(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第一診断ポートおよび第二診断ポートを含む複数の入力ポートと、A/D変換回路と、複数の前記入力ポートの何れか一つを前記A/D変換回路に接続するセレクタと、を有するA/D変換部の異常を判定するステップを備え、
前記ステップは、
前記第一診断ポートと前記A/D変換回路とを接続するように前記セレクタを制御し、パルス波形の電圧を出力する供給部から前記第一診断ポートに第一の電圧値およびLO電圧を交互に繰り返すパルス波形を供給したときの前記A/D変換回路による変換結果を取得する第一取得ステップと、
前記第二診断ポートと前記A/D変換回路とを接続するように前記セレクタを制御し、前記供給部から分圧回路を介して前記第二診断ポートに前記第一の電圧値と異なる第二の電圧値および前記LO電圧を交互に繰り返すパルス波形を供給したときの前記A/D変換回路による変換結果を取得する第二取得ステップと、
前記第一取得ステップにおいて取得した情報と、前記第二取得ステップにおいて取得した情報とに基づいて前記A/D変換回路および前記セレクタの異常を判定する判定ステップと、
を有し、
前記第一取得ステップにおいて、前記第一の電圧値に対する前記A/D変換回路による変換結果である第一の値、および前記LO電圧に対する前記A/D変換回路による変換結果である第二の値が取得され、
前記第二取得ステップにおいて、前記第二の電圧値に対する前記A/D変換回路による変換結果である第三の値、および前記LO電圧に対する前記A/D変換回路による変換結果である第四の値が取得され、
前記判定ステップにおいて、前記第一の値、前記第二の値、前記第三の値、および前記第四の値のうち少なくとも一つの値が正常でない場合に前記A/D変換回路および前記セレクタの異常と判定することを特徴とするA/D変換部の異常判定方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態に係る電力供給装置およびA/D変換部の異常判定方法につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0012】
[実施形態]
図1から
図6を参照して、実施形態について説明する。本実施形態は、電力供給装置およびA/D変換部の異常判定方法に関する。
図1は、実施形態に係る電力供給装置を示す図、
図2は、実施形態に係る制御部を示す図、
図3は、実施形態の供給部による出力波形を示す図、
図4は、第一診断ポートに関する異常判定方法の説明図、
図5は、第二診断ポートに関する異常判定方法の説明図、
図6は、実施形態に係るA/D変換部の異常判定方法を示すフローチャートである。
【0013】
図1に示す本実施形態の電力供給装置1は、車両に搭載され、車両の電気負荷(以下、単に「負荷」と称する。)12に対する電力供給を行う。電力供給装置1によって電力が供給される負荷12は、例えば、車両のヘッドランプ等のランプである。電力供給装置1は、半導体を含むスイッチング素子34によって負荷12に対する供給電圧Veを制御すると共に、負荷12に対する電力供給をソフトウエア的に遮断する半導体リレーモジュールとして構成されている。電力供給装置1の制御部2は、各負荷12に対して供給する電流値に基づいて電線の発熱量を推定し、その推定結果に基づいて負荷12に対する電力供給を停止する。以下、本実施形態の電力供給装置1について詳細に説明する。
【0014】
電力供給装置1は、車両の電源11に対して電気的に接続されている。電源11は、例えば、バッテリ等の二次電池である。電力供給装置1は、制御部2および電圧調節部3を有する。制御部2の入力部20は、分圧回路4を介して電源11と接続されている。入力部20には、電源11からの入力電圧Vbが分圧されて入力される。制御部2は、入力部20に入力される電圧に基づいて、入力電圧Vbを算出する。制御部2は、信号出力ポート21を有する。信号出力ポート21は、電圧調節部3の信号入力ポート30に接続されている。
【0015】
