特許第6681356号(P6681356)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6681356
(24)【登録日】2020年3月25日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】熱電変換モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 35/32 20060101AFI20200406BHJP
   H01L 35/30 20060101ALI20200406BHJP
   H02N 11/00 20060101ALI20200406BHJP
【FI】
   H01L35/32 A
   H01L35/30
   H02N11/00 A
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-41909(P2017-41909)
(22)【出願日】2017年3月6日
(65)【公開番号】特開2018-148037(P2018-148037A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2017年10月5日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「クリーンデバイス社会実装推進事業/熱発電デバイスによる中温度域独立給電型センシングモジュールの用途開拓」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】306013120
【氏名又は名称】昭和電線ケーブルシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 倫之
(72)【発明者】
【氏名】西岡 淳一
【審査官】 田邊 顕人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−034135(JP,A)
【文献】 特開2016−028422(JP,A)
【文献】 特開2016−225346(JP,A)
【文献】 特開2016−174114(JP,A)
【文献】 特開2002−368291(JP,A)
【文献】 特開2010−287729(JP,A)
【文献】 特開2016−029695(JP,A)
【文献】 特開2016−072579(JP,A)
【文献】 特開2009−123964(JP,A)
【文献】 特開2008−244100(JP,A)
【文献】 特開2006−216642(JP,A)
【文献】 特開2000−286460(JP,A)
【文献】 特開2000−068564(JP,A)
【文献】 特開平09−223823(JP,A)
【文献】 特開2007−109942(JP,A)
【文献】 特開2007−235083(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/023548(WO,A1)
【文献】 特開2005−019792(JP,A)
【文献】 特開平10−004219(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 35/32
H01L 35/30
H02N 11/00
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温側の熱源と低温側の冷却板との間に配置される熱電変換モジュールであって、
MnSiのp型半導体からなる柱状の第1の熱電素子及びMgSiのn型半導体からなる柱状の第2の熱電素子を、金属電極を介してπ型に接続し、これを多数集合させて電気的に直列に接続した熱電素子群と、
前記熱電素子群の低温側に配置される第1の絶縁基板と、
前記熱電素子群の高温側に配置される第2の絶縁基板と、を備え、
前記第1の絶縁基板は、前記第1の熱電素子及び前記第2の熱電素子ごとに分割されていることを特徴とする熱電変換モジュール。
【請求項2】
前記第1の絶縁基板の分割された個々の面積は、前記第1の熱電素子及び前記第2の熱電素子と略同一であることを特徴とする請求項1に記載の熱電変換モジュール。
【請求項3】
前記第1の絶縁基板の前記熱電素子群が配置されている面とは反対側の面に配置される弾性シートを備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱電変換モジュール。
