特許第6681242号(P6681242)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6681242
(24)【登録日】2020年3月25日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】車両の車体後部構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 21/15 20060101AFI20200406BHJP
   B62D 25/20 20060101ALI20200406BHJP
   B62D 25/08 20060101ALI20200406BHJP
【FI】
   B62D21/15 C
   B62D25/20 H
   B62D25/08 L
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-67544(P2016-67544)
(22)【出願日】2016年3月30日
(65)【公開番号】特開2017-178026(P2017-178026A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2018年12月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】特許業務法人イトーシン国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076233
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 進
(74)【代理人】
【識別番号】100101661
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100135932
【弁理士】
【氏名又は名称】篠浦 治
(72)【発明者】
【氏名】植島 和樹
【審査官】 林 政道
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−061817(JP,A)
【文献】 実開昭57−063784(JP,U)
【文献】 実開昭62−192979(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00−25/08
B62D 25/14−29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の後部に設けた左右一対のリヤホイールハウスと、
前記リヤホイールハウスの車室内への膨出形状に沿って湾曲されて前記車体の後方へ延在する左右一対のリヤサイドフレームと、
前記リヤホイールハウスの外側を覆うリヤクォータパネルと
を有する車両の車体後部構造において、
前記リヤホイールハウスの後部と前記リヤサイドフレームと前記リヤクォータパネルとで囲まれた領域に配設されて、前記車体の側方からの衝撃荷重を受ける衝撃受け部材を有し、
前記衝撃受け部材は、
前記リヤサイドフレームから前記車体の側方へ略垂直に延在されて側面が前記リヤホイールハウスの後面に接合されていると共に突出端部が前記リヤクォータパネルに近接されている垂直骨格部と、
前記垂直骨格部の突出端部から前記リヤサイドフレームの方向へ斜めに延在されて後端部が該リヤサイドフレームの後端外側に接合されているパイプ状に形成された傾斜骨格部と
を備えることを特徴とする車両の車体後部構造。
【請求項2】
前記垂直骨格部が第1骨格部と第2骨格部とに分割されており、
前記第1、第2骨格部が前記リヤホイールハウスのホイールエプロンとリヤアーチインナとを接合するフランジ部を挟んで互いに接合されている
ことを特徴とする請求項1記載の車両の車体後部構造。
【請求項3】
前記傾斜骨格部は骨格スペーサ部を介して前記リヤサイドフレームの後端外側に接合されている
ことを特徴とする請求項1或いは2に記載の車両の車体後部構造。
【請求項4】
前記傾斜骨格部の後方に衝撃吸収部材が設けられており、
前記衝撃吸収部材は直角三角形の短辺側となる第1変形部と長辺側となる第2変形部とで構成され、
前記第1変形部の端部が前記傾斜骨格部の後端部に接合され、
前記第2変形部の端部が前記突出端部に接合されている
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の車両の車体後部構造。
【請求項5】
前記衝撃吸収部材の上面と下面との少なくとも一方が蓋体で閉塞されている
ことを特徴とする請求項記載の車両の車体後部構造。
【請求項6】
前記衝撃吸収部材内に衝撃吸収材が充填されている
