(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ガソリンを燃料とする自動車の排気ガス中には、炭化水素(THC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)等の有害成分が含まれている。そのため、前記炭化水素(THC)は酸化して水と二酸化炭素に転化させ、前記一酸化炭素(CO)は酸化して二酸化炭素に転化させ、前記窒素酸化物(NOx)は還元して窒素に転化させるようにして、それぞれの有害成分を浄化する必要がある。
【0003】
このような排気ガスを処理するための触媒(以下「排気ガス浄化触媒」と称する)として、CO、THC及びNOxを酸化還元することができる三元触媒(Three way catalysts:TWC)が用いられている。
このような三元触媒としては、高い比表面積を有する酸化物多孔質体、例えば高い比表面積を有するアルミナ多孔質体に貴金属を担持し、これを基材、例えば耐火性セラミック又は金属製ハニカム構造で出来ているモノリス型(monolithic)基材に担持したり、或いは、耐火性粒子に担持したりしたものが知られている。
【0004】
他方、ディーゼルエンジンから排出される排気ガスには、上記のCO、THC、NOxに加え、燃料中の硫黄分にもとづく硫酸塩や、不完全燃焼に由来するタール状の微粒子状物質(「PM」と称する)などが含まれている。
ディーゼルエンジンの排気ガス中に含まれるCO、THCを除去する装置として、ディーゼル酸化触媒(「DOC」と称する)が知られている。
DOCとしては、ハニカム構造を呈する多孔質製のフィルタ基材上にゼオライトやAl
2O
3などの耐火性無機多孔質材料がコーティングされてなるものが知られている。
【0005】
ガソリンエンジンから排出される排気ガスを浄化するための触媒であっても、ディーゼルエンジンから排出される排気ガスを浄化するための触媒であっても、いずれの触媒も、白金(Pt)やパラジウム(Pd)やロジウム(Rh)などの貴金属が触媒活性成分として用いられることが多い。これら触媒活性成分としての貴金属と基材との結合力はそれ程強くなく、また、基材自体の比表面積もそれ程大きくないため、基材に貴金属を直接担持させようとしても十分な量を高分散に担持することは難しい。そこで、十分な量の触媒活性成分を基材の表面に高分散に担持させるために、高い比表面積を有する粒子状の触媒担体に貴金属を担持させることが一般的である。
この種の排気ガス浄化触媒用担体(「触媒担体」又は「担体」とも称する)として、例えばシリカ、アルミナ、チタニア化合物などの耐火性無機酸化物からなる多孔質粒子が現在広く使用されている。
【0006】
三元触媒によるCO、HC、NOxの浄化特性(三元特性)は、自動車排気ガスの雰囲気を表す理論空燃比(A/F)と密接に関係しているため、排気ガス浄化機能が十分に発現されるA/F=14.6(理論空燃比)を中心とした条件、言い換えれば空気過剰率λ=1近傍の条件に制御するのが従来は一般的であった。
近年、燃費向上及び二酸化炭素排出量の削減の観点から、理論空燃比(A/F=14.6)より高い空燃比、すなわち14.6<A/F≦16.0程度のリーン条件下でのエンジン制御が望まれている。酸素過剰雰囲気において希薄燃焼させるリーン条件で内燃機関を駆動させれば、燃料の使用量が低減されるため燃費が向上すると共に、燃焼排気ガスであるCO
2 の発生を抑制することができる。
【0007】
ところが、上記のようなリーン条件では酸素過多となり、排気ガス浄化触媒のNOx浄化性能が極端に悪化するため、リーン条件においてもNOxを高効率で浄化できる触媒の開発が望まれていた。
そこで、リーン条件においてNO
X浄化性能に優れており、しかも硫黄被毒耐性にも優れている触媒担体として、金属リン酸塩が注目されている。
【0008】
例えば特許文献1(特開平8−150339号公報)には、リン酸アルミニウム、リン酸ジルコニウム又はシリコアルミノホスフェートであるリン酸化合物に、Pt,Pd,Rh及びIrからなる群より選ばれた1種又は2種以上の貴金属が0.01〜5重量%担持された排気ガス浄化触媒が開示されている。
