており、直線部21a、21bの開口部からI字型コア13、スペーサ14が挿入される。
【0039】
(固定具)
固定具31、32は、
図1及び
図2に示すように、長板状の金具であり、連結部21c、22aに埋め込まれている。具体的には、固定具31、32は、U字型コア11、12の上面側に配置されるようにして、固定具31、32の中央部分が例えばモールド成形法により連結部21c、22aに埋め込まれており、固定具31、32の両端部が連結部21c、22aの表面から突出している。固定具31、32の先端には、ネジ挿入穴33がそれぞれ設けられている。ネジ挿入穴33にそれぞれネジ34を挿入して締結し、リアクトル本体1をケース4に固定する。すなわち、ネジ挿入穴33がリアクトル本体1を取付体であるケース4に固定する固定部となる。なお、固定具31、32は、長板状で平行に配置されているため、4つのネジ挿入穴33が囲う範囲は矩形である。
【0040】
(コイル)
コイル5は、絶縁被覆を有する導線である。本実施形態では、コイル5は、平角線のエッジワイズコイルである。但し、コイル5の線材や巻き方は平角線のエッジワイズコイルに限定されず、他の形態であっても良い。
【0041】
コイル5は、左右の一対のコイル51a、51bを有し、これらの一端部がコイル51a、51bと同じ素材でなる連結線51cによって連結されている。コイル51a、51bは、エナメルなどの絶縁被覆した1本の銅線によって構成されている。コイル5は、コイル51a、51bが環状コア1の周囲を巻回するように、樹脂部材2の一対の直線部分の外周に装着されており、コイル51a、51bが互いに平行である。つまり、コイル51a、51bの巻軸方向が互いに平行である。コイル51a、51b間には、隙間が生じている。
【0042】
コイル51a、51bの端部52a、52bは、樹脂体22の連結部22aの上方に引き出されており、外部電源などの外部機器の配線と接続される。連結部22aの上部には、樹脂製の端子台を載置し、端子台に端子を設け、この端子を介してコイル51a、51bと外部機器の配線と電気的に接続しても良い。或いは、端子台を省略して、コイル51a、51bと接続される端子を樹脂体22の上部にモールド成形法により埋込み、この端子を介してコイル51a、51bと外部機器の配線と電気的に接続しても良い。外部電源から電力供給されると、コイル51a、51bに電流が流れてコイル51a、51bを突き抜ける磁束が発生し、環状コア10内に環状の閉じた磁気回路が形成される。
【0043】
(温度センサ)
リアクトルには、温度センサ9が設けられている。温度センサ9は、リアクトル内部の温度を検出する。温度センサ9は、温度検出部9aと、温度検出部9aに接続されたリード線9bとからなり、連結部21cの上部に設けられた樹脂製のコネクタ8に取り付けられている。
【0044】
温度検出部9aは、フック22bにより位置決めされてコイル51a、51bの間に配置され、リアクトル内部の温度を検出する。リード線9bはフック22bに巻回され、端部がコネクタ8に取り付けられており、温度検出部9aが検出した温度情報をリアクトル外部に伝達する。温度センサ9としては、例えば、温度変化に対して電気抵抗が変化するサーミスタを用いることができるが、これに限定されない。
【0045】
(リアクトルケース)
図1及び
図2に示すように、ケース4は、リアクトル本体1を収容する収容部材であり、リアクトル本体1が取り付けられる取付体の一例である。取付体としては、放熱性を有し、リアクトル本体1が取り付けられる対象であれば特に限定されず、例えば壁面のない平板や台であっても良い。ここでは、取付体はケース4として説明する。ケース4は、例えばアルミニウム合金等、熱伝導性が高く軽量な金属で構成されており、放熱性を有する。
【0046】
本実施形態では、ケース4は、上面に開口を備えた略直方体形状であり、主として底面とその底面の縁から立ち上がる側壁とで構成され、底面と側壁とで囲われ、リアクトル本体1を収容するスペースを有する。
【0047】
換言すれば、ケース4は、外側の面である外周面と、リアクトル本体1と面する内側の面である内周面とを有する。ケース4の外周面の形状は、上面に開口を有する略直方体形状であり、ケース4の内周面の形状は、リアクトル本体1の形状に倣った形状である。そのため、側壁及び底面の厚みが、場所によって異なっており、ケース4は、肉厚部を有する。肉厚部は、ケース4の外周面と内周面との距離が他の箇所より大きい部分である。肉厚部の具体例は後述するが、肉厚部を設けているのは、リアクトル本体1の形状に沿わせてリアクトル本体1とケース4との距離を近づけて放熱性を向上させるためである。
