特許第6681212号(P6681212)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6681212
(24)【登録日】2020年3月25日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】ポリウレタンチューブ
(51)【国際特許分類】
   F16L 11/04 20060101AFI20200406BHJP
   C08G 18/00 20060101ALI20200406BHJP
【FI】
   F16L11/04
   C08G18/00 Z
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-23041(P2016-23041)
(22)【出願日】2016年2月9日
(65)【公開番号】特開2017-116085(P2017-116085A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2019年2月4日
(31)【優先権主張番号】特願2015-233952(P2015-233952)
(32)【優先日】2015年11月30日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2015-250785(P2015-250785)
(32)【優先日】2015年12月23日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000145530
【氏名又は名称】株式会社潤工社
(72)【発明者】
【氏名】依田 啓治
(72)【発明者】
【氏名】小田 浩二
【審査官】 藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−56056(JP,A)
【文献】 特開平5−261787(JP,A)
【文献】 特表2000−501756(JP,A)
【文献】 特開平11−239613(JP,A)
【文献】 特開2006−57672(JP,A)
【文献】 特開2000−51344(JP,A)
【文献】 特開平3−177413(JP,A)
【文献】 特開2014−158411(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/057370(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 11/04
B29C 47/20
C08G 18/00
C08J 5/00
B29K 75/00
B29L 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲げ反発力が0.035N/mm2以下のポリウレタンチューブであって、30℃における貯蔵弾性率E’30と80℃における貯蔵弾性率E’80の差が、E’30の15%以下であることを特徴とするポリウレタンチューブ。
【請求項2】
表面粗さRaが 0.8μm以上であることを特徴とする請求項1に記載のポリウレタンチューブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔軟で耐クリープ性に優れたポリウレタンチューブに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンチューブは、柔軟性に優れ、施工性が良く、他のゴム材料のチューブに比べて機械特性に優れていることから、空圧用チューブなど各種の用途に広く用いられている。また、特に、その柔軟性により、例えば半導体製造装置のステージ上を移動するケーブルベア内への配管など、可動部への配管や狭い場所での配管に利用されることも多い。かかるチューブを構成する材料であるポリウレタンは、一般にポリオール成分より成るソフトセグメントと、低分子グリコール及びジイソシアネート成分より成るハードセグメントから構成される。
【0003】
ここで、ポリウレタンの柔軟性は、ソフトセグメントの影響を大きく受けるため、柔軟性を高めようとすると、通常、分子内のソフトセグメントの割合が多くなり、ハードセグメントの割合は少なくなる。ポリウレタンチューブの機械的強度は、ハードセグメントの影響を大きく受けるものであり、機械的強度すなわち耐クリープ性を高めようとすると、分子内のハードセグメントの割合が高くなる傾向がある。そのため、柔軟性を維持しながら耐クリープ性を強化させることは両立し難い。
【0004】