【0009】
特許文献2(特開平11−267509号公報)には、金属炭酸塩と金属硫酸塩と金属リン酸塩とから選ばれる少なくとも1種以上の化合物からなる担体に、活性金属としてイリジウムを担持してなることを特徴とする脱硝触媒が開示されている。
【0010】
特許文献3(特開2010−440号公報)には、内燃機関から排出され、且つ酸素を過剰に含む排気中のNOxの浄化に用いられる排気浄化触媒であって、酸化リン又は酸化硫黄を含む化合物からなる陰イオン部、並びに電荷を補償するための陽イオン部からなる固体酸強度の高い担体と、この担体に担持された貴金属元素と、から構成されることを特徴とする排気浄化触媒が開示されている。
【0011】
特許文献4(特開2013−252465号公報)には、空気過剰率λが1よりも大きいリーン領域でのNOx浄化活性の低下が抑制され、Rh担持ジルコニアと比較して大幅に性能の向上した排気ガス浄化用触媒として、一般式MPO
4(式中、MはY、La又はAlである)で表されるリン酸塩又は式ZrP
2O
7で表されるリン酸ジルコニウムを含む排気ガス浄化用触媒担体であり、また、該担体に担持された少なくともRhを含む貴金属とを含む排気ガス浄化用触媒、及びセラミックス又は金属材料からなる触媒支持体と、該触媒支持体上に担持されている上記の排気ガス浄化用触媒の層とを含む排気ガス浄化用触媒構成体が開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、実施の形態例に基づいて本発明を説明する。但し、本発明が次に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0017】
<本触媒>
本発明の実施形態の一例としての排気ガス浄化触媒(以下「本触媒」と称する)は、触媒担体(以下「本触媒担体」と称する)及び該触媒担体に担持される触媒活性成分を含有する組成物であり、必要に応じてOSC材などの助触媒、安定剤及びその他の成分を含むことができる。
【0018】
<本触媒担体>
本触媒担体は、Nasicon型構造を有し、Zrを含有する金属リン酸塩を含む排気ガス浄化触媒用担体である。
【0019】
なお、本触媒担体は、上記金属リン酸塩の作用を妨げない限りにおいて、上記金属リン酸塩以外の他の成分を含有していてもよい。ただし、本触媒担体は、上記金属リン酸塩の含有量が90質量%以上、好ましくは95質量%以上であるのが好ましい。
【0020】
上記金属リン酸塩は、Nasicon型構造を有し、式(1)・・MxZr
2(PO
4)
3(式中のMは、希土類、遷移金属及びアルカリ土類金属に属する元素のうちの一種又は二種以上を含み、xは0.25〜1である。)で示される金属リン酸塩であるのが好ましい。
【0021】
式(1)・・MxZr
2(PO
4)
3において、式(1)中のMは、希土類、遷移金属及びアルカリ土類金属に属する元素のうちの一種又は二種以上を含むことが好ましい。
ここで、希土類としては、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)及びルテチウム(Lu)を挙げることができる。
また、遷移金属としては、第一遷移元素(3d遷移元素)として、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)及び亜鉛(Zn)を挙げることができ、第二遷移元素(4d遷移元素)として、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、テクネチウム(Tc)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、及びカドミウム(Cd)を挙げることができ、第三遷移元素(4f遷移元素)として、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)ルテチウム(Lu)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、レニウム(Re)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)及び金(Au)を挙げることができる。