【0048】
なお、外周面とは、底面のうちPCUケース側の面と、側壁の外側の面とをいい、内周面とは、リアクトル本体1と対向する面であり、底面のうちリアクトル本体1側である上側の面と、側壁の内側の面とをいう。
【0049】
肉厚部について具体的に説明する。
図4は、コイル51a、51bの巻軸と直交する方向のリアクトルの断面図である。
図2及び
図4に示すように、ケース4のリアクトル本体1を収容する収容部分は、リアクトル本体1の形状に倣った形状を有する。リアクトル本体1のコイル51a、51b間には隙間があるため、ケース4の底面には、この隙間に入り込むように盛り上がった盛り上げ部41が設けられている。盛り上げ部41は、コイル51a、51bの巻軸方向に、ケース4の底面の中央を延びて設けられている。
図4に示すように、盛り上げ部41は、ケース4の底面において他の箇所より厚みが厚くなっている肉厚部である。なお、ここにいう厚みは、リアクトルの高さ方向の長さであり、ケース4の底面のz軸方向の長さである。
【0050】
図5は、
図1のB−B断面を含むケース4を斜視図である。ケース4の四隅は、ケース4の側壁において、側壁の外周面と、リアクトル本体1を囲う内周面との間の距離が他の箇所より大きくなっている肉厚部である。なお、この距離は、y軸方向に延びる側壁であればx軸方向の長さであり、x軸方向に延びる側壁であればy軸方向の長さである。
図5に示すように、この肉厚部となるケース4の四隅において、上下にネジ挿入穴42、43が設けられている。
【0051】
具体的には、この四隅の上縁、すなわち、ケース4の側壁上縁の四隅には、
図2に示すように、リアクトル本体1を固定するためのネジ挿入孔42がそれぞれ設けられている。ケース4に収容されたリアクトル本体1は、固定具31、32のネジ挿入穴33及びケース4のネジ挿入穴42にネジ34を差し込んで締結することにより固定される。
【0052】
一方、ケース4の四隅の下縁、すなわち、ケース4の底面の四隅には、
図5及び
図6に示すように、リアクトルがPCUケース6に固定されるためのネジ挿入孔43がそれぞれ設けられている。ネジ挿入穴43は、PCUケース6の裏面側からネジ61を差し込んでリアクトルをPCUケース6に固定するための固定穴である。このネジ挿入穴43は、
図4に示すように、PCUケース6の裏面側に設けられるウォータージャケット7を跨ぐように互いに離間して設けられている。
【0053】
ネジ挿入穴43の配置は、リアクトル本体1のネジ挿入穴33が囲う範囲上又はその範囲より内側である。ここでは、リアクトル本体1のネジ挿入穴33に対応するネジ挿入穴42がケース4の側壁上縁に設けられているため、ネジ挿入穴43の配置は、ケース4の側壁の外側の面(以下、外壁面とも称する)が囲う範囲内である。ここでは、ケース4が概略直方体形状であるため、略矩形状の範囲内である。換言すれば、ケース4の側壁には、リアクトルをPCUケース6に固定するためのケース4側壁より出っ張る締結部は設けられていない。
【0054】
なお、リアクトル本体1とケース4との隙間に充填材を充填、固化しても良い。充填材には、リアクトルの放熱性能の確保及びリアクトルからケースへの振動伝搬の軽減のため、比較的柔らかく熱伝導性の高い樹脂が適している。
【0055】
[1−2−2.PCUケース]
図1及び
図2を参照し、PCUケース6について説明する。PCUケース6は、PCUの各部品を収容するケースである。PCUとは、ハイブリッド自動車や電気自動車においてモータを駆動させるためにバッテリーの出力を制御する電気部品であり、バッテリーの電圧を昇圧する昇圧コンバータと、直流電圧を交流電圧に変換するインバータ、半導体スイッチング素子などにより構成される。本実施形態のリアクトルもPCUの一部品である。
【0056】
PCUケース6は、アルミニウム等など金属で構成される。PCUケース6は、例えば、上ケースと下ケースとに上下に分割されて構成される。下ケースはPCUの各部品を収容され、各部品が固定される部材である。上ケースは、下ケースと組み合わせてネジ締結により一体化させるためのカバー部材である。なお、
図1及び
図2には、下ケースのみ示し、上ケースは省略している。ここでは、PCUケース6の下ケースには、ケース4の底面に設けられたネジ挿入穴43と同じ間隔でネジ61が挿入されるネジ挿入穴62が4箇所設けられている。
【0057】
