(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
コイル部材が装着されたアウタ筒部材と磁石部材が装着されたインナ軸部材とが弾性部材で連結されており、該コイル部材への通電による電磁気力が該磁石部材に作用して該インナ軸部材と該アウタ筒部材との間に軸方向の駆動力が及ぼされるようになっている電磁式アクチュエータにおいて、
前記アウタ筒部材には、前記コイル部材を軸方向で挟んで固定的に支持せしめる第一支持部が設けられていると共に、該コイル部材への給電用の端子を備えた合成樹脂製の環状部材が収容されており、該環状部材を軸方向で挟んで固定的に支持せしめる第二支持部において該環状部材に対して軸方向両側から狭持力を及ぼす部分の軸方向対向面が、該第一支持部において該コイル部材に対して軸方向両側から狭持力を及ぼす部分の軸方向対向面を外周側に外れて位置せしめられており、該第二支持部が該第一支持部による挟持力の及ぼされない並列構造をもって設けられていることを特徴とする電磁式アクチュエータ。
コイル部材が装着されたアウタ筒部材と磁石部材が装着されたインナ軸部材とが弾性部材で連結されており、該コイル部材への通電による電磁気力が該磁石部材に作用して該インナ軸部材と該アウタ筒部材との間に軸方向の駆動力が及ぼされるようになっている電磁式アクチュエータにおいて、
前記アウタ筒部材には、前記コイル部材を軸方向で挟んで固定的に支持せしめる第一支持部が設けられていると共に、該コイル部材への給電用の端子を備えた合成樹脂製の環状部材が収容されており、該環状部材を軸方向で挟んで固定的に支持せしめる第二支持部が、該第一支持部による挟持力の及ぼされない並列構造をもって設けられており、且つ、
該アウタ筒部材には、軸方向で離隔して第一段付部と第二段付部が形成されており、該第一段付部によって該コイル部材を軸方向で挟んで支持する該第一支持部の軸方向一方の支持面が構成されていると共に、該第二段付部によって該環状部材を軸方向で挟んで支持する該第二支持部の軸方向一方の支持面が構成されていることを特徴とする電磁式アクチュエータ。
コイル部材が装着されたアウタ筒部材と磁石部材が装着されたインナ軸部材とが弾性部材で連結されており、該コイル部材への通電による電磁気力が該磁石部材に作用して該インナ軸部材と該アウタ筒部材との間に軸方向の駆動力が及ぼされるようになっている電磁式アクチュエータにおいて、
前記アウタ筒部材には、前記コイル部材を軸方向で挟んで固定的に支持せしめる第一支持部が設けられていると共に、該コイル部材への給電用の端子を備えた合成樹脂製の環状部材が収容されており、該環状部材を軸方向で挟んで固定的に支持せしめる第二支持部が、該第一支持部による挟持力の及ぼされない並列構造をもって設けられており、且つ、
該第一支持部によって固定的に支持された該コイル部材と、該第二支持部によって固定的に支持された該環状部材とが、軸方向でずれた位置に配設されていることを特徴とする電磁式アクチュエータ。
コイル部材が装着されたアウタ筒部材と磁石部材が装着されたインナ軸部材とが弾性部材で連結されており、該コイル部材への通電による電磁気力が該磁石部材に作用して該インナ軸部材と該アウタ筒部材との間に軸方向の駆動力が及ぼされるようになっている電磁式アクチュエータにおいて、
前記アウタ筒部材には、前記コイル部材を軸方向で挟んで固定的に支持せしめる第一支持部が設けられていると共に、該コイル部材への給電用の端子を備えた合成樹脂製の環状部材が収容されており、該環状部材を軸方向で挟んで固定的に支持せしめる第二支持部が、該第一支持部による挟持力の及ぼされない並列構造をもって設けられており、且つ、
該アウタ筒部材の軸方向の少なくとも一方の側には、環状の押え部材が配設されて、該押え部材の外周縁部が該アウタ筒部材に対して固定されており、該押え部材が軸方向内方に突出して、該コイル部材を軸方向で挟んで支持する該第一支持部の軸方向一方の支持面が構成されていることを特徴とする電磁式アクチュエータ。
前記コイル部材よりも前記環状部材が外周側に配設されていると共に、前記押え部材の内周側部分において該コイル部材を挟んで支持する前記第一支持部の軸方向一方の支持面が構成されていると共に、該押え部材の外周側部分において該環状部材を挟んで支持する前記第二支持部の軸方向一方の支持面が構成されている請求項4に記載の電磁式アクチュエータ。
前記アウタ筒部材の前記第一支持部において前記コイル部材を軸方向で挟んで固定的に支持せしめる部分と、該アウタ筒部材の前記第二支持部において前記環状部材を軸方向で挟んで固定的に支持せしめる部分とには、それぞれシールゴムが介在されている請求項1〜5に記載の電磁式アクチュエータ。
請求項1〜8の何れか一項に記載の電磁式アクチュエータを含んで構成されており、前記インナ軸部材における軸方向の少なくとも一方の端部に対して付加マス部材が設けられていることを特徴とする能動型制振装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題とするところは、可動子と固定子との相互間の振動に対して環状部材の固定力の低下などを効果的に防止することのできる、新規な構造の電磁式アクチュエータおよび能動型制振装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
【0009】
