(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、測位信号が取得できなくなったり、測位信号を取得できても信号レベルが低い場合は、GPS受信機の発振器の誤差が正確に特定できなくなり、同期制御を解除する。この場合、基準信号発生装置では、GPS受信機が出力する信号を用いずに電圧制御発振器が単独で基準信号を発生させる。
【0006】
その後、測位信号が取得できるようになった場合、再びGPS受信機の発振器の誤差が特定できるようになり、同期制御に復帰する。しかし、測位信号が取得できない時間が長い場合等、GPS受信機の発振器の誤差が大幅に変化した場合、測位信号の信号レベルによってはGPS受信機の発振器の正確な誤差を特定できない可能性がある。従って、このような場合は、より強い信号レベルの測位信号が取得できるまで同期制御を行うことができない。この課題は、同期制御への復帰時だけでなく、同期制御の開始時(基準信号発生装置の起動時等)にも生じ得る。
【0007】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、同期制御の開始又は復帰が容易な基準信号発生装置を提供することにある。
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0009】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成の基準信号発生装置が提供される。即ち、この基準信号発生装置は、第1信号発振部と、
基準信号発振部と、判断部と、信号誤差出力部と、測位演算部と、信号補正部と
、比較部と、基準信号出力部と
、を備える。前記第1信号発振部は、第1信号を発振する。
前記基準信号発振部は、前記第1信号発振部より信号安定度が高く、基準信号を発振する。前記判断部は、GNSS衛星からの測位信号が有効か否かを判断する。前記信号誤差出力部は、前記基準信号に対する前記第1信号の周波数変動及びタイミング誤差のうち少なくとも一方である第2信号誤差を出力する。前記測位演算部は、
前記測位信号が有効であると前記判断部が判断している場合は、前記測位信号に基づいて演算を行うことで、当該測位信号に対する前記第1信号の周波数変動及びタイミング誤差のうち少なくとも一方である第1信号誤差を検出
し、前記測位信号が有効であると前記判断部が判断している状況から、前記測位信号が有効でないと前記判断部が判断する状況に切り替わった場合は、前記信号誤差出力部が出力した前記第2信号誤差を用いて、前記第1信号誤差を検出する。前記信号補正部は、前記測位演算部から入力された前記第1信号誤差に基づいて、前記第1信号を補正する。前記比較部は、前記信号補正部により補正された前記第1信号と、前記基準信号と、を比較する。前記基準信号出力部は、前記比較部の比較結果に基づいて前記基準信号発振部が発振した前記基準信号を外部へ出力する。
【0010】
これにより、測位演算部には、基準信号に対する第1信号の信号誤差(第2信号誤差)が入力される。基準信号発振部は第1信号発振部よりも信号安定度が高いので、測位信号が適切に利用できない場合では第1信号よりも基準信号の方が精度が高い。そのため、測位演算部は、第1信号の誤差をある程度正確に把握することができる。従って、同期制御の開始又は復帰が容易となる。
また、GNSS衛星に基づく同期制御を行うことができない場合であっても、基準信号と比較することで、第1信号の誤差をある程度正確に把握できる。従って、測位信号が有効となった場合の同期制御への復帰が容易となる。
【0013】
前記の基準信号発生装置においては、装置起動
後に、初めに前記第2信号誤差が検出され、次に、当該第2信号誤差を用いて前記測位演算部が前記第1信号誤差を検出することが好ましい。
【0014】
これにより、測位信号の信号レベルが低い場合であっても同期制御を開始することができる。
【0015】
前記の基準信号発生装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、この基準信号発生装置は、取得部と、自走制御部と、を備える。前記取得部は、前記基準信号発振部が使用される環境を示す環境値を取得する。
前記自走制御部は、前記測位信号が有効でないと前記判断部が判断する状況に切り替わった場合に、前記比較部による前記第1信号と前記基準信号との比較結果に代えて、前記取得部が取得した前記環境値に基づいて前記自走制御部が前記基準信号発振部を制御する。
【0016】