電圧調節部3は、電力供給指令に応じて電源11からの入力電圧Vbを調圧して負荷12に対して供給する。電圧調節部3は、信号入力ポート30に加えて、入力部31、出力部33、制御回路32、およびスイッチング素子34を有する。入力部31は、電源11と電気的に接続されている。出力部33は、負荷12と電気的に接続されている。制御回路32は、保護回路等を含んでいる。制御回路32は、本実施形態において説明する動作を実行するように回路が構成され、または予め記憶しているプログラムに基づいて当該動作を実行する。スイッチング素子34は、入力部31と出力部33との間に介在している。スイッチング素子34は、入力部31から入力される制御信号に応じて入力部31と出力部33とを接続あるいは遮断する。本実施形態のスイッチング素子34は、MOSFET(Metal−Oxide−Semiconductor Field−Effect Transistor)である。
【0016】
制御部2は、スイッチング素子34を制御する制御信号を信号出力ポート21から出力する。制御信号は、例えば、パルス信号である。制御部2は、スイッチング素子34をデューティ制御する。本実施形態の制御部2が行うデューティ制御は、PWM制御である。制御部2は、負荷12に対する供給電圧Veの目標値と、算出された入力電圧Vbとに基づいて、デューティ比を決定する。制御部2は、決定したデューティ比に基づいて制御信号を生成し、信号出力ポート21から出力する。出力された制御信号は、信号入力ポート30および制御回路32を介してスイッチング素子34に伝達される。スイッチング素子34は、制御信号のON指令に応じて入力部31と出力部33とを接続し、負荷12に対して電力を供給する。また、スイッチング素子34は、制御信号のOFF指令に応じて入力部31と出力部33とを遮断し、負荷12に対する電力供給を停止する。制御部2は、スイッチング素子34のON/OFF制御によって負荷12に対する供給電圧Veの実効値が目標値となるようにデューティ比を調節する。
【0017】
制御部2は、電力供給指令が入力される指令入力ポート22を有している。例えば、ユーザによって負荷12を作動させるスイッチ操作等の操作がなされると、指令入力ポート22に対して電力供給指令の信号が入力される。制御部2は、電力供給指令の信号を受信すると、電圧調節部3を制御して負荷12に対する電力供給を行う。一方、制御部2は、電力供給指令の信号を受信していないときには、負荷12に対する電力供給を停止する。
【0018】
本実施形態の電力供給装置1は、複数の負荷12(12A,12B,…,12G)に対して電力を供給する。電力供給装置1は、各負荷12に対応する複数の電圧調節部3を有する。制御部2は、各電圧調節部3を介して、各負荷12(12A,12B,…,12G)に対する供給電圧Ve(VeA,VeB,…,VeG)を制御する。
【0019】
図2に示すように、制御部2は、A/D変換部5、判定部10、および供給部8を有する。A/D変換部5は、A/D変換回路6、複数の入力ポート40、およびセレクタ7を有する。A/D変換回路6は、アナログ電圧をデジタル値(デジタル信号)に変換する。A/D変換回路6は、サンプルホールド回路61、比較回路62、制御回路63、制御レジスタ64、選択レジスタ65、変換回路66、およびレジスタ70を有する。
【0020】
サンプルホールド回路61は、セレクタ7を介して複数の入力ポート40の何れかと接続される。入力ポート40は、負荷ポート40A,40B,…,40G、第一診断ポート40H、および第二診断ポート40Iを有する。各負荷ポート40A,40B,…,40Gには、各負荷12(12A,12B,…,12G)に対する供給電圧Ve(VeA,VeB,…,VeG)が入力される。例えば、第一の負荷ポート40Aには、複数の負荷12の内、第一の負荷12Aに対する供給電圧VeAが入力される。
【0021】
第一診断ポート40Hおよび第二診断ポート40Iに対しては、供給部8から電圧が供給される。第一診断ポート40Hおよび第二診断ポート40Iは、分圧回路9を介して供給部8と接続されている。第一診断ポート40Hに対しては、基準電圧(以下、「第一の電圧値」と称する。)Vcc1[V]が入力される。第二診断ポート40Iに対しては、第一の電圧値Vcc1の1/2の電圧(以下、「第二の電圧値」と称する。)Vcc2[V]が入力される。第一の電圧値Vcc1および第二の電圧値Vcc2は、故障診断用の規定の電圧値である。第一の電圧値Vcc1は、例えば、5[V]である。
【0022】
セレクタ7は、複数の入力ポート40の何れか一つをサンプルホールド回路61に接続する。例えば、セレクタ7が第一の負荷ポート40Aとサンプルホールド回路61とを電気的に接続する場合、その他の負荷ポート40B,…40G、第一診断ポート40H、および第二診断ポート40Iは、サンプルホールド回路61から遮断される。
【0023】
