(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
滅菌用フィルタを備えるフィルタリング・システムによるガスのろ過を備える工業プロセスにおいて実施される、フィルタリング・システムの完全性をインライン制御する方法であって、前記フィルタリング・システム(F1;F2)は少なくとも1つのフィルタカートリッジを備える方法において、少なくとも次のステップ:
前記フィルタリング・システム(F1;F2)により発生する圧力損失を表す圧力差ΔPを測定する測定ステップ(S1)と、
測定値(S1)を所定の上限閾値(Sh)および所定の下限閾値(Sb)と比較する試験ステップ(S2、S3)であって、この比較の結果、前記測定ステップ(S1)において測定された圧力差が、前記上限閾値(Sh)〜前記下限閾値(Sb)の範囲から外れた場合には、前記少なくとも1つのフィルタカートリッジを非適合であるとみなす、試験ステップ(S2、S3)と、
を備え、
前記少なくとも1つのフィルタカートリッジが新品である場合に、前記フィルタリング・システムによって発生した圧力損失を表す圧力差ΔP0を測定する予備ステップ(S01)と、測定された前記圧力差ΔP0に応じて、前記上限閾値(Sh)および前記下限閾値(Sb)を決定するための計算が使用される校正ステップとを備え、
前記ΔP0が、前記少なくとも1つのフィルタカートリッジが新品である場合に前記フィルタリング・システムによって発生した圧力損失であり、かつ、前記上限閾値(Sh)の値が1.3*ΔP0〜3*ΔP0であり、前記下限閾値(Sb)の値が0.7*ΔP0〜0.95*ΔP0である方法。
前記測定ステップ(S1)の間に実行される圧力差の測定が、750パスカル未満の感度を有する圧力差測定装置によって実行され、前記装置は、前記フィルタリング・システムの下流側に第1圧力接続部(C1)と、前記フィルタリング・システムの上流側に第2圧力接続部(C2)を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
前記少なくとも1つのフィルタカートリッジが新品である場合に、前記測定ステップ(S1)の間に実行される圧力差の測定が、前記フィルタリング・システムにより発生する圧力損失を表す値ΔP0の値の5%以下の感度を有する圧力差測定装置によって行われる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
前記測定された圧力差が前記上限閾値(Sh)〜前記下限閾値(Sb)の範囲から外れた場合に、警告信号(Ae;Af)を生成するステップを備える、請求項7に記載の方法。
前記フィルタリング・システム(F1;F2)が複数のフィルタカートリッジを含み、前記測定ステップ(S1)において測定される前記圧力差は、すべての前記フィルタカートリッジによって発生する圧力損失を表す、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
前記工業プロセスが工業発酵プロセスであり、かつ、前記フィルタリング・システム(F1;F2)が、発酵リアクタ(R)、あるいは、前記発酵リアクタ(R)に供給するグルコース(Gl)のタンクに供給する空気を処理するために用いられる、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法の使用。
【背景技術】
【0003】
発酵の分野では、以下「発酵槽」と呼ぶ発酵リアクタを備えた装置が従来から知られており、発酵槽においては、一般的に、制御された温度および撹拌条件において発酵反応が行われる。これらの装置は、発酵装置内の、または発酵製品と接触する、または発酵反応に供給するように意図される材料に接触するガス、この場合は空気を搬送するコンプレッサおよび配管を備えている。
【0004】
空気はこのように、特に好気性の発酵環境が求められる場合に、発酵槽の中に直接搬送することができる。代替的にまたは追加的に、ガスは、発酵リアクタに搬送するように意図されるグルコースのような炭素に富む材料の空気輸送のために用いることができる。この場合、ガスは、材料を貯蔵タンクから発酵槽に押し出すのに役立つ。
【0005】
