特許第6681201号(P6681201)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6681201
(24)【登録日】2020年3月25日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】操舵装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 5/04 20060101AFI20200406BHJP
   F16H 1/32 20060101ALI20200406BHJP
【FI】
   B62D5/04
   F16H1/32 A
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-10736(P2016-10736)
(22)【出願日】2016年1月22日
(65)【公開番号】特開2017-128302(P2017-128302A)
(43)【公開日】2017年7月27日
【審査請求日】2018年12月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100137143
【弁理士】
【氏名又は名称】玉串 幸久
(72)【発明者】
【氏名】高橋 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】中井 悠人
(72)【発明者】
【氏名】中村 江児
【審査官】 瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第1803514(CN,A)
【文献】 特開2010−286098(JP,A)
【文献】 特開2007−196980(JP,A)
【文献】 特開2008−201180(JP,A)
【文献】 特開平10−129510(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 5/00−5/32
F16H 1/28−1/48,48/00−48/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピットマンアームを用いて車両の車輪の向きを変更する操舵装置であって、
前記車輪の前記向きを変更するための操舵力を出力する回転シャフトを有するモータと、
前記車両に固定された外筒と、前記外筒内で、前記操舵力を所定の減速比で増幅し、増幅された操舵力を生成する歯車機構と、前記増幅された操舵力を所定の出力軸周りの回転として出力する出力部と、を含む減速機と、を備え、
前記歯車機構は、
(i)前記回転シャフトに形成されたギア部と噛み合う伝達歯車と、
(ii)前記外筒に形成された内歯環と噛み合う揺動歯車と、
(iii)前記伝達歯車の回転軸を定めるジャーナル部と、前記回転軸から偏心した偏心部と、を有するクランク組立体と、を含み、
前記偏心部は、前記回転軸に対して偏心回転し、前記揺動歯車の中心が前記出力軸周りに周回するように、前記揺動歯車に揺動回転を与え、
前記ジャーナル部は、前記出力部に連結され、
前記外筒に対する前記出力部の回転は、前記揺動歯車の前記揺動回転によって、前記増幅された操舵力として、前記ジャーナル部を通じて、前記出力部に伝達され、
前記出力部は、前記外筒外に配置され、前記ピットマンアームとして前記車両に取り付けられる外部分を含み、
前記外筒は、前記歯車機構及び前記出力部の一部を取り囲む周壁を含み、
前記出力部は、前記外筒の外に現れる外面を含み、
前記外部分は、前記外面から前記出力部の半径方向に突出し、前記外面から分離不能である
操舵装置。
【請求項2】
前記歯車機構は、前記モータと前記外部分との間に位置する
請求項1に記載の操舵装置。
【請求項3】
前記回転シャフトは、前記出力軸と同軸である
請求項1又は2に記載の操舵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピットマンアームを用いて車両の車輪の向きを変更する電動式の操舵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車輪の方向を変更する操舵装置は、様々な車両に搭載されている。特許文献1は、ピットマンアームを備える操舵機構を開示する。特許文献1に開示されるピットマンアームは、遊星歯車を用いてモータから出力された操舵力を増幅する減速機に取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−1564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1によれば、減速機は、240の減速比を有する。しかしながら、太い車輪の向きを変更するには、より高い減速比が必要とされることもある。操舵装置を設計する設計者が、特許文献1の技術に基づき、より高い減速比を達成しようとするならば、減速機は、必然的に大型化する。このことは、車両に搭載される操舵装置に要求される特性(すなわち、軽量且つ小型であること)に相反する。