また、アルカリ土類金属として、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)及びラジウム(Ra)を挙げることができる。
そして、式(1)中のMは、これらのうちの一種又は二種以上であればよい。
【0022】
中でも、式(1)中のMは、耐熱性の観点から、マンガン(Mn)、ランタン(La)、鉄(Fe)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、イットリウム(Y)及びコバルト(Co)のうちの一種又は二種以上であるのが特に好ましい。
これらの中でも特に、ランタン(La)、イットリウム(Y)、ネオジム(Nd)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)のような希土類元素は、水熱法で合成した場合の初期の比表面積が20m
2/gを超えるような高い比表面積を有するものとすることができ、貴金属を多く担持できる観点から特に好ましい。
なお、本発明の効果を損なわない程度において、上記に挙げた元素以外の元素が金属ケイ酸塩に含まれることは許容されるものである。
【0023】
また、式(1)中のx、すなわちM元素のモル比は0.25〜1であればよい。当該モル比は、Nasicon型構造を有していれば、前記数値範囲内でM元素の価数に応じて必然的に決まる値である。
【0024】
本触媒担体の比表面積(BET法)は、大きい方が好ましく、例えば1m
2/g以上、中でも2m
2/g以上、その中でも5m
2/g以上であるのが特に好ましい。該比表面積の上限値は、経験的には180m
2/g程度であり、より安定的には100m
2/g程度である。
また、本触媒担体を実際に自動車に搭載した場合の耐久性を考慮すると、後述する実施例で評価しているように、排気ガス耐久した後(Aged)にも比表面積を上記範囲に維持することが好ましい。
【0025】
基材への塗工安定性と触媒層内のガス拡散性のバランスを考慮すると、本触媒担体の平均粒径は、0.1μm〜10μmであるのが好ましく、中でも1μm以上或いは5μm以下であるのが特に好ましい。
本触媒担体の平均粒径は、SEM(走査型電子顕微鏡)で直接観察して径を測定し、該測定値を平均して求めることができる。
【0026】
(本触媒担体の製造方法)
本触媒担体の製造方法の一例について説明する。
【0027】
例えば、MxZr
2(PO
4)
3におけるM元素原料と、Zr原料とを、純水やエタノールなどの有機溶媒に入れて溶解させると共に、リン酸を入れて溶液とし、その溶液にアンモニア水等のアルカリ溶液を加えてpHを3〜11、好ましくは4〜10に調整してゲル状生成物を生成させ、得られたゲル状生成物を純水などで洗浄濾過し、乾燥させ、酸化雰囲気(大気)下で550〜1400℃で1時間〜24時間焼成すれば、Nasicon型構造を有する金属リン酸塩を作製することができる。
【0028】
また、MxZr
2(PO
4)
3におけるM元素原料と、Zr原料とを、純水やエタノールなどの有機溶媒に入れて溶解させ、この溶液にアンモニア水等のアルカリ溶液を加えてpHを4.5〜11、好ましくは4.5〜10に調整して沈澱物を生成させ、遠心分離すると共に純水などで洗浄して該沈殿物を採取する。そして、この沈殿物を、純水やエタノールなどの有機溶媒に入れて撹拌し、リン酸を加えて撹拌し、次にオートクレイブなどを用いて加熱して水熱処理し、その後、水熱処理した前記沈殿物を乾燥させて、酸化雰囲気(大気)下で550〜1400℃で1時間〜24時間焼成すれば、Nasicon型構造を有する金属リン酸塩を作製することができる。
但し、本触媒担体の製造方法がこれらの方法に限定されるものではない。
【0029】
<他の触媒担体>
本触媒は、本触媒担体のほかに、触媒担体として、他の無機多孔質粒子を含んでいてもよい。