ことを特徴とする請求項或いは記載の車両の車体後部構造。
【請求項7】
左右一対の前記リヤサイドフレームの後端部間が、車両の左右方向へ延在する第1クロスメンバを介して結合されている
ことを特徴とする請求項1〜の何れか1項に記載の車両の車体後部構造。
【請求項8】
互いに対向する左右一対の前記両垂直骨格部の対向端部が、前記リヤサイドフレーム間に両端を接合する第2クロスメンバを介して連結されている
ことを特徴とする請求項1〜の何れか1項に記載の車両の車体後部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リヤホイールハウスとリヤサイドフレームの後端とを、車体幅方向へ突出する衝撃受け部材を介して連結させて、車体後部への側面衝突時における衝撃荷重を吸収させると共に、この衝撃荷重を車体後方へ導くようにした車両の車体後部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ステーションワゴン車やハッチバック車等の2ボックスタイプの車両では、二列目シートの後方に容積空間を確保し、ラゲージルームとして利用している。又、この容積空間に折り畳み自在な三列目シートを配設してラゲージルームと居室との双方を利用できるようにしたものも知られている。
【0003】
ところで、モノコック構造のボディを採用した自動車等の車両では衝突安全性等を高めるべく、ドア開口部の強度や剛性を十分に確保した構造となっている。又、上述した2ボックスタイプの車両では、二列目シートより後方の容積空間に対する後面衝突、及び側面衝突時における変形を抑制させる構造が要求される。
【0004】
特に、三列目シートを備える車両では、三列目シートがリヤホイールセンタよりも後方に配設され易く、この三列目シートに着座している乗員を側面衝突から有効に保護する必要がある。例えば、特許文献1(特開平10−129533号公報)には、リヤフロアの両側部に設けたリヤサイドメンバのリヤホイールハウスに沿った湾曲部間を連結するリヤクロスメンバと、リヤサイドメンバの湾曲部とそれより後方に延びる直状部との連設部分を補強メンバで筋交いに接合した技術が開示されている。
【0005】
この文献に開示されている技術によれば、リヤクロスメンバとリヤサイドメンバとを補強メンバで筋交い接合することで、車体後部への側面衝突時の衝撃荷重が分散され、その結果、リヤクロスメンバの居室内方向への変形を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−129533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述した文献に開示されている技術では、単に、リヤクロスメンバとリヤサイドメンバとを補強メンバで筋交いに接合することで、車体後部に側面衝突した際の衝撃荷重を分散させるようにした構造であるため、車体に大きな横Gが発生し易く、車体後部が外側へ大きく振られてしまう可能性がある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑み、車体後部に側面衝突により衝撃荷重が印加されても、その衝撃を緩和して車体に発生する横Gを軽減させることができ、更に、2列目シートよりも後方の容積空間の変形を抑制することのできる車両の車体後部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、車体の後部に設けた左右一対のリヤホイールハウスと、前記リヤホイールハウスの車室内への膨出形状に沿って湾曲されて前記車体の後方へ延在する左右一対のリヤサイドフレームと、前記リヤホイールハウスの外側を覆うリヤクォータパネルとを有する車両の車体後部構造において、前記リヤホイールハウスの後部と前記リヤサイドフレームと前記リヤクォータパネルとで囲まれた領域に配設されて、前記車体の側方からの衝撃荷重を受ける衝撃受け部材を有し、前記衝撃受け部材は、前記リヤサイドフレームから前記車体の側方へ略垂直に延在されて側面が前記リヤホイールハウスの後面に接合されていると共に突出端部が前記リヤクォータパネルに近接されている垂直骨格部と、前記垂直骨格部の突出端部から前記リヤサイドフレームの方向へ斜めに延在されて後端部が該リヤサイドフレームの後端外側に接合されているパイプ状に形成された傾斜骨格部とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、リヤサイドフレームから車体の側方へ略垂直に延在されて側面がリヤホイールハウスの後面に接合されていると共に突出端部がリヤクォータパネルに近接されている垂直骨格部と、垂直骨格部の突出端部からリヤサイドフレームの方向へ斜めに延在されて後端部が該リヤサイドフレームの後端外側に接合されているパイプ状に形成された傾斜骨格部とを備える衝撃受け部材を、リヤホイールハウスの後部とリヤサイドフレームとリヤクォータパネルとで囲まれた領域に配設し、この衝撃受け部材で車体の側方からの衝撃荷重を受けるようにしたので、車体後部に側面衝突により衝撃荷重が印加された場合、垂直骨格部の圧潰により衝撃荷重が減衰され、更に、減衰された衝撃荷重を傾斜骨格部にガイドされて車体後方へ逃がすことができ、車体に発生する横Gが軽減されるばかりでなく、2列目シートよりも後方の容積空間の変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態による三列シートを備える車両の概略側面図
図2】同、シャーシフレームの骨格構造を示す概略平面図
図3】同、図2のIII-III断面図
図4】同、リヤホイールハウスとリヤサイドフレームとに接合されている衝撃受け部材の斜視図
図5】同、(a)は車体後部に側面衝突の衝撃荷重が印加される状態を示す車両の要部拡大平面図、(b)は側面衝突時の衝撃荷重の印加方向を示す車両の要部拡大平面図
図6】第2実施形態による図5相当の車体の要部拡大平面図
図7】同、図4相当の斜視図
図8】第3実施形態による図5相当の車両の要部拡大平面図
図9】同、図4相当の斜視図
図10】第4実施形態によるシャーシフレームの骨格構造を示す概略平面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づいて本発明の一実施形態を説明する。
【0013】
[第1実施形態]
図1図5に本発明の第1実施形態を示す。図1に示すように、本実施形態に示す車両はモノコックボディのステーションワゴン車であり、車体1に設けた車室2の後部にラゲージルーム2aが確保されている。この車室2内に三列シートが配設されている。最前部の一列目シート3は運転席と助手席とで構成され、二列目シートは例えば3人掛けに設定されている。又、三列目シート5はラゲージルーム2aに、例えば2人掛けとして折り畳み自在に設定されている。
【0014】
この三列目シート5は、リヤホイール6のセンタ(リヤホイールセンタ)6aよりも後方であって、ラゲージルーム2aの前部に配置されている。この三列目シート5が設置されているラゲージルーム2aの前部はリヤホイール6の車軸の上方にあるため一列目シート3と二列目シート4よりも一段高い位置に設定されている。
【0015】
図2に、車室2のフロアパネル7を支持するシャーシフレーム11の骨格構造を示す。尚、図中、Frは車体前方、Reは車体後方、LHは車幅方向左側、RHは車幅方向右側を示す。又、シャーシフレーム11は左右対称の骨格構造を有しているため、対称な部品は同一の符号を付して説明を簡略化する。更に、部品同士の接合はスポット溶接、アーク溶接、レーザ溶接等を適宜選択して行うものとする。
【0016】
シャーシフレーム11は、車体1の前後方向に亘って配設された左右一対のフロントフレーム12を有し、このフロントフレーム12の外側にサイドシル13がほぼ平行に配設されている。更に、このサイドシル13の後端部に、車体後方へ延在するリヤサイドフレーム14が配設されている。尚、サイドシル13の前端にフロントピラー(図示せず)の下端部が接合されている。
【0017】
又、両フロントフレーム12の後端がリヤフロントクロスメンバ15に各々接合されている。更に、このリヤフロントクロスメンバ15の左右両端が、左右一対のサイドシル13の後端部の対向面に接合されている。又、サイドシル13とリヤフロントクロスメンバ15との接合部にリヤサイドフレーム14の前部が接合されており、この両リヤサイドフレーム14の後端にエクステンション17が接合されている。更に、両リヤサイドフレーム14の後端部間が車幅方向左右に延在する第1クロスメンバ19を介して結合されている。尚、この第1クロスメンバ19はリヤスカートの骨格部であっても良い。
【0018】
又、この両エクステンション17に、車幅方向に延在するリヤバンパビーム18が接合されている。更に、図1に示すように、各リヤサイドフレーム14はサイドシル13との接合部から後方へ斜め上方に傾斜されて後輪軸(図示せず)の上方に臨まされてラゲージルーム2aで後方へ水平に延在されている。
【0019】
又、フロントフレーム12の外側面と、これに対向するサイドシル13の前端部との間にトルクボックス20の両端が接合されている。このトルクボックス20は台形状に形成されており、フロントフレーム12側からサイドシル13方向へ斜め後方に延在されている。
【0020】