【0005】
本発明は、高い減速比を達成する小型且つ軽量な減速機を有する操舵装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一局面に係る操舵装置は、ピットマンアームを用いて車両の車輪の向きを変更する。操舵装置は、前記車輪の前記向きを変更するための操舵力を出力する回転シャフトを有するモータと、前記車両に固定された外筒と、前記外筒内で、前記操舵力を所定の減速比で増幅し、増幅された操舵力を生成する歯車機構と、前記増幅された操舵力を所定の出力軸周りの回転として出力する出力部と、を含む減速機と、を備える。前記歯車機構は、(i)前記回転シャフトに形成されたギア部と噛み合う伝達歯車と、(ii)前記外筒に形成された内歯環と噛み合う揺動歯車と、(iii)前記伝達歯車の回転軸を定めるジャーナル部と、前記回転軸から偏心した偏心部と、を有するクランク組立体と、を含む。前記偏心部は、前記回転軸に対して偏心回転し、前記揺動歯車の中心が前記出力軸周りに周回するように、前記揺動歯車に揺動回転を与える。前記ジャーナル部は、前記出力部に連結される。前記外筒に対する前記出力部の回転は、前記揺動歯車の前記揺動回転によって、前記増幅された操舵力として、前記ジャーナル部を通じて、前記出力部に伝達される。前記出力部は、前記外筒外に配置され、前記ピットマンアームとして前記車両に取り付けられる外部分を含む。前記外筒は、前記歯車機構及び前記出力部の一部を取り囲む周壁を含む。前記出力部は、前記外筒の外に現れる外面を含む。前記外部分は、前記外面から前記出力部の半径方向に突出し、前記外面から分離不能である。
【0007】
上記構成によれば、伝達歯車と回転シャフトに形成されたギア部との間の噛み合いによって、モータから出力された操舵力は、増幅される。操舵力は、揺動歯車と外筒に形成された内歯環との間の噛み合いによって更に増幅される。したがって、高い減速比が達成される。揺動歯車の中心が出力軸周りに周回するように、外筒に形成された内歯環に噛み合う揺動歯車は、揺動回転するので、揺動歯車と外筒の内歯環との間の噛み合いは、過度に広い空間を要することなく、非常に高い減速比をもたらすことができる。したがって、出力部は、小さな寸法を有し、且つ、高い減速比の下で増幅された操舵力を出力することができる。
【0008】
歯車機構は、車両に固定された外筒内で、操舵力を、上述の如く増幅する。操舵装置の可動部位の多くは、外筒内に収容されるので、減速機の運動は、操舵装置の周囲に配置された車両設備にほとんど影響を与えない。加えて、外来の異物が可動部位に引き起こす不具合のリスクも非常に小さくなる。
【0009】
外部分は、操舵装置の可動部位として、外筒の外に現れる。外部分は、ピットマンアームとして、車両に取り付けられるので、上述の操舵装置は、車輪の操舵に必要な運動を選択的に外筒の外に出力することができる。さらに、外部分は、外筒の外に現れる外面から出力部の半径方向に突出するので、出力軸に沿って突出する出力シャフトは、必要とされない。したがって、操舵装置は、出力軸の延出方向において、小さな寸法を有することができる。さらに、外部分は、外筒の外に現れる外面から分離不能であるので、減速機は、頑健な構造を有することができる。
【0010】
上記構成に関して、前記出力部は、前記外筒内で前記クランク組立体を保持する基板部と、前記基板部から前記出力軸に沿って突出する出力シャフトと、を含んでもよい。前記外部分は、前記出力シャフトにスプライン結合又はキー結合され、前記出力軸に交差する方向に延びるアーム部材を含んでもよい。
【0011】
上記構成によれば、基板部は、外筒内でクランク組立体を保持するので、基板部及び基板部から突出する出力シャフトの一部は、外筒内に収容される。出力シャフトの他の部分及びアーム部材は、外筒の外に現れる。出力シャフトの一部及びアーム部材を除いて、減速機の可動部位の大部分は、外筒内に収容されるので、減速機の運動は、操舵装置の周囲に配置された車両設備にほとんど影響を与えない。加えて、外来の異物が可動部位に引き起こす不具合のリスクも非常に小さくなる。アーム部材は、出力シャフトにスプライン結合又はキー結合されるので、出力部から出力された操舵力は、アーム部材に適切に伝達される。アーム部材は、出力軸に交差する方向に延びるので、ピットマンアームとして機能することができる。
【0012】