当該他の無機多孔質粒子としては、例えばシリカ、アルミナおよびチタニア化合物などの化合物の多孔質粒子、より具体的には、例えばアルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、アルミノ−シリケート類、アルミナ−ジルコニア、アルミナ−クロミアおよびアルミナ−セリアから選択される化合物からなる多孔質粒子を挙げることができる。
他の無機多孔質粒子として、例えばOSC材、すなわち、酸素ストレージ能(OSC:Oxygen Storage capacity)を有する助触媒を含んでいてもよい。
かかるOSC材としては、例えばセリウム化合物、ジルコニウム化合物、セリア・ジルコニア複合酸化物などを挙げることができる。
【0030】
<触媒活性成分>
本触媒が含有する触媒活性成分、すなわち触媒活性を示す金属としては、例えばパラジウム、白金、ロジウム、金、銀、ルテニウム、イリジウム、ニッケル、セリウム、コバルト、銅、鉄、マンガン、オスミウム、ストロンチウム等の金属を挙げることができる。また、これらの酸化物も採用することができる。
燃料由来の被毒物質である硫黄分が多いディーゼルエンジン用途には、パラジウムやロジウムよりも、硫黄被毒耐性の高い白金がより好適であり、硫黄分が少ないガソリンエンジン用途には、硫黄被毒耐性とコスト面から考えて、白金よりも、パラジウムやロジウムがより好適である。
【0031】
本触媒における触媒活性成分の担持量は、0.1質量%以上であれば、触媒としての効果が発揮され易く、5質量%以下であれば、耐久後の分散度を維持し易いから、活性成分の金属質量に換算して、担体の質量を基準にして、0.1〜5.0質量%であるのが好ましく、中でも0.5質量%以上或いは3.0質量%以下であるのが特に好ましく、その中でも2.0質量%以下であるのがさらに好ましい。
同様の観点から、触媒活性成分の担持量は、本触媒の質量すなわち触媒活性成分と本触媒担体の合計質量に対して、0.1〜5.0質量%であるのが好ましく、中でも0.5質量%以上或いは3.0質量%以下であるのがさらに好ましく、中でも特に2.0質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0032】
<安定剤及びその他の成分>
本触媒は、安定剤、バインダ及びその他の成分を含むことができる。
【0033】
安定剤としては、例えばアルカリ土類金属やアルカリ金属、ランタノイド金属を挙げることができる。中でも、マグネシウム、バリウム、ホウ素、トリウム、ハフニウム、ケイ素、カルシウム、ランタン、ネオジムおよびストロンチウムから成る群から選択される金属のうちの一種又は二種以上を選択可能である。
【0034】
また、バインダ成分など、公知の添加成分を含んでいてもよい。
バインダ成分としては、無機系バインダ、例えばアルミナゾル等の水溶性溶液を使用することができる。
【0035】
<本触媒の製造方法>
次に、本触媒の製造方法の一例について説明する。但し、本触媒の製造方法が次に説明する一例に限定されるものではない。
【0036】
本触媒は、例えば本触媒担体と、触媒活性成分例えば貴金属化合物と、その他の成分とを混合し、加熱乾燥させた後、焼成することで製造することができる。
【0037】
上記貴金属化合物の溶液としては、例えば貴金属の硝酸塩、塩化物、硫酸塩などを挙げることができる。
その他の成分としては、OSC材などの助触媒、安定剤、バインダなどを挙げることができる。
【0038】
<本触媒構成体>
本触媒から形成される触媒層と、例えばセラミックス又は金属材料からなる基材とを備えた排気ガス浄化用触媒構成体(「本触媒構成体」と称する)を作製することができる。
【0039】
上記触媒層は、例えば基材の表面に触媒層が形成されてなる構成を備えたものであってもよいし、基材の表面に他の層を介して触媒層が形成されてなる構成を備えたものであってもよいし、また、基材の表面側ではない箇所に触媒層が形成されてなる構成を備えたものであってもよい。
いずれの製法においても、触媒層は、単層であっても、二層以上の多層であってもよい。
【0040】
(基材)
本触媒構成体の基材としては、現在公知の基材を広く採用することができる。