本発明の第一の態様は、コイル部材が装着されたアウタ筒部材と磁石部材が装着されたインナ軸部材とが弾性部材で連結されており、該コイル部材への通電による電磁気力が該磁石部材に作用して該インナ軸部材と該アウタ筒部材との間に軸方向の駆動力が及ぼされるようになっている電磁式アクチュエータにおいて、前記アウタ筒部材には、前記コイル部材を軸方向で挟んで固定的に支持せしめる第一支持部が設けられていると共に、該コイル部材への給電用の端子を備えた合成樹脂製の環状部材が収容されており、該環状部材を軸方向で挟んで固定的に支持せしめる第二支持部
において該環状部材に対して軸方向両側から狭持力を及ぼす部分の軸方向対向面が、
該第一支持部において該コイル部材に対して軸方向両側から狭持力を及ぼす部分の軸方向対向面を外周側に外れて位置せしめられており、該第二支持部が該第一支持部による挟持力の及ぼされない並列構造をもって設けられているものである。
【0010】
本態様に従う構造とされた電磁式アクチュエータによれば、アウタ筒部材において、コイル部材を固定する第一支持部と環状部材を固定する第二支持部とを実質的に独立させることで、挟持による固定力を各別に設定することが可能になる。それ故、例えば磁石部材との間に惹起される軸方向の駆動力が及ぼされることとなる第一支持部では大きな固定力を確保しつつ、第二支持部では、端子接続用に必要とされる程度の固定力に抑えて、樹脂のへたりや樹脂の損傷などの問題を回避することもできる。
【0011】
本発明の第二の態様は、
コイル部材が装着されたアウタ筒部材と磁石部材が装着されたインナ軸部材とが弾性部材で連結されており、該コイル部材への通電による電磁気力が該磁石部材に作用して該インナ軸部材と該アウタ筒部材との間に軸方向の駆動力が及ぼされるようになっている電磁式アクチュエータにおいて、前記アウタ筒部材には、前記コイル部材を軸方向で挟んで固定的に支持せしめる第一支持部が設けられていると共に、該コイル部材への給電用の端子を備えた合成樹脂製の環状部材が収容されており、該環状部材を軸方向で挟んで固定的に支持せしめる第二支持部が、該第一支持部による挟持力の及ぼされない並列構造をもって設けられており、且つ、該アウタ筒部材には、軸方向で離隔して第一段付部と第二段付部が形成されており、該第一段付部によって該コイル部材を軸方向で挟んで支持する該第一支持部の軸方向一方の支持面が構成されていると共に、該第二段付部によって該環状部材を軸方向で挟んで支持する該第二支持部の軸方向一方の支持面が構成されているものである。
【0012】
本態様に従う構造とされた電磁式アクチュエータによれば、
第一支持部および第二支持部における各軸方向一方の支持面を、アウタ筒部材の段付形状によって効率的に形成することができる。
【0013】
本発明の第三の態様は、
コイル部材が装着されたアウタ筒部材と磁石部材が装着されたインナ軸部材とが弾性部材で連結されており、該コイル部材への通電による電磁気力が該磁石部材に作用して該インナ軸部材と該アウタ筒部材との間に軸方向の駆動力が及ぼされるようになっている電磁式アクチュエータにおいて、前記アウタ筒部材には、前記コイル部材を軸方向で挟んで固定的に支持せしめる第一支持部が設けられていると共に、該コイル部材への給電用の端子を備えた合成樹脂製の環状部材が収容されており、該環状部材を軸方向で挟んで固定的に支持せしめる第二支持部が、該第一支持部による挟持力の及ぼされない並列構造をもって設けられており、且つ、該第一支持部によって固定的に支持された該コイル部材と、該第二支持部によって固定的に支持された該環状部材とが、軸方向でずれた位置に配設されているものである。
【0014】
本態様に従う構造とされた電磁式アクチュエータによれば、
アウタ筒部材において、第一支持部と第二支持部とを容易に設けることが可能になる。また、軸方向でずらしたことで、コイル部材の外周面に対するアウタ筒部材による軸直角方向の位置決め部と、環状部材の外周面に対するアウタ筒部材による軸直角方向の位置決め部とを、それぞれ確保することも容易となる。
【0015】
本発明の第四の態様は、
コイル部材が装着されたアウタ筒部材と磁石部材が装着されたインナ軸部材とが弾性部材で連結されており、該コイル部材への通電による電磁気力が該磁石部材に作用して該インナ軸部材と該アウタ筒部材との間に軸方向の駆動力が及ぼされるようになっている電磁式アクチュエータにおいて、前記アウタ筒部材には、前記コイル部材を軸方向で挟んで固定的に支持せしめる第一支持部が設けられていると共に、該コイル部材への給電用の端子を備えた合成樹脂製の環状部材が収容されており、該環状部材を軸方向で挟んで固定的に支持せしめる第二支持部が、該第一支持部による挟持力の及ぼされない並列構造をもって設けられており、且つ、該アウタ筒部材の軸方向の少なくとも一方の側には、環状の押え部材が配設されて、該押え部材の外周縁部が該アウタ筒部材に対して固定されており、該押え部材が軸方向内方に突出して、該コイル部材を軸方向で挟んで支持する該第一支持部の軸方向一方の支持面が構成されているものである。
【0016】
本態様に従う構造とされた電磁式アクチュエータによれば、
このような押え部材を採用することで、アウタ筒部材において、例えば段差状のコイル部材支持部を設けて開口部を小径にする必要もなくなり、アウタ筒部材の端部の開口を大きくして、部材組付時における内部の目視を容易にすることも可能になる。