上記構成に関して、操舵装置は、前記外筒内への異物の侵入を妨げるシールリングを更に備えてもよい。前記基板部は、前記出力シャフトが接続される接続面を含んでもよい。前記出力シャフトは、前記接続面よりも小さな断面を有してもよい。前記外筒は、前記出力シャフトの貫通を許容する貫通穴が形成された端壁を含んでもよい。前記シールリングは、前記出力シャフトと前記端壁との間に形成された環状の空隙を塞いでもよい。
【0013】
上記構成によれば、出力シャフトは、基板部の接続面よりも小さな断面を有するので、出力シャフトと外筒の端壁との間に形成された環状の空隙を塞ぐシールリングは、出力シャフトの回転に過度に大きな抵抗を生じさせない。したがって、操舵装置は、増幅された操舵力を、ピットマンアームとして機能する外部分に効率的に出力することができる。
【0018】
上記構成に関して、前記歯車機構は、前記モータと前記外部分との間に位置してもよい。
【0019】
上記構成によれば、歯車機構は、モータと外部分との間に位置するので、モータの回転シャフトは、短くてもよい。したがって、操舵力は、モータから歯車機構へ、効率的且つ信頼性高く伝達される。
【0020】
上記構成に関して、前記回転シャフトは、前記出力軸と同軸であってもよい。
【0021】
上記構成によれば、回転シャフトは、出力軸と同軸であるので、操舵装置は、出力軸と直交する方向において、小さな寸法を有することができる。
【発明の効果】
【0022】
上述の操舵装置は、高い減速比を達成する小型且つ軽量な減速機を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1実施形態の操舵装置の概念的な断面図である。
図2図1に示されるA−A線に沿う概略的な断面図である。
図3】第2実施形態の操舵装置の概念的な断面図である。
図4】第3実施形態の操舵装置の概念的なブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<第1実施形態>
減速機の大きな減速比は、操舵力に対する大きな増幅率に帰結する。その一方で、減速比の増大は、減速機の大きさ及び重量の増大を招来しやすい。減速機の大きさ及び重量の増大は、車両に搭載される車両設備として一般的に求められる特性に相反する。本発明者等は、高い減速比を達成する小型且つ軽量な減速機を有する操舵装置を開発した。第1実施形態において、例示的な操舵装置が説明される。
【0025】
図1は、第1実施形態の操舵装置100の概念的な断面図である。図1を参照して、操舵装置100が説明される。
【0026】
操舵装置100は、モータ200と、減速機300と、を備える。モータ200は、筐体210と、回転シャフト220と、を含む。筐体210は、コイル(図示せず)やステータコア(図示せず)を内蔵し、駆動信号に応じて操舵力を生成する。回転シャフト220は、筐体210から減速機300内に突出する。筐体210内で生成された操舵力は、回転シャフト220の回転として出力される。操舵力は、減速機300によって増幅され、車両(図示せず)の車輪(図示せず)の向きの変更に利用される。
【0027】
図1は、仮想的な第1軸FAXを示す。第1軸FAXは、減速機300の出力軸を意味する。回転シャフト220は、第1軸FAXに沿って延びる。回転シャフト220は、第1軸FAX周りに回転する。回転シャフト220には、ギア部221が形成される。ギア部221は、減速機300に連結される。この結果、操舵力は、モータ200から減速機300へ伝達される。
【0028】
減速機300は、外筒400と、歯車機構500と、出力部600と、を含む。外筒400は、モータ200とともに車両に固定される。外筒400は、歯車機構500が収容される内部空間を形成する。出力部600の一部も、外筒400によって囲まれた内部空間に配置される。歯車機構500は、外筒400と協働して、モータ200が生成した操舵力を、所定の減速比で増幅する。出力部600は、歯車機構500に連結され、増幅された操舵力を、第1軸FAX周りの回転として出力する。増幅された操舵力は、最終的に、車両の車輪へ伝達される。この結果、車輪の向きは、変更される。本実施形態において、所定の出力軸は、第1軸FAXによって例示される。
【0029】
外筒400は、第1筒壁410と、第2筒壁420と、第3筒壁430と、を含む。第2筒壁420は、第1筒壁410と第3筒壁430との間に配置される。第1筒壁410、第2筒壁420及び第3筒壁430は、協働して、上述の内部空間を形成する。
【0030】
第1筒壁410は、略円板状の端壁411と、略円筒状の周壁412と、を含む。モータ200の筐体210は、回転シャフト220が突出する端面211を含む。端壁411は、端面211に密接される。端壁411には、第1軸FAXを中心とする貫通穴413が形成される。モータ200の回転シャフト220は、貫通穴413を通じて、外筒400内に突出する。
【0031】