サンプルホールド回路61は、接続されている入力ポート40の電圧を保持することができる回路である。サンプルホールド回路61は、制御回路63からの保持指令に応じて入力ポート40の電圧をサンプリングして保持する。比較回路62は、サンプルホールド回路61によって保持されている電圧値と変換回路66から入力される電圧値との比較結果を制御回路63に対して出力する。制御回路63は、制御レジスタ64、選択レジスタ65、およびレジスタ70を制御する。レジスタ70は、各入力ポート40の電圧値に対応するデジタル値を記憶する複数のレジスタ70A,70B,…,70H,70Iを有する。より具体的には、レジスタ70は、負荷ポート40A,40B,…に対応する複数の負荷レジスタ70A,70B,…を有する。例えば、第一の負荷レジスタ70Aは、第一の負荷ポート40Aの供給電圧VeAがA/D変換された結果を記憶する。レジスタ70の第一診断レジスタ70Hは、第一診断ポート40Hの第一の電圧値Vcc1に対応するデジタル値を記憶する。第二診断レジスタ70Iは、第二診断ポート40Iの第二の電圧値Vcc2に対応するデジタル値を記憶する。
【0024】
制御回路63は、セレクタ7によって変換対象の入力ポート40をA/D変換回路6に接続させ、この入力ポート40に対応するレジスタ70に変換結果のデジタル値を格納する。例えば、変換対象の入力ポート40が第一の負荷ポート40Aである場合、制御回路63は、セレクタ7によって第一の負荷ポート40AをA/D変換回路6に接続させる。制御回路63は、選択レジスタ65の値(ポート番号)を第一の負荷ポート40Aに対応する値に切り替える。セレクタ7は、選択レジスタ65の値に応じて第一の負荷ポート40Aをサンプルホールド回路61に接続する。
【0025】
制御回路63は、制御レジスタ64の値を第一の負荷ポート40Aに対応する第一の負荷レジスタ70Aに転送させる。変換回路66は、第一の負荷レジスタ70Aのデジタル値をアナログ電圧に変換して比較回路62に出力する。制御回路63は、比較回路62の出力に基づいて制御レジスタ64および第一の負荷レジスタ70Aの値を増減させていく。制御回路63は、第一の負荷レジスタ70Aの値が第一の負荷ポート40Aの供給電圧VeAに対応する値となると、A/D変換を終了する。このようにして、入力ポート40のアナログ電圧がデジタル値に変換され、レジスタ70に記憶される。
【0026】
制御回路63は、複数の入力ポート40の電圧値を順次変換してレジスタ70に記憶させていく。例えば、制御回路63は、負荷ポート40A,40B,…,40Gの電圧値をこの順序で変換し、更に、第一診断ポート40Hおよび第二診断ポート40Iの電圧値を変換する。制御回路63は、全ての入力ポート40の電圧値の変換が完了すると、再度第一の負荷ポート40Aから順に電圧値の変換を繰り返し実行する。
【0027】
制御回路63、制御レジスタ64、選択レジスタ65、レジスタ70、供給部8、および判定部10は、内部バス80を介して相互に通信可能に接続されている。判定部10は、以下に説明するように、第一診断ポート40HとA/D変換回路6とを接続するようにセレクタ7が制御されたときのA/D変換回路6による変換結果と、第二診断ポート40IとA/D変換回路6とを接続するようにセレクタ7が制御されたときのA/D変換回路6による変換結果とに基づいてA/D変換部5の異常を判定する。
【0028】
供給部8は、
図3に示すようにパルス電圧を出力する。本実施形態では、LOが0[V]であり、HIは例えば5[V]である。供給部8からHIの電圧が出力されると、第一診断ポート40Hには第一の電圧値Vcc1が入力され、第二診断ポート40Iには第二の電圧値Vcc2が入力される。
【0029】
判定部10は、例えば、演算部、記憶部、入出力部等を含むコンピュータである。判定部10は、本実施形態において説明する動作を実行するように回路が構成され、または予め記憶しているプログラムに基づいて当該動作を実行する。本実施形態の判定部10は、以下に
図4−
図6を参照して説明するようにA/D変換部5の異常判定を行う。本実施形態に係るA/D変換部の異常判定方法は、
図6のフローチャートに示すように複数のステップを有する。複数のステップは、第一取得ステップ(ステップS10)、第二取得ステップ(ステップS20)、および判定ステップ(ステップS30)を含む。
【0030】