【0017】
本発明の第五の態様は、前記
第四の態様に係る電磁式アクチュエータにおいて、
前記コイル部材よりも前記環状部材が外周側に配設されていると共に、前記押え部材の内周側部分において該コイル部材を挟んで支持する前記第一支持部の軸方向一方の支持面が構成されていると共に、該押え部材の外周側部分において該環状部材を挟んで支持する前記第二支持部の軸方向一方の支持面が構成されているものである。
【0018】
本態様に従う構造とされた電磁式アクチュエータによれば、
第一支持部と第二支持部とで、押え部材を共用して部品点数の減少と構造の簡略化が図られ得る。なお、本態様は、例えば前記第二の態様と組み合わせて採用することも可能であり、それによって第一段付部と押え部材の内周側部分とによって第一支持部が構成されると共に、第二段付部と押え部材の外周側部分とによって第二支持部が構成され得る。
【0019】
本発明の第六の態様は、前記第一〜第五の何れか一つの態様に係る電磁式アクチュエータにおいて、
前記アウタ筒部材の前記第一支持部において前記コイル部材を軸方向で挟んで固定的に支持せしめる部分と、該アウタ筒部材の前記第二支持部において前記環状部材を軸方向で挟んで固定的に支持せしめる部分とには、それぞれシールゴムが介在されているものである。
【0020】
本態様に従う構造とされた電磁式アクチュエータによれば、
シールゴムを介在させることで、部材寸法や組付位置などの誤差に起因する挟持固定力のばらつきを軽減することが可能になる。また、シールゴムを介在させることで挟持力を吸収することができることから、挟持力が意図せず過大になることも回避され得る。
【0021】
本発明の第七の態様は、前記第一〜第六の何れか一つの態様に係る電磁式アクチュエータにおいて、
前記アウタ筒部材には端子用窓部が形成されており、前記環状部材に設けられた前記給電用の端子を備えた接続部が、該端子用窓部を通じて外部に露呈されている一方、該端子用窓部の軸方向両側に位置して、前記第二支持部における該環状部材を軸方向で挟んで固定的に支持せしめる部分が設けられていると共に、該第二支持部による該環状部材の軸方向両側の支持部にそれぞれ環状のシールゴムが設けられて、該端子用窓部がシールされているものである。
【0022】
本態様に従う構造とされた電磁式アクチュエータによれば、
給電用の端子を配するために設けられた端子用窓部を通じての水や塵などの異物の侵入が効果的に防止される。特に環状部材の軸方向両側の支持部に環状のシールゴムを設けることで、アウタ筒部材による環状部材の挟持力の緩衝的な調節作用とシール作用とを併せて享受できる。
【0023】
本発明の第八の態様は、前記
第一〜第七の
何れか一つの態様に係る電磁式アクチュエータにおいて、
前記コイル部材においてコイル用巻線が巻回されたボビンに対して前記環状部材が一体的に形成されているものである。
【0024】
本態様に従う構造とされた電磁式アクチュエータによれば、
給電用の端子を備えた環状部材とコイル用ボビンとの部品共通化による構造の簡略化が図られると共に、コイル用巻線から給電用の端子への通電ラインも、ボビンから環状部材にいたる態様で容易に配索できる。
【0025】
本発明の第九の態様は、前記第一〜第八の何れか一つの態様に係る電磁式アクチュエータを含んで構成されており、前記インナ軸部材における軸方向の少なくとも一方の端部に対して付加マス部材が設けられていることを特徴とする能動型制振装置である。
【発明の効果】
【0026】
本発明に従う構造とされたアクチュエータによれば、コイル部材を支持する第一支持部と環状部材を支持する第二支持部とが相互に独立して設けられていることから、固定子と可動子との相互間の振動が第一支持部に及ぼされた場合でも、第二支持部による環状部材の支持力には影響を与えることがなく、第二支持部による環状部材の挟持状態を安定して維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0029】
図1には、本発明の一実施形態である電磁式アクチュエータ10を備えた、自動車用の能動型制振装置12が示されている。かかる能動型制振装置12は、主振動系となる制振対象部材である自動車ボデーなどに固定的に取り付けられるアウタハウジング部材14に対して、マス部材16が収容状態で配設されて、弾性部材としての板ばね18,20で弾性連結されることにより、副振動系となるマス−バネ系が構成されている。また、アウタハウジング部材14には固定子22が取り付けられている一方、上記マス部材16がインナ軸部材24と磁石部材としての可動子26とを含んで構成されていると共に、インナ軸部材24に可動子26が取り付けられており、固定子22に対して可動子26が、軸方向に相対変位可能な状態で内外挿配置されている。以下の説明において、特に記載がない限り、上下方向および軸方向とは、電磁式アクチュエータ10の駆動作用方向であって、能動型制振装置12による能動的制振効果が発揮される振動の入力方向となる、
図1中の上下方向を言う。
【0030】
より詳細には、インナ軸部材24は、上下方向へストレートに延びるロッド形状とされている。そして、可動子26が、インナ軸部材24に対して固定的に組み付けられている。
【0031】