操舵装置100は、シールリング701を備える。シールリング701は、回転シャフト220と端壁411との間に形成された環状の空間に嵌め込まれる。この結果、モータ200の端面211と第1筒壁410の端壁411との間の境界を通じた外筒400の内部空間への異物の侵入は生じにくくなる。
【0032】
周壁412は、端壁411の周縁から第2筒壁420に向けて突出する。周壁412は、第2筒壁420の端縁面に当接される。周壁412は、モータ200の回転シャフト220を取り囲む。
【0033】
第2筒壁420は、第1筒壁410と第3筒壁430とに隣接する略円筒状の部材である。第2筒壁420は、内壁面421を含む。内壁面421には、歯車機構500と噛み合う内歯環(後述される)が形成される。内壁面421の円周長は、長いので、操舵装置100を設計する設計者は、内歯環として、環状に配列された多数の内歯を形成することができる。したがって、減速機300は、高い減速比の下で、操舵力を増幅することができる。
【0034】
第3筒壁430は、略円筒状の周壁431と、略円板状の端壁432と、を含む。周壁431は、第1筒壁410の周壁412及び第2筒壁420に連なる。第1筒壁410の周壁412、第2筒壁420及び第3筒壁430の周壁431は、第1軸FAXを中心とする略円柱状の空間を形成する。端壁432は、第1軸FAXと略直交する。出力部600の一部は、端壁432を貫通し、外筒400の外に現れる。
【0035】
図2は、図1に示されるA−A線に沿う概略的な断面図である。図1及び図2を参照して、減速機300が説明される。
【0036】
歯車機構500は、3つの伝達ギア510(図1は、3つの伝達ギア510のうち1つを示す)と、3つのクランク組立体520(図1は、3つのクランク組立体520のうち1つを示す)と、歯車部530と、を含む。図1は、第1軸FAXに加えて、第2軸SAXを示す。第2軸SAXは、第1軸FAXから離間した位置において、第1軸FAXに平行に延びる。
【0037】
3つの伝達ギア510は、第1軸FAX周りに略等間隔に配置される。3つの伝達ギア510それぞれは、第2軸SAX周りに回転する。3つの伝達ギア510それぞれは、モータ200のギア部221と噛み合う。3つの伝達ギア510それぞれは、ギア部221よりも多いギア歯を有する。ギア部221と3つの伝達ギア510それぞれとの噛み合いの結果、操舵力は増幅される。
【0038】
3つのクランク組立体520それぞれは、クランク軸521と、2つのテーパベアリング522,523と、2つのニードルベアリング524,525と、を含む。クランク軸521は、2つのジャーナル526,527と、2つの偏心部528,529と、を含む。偏心部528は、ジャーナル526,527の間に位置する。偏心部529は、偏心部528とジャーナル527との間に位置する。ジャーナル526,527は、第2軸SAX周りに回転する。偏心部528,529は、第2軸SAXから偏心する。偏心部528は、偏心方向において、偏心部529と相違する。本実施形態において、回転軸は、第2軸SAXによって例示される。
【0039】
伝達ギア510及びテーパベアリング522は、ジャーナル526に取り付けられる。テーパベアリング523は、ジャーナル527に取り付けられる。ニードルベアリング524は、偏心部528に取り付けられる。ニードルベアリング525は、偏心部529に取り付けられる。設計者は、他の種類のベアリングを用いて、クランク組立体を形成してもよい。本実施形態の原理は、クランク組立体に組み込まれる特定の種類のベアリングに限定されない。本実施形態において、ジャーナル部は、ジャーナル526,527及びテーパベアリング522,523によって例示される。
【0040】
歯車部530は、2つの揺動歯車531,532を含む。揺動歯車531には、3つの円形貫通穴が形成される。3つのクランク組立体520の偏心部528及びニードルベアリング524は、3つの円形貫通穴にそれぞれ嵌め込まれる。揺動歯車531と同様に、揺動歯車532には、3つの円形貫通穴が形成される(図2を参照)。3つのクランク組立体520の偏心部529及びニードルベアリング525は、3つの円形貫通穴にそれぞれ嵌め込まれる。
【0041】
クランク軸521が回転すると、偏心部528,529は、揺動歯車531,532に揺動回転をそれぞれ与える。揺動回転の間、揺動歯車531,532の中心は、第1軸FAX周りに周回する。偏心部528,529の間の偏心方向における相違は、揺動歯車531,532の中心の周回移動の位相差に帰結する。
【0042】
揺動歯車531,532それぞれは、トロコイド歯車であってもよいし、サイクロイド歯車であってもよい。代替的に、揺動歯車531,532それぞれは、他の種類の歯車であってもよい。本実施形態の原理は、揺動歯車531,532として用いられる歯車の特定の種類に限定されない。