これにより、測位信号を利用しない状況(利用できない状況)であっても、自走制御を行うことで基準信号の信号安定度を維持することができるので、より正確な第2信号誤差を検出できる。
【0017】
前記の基準信号発生装置においては、前記第1信号発振部が温度補償型水晶発振器であり、前記基準信号発振部が恒温槽型水晶発振器であることが好ましい。
【0018】
これにより、一般的に用いられる発振器を用いて本発明を実現できる。
【0019】
本発明の第2の観点によれば、第1信号発振部により第1信号を発振し、当該第1信号発振部より信号安定度が高い基準信号発振部により基準信号を発振する基準信号発生方法において、以下の工程を含む方法が提供される。即ち、この基準信号発生方法は、
判断工程と、信号誤差出力工程と、測位演算工程と、信号補正工程と、比較工程と、基準信号出力工程と
、を含む。
前記判断工程では、GNSS衛星からの測位信号が有効か否かを判断する。前記信号誤差出力工程では、前記基準信号に対する前記第1信号の周波数変動及びタイミング誤差のうち少なくとも一方である第2信号誤差を出力する。前記測位演算工程では、
前記測位信号が有効であると前記判断工程で判断している場合は、前記測位信号に基づいて演算を行うことで、当該測位信号に対する前記第1信号の周波数変動及びタイミング誤差のうち少なくとも一方である第1信号誤差を検出
し、前記測位信号が有効であると前記判断工程で判断している状況から、前記測位信号が有効でないと前記判断工程で判断する状況に切り替わった場合は、前記信号誤差出力工程で出力した前記第2信号誤差を用いて、前記第1信号誤差を検出する。前記信号補正工程では、前記測位演算工程で出力された前記第1信号誤差に基づいて、前記第1信号を補正する。前記比較工程では、前記信号補正工程で補正された前記第1信号と、前記基準信号と、を比較する。前記基準信号出力工程では、前記比較工程での比較結果に基づいて前記基準信号発振部が発振した前記基準信号を外部へ出力する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、図面を参照して本発明の第1実施形態を説明する。以下の説明において、「へ出力する」と記載した場合、該当する装置へ直接的に出力する場合だけでなく、他の装置を介して該当する装置へ出力する場合も含むものとする。
【0022】
第1実施形態の基準信号発生装置1は、携帯電話の基地局又は地上デジタル放送の送信局等の無線通信設備に設置される。基準信号発生装置1の入力部41には、GNSSアンテナ2が接続されている。GNSSアンテナ2は、GNSS衛星から測位信号を受信し、この測位信号を基準信号発生装置1へ出力する。基準信号発生装置1は、この測位信号に基づいて、基準信号(基準周波数信号及び基準タイミング信号等)を発生させる。基準信号は、上記の無線通信設備の各機器へ出力される。GNSS衛星としては、GPS衛星、QZSS衛星、GLONASS衛星、及びGALILEO衛星が存在する。
【0023】
基準信号発生装置1は、GNSS受信ブロック10と、基準信号発生ブロック20と、から構成される。GNSS受信ブロック10は、第1信号を発生させるので第1信号発生ブロックと称することもできる。なお、GNSS受信ブロック10と基準信号発生ブロック20は、同じ筐体の内部に配置されていても良いし、個別の筐体に配置されて物理的に離れた位置に配置されていても良い。個別の筐体に配置されている場合、GNSS受信ブロック10をGNSS受信機と称することができる。
【0024】
GNSS受信ブロック10は、TCXO(Temperature Compensated Crystal Oscillator、温度補償型水晶発振器、第1信号発振部)11と、シンセサイザ12と、ダウンコンバータ部13と、ベースバンド処理部14と、第1スイッチ15と、測位演算部16と、信号補正部17と、判断部18と、信号誤差出力部19と、を備える。これらのうち、第1スイッチ15、測位演算部16、信号補正部17、判断部18、信号誤差出力部19は、FPGA、ASIC、又はCPU等の演算処理部により実現される。
【0025】
TCXO11は、水晶振動子を共振器として使用した発振器である。TCXO11は、予め設定された周波数の信号(第1信号)を発生させ、シンセサイザ12へ出力する。本明細書では、TCXO11が直接的に出力する信号だけでなく、当該信号を補正又は変換等して得られる信号も含めて「第1信号」と称する。
【0026】
シンセサイザ12は、TCXO11が発生させた第1信号を変換してダウンコンバータ部13、ベースバンド処理部14、及び信号補正部17へ出力する。この信号はクロック信号として用いられる。また、シンセサイザ12は、TCXO11が発生させた第1信号から復調用信号を発生させ、ダウンコンバータ部13へ出力する。