可動子26は、永久磁石28の上下両側にインナヨークとしての上ヨーク30と下ヨーク32を重ね合わせた構造のアーマチャとされている。これら永久磁石28と上下ヨーク30,32には、それぞれ中心軸上を軸方向に延びる貫通孔34,36,38が形成されており、インナ軸部材24が貫通孔34,36,38に挿通されている。そして、インナ軸部材24に螺着された固定ナット40により、永久磁石28と上下ヨーク30,32に対して重ね合わせ方向の締付力が及ぼされてインナ軸部材24に固定されている。
【0032】
かかる可動子26を構成する永久磁石28は、上下両面が軸直角方向に広がる平面とされた略円環板形状を有しており、軸方向に着磁されることで上下両面にN/Sの各一方の磁極が形成されている。なお、永久磁石28は、フェライト系磁石やアルニコ系磁石なども採用可能であるが、好適には希土類コバルト系磁石が採用される。
【0033】
一方、上下ヨーク30,32は、鉄などの強磁性体で形成されており、互いに同じ部材を用いることができる。上下ヨーク30,32は、永久磁石28への重ね合わせ面が、永久磁石28に対応した平坦面形状とされており、永久磁石28に対して広い面で略密接状態に重ね合わされるようになっている。
【0034】
なお、本実施形態では、永久磁石28の外径寸法と略等しい外径寸法をもって上下ヨーク30,32の最外周部分が形成されている。かかる永久磁石28の軸方向両端面に設定された磁極により、上下ヨーク30,32の最外周部分の外周面に対して、N/Sの各一方の磁極が与えられるようになっている。
【0035】
また、上下ヨーク30,32の各軸方向端面には、板ばね18,20が重ね合わされている。板ばね18,20には、中心軸上にインナ軸部材24が貫通されており、板ばね18,20の中央部分が、上下ヨーク30,32の各一方に対して重ね合わされて固定されている。
【0036】
なお、上下ヨーク30,32は、軸方向外方に向かって次第に小径となる外周面形状とされており、軸方向に変位せしめられた際の板ばね18,20への干渉が回避されるようになっている。
【0037】
一方、アウタハウジング部材14は、大径の略円筒形状とされるアウタ筒部材42を備えており、当該アウタ筒部材42がインナ軸部材24と同軸的に配設されている。そして、アウタ筒部材42の上下の開口部に対して、第一の蓋部材44と第二の蓋部材46がそれぞれ重ね合わされている。これら第一及び第二の蓋部材44,46の外周縁部がアウタ筒部材42の上下の開口部に対して固定されることにより、閉鎖状内部空間としての収容領域48を内部に備えたアウタハウジング部材14が構成されている。
【0038】
また、アウタ筒部材42の軸方向下部は大径とされており、アウタ筒部材42の軸方向中間部分に位置する第二段付部としての段差部50と、該段差部50の外周縁部から下方に向かって延びる大径筒部52が形成されている。なお、大径筒部52の周上の一部(
図1中の右方)には、端子用窓部53が貫通して形成されており、大径筒部52の内外が端子用窓部53を通じて連通されている。そして、大径筒部52の下端には、アウタ筒部材42の下側開口部に位置するフランジ状部54が形成されている。また、フランジ状部54の外周端部には、下方(第二の蓋部材46側)に向かって突出する円筒形状のかしめ固定片としてのかしめ部56が一体的に形成されている。
【0039】
さらに、アウタ筒部材42の軸方向両側に組み付けられる第一及び第二の蓋部材44,46は、それぞれ有底の略段付筒形状とされており、中央部分が軸方向外方に膨らんだ逆皿形又は皿形とされている。これにより、上下の板ばね18,20の干渉を回避しつつ、アウタハウジング部材14内での可動子26の軸方向変位が許容されるようになっている。
【0040】
すなわち、第一の蓋部材44は、中央に上底壁部58を備えているとともに、当該上底壁部58の外周端部からは、下方に延び出す筒状の周壁部60が形成されている。そして、この周壁部60の下端部からは、外周側に向かって円環形状に広がる上フランジ状部62が延び出している。一方、第二の蓋部材46は、中央に下底壁部64を備えているとともに、当該下底壁部64の外周端部からは、上方に延び出す筒状の周壁部66が形成されている。そして、この周壁部66の上端部からは、外周側に向かって円環形状に広がる下フランジ状部68が延び出している。
【0041】
なお、第一の蓋部材44における上フランジ状部62の外周端部には、下方(アウタ筒部材42側)に向かって突出する円筒形状の筒状部70が一体的に形成されている。また、各蓋部材44,46の内面は薄肉のゴム層で覆われていてもよく、例えば上下底壁部58,64の中央部分には、インナ軸部材24の軸方向変位を緩衝的に制限するストッパゴムが形成されてもよい。
【0042】
そして、第一の蓋部材44における筒状部70にアウタ筒部材42の上端部分が圧入状態で挿入されることなどにより、アウタ筒部材42の上端開口部に対して第一の蓋部材44が固定されている。すなわち、アウタ筒部材42に対して段付形状の第一の蓋部材44が固定的に取り付けられており、第一の蓋部材44における上フランジ状部62がアウタ筒部材42における第一段付部とされている。したがって、アウタ筒部材42における第一段付部(上フランジ状部)62と第二段付部(段差部)50とは、軸方向で所定の離隔距離を有している。一方、アウタ筒部材42のかしめ部56に、第二の蓋部材46が内挿されて、かしめ部56の下端を内周側に屈曲させることにより、アウタ筒部材42の下端開口部に対して第二の蓋部材46が固定されている。