【0043】
揺動歯車531,532は、共通の図面に基づいて形成されてもよい。この場合、揺動歯車531,532は、形状及び大きさにおいて略一致する。
【0044】
設計者は、1つの揺動歯車を減速機に組み込んでもよい。代替的に、設計者は、2を超える数の揺動歯車を減速機に組み込んでもよい。本実施形態の原理は、いくつの揺動歯車が減速機に組み込まれるかによっては、何ら限定されない。
【0045】
図1に示されるA−A線は、第2筒壁420を横切る。図2に示される如く、第2筒壁420は、円筒壁422と複数の内歯ピン423とを含む。図1に示される如く、円筒壁422は、第1筒壁410の周壁412と第3筒壁430の周壁431とに連結される。図2に示される如く、円筒壁422は、複数の溝が形成された内周面424を含む。図2に示される如く、複数の溝は、第1軸FAX周りに略等間隔に形成される。複数の溝は、第1軸FAXと略平行に延びる。複数の溝それぞれは、略半円形の断面を有する。複数の内歯ピン423は、複数の溝にそれぞれ嵌め込まれる。複数の内歯ピン423それぞれは、略円形の断面を有する。複数の内歯ピン423それぞれの略半面は、円筒壁422の内周面424から第1軸FAXに向けて突出する。この結果、上述の内歯環が形成される。円筒壁422の内周面424及び複数の内歯ピン423は、図1を参照して説明された内壁面421を形成する。
【0046】
上述の揺動回転の間、揺動歯車531は、複数の内歯ピン423のうち略半数と噛み合う。このとき、揺動歯車532は、残りの内歯ピン423に噛み合う。この結果、モータ200のギア部221と伝達ギア510との間の噛み合いによって増幅された操舵力は、複数の内歯ピン423と揺動歯車531,532との間の噛み合いによって更に増幅される。
【0047】
円筒壁422の内周面424の円周長は、長いので、設計者は、非常に多くの溝を内周面424に形成することができる。この結果、設計者は、非常に多くの内歯ピン423を円筒壁422に取り付けることができる。したがって、設計者は、複数の内歯ピン423と揺動歯車531,532との間の噛み合いによって得られる減速比を、非常に大きな値に設定することができる。
【0048】
図1に示される如く、出力部600は、キャリア610と、2つの主ベアリング621,622と、アーム650と、を含む。キャリア610は、略円板状の端板部630と、端板部630に固定される基部640と、を含む。端板部630は、伝達ギア510と歯車部530との間に位置する。端板部630には、3つの円形貫通穴631(図1は、3つの円形貫通穴631のうち1つを示す)が形成される。3つのクランク組立体520のジャーナル526及びテーパベアリング522は、3つの円形貫通穴631にそれぞれ嵌め込まれる。
【0049】
基部640は、略円板状の基板部641と、3つの連結シャフト642(図2を参照)と、出力シャフト643と、を含む。歯車部530は、基板部641と端板部630との間に位置する。基板部641は、第1面644と、第2面645と、を含む。第1面644は、歯車部530に対向する。第2面645は、第1面644とは反対側に位置する。
【0050】
基板部641には、第1面644から第2面645に向けて凹設された略円形の凹部646が形成される。ジャーナル527及びテーパベアリング523は、基板部641の凹部646に嵌め込まれる。この結果、歯車機構500によって増幅された操舵力は、キャリア610に伝達される。増幅された操舵力がキャリア610へ伝達されると、キャリア610は、第1軸FAX周りに回転する。
【0051】
図1に示される如く、連結シャフト642は、第1面644から端板部630に向けて延びる。連結シャフト642の先端面は、端板部630に当接される、連結シャフト642は、リーマボルト及びピンによって、端板部630に連結される。
【0052】
図2に示される如く、揺動歯車532には、3つの台形貫通穴が形成される。同様に、揺動歯車531にも3つの台形貫通穴が形成される。3つの連結シャフト642は、これらの台形貫通穴にそれぞれ挿通される。これらの台形貫通穴の大きさは、揺動歯車531,532と3つの連結シャフト642との間の干渉が生じないように定められる。
【0053】
図1に示される如く、出力シャフト643は、基板部641の第2面645から第1軸FAXに沿って延びる。出力シャフト643は、連結シャフト642とは反対方向に延びる。第3筒壁430の端壁432には、第1軸FAXを中心とした貫通穴433が形成される。出力シャフト643は、貫通穴433を貫通するので、出力シャフト643の先端部は、外筒400の外に現れる。
【0054】