ポリウレタンチューブの特性を向上させる技術の従来例として、例えば、特許文献1には、熱可塑性ポリウレタンチューブを流動開始温度Tm以下でガラス転移点Tg以上の温度T1に加熱し、ついで温度T2(但し、Tm>T1>T2>Tg)に温度降下させて、該温度T2で加熱した後、冷却して相分離構造を有する熱可塑性ポリウレタンチューブを製造する方法であって、複数の赤外線ヒータをポリウレタンチューブの周方向に配設してポリウレタンチューブを加熱する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−56056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の従来例では、チューブ全体に均一な構造制御が可能となり、耐熱性も改善されるが、柔軟性と耐クリープ性の向上を両立させる点では不十分である。一般に、材料に負荷が長時間継続的にかかる場合、変形も時間とともに増加する現象を、いわゆるクリープ現象と言う。チューブの場合、内部圧力が長時間継続的にかかるとチューブ径が拡大する現象がまず認められ、その後破壊に至る。従って、配管などに用いるチューブにとってこのクリープ現象は重要な問題であり、耐クリープ性の向上は是非とも求められる。このように、従来のポリウレタンチューブでは、柔軟性は得られても耐クリープ性は却って劣化するものが殆どであった。即ち、曲げ反発力が小さく、優れた内圧クリープ特性を有するポリウレタンチューブの実現に関しては、有効な提案は殆どなされていないのが実情である。
【0007】
本発明は、上記のような課題に鑑みなされたものであり、その目的は、曲げ反発力が小さい柔軟ポリウレタンチューブにおいて、柔軟性を維持しながら、優れた内圧クリープ特性を有するポリウレタンチューブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、ポリウレタンチューブにおいて、柔軟性と耐クリープ性の向上を両立させるために必要な構成について鋭意研究を重ねた結果、曲げ半径100mmにおける曲げ反発力が0.035N/mm2以下のポリウレタンチューブであって、30℃における貯蔵弾性率E’30と、80℃における貯蔵弾性率E’80の差が、E’30の15%以下である構成にすることで、曲げ反発力が小さく、優れた内圧クリープ特性を有するポリウレタンチューブを実現可能であることを見出した。
【0009】
即ち、上記の目的を達成するため、本発明のポリウレタンチューブは、曲げ反発力が0.035N/mm2以下であって、30℃における貯蔵弾性率E’30と、80℃における貯蔵弾性率E’80の差が、E’30の15%以下であることを特徴とする。本願において、曲げ反発力が0.035N/mm2以下であるとは、後述する曲げ反発力の測定方法に従って測定した反発力(N)を、チューブ断面積(mm)で除した値が0.035以下であることをいう。また、ここで「貯蔵弾性率の差」とは、後述する貯蔵弾性率の測定方法に基づいて測定した、30℃における貯蔵弾性率E’30と、80℃における貯蔵弾性率E’80との差の絶対値が、30℃における貯蔵弾性率E’30の15%以下であることを示している。クリープ現象は高温側において発生しやすく、通常のウレタンの最高使用温度が80℃付近であるので、クリープ現象が発生しやすい使用条件下となる30℃から80℃における貯蔵弾性率を求めるようにした。
【0010】
まず、本発明のポリウレタンチューブは、曲げ反発力が0.035N/mm2以下である。ウレタン樹脂の成形体の柔軟さは、主にソフトセグメント部分の動きやすさによる。分子鎖が長く、動きやすい構造のソフトセグメントを持つと、変形し易い(柔軟な)ウレタン樹脂となる。一般に、変形し易いウレタン樹脂は、伸び率が大きく、引っ張り応力が小さく、曲げのひずみに対して追従し易い成形体となる。柔軟性を優先すると、通常、分子内のソフトセグメントの割合が多くなり、ハードセグメントの割合は少なくなる。これは耐クリープ性を高くする場合とは逆の傾向となり、柔軟性の向上と耐クリープ性の強化は両立し難い。
また、曲げ反発力に近い特性として硬度があるが、硬度が低いことと曲げ反発力が小さいことは、必ずしも一致しない。
【0011】
次に、30℃における貯蔵弾性率E’30と80℃における貯蔵弾性率E’80の差が、E’30の15%以下である。通常、押出成形によりチューブは押出方向(MD方向)に配向する。チューブは、配向が揃うと配向方向に変形し易い傾向がある。チューブ成形時の配向を無くすことで、チューブの変形、即ち、クリープを抑制することができる。更に、アニールすることにより、分子(ハードセグメント)の再配列が起こって成形時の配向の状態を維持しつつ安定化し、また、分子の架橋が促進される。分子の架橋は、MFRの増加により確認することができる。分子の架橋による網目構造を構成することで、ハードセグメントの変形を抑える力、即ち、弾性率が維持され易くなる。これらの効果により、30℃おける貯蔵弾性率E’30と80℃における貯蔵弾性率E’80の差は小さくなる。