【0043】
このようにして形成されたアウタハウジング部材14の収容領域48内において、アウタ筒部材42には、固定子22が収容されている。固定子22は、全体として厚肉の略円筒形状を呈しており、アウタ筒部材42における軸方向の略中央部分に位置して内周面に沿うようにして固定的に組み付けられている。
【0044】
詳細には、固定子22は、上下二段に配されたコイル部材72,72を備えている。コイル部材72,72は、樹脂製のボビン74,74に導電性の金属線材を巻回してなるコイル76,76に対して、アウタヨーク78,78が組み付けられた構造とされて、全体として厚肉大径の略円筒形状を呈している。
【0045】
アウタヨーク78は、鉄などの強磁性体で形成されており、コイル76を軸方向外面から外周面にわたって覆うように重ね合わされた第一のヨーク80と、コイル76の軸方向内面を覆うように重ね合わされた第二のヨーク82とを備えている。
【0046】
また、コイル76の軸方向両面に重ね合わされた第一のヨーク80と第二のヨーク82の各内周縁部は、コイル76の内周面を覆うように上下両方からそれぞれ所定長さで軸方向に延びている。そして、コイル76の内周面上で軸方向で上下から接近した第一のヨーク80と第二のヨーク82の各端部は、軸方向に所定距離を隔てて対向せしめられている。
【0047】
これにより、上下の各コイル76,76の周囲には、コイル76,76への通電によって生じる磁束を導く磁路が、第一及び第二のヨーク80,82を含むアウタヨーク78によって形成されている。また、かかる磁路上には、コイル76,76の内周面側に位置して、第一のヨーク80と第二のヨーク82の軸方向対向面間に磁気ギャップ84,84が形成されている。かかる磁気ギャップ84,84は、略一定の間隔で周方向の全周に亘って連続して広がっている。
【0048】
そして、外部からコイル76,76に給電されることにより、コイル76,76の周囲に磁束が発生すると共に、発生した磁束がアウタヨーク78,78で構成された磁路によって導かれて、磁気ギャップ84,84の軸方向両側に磁極が形成されるようになっている。
【0049】
なお、固定子22における上下の磁気ギャップ84,84の軸方向間距離は、永久磁石28の軸方向厚さ寸法と略等しくされており、上下ヨーク30,32において磁極が形成される最外周部分の外周面が、磁気ギャップ84,84に対して径方向で隙間を隔てて対向配置されている。
【0050】
これにより、固定子22のコイル76,76への通電によって上下の磁気ギャップ84,84に磁界が生ぜしめられると、上下一方のヨーク30(32)の最外周部分に対して軸方向の磁気吸引力が及ぼされると共に、上下他方のヨーク32(30)の最外周部分に対して軸方向の磁気排斥力が及ぼされるようになっている。これらの磁力の作用に基づいて、可動子26には、固定子22のコイル76,76への通電方向に応じて、何れかの軸方向への駆動力が作用せしめられるのであり、コイル76,76への通電間隔や通電方向を制御することにより、所定の周期で可動子26ひいてはインナ軸部材24に対して軸方向の加振力を及ぼすことができる。
【0051】
なお、本実施形態では、上側のコイル部材72のコイル76と、下側のコイル部材72のコイル76は、線材がボビン74,74に対して互いに逆向きに巻回されており、通電によって逆向きの磁束を生じるようになっている。かかる上下のコイル部材72,72のコイル76,76は、相互に連続した線材で構成されていても良い。
【0052】
そして、このようなコイル部材72,72を有する固定子22は、アウタ筒部材42に対して下方から内挿されて組み付けられており、コイル部材72,72が、アウタ筒部材42の軸方向中間部分に配されている。
【0053】
ここにおいて、上下のコイル部材72,72は略対称な構造とされており、一体形成されたボビン74,74を有する一体構造とされている。特に、下側のボビン74には、外周側に突出する環状部材としての給電用スペーサ86が一体形成されている。この給電用スペーサ86は、全体として大径の円環形状とされており、例えば硬質の合成樹脂により形成されている。当該給電用スペーサ86の周上の一箇所には、上下のコイル76,76に対して外部から給電するための給電用端子88を備えた接続部90が形成されている。
【0054】
かかる給電用スペーサ86は、アウタ筒部材42の大径筒部52内に配されており、その上端面が、アウタ筒部材42の段差部50に重ね合わされている。なお、給電用スペーサ86の内径寸法は、コイル部材72,72の外径寸法と略等しくされているとともに、その径方向幅寸法は、アウタ筒部材42における段差部50の径方向幅寸法と略等しいか僅かに大きくされている。これにより、給電用スペーサ86の略全体が、コイル部材72,72よりも外周側において、アウタ筒部材42における大径部分に収容されている。すなわち、本実施形態では、コイル部材72,72が、アウタ筒部材42における段差部50よりも上方の小径とされた部分に配設されている一方、給電用スペーサ86が、アウタ筒部材42における段差部50よりも下方の大径とされた部分に配設されている。したがって、コイル部材72,72と給電用スペーサ86とは、アウタ筒部材42内において軸方向でずれた位置に配設されている。
【0055】
