特許第6681316号(P6681316)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6681316ガス化発電システムにおける高温での酸成分除去方法およびその装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6681316
(24)【登録日】2020年3月25日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】ガス化発電システムにおける高温での酸成分除去方法およびその装置
(51)【国際特許分類】
   C10K 1/20 20060101AFI20200406BHJP
   C10K 1/12 20060101ALI20200406BHJP
   C10J 3/46 20060101ALI20200406BHJP
【FI】
   C10K1/20ZAB
   C10K1/12
   C10J3/46 J
【請求項の数】10
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-224971(P2016-224971)
(22)【出願日】2016年11月18日
(65)【公開番号】特開2018-80299(P2018-80299A)
(43)【公開日】2018年5月24日
【審査請求日】2019年4月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100060874
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(72)【発明者】
【氏名】濱 利雄
(72)【発明者】
【氏名】杉村 枝里子
(72)【発明者】
【氏名】澤田 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】筱岡 卓也
【審査官】 森 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−135491(JP,A)
【文献】 特開2009−242714(JP,A)
【文献】 特開2011−202119(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10K 1/12
C10K 1/20
C10J 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス化材料を部分燃焼ガス化するガス化工程と、前記ガス化工程から出るガス化ガスを粗粉体捕集処理するサイクロン処理工程と、前記サイクロン処理工程から出る粗粉体除去済みガス化ガスを除塵処理するバグフィルタ処理工程と、前記バグフィルタ処理工程から出る除塵済みガス化ガスをCO吸収・改質処理するCO吸収・改質工程と、前記CO吸収・改質工程から出る改質ガスを利用して発電を行う発電工程とを含むガス化発電システムにおいて、
前記ガス化工程の後かつ前記サイクロン処理工程の前で、脱塩・脱硫機能を有するサイクロン上流側添加剤を、前記発電工程から出るガスを熱回収後に添加剤キャリアガスとして用いて、ガス化ガスに供給すること、および、
前記CO吸収・改質工程で用いるCO吸収剤をガス温度域450〜700℃の温度域でCO吸収させ、CO吸収量が飽和に達した時、改質触媒層昇温用の酸素または空気の流れを改質触媒層の直上流からCO吸収剤充填層の直上流へ切り替え、同吸収剤充填層を800〜950℃の温度域に昇温して同吸収剤からCOを離脱させることを特徴とする、
ガス化発電方法における高温での酸成分除去方法。
【請求項2】
前記サイクロン上流側添加剤がCO吸収・除去機能をも有する、請求項1に記載のガス化発電方法における高温での酸成分除去方法。
【請求項3】
前記サイクロン上流側添加剤の平均粒径が100〜1000μmであることを特徴とする、請求項1または2に記載のガス化発電方法における高温での酸成分除去方法。
【請求項4】
前記サイクロン上流側添加剤が、焼成ドロマイト、消石灰、アルミン酸ソーダおよび重曹からなる群から選ばれることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のガス化発電方法における高温での酸成分除去方法。
【請求項5】