【0012】
上記本発明の構成に加えて、表面粗さが 0.8μm以上であるようにしても良い。表面粗さが 0.8μm以上であるように構成することで、表面の摩擦係数が小さくなる(すべり性が向上する)。更に、本発明のポリウレタンチューブは、柔軟なので、押圧に対してチューブが変形してチューブに作用する応力が低減されることで、摩耗量が小さくなる。柔軟で摩耗しにくいため、狭い場所での配管や、例えば、ケーブルベア内などの可動部への配管に適している。即ち、例えばケーブルベア内などの可動部へ配管してもベア内壁やベア内の他のケーブルとこすれ合うことによる摩耗粉の発生が抑えられ、高寿命でチューブ交換などの手間も削減できる。
【0013】
尚、本発明のチューブを構成する材料であるポリウレタンは、ポリオール成分より成るソフトセグメントと、低分子グリコール及びジイソシアネート成分より成るハードセグメントから構成される。一般的にウレタンは、その配合からエーテル系、エステル系に分けられるが、本発明のチューブでは、耐水性に優れるエーテル系の熱可塑性ポリウレタンを使用する。
【0014】
本発明によれば、柔軟ポリウレタンチューブにおいて、曲げ反発力が小さく、優れた内圧クリープ特性を有するポリウレタンチューブを提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態のポリウレタンチューブの押出成形方法を説明するための図であり、(A)は、比較例として従来のウレタンチューブを成形する時の金型外径とチューブ外径の比率(引き落とし率)のイメージ図、(B)は、本発明の実施形態のウレタンチューブを成形する時の金型外径とチューブ外径の比率(引き落とし率)のイメージ図である。本発明の実施形態のチューブを成形する時は、引き落とし率を1に近付けて押出成形することを示す。
図2】曲げ反発力の測定方法を説明するための図である。
図3】本発明の実施形態のポリウレタンチューブにおけるチューブ間距離と反発力との関係を表すグラフである。
図4】本発明の実施形態のポリウレタンチューブの動的粘弾性測定(DMA)結果のグラフである。
図5】従来の柔軟ポリウレタンチューブの動的粘弾性測定(DMA)結果のグラフである。
図6】耐摩耗試験の試験方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に説明する実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の成立に必須であるとは限らない。
【0017】
本発明の実施形態は、曲げ反発力が0.035N/mm2以下であって、30℃における貯蔵弾性率E’30と80℃における貯蔵弾性率E’80の差が、E’30の15%以下であるポリウレタンチューブにより構成され、これにより曲げ反発力が小さく、優れた内圧クリープ特性を有するポリウレタンチューブが実現される。
【0018】
本実施形態のチューブを構成する材料であるポリウレタンは、一般にポリオール成分より成るソフトセグメントと低分子グリコール、及びジイソシアネート成分より成るハードセグメントから構成される。本実施形態のチューブに使用するポリオールとしては、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)等のエーテル系ポリオールを用い、ジイソシアネートとしては、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族系ジイソシアネート等を使用している。
本実施形態のポリウレタンチューブの製造方法の要点を説明する。本実施形態のポリウレタンチューブでは、上述した貯蔵弾性率の減少量を低減するために製造方法に2つの工夫をしている。第1の工夫として、通常、押出成形によりチューブは押出方向(MD方向)に配向し、配向が揃うと配向方向に変形し易い傾向がある。そこで、チューブ成形時の配向を無くすことで、チューブの変形、即ち、クリープを抑制することができる。第2の工夫として、更にアニールすることにより、分子(ハードセグメント)の再配列が起こって成形時の配向の状態を維持しつつ安定化し、また、分子の架橋が促進される。分子の架橋は、MFRの増加により確認することができる。