いずれの場合においても、ガスは、発酵槽内の製品の(直接または間接の)汚染を防止するために滅菌されなければならない。このため、装置は、そのガスラインに、浮遊している細菌を保持することによってガスを滅菌する機能を有するフィルタリング・システムを備える。実際、このタイプのシステムは、複数のいわゆる滅菌用フィルタカートリッジを収納するハウジングを備える。これらの滅菌用カートリッジは、1/10マイクロメートル程度の粒子サイズの細菌を保持する能力により特徴づけられる。
【0006】
これらのフィルタカートリッジは消耗品であり、過度に汚れたときには交換する必要がある。いくつかの工業プロセス、特に発酵プロセスにおいては、ろ材が過度に汚れる前にそれを交換することが不可欠である。カートリッジの過度な汚染は、エネルギーの損失、および圧力損失に伴う流量の損失につながる。また、繊維の脱落および/または汚染のリスクをもたらす(経年劣化に関する、すなわち、サージ圧)フィルタの劣化の前に、フィルタカートリッジを交換することも不可欠である。特定の工業発酵の場合には、汚染の出現は許容できるものではなく、発酵槽を空にして、内容物を廃棄し、新しい生産操作を開始する前に発酵装置を滅菌することが必要になる。汚染はかなりのダウンタイムをもたらす。
【0007】
このような不都合を回避するために、予防対策として、その完全性の状態を実際に知らずに、定期的にフィルタカートリッジを交換することが通例になっている。従って、工業発酵の場合には、本出願人も、カートリッジを12か月ごとに周期的に交換している。
【0008】
フィルタリングに関わる当業者は、フィルタのモニターに用いられる種々の試験、特に以下の各項を意識している:
1)バブルポイント試験:この試験は、フィルタからの漏出を検出するために用いられる。フィルタは、最初に水/エタノール溶液に浸漬され、続いて、所定の固定された圧力が印加される。バブリングの観察がリークを示す。
2)拡散試験:カートリッジを水/エタノール溶液で湿らせておく必要がある。圧力を
印加し、流量を精密測定法によって定量化する。
3)圧力保持試験:カートリッジを、例えば水/エタノール溶液で湿らせておく必要がある。圧力を印加し、この圧力の低下を、所定時間にわたって観察する。
4)水浸入試験):この試験は、通常、WITと呼ばれ、滅菌カートリッジを、アルコールなしで、水のみで試験できる。
5)エアロゾル試験:この試験は、0.2〜0.3マイクロメートルのエアロゾル粒子の分散(オイルミスト)を必要とし、続いて、フィルタを通過した粒子を出口部においてレーザカウントする。
【0009】
これらの各種試験には、次のような欠点がある:
これらの試験は、必ずしもすべてのタイプのガスフィルタカートリッジに実効可能ではない。
これらの試験は、製造者が開示しないフィルタカートリッジの特定の特性へのアクセスを必要とする。
これらの試験の多くは、試験に先立ってカートリッジの前処理を必要とする(例えば、湿らせる)。
【0010】
さらに、これらの試験のすべてにおいて、多くの場合、試験を実施する前に、フィルタカートリッジをそのハウジングから取り外すことが必要である。いずれにしても、上記のどの試験も、フィルタリング・システムの完全性をインラインモニター、すなわち、工業プロセスにおいて使用するガスのろ過中にモニターすることはできない。
【0011】
フィルタリング・システムのフィルタの状態を決定するために圧力計を使用することも従来技術から知られる。本発明者らの発見によれば、この用途に使用される圧力計は、+/−250ミリバール(25,000キロパスカル)の感度を有し、その圧力計のみが、フィルタリング・システムのフィルタが、目詰まり、付加の消費、流量の低下、および発酵のブロックのリスクを伴うその最大の圧力損失(フィルタカートリッジ製造者の提供データ)に達していることを観察することを可能にする。
【0012】
本発明者らの発見によれば、完全性の障害に先立って、著しく汚れたフィルタカートリッジを使用していると、ガスの搬送およびろ過の実行に用いられるコンプレッサの付加的な電力消費をもたらす圧力損失が発生する。ガスの流量(標準流量)が通常100Nm
3/Hよりもはるかに大きい工業プロセス、多くの場合さらには1,000Nm
3/Hより大きい工業プロセスにおいては、この圧力損失は電力消費コストのかなりの増加をもたらす。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、工業発酵、特に汚染に敏感な発酵において、製品と接触するガスの滅菌性をより良好に確実にモニターしたいという本出願人の要求から生まれたものである。
【0022】