前記サイクロン処理工程の後かつ前記バグフィルタ処理工程の前で、脱塩・脱硫機能を有しかつ前記サイクロン上流側添加剤と同一であっても異なっていてもよいサイクロン下流側添加剤であって、焼成ドロマイト、消石灰、アルミン酸ソーダおよび重曹からなる群から選ばれる添加剤を、前記発電工程から出るガスを熱回収後に添加剤キャリアガスとして用いて、粗粉体除去済みガス化ガスに供給することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のガス化発電方法における高温での酸成分除去方法。
【請求項6】
前記サイクロン処理工程において前記添加剤を含む粗粉体を捕集して、該捕集粗粉体を前記ガス化材料と共に前記ガス化工程に供給することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のガス化発電方法における高温での酸成分除去方法。
【請求項7】
前記CO吸収・改質工程で用いるCO吸収剤がCaO、Ca(OH)および焼成ドロマイトからなる群から選ばれることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のガス化発電方法における高温での酸成分除去方法。
【請求項8】
前記改質ガスを熱回収処理後にNaOH水溶液によってCO吸収処理し、生じたNaCOを回収・除去することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載のガス化発電方法における高温での酸成分除去方法。
【請求項9】
ガス化材料を部分燃焼ガス化するガス化炉と、前記ガス化炉の下流に設置されて同炉から出るガス化ガスを粗粉体捕集処理するサイクロンと、前記サイクロンの下流に設置されてここから出る粗粉体除去済みガス化ガスを除塵処理するバグフィルタと、前記バグフィルタの下流に設置されてここから出る除塵済みガス化ガスをCO吸収・改質処理するCO吸収・改質炉と、前記CO吸収・改質炉の下流に設置されて同炉から出る改質ガスを利用して発電を行う発電設備とを含むガス化発電システムにおいて、
前記ガス化炉から前記サイクロンへの流路に、脱塩・脱硫機能を有する添加剤を供給するサイクロン上流側添加剤供給ラインが設けられ、同供給ラインに前記発電設備から来るキャリアガスラインが接続され、前記CO吸収・改質炉のCO吸収剤充填層の直上流にCO吸収量が飽和に達した時に改質炉昇温用の酸素または空気を改質触媒層の直上流からCO吸収剤充填層の直上流へ切り替える酸素または空気供給ラインが接続されていることを特徴とする、
ガス化発電システムにおける高温での酸成分除去装置。
【請求項10】
前記サイクロンから前記バグフィルタへの流路に、脱塩・脱硫機能を有する添加剤を供給するサイクロン下流側添加剤供給ラインが設けられ、同供給ラインに前記発電設備から来るキャリアガスラインが接続されていることを特徴とする、
請求項9に記載のガス化発電システムにおける高温での酸成分除去装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物をガス化・改質して得られる可燃性ガスを利用してガスタービンやガスエンジンで発電を行うシステムにおいて、高温のガス化ガス中の酸成分除去を高い除去率で達成する方法および該方法を実施するために用いられる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化対応への対処が強く求められ、廃棄物を利用した発電においても、ごみ焼却発電(BTG発電)の蒸気温度高温化による発電効率向上や、廃棄物をガス化・改質した可燃性ガスを利用してガスタービンやガスエンジンで発電を行うシステムが研究されている。
【0003】
このような発電システムにおいて、不燃物や各種の金属類、特に金属アルミニウムを含む廃棄物のガス化は、一般的には700℃以下、通常は500〜650℃程度で行われる。ガス化されたガスは、改質炉において未燃のチャーやタール成分が水蒸気によって可燃性ガスに改質される。改質反応は、無触媒で行う場合には1000〜1200℃程度で、触媒を用いる場合は800〜1000℃程度で行われる。
【0004】
たとえば特許文献1には、ガス化炉、高温集塵設備、タール分解設備、精製設備等で構成されるガス化発電システムが記載されている。このガス化発電システムでは、ガス化炉で生成した800〜900℃のガスが、セラミックフィルタ等を備えた高温集塵設備で除塵された後、タール分などの分解触媒を備えたタール分解設備に送給される。
【0005】
廃棄物をガス化したガス中には、未燃のチャーやタールの他にHやCH、CO等の可燃性ガス、COやダスト、廃棄物に含まれるハロゲンやSに由来するHClやSO、SOガス等が含まれる。
【0006】