ここで、分子の架橋による網目構造を構成することで、ハードセグメントの変形を抑える力、即ち、弾性率が維持され易くなる。これら2つの工夫の効果により、30℃からにおける貯蔵弾性率E’30と80℃における貯蔵弾性率E’80の差は小さくなる。図1(A)は、従来の通常のウレタンチューブを成形する時の金型外径とチューブ外径の比率(引き落とし率)のイメージ図である。(B)は、本実施形態のウレタンチューブを成形する時の金型外径とチューブ外径の比率(引き落とし率)のイメージ図である。本実施形態のチューブを成形する時は、引き落とし率を1に近付けて押出成形することが特徴である。図1(A)と(B)の対比から明らかなように、本実施形態のウレタンチューブ成形用の金型外径は、通常のウレタンチューブ成形用の金型外径に比べてより小さく、チューブ外径に対する比率(引き落とし率)が1に近い。これにより、本実施形態のチューブでは、引き落としの速度を可及的に下げる(遅くする)ことになるが、チューブ成形時の配向を抑制することができる。これに加えて、更に、アニールすることにより、分子(ハードセグメント)の再配列が起こって成形時の状態で安定化し、また、分子の架橋による網目構造を構成することで、ハードセグメントの変形を抑える力、即ち、弾性率が維持され易くなる。これらにより、30℃における貯蔵弾性率E’30と80℃における貯蔵弾性率E’80の差を低減することができる。従って、チューブの変形、即ち、クリープを抑制することができる。
【0019】
以上の知見を裏付けるため、アニール後のチューブを粉砕し、アニールによる架橋の様子をMFR値の減少により確認した。その結果を表1に示す。
【0020】
【表1】
本発明品では、溶融樹脂の流れやすさの指標であるMFR値が4.6g/10minであり、従来品のMFR値6.3g/10minから減少している。これは、架橋度が上がったためと考えられ、これにより押出方向(MD方向)へ配向が揃うのが抑制され、更にアニールにより分子(ハードセグメント)の再配列が起こって安定化し、分子の架橋による網目構造を構成するようになったものと解される。
【0021】
[実施例]
曲げ反発力と耐クリープ性の評価
本発明品として、実施例1と2の2つの試料を作成した。また、比較例1として、本発明品実施例と同じ材料を用いた柔軟品チューブで、図1(A)(本件の場合DDR=9)の従来製法(押出成形法)により作成した従来製法(アニールなし)の柔軟品、比較例2として、本発明品実施例と異なる従来の材料を用いた、従来品チューブも比較例1と同じように作成した。
ポリウレタンチューブの成形
本発明の実施例1及び2のポリウレタンチューブは、以下の方法で作成した。
熱可塑性ポリウレタン樹脂は、大日精化工業株式会社製 レザミンPH-2289を使用し、成形前に90℃以上の温度で、2時間以上乾燥させて用いた。シリンダー径50mmの単軸押出機に乾燥させたポリウレタン樹脂を投入してチューブ成形を行った。スクリュー回転数10rpm、ダイ温度210℃、引き落し率 DDR= 2(実施例2はDDR=3)、引き速 5m/min でチューブを成形した。これにより内径5mm、外径8mmのチューブを得た。
作成したチューブは、80℃で24時間静置してエージングした後、試料チューブとして評価に用いた。
【0022】
チューブの評価
チューブ評価結果を表2に示す。
【表2】
<曲げ反発力>
図2は、曲げ反発力の測定方法を説明するための図である。
図2に示すように、試料チューブを圧縮試験機にU字状にセットし、U字の間隔(2R)が100mmのときの曲げにより発生する反発力を測定することとした。
チューブの曲げ反発力は、2Rの大きさ、チューブ径により異なるため、本願では、2Rが100mmのときに測定した曲げで発生する反発力から、チューブ断面積あたりの力を算出して、「曲げ反発力(100mm)」とした。
本発明品の実施例1のチューブは、曲げ反発力(100mm)は0.019N/mm2、実施例2のチューブは、曲げ反発力(100mm)は0.009N/mm2、であった。比較例1の従来製法の柔軟品は、曲げ反発力(100mm)は0.024N/mm2、比較例2の従来品チューブは、曲げ反発力(100mm)は0.022N/mm2であった。
【0023】
図3は、本発明の実施形態のポリウレタンチューブにおけるチューブ間距離と反発力との関係を表すグラフである。
【0024】
<クリープ寿命予測試験>
上述したように、チューブの場合のクリープ現象としては、内部圧力が長時間継続的にかかると膨らむ現象がまず認められ、その後破壊に至る。配管などに用いるチューブにとってこのクリープ現象は重要な問題となる。長時間かかるクリープ破壊試験を短時間の実験で代用する方法としてラーソン・ミラー法がある。ラーソン・ミラー法では負荷応力、温度、寿命の関係を数式(1)に表している。