PCUケース6の裏面には、冷却構造としてウォータージャケット7が設けられている。PCUケース6の裏面とは、リアクトルが固定される面とは反対側の面である。ウォータージャケット7は、アルミニウムなどの金属からなる筐体又は溝と、この筐体又は溝を流れる冷却媒体とを含み構成される。冷却媒体が筐体又は溝を通路として流れることで、PCUケース6に収容されたリアクトル含む各部品を冷却する。本実施形態のリアクトルは、このウォータージャケット7を跨ぐようにしてPCUケース6に固定される。なお、本実施形態では、PCUケース6とウォータージャケット7とが別体として設けられているが、ウォータージャケット7がPCUケース6の一部として一体となっていても良い。
【0058】
リアクトルが放熱膜を介してPCUケース6に固定されると、リアクトルがウォータージャケット7を跨ぐように、ウォータージャケット7上に配置される。すなわち、ウォータージャケット7上にPCUケース6及び放熱膜が介在してリアクトルが固定される。なお、ウォータージャケット7とPCUケース6との間に放熱膜を介在させても良い。このように、リアクトルからウォータージャケット7までの放熱ルートが形成される。
【0059】
[1−3.作用・効果]
(1)本実施形態のリアクトルは、リアクトル本体1と、リアクトル本体1が取り付けられるケース4と、を備え、ケース4を介して被設置対象物であるPCUケース6に固定されるリアクトルである。リアクトル本体1は、リアクトル本体1をケース4に固定するための複数の第1の固定部となるネジ挿入穴33を有する。そして、ケース4の底面には、複数のネジ挿入穴33が囲う範囲内において、リアクトルがPCUケース6に固定される面とは反対側の面かからリアクトルを固定するための第2の固定部となるネジ挿入穴43を設けるようにした。なお、本実施形態で複数のネジ挿入穴33が囲う範囲内とは、ケース4の外壁面が囲う範囲内である。
【0060】
これにより、PCUケース6にリアクトルを載置し、PCUケース6の裏面側からネジ61で締結固定することができるので、従来技術のようにリアクトルケースの側壁に耳状の締結部を設ける必要がなくなる。その結果、ケース4全体として剛性を高めることができ、リアクトルをPCUケース6に固定する際のケース4の変形を防止することができる。また、ケース4全体として剛性が高まるので、締結強度を強めて固定することができ、耐振動衝撃強度を向上させることができる。さらに、耳状の締結部が必要ない分、省スペース化を図ることができる。
【0061】
(2)本実施形態の取付体は、底面及び側壁を有し、リアクトル本体1を収容するケース4とした。これにより、リアクトル本体1の取付対象である取付体が、例えば平板などの側壁がないものである場合と比べて、取付体としての剛性を向上させることができる。従って、取付体としてのケース4の変形を抑制できるので、放熱膜の膜厚を一定に保つことができ、放熱性を向上させることができる。また、放熱膜の膜厚を一定に保つことができるので、製品バラツキを抑制することができる。
【0062】
さらに、ケース4は、放熱性を有し、放熱膜を介してPCUケース6に固定するようにした。これにより、ケース4及び放熱膜が、リアクトル本体1の発した熱の放熱ルートとなり、リアクトルの放熱性を向上させることができる。
【0063】
(3)金属製のPCUケース6の裏面、すなわちリアクトルが固定される面とは反対側の面には、リアクトルを冷却するウォータージャケット7が設けられており、ケース4は、複数の固定穴となるネジ挿入穴43を有し、ネジ挿入穴43は、ウォータージャケット7を跨ぐように、互いに離間して設けるようにした。
【0064】
これにより、リアクトルをウォータージャケット7上に固定することが可能になる。従って、リアクトルからウォータージャケット7への放熱ルートを確立することができ、放熱性を向上させることができる。
【0065】
以上のように、リアクトルの放熱性を向上させることができる結果、当該リアクトルを車に用いた場合には、車の燃費を向上させることができる。すなわち、リアクトルの温度と電力損失との間には比例関係があり、リアクトルの温度が高いと、より多くの電力が消費される。コイル5を構成する導体の抵抗率が温度と比例関係にあるからである。そのため、リアクトルの放熱性が悪いと燃費が悪くなる。この点、本実施形態では、放熱性を向上させているので、リアクトル温度が上昇しにくくなり、結果として燃費を良くすることができる。
【0066】