触媒を用いて改質反応を行う場合には、ニッケル系や貴金属系の改質触媒が用いられるが、ガス化したガス中に含まれるHClやSO、SOガス等によって改質触媒が被毒される。このような、改質触媒の被毒を防止するためには、改質炉の上流において被毒性のガス成分を除去する必要がある。しかし、特許文献1に記載の高温集塵設備では除塵を行うだけで脱塩・脱硫は行われないため、タール分などの分解触媒の性能が低下するおそれがあった。
【0007】
従来、乾式法を適用したごみ焼却システム等の脱塩・脱硫技術として、排ガス流に消石灰(Ca(OH))や重曹(NaHCO)等の粉体薬剤を吹込み、固体状の反応生成物をバグフィルタで除去する技術が知られている。この技術は150〜200℃の排ガス温度域に適用され、温度が低いほど除去効率が良い。また、このような技術を適用して熱分解ガスを精製する技術が開示されている(特許文献2)。特許文献2に開示されている技術の一つは、熱分解ガスの精製を、ダスト除去用のバグフィルタと、脱塩用の第2バグフィルタにより行うものである。ダスト除去済熱分解ガスは第2バグフィルタの手前で消石灰や酸化カルシウム(CaO)、炭酸カルシウム、重曹、炭酸ナトリウム(NaCO)などのアルカリ剤と混合されて、HClが第2バグフィルタで固体の反応生成物として除去されるもので、熱分解温度域に近い300〜600℃で適用される。しかし、この温度域ではHClが炭酸ガスと競争することになり、高いHCl除去率を得るためには多くの薬剤を必要とする。また、ダスト除去用のバグフィルタでは脱塩・脱硫が行われないため、熱分解ガスの精製が不十分となるおそれがあった。
【0008】
また、炭酸ナトリウムとアルミナゾルの混合物を乾燥した後、粉砕・焼成して製造するアルミン酸ナトリウム(NaA1O)系のハロゲン化物吸収剤が開示されている(特許文献3)。 このハロゲン化物吸収剤の粒径は250〜500μmで、特許文献3では固定床流通式反応装置を用いて400℃でハロゲン化物除去性能の評価を行っている。しかし、 500℃未満の温度域で、廃棄物の熱分解ガス煙道に固定床流通式反応装置を設置して乾式脱塩・脱硫を行うと、ダストやチャーにタール分が付着してこれが固定床流通式反応装置内のハロゲン化吸収剤に固着し、目詰りによる圧力損失の上昇により安定な運転ができない。例えば、油成分(タール成分)としてポリスチレンを用いた濾過試験では、ポリスチレンがフィルターに付着すること、フィルターに付着したポリスチレンは500℃以上の温度で加熱処理すると油分が除去されて圧力損失が元に戻ることが報告されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−037012号公報
【特許文献2】特開2002−130628号公報
【特許文献3】特許第3571219号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】小川彰一、他、セラミックフィルタによるポリスチレン熱分解ガスの炭化水素成分の捕集・再生特性、粉体工学会誌、Vo1.40No.11、p19−25、2003
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上述した従来技術の問題を解消すべく、高温域において高い脱塩・脱硫性能を達成することができ、また、ダストやチャーにタール分が付着して装置の目詰りによる圧力損失の上昇を来すことがない、ガス化発電システムにおける高温での酸成分除去方法およびその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記目的を達成すべくなされたものであって、下記の態様を含む。
【0013】
(1) ガス化材料を部分燃焼ガス化するガス化工程と、前記ガス化工程から出るガス化ガスを粗粉体捕集処理するサイクロン処理工程と、前記サイクロン処理工程から出る粗粉体除去済みガス化ガスを除塵処理するバグフィルタ処理工程と、前記バグフィルタ処理工程から出る除塵済みガス化ガスをCO吸収・改質処理するCO吸収・改質工程と、前記CO吸収・改質工程から出る改質ガスを利用して発電を行う発電工程とを含むガス化発電システムにおいて、
前記ガス化工程の後かつ前記サイクロン処理工程の前で、脱塩・脱硫機能を有するサイクロン上流側添加剤を、前記発電工程から出るガスを熱回収後に添加剤キャリアガスとして用いて、ガス化ガスに供給すること、および、
前記CO吸収・改質工程で用いるCO吸収剤をガス温度域450〜700℃、好ましくは540〜640℃の温度域でCO吸収させ、CO吸収量が飽和に達した時、改質触媒層昇温用の酸素または空気の流れをCO吸収剤充填層の直上流へ切り替え、同吸収剤充填層を800〜950℃、好ましくは850〜900℃の温度域に昇温して同吸収剤からCOを離脱させることを特徴とする、