基材の材質としては、セラミックス等の耐火性材料や金属材料を挙げることができる。
セラミック製基材の材質としては、耐火性セラミック材料、例えばコージライト、コージライト−アルファアルミナ、炭化ケイ素(SiC)、窒化ケイ素、ムライト、アルミナ、チタン酸アルミニウム、ジルコンムライト、スポジュメン、アルミナ−シリカマグネシア、ケイ酸ジルコン、シリマナイト(sillimanite)、ケイ酸マグネシウム、ジルコン、ペタライト(petalite)、アルファアルミナおよびアルミノシリケート類などを挙げることができる。
金属製基材の材質としては、耐火性金属、例えばステンレス鋼、又は鉄を基とする他の適切な耐食性合金、例えば耐火性金属、例えばFe-Cr-Al合金等を挙げることができる。
【0041】
基材の形状は、特に限定されるものではない。一般的にはハニカム、板、ペレット等の形状であり、好ましくはハニカム形状である。
また、パティキュレートフィルタで主に採用されている形状であってもよい。例えば、ウォールスルー型、フロースルーハニカム型、ワイヤメッシュ型、セラミックファイバー型、金属多孔体型、粒子充填型、フォーム型などを挙げることができる。
【0042】
ハニカム形状の基材を用いる場合、例えば基材内部を流体が流通するように、基材内部に平行で微細な気体流通路、すなわちチャンネルを多数有するモノリス型基材を使用することができる。この際、モノリス型基材の各チャンネル内壁表面に本触媒を塗布して触媒層を形成することができる。
【0043】
(本触媒構成体の製造方法)
本触媒構成体の製造方法としては、例えば、本触媒担体と、触媒活性成分例えば貴金属と、必要に応じてOSC材、バインダ及び水を混合・撹拌してスラリーとし、得られたスラリーを例えばセラミックハニカム体などの基材に塗布し、これを焼成して、基材表面に触媒層を形成して、本触媒構成体を作製することができる。
【0044】
また、本触媒担体と、必要に応じてOSC材、バインダ及び水を混合・撹拌してスラリーとし、得られたスラリーを例えばセラミックハニカム体などの基材に塗布して触媒担体層を形成した後、これを触媒活性成分の溶液に浸漬して、前記触媒担体層に触媒活性成分を吸着させてこれを焼成して、基材表面に触媒層を形成して、本触媒構成体を作製することもできる。
【0045】
また、触媒活性成分を酸化物に担持させた触媒活性成分担持体と、本触媒担体と、必要に応じてOSC材、安定化材、バインダ及び水を混合・撹拌してスラリーとし、これを基材に塗布し、これを焼成して基材表面に触媒層を形成して、本触媒構成体を作製することもできる。
なお、本触媒を製造するための方法は公知のあらゆる方法を採用することが可能であり、上記例に限定するものではない。
【0046】
<語句の説明>
本明細書において「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
また、「X以上」(Xは任意の数字)或いは「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」或いは「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。
【実施例】
【0047】
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいてさらに詳述する。
【0048】
<実施例1>
目的所定比になるように、ZrCl
2O・8H
2Oと、Mn(NO
3)
3・6H
2Oとをそれぞれ秤量し、イオン交換水100mLに溶解させ、この溶液にアンモニア水溶液を滴下しpHを10程度として沈澱物を生成させた。この沈殿物を遠心分離した後、イオン交換水で洗浄して、前記沈殿物を回収した。
回収した沈殿物に、100mLのイオン交換水を加えて0.5時間撹拌し、H
3PO
4(85%))を添加して混合液を調製した。この混合液を室温にて6時間撹拌し、次にオートクレイブに入れ、200℃で18時間水熱処理した。その後、水熱処理した沈殿物を減圧乾燥機に入れて12時間乾燥させ、大気雰囲気下600℃で3時間仮焼した後、大気雰囲気下900℃で6時間焼成して、Nasicon型構造を有する金属リン酸塩担体(サンプル)を作製した。