図1は、発酵槽とも呼ぶ発酵リアクタRを備える発酵装置を概略的に表している。発酵槽は、その内部で発酵製品の発酵が制御された条件の下で行われる容器を含む。このような発酵槽は、通常、反応温度を制御するための熱交換器と、容器内の製品を撹拌する一対のロータ/ステータとを備えることができる。
【0023】
装置は、圧縮空気源と、発酵リアクタRに直接空気を搬送するラインとを備える。発酵
製品の汚染を避けるために、この空気は、リアクタに流入する前にフィルタリング・システムF1によってろ過される。このフィルタリング・システムF1は、通常、ろ過されていないガス用の入口とろ過されたガス用の出口とを有するハウジングを備える。このハウジングの中に、フィルタカートリッジの集合体が取り外し可能に配置され、通常、ガスを並行してろ過するように配置される。
【0024】
この装置は、さらに、炭素に富む材料、通常グルコース用のGlタンクを備えることができる。圧縮空気源に接続される他のガスラインは、Glタンクに接続され、Glタンク内の材料を配管の中に、かつ発酵リアクタまで押し出す役割を果たす。この空気は、炭素に富む材料の汚染を避けるために、Glタンクに流入する前に、別のフィルタリング・システムF2においてろ過される。
【0025】
汚染を避けるため、フィルタリング・システムF1およびF2においては、それぞれ、0.22μm以下の細孔径を有する滅菌用フィルタカートリッジを有し、微生物を保持するために使用する。発酵の間、汚染を防止するためにカートリッジの完全性はモニターされなければならない。汚染は、カートリッジが完全でない時に出現する。すなわち、完全ではないカートリッジは、優先通路(リーク)の結果である可能性がある。さらに、完全ではないカートリッジは、非常に多くの場合、ろ材の繊維の脱落という重大リスクを伴う過剰な汚れの結果である。
【0026】
いかなる不都合を回避するために、本発明者らの知る限り、予防措置として、その完全性の状態を正確に知ることなしに、フィルタカートリッジを定期的に、例えば12か月ごとに交換することが通例になっている。
【0027】
本出願人のプロセスのインラインモニターを得ることを望んでおり、本出願人は、滅菌用ろ過を専門とする種々の関係者、すなわち、ガス滅菌用カートリッジ、および、このようなガスカートリッジ用の完全性試験用計器の製造者に接触した。
【0028】
これらの関係者から提案された解決策は、上記の試験による解決策、すなわち、「バブルポイント試験」、「圧力保持試験」、「拡散試験」、「水浸入試験」、および「エアロゾル試験」に限定された。これらの解決策のいずれも、上記の欠点と、非常に高い実施コストとにより選ばれなかった。さらに、上記の試験のいずれも、フィルタリング・システムの完全性を、インラインで、すなわち、フィルタリング・システムによるガスのろ過中に、かつ、工業プロセスの要求に対してモニターするためには使用することができない。
【0029】
出願人は、フィルタリング・システムの完全性をインラインでモニターできるような、すなわち、工業プロセスと、このプロセスの間実行されるガスのろ過とを中断することなくモニターできるような、フィルタリング・システム(F)の完全性を制御する方法を独創的に設計した。
【0030】
本発明の具体的な用途は、特に
図1に表現されるタイプの装置において実施される工業発酵において用いられるフィルタリング・システムのモニターに見出される。しかし、この完全性の制御方法は、この工業プロセスに限定されるわけではなく、他の工業プロセス、特にろ過されたガスに対する同様な要件が適用される工業プロセスにも具体的な用途を見出すことができる。
【0031】
本発明は、さらに、フィルタリング・システムF1;F2の完全性の制御方法にも関する。前記フィルタリング・システムF1;F2は、少なくとも1つのフィルタカートリッジ、すなわち1つのフィルタカートリッジ、あるいは、好ましくは複数のフィルタカート
リッジを備える。後者の場合、フィルタカートリッジは、ガスの並行なろ過を提供することが望ましい。
【0032】
それが、工業プロセス中に実施されるインライン方法であり、この工業プロセスはフィルタリング・システムF1;F2による空気などのガスのろ過を含む。従って、この試験は、ほぼ一定の流量であることが望ましいプロセスの運転流量において、工業プロセスの要件に応じたガスのろ過中に実施される。この流量(標準流量)は、100Nm
3/H以上にすることができ、またはさらには多くの場合、1,000Nm
3/H以上とすることもできる。
【0033】