ステップS10において、判定部10は、第一取得ステップを実行する。第一取得ステップは、第一診断ポート40HとA/D変換回路6とを接続するようにセレクタ7を制御したときのA/D変換回路6による変換結果を取得するステップである。セレクタ7は、選択レジスタ65を介して制御回路63によって制御される。判定部10は、例えば、選択レジスタ65の値を参照して、第一取得ステップを実行すべき期間を判定する。判定部10は、選択レジスタ65の値が第一診断ポート40Hのポート番号である場合に、セレクタ7に対して第一診断ポート40HとA/D変換回路6とを接続する指令がなされていると判断することができる。判定部10は、セレクタ7に対して第一診断ポート40HとA/D変換回路6とを接続する指令がなされている期間に第一取得ステップを実行する。
【0031】
第一取得ステップにおいて、判定部10は、供給部8が出力している出力電圧の電圧値(HI/LO)およびこの出力電圧に対応するA/D変換回路6の変換結果を取得する。A/D変換回路6の変換結果は、第一診断レジスタ70Hから取得される。より詳しくは、判定部10は、供給部8の出力電圧がHIであるときの第一診断レジスタ70Hの値、および供給部8の出力電圧がLOであるときの第一診断レジスタ70Hの値をそれぞれ取得する。ステップS10が実行されると、ステップS20に進む。
【0032】
ステップS20において、判定部10は、第二取得ステップを実行する。第二取得ステップは、第二診断ポート40IとA/D変換回路6とを接続するようにセレクタ7を制御したときのA/D変換回路6による変換結果を取得するステップである。判定部10は、選択レジスタ65の値に基づき、セレクタ7に対して第二診断ポート40IとA/D変換回路6とを接続する指令がなされている期間を判定する。判定部10は、この期間に第二取得ステップを実行する。
【0033】
第二取得ステップにおいて、判定部10は、供給部8が出力している出力電圧の電圧値(HI/LO)、およびこの出力電圧に対応するA/D変換回路6の変換結果を取得する。A/D変換回路6の変換結果は、第二診断レジスタ70Iから取得される。より詳しくは、判定部10は、供給部8の出力電圧がHIであるときの第二診断レジスタ70Iの値、および供給部8の出力電圧がLOであるときの第二診断レジスタ70Iの値をそれぞれ取得する。ステップS20が実行されると、ステップS30に進む。
【0034】
ステップS30において、判定部10は、判定ステップを実行する。判定ステップは、第一取得ステップにおいて取得した情報と、第二取得ステップにおいて取得した情報とに基づいてA/D変換部5の異常を判定するステップである。判定部10は、例えば、
図4および
図5を参照して説明するようにしてA/D変換部5の異常を判定する。
【0035】
判定部10は、
図4に示す表のように、第一診断ポート40Hの電圧値が変換された結果に基づいてA/D変換部5の異常判定を行う。判定部10は、供給部8の出力がHIである場合に、第一診断レジスタ70Hの値が第一の電圧値Vcc1であればA/D変換部5が正常であると判定する。一方、判定部10は、供給部8の出力がHIである場合に、第一診断レジスタ70Hの値が第一の電圧値Vcc1と異なる値であればA/D変換部5が異常であると判定する。判定部10は、例えば、第一診断レジスタ70Hの値と第一の電圧値Vcc1との差が所定値以上である場合に、第一診断レジスタ70Hの値が第一の電圧値Vcc1と異なると判定する。
【0036】
判定部10は、供給部8の出力がLOである場合に、第一診断レジスタ70Hの値がLOであればA/D変換部5が正常であると判定し、第一診断レジスタ70Hの値がLOと異なる値であればA/D変換部5が異常であると判定する。
【0037】
判定部10は、更に、
図5に示す表のように、第二診断ポート40Iの電圧値が変換された結果に基づいてA/D変換部5の異常判定を行う。判定部10は、供給部8の出力がHIである場合に、第二診断レジスタ70Iの値が第二の電圧値Vcc2であればA/D変換部5が正常であると判定する。一方、判定部10は、供給部8の出力がHIである場合に、第二診断レジスタ70Iの値が第二の電圧値Vcc2と異なる値であればA/D変換部5が異常であると判定する。
【0038】
判定部10は、供給部8の出力がLOである場合に、第二診断レジスタ70Iの値がLOであればA/D変換部5が正常であると判定し、第二診断レジスタ70Iの値がLOと異なる値であればA/D変換部5が異常であると判定する。
【0039】
本実施形態の判定部10は、A/D変換回路6に異常が生じている場合だけでなく、セレクタ7に異常が生じている場合にもA/D変換部5の異常を判定することが可能である。例えば、セレクタ7が負荷ポート40A,40B,…,40Gの何れかに固着してしまっているとする。この場合、以下に説明するように、互いに入力電圧が異なる第一の電圧値Vcc1および第二の電圧値Vcc2の変換結果に基づいて、A/D変換部5の異常を判定することが可能である。