【請求項4】
前記弾性シートは、シリコーンゴムで形成されることを特徴とする請求項3に記載の熱電変換モジュール。
【請求項5】
前記絶縁基板は、Alで形成されることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の熱電変換モジュール。
【請求項6】
前記金属電極は、Ag又はNiで形成されることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の熱電変換モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電変換モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱電素子のゼーベック効果又はペルチェ効果を利用して、熱エネルギーを電気エネルギーに、又は電気エネルギーを熱エネルギーに直接変換する熱電変換モジュールが知られている(例えば特許文献1〜3)。
【0003】
熱電変換モジュールは、可動部(機械的な駆動部分)を持たず構造が簡単であるため、摩耗劣化などの心配がなく信頼性・耐久性に優れる、メンテナンスが容易である、小型化・軽量化が容易で適用場所の制限が少ない、という利点がある。このような利点を有することから、大量の熱が排出される工業炉(電気炉や燃焼炉等、各種産業分野で溶解、精錬、加熱等の工程で使用される炉)にも比較的容易に設置することができる。また、熱電変換モジュールを用いた熱電発電装置は、二酸化炭素を排出することもなく、廃熱を回収してエネルギー源として再利用することができる技術として、環境保全や省エネルギーの観点から非常に注目されている。
【0004】
一般的な熱電変換モジュールは、p型半導体及びn型半導体からなる柱状の熱電素子を、金属電極を介してπ型に接続し、これを多数集合させて電気的に直列に接続した熱電素子群と、熱電素子群を挟持する2枚の絶縁基板(例えば、セラミック基板)と、を備える。絶縁基板の一方(以下「第1の絶縁基板」と称する)が高温側である熱源に設置され、他方(以下「第2の絶縁基板」と称する)が低温側である冷却板に設置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−186296号公報
【特許文献2】特開2015−177048号公報
【特許文献3】特開2015−177049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した熱電変換モジュールにおいては、稼働時に、熱電素子に温度勾配が形成されるため、熱電素子が熱膨張する。熱電素子群の全体を覆う1枚の絶縁基板によって厚さ方向の変形は規制されているので、熱電素子に用いられるp型半導体とn型半導体の熱膨張係数が異なる場合、熱電素子(特に熱膨張量の大きい方の熱電素子)や絶縁基板に歪が生じる。そのため、熱電素子と金属電極との接合部に空気層が形成されて内部抵抗が上昇したり、金属電極と絶縁基板との接合部に空気層が形成されて入熱量が減少したりして、出力特性が低下する虞がある。さらには、熱電素子や絶縁基板が破損する虞もある。一方、出力特性を単に向上させたとしても、経時的に内部抵抗が上昇し長期耐久性が得られず出力保持期間が低下する虞や、熱電変換モジュールの取り付け・取り外しを繰り返す中で熱電素子に不要な応力が加わることで、出力が低下し再現性が低下してしまう虞もある。
【0007】
ところで、300〜600℃の中温領域で使用される熱電変換モジュールにおいては、シリサイド系半導体であるMgSiを適用した熱電素子の使用が見込まれている。MgSiのn型半導体は、中温領域で高い熱電性能を発揮するためである。しかしながら、MgSiのp型半導体は熱的に不安定なため、p型半導体には、MnSiの使用が検討されている。この場合、熱膨張係数に約1.5倍の開きがあるため、BiTe系半導体等を適用した場合に比較して歪が大きくなる。したがって、上述した課題がより顕著となる。
【0008】
本発明の目的は、p型半導体とn型半導体の熱膨張係数の差による出力特性の低下を防止できるとともに、熱電素子等の構成部材の破損を防止できる、高い信頼性を有する熱電変換モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る熱電変換モジュールは、