この際、作製して得られた金属リン酸塩担体(サンプル)についてXRD回折を行い、Nasicon型構造を示し、表1に示した組成であることを確認した。作製して得られた金属リン酸塩担体(サンプル)のBET比表面積は15m
2/gであった。
【0049】
<実施例2>
実施例1において、Mn(NO
3)
3・6H
2Oの代わりに、La(NO
3)
2・6H
2Oを用いた以外、実施例1と同様に、Nasicon型構造を有する金属リン酸塩担体(サンプル)を作製した。
この際、作製して得られた金属リン酸塩担体(サンプル)についてXRD回折を行い、Nasicon型構造を示し、表1に示した組成であることを確認した。作製して得られた金属リン酸塩担体(サンプル)のBET比表面積は39m
2/gであった。
【0050】
<実施例3>
実施例1において、Mn(NO
3)
3・6H
2Oの代わりに、Fe(NO
3)
2・9H
2Oを用いた以外、実施例1と同様に、Nasicon型構造を有する金属リン酸塩担体(サンプル)を作製した。
この際、作製して得られた金属リン酸塩担体(サンプル)についてXRD回折を行い、Nasicon型構造を示し、表1に示した組成であることを確認した。作製して得られた金属リン酸塩担体(サンプル)のBET比表面積は9m
2/gであった。
【0051】
<実施例4>
実施例1において、Mn(NO
3)
3・6H
2Oの代わりに、Ce(NO
3)
3を用いた以外、実施例1と同様に、Nasicon型構造を有する金属リン酸塩担体(サンプル)を作製した。
この際、作製して得られた金属リン酸塩担体(サンプル)についてXRD回折を行い、Nasicon型構造を示し、表1に示した組成であることを確認した。作製して得られた金属リン酸塩担体(サンプル)のBET比表面積は23m
2/gであった。
【0052】
<実施例5>
実施例1において、Mn(NO
3)
3・6H
2Oの代わりに、Co(NO
3)
3を用いた以外、実施例1と同様に、Nasicon型構造を有する金属リン酸塩担体(サンプル)を作製した。
この際、作製して得られた金属リン酸塩担体(サンプル)についてXRD回折を行い、Nasicon型構造を示し、表1に示した組成であることを確認した。作製して得られた金属リン酸塩担体(サンプル)のBET比表面積は11m
2/gであった。
【0053】
<実施例6>
実施例1において、Mn(NO
3)
3・6H
2Oの代わりに、Y(NO
3)
3を用いた以外、実施例1と同様に、Nasicon型構造を有する金属リン酸塩担体(サンプル)を作製した。
この際、作製して得られた金属リン酸塩担体(サンプル)についてXRD回折を行い、Nasicon型構造を示し、表1に示した組成であることを確認した。作製して得られた金属リン酸塩担体(サンプル)のBET比表面積は63m
2/gであった。
【0054】
<実施例7>
実施例1において、Mn(NO
3)
3・6H
2Oの代わりに、Nd(NO
3)
3を用いた以外、実施例1と同様に、Nasicon型構造を有する金属リン酸塩担体(サンプル)を作製した。
この際、作製して得られた金属リン酸塩担体(サンプル)についてXRD回折を行い、Nasicon型構造を示し、表1に示した組成であることを確認した。作製して得られた金属リン酸塩担体(サンプル)のBET比表面積は31m
2/gであった。
【0055】
<比較例1>
目的所定比になるようにZrCl
2O・8H
2Oを秤量し、イオン交換水100mLに加えて溶解させ、この溶液に炭酸アンモニウム、リン酸アンモニウム及び臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム(CTAB)を滴下して沈澱物を生成させ、遠心分離した後、イオン交換水で洗浄して、前記沈殿物を回収した。
回収した沈殿物に、100mLのイオン交換水を加えて、オートクレイブに入れ、120℃で24時間水熱処理した。その後、水熱処理した沈殿物を減圧乾燥機に入れて12時間乾燥させ、大気雰囲気下900℃で6時間焼成し、金属リン酸塩担体(サンプル)を作製した。