【0040】
より詳しく説明すると、セレクタ7の固着が生じている場合、固着している入力ポート40の供給電圧VeがA/D変換回路6に対して供給されたままとなる。従って、ステップS10においてHIの出力電圧に対して取得された第一診断レジスタ70Hの値と、ステップS20においてHIの出力電圧に対して取得された第二診断レジスタ70Iの値とが同一または実質的に同一の値となる。この場合、ステップS10またはステップS20の何れかにおいて、出力電圧がHIである場合の変換結果が異常であると判定される。その結果、A/D変換部5が正常に動作していないと判定できる。
【0041】
上記のように、本実施形態の電力供給装置1およびA/D変換部の異常判定方法によれば、A/D変換回路6が異常である場合だけでなく、セレクタ7が異常である場合にも変換結果から異常が検出される。本実施形態に対する比較例として、第二診断ポート40Iが設けられず、診断用のポートが第一診断ポート40H一つであり、診断用に入力される波形が一つである場合を想定する。この場合、セレクタ7において固着等の異常が発生していたとしても異常判定ができないことがある。例えば、セレクタ7が第一の負荷ポート40Aに固着しているとする。第一の負荷ポート40Aに入力される供給電圧VeAが第一の電圧値Vcc1と同等の電圧値である場合には、A/D変換部5が正常であると誤判定されてしまう可能性がある。
【0042】
これに対して、本実施形態の電力供給装置1は、A/D変換部5の異常診断用として異なる二つの波形が入力される。二つの波形は典型的にはパルス波形である。第一診断ポート40Hに入力される第一のパルス波形は、供給部8の出力電圧がHIである場合に第一の電圧値Vcc1となる波形である。第二診断ポート40Iに入力される第二のパルス波形は、供給部8の出力電圧がHIである場合に第二の電圧値Vcc2となる波形である。第一の電圧値Vcc1と第二の電圧値Vcc2とは明確に区別できるように異なっていることが好ましく、例えば、第一の電圧値Vcc1は第二の電圧値Vcc2の二倍の電圧値とされる。
【0043】
判定部10は、第一のパルス波形が入力されたときのA/D変換回路6による変換結果、および第二のパルス波形が入力されたときのA/D変換回路6による変換結果に基づいて異常判定を行う。従って、判定部10は、A/D変換回路6の異常だけでなく、セレクタ7の異常に対しても異常と判定し、A/D変換部5の信頼性を向上させることができる。
【0044】
以上説明したように、本実施形態に係る電力供給装置1は、電圧調節部3と、A/D変換部5と、判定部10と、供給部8とを有する。電圧調節部3は、電力供給指令に応じて電源11からの電圧を調圧して負荷12に対して供給する。判定部10は、A/D変換部5の異常判定を行う。供給部8は、異常判定用の電圧を供給する。A/D変換部5は、A/D変換回路6と、複数の入力ポート40と、セレクタ7とを有する。A/D変換回路6は、電圧をデジタル値に変換する。セレクタ7は、複数の入力ポート40の何れか一つをA/D変換回路6に接続する。
【0045】
複数の入力ポート40は、負荷12に対する供給電圧Veが入力される負荷ポート40A,40B,…,40Gと、第一診断ポート40Hと、第二診断ポート40Iと、を有する。供給部8は、第一診断ポート40Hに対して第一の電圧値Vcc1を供給し、かつ第二診断ポート40Iに対して第二の電圧値Vcc2を供給する。第一の電圧値Vcc1と第二の電圧値Vcc2とは異なる電圧値である。
【0046】
判定部10は、第一診断ポート40HとA/D変換回路6とを接続するようにセレクタ7を制御したときのA/D変換回路6による変換結果と、第二診断ポート40IとA/D変換回路6とを接続するようにセレクタ7を制御したときのA/D変換回路6による変換結果とに基づいてA/D変換部5の異常を判定する。
【0047】
本実施形態の電力供給装置1は、異なる二つの電圧値Vcc1,Vcc2の変換結果に基づいてA/D変換部5の異常を判定する。よって、本実施形態の電力供給装置1は、セレクタ7に異常がある場合にA/D変換部5の異常と判定することができ、A/D変換部5の信頼性を向上させることができる。
【0048】
また、本実施形態の電力供給装置1は、更に、供給部8と第一診断ポート40Hおよび第二診断ポート40Iとの間に介在する分圧回路9を有する。供給部8は、