高温側の熱源と低温側の冷却板との間に配置される熱電変換モジュールであって、
MnSiのp型半導体からなる柱状の第1の熱電素子及びMgSiのn型半導体からなる柱状の第2の熱電素子を、金属電極を介してπ型に接続し、これを多数集合させて電気的に直列に接続した熱電素子群と、
前記熱電素子群の低温側に配置される第1の絶縁基板と、
前記熱電素子群の高温側に配置される第2の絶縁基板と、を備え、
前記第1の絶縁基板は、前記第1の熱電素子及び前記第2の熱電素子ごとに分割されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、p型半導体とn型半導体の熱膨張係数の差による出力特性の低下を防止できるとともに、熱電素子等の構成部材の破損を防止できる、高い信頼性を有する熱電変換モジュールが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施の形態に係る熱電変換モジュールを示す図である。
図2】熱電変換モジュールの設置状態を示す断面図である。
図3】実施例1に係る熱電変換モジュールの設置状態を示す断面図である。
図4図4A図4Bは、比較例に係る熱電変換モジュールの設置状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施の形態に係る熱電変換モジュール1を示す図である。図2は、熱電変換モジュール1の設置状態を示す断面図である。図2では、熱電変換モジュール1における1つの熱電素子対だけを示している。
【0014】
図1図2に示すように、熱電変換モジュール1は、熱電素子群10と、熱電素子群10を挟持する絶縁基板14、15を有する。熱電素子群10は、p型半導体からなる第1の熱電素子11及びn型半導体からなる第2の熱電素子12を、金属電極13を介して「π」型に接続し、これを多数集合させて電気的に直列に接続した構成を有する。以下において、第1の熱電素子11と第2の熱電素子12を区別しない場合は、「熱電素子11、12」と表記する。
【0015】
熱電変換モジュール1は、高温側の熱源22と低温側の冷却板21との間に設置される。設置状態において、低温側となる絶縁基板14を「第1の絶縁基板14」、高温側となる絶縁基板15を「第2の絶縁基板15」と称する。第1の絶縁基板14と冷却板21との間には、弾性シート16が介在する。
【0016】
平板状の熱電変換モジュール1を、一方の面が高温側、他方の面が低温側となるように設置して両面間に温度差を与えると、起電力が生じる。この電力は、熱電変換モジュール1に接続された電流リード17、18を介して取り出される。逆に、電流リード17、18を介して熱電変換モジュール1に電流を流すと、一方の面で発熱が生じ、他方の面で吸熱が生じる。
【0017】
熱電素子11、12は、角柱状又は円柱状の柱状部材である。熱電素子11、12を円柱状の部材で形成する場合、熱応力に対する耐性が向上する。
【0018】
熱電素子11、12は、シリサイド系半導体で形成される。具体的には、第1の熱電素子11は、MnSiのp型半導体で形成され、第2の熱電素子12は、MgSiのn型半導体で形成される。MnSiの熱膨張係数は13×10−6/Kであり、MgSiの熱膨張係数は19×10−6/Kである。したがって、両者の熱膨張係数の差は1.46倍である。
【0019】
なお、従来、熱電素子に適用されているBiTe系半導体、PbTe系半導体、SiGe系半導体の場合、p型半導体とn型半導体の熱膨張係数の差は1.2倍より小さく、シリサイド系半導体の場合よりも明らかに小さい。
【0020】
金属電極13は、例えばAg又はNiで形成される。熱電素子11、12と金属電極13は、例えば半田付けにより接合される。
【0021】
弾性シート16は、例えばシリコーンゴムで形成される。シリコーンゴムの耐熱温度は200℃未満であるので、高温側での使用には適さない。弾性シート16の厚さは、稼働時の熱電素子11、12の熱膨張を吸収できる範囲で、できるだけ薄いことが好ましい。
【0022】
第1の絶縁基板14及び第2の絶縁基板15は、絶縁性のセラミックスで形成される(いわゆるセラミック基板)。第1の絶縁基板14及び第2の絶縁基板15には、例えば、アルミナ、窒化ケイ素、窒化アルミ、ジルコニア、イットリア、炭化ケイ素、ムライト、ステアタイト、フォルステライト、コージライト、またはこれらを含む複合セラミック材料等を適用できる。
【0023】