この際、作製して得られた金属リン酸塩担体(サンプル)についてXRD回折及びICP分析を行い、表1に示した組成であることを確認した。
【0056】
<評価試験>
(評価サンプルの作製)
実施例1〜7及び比較例1で調製した金属リン酸塩担体(サンプル)を硝酸Rh溶液に加え、Rh担持濃度がRhメタルの質量に換算して、担体の質量を基準にして0.4質量%となる量比で浸漬させ、その後、蒸発乾固後、大気雰囲気下600℃で3時間焼成を行い、Rh担持触媒(評価サンプル)を調製した。
【0057】
(評価方法)
このように調製したRh担持触媒(評価サンプル)を、耐久処理した後(Aged)、触媒活性を次のようにして評価した。
耐久処理は、水蒸気10%を含んだ大気雰囲気中で、900℃で25時間加熱することで行った。
【0058】
固定床流通型反応装置を用い、反応管にRh担持触媒(評価サンプル)を0.05gセットし、CO:0.51%、NO:0.05%、C
3H
6:0.0394%、O
2:0.4%、残余Heから成る完全燃焼を想定した模擬排気ガスを、W/F(触媒質量/ガス流量)=5.0×10
-4g・min・cm
-3となるように反応管に流通させ、室温から600℃における出口ガス成分を、Q−massとNDIRを用いて測定した。
そして、得られたライトオフ性能評価結果より、50%浄化率に到達する温度(T50)を求めた。
【0059】
【表1】
【0060】
(考察)
上記実施例及びこれまで発明者が行ってきた試験結果から、Nasicon型構造を有し、Zrを含有する金属リン酸塩を含む触媒用担体、中でも、式:MxZr
2(PO
4)
3(式中のMは、希土類、遷移金属及びアルカリ土類金属に属する元素のうちの一種又は二種以上を含み、xは0.25〜1である。)で示される金属リン酸塩からなる触媒用担体であれば、式ZrP
2O
7で表されるリン酸ジルコニウムからなる触媒担体に比べて、耐久後の浄化性能に優れていることが確認された。
【0061】
<比較例2>
硝酸ジルコニル・2水和物を純水に溶解させ、この溶液にリン酸を入れて溶液とし、次いで、この溶液に10質量%アンモニア水をゆっくりと滴下してゲル状生成物を生成させ、得られたゲル状生成物を純水にて洗浄濾過し、120℃で一晩乾燥した。乾燥後、空気中900℃で5時間焼成して、金属リン酸塩担体(サンプル)を作製した。
この際、作製して得られた金属リン酸塩担体(サンプル)についてXRD回折及びICP分析を行い、表2に示した組成であることを確認した。
【0062】
<実施例8>
目的の所定比となるように、Pr(NO
3)
2・6H
2Oと硝酸ジルコニル・2水和物とをそれぞれ秤量し、これらを純水に加えて溶解させ、その溶液にリン酸を入れて溶液とし、この溶液に10質量%アンモニア水をゆっくりと滴下してゲル状生成物を生成させ、得られたゲル状生成物を純水にて洗浄濾過し、120℃で一晩乾燥した。乾燥後、空気中900℃で5時間焼成して、金属リン酸塩担体(サンプル)を作製した。
この際、作製して得られた金属リン酸塩担体(サンプル)についてXRD回折及びICP分析を行い、Nasicon型構造を示し、表2に示した組成であることを確認した。作製して得られた金属リン酸塩担体(サンプル)のBET比表面積は37m
2/gであった。
【0063】
<実施例9>
実施例8において、Pr(NO
3)
2・6H
2Oの代わりに、Nd(NO
3)
2・6H
2Oを用いた以外は、実施例8と同様に、Nasicon型構造を有する金属リン酸塩担体(サンプル)を作製した。
この際、作製して得られた金属リン酸塩担体(サンプル)についてXRD回折及びICP分析を行い、Nasicon型構造を示し、表2に示した組成であることを確認した。
【0064】
<実施例10>
実施例8において、Pr(NO
3)
2・6H
2Oの代わりに、Y(NO
3)
2・6H
2Oを用いた以外は、実施例8と同様に、Nasicon型構造を有する金属リン酸塩担体(サンプル)を作製した。