一方、車体中央部であるフロントフレーム12の中間部がトンネルクロスメンバ21の両端に接合されている。尚、トンネルクロスメンバ21の中央部はフロアトンネル(図示せず)の形状に沿って曲げ形成されており、トランスミッションから車体後方へ延出するプロペラ軸や排気パイプ等が配設されている。更に、フロントフレーム12の先端側がエンジンルームE(図1参照)に臨まされている。
【0021】
又、各リヤサイドフレーム14の外側に、リヤホイール6の上方を覆うリヤホイールハウス22が配設されている。リヤホイールハウス22は車体1に設けられているリヤクォータパネル23の内側に接合されているリヤアーチインナ24と、車室2側に膨出されて設けられたリヤホイールエプロン25とを有し、この両部材24,25が、その対向端縁に形成されたフランジ部26(便宜的に共通の符号で示す)を介して接合されている。
【0022】
一方、各リヤサイドフレーム14はリヤホイールエプロン25の車体内側への膨出形状に沿って湾曲形成され、その湾曲部分のほぼ中央部分間がリヤクロスメンバ27を介して連結されている。
【0023】
図3に示すように、リヤサイドフレーム14は、上方を開口する断面矩形に形成されており、両リヤサイドフレーム14の上面にフロアパネル7が載置接合され、このリヤサイドフレーム14の外側にリヤホイールエプロン25の下端が接合されている。
【0024】
更に、図2図4に示すように、リヤサイドフレーム14とリヤホイールハウス22とリヤクォータパネル23とリヤバンパビーム18とで囲まれた空間に衝撃受け部材31が配設されている。この衝撃受け部材31は、矩形パイプを加工して形成された第1〜第3骨格部31a〜31cで構成されている。
【0025】
第1骨格部31aは、その一端がリヤサイドフレーム14の外側面に接合されて、車体1の側方へ略直角に延在され、その他端がリヤホイールエプロン25に形成されているフランジ部26に接合されている。更に、この第1骨格部31aの側面がリヤホイールエプロン25の後面に沿って形成されて接合されている。尚、第1、第2骨格部31a,31bが本発明の垂直骨格部に対応し、第3骨格部31cが本発明の傾斜骨格部に対応している。
【0026】
一方、第2骨格部31bと第3骨格部31cとは、車幅方向外側へ突出する部位が突き合わされ、その突出段部としての突合せ部31dが接合されている。又、第2骨格部31bの車幅方向内側の端部が、フランジ部26を挟んで第1骨格部31aに対向する面に接合され、一方、第3骨格部31cの端部がリヤサイドフレーム14の後端外側面であって、第1クロスメンバ19に対峙する部位に接合されている。又、衝撃受け部材31の外側頂部である第2骨格部31bと第3骨格部31cとの突合せ部31dがリヤクォータパネル23の内面に接触されている。
【0027】
図2図4に示すように、第1骨格部31aと第2骨格部31bとがフランジ部26を挟んで一体化され、リヤサイドフレーム14の外側面に平面視において第1、第2骨格部31a,31bを短辺、第3骨格部31cを斜辺とする直角三角形の二辺をなす衝撃受け部材31が形成される。
【0028】
次に、このような構成による本実施形態の作用について説明する。図4図5(a)に示すように、衝撃受け部材31の第1骨格部31aは、リヤサイドフレーム14の外側面から車幅方向外方へほぼ直角に延在されてリヤホイールハウス22に形成されたフランジ部26に接合されている。又、第2骨格部31bがフランジ部26を挟んで第1骨格部31aと一体化されていると共に、この両骨格部31a,31bがリヤホイールハウス22に接合されて、直角三角形の短辺をなしている。
【0029】
一方、第2骨格部31bに突合せ部31dを介して接合されている第3骨格部31cの端部がリヤサイドフレーム14に接合されて直角三角形の斜辺をなし、又、突合せ部31dがリヤクォータパネル23の内面に接触されている。
【0030】
図1に示すような三列シートを有するステーションワゴン車等では、三列目シート5がラゲージルーム2aの前部に設置されているため、乗員はリヤホイールセンタ6aよりも後方の位置に着座することになる。
【0031】
このような状態で、図5(a)に示すように、リヤホイールセンタ6aよりも後方、すなわち、三列目シート5のほぼ側面に対し、側方(図においては左側方)から他の車両(以下「衝突車両」と称する)が衝突すると、その衝撃荷重Ftが、リヤクォータパネル23を介して衝撃受け部材31に伝達される。すると、この衝撃荷重Ftは、衝撃受け部材31の第2骨格部31bと第3骨格部31cとの突合せ部31dに入力され、第2骨格部31b側と第3骨格部31cとに分散される。
【0032】