【数1】
ここで、T:絶対温度
δ:負荷応力
t:クリープ寿命
A,B:定数である。
つまり、ラーソン・ミラー法によれば、高負荷応力または高温などの促進条件下での試験結果から、低負荷応力および低温時の寿命予測が可能なことを示している。
【0025】

<クリープ試験方法>
チューブの両端に継ぎ手を装着して、チューブ内部に所定の圧力の圧縮空気を封入し、チューブが破壊に至るまでの時間を計測した。
[試験条件]
条件1:温度40℃、チューブ内圧10kPa
条件2:温度55℃、チューブ内圧 9kPa
このクリープ試験の結果を、表1に示す。破壊に至るまでの時間が長いものほど、耐クリープ性に優れ、チューブ寿命が長いことを示している。
<貯蔵弾性率の測定>
ブルカーエイエックスエス社製熱機械分析装置TMA4000Sを使用し、動的粘弾性測定(DMA)により貯蔵弾性率を測定した。
試料チューブを、熱プレスで溶融プレスし、冷却して測定サンプルのシートを作成した。作成したシートを測定サイズ20mm×5mm×20mmにカットして測定に用いた。
[測定条件]
チャック間距離 :15mm
測定モード : 引張モード
昇温速度 :5℃/min
荷重モード : 正弦波の周期荷重
振幅 : 5g
周期 : 60sec
オフセット値 : -2g
測定したデータを粘弾性解析ソフトで解析した結果を、図4図5に示す。図4は、本発明の実施形態のポリウレタンチューブの動的粘弾性測定(DMA)結果を示すグラフであり、本発明品の貯蔵弾性率、損失エネルギー、tanδの値の変化を示す。
図5は、比較例の動的粘弾性測定(DMA)結果を示すグラフである。。解析結果を基に、30℃における貯蔵弾性率E’30と80℃における貯蔵弾性率E’80を求め、このE’30からE’80を引いた、差の絶対値を算出した。 1つの測定サンプルシートの5か所から測定試料を切り出し、同様の測定を行ってその平均値を用いて、数式(2)にしたがって算出し、貯蔵弾性率の差とした。
【数2】
算出した貯蔵弾性率の差を表2に示す。
貯蔵弾性率の差が15%以下の実施例1と2のチューブは、曲げ反発力を低く維持し、耐クリープ性が4倍以上に向上している。一方、比較例1と2のチューブは、貯蔵弾性率の差が20%以上であり、曲げ反発力は小さいが耐クリープ特性が悪く、好ましくない。
【0026】
耐摩耗性の評価
チューブの成形
本発明の第2の実施形態として、耐摩耗性を向上させた本発明品の実施例3のチューブを以下の方法で作成した。上記実施例1と実施例2の成形で使用した乾燥後のポリウレタンに、大日精化工業株式会社製 B-MS20を添加し、ダイ温度を10℃下げた以外は上記と同様にしてチューブを成形した。
【0027】
チューブの評価
<表面粗さ>
チューブの表面粗さを、触針式表面粗さ測定機(株式会社ミツトヨ サーフテストSJ−400)を用いて測定した。
【0028】
<耐摩耗試験>
図6は、耐摩耗試験の試験方法を説明するための図である。図6に示すように、試料チューブの片端に重りを取付け、もう片端を固定して重りが下になるように吊るす。吊るした試料チューブに、12本の相手材を固定した回転体を当てて擦り合わせ、摩耗した量を測定した。試料チューブ長700mm、重り456g、相手材 ナイロン、回転体の回転数 100rpm で試験を行った。
【0029】
チューブ評価結果を表3に示す。
【表3】
柔軟な(硬度が低い)チューブは、摩耗しやすい性質をもつが、本発明のチューブの表面粗さを0.8μm以上として、低摩擦性を付与したチューブは、さらに曲げ反発力が小さいことで、従来の低摩擦ウレタンチューブと比較しても摩耗量が小さいことが確認できた。
以上のように、本発明の第2の実施形態のポリウレタンチューブは、耐摩耗性に優れているので、例えば半導体製造装置のステージ上を移動するケーブルベア内に配管する場合でも、ベア材や他のケーブル等とのこすれによる摩耗にも耐性が高くなる。
【0030】
以上のように、本発明によれば、曲げ反発力が小さく、優れた内圧クリープ特性を有するポリウレタンチューブが得られる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明のポリウレタンチューブは、機械・装置の空圧用チューブ等、ガス・液体等の流体を流すチューブとしては勿論、コンピュータ等の電子機器は勿論、自動車、飛行機等の制御機器を狭小部に搭載する必要のある機械の制御回路にも適用可能である。

図1
図2
図3
図4
図5
図6