(4)ケース4は、肉厚部を有する。ネジ挿入穴43は、リアクトルをPCUケース6に固定するための固定部材であるネジ61が、PCUケース6のリアクトルが固定される面とは反対側の面から差し込まれる固定穴であり、このネジ挿入穴43を肉厚部に設けるようにした。肉厚部はケース4において、リアクトルの形状等による設計上生じる既存の部位であるが、この既存部位の肉厚部にネジ挿入穴43を設けるようにしたので、駄肉部分を有効活用できる。耳状の締結部を設けたりする必要がなく、省スペース化を図ることができる。また、肉厚部は他の箇所に比べて厚い分、強度が高いので、耐振動衝撃強度を保つことができる。
【0067】
具体的には、本実施形態では、ケース4は、開口を有する略直方体形状である。肉厚部は、ケース4の四隅に設けられ、ケース4の四隅の上部には、ネジ挿入穴33を介してリアクトル本体1をケース4に収容された状態で固定し、ケース4の隅の下部には、ネジ挿入穴43を設けるようにした。
【0068】
これにより、省スペース化を図りつつ、ケース4の剛性を向上させることができる。すなわち、従来は、環状形状であるリアクトル本体1の隅に生じるデッドスペースを埋めるように、ケース4の四隅に肉厚部を設け、この四隅の肉厚部を活用してリアクトル本体1をケース4の四隅の上縁で固定していた。そのため、リアクトルをPCUケース6に固定するために、さらにリアクトル上部から固定しようとしても、リアクトル本体1をケース4に固定するためにスペースが奪われてしまい、ケース4の上縁から固定することはできない。
【0069】
そこで、従来は、リアクトルケース壁面から張り出す耳状の締結部をリアクトルケースの下部に設けて上からボルト締結により固定する方法を採用していた。しかし、PCUケース内には様々な電気部品が取り付けられるため、耳状の締結部を設けることでスペースが足りなくなる場合があった。また、耳状の締結部を設けることでケース4の剛性が低下してしまっていた。
【0070】
これに対し、本実施形態は、元々存在していたケース4四隅の肉厚部にその底面側からネジ挿入穴43を設けるようにしたので、耳状の締結部を設けることなく、PCUケース6の裏側からネジ締結によりリアクトルを固定することができる。従って、省スペース化及びケース4の剛性向上を図ることができる。
【0071】
[2.他の実施形態]
本発明は、第1の実施形態に限定されるものではなく、下記に示す他の実施形態も包含する。また、本発明は、第1の実施形態及び下記の他の実施形態を全て又はいずれかを組み合わせた形態も包含する。さらに、これらの実施形態を発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができ、その変形も本発明に含まれる。
【0072】
(1)第1の実施形態では、リアクトルが固定される被設置対象物は、PCUケース6としたが、これに限定されない。例えば、電圧制御ユニット(Voltage Control Unit:VCU)のケースや、ミッションケース、ヒートシンクなどの金属製の放熱部材であれば良い。
【0073】
(2)第1の実施形態では、リアクトル本体1が取り付けられる取付体としてケース4を挙げたが、これに限定されず、壁面のない平板や台であっても良い。
図7は、取付体が壁面のない平板である場合の他の実施形態に係るリアクトルの断面図である。リアクトル本体1を取付体4’に固定する固定部33’は、当該取付体4’に接するよう複数設けられており、ネジ締結などにより取付体4’にリアクトル本体1が固定される。固定部33’は例えば樹脂部材2と一体成形などにより樹脂で形成することができる。
【0074】
取付体4’の底面には、リアクトルをPCUケース6などの被設置対象物に、その設置側とは反対側の裏面側から固定するための固定部43’が設けられている。
図7に示すように、この固定部43’は、固定部33’が囲う範囲上又はその範囲より内側に設けられている。換言すれば、固定部43’は、リアクトル本体1が取付体4’に占める範囲内に設けられている。これにより、リアクトル全体として省スペース化を図ることができる。
【0075】
すなわち、従来のようにリアクトルを被設置対象物に上側から固定しようとすると、固定部33’の外側で取付体4’を被設置対象物に固定せざるを得ず、全体として大型化するが、裏側から固定するために固定部33’が囲う範囲内に固定部43’を設けているので、省スペース化を図ることができる。
【0076】