ガス化発電方法における高温での酸成分除去方法。
【0014】
(2) 前記サイクロン上流側添加剤がCO吸収・除去機能をも有する、前記(1)に記載のガス化発電方法における高温での酸成分除去方法。
【0015】
(3) 前記サイクロン上流側添加剤の平均粒径が100〜1000μmであることを特徴とする、前記(1)または(2)に記載のガス化発電方法における高温での酸成分除去方法。
【0016】
(4) 前記サイクロン上流側添加剤が、焼成ドロマイト、消石灰、アルミン酸ソーダおよび重曹からなる群から選ばれることを特徴とする、前記(1)〜(3)のいずれか1に記載のガス化発電方法における高温での酸成分除去方法。
【0017】
(5) 前記サイクロン処理工程の後かつ前記バグフィルタ処理工程の前で、脱塩・脱硫機能を有しかつ前記サイクロン上流側添加剤と同一であっても異なっていてもよいサイクロン下流側添加剤であって、焼成ドロマイト、消石灰、アルミン酸ソーダおよび重曹からなる群から選ばれる添加剤を、前記発電工程から出るガスを熱回収後に添加剤キャリアガスとして用いて、粗粉体除去済みガス化ガスに供給することを特徴とする、(1)〜(4)のいずれか1に記載のガス化発電方法における高温での酸成分除去方法。
【0018】
(6) 前記サイクロン処理工程において前記添加剤を含む粗粉体を捕集して、該捕集粗粉体を前記ガス化材料と共に前記ガス化工程に供給することを特徴とする、(1)〜(5)のいずれか1に記載のガス化発電方法における高温での酸成分除去方法。
【0019】
(7) 前記CO吸収・改質工程で用いるCO吸収剤がCaO、Ca(OH)および焼成ドロマイトからなる群から選ばれることを特徴とする、(1)〜(6)のいずれか1に記載のガス化発電方法における高温での酸成分除去方法。
【0020】
(8) 前記改質ガスを熱回収処理後にNaOH水溶液によってCO吸収処理し、生じたNaCOを回収・除去することを特徴とする、(1)〜(7)のいずれか1に記載のガス化発電方法における高温での酸成分除去方法。
【0021】
(9) ガス化材料を部分燃焼ガス化するガス化炉と、前記ガス化炉の下流に設置されて同炉から出るガス化ガスを粗粉体捕集処理するサイクロンと、前記サイクロンの下流に設置されてここから出る粗粉体除去済みガス化ガスを除塵処理するバグフィルタと、前記バグフィルタの下流に設置されてここから出る除塵済みガス化ガスをCO吸収・改質処理するCO吸収・改質炉と、前記CO吸収・改質炉の下流に設置されて同炉から出る改質ガスを利用して発電を行う発電設備とを含むガス化発電システムにおいて、
前記ガス化炉から前記サイクロンへの流路に、脱塩・脱硫機能を有する添加剤を供給するサイクロン上流側添加剤供給ラインが設けられ、同供給ラインに前記発電設備から来るキャリアガスラインが接続され、前記CO吸収・改質炉のCO吸収剤充填層の直上流にCO吸収量が飽和に達した時に改質炉昇温用の酸素または空気をCO吸収剤充填層へ切り替える酸素または空気供給ラインが接続されていることを特徴とする、
ガス化発電システムにおける高温での酸成分除去装置。
【0022】
(10) 前記サイクロンから前記バグフィルタへの流路に、脱塩・脱硫機能を有する添加剤を供給するサイクロン下流側添加剤供給ラインが設けられ、同供給ラインに前記発電設備から来るキャリアガスラインが接続されていることを特徴とする、
前記(9)に記載のガス化発電システムにおける高温での酸成分除去装置。
【0023】
粒子の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置によって測定した値である。
【0024】
本明細書および特許請求の範囲全体を通して、ガス化材料を部分燃焼ガス化することで得られたガスを[ガス化ガス]という。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、サイクロン処理工程の前で、脱塩・脱硫機能を有するサイクロン上流側添加剤をガス化ガスに供給することによって、さらにはバグフィルタ処理工程の前で、脱塩・脱硫機能を有するサイクロン下流側添加剤をガス化ガスに供給することによって、450〜700℃といった高温度域のガス化ガスに対し、高い脱塩・脱硫性能を達成することができ、改質触媒の被毒を防止することができる。
【0026】
また、上記のような添加剤を用いることによってダストやチャーにタール分が付着して装置の目詰りによる圧力損失の上昇を来すという問題を防ぐことができる。
【0027】
さらに、CO吸収・改質工程で用いるCO吸収剤をガス温度域450〜700℃でCO吸収させ、CO吸収量が飽和に達した時、改質触媒層昇温用の酸素または空気の流れをCO吸収剤充填層の直上流へ切り替え、同吸収剤充填層を800〜900℃の温度域に昇温して同吸収剤からCOを離脱させることによって、ガス化ガス中のCOを効率的にかつ永続的に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、本発明の実施例を示すガス化発電システムのフロー図である。
図2図2は、脱塩・脱硫剤と脱塩・脱硫性能の関係を示すグラフおよび表である。
図3-1】図3−1は、各種脱塩・脱硫剤と脱塩・脱硫性能の関係を示すグラフである(温度:550℃)。
図3-2】図3−2は、各種脱塩・脱硫剤と脱塩・脱硫性能の関係を示すグラフである(温度:600℃)。
図3-3】図3−3は、各種脱塩・脱硫剤と脱塩・脱硫性能の関係を示すグラフである(温度:650℃)。
【発明を実施するための形態】
【0029】
添付の図面に基づいて本発明の実施例を示す。ただしこれは本発明を限定するものではない。
【0030】
初めに、ガス化発電システムについて図1に従って説明をする。
【0031】
ガス化発電システムは、ガス化材料を部分燃焼ガス化するガス化炉1と、ガス化炉1の下流に設置されて同炉から出るガス化ガスを除塵するバグフィルタ3と、バグフィルタ3の下流に設置されて除塵済みのガスを改質処理するCO吸収・改質炉4と、CO吸収・改質炉4の下流に設置されて同炉から出る改質ガスを利用して発電を行う発電設備5とを含む。
【0032】
ガス化炉1からバグフィルタ3への流路には、サイクロン2が設置され、サイクロン2の上流側流路に、脱塩・脱硫機能を有し好ましくはさらに脱CO機能をも有する添加剤を添加剤容器8から供給するサイクロン上流側添加剤供給ライン6が接続されている。また、サイクロン2からバグフィルタ3への流路に、脱塩・脱硫機能を有し好ましくはさらに脱CO機能をも有する添加剤を添加剤容器10から供給するサイクロン下流側添加剤供給ライン7が設けられている。
【0033】
サイクロン上流側添加剤供給ライン6およびサイクロン下流側添加剤供給ライン7の各始端部には、発電設備5から低温ボイラー13、除湿器14、昇圧機15およびタンク16を介してキャリアガスライン9が接続されている。
【0034】
前記CO吸収・改質炉4のCO吸収剤充填層の直上流に、CO吸収量が飽和に達した時に改質炉昇温用の酸素または空気の流れをCO吸収剤充填層へ切り替える酸素または空気供給ライン19が接続されている。同ライン19は通常はCO吸収・改質炉4の触媒充填層の直上流に昇温用の酸素または空気を供給する。
【0035】
つぎに、図1のフロー図に従って本発明による、ガス化発電方法における高温での酸成分除去方法を工程ごとに具体的に説明する。
ガス化工程
廃棄物、RDF、木質チップなどのガス化材料をガス化炉1において部分燃焼ガス化する。ガス化炉1には炉底から酸素および水蒸気が供給される。
【0036】

サイクロン処理工程
ガス炉1の炉頂から出るガス化ガスはサイクロン2へ送られ、ガス化ガス中の粒子は平均粒径100μm以上の粗粉体と平均粒径100μm未満の微粉体とに分けられる。サイクロン2に入るガスの温度は700℃以下、好ましくは550〜650℃であり、サイクロン2を出るガスの温度は550〜650℃である。
【0037】
サイクロン2の上流側流路にサイクロン上流側添加剤供給ライン6から脱塩・脱硫機能を有する添加剤が吹き込まれる。この添加剤は、好ましくは脱塩・脱硫機能に加えてCO吸収・除去機能をも有する。これは700℃以下において塩化物や硫酸塩に変換され得るものであって、好ましくは焼成ドロマイト、消石灰、アルミン酸ソーダおよび重曹からなる群から選ばれる。前記添加剤の平均粒径は、好ましくは100〜1000μm、より好ましくは300〜600μmである。コスト面では焼成ドロマイトが好ましく、脱塩・脱硫率の面ではアルミン酸ソーダが好ましい。この実施例では、数百μmの平均粒径を有する焼成ドロマイトを添加剤容器8からライン6によってサイクロン上流へ供給した。
【0038】
サイクロン2の上流側流路に脱塩・脱硫機能を有し、好ましくはCO吸収・除去機能をも有する添加剤を吹き込むことによって、ガス化ガスを脱塩・脱硫処理し、好ましくは脱炭酸処理することができると共に、サイクロン2内に付着したダストやタールの自浄作用を行うことができ、下流のバグフィルタにおける圧力損失を抑え、その運転を支障なく行うことができる。前記サイクロンによって平均粒径100〜1000μmの粗粉体添加剤の一部または全部、ダスト、タールを底部で回収し、この回収物を前記ガス化材料と共に前記ガス化炉1に供給する。これにより下流のCO吸収・改質炉4におけるタールの改質を補完することができる。
【0039】

バグフィルタ処理工程
ついでサイクロン6から出る粗粉体除去済みガス化ガスは、同ガスを除塵処理するバグフィルタ3へ送られる。該粗粉体除去済みガス化ガスは平均粒径100μm未満の粒子を含む。
【0040】
サイクロン2からバグフィルタ3への流路に、サイクロン下流側添加剤供給ライン7によって、脱塩・脱硫機能を有する添加剤が吹き込まれる。この添加剤は、好ましくは脱塩・脱硫機能脱に加えてCO吸収・除去機能をも有する。この添加剤は、700℃以下において塩化物や硫酸塩に変換され得るものであって、好ましくは焼成ドロマイト、消石灰、アルミン酸ソーダおよび重曹からなる群から選ばれる。前記添加剤の平均粒径は、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下である。コスト面では焼成ドロマイトが好ましく、脱塩・脱硫率の面ではアルミン酸ソーダが好ましい。サイクロン下流側添加剤はサイクロン上流側添加剤と同種でも異種でもよい。この実施例では、20μm以下の平均粒径を有する焼成ドロマイトを添加剤タンク10からサイクロン下流側添加剤供給ライン7によってサイクロン下流側へ供給した。
【0041】
サイクロン2の下流側流路に脱塩・脱硫機能を有し、好ましくはCO吸収・除去機能をも有する添加剤を吹き込むことによって、粗粉体除去済みガス化ガスを脱塩・脱硫処理し、好ましくは脱炭酸処理することができる。特に脱塩・脱硫処理によって、下流のCO吸収・改質炉4において汎用されるNi系改質触媒の寿命を延ばすことができる。
【0042】
該添加剤の平均粒径は、脱塩、脱硫の効果を高めるために、好ましくは20μm以下である。サイクロン下流側添加剤に公知の濾過助剤を併用することもできる。
【0043】
粒子の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置によって測定した値である。
【0044】
この実施例では、バグフィルタ3として、タール分を含むダストの濾布への付着を防止し、濾布表面のケーキ層の剥離性をよくするためにプレコートバグフィルタを用いる。プレコートバグフィルタに入るガスの温度は550〜650℃であり、同バグフィルタを出るガスの温度は、放熱などにより540〜640℃程度に下がる。プレコートバグフィルタにおいて圧力損失が大きくなったとき、濾布表面のケーキ層をパルス・ジェット方式によって払い落とし、その後、サイクロン下流側添加剤、あるいは同添加剤に濾過助剤を併用したものを短時間で、濾布表面にプレコートする。プレコート時の圧力損失は0.5〜0.6kPaを目処とする。濾布表面のケーキ層の払い落としは、圧力損失が好ましくは1.5〜1.8kPa(153.0〜183.5mmHO)の範囲にあるときに行う。
【0045】
プレコートの量は、ガス中のHCl+SOの3当量を約20分間程度で吹き込む。プレコートに要する時間と定常運転時間との総和で約3.5時間を1サイクルとするのが目安である。パルス・ジェットによる払い落としは、好ましくはバグの圧力損失制御によって行われる。
【0046】

CO吸収・改質工程
ガス化ガスは、バグフィルタ3で除塵された後、CO吸収・改質炉4へ送られる。CO吸収・改質炉4の上部にはCO吸収剤が充填され、下部には改質触媒が充填されている。CO吸収剤としては、450〜700℃、好ましくは540〜640℃の温度域でCO吸収による炭酸塩化が進み、800〜950℃、好ましくは850〜900℃の温度域で脱炭酸すなわちCO脱離が起こる化合物が用いられる。CO吸収剤の例としては、CaO、Ca(OH)、焼成ドロマイト(CaO・MgO)などが挙げられ、この実施例ではCO吸収剤としてCaOを用いた。
【0047】
酸素または空気供給ライン19の流路切替えによるCO吸収剤からのCO脱離について説明をする。
1)通常のCO吸収運転時にはガス化ガスの温度域は450〜700℃、好ましくは540〜640℃であり、CO吸収剤の温度もこの温度域に保持されている。CO吸収剤としてCaOを用いる場合、
CaO+CO → CaCO
の反応に従ってCOが吸収剤により吸収除去される。このようにガス化ガス中のCOを除去することによって下記のシフト反応が右側へ進みやすくなる。
【0048】
CO+HO → CO+H
この状態では昇温用酸素または空気は酸素または空気供給ライン19の通常流路によって改質触媒層の直上流へ供給されている。