【0027】
ダウンコンバータ部13には、GNSSアンテナ2から測位信号が入力されるとともに、シンセサイザ12から復調用信号が入力される。ダウンコンバータ部13は、復調用信号を用いて測位信号をダウンコンバートしてIF信号へ変換する。ダウンコンバータ部13は、IF信号をベースバンド処理部14へ出力する。
【0028】
ベースバンド処理部14は、シンセサイザ12が出力した第1信号をサンプリング周波数として用いてIF信号を復調してベースバンド信号へ変換する。ベースバンド処理部14は、ベースバンド信号を第1スイッチ15を介して測位演算部16へ出力する。
【0029】
測位演算部16は、ベースバンド処理部14から入力されたベースバンド信号に基づいて、航法メッセージを読み取って衛星の軌道を取得し、自機の位置と、自機側の時計の誤差を公知の方法で計算する。測位演算部16は、この測位演算によって、GNSS衛星に搭載されている高精度な時計に同期した正確な時刻を得ることができる。また、測位演算部16は、測位演算を行うことにより、第1信号のクロックオフセット(タイミング誤差)及びクロックドリフト(周波数変動)を算出する。以下では、測位信号に基づいて得られた、第1信号のクロックオフセットとクロックドリフトの少なくとも一方を第1信号誤差と称する。測位演算部16は、クロックオフセット及びクロックドリフトを信号補正部17へ出力する。
【0030】
信号補正部17は、測位演算部16から入力されたクロックオフセット及びクロックドリフトに基づいて第1信号を補正する。具体的には信号補正部17は、タイミング誤差に基づいて第1信号の立ち上がりのタイミングを補正するとともに、クロックドリフトに基づいて周波数を補正する。また、信号補正部17は分周器の機能を有しており、補正した第1信号を分周することで1PPS信号を発生させる。なお、信号補正部17とは別に分周器を設けても良い。信号補正部17は、第1信号を補正及び分周することで得られる1PPS信号を基準信号発生ブロック20へ出力する。
【0031】
判断部18は、測位信号又は第1信号誤差等に基づいて、測位信号が有効か否かを判断する。測位信号が有効とは、第1信号誤差を適切に検出できる測位信号が基準信号発生装置1に入力されていることをいう。判断部18は、例えば、測位信号の信号レベル、及び、利用可能なGNSS衛星の数等に基づいて測位信号が有効か否かを判断する。判断部18は、測位信号の判断結果に基づいて、第1スイッチ15を切り替える制御を行う。具体的には、判断部18は、測位信号が有効であると判断している状況では、ベースバンド処理部14が出力するベースバンド信号が測位演算部16に出力されるように第1スイッチ15を制御する。一方、判断部18は、測位信号が有効でないと判断している状況では、信号誤差出力部19の出力が測位演算部16に出力されるように第1スイッチ15を制御する。
【0032】
信号誤差出力部19は、基準信号発生ブロック20が出力する基準信号と第1信号との比較を行うことにより、第1信号のクロックオフセット(タイミング誤差)及びクロックドリフト(周波数変動)を算出する。以下では、基準信号に基づいて得られた、第1信号のクロックオフセットとクロックドリフトの少なくとも一方を第2信号誤差と称する。信号誤差出力部19は、測位信号が有効でないと判断部18が判断している状況において、第1スイッチ15を介して第2信号誤差を測位演算部16に出力する。なお、信号誤差出力部19がクロックドリフトのみを出力した場合であっても、クロックドリフトに基づいてクロックオフセットを求めることができる。
【0033】
基準信号発生ブロック20は、位相比較部(比較部)21と、ループフィルタ22と、OCXO(Oven Controlled Crystal Oscillator、恒温槽型水晶発振器、基準信号発振部)23と、分周部24と、を備える。
【0034】
OCXO23は、水晶振動子を共振器として使用した発振器であり、外部から印加される制御電圧のレベルに応じて、出力する周波数が変更可能に構成されている。OCXO23は、発振器を恒温槽で覆い、恒温槽内が一定の温度となるように制御が行われている。これにより、OCXO23は、TCXO11よりも信号安定度が高い。OCXO23が出力した基準周波数信号は、基準周波数信号出力部(基準信号出力部)42から外部のシステムへ出力される。
【0035】
分周部24は、OCXO23から入力された基準周波数信号を分周して高い周波数から低い周波数に変換して位相比較部21へ出力する。また、低い周波数に変換された基準周波数信号は、基準タイミング信号(1PPS信号)として基準タイミング信号出力部(基準信号出力部)43から外部へ出力される。なお、以下の説明では、基準周波数信号と基準タイミング信号を合わせて基準信号と称する。
【0036】
位相比較部21は、分周部24が出力した基準タイミング信号と、信号補正部17が出力した1PPS信号と、を比較して位相差を算出する。位相比較部21が算出した位相差は、ループフィルタ22及び信号誤差出力部19へ出力される。
【0037】
ループフィルタ22は、位相比較部21から入力された位相差に基づいて、この位相差をゼロに近づけるように制御電圧を決定してOCXO23を制御する。これにより、経時変化や周囲の温度変化等に起因してOCXO23の特性の変動が生じたとしても、基準信号発生装置1の基準信号を高精度に保つことができる。このように、OCXO23を測位信号に基づいて補正する(同期させる)制御を同期制御と称する。
【0038】
信号誤差出力部19は、位相比較部21から入力された位相差に基づいて、この位相差が0になるようなクロックドリフトを算出して出力する。
【0039】
次に、
図2のフローチャートを参照して、測位信号が有効な状況から有効でない状況に切り替わった場合の処理について説明する。
【0040】
上述のように、判断部18は測位信号が有効か否かを判断している(S101)。判断部18は、測位信号が有効と判断している状況では、ベースバンド処理部14からのベースバンド信号が測位演算部16へ出力されるように第1スイッチ15を制御する(S102)。これにより、高精度の測位信号に基づいて第1信号を発生させ、基準信号発生ブロック20へ出力できる。
【0041】
ここで、落雷又は電波障害等により、測位衛星数が閾値A以下となるか、測位信号の信号レベルが所定の閾値B以下になったとする。閾値A及び閾値Bは任意であるが、閾値Aとしては測位衛星数=0を例として挙げることができる。閾値Bとしては、C/Aコードと航法メッセージの復調はできないが、受信した信号を積算してピークを探索する方法により測位を行うことが可能な信号強度(例えば、−147[dBm]から−145[dBm]程度)を例として挙げることができる。判断部18は、測位衛星数が閾値A以下となるか、測位信号の信号レベルが閾値B以下となった場合に測位信号が有効でないと判断し、信号誤差出力部19からの第2信号誤差が測位演算部16へ出力されるように第1スイッチ15を制御する(S103)。
【0042】
これにより、測位信号が有効でない状況では、測位信号に代えて基準信号に基づいてTCXO11の信号誤差が検出される。OCXO23は、測位信号に比べると信号安定度は劣るが、TCXO11よりは信号安定度が高いので、上記のように基準信号に基づいて第1信号の信号誤差を検出することで、従来のように信号誤差を全く更新しない構成と比較して、第1信号の信号誤差を把握することができる。
【0043】
測位信号が有効でない状況では、OCXO23の出力する基準周波数信号は特に補正されない。しかし、OCXO23は信号安定度が高いため、十分な精度の基準信号を出力し続けることができる。なお、信号補正部17は、基準信号に基づいて検出された第2信号誤差を考慮して第1信号を補正しているため、第1信号は基準信号に同期する。従って、位相比較部21の比較結果に基づく位相差もゼロになるため、第1信号の信号誤差の影響が基準信号に影響を与えないようにすることができる。
【0044】
その後、取得可能なGNSS衛星数が上記の閾値Aを超え、かつ、測位信号の信号レベルが上記の閾値Bを超えたとする。これにより、判断部18は、測位信号が有効と判断し、ベースバンド処理部14からのベースバンド信号が測位演算部16へ出力されるように第1スイッチ15を制御する(S102)。
【0045】
従って、測位演算部16は、再び測位演算を行って第1信号誤差を検出する。上述したように、この閾値Bの信号レベルの測位信号では、C/Aコードと航法メッセージの復調はできないため、受信した信号を積算してピークを探索する。しかし、この方法では、測位演算で得られた現在時刻には、ミリ秒単位の誤差が含まれている可能性がある。
【0046】
そのため、従来のようにTCXO11の信号誤差が全く更新されていない場合は、TCXO11の誤差が大きくなって現在時刻がミリ秒単位でズレてしまう可能性がある。現在時刻のミリ秒単位のズレは第1信号の大きな信号誤差に繋がるため、従来では、上記の信号レベルの閾値Bを超えたときに同期制御に復帰することは現実的ではない。
【0047】
この点、本実施形態では、測位演算を行うことができない間において、基準信号に基づく第1信号の信号誤差(第2信号誤差)を用いて、第1信号の信号誤差(クロックオフセット及びクロックドリフトのうち少なくとも一方)が求められる。言い換えれば、TCXO11の信号誤差はOCXO23の信号誤差程度に抑えられている。従って、この信号レベルの閾値Bを設定しても、現在時刻がズレることはない。従って、本実施形態の構成を採用することで、測位演算を行うことができない間の第1信号の誤差を継続して監視することができるので、信号レベルが弱い場合でも、測位演算を再開して同期制御に復帰することができる。
【0048】
次に、
図3及び
図4を参照して、第2実施形態について説明する。第2実施形態の基準信号発生装置1の説明においては、第1実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。第2実施形態の基準信号発生装置1は、測位信号が有効でない場合において、第1実施形態よりも基準信号を安定させる自走制御を行う。
【0049】
OCXO23は、周囲の環境(例えば、温度、湿度、圧力)の変化により特性が変化し、同じ制御電圧を供給しても出力される信号の周波数が異なる。第2実施形態の基準信号発生装置1は、この特性によるズレ量を考慮することで、自走状態においても高精度な基準信号を出力し続けることができる。
【0050】
基準信号発生装置1は、この機能を発揮させるための構成として、
図3に示すように、温度センサ51と、湿度センサ52と、圧力センサ53と、が検出した環境値を取得する取得部44を備える。また、基準信号発生装置1は、GNSS受信ブロック10内に自走制御部31を備え、基準信号発生ブロック20内に第2スイッチ32を備える。自走制御部31は、上述の演算処理部に含めることもできる。
【0051】
温度センサ51は温度を検出し、自走制御部31へ出力する。湿度センサ52は、湿度を検出し、自走制御部31へ出力する。圧力センサ53は、圧力を検出し、自走制御部31へ出力する。以下の説明では、温度センサ51、湿度センサ52、及び圧力センサ53を環境センサと称し、環境センサが求めた温度、湿度、及び圧力を環境値と称する。
【0052】
自走制御部31は、同期状態である場合は、環境センサが検出した環境値と、OCXO23が出力した基準信号の周波数と、の対応関係を求め、この対応関係に基づいてOCXO23の環境変化特性を求める。
【0053】
第2スイッチ32は、第1スイッチ15と同様、判断部18によって制御されている。判断部18は、測位信号の判断結果に基づいて、第2スイッチ32を切り替える制御を行う。
【0054】
次に、
図4のフローチャートを参照して、測位信号が有効な状況から有効でない状況に切り替わった場合の処理について説明する。
【0055】
判断部18は測位信号が有効か否かを判断している(S201)。判断部18は、測位信号が有効と判断している状況では、第1実施形態と同様に、ベースバンド処理部14からのベースバンド信号が測位演算部16へ出力されるように第1スイッチ15を制御する(S202)。また、判断部18は、測位信号が有効と判断している状況では、ループフィルタ22が出力する制御電圧がOCXO23に出力されるように第2スイッチ32を制御する(S203)。これにより、測位信号に基づいて補正された高精度な第1信号に基づいて基準信号を補正することができる。
【0056】
その後、落雷又は電波障害等により測位衛星数が閾値A以下となるか、測位信号の信号レベルが所定の閾値B以下になったとする。閾値A及び閾値Bとしては、例えば上述した値を設定できる。この場合、判断部18は、測位信号が有効でないと判断し、第1実施形態と同様に、信号誤差出力部19からの第2信号誤差が測位演算部16へ出力されるように第1スイッチ15を制御する(S204)。また、判断部18は、測位信号が有効でないと判断している状況では、自走制御部31が出力する制御電圧がOCXO23に出力されるように第2スイッチ32を制御する(S205)。
【0057】
自走制御部31は、環境センサが検出した現在の環境値と、予め求めた環境変化特性と、を考慮してOCXO23を制御する。なお、自走制御部31には位相比較部21が出力した位相差に基づいて制御電圧(自走制御信号)を生成するが、ループフィルタ22の出力に基づいて制御電圧を生成しても良い。自走制御部31が環境変化特性を考慮してOCXO23を制御するkとで、測位信号が有効でないと判断している状況において、OCXO23の信号安定度を更に向上させることができる。これにより、信号誤差出力部19は、より正確な第2信号誤差を算出して測位演算部16へ出力することができる。従って、信号レベルが弱い測位信号しか取得できていない状況において、より確実に測位演算を行うことができる。
【0058】
第1実施形態及び第2実施形態では、同期制御に復帰する場合について説明したが、同期制御を開始する場合(例えば基準信号発生装置1の起動直後又は再起動直後)であっても同様に第2信号誤差を活用できる。即ち、測位信号の信号強度が、C/Aコードと航法メッセージの復調はできないが、受信した信号を積算してピークを探索する方法により測位を行うことが可能な強度である状況において、基準信号発生装置1を起動した場合を考える。この場合、測位演算部16が把握しているTCXO11の信号誤差が大きいときは、現在時間がミリ秒単位でズレる可能性がある。しかし、初めにTCXO11とOCXO23の信号誤差である第2信号誤差を検出し、次に、当該第2信号誤差に基づいて、第1信号誤差を検出することで、ミリ秒単位のズレが発生しなくなるため、信号強度が弱い場合であっても同期制御を開始することができる。なお、第2信号誤差の検出は、OCXO23内の恒温槽が温まった後に行う必要がある。
【0059】
以上に説明したように、本実施形態の基準信号発生装置1は、TCXO11と、測位演算部16と、信号補正部17と、OCXO23と、位相比較部21と、基準信号出力部(基準周波数信号出力部42及び基準タイミング信号出力部43)と、信号誤差出力部19と、による基準信号発生方法を実現する。TCXO11は、第1信号を発振する。測位演算部16は、GNSS衛星からの測位信号に基づいて演算を行うことで、当該測位信号に対する第1信号の周波数変動及びタイミング誤差のうち少なくとも一方である第1信号誤差を検出する(測位演算工程)。信号補正部17は、測位演算部16から入力された第1信号誤差に基づいて、第1信号を補正する(信号補正工程)。OCXO23は、TCXO11より信号安定度が高く、基準信号を発振する。位相比較部21は、信号補正部17により補正された第1信号と、基準信号と、を比較する(比較工程)。基準信号出力部は、位相比較部21の比較結果に基づいてOCXO23が発振した基準信号を外部へ出力する(基準信号出力工程)。信号誤差出力部19は、基準信号に対する第1信号の周波数変動及びタイミング誤差のうち少なくとも一方である第2信号誤差を測位演算部16へ出力する(信号誤差出力工程)。
【0060】
これにより、測位演算部16には、基準信号に対する第1信号の信号誤差(第2信号誤差)が入力される。基準信号発振部は第1信号発振部よりも信号安定度が高いので、測位信号が適切に利用できない場合では第1信号よりも基準信号の方が精度が高い。そのため、測位演算部16は、第1信号の誤差をある程度正確に把握することができる。従って、同期制御の開始又は復帰が容易となる。
【0061】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0062】
上記実施形態では、第1信号発振部の例としてTCXO11を用い、基準信号発振部の例としてOCXO23を用いたが、基準信号発振部の信号安定度が第1信号発振部より高ければ、上記実施形態と異なる組合せであっても良い。例えば、基準信号発振部として、OCXOよりも更に信号安定度が高いルビジウム発振器又はセシウム発振器を用いても良い。この場合、第1信号発振部としてOCXOを用いることもできる。また、TCXOに代えて、更に信号安定度が低いVCOを用いても良い。なお、信号安定度が異なるのであれば、第1信号発振部と基準信号発振部の両方にTCXO(又はOCXO)を用いても良い。
【0063】
上記実施形態では、2つの信号の位相を比較する位相比較部21を用いたが、位相比較部21の代わりに、2つの信号の周波数を比較する周波数比較部を設けても良い。
【0064】
上記実施形態では、基準信号発生装置1は基準周波数信号出力部42と基準タイミング信号出力部43とを備えるが、何れか一方のみを備える構成であっても良い。
【0065】
上記実施形態では、ベースバンド処理部14が出力するベースバンド信号と、信号誤差出力部19が出力する第2信号誤差と、のうち一方のみが測位演算部16へ出力されるが、一時的に又は常に、両方の信号が測位演算部16へ出力されても良い。この場合、測位演算部16は、2つの信号を必要に応じて選択して使い分ける。
【0066】
基準信号発生装置1が備える各部は、ハードウェアとして構成することに代えて、ソフトウェアにより構成することもできる。