この際、作製して得られた金属リン酸塩担体(サンプル)についてXRD回折及びICP分析を行い、Nasicon型構造を示し、表2に示した組成であることを確認した。
【0065】
<実施例11>
実施例8において、Pr(NO
3)
2・6H
2Oの代わりに、Ce(NO
3)
2を用いた以外は、実施例8と同様に、Nasicon型構造を有する金属リン酸塩担体(サンプル)を作製した。
この際、作製して得られた金属リン酸塩担体(サンプル)についてXRD回折及びICP分析を行い、Nasicon型構造を示し、表2に示した組成であることを確認した。
【0066】
<実施例12>
実施例8において、Pr(NO
3)
2・6H
2Oの代わりに、Mn(NO
3)
2・6H
2Oを用いた以外は、実施例8と同様に、Nasicon型構造を有する金属リン酸塩担体(サンプル)を作製した。
この際、作製して得られた金属リン酸塩担体(サンプル)についてXRD回折及びICP分析を行い、Nasicon型構造を示し、表2に示した組成であることを確認した。
【0067】
<実施例13>
実施例8において、Pr(NO
3)
2・6H
2Oの代わりに、Co(NO
3)
2を用いた以外は、実施例8と同様に、Nasicon型構造を有する金属リン酸塩担体(サンプル)を作製した。
この際、作製して得られた金属リン酸塩担体(サンプル)についてXRD回折及びICP分析を行い、Nasicon型構造を示し、表2に示した組成であることを確認した。
【0068】
<評価試験>
(評価サンプルの作製)
比較例2については、比較例2で調製した金属リン酸塩担体(サンプル)73質量部、La安定化アルミナ21質量部、アルミナ系バインダー6質量部を、ヘキサアンミンRh水酸塩溶液に添加し、湿式粉砕処理を施してRh含有スラリーを得た。この時、Rh担持濃度が固形分に対して0.15質量%になるように硝酸Rh溶液を加えた。
得られたスラリーをセラミックハニカム基材に100g/Lとなるように塗布し、乾燥、焼成を行い、Rh担持ハニカム触媒(評価サンプル)を調製した。
【0069】
他方、実施例8〜13については、実施例8〜13で調製した金属リン酸塩担体(サンプル)73質量部、La安定化アルミナ21質量部、アルミナ系バインダー6質量部を、硝酸Rh溶液に添加し、湿式粉砕処理を施してRh含有スラリーを得た。この時、Rh担持濃度が固形分に対して0.15質量%になるように硝酸Rh溶液を加えた。
得られたスラリーをセラミックハニカム基材に100g/Lとなるように塗布し、乾燥、焼成を行い、Rh担持ハニカム触媒(評価サンプル)を調製した。
【0070】
(評価方法)
実施例8〜13及び比較例2で得たRh担持ハニカム触媒(評価サンプル)を、模擬排気ガス耐久した後(Aged)、触媒活性を次のようにして評価した。
模擬排気ガス耐久条件は800℃に保持した電気炉に触媒をセットし、C
3H
6、又は、COとO
2(完全燃焼比)の混合ガス(50sec)及びAir(50sec)を周期させながら模擬排気ガスを流通させて50時間処理した。
【0071】
ハニカム触媒の評価は、CO、CO
2、C
3H
6、O
2、NO、H
2O及び残余N
2から成る模擬排気ガスを、λ=1.63(A/F=14.9)でSV=100,000h
-1となるように、上記耐久処理後のRh担持ハニカム触媒(評価サンプル)に流通させて、400℃における出口ガス成分をNO分析計(堀場製作所製MOTOR EXHAUST GAS ANALYZER MEXA9100)を用いて測定し、各Rh担持触媒のNO浄化性能を比較した。
【0072】
【表2】
【0073】
(考察)
上記実施例及びこれまで発明者が行ってきた試験結果から、Nasicon型構造を有し、Zrを含有する金属リン酸塩を含む触媒用担体、中でも、式:MxZr
2(PO
4)
3(式中のMは、希土類、遷移金属及びアルカリ土類金属に属する元素のうちの一種又は二種以上を含み、xは0.25〜1である。)で示される金属リン酸塩からなる触媒用担体であれば、式ZrP
2O
7で表されるリン酸ジルコニウムからなる触媒担体に比べて、高温領域でのNOx浄化性能に優れていることが確認された。