図3に例示するようなパルス波形の電圧(矩形波)を出力する。供給部8から出力されるパルス波形の電圧は、第一の電圧値Vcc1およびLO電圧を交互に繰り返すパルス波形として分圧回路9から第一診断ポート40Hに出力される。第一診断ポート40Hに出力されるパルス波形は、
図3に示すパルス波形と類似したものであり、
図3のHI電圧に相当する電圧が第一の電圧値Vcc1となっている。
【0049】
また、供給部8から出力されるパルス波形の電圧は、第二の電圧値Vcc2およびLO電圧を交互に繰り返すパルス波形として分圧回路9から第二診断ポート40Iに出力される。第二診断ポート40Iに出力されるパルス波形は、
図3に示すパルス波形と類似したものであり、
図3のHI電圧に相当する電圧が第二の電圧値Vcc2となっている。異常判定用の電圧がパルス波形となっていることで、A/D変換部5の異常を適切に判定することができる。
【0050】
本実施形態に係るA/D変換部の異常判定方法は、第一診断ポート40Hおよび第二診断ポート40Iを含む複数の入力ポート40と、A/D変換回路6と、セレクタ7と、を有するA/D変換部5の異常を判定するステップを備える。上記のステップは、第一取得ステップと、第二取得ステップと、判定ステップと、を有する。
【0051】
第一取得ステップは、第一診断ポート40HとA/D変換回路6とを接続するようにセレクタ7を制御し、前記第一診断ポート40Hに第一の電圧値Vcc1を供給したときのA/D変換回路6による変換結果を取得するステップである。第二取得ステップは、第二診断ポート40IとA/D変換回路6とを接続するようにセレクタ7を制御し、前記第二診断ポート40Iに第二の電圧値Vcc2を供給したときのA/D変換回路6による変換結果を取得するステップである。判定ステップは、第一取得ステップにおいて取得した情報と、第二取得ステップにおいて取得した情報とに基づいてA/D変換部5の異常を判定するステップである。
【0052】
本実施形態のA/D変換部の異常判定方法は、異なる二つの電圧値Vcc1,Vcc2の変換結果に基づいてA/D変換部5の異常を判定する。よって、本実施形態のA/D変換部の異常判定方法は、セレクタ7に異常がある場合にA/D変換部5の異常と判定することができ、A/D変換部5の信頼性を向上させることができる。
【0053】
本実施形態のA/D変換部の異常判定方法では、第一取得ステップにおいて第一診断ポート40Hに上記第一のパルス波形が入力されてもよく、第二取得ステップにおいて第二診断ポート40Iに上記第二のパルス波形が入力されてもよい。
【0054】
[実施形態の変形例]
実施形態の変形例について説明する。判定部10は、制御部2における他の回路/装置とは独立した回路/装置であっても、他の回路/装置に含まれていてもよい。例えば、制御部2の制御回路63が判定部10の機能を有していてもよい。
【0055】
第二の電圧値Vcc2は、第一の電圧値Vcc1の半分の値には限定されない。第一の電圧値Vcc1と第二の電圧値Vcc2との比率は、少なくともセレクタ7の異常が生じた場合に適切にA/D変換部5の異常を判定できるように適宜定められる。第二の電圧値Vcc2は、LO電圧と第一の電圧値Vcc1との間の適切な電圧値に設定される。
【0056】
負荷12は、ランプには限定されない。負荷12は、安定的な供給電圧Veを要求するその他の負荷であってもよい。また、負荷12は、動作要求がなされている状態(例えば、ユーザによってスイッチONされている状態)において電力の継続的な供給を要求するその他の負荷であってもよい。
【0057】
A/D変換回路6の具体的な構成は、例示した構成には限定されない。A/D変換回路6は、アナログ電圧をデジタル値に変換することができるその他の回路構成を有するものであってもよい。
【0058】
判定部10は、第一の電圧値Vcc1に基づく正常/異常の仮判定を繰り返し行い、異常の仮判定が複数回連続した場合にA/D変換部5の異常判定を確定させてもよい。判定部10は、第一の電圧値Vcc1に基づく正常の仮判定が複数回連続した場合にA/D変換部5の正常判定を確定させてもよい。また、判定部10は、異常の仮判定の発生頻度が所定値を超えた場合にA/D変換部5の異常判定を確定させてもよい。判定部10は、第二の電圧値Vcc2に基づく正常/異常の判定についても、第一の電圧値Vcc1に基づく判定と同様に仮判定を導入してもよい。
【0059】
上記の実施形態および変形例に開示された内容は、適宜組み合わせて実行することができる。