2)CO吸収量が飽和に達した時、通常運転時に触媒充填層の昇温に用いていた酸素または空気を、酸素または空気供給ライン19の流路切替えによって、CO吸収剤充填層の直上流へ供給し、同吸収剤を800〜950℃、好ましくは850〜900℃の温度域に昇温する。この温度域ではCO吸収剤の炭酸化物が熱分解してCOが同吸収剤から脱離する。
【0049】
CO吸収・改質炉4において酸素または空気の注入による昇温は、タール成分やH、CO、CHの酸化反応熱によって生じる。
【0050】
CO吸収剤のCO吸収量が飽和に達すると、高温ボイラー11の下流に設けられてガス化ガス中のCO濃度を示す下流側CO分析計18の値が上昇し始めるので、上述のように昇温用酸素または空気をCO吸収剤充填層の直上流へ供給する。同吸収剤が800〜950℃、好ましくは850〜900℃の温度域に昇温すると、CaCOが分解をし始め、生じたCOが下流側へ流れる。この時はガス化ガス中のCOの濃度が一時的に上昇するので、シフト反応は促進されない。CO吸収・改質炉4の上流に設けられてガス化ガス中のCO濃度を示す上流側CO分析計17と前記下流側CO分析計18とによってそれぞれ示されるCO濃度が接近すると、昇温用酸素または空気の流れを改質触媒層の直上流へ戻して、同触媒充填層の温度を450〜700℃、好ましくは540〜640℃の範囲に下げる。
【0051】
その後は上記1)と2)の運転が繰り返される。
【0052】
CO吸収剤充填層によってCOを除去することで、改質触媒充填層における下記シフト反応を促進させることができる。
【0053】
タールの代表例としてトルエンを想定すると、CO吸収・改質炉4において起こる主な反応は下記のとおりである。
【0054】
i) C+9O → 7CO+4HO ・・ 酸化反応
ii) C+7HO → 7CO+11H ・ 改質反応
iii) CO+HO → CO+H ・・ ・・ シフト反応
iv) その他、酸素が過剰に存在する場合には、H、CO、CH等の酸化反応も起こる。
【0055】

冷却塔処理
CO吸収・改質炉4の底部から出る850〜900℃の高温ガスは、高温ボイラー11へ送られてここで熱回収処理された後、温度170〜180℃で冷却塔12へ送られる。冷却塔12内にはNaOH水溶液が循環されており、これによってガス化ガス中のCOが吸収され、生じたNaCO塩が回収・除去される。したがって、温暖化効果ガスは排出されない。
【0056】

発電工程
冷却塔12を出た温度55〜60℃の低温ガスは、ガスタービンやガスエンジンを備えた発電設備5へ送られ、ここで発電に利用される。
【0057】

キャリアガス
発電設備5から排出される温度400℃のガスは次いで低温ボイラー13によって熱回収処理された後、一部は170〜180℃で大気に放出され、残部はキャリアガスライン9によって除湿器14、昇圧機15およびタンク16を介してサイクロン上流側添加剤供給ライン6およびサイクロン下流側添加剤供給ライン7の各始端部へ送られ、サイクロン上流側添加剤およびサイクロン下流側添加剤のキャリアガス(ガス温度50℃)として利用される。このガス中の酸素濃度は1〜2容量%程度であり、ガス化炉の出口ガスへの該キャリアガスの注入割合は1/15〜1/30であるので、可燃ガスの燃焼による低位発熱量(LHV)の低下を来すことはない。
【0058】
実験例
つぎに本発明の実験例を示す。
【0059】
廃棄物をガス化・改質して得られる可燃性ガスを利用して発電を行う、図1に示すシステムにおいて、各条件を変化させて実験を行った。ガス化炉1の出口ガスの組成の1例を表1に、ガス化炉1およびCO吸収・改質炉4の温度および各出口ガスに対する空気比を表2に、脱塩・脱硫剤と脱塩・脱硫性能の関係を図2に、発電設備5の出口ガスに対する空気比を表3に、各所脱塩・脱硫剤と脱塩・脱硫性能の関係を表4および図3に、炭酸カルシウムの生成・分解(CaO+CO⇔CaCO)に関する熱力学平衡計算の結果を表5に、それぞれ示す。
【0060】
表5によれば、CO吸収塔では、入口COが8.1%で、600℃では平衡計算上96.98%のCOが吸収除去されることになる(650℃では89.37%)。また、吸収塔の温度を850℃に昇温すると、出口CO濃度が38.59%になるまで分解することになる(900℃では79.48%になるまで分解)。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
【表3】
【0064】
【表4】
【0065】
【表5】
図1
図2
図3-1】
図3-2】
図3-3】