高温側の第2の絶縁基板15は、熱電素子群10の全体を覆う一枚板である。低温側の第1の絶縁基板14は、分割構造を有し、第1の熱電素子11及び第2の熱電素子12に対応する位置に配置されている。
【0024】
第1の絶縁基板14の分割された個々の面積は、第1の熱電素子11及び第2の熱電素子12と略同一であることが好ましい。これにより、絶縁性を確保しつつ、熱電素子11、12の熱膨張に追従することができる。
【0025】
なお、第2の絶縁基板15は、一枚板でなく、分割構造を有していてもよい。ただし、熱源のある高温側は熱応力がかかりやすいため、第2の絶縁基板15を分割構造とした場合、第2の絶縁基板15の端部において、熱応力による隙間(空気層)が形成され、入熱量が低下することが懸念される。
そこで、第2の絶縁基板15を分割構造とする場合、熱電変換モジュール1の形状を保持できることが前提となる。例えば、第2の絶縁基板15は、金属電極13同士の離間部分を補完するように、金属電極13を跨いで形成される。この場合、熱電変換モジュール1の高温側の面が、第2の絶縁基板15及び金属電極13によって一体的に形成されるので、熱電変換モジュール1の形状を保持するための強度を確保することができる。
【0026】
第1の絶縁基板14が第1の熱電素子11及び第2の熱電素子12のそれぞれに対応して分割して設けられているので、第1の熱電素子11及び第2の熱電素子12は、第1の絶縁基板14による制約を受けず、それぞれの熱膨張係数に従って膨張することができる。高温側は第2の絶縁基板15によって規制されているので、第1の熱電素子11及び第2の熱電素子12は、低温側に向かって伸長するが、それぞれの熱膨張は、弾性シート16によって吸収される。
【0027】
これにより、熱電変換モジュール1の構成材料に生じる熱応力を効果的に抑制することができる。したがって、熱電素子11、12と金属電極13との間に空気層が形成されて内部抵抗が上昇したり、金属電極13と第1の絶縁基板14との間に空気層が形成されて入熱量が減少したりして、出力特性が低下するのを防止できる。また、熱電素子11、12の破損も有効に防止できる。
【0028】
このように、本実施の形態に係る熱電変換モジュール1は、高温側の熱源と低温側の冷却板との間に配置される熱電変換モジュールであって、p型半導体からなる柱状の第1の熱電素子11及びn型半導体からなる柱状の第2の熱電素子12を、金属電極13を介してπ型に接続し、これを多数集合させて電気的に直列に接続した熱電素子群10と、熱電素子群10の低温側に配置される第1の絶縁基板14と、低温側に配置される第2の絶縁基板15と、を備える。第1の絶縁基板14は、第1の熱電素子11及び第2の熱電素子12ごとに分割されている。
さらに、熱電変換モジュール1は、第1の絶縁基板14の熱電素子群10が配置されている面とは反対側の面に配置される弾性シート16を備えるのが好ましい。
【0029】
熱電変換モジュール1によれば、p型半導体とn型半導体の熱膨張係数の差による出力特性の低下を防止できるとともに、熱電素子11、12等の構成材料の破損を防止することができる。したがって、熱電変換モジュール1は、極めて高い信頼性を有する。
【0030】
[実施例1]
実施例1では、図3に示す熱電変換モジュール2を作成した。すなわち、第1の絶縁基板14(低温側絶縁基板)を分割構造とし、第2の絶縁基板15(高温側絶縁基板)を一枚板で形成した。実施例1の熱電変換モジュール2は、図1、2における弾性シート16を備えていない。第1の絶縁基板14及び第2の絶縁基板15はアルミナで形成し、金属電極13はAgで形成した。また、第1の熱電素子11は、MnSiのp型半導体で形成し、第2の熱電素子12は、MgSiのn型半導体で形成した。
【0031】
[実施例2]
実施例2では、実施の形態で説明した構造を有する熱電変換モジュール1を作成した(図1図2参照)。すなわち、第1の絶縁基板14(低温側絶縁基板)を分割構造とし、第2の絶縁基板15(高温側絶縁基板)を一枚板で形成した。第1の絶縁基板14と冷却板21との間に弾性シート16を介在させた(図2参照)。第1の絶縁基板14及び第2の絶縁基板15はアルミナで形成し、金属電極13はAgで形成し、弾性シート16はシリコーンゴムで形成した。また、第1の熱電素子11は、MnSiのp型半導体で形成し、第2の熱電素子12は、MgSiのn型半導体で形成した。
【0032】
[比較例1]