フィルタリング・システムF1;F2が複数のフィルタカートリッジを備える場合は、測定ステップS1において測定される前記圧力差は、すべてのフィルタカートリッジによって発生する圧力損失を表す。
【0034】
本発明は、工業プロセスの要件に応じて実行されるろ過中に、プロセスの操作上のガス流量において、フィルタリング・システムによって発生する圧力損失を正確にモニターすることによって、フィルタリング・システムの完全性を制御するという本発明者の願望に基づいている。
【0035】
従って、本発明は、発酵全体を通しての連続的なモニターを可能とし、かつ、システムの運転の間のシステムの完全性および無菌状態を保証する。
【0036】
このため、本発明によれば、前記方法は、フィルタリング・システムF1;F2により発生する圧力損失を表す圧力差ΔPを測定する測定ステップS1を備える。
【0037】
これに関しては、圧力差測定装置を用いることが望ましく、前記装置は、フィルタリング・システムの下流側に第1圧力接続部C1と、圧力システムの上流側に第2圧力接続部C2とを有する。測定される圧力差ΔPは、第1接続部C1と第2接続部C2との圧力差である。この測定装置は、測定感度により寿命の終わりを示し、そのようなプロセスにおいて通常使用されるゲージとは異なり、測定感度を10ミリバール(1,000パスカル)以下、好ましくは7.5ミリバール(750パスカル)以下とすることができる。
【0038】
ここで、測定感度は、測定装置が識別することができる最小の量を意味すると理解される。本発明者らは、いくつかの実験の後、750パスカル未満の測定感度、またはさらに300パスカル以下の測定感度、またはさらに50パスカル〜300パスカルの感度の装置が、装置のコストと、実施される制御方法のコストとの間の良好な妥協を表すことを明らかにした。
【0039】
実際、本発明者らは、前記少なくとも1つのフィルタカートリッジが新品である場合、この感度は、フィルタリング・システムにより発生する圧力損失を表す値ΔP0の5%(またはそれ以下)の割合であることを明らかにした。通常、複数のフィルタカートリッジを収納して包含するハウジングフィルタリング・システムにおいては、100ミリバール(10,000パスカル)近傍のΔP0の値、例えば50ミリバール(5,000パスカル)〜150ミリバール(15,000パスカル)のΔP0の値を得ることが一般的である。
【0040】
装置の測定尺度は、75,000パスカル〜450,000パスカル、好ましくは75,000パスカル〜300,000パスカル、さらに好ましくは100,000パスカル〜200,000パスカルの範囲であることが望ましい。本発明者らは、この測定尺度の範囲を、前記少なくとも1つのフィルタカートリッジが新品である場合に、フィルタリン
グ・システムにより発生する圧力損失を表す蒸気のΔP0に対応付けて決定した。このスケールの範囲は、少なくとも、ゼロ下限値(0
*ΔP0)と、1.5
*ΔP0〜3
*ΔP0、好ましくは1.5
*ΔP0〜2
*ΔP0の上限値との間の範囲におけるΔPの測定値の変動をモニターできるように決定することが望ましい。例えば、このスケールの範囲は、0パスカル〜150,000パスカルである。
【0041】
この方法は、また、ある特定の汚れを表す上限閾値Sh、および/または、優先流路(リーク)を表す下限閾値Sbの定義をも含む。
【0042】
この方法は、さらに、前記測定値S1を所定の上限閾値Shおよび所定の下限閾値Sbと比較する試験ステップであって、この比較の結果、測定ステップS1において測定された圧力差が、前記上限閾値Sh〜前記下限閾値Sbの範囲から外れた場合には、前記少なくとも1つのフィルタカートリッジが非適合であるとみなす、試験ステップを備える。
【0043】
複数のフィルタカートリッジを備えるフィルタリング・システムの場合には、カートリッジのすべてが非適合であるとみなされる。
【0044】
従って、圧力差の測定値が上限閾値Shに達するかまたはそれを超えた場合には、前記少なくとも1つのフィルタカートリッジは非適合であるとみなされる。このため、それは、新しいカートリッジと交換することが推奨される。それにも拘らず、この上限閾値は、完全なフィルタカートリッジ、特に完全な滅菌用カートリッジを表す値ΔP(複数のカートリッジを備えるフィルタリング・システムの場合には、完全なフィルタカートリッジの集合体を表す値ΔP)において決定されるという点に注意することが重要である。以下に説明する有利な一実施形態によれば、この上限閾値Shは、さらに、ろ過されるべきガスの流れを生成するコンプレッサの付加的な電力消費量を避けるために、十分に低く決定される。
【0045】
圧力差の測定値が下限閾値Sbに達するかまたはそれを下回った場合には、前記少なくとも1つのフィルタカートリッジが優先流路(リーク)のリスクを呈する。前記カートリッジは、完全ではない、従って非適合であるとみなされる。複数のフィルタカートリッジを備えるフィルタリング・システムの場合には、フィルタカートリッジのすべてが完全ではないとみなされる。この集合体においてはフィルタカートリッジのすべてまたはその一部が完全ではない可能性がある。従って、この方法に、この集合体のフィルタカートリッジをフィルタリング・システムから取り外した後、この集合体における完全ではないフィルタカートリッジを特定するステップを続けることができる。
【0046】
一実施形態によれば、この方法は、前記少なくとも1つのフィルタカートリッジが新品である場合に、フィルタリング・システムにより発生する圧力損失を表す圧力差ΔP0を測定する予備ステップを備えることができる。この方法は、前記上限閾値Shおよび/または下限閾値Sbを、測定された前記圧力差ΔP0に応じて決定するための計算が特に用いられる校正ステップを備えることが有利である。
【0047】
すなわち、上限閾値Shおよび下限閾値は次式によって定めることができる。
Sh=f(ΔP0) および Sb=g(ΔP0)
但し、fおよびgは関数である。
【0048】
例えば、一実施形態によれば、上限閾値Shおよび下限閾値Sbを次式によって容易に決定できる。
Sh=Kh
*ΔP0
但し、Khは定数である。
同様に下限閾値は次式によって定まる。
Sb=Kb
*ΔP0
但し、Kbは定数である。
【0049】
さらに別の実施形態によれば、ΔP0の測定値に応じて、上限および下限閾値の値を決定するために、チャート(または対応する表)を用いることができる。
【0050】
従って、本発明のこの有利な特徴によれば、上限閾値Shおよび下限閾値Sbを定義するために、試験されるフィルタカートリッジの特定の特徴を知る必要はない。また、この制御方法と、上限および下限閾値の定義は、フィルタカートリッジの特定の技術的特徴を知らなくても実施できる。
【0051】
このプロセスと、特に、前記少なくとも1つのフィルタカートリッジの適合性に関する決定は、コンピュータ手段を用いることなく実施できる。
【0052】
代替的に、一実施形態によれば、この方法はコンピュータ手段によって実施される次のステップを備えることができる:
測定ステップS1の間に測定される圧力差ΔPに対する測定値を含む信号を発出するステップ、
前記測定された圧力差の値を、ある時間間隔で、または連続的に、コンピュータ・ファイルに記録するステップ。
【0053】
測定が時刻tにおいて実行される時に、前記方法は、測定された各圧力差の値に対して、その測定を表す時間パラメータtを含むコンピュータ・ファイルを生成するステップを含むことができる。従って、圧力差ΔPにおける変化を時間の関数としてモニターすることが可能になる。すなわち、この方法は、時間tに対する圧力差ΔPにおける変化の代表的な曲線の作成と、制御画面上へのその表示の提供を可能にする。通常、t=0において測定された圧力差が、そのフィルタリング・システムのカートリッジが新品である場合の圧力差ΔP0に対応する。
【0054】
前記測定された圧力差が前記上限閾値Shおよび前記下限閾値Sbの間の前記範囲から外れた場合に、コンピュータ手段の実施によって、さらに、警告信号Ae;Afを生成するステップが可能になる。
【0055】
具体的には、
図5の図によれば、この方法は、コンピュータ手段によって実施した場合、前記上限閾値Shおよび/または前記下限閾値Sbを記録した後、次のステップを備えることができる:
測定ステップS1の間に測定された圧力差の、前記下限閾値(図のステップS2)および上限閾値(図のステップS3)との比較を含む試験ステップ、
前記測定された圧力差が上限閾値Shまたは下限閾値Sbに達した場合に、警告信号Ae;Afを生成すること。
【0056】
コンピュータ手段は、さらに、校正ステップS01を自動的に実行する。従って、各フィルタカートリッジを交換した後に、上限閾値Shおよび/または下限閾値Sbを自動的に生成する。
【0057】
すなわち、コンピュータ手段を、以下のステップ:
MES_1を測定し、圧力差ΔP0を記録するステップ(図のステップS00)と、
測定された圧力差ΔP0に関連して上限閾値Shおよび/または下限閾値Sbを定めるステップ(図のステップS01)と、
を実行するために使用することができる。
【0058】
ΔP0に応じて上限閾値および下限閾値を決定するステップに対しては、前述の関係を用いることができる。
【0059】
すなわち、完全な方法は、
図5に表現されるもの、つまり、次のステップに対応するものとすることができる:
フィルタリング・システムのカートリッジが新品である場合に、圧力差ΔP0を測定する測定ステップS01(MES_1)、
その圧力差ΔP0との関係において、特に計算によって、上限閾値Shおよび下限閾値Sbを定める校正ステップS02(CALC_ET)、
フィルタリング・システムF1;F2が生成する圧力損失を表す圧力差ΔPを測定する測定ステップS1(MES_2)、
ステップS1の間に測定された前記圧力差を、ステップS02において決定された下限閾値Sbと比較する試験ステップS2、
ステップS1の間に測定された前記圧力差を、ステップS02において決定された下限閾値Shと比較する試験ステップS3。
【0060】
この図によると、一般的に、
ステップS1の間に測定された圧力差が下限閾値Sb以下である場合には、「リーク」警告信号が発出され、
ステップS1の間に測定された圧力差が上限閾値Sh以上である場合には、「汚れ」警告信号が発出される。
【0061】
ステップS1、S2およびS3は、フィルタリング・システムを全時間にわたって確実にモニターするために、定期的に繰り返される。
【0062】
一実施形態によれば、上限閾値Shの値は、1.3
*ΔP0〜3
*ΔP0、好ましくは1.4
*ΔP0〜2
*ΔP0、さらに好ましくは1.4
*ΔP0〜1.6
*ΔP0とすることができる。すなわち、この場合、定数Khを、1.3〜3、好ましくは1.4〜2、さらに好ましくは1.4〜1.6とすることができる。本発明者らの発見によれば、多くの場合、3
*ΔP0までとして測定される圧力差において、前記少なくとも1つのフィルタカートリッジ、特に滅菌用のカートリッジは、常に、ろ過されたガスを滅菌されたものとみなし得る意味において完全であるとみなすことができる。
【0063】
しかし、前記少なくとも1つのフィルタカートリッジの完全性を疑問視する訳ではないが、圧力損失の発生は、ろ過の実行に必要なコンプレッサの付加的な電力消費をかなり大きくする結果をもたらす。これが、低い値の上限閾値、特に1.4
*ΔP0〜2
*ΔP0、好ましくは1.4
*ΔP0〜1.6
*ΔP0の上限閾値が好ましい理由である。このように上限閾値を定めることによって、これらのコンプレッサの付加的な電力消費を避けることができる。
【0064】
下限閾値Sbに関する限りは、これを、0.7
*ΔP0〜0.95
*ΔP0、好ましくは0.88
*ΔP0〜0.92
*ΔP0とすることができる。すなわち、定数Kbを、0.7〜0.95、好ましくは0.88〜0.92とすることができる。
【0065】
図2および3は、インライン制御されるフィルタカートリッジに対する、様々な種類の異なる代表的な曲線の例を制限することなく示している。
【0066】
図2の例は、フィルタリング・システムのフィルタカートリッジの更新に相当するt=
0からの、測定された圧力差ΔPにおける第1の変化を示す。この例によれば、フィルタカートリッジの汚れに起因し、ステップS1において測定される圧力差ΔPは、徐々に増大し、遂には、1.5
*ΔP0として定められる上限閾値Shに達してそれを超えるに至る。この上限閾値Shに達すると、警告信号Aeが発出される。この信号は過度の汚れと解釈される。前記少なくとも1つのフィルタカートリッジは、交換することが推奨される。
【0067】
図3の例は、フィルタリング・システムのフィルタカートリッジの更新に相当するt=0からの、測定された圧力差ΔPにおける第2の変化を示す。この例によれば、フィルタカートリッジの汚れのために、ステップS1において測定される圧力差ΔPは、徐々に増大し、続いて、低下し始め、遂には、0.9
*ΔP0として定められる下限閾値に達してそれを下回るに至る。この下限閾値Sbに達すると、警告信号Afが発出される。この警告信号は、フィルタリング・システムにおける優先流路(リーク)、すなわち完全性の欠落と解釈される。
【0068】
図4の例は、フィルタリング・システムのフィルタカートリッジの更新に相当するt=0からの、測定された圧力差ΔPにおける第3の変化を示す。この例によれば、フィルタカートリッジの汚れのために、ステップS1において測定される圧力差ΔPは、徐々に増大し、続いて突然低下するが、上限閾値および下限閾値によって定められる上限値および下限値の間に留まっている。異常を検出するために、目視またはコンピュータ計算手段による曲線の分析を用いることができる。このため、ハンマリング現象または突然の変動を観察すると、それは、ガスシステム、特にフィルタリング・システムに関する異常と解釈することができる。
【0069】
試験
本出願人は、フィルタリング・システムの圧力損失を表すΔPの測定値をモニターすることによって、滅菌用フィルタカートリッジに関する完全性の制御の妥当性を検証する予備的な試験を行った。これらの試験は直径6cmのフィルタカートリッジについて行った。これらは、0.01マイクロメートル定格の滅菌用カートリッジである。これらのフィルタカートリッジは、
図6の写真に示されるフィルタリング・システムにおいて使用され、このシステムのハウジングは20個のフィルタカートリッジを収納する。
【0070】
このフィルタリング・システムは空気を滅菌するように設計され、その空気は、続いて、
図1に示されるタイプの装置におけるバッチ式発酵プロセスにおいて使用される。これらのカートリッジは、PALL CPFRブランドのカートリッジおよびPARKER ZCHTブランドのカートリッジを備える。
【0071】
さらに、
図7の写真に示すテストベンチを設計した。このテストベンチを施設の圧縮空気源に接続した。
【0072】
このテストベンチは次の各項を備える:
流量計2、
試験されるフィルタカートリッジを収納するように設計されるハウジング3、
圧力差測定装置1、すなわち、この場合、そのダイヤル上の測定尺度が0〜15キロパスカルの範囲であるMAGNEHELIC差圧計、
流量制御弁4、
遮断弁5。
【0073】
このテストベンチは、以下のステップを備える試験プロトコルの実施を可能にする:
1)差圧計のゼロ点が正しく調整されていることを確認する。
2)新品のカートリッジをハウジング3内に配置する。
3)弁4および5を閉じる。
4)装置のネットワークの空気供給弁を開く。
5)遮断弁5を開く。
6)所定の試験流量を流量計上に読み取ることができるまで、流量制御弁4を開いて調整する。
7)装置がこのカートリッジに対して決定された基準値(ΔP0)を正しく示すことをチェックする。
8)遮断弁5を閉じる。
9)この新品のカートリッジを(同じタイプの)制御するカートリッジと交換する。
10)遮断弁5を開く。
11)差圧(ΔP)を読む。
【0074】
このテストベンチは、特に、1年半(1.5年)ほど工業発酵プロセスに使用する空気をろ過した後、上記のPALL CPFRフィルタカートリッジを制御するために使用した。
【0075】
この試験を実施するための流量、圧力差ΔP0、上限閾値Shおよび下限閾値Sbの値は次の通りである。
【0077】
この試験に従って、かつ本発明に類似の方法で、以下の各項が判定される:
a)プロトコルのステップ11において測定されるΔPが下限閾値Sb以下であれば、フィルタカートリッジは完全ではない。
b)プロトコルのステップ11において測定されるΔPが、下限閾値を完全に超えており、かつ、上限閾値を完全に下回っていれば、カートリッジは完全であり、適合しているとみなされる。
c)測定されるΔPが上限閾値以上であれば、カートリッジは汚れており、その交換が推奨される。但し、このカートリッジは必ずしも完全ではないとはみなされない。
【0078】
上記の使用済みのフィルタカートリッジをこのプロトコルに従って試験した。そのΔPが下限閾値および上限閾値の間にあるカートリッジであって、適合しているとみなされたカートリッジをそのまま取っておいた。
【0079】
適合しているとみなされた5個のカートリッジを、従来型の完全性試験のために製造者に送り返した。この完全性試験は、すなわち、製造者によって認められたエアロゾル試験であって、PARKER HANNIFIN Companyによって、「Valairdata II タイプ WVA203FFV」の装置を用いて実施された試験、および、PALL Companyによって、「Flowstar IV」の完全性試験器具において行われた試験である。
【0080】
試験プロトコルに従って適合しているとみなされたすべてのカートリッジは、製造者によって完全であるとみなされた。