また、固定部43’は、固定部33’が囲う範囲上又はその範囲より内側に設けたことで、リアクトルを被設置対象物の裏側から固定する際には、固定部43’の上方に常にリアクトル本体1が配置された状態となるので、平板自体の剛性が低くても、リアクトル全体として剛性を高めることができる。
【0077】
すなわち、取付体4’の上方にリアクトル本体1が載置しているため、平板の取付体4’の剛性が低くてもリアクトル本体1により補強されるので、取付体4’の変形を抑制できる。
【0078】
(3)第1の実施形態では、ケース4の底面の四隅にネジ挿入穴43を4箇所設けたが、その数は限定されず、ケース4の底面であれば3箇所でも2箇所でも良い。
【0079】
(4)第1の実施形態では、ケース4の四隅の肉厚部に着目してネジ挿入穴43を設けたたが、これに限定されない。すなわち、他の肉厚部としては、盛り上がり部41がある。盛り上がり部41は、コイル51a、51b間の隙間に入り込むように、ケース4の底面に設けられた肉厚部である。ネジ挿入穴43は、盛り上がり部41に設けても良い。
【0080】
すなわち、コイル51a、51b間はその設計上どうしても隙間が発生する箇所であり、放熱性向上の観点からケース4をリアクトル本体1に近づけるためにケース4底面にコイル51a、51b間に入り込む盛り上がり部41が設けられる。この盛り上がり部41にネジ挿入穴43を設けることで、例えば設計上の制約から他の箇所でネジ挿入穴43が設けられない事情があったとしても、柔軟に対応することができる。すなわち、リアクトルをPCUケース6の裏側から締結固定するバリエーションを増やすことができるので、設計の制約の多いPCUケース6内の固定に対して対応することができる。
【0081】
(5)第1の実施形態や上記(4)の他の実施形態では、ケース4の四隅や底面に肉厚部を設けたが、ケース4に限らず、取付体に肉厚部を設けても良い。例えば、概略四角形状の平板でその中央部分に盛り上げ部41を設けたり、その四隅に肉厚部を設けたりしても良い。
【0082】
(6)第1の実施形態では、リアクトル本体1をケース4に固定する第1の固定部となるネジ挿入穴33を4つとしたが、その数は限定されず、2つであっても3つであっても5つ以上であっても良い。この場合も第1の実施形態と同様に、第2の固定部となるネジ挿入穴43の配置は、ケース4の側壁が囲う範囲内である。第1の固定部となるネジ挿入穴33は、ケース4の側壁上縁に配置する。例えば、ケース4の側壁が囲う範囲が略矩形状であり、ネジ挿入穴33が3つの場合、矩形の3頂点に直角三角形状となるようにネジ挿入穴33を配置しても良いし、二等辺三角形状となるようにネジ挿入穴33を配置しても良い。また、ネジ挿入穴33が2つの場合は、矩形の対角線上の2頂点に配置しても良いし、矩形の隣接する2頂点に配置しても良い。何れの場合であっても、リアクトルがケース4の側壁が囲う範囲内で固定されるため、不必要にスペースを割く必要がないため、省スペース化を図ることができる。
【0083】
(7)第1の実施形態では、ケース4の形状を略直方体形状としたが、これに限定されない。例えば、上面に開口が設けられ、中身が中空の底面が多角形状の多角体であっても良い。
【0084】
(8)第1の実施形態でリアクトルをPCUケース6に固定するための固定部材及び固定穴は、ネジ61及びネジ挿入穴43であるが、これに限定されない。固定部材はピン又はリベットであっても良く、固定穴は、これらの部材の形状を成す穴であれば良い。但し、ネジ61及びネジ挿入穴43で締結固定することにより、ピンやリベットと比べて固定強度が向上するので、耐振動衝撃強度を向上させることができる。
【0085】
(9)第1の実施形態では、ケース4の底面に設けた固定穴をネジ挿入穴43としたが、これに限られない。例えば、PCUケース6にネジ挿入穴62及びネジ61を無くす代わりに突起が設けられ、この突起がケース4の底面に設けた固定穴に嵌め込んでリアクトルをPCUケース6に固定しても良い。
【0086】
(10)第1の実施形態では、環状コア10をコア部材としてU字型コア11、12、I字型コア13により構成したが、コア部材の形状はこれらに限定されない。環状形状を構成できるのであれば、E字型コア、T字型コア、J字型コア、円柱コアなどを用いても良い。
【0087】
(11)第1の実施形態では、環が1つの環状コア10を用いたが、E字型コアのように脚部を3本以上備えたコアを用いて、環が2つのθ形状に形成された環状コア10を用いても良い。
【0088】
(12)第1の実施形態では、リアクトル本体1は、環状コア10に倣って環状形状としたが、必ずしも環状形状としなくても良い。例えば、棒状であっても良い。