更にまた、給電用スペーサ86の接続部90が、大径筒部52に貫通された端子用窓部53に挿通されており、給電用端子88を含む先端部分がアウタ筒部材42の外周面上に突出して外部に露呈されている。
【0056】
そして、かかる構造とされた固定子22(上下のコイル部材72,72)および給電用スペーサ86が、収容領域48内で、第一の押え部材92および第二の押え部材94により軸方向で挟まれて固定的に支持されている。
【0057】
第一の押え部材92は、全体として略筒状とされており、上下方向に直線状に延びるストレート状部96を備えている。そして、ストレート状部96の上端部分には内周側に屈曲して、円環状に広がる内フランジ部98が形成されている。
【0058】
かかる第一の押え部材92の外径寸法はアウタ筒部材42の内径寸法より僅かに小さくされており、第一の押え部材92が、アウタ筒部材42の上方開口部に挿入されている。そして、第一の押え部材92における内フランジ部98の上面に板ばね18の外周部分が重ね合わされて、その上部から第一の蓋部材44が組み付けられている。すなわち、板ばね18の外周部分が、第一の蓋部材44の上フランジ状部62と第一の押え部材92の内フランジ部98とにより上下で挟まれて支持されている。
【0059】
また、第一の押え部材92のストレート状部96の下端が上側のコイル部材72の上端面に当接している。すなわち、上側のコイル部材72の上端部分が、第一の押え部材92および板ばね18を介して第一の蓋部材44の上フランジ状部62に重ね合わされている。これにより、固定子22(上下のコイル部材72,72)および給電用スペーサ86の上方への移動が、第一の押え部材92ひいては第一の蓋部材44の上フランジ状部62により制限されている。
【0060】
さらに、アウタ筒部材42には、下側の開口部分から第二の押え部材94が嵌め入れられて固定的に組み付けられている。第二の押え部材94は、全体として略円筒形状とされており、アウタ筒部材42における大径筒部52と略同じか僅かに小さい軸方向長さを有している。また、第二の押え部材94は、軸方向で上端に位置する部分が環状の押え板部100とされていると共に、軸方向下端に位置する部分が環状の固定板部102とされている。更にまた、これら押え板部100と固定板部102とが、それぞれの内周端部において筒状部104により相互につながっている。なお、押え板部100の径方向幅寸法は固定板部102の径方向幅寸法より小さくされており、押え板部100が第二の押え部材94の内周側に位置している一方、固定板部102が押え板部100よりも外周側まで広がっている。
【0061】
この第二の押え部材94の上端面は、固定子22(上下のコイル部材72,72)における下側のコイル部材72の下端面に重ね合わされている。これにより、固定子22(上下のコイル部材72,72)および給電スペーサ86の下方への移動が、第二の押え部材94の押え板部100により制限されている。要するに、上下のコイル部材72,72が、上方においては、第一の押え部材92を介して第一の蓋部材44の上フランジ状部62に重ね合わされているとともに、下方においては、第二の押え部材94の押え板部100に重ね合わされている。したがって、これら第一の蓋部材44の上フランジ状部62および第二の押え部材94の押え板部100により、コイル部材72,72を軸方向で挟んで固定的に支持せしめる第一支持部が構成されており、上フランジ状部62と押さえ板部100のそれぞれが、コイル部材72,72を支持する支持部とされている。それ故、本実施形態では、第一段付部(上フランジ状部)62の下端面によって、コイル部材72,72を軸方向で挟んで支持する第一支持部の軸方向一方の支持面が構成されているとともに、押え板部100の上端面によって、第一支持部の軸方向他方の支持面が構成されている。
【0062】
一方、第二の押え部材94の固定板部102は、その外周縁部においてアウタ筒部材42におけるフランジ状部54に重ね合わされており、アウタ筒部材42のかしめ部56によって、第二の蓋部材36における下フランジ状部68および板ばね20の外周縁部と共にフランジ状部54にかしめ固定されている。
【0063】
そして、このようにアウタ筒部材42の下側開口部に第二の押え部材94が組み付けられることで、第二の押え部材94がアウタ筒部材42に対して内周側に突出して配設されており、第二の押え部材94の筒状部104とアウタ筒部材42の大径筒部52との径方向間に給電用スペーサ86が配されている。さらに、給電用スペーサ86の下面が、第二の押え部材94における押え板部100よりも外周側において、固定板部102の上面に重ね合わされている。
【0064】
すなわち、給電用スペーサ86は、上面が、アウタ筒部材42の段差部50における下面に重ね合わされているとともに、下面が、固定板部102の上面に重ね合わされている。したがって、給電用スペーサ86を軸方向で挟んで固定的に支持せしめる第二支持部が、アウタ筒部材42の段差部50と第二の押え部材94の固定板部102とから構成されており、段差部50と固定板部102のそれぞれが、給電用スペーサ86を支持する支持部とされている。それ故、本実施形態では、第二段付部(段差部)50の下面により、給電用スペーサ86を軸方向で挟んで支持する第二支持部の軸方向一方の支持面が構成されているとともに、固定板部102の上面により、第二支持部の軸方向他方の支持面が構成されている。