比較例1では、実施例2における分割構造の第1の絶縁基板14に代えて、一枚板の第1の絶縁基板24を採用した熱電変換モジュール3を作成した(図4A参照)。その他の構成は実施例2と同様である。
【0033】
[比較例2]
比較例2では、実施例2における一枚板の第2の絶縁基板15に代えて、分割構造の第2の絶縁基板25を採用した熱電変換モジュール4を作成した(図4B参照)。その他の構成は実施例と同様である。
【0034】
[評価結果]
実施例1、実施例2、比較例1及び比較例2の熱電変換モジュール1〜4について、出力特性、出力保持期間(耐久性)及び再現性を評価した。評価結果を表1に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
<出力特性の判断基準>
500℃の熱源における熱電変換モジュールの出力が0.3W/cm以上を◎、0.25W/cm以上0.3W/cm未満を○、0.25W/cm未満を×とした。
<耐久性の判断基準>
熱電変換モジュールの出力が10%低下するまでの経過時間が100時間以上を○、100時間未満を×とした。
<再現性の判断基準>
熱電変換モジュールの取り付け・取り外しのサイクルを10回行った後の出力が、初回取り付け時出力の90%以上を○、90%未満を×とした。
【0037】
表1に示すように、低温側の第1の絶縁基板14を分割構造とし、かつ、第1の絶縁基板14と冷却板21との間に弾性シート16を介在させた実施例2は、出力特性が“◎”であり、耐久性・再現性共に“○”であり、全体として優れた品質を有することが確認された。また、低温側の第1の絶縁基板14と高温側の第2の絶縁基板15の構造を変えずに弾性シート16を介在させない実施例1は、出力特性が“○”となった。
【0038】
低温側絶縁基板を一枚板の第1の絶縁基板24とした以外は実施例2と同様の構造である比較例1は、一枚板の絶縁基板で熱電素子群を挟持している構造のため熱電変換モジュールの上下面が固定されており取扱性が良く、熱電変換モジュールの取り付け・取り外しの再現性は“○”であった。しかし、熱電変換モジュールの上下面が固定されているため、熱電素子11、12の熱膨張により出力特性が0.25W/cm未満となり、また、出力特性が経時的に低下した。比較例1の熱電変換モジュールは、出力特性及び耐久性が共に“×”であり、実施例1、実施例2に比較して低品質であることが確認された。熱電素子11、12の熱膨張が十分に吸収されず、熱電素子11と金属電極13との接合部又は金属電極13と第1の絶縁基板24との接合部に空気層が形成されたために、出力特性及び耐久性が低下したと考えられる。
【0039】
実施例2に対して、高温側絶縁基板を分割構造の第2の絶縁基板25とした比較例2は、出力特性及び耐久性は“○”であった。しかし、高温側絶縁基板も分割構造としたため、取扱性が悪くなり、取り付け・取り外しを繰り返した際の出力特性が低下した。比較例2の熱電変換モジュールは、再現性が“×”であり、実施例1、実施例2に比較して低品質であることが確認された。比較例2の熱電変換モジュール4は、上下面が固定構造ではなく、形状保持が困難であるために、取扱性が悪い。取扱時に熱電変換モジュール4の平板形状が損なわれると、熱電素子11、12と金属電極13との接合部、金属電極13と第1の絶縁基板14との接合部、又は金属電極13と第2の絶縁基板25との接合部に空気層が形成されやすくなるために、取り付け・取り外しを繰り返した際の出力特性が低下したと考えられる。
【0040】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0041】
例えば、本発明は、熱電素子11、12が、BiTe系半導体、PbTe系半導体、SiGe系半導体で形成される場合にも適用できる。これらの半導体で熱電素子11、12が形成される場合、p型半導体とn型半導体の熱膨張係数の差は、シリサイド系半導体で熱電素子11、12が形成される場合に比較して小さいので、実施の形態で示したのと同等以上の効果が得られる。
【0042】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0043】
1 熱電変換モジュール
10 熱電素子群
11 第1の熱電素子(p型半導体)
12 第2の熱電素子(n型半導体)
13 金属電極
14 低温側絶縁基板(第1の絶縁基板)
15 高温側絶縁基板(第2の絶縁基板)
16 弾性シート
図1
図2
図3
図4