そして、図5(b)に示すように、直角三角形の短辺をなす第1、第2骨格部31a,31bに多くの荷重が印加されるため、それらが圧潰される。更に、この両骨格部31a,31bの圧潰により、それらの間に接合されているフランジ部26に引っ張られてリヤホイールハウス22が塑性変形する。その結果、これらの変形により、衝撃荷重Ftが減衰される。
【0033】
従って、衝突車両が車体1の後部側面に衝突した際の衝撃荷重Ftによって、車体1の後部は、図5(b)に示すように矢印Aの方向へ振られるが、衝撃荷重Ftは第1、第2骨格部31a,31bの圧潰、及びリヤホイールハウス22の変形によって、その一部が吸収されるため、衝撃が緩衝されて車体1に発生する横Gが軽減される。
【0034】
一方、車体1の後部が衝撃荷重Ftを受けてやや振られることで、この衝撃荷重Ftの印加方向がずれる。そのため、衝突車両からの衝撃荷重は第3骨格部31cにガイドされて後方へ逃がされ、後部側面に印加される衝撃荷重は大幅に低減される。又、リヤサイドフレーム14の後端部に接合されている第3骨格部31cの後端は、左右のリヤサイドフレーム14を結合する第1クロスメンバ19の端面に対峙されているため、ラゲージルーム2aの後部も衝突荷重から有効に保護される。
【0035】
その結果、三列目シート5側には最小の衝撃荷重のみが伝達されることとなり、リヤホイールセンタ6aよりも後方のラゲージルーム2aの容積空間の変形が抑制され、三列目シート5に着座する乗員を側面衝突から有効に保護することができる。
【0036】
このように、本実施形態では、リヤホイールハウス22の後部とリヤサイドフレーム14とリヤクォータパネル23とで囲まれた空間に衝撃受け部材31を追加しただけの小型、軽量な構造であるため、低コストで、且つ既存の車体1に対して容易に適用することができ、高い汎用性を得ることができる。その際、第3骨格部31cの後端を接合する左右のリヤサイドフレーム14間を第1クロスメンバ19で接合することで、ラゲージルーム2aの容積空間の変形をより確実に抑制することができる。
【0037】
又、側面衝突時の衝撃荷重Ftを第1、第2骨格部31a,31bの圧潰、及びリヤホイールハウス22の変形にて減衰させ、更には、衝撃荷重を第3骨格部31cにガイドされて車体1の後方へ逃がすような構造にしたので、車体1の後部に側面衝突により衝撃荷重Ftが印加されても、三列目シート5が設置されているラゲージルーム2aの容積空間の変形が抑制され、三列目シート5に着座する乗員を側面衝突から有効に保護することができる。
【0038】
又、リヤホイールハウス22のリヤアーチインナ24とリヤホイールエプロン25とが接合されているフランジ部26を挟んで、第1骨格部31aと第2骨格部31bとを接合させるようにしたので、衝撃受け部材31にフランジ部26を逃げるための溝などを形成する必要がなく、構造の簡素化を実現することができる。更に、第1、第2骨格部31a,31bに分割されているため、これらをリヤホイールハウス22に確実に接合させることができる。又、フランジ部26が第1、第2骨格部31a,31b間に接合されているため、側面衝突時に、このリヤホイールハウス22が三列目シート5側へ突出されてしまうことを防止することができる。
【0039】
[第2実施形態]
図6図7に本発明の第2実施形態を示す。上述した第1実施形態では、衝撃受け部材31の第3骨格部31cの端部をリヤサイドフレーム14の後部外側に直接接合したが、本実施形態では、第3骨格部31cの端部を、骨格スペーサ部31eを介してリヤサイドフレーム14の後端に接合させるようにしたものである。
【0040】
第1実施形態で説明したように、衝撃受け部材31の第3骨格部31cは、衝突車両が車体1の後部側面に衝突した際の衝撃荷重の印加方向を変更させて車体1の後方へ逃がす機能を有している。この衝撃荷重を車体1の後方へ逃がすための最適な、リヤサイドフレーム14と第3骨格部31cとで挟まれた角度(第3骨格部31cの傾斜角度)θは車種毎に相違する。
【0041】
車種によっては、リヤホイールハウス22の後端面からリヤサイドフレーム14の後端までのスパンでは、この傾斜角度θを所望の角度(鋭角)に設定することかできない場合が考えられる。
【0042】
このような場合、骨格スペーサ部31eを、第3骨格部31cの端面とリヤサイドフレーム14との間に介装して接合させることで、所望の傾斜角度θを容易に設定することができる。その結果、既存の車体1の構造を変更することなく、衝撃荷重Ft、すなわち衝突車両を所望の方向へ導いて、車体1の後方へ逃がすことができる。
【0043】
[第3実施形態]
図8図9に本発明の第3実施形態を示す。本実施形態では、衝撃受け部材31が配設されているリヤホイールハウス22の後部とリヤサイドフレーム14とリヤクォータパネル23とで囲まれた領域(余剰空間)に、衝撃吸収部材41を介装したものである。尚、第1実施形態と同一の構成部品については同一の符号を付して説明を簡略化する。
【0044】
衝撃受け部材31が配設されている領域の空間容積は限られており、車種によっては充分な剛性を確保することが困難な場合が考えられる。このような場合、その余剰空間に衝撃吸収部材41を配設し、この衝撃吸収部材41によって衝撃受け部材31に伝達される衝撃荷重Ftの一部を吸収することで、衝撃受け部材31に伝達される衝撃荷重を減衰させる。
【0045】
この衝撃吸収部材41は、直角三角形の短辺となる第1変形部41aと長辺となる第2変形部41bとを有し、この両変形部41a,41bの端部が、衝撃受け部材31の第3骨格部31cの両端に接合されている。この場合、上端と下端との一方、或いは双方にフランジ部を曲げ形成することで断面係数を高めるようにしても良い。
【0046】
又、本実施形態による衝撃吸収部材41は、衝撃受け部材31に伝達される衝撃荷重を減衰させることを目的としているため、衝撃受け部材31の剛性に基づいて衝撃吸収部材41の材質、板厚等を適宜選択して、所望の剛性を設定する。
【0047】
更に、図9に示すように、衝撃吸収部材41の上面と底面との一方、或いは双方(図においては上面のみを示す)に、この衝撃吸収部材41を閉塞する蓋体41cを接合させることで、衝撃吸収部材41の剛性を調整するようにしても良い。又、この蓋体41cで衝撃吸収部材41の上面と底面との一方、或いは双方を閉塞することで、走行時における車体1の下方、及び後方から伝播される騒音を低減させることができる。
【0048】
このような構成では、衝突車両が車体1の後部側面に衝突し、その衝撃荷重Ftがリヤクォータパネル23を介して、衝撃受け部材31の突合せ部31dに伝達されて、第1、第2骨格部31a,31bが圧潰されると、それに伴い、衝撃吸収部材41が変形されて衝撃荷重Ftが減衰される。
【0049】
更に、本実施形態の別態様として、衝撃吸収部材41内に衝撃吸収材を充填するようにしても良い。この場合、衝撃吸収部材41の剛性は衝撃吸収材を含めて設定する。
【0050】
[第4実施形態]
図10に本発明の第4実施形態を示す。本実施形態では、左右に一対の衝撃受け部材31に設けた互いに対向する第1骨格部31aの端部間に位置する左右のリヤサイドフレーム14間を第2クロスメンバ42を介して連結したものである。
【0051】
又、このリヤサイドフレーム14内の第1骨格部31aとクロスメンバ42との端部が対向する位置に、セパレータ14aが接合された状態で配設されており、このセパレータ14aを介して第1骨格部31aとクロスメンバ42とが連結されている。
【0052】
尚、ラゲージルーム2aのフロアパネル7にスペアタイヤ収納部や、ハイブリッド車のバッテリ収納部のような凹部が形成されている場合、クロスメンバ42は、この凹部との干渉を回避する形状に形成されている。
【0053】
左右の第1骨格部31a間を、第2クロスメンバ42及びセパレータ14aを介して連結させることで、衝撃受け部材31に衝撃荷重Ftが印加された際に、リヤサイドフレーム14の変形が防止され、第1、第2骨格部31a,31bを確実に圧潰させて衝撃荷重を効率良く吸収させることができる。
【0054】
その結果、ラゲージルーム2aの容積空間の変形が確実に防止され、三列目シート5に着座する乗員を側面衝突からより有効に保護することができる。
【0055】
尚、本発明は、上述した実施形態に限るものではなく、例えば、対象となる車両はステーションワゴン車やハッチバック車に限らずセダン車であっても良い。又、第3、第4実施形態は第2実施形態に適用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0056】
1…車体、
2…車室、
2a…ラゲージルーム、
5…三列目シート、
6…リヤホイール、
6a…リヤホイールセンタ、
14…リヤサイドフレーム、
14a…セパレータ、
19…第1クロスメンバ、
22…リヤホイールハウス、
23…リヤクォータパネル、
24…リヤアーチインナ、
25…リヤホイールエプロン、
26…フランジ部、
31…衝撃受け部材、
31a…第1骨格部、
31b…第2骨格部、
31c…第3骨格部、
31d…突合せ部、
31e…骨格スペーサ部、
41…衝撃吸収部材、
41a…第1変形部、
41b…第2変形部、
41c…蓋体、
42…第2クロスメンバ、
Ft…衝撃荷重、
θ…傾斜角度
図1
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