【0065】
上記のように、本実施形態では、コイル部材72,72を軸方向で支持する第一支持部が上フランジ状部62と押え板部100とから構成されている一方、第二支持部が段差部50と固定板部102とから構成されている。
即ち、コイル部材72,72が装着されたアウタ筒部材42には、第一及び第二の押え部材92,94と第一及び第二の蓋部材44,46とが装着されることによって、コイル部材72,72を軸方向で挟んで固定的に支持せしめる第一支持部と環状部材としての給電用スペーサ86を軸方向で挟んで固定的に支持せしめる第二支持部とがそれぞれ設けられている。ここにおいて、固定板部102において給電用スペーサ86を支持する部分は押え板部100よりも外周側にあり、すなわち、第二支持部が第一支持部よりも外周側に位置している。これにより、第一支持部がコイル部材72,72を挟持する挟持力と、第二支持部が給電用スペーサ86を挟持する挟持力とは互いに独立しており、相互にその挟持力が及ぼされるものでなく、第一支持部と第二支持部とは並列構造をもって設けられている。
【0066】
ここで、第二支持部において、給電用スペーサ86を軸方向で挟持する部分には、シールゴム106が介在せしめられている。すなわち、本実施形態では、アウタ筒部材42における段差部50の下面および第二の押え部材94における固定板部102の上面において、環状のシールゴム106a,106bが固着されている。あるいは、かかるシールゴム106a,106bは、給電用スペーサ86の上下面に固着されていてもよい。
【0067】
なお、給電用スペーサ86から延び出す接続部90が挿通される端子用窓部53は、アウタ筒部材42の段差部50と第二の押え部材94の固定板部102との軸方向間に位置しており、換言すれば、端子用窓部53の軸方向両側に段差部50と固定板部102が位置している。そして、端子用窓部53の軸方向両側において、段差部50と給電用スペーサ86との間、および固定板部102と給電用スペーサ86との間がシールゴム106a,106bで封止されることにより、端子用窓部53がシールされて、収容領域48が密閉されるようになっている。
【0068】
また、第一支持部においてコイル部材72,72を挟持する部分、すなわち第一の押え部材92の下面や第二の押え部材94における押え板部100の上面、または上下のコイル部材72,72における上下面に同様のシールゴムが固着されてもよい。更にまた、アウタ筒部材42とコイル部材72,72との径方向間に同様のシールゴムが設けられてもよい。
【0069】
以上の如き構造とされたアウタハウジング部材14に対して、上下の板ばね18,20の外周縁部が固定されていることにより、可動子26を有するインナ軸部材24が、軸方向両端付近において、板ばね18,20を介して、アウタハウジング部材14によって弾性的に支持されている。なお、インナ軸部材24の長さ寸法は、第一および第二の蓋部材44,46のそれぞれの対向面間の軸方向寸法より短くされており、インナ軸部材24の全体が収容領域48内に収容されている。また、板ばね18,20には、うずまき状に延びる複数の貫通窓が形成されており、軸直角方向の大きなばね剛性を確保しつつ、軸方向のばね特性が調節されている。
【0070】
なお、本実施形態では、上下の板ばね18,20の弾性により、可動子26が固定子22に対して軸方向の初期位置に保持されており、外部からの給電による駆動力が解除された際には速やかに初期位置に戻るようになっている。
【0071】
このような構造とされた電磁式アクチュエータ10は、主振動系たる制振対象部材に対してアウタハウジング部材14のアウタ筒部材42が、図示しない装着部を介して、またはアウタ筒部材42の一部からなる装着部を介して、固定的に取り付けられて装着されることにより、能動型制振装置12を構成する。そして、かかる装着状態下、固定子22のコイル76,76への給電を、軸方向の制振すべき振動に対応して制御することにより、副振動系を構成する可動子26およびインナ軸部材24を固定子22およびアウタハウジング部材14に対して軸方向で加振変位せしめて目的とする制振効果を得ることができる。
【0072】
以上の如き構造とされた電磁式アクチュエータ10では、コイル部材72,72を支持する第一支持部と、給電スペーサ86を支持する第二支持部とが、相互に独立して設けられている。それ故、コイル76,76への通電に伴い、可動子26と固定子22との間に軸方向の加振力が発生する場合にも、第一支持部に及ばされる力が第二支持部には及ぼされないようになっている。また、固定子22および給電スペーサ86をアウタ筒部材42へ組み付けるに際しても、第一支持部において比較的大きな固定力をもってコイル部材72,72を組み付けつつ、第二支持部において比較的小さな固定力をもって給電スペーサ86を組み付けることも可能となる。これらにより、合成樹脂製とされる給電スペーサ86のへたりや破損が効果的に防止されて、固定子22および給電スペーサ86の固定力が安定して維持され得る。
【0073】
特に、本実施形態では、アウタ筒部材42が第一段付部(上フランジ状部)62と第二段付部(段差部)50を備えているとともに、第一および第二の押え部材92,94を採用することで、コイル部材72,72および給電スペーサ86をこれら段付部62,50および押え部材92,94との間で巧く挟持することができて、上記の如き第一支持部や第二支持部が簡単な構成をもって実現され得る。