アーム650は、外筒400の外側で、出力シャフト643に取り付けられる。アーム650は、第1軸FAXに略直交する方向に延びる。アーム650は、車両に搭載されたタイロッドアーム(図示せず)に連結される。したがって、キャリア610が第1軸FAX周りに回転すると、アーム650は、第1軸FAX周りに揺振し、車輪に連結されたタイロッドアームを駆動することができる。すなわち、アーム650は、ピットマンアームとして機能することができる。
【0055】
アーム650は、市販のピットマンアームと同様の構造を有してもよい。したがって、本実施形態の原理は、アーム650の特定の構造に限定されない。本実施形態において、外部分は、アーム650によって例示される。
【0056】
スプライン加工が、出力シャフト643に施与されてもよい。この場合、アーム650には、スプライン穴が形成される。出力シャフト643は、アーム650のスプライン穴に嵌入される(スプライン結合)。本実施形態において、アーム部材は、アーム650によって例示される。
【0057】
スプライン結合に代えて、他の接続技術が、出力シャフト643とアーム650との間の接続に利用されてもよい。たとえば、キーが、出力シャフト643とアーム650との間の接続に利用されてもよい。本実施形態の原理は、出力シャフト643とアーム650との間の接続に利用される特定の接続構造に限定されない。
【0058】
主ベアリング621は、第2筒壁420の内壁面421と端板部630の外周面との間に形成された環状の空間に嵌め込まれる。主ベアリング622は、第2筒壁420の内壁面421と基板部641の外周面との間に形成された環状の空間に嵌め込まれる。第1軸FAXは、主ベアリング621,622によって定められる。歯車部530は、主ベアリング621,622の間に位置する。したがって、歯車部530の揺動回転に起因する偏心的な振動は、出力シャフト643に伝達されにくくなる。
【0059】
操舵装置100は、シールリング702を備える。シールリング702は、出力シャフト643と第3筒壁430の端壁432との間に形成された環状の空間に嵌め込まれる。この結果、外筒400の内部空間への異物の侵入は生じにくくなる。
【0060】
図1に示される如く、出力シャフト643は、基板部641の第2面645よりも非常に小さい断面を有する。したがって、シールリング702と出力シャフト643との接触長は短くなる。このことは、シールリング702が、出力シャフト643の回転に大きな抵抗を与えないことを意味する。本実施形態において、接続面は、基板部641の第2面645によって例示される。
【0061】
歯車機構500は、モータ200とアーム650との間に位置する。したがって、モータ200の回転シャフト220は、短くてもよい。この結果、操舵力は、モータ200から歯車機構500へ効率的且つ安定的に伝達される。
【0062】
<第2実施形態>
減速機の基板部から半径方向に延出する部位が、ピットマンアームとして利用されてもよい。この場合、第1実施形態に関連して説明された出力シャフトは必要とされないので、操舵装置は、第1軸の延出方向において、短い寸法を有することができる。第2実施形態において、他のもう1つの例示的な操舵装置が説明される。
【0063】
図3は、第2実施形態の操舵装置100Aの概念的な断面図である。図1及び図3を参照して、操舵装置100Aが説明される。第1実施形態の説明は、第1実施形態と同一の符号が付された要素に援用される。
【0064】
第1実施形態と同様に、操舵装置100Aは、モータ200と、シールリング701と、を備える。第1実施形態の説明は、これらの要素に援用される。
【0065】
操舵装置100Aは、減速機300Aと、シールリング702Aと、を備える。第1実施形態と同様に、減速機300Aは、歯車機構500を備える。第1実施形態の説明は、歯車機構500に援用される。
【0066】
減速機300Aは、外筒400Aと、出力部600Aと、を含む。外筒400Aは、モータ200とともに車両に固定される。外筒400Aは、出力部600Aと協働して、歯車機構500が収容される内部空間を形成する。出力部600Aの一部は、外筒400Aによって囲まれた内部空間に配置される。
【0067】
第1実施形態と同様に、外筒400Aは、第1筒壁410と、第2筒壁420と、を含む。第1実施形態と同様に、第1筒壁410の周壁412及び第2筒壁420は、協働して、歯車機構500を取り囲む。第1実施形態の説明は、第1筒壁410及び第2筒壁420に援用される。
【0068】
第1実施形態とは異なり、外筒400Aは、図1を参照して説明された第3筒壁430を有さない。第2筒壁420は、略円形の輪郭帯を描く端縁面426を含む。第1実施形態において、端縁面426は、第3筒壁430に連結される。本実施形態において、端縁面426は、出力部600Aの部分的な挿入を許容する略円形の開口領域を形成する。
【0069】
第1実施形態と同様に、出力部600Aは、主ベアリング621,622を含む。第1実施形態の説明は、主ベアリング621,622に援用される。
【0070】
出力部600Aは、キャリア610Aを更に含む。第1実施形態と同様に、キャリア610Aは、端板部630を含む。第1実施形態の説明は、端板部630に援用される。
【0071】
キャリア610Aは、基部640Aと、アーム部647と、を更に含む。第1実施形態と同様に、基部640Aは、3つの連結シャフト642(図3は、3つの連結シャフト642のうち1つを示す)を含む。第1実施形態の説明は、3つの連結シャフト642に援用される。
【0072】
基部640Aは、基板部641Aを更に含む。第1実施形態と同様に、基板部641Aは、第1面644を含む。第1実施形態と同様に、基板部641Aには、凹部646が形成される。第1実施形態の説明は、第1面644及び凹部646に援用される。
【0073】
基板部641Aは、第2面645Aと、周面648と、を含む。第1実施形態と同様に、第2面645Aは、第1面644とは反対側に位置する。第1実施形態とは異なり、第2面645Aは、外筒400Aから全体的に露出する。周面648は、第1面644と第2面645Aとの間で略円形の輪郭を描く。周面648の一部は、外筒400A内に挿入される。周面648の残りの部分は、外筒400Aから露出する。本実施形態において、外面は、第2面645A及び周面648の露出部位によって例示される。
【0074】
シールリング702Aは、第2筒壁420と基板部641Aの周面648との間に形成された環状の空隙に嵌め込まれる。この結果、外筒400Aの内部空間への異物の侵入は生じにくくなる。
【0075】
アーム部647は、基端部651と先端部652とを含む。基端部651は、基板部641Aの第2面645A及び/又は周面648の露出部位と一体的に接続される。したがって、アーム部647は、基板部641Aから分離不能である。設計者は、アーム部647に加わる最大負荷を考慮して、基端部651と基板部641Aの接続部位の大きさ及び形状を決定することができる。したがって、本実施形態の原理は、基端部651の特定の形状及び大きさに限定されない。
【0076】
先端部652は、基端部651から基板部641Aの半径方向に延びる。この結果、先端部652は、基板部641Aの周面648から突出する。先端部652は、車両に搭載されたタイロッドアーム(図示せず)に連結される。したがって、キャリア610Aが第1軸FAX周りに回転すると、先端部652は、第1軸FAX周りに揺振し、車輪に連結されたタイロッドアームを駆動することができる。すなわち、アーム部647は、ピットマンアームとして機能することができる。本実施形態において、外部分は、アーム部647によって例示される。
【0077】
<第3実施形態>
上述の実施形態の操舵装置は、様々な制御の下で、動作し、車輪の向きを変更することができる。第3実施形態において、操舵装置の例示的な制御技術が説明される。
【0078】
図4は、第3実施形態の操舵装置100Bの概念的なブロック図である。図1図3及び図4を参照して、操舵装置100Bが説明される。
【0079】
操舵装置100Bは、モータ200Bと、減速機300Bと、を備える。モータ200Bは、上述の実施形態に関連して説明されたモータ200に対応する。減速機300Bは、上述の実施形態に関連して説明された減速機300,300Aに対応する。
【0080】
図4は、ステアリングホイールSTWと、ステアリングシャフトSTSと、制御装置CTRと、を示す。ステアリングシャフトSTSは、ステアリングホイールSTWから延びる。ステアリングシャフトSTSは、操舵装置100Bに機械的に連結されてもよい。この場合、制御装置CTRは、ステアリングホイールSTWの回転に起因してステアリングシャフトSTSに生じたトルクを参照して、操舵装置100Bを制御してもよい。代替的に、ステアリングシャフトSTSは、操舵装置100Bとは、機械的に連結されなくてもよい。この場合、制御装置CTRは、ステアリングホイールSTW及び/又はステアリングシャフトSTSの回転角を参照して、操舵装置100Bを制御してもよい。
【0081】
制御装置CTRは、動作センサMTSと、信号生成部SGTと、を含む。動作センサMTSは、ステアリングシャフトSTSに生じたトルクを検出してもよい。代替的に、動作センサMTSは、ステアリングホイールSTW及び/又はステアリングシャフトSTSの回転角を検出してもよい。動作センサMTSは、トルク又は回転角を表す動作データを生成する。動作データは、動作センサMTSから信号生成部SGTへ出力される。信号生成部SGTは、動作データに応じて、駆動信号を生成する。駆動信号は、信号生成部SGTからモータ200Bへ出力される。モータ200Bは、駆動信号に応じて、操舵力を生成することができる。
【0082】
上述の様々な実施形態に関連して説明された設計原理は、様々な操舵装置に適用可能である。上述の様々な実施形態のうち1つに関連して説明された様々な特徴のうち一部が、他のもう1つの実施形態に関連して説明された操舵装置に適用されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0083】
上述の実施形態の原理は、様々な車両の設計に好適に利用される。
【符号の説明】
【0084】
100,100A,100B・・・・・・・・・・・・・・・操舵装置
200,200B・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・モータ
220・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・回転シャフト
221・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ギア部
300,300A,300B・・・・・・・・・・・・・・・減速機
400,400A・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・外筒
412・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・周壁
420・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・第2筒壁
426・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・端縁面
423・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・内歯ピン
432・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・端壁
433・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・貫通穴
500・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・歯車機構
510・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・伝達ギア
520・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・クランク組立体
523・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・テーパベアリング
526,527・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ジャーナル
528,529・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・偏心部
531,532・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・揺動歯車
600,600A・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・出力部
641,641A・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・基板部
643・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・出力シャフト
645,645A・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・第2面
647・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・アーム部
648・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・周面
650・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・アーム
702・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・シールリング
FAX・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・第1軸
SAX・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・第2軸
図1
図2
図3
図4