【0074】
また、第二支持部において給電スペーサ86を支持する部分には、シールゴム106a,106bが設けられていることから、給電スペーサ86に及ぼされる力がシールゴム106a,106bで吸収されて、給電スペーサ86に及ぼされる力をより小さくすることができる。さらに、かかるシールゴム106a,106bを設けることにより、収容領域48のシール性も確保されることから、水や塵などの異物の侵入が効果的に防止され得る。
【0075】
さらに、本実施形態では、上下のコイル部材72,72を構成するボビン74,74と給電スペーサ86とが一体的に形成されており、構造が簡単とされるとともに部品点数の増加も抑制され得る。
【0076】
更にまた、本実施形態では、コイル部材72,72と給電用スペーサ86とが軸方向でずれて配設されていることから、アウタ筒部材42においてコイル部材72,72の外周面が当接する部分と、アウタ筒部材42において給電用スペーサ86の外周面が当接する部分とを別個に設けることができて、コイル部材72,72と給電用スペーサ86における軸直角方向での位置決め効果も安定して発揮され得る。
【0077】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、固定子を構成するコイル部材は、上下二段に重ね合わされて設けられた構造に限定されず、1つだけが設けられていても良いし、3つ以上を軸方向に多段に重ね合わせることも可能である。また、前記実施形態における上下のコイル部材72,72では、互いに逆巻きのコイル76,76が採用されていたが、同じ方向に巻かれた上下コイルを採用することも可能である。
【0078】
一方、可動子についても、採用される固定子の構造に応じて、コイル部材への通電によって生ぜしめられる磁力作用で軸方向の駆動力を生ずる各種構造が採用可能である。例えば、複数段に永久磁石とヨークを重ね合わせて複数段の磁極を設定することも可能である。また、永久磁石は必須でなく、強磁性材からなる可動子を採用し、コイル部材に生ぜしめられる磁極に対する磁気吸引力を利用して軸方向駆動力を生ずる構造を採用しても良い。
【0079】
さらに、前記実施形態では、固定子22側にコイル部材72,72が配されていると共に、可動子26側に永久磁石28が配されていたが、それと反対に、可動子側にコイル部材を配すると共に、固定子側に永久磁石を配することも可能である。このような構造は、例えば特開2000−234645号公報に示されている構成を採用することによって実現され得る。
【0080】
また、前記実施形態では、副振動系のマス部材16として可動子26(永久磁石28および上下ヨーク30,32)およびインナ軸部材24が用いられていたが、例えばWO2010/116704号公報に記載されているように、インナ軸部材を軸方向外方に突出させて、その突出先端部分に対して付加マスを装着することも可能である。更にまた、かかる公報に示されているように、上下の板ばねに加えて、インナ軸部材とアウタ筒部材を相互に弾性連結する付加ばねをゴム弾性体などで構成して採用することも可能である。
【0081】
更にまた、前記実施形態では、本発明に従う構造とされた電磁式アクチュエータ10を能動型制振装置12へ適用した態様を例示したが、例えばエンジンマウントやボデーマウントなどとして用いられる能動型防振装置への適用も可能である。具体的には、例えば特開2000−337427号公報に示されている公知の能動型防振装置におけるアクチュエータとして、上述の如き電磁式アクチュエータ10を適用することによって実現され得る。即ち、流体封入式防振装置本体は、内部に非圧縮性流体が封入された流体室を備えていると共に、かかる流体室の壁部の一部が圧力変動を及ぼす加振部材とされる。それ故、前記実施形態に記載の電磁式アクチュエータ10において、例えばアウタハウジング部材14を流体封入式防振装置の取付部材へ固定して、インナ軸部材24に及ぼされる軸方向の加振駆動力を流体封入式防振装置の加振部材に及ぼすことができる。より具体的には、例えば、前記実施形態に記載の電磁式アクチュエータ10において、インナ軸部材24と一体的に設けられて軸方向に延びる出力部材を採用し、かかる出力部材を、アウタハウジング部材14の第一の蓋部材44を貫通して軸方向外方に突出させて駆動力を外部に取り出すことにより、流体封入式防振装置本体の加振部材を加振駆動せしめることが可能である。
【0082】
なお、前記実施形態では、アウタ筒部材42内において、コイル部材72,72と給電用スペーサ86が軸方向でずれた位置に設けられていたが、これらは軸方向で部分的にずれていてもよいし、相互に完全に重なっていてもよい。
【0083】
また、前記実施形態では、シールゴム106a,106bが、第二支持部において、給電用スペーサ86を挟んだ軸方向両側に設けられていたが、軸方向一方のみに設けられてもよい。尤も、かかるシールゴムは、本発明において必須なものではない。
【0084】
さらに、前記実施形態では、アウタ筒部材42が、軸方向両側が開口された筒形状とされていたが、例えばアウタ筒部材は、軸方向の一方の開口を塞ぐ底壁を備えたカップ形状の如き有底の筒形状であってもよい。
【0085】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものである。