(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1のポリマーがポリ(アクリロイル−6−アミノカプロン酸)であり、前記第2のポリマーがポリ(メタクリル酸−co−アクリル酸エチル)である、請求項1に記載のポリマー複合材料。
【発明を実施するための形態】
【0012】
一般に、腸溶性エラストマーおよび関連方法が提供される。いくつかの実施形態では、腸溶性エラストマーはポリマー複合材料である。特定の実施形態は、2つのカルボキシル基含有ポリマー内の水素結合が、ポリマーネットワークを、弾性かつpH応答性のポリマー複合材料へと架橋しているポリマー複合材料を含む。特定の実施形態によれば、好都合にも、このポリマー複合材料は、胃中環境などの酸性環境中で安定かつ弾性である能力を有するが、小腸および大腸中環境などの中性のpH環境中で溶解させることができる。いくつかの実施形態では、本明細書で記載の特定のポリマー複合材料は、2つまたはそれを超えるポリマーが水素結合を形成するように、カルボキシル官能基を有する2つまたはそれを超えるポリマーの混合物を含む。特定の実施形態では、ポリマー複合材料は、腸溶性および弾性の両方の性質を有する。
【0013】
本明細書で記載の特定のポリマー複合材料は、以降でより詳細に記載されるように、限定されないが、摂取型電子構造体、薬物送達、生物学的診断、医用構造体、栄養管、組織工学、獣医学適用、食品包装および環境工学適用などの様々な適用において有用であろう。腸溶性ポリマーは、一般に当該技術分野において既知であり、胃中環境の高酸性度から活性な薬学的成分を保護するために、通常は経口丸剤およびカプセルのコーティングとして使用される。これらの材料は通常、大きな疎水部分と、pH応答性のためのカルボキシル基とを有することによって共通の構造を有する。しかし、既存の腸溶性ポリマーは、通常、剛性であり、また、脆性であることが多い。本明細書で記載の特定のポリマー複合材料は、例えば、ポリマー複合材料の機械的特性を調整する能力ならびに所望の弾性および/または可撓性を有するポリマーを生成する能力などの、従来の腸溶性ポリマーに優るいくつかの利点を有する。
【0014】
本明細書で記載のポリマー複合材料は、一般に弾性である。用語「弾性」は通常、元の形状からの収縮、膨張、または変形後に、自発的にその元の形状に実質的に戻る材料の能力を意味する。特定の実施形態によれば、本明細書で記載のポリマー複合材料は、従来の腸溶性ポリマーに比べて、限定されないが、カプセル化に耐えるのに充分な機械的強度および/または胃中環境などの生理的環境中に存在する圧縮力を受けるのに充分な機械的強度などの、1つまたはそれを超える利点を提供し得る。
【0015】
特定の実施形態では、ポリマー複合材料は、顕著な非弾性変形を受けることなく、比較的長い期間にわたり大きな角度の変形を受けるように構成されるように選択されてよい。いくつかのこのような実施形態では、ポリマー複合材料は、機械的変形の解放後、約30分未満以内に、約10分未満以内に、約5分未満以内に、または約1分未満以内に、ポリマー複合材料をその変形前の形状に実質的に戻すのに充分な跳ね返り強度を有してよい。当業者なら、その変形前の形状へ戻すことは、形状の数学的定義に絶対的に一致することを必要としないと理解すべきであり、むしろ、当業者によりこのような主題に最も密接に関係していると理解されるであろうと特徴付けられる主題に対し可能な程度に形状の数学的定義に一致することを示すと理解すべきであることがわかるであろう。
【0016】
いくつかの実施形態では、ポリマー複合材料リンカーは、大きな可撓性を有する。可撓性により、構造体の詰め込みおよび/または折り畳みを、本明細書に記載のように、例えば、経口投与のためのカプセルまたは内視鏡配置のためにカテーテルなどの密閉された/予め画定された容器に適合させることを可能にすることができる。いくつかの実施形態では、ポリマー複合材料は、180度までの可撓性を有し、密なおよび/または最大の詰め込みおよび/または折り畳みを可能とする。
【0017】
ポリマー複合材料は、少なくとも約45度、少なくとも約60度、少なくとも約90度、少なくとも約120度、少なくとも約150度、または約180度の機械的曲げ変形を壊れずに受けるように構成されてよい。特定の実施形態では、ポリマー複合材料は、最大約180度以下、最大約150度以下、最大約120度以下、最大約90度以下、または最大約60度以下の機械的曲げ変形を壊れずに受けるように構成されてよい。上記参照範囲のいずれかに終点を有するあらゆる閉区間も可能である(例えば、約45度〜約180度、約60度〜約180度、約60度〜約120度、約90度〜約180度)。他の範囲も可能である。
【0018】
いくつかの事例では、ポリマー複合材料は、比較的長期間にわたり変形した構成(例えば、少なくとも約45度の機械的曲げ変形)で残存するように構成されてよい−例えば、いくつかの実施形態では、ポリマー複合材料は、このような変形した構成での少なくとも約24時間、少なくとも約1週間、少なくとも約1ヶ月間、少なくとも約1年間、または少なくとも約2年間の貯蔵寿命を有し、依然としてその変形前の構成に実質的に戻る(すなわち、跳ね返る)ように構成されてよい。特定の実施形態では、ポリマー複合材料は、変形した構成での最長約3年間以下の、最長約2年間以下の、最長約1年間以下の、最長約1ヶ月以下の、または最長約1週間以下の貯蔵寿命を有し、その変形前の構成に実質的に戻る(すなわち、跳ね返る)ように構成されている。上記参照範囲のいずれかに終点を有するあらゆる閉区間も可能である(例えば、約24時間〜約3年間、約1週間〜1年間、約1年間〜3年間)。他の範囲も可能である。
【0019】
当業者なら、例えば、モノマーおよび/またはポリマー単位のモル比を変えることにより、および/またはポリマーの架橋密度を変えることにより、ポリマー複合材料の機械的性質(例えば、弾性係数、クリープ挙動)を調整する適切な方法を決定するように構成されるであろう。
【0020】
特定の実施形態では、ポリマー複合材料は、その初期長さの50%から1500%まで伸長されると、可逆的伸びを示すことができる。例えば、いくつかの実施形態では、ポリマー複合材料は、その初期長さの、少なくとも約50%、少なくとも約100%、少なくとも約200%、少なくとも約400%、少なくとも約500%、少なくとも約1000%、少なくとも約1200%、または少なくとも約1400%伸長される場合、可逆的伸びを示すことができる。すなわち、いくつかの実施形態では、ポリマー複合材料は、約10%未満、約5%未満、約2%未満、または約1%未満の変形後対変形前(例えば、伸長前後)の平均長さの差異を有する。特定の実施形態では、ポリマー複合材料は、その初期長さの、約1500%以下、約1400%以下、約1200%以下、約1000%以下、約500%以下、約400%以下、約200%以下、または約100%以下伸長される場合、可逆的伸びを示すことができる。上記参照範囲のいずれかに終点を有するあらゆる閉区間も可能である(例えば、約50%〜約1500%、約100%〜約1500%、約200%〜約1000%、約500%〜約1400%)。他の範囲も可能である。
【0021】
特定の実施形態では、寸法がその初期長さから、その初期長さの約50%未満の長さに変形される場合に、および/または寸法がその初期長さから、その初期長さの少なくとも約1500%の長さに変形される場合、ポリマー複合材料の少なくとも1つの寸法が、可逆的伸びを示す。本明細書で使用される場合、用語「可逆的伸び」は、通常、引張応力下でその初期長さより大きい長さまでの変形を受け、引張応力が取り除かれると、その初期長さに実質的に戻るポリマーの能力を意味する。すなわち、いくつかの実施形態では、ポリマー複合材料は、約10%未満、約5%未満、約2%未満、または約1%未満の変形後対変形前(例えば、伸長前後)の平均長さの差異を有する。例えば、いくつかの実施形態では、ポリマー複合材料は、その初期長さの、少なくとも約50%、少なくとも約100%、少なくとも約200%、少なくとも約400%、少なくとも約500%、少なくとも約1000%、少なくとも約1200%、または少なくとも約1400%伸長される場合、可逆的伸びを示す。特定の実施形態では、ポリマー複合材料は、その初期長さの、約1500%以下、約1400%以下、約1200%以下、約1000%以下、約500%以下、約400%以下、約200%以下、または約100%以下伸長される場合、可逆的伸びを示す。上記参照範囲の組み合わせも可能である(例えば、約50%〜約1500%、約100%〜約1500%、約200%〜約1000%、約500%〜約1400%)。他の範囲も可能である。
【0022】
特定の実施形態では、ポリマー複合材料は、約0.1MPa〜約100MPaの範囲の弾性係数を有する。いくつかの実施形態では、ポリマー複合材料の弾性係数は、少なくとも約0.1MPa、少なくとも約0.2MPa、少なくとも約0.3MPa、少なくとも約0.5MPa、少なくとも約1MPa、少なくとも約2MPa、少なくとも約5MPa、少なくとも約10MPa、少なくとも約25MPa、または少なくとも約50MPaである。特定の実施形態では、ポリマー複合材料の弾性係数は、約100MPa以下、約50MPa以下、約25MPa以下、約10MPa以下、約5MPa以下、約2MPa以下、約1MPa以下、約0.5MPa以下、約0.3MPa以下、または約0.2MPa以下である。上記参照範囲の組み合わせも可能である(例えば、約0.1MPa〜約100MPa、約0.3MPa〜約10MPa)。他の範囲も可能である。当業者なら、例えば、ASTM D638に基づく引張機械的特徴付けおよび/またはASTM D575に基づく圧縮機械的特徴付けを含むポリマー複合材料の可逆的伸び特徴および/または弾性係数を決定する好適な方法を選択するように構成するであろう。
【0023】
いくつかの事例では、ポリマー複合材料は、第1の生理的条件(例えば、胃中などの酸性pH中)では実質的に分解可能ではなく、第1の組の生理的条件とは異なる第2の生理的条件(例えば、腸の比較的アルカリ性のpH)で分解するように構成される。用語生理的条件は、通常、生物体または細胞系に存在し得る一組の外部または内部環境条件(例えば、研究室条件とは対照的な条件)を意味する。例えば、いくつかの事例では、生理的条件は、約20℃〜約40℃(例えば、約35℃〜約38℃)の温度および/または約1気圧の大気圧の範囲である。特定の実施形態では、生理的条件は、胃、腸、膀胱、肺、および/または心臓などの内部臓器の条件である。特定の実施形態によれば、ポリマー複合材料は、本明細書に記載のように、ポリマー複合材料が、特定の滞留期間後(例えば、約24時間後、約48時間後、約3日後、約7日後、約1ヶ月後、約1年後)、および/または特定の範囲のpHで溶解/分解するが、異なる範囲のpHでは安定であるように調整されてよい。
【0024】
特定の実施形態によれば、本明細書で記載のポリマー複合材料は、腸溶性である。用語腸溶性は、通常、比較的高度に酸性のpH条件(例えば、約5.5未満のpH)で安定であり(例えば、実質的に溶解しない)、比較的アルカリ性のpH条件(例えば、約6〜約9のpH)での溶解に対して感受性である材料を記述するために使用される。
【0025】
いくつかの実施形態では、ポリマー複合材料の溶解は、例えば、アルカリ溶液の摂取によって引き起こすことができる。いくつかの実施形態では、ポリマー複合材料は、約5.5を超えるpHで溶解能力を有する。いくつかの実施形態によれば、ポリマー複合材料は、ポリマー複合材料が酸性の胃中環境(例えば、約1〜約4のpHの環境)中で安定であるが、胃腸管のよりアルカリ性の領域(すなわち、pHが約5.5より大きい領域)(例えば、幽門の遠位の胃腸管の部分など)で溶解するように選択される。
【0026】
例えば、特定の実施形態では、ポリマー複合材料は、約1〜約5のpH範囲で実質的に溶解しない。いくつかの実施形態では、ポリマー複合材料は、少なくとも約1、少なくとも約2、少なくとも約3、少なくとも約4、または少なくとも約4.5のpHで、実質的に溶解しない。特定の実施形態では、ポリマー複合材料は、約5以下、約4.5以下、約4以下、約3以下、または約2以下のpHで実質的に溶解しない。上記参照範囲の組み合わせも可能である(例えば、約1〜約4.5、約1〜約5、約1〜4)。他の範囲も可能である。
【0027】
特定の実施形態では、ポリマー複合材料は、約5.5以上のpHで実質的に溶解する。いくつかの実施形態では、ポリマー複合材料は、少なくとも約6、少なくとも約6.5、少なくとも約7、少なくとも約7.5、少なくとも約8、少なくとも約9、少なくとも約10、または少なくとも約11のpHで、実質的に溶解する。特定の実施形態では、ポリマー複合材料は、約12以下、約11以下、約10以下、約9以下、8.5、約8以下、約7.5以下、約7以下、約6.5以下、または約6以下のpHで実質的に溶解する。上記参照範囲の組み合わせも可能である(例えば、約5.5〜約12、約5.5〜約9、約6.5〜約8)。他の範囲も可能である。
【0028】
当業者なら、本明細書の教示に基づいて、約2日〜40日の期間にわたり室温で測定して、約4未満のpHを有する水溶液へのポリマー複合材料の溶解度を決定すること、および/または約6以上のpHを有する水溶液中にポリマー複合材料を溶解することを含む、ポリマー複合材料の分解/溶解を決定する好適な方法を選択するように構成するであろう。いくつかの実施形態では、実質的に分解しないポリマー複合材料は、ポリマー複合材料の約10%未満、約5%未満、または約2%未満がポリマー複合材料の残部から解離するような挙動をする。特定の実施形態では、実質的に分解するポリマー複合材料は、ポリマー複合材料の少なくとも約1%、少なくとも約2%、または少なくとも約5%がポリマー複合材料の残部から解離するような挙動をする。
【0029】
特定の実施形態によれば、ポリマー複合材料は、生体適合性である。本明細書で使用される場合、用語「生体適合性」は、生物体(例えば、哺乳動物)、組織培養物または細胞収集物に由来する有害反応(例えば、免疫応答)を引き起こさない、または有害反応が許容可能なレベルを超えない場合のポリマーを意味する。
【0030】
いくつかの実施形態では、ポリマー複合材料は架橋している。いくつかの実施形態では、ポリマー複合材料は、2種またはそれを超える化学的に類似のポリマーまたは2種またはそれを超える化学的に異なるポリマーを含む。
【0031】
特定の実施形態では、ポリマー複合材料は、第1のポリマーと第2のポリマーとの混合物を含む。いくつかの実施形態では、第1のポリマーと第2のポリマーとは水素結合している。例えば、いくつかの事例では、以降でより詳細に記載されるように、第1のポリマーの骨格に結合した官能基は、第2のポリマーの骨格に結合した官能基に水素結合している。
【0032】
いくつかの実施形態では、第1のポリマーは式(I):
【化4】
または薬学的に許容可能なその塩
(式中、
各R
1は、同じまたは異なり、任意に置換されてもよいアルキレン、任意に置換されてもよいヘテロアルキレン、任意に置換されてもよいアリーレン、および任意に置換されてもよいヘテロアリーレンからなる群より選択され、
各R
2は、同じまたは異なり、水素、任意に置換されてもよいアルキル、および任意に置換されてもよいヘテロアルキルからなる群より選択され、
各R
3は、同じまたは異なり、任意に置換されてもよいアルキレンおよび任意に置換されてもよいヘテロアルキレンからなる群より選択され、
nは、25〜250,000の整数である)
を含んでよい。
【0033】
特定の実施形態では、各R
1は、同じまたは異なり、任意に置換されてもよいアルキレンおよび任意に置換されてもよいヘテロアルキレンからなる群より選択される。いくつかの実施形態では、各R
1は、同じまたは異なり、任意に置換されてもよいC
1−10アルキレン(例えば、任意に置換されてもよいC
1−8アルキレン、任意に置換されてもよいC
1−5アルキレン、任意に置換されてもよいC
1−3アルキレン)および任意に置換されてもよいヘテロC
1−10アルキレン(例えば、ヘテロC
1−5アルキレン、ヘテロC
1−3アルキレン)からなる群より選択される。特定の実施形態では、各R
1は、同じまたは異なり、−[C(R’
2)]
g−であり、各R’は、同じまたは異なり、水素および任意に置換されてもよいアルキルからなる群より選択され、gは、1、2、3、4、または5である。いくつかの事例では、gは1、2、または3である(例えば、gは、1または2である)。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのR
1は、本明細書に記載の任意に置換されてもよいヘテロアルキレンであり、また、少なくとも1つのR
1は、本明細書に記載の任意に置換されてもよいアルキレンである。
【0034】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの(例えば、少なくとも2つの、それぞれの)R
2は水素である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのR
2は、任意に置換されてもよいアルキルである。特定の実施形態では、少なくとも2つの(例えば、それぞれの)R
2は、同じまたは異なり、任意に置換されてもよいアルキルである。いくつかのこのような実施形態では、各R
2は、同じまたは異なり、任意に置換されてもよいC
1−10アルキル(例えば、任意に置換されてもよいC
1−8アルキル、任意に置換されてもよいC
1−5アルキル、任意に置換されてもよいC
1−3アルキル)である。例えば、各R
2は、同じでも異なっていてもよく、また、メチルまたはエチルであってよい。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのR
2は、任意に置換されてもよいヘテロアルキルである。いくつかの実施形態では、少なくとも2つの(例えば、それぞれの)R
2は、同じまたは異なり、任意に置換されてもよいヘテロアルキルである。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのR
2は、本明細書に記載の任意に置換されてもよいヘテロアルキルであり、また、少なくとも1つのR
2は、本明細書に記載の任意に置換されてもよいアルキルである。
【0035】
いくつかの実施形態では、各R
3は、同じまたは異なり、任意に置換されてもよいC
1−10アルキレン(例えば、任意に置換されてもよいC
2−10アルキレン、任意に置換されてもよいC
4−10アルキレン、任意に置換されてもよいC
2−8アルキレン、任意に置換されてもよいC
4−8アルキレン)および任意に置換されてもよいヘテロC
1−10アルキレン(例えば、ヘテロC
2−8アルキレン、ヘテロC
2−7アルキレン、ヘテロC
2−6アルキレン)からなる群より選択される。特定の実施形態では、各R
3は、同じまたは異なり、任意に置換されてもよいC
4−8アルキレンおよび−(CH
2CH
2O)
m−(mは1〜3の整数)からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、各R
3は、同じまたは異なり、任意に置換されてもよいC
4−8アルキレンである。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのR
3は、本明細書に記載の任意に置換されてもよいヘテロアルキレンであり、また、少なくとも1つのR
3は、本明細書に記載の任意に置換されてもよいアルキレンである。
【0036】
いくつかの実施形態では、nは、25〜250,000、50〜250,000、75〜250,000、100〜250,000、250〜250,000、400〜250,000、500〜250,000、750〜250,000、1,000〜250,000、25〜200,000、25〜175,000、25〜150,000、25〜125,000、25〜100,000、または25〜50,000である。
【0037】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物に対し、
各R
1は、同じまたは異なり、任意に置換されてもよいアルキレンおよび任意に置換されてもよいヘテロアルキレンからなる群より選択され、
各R
2は、同じまたは異なり、水素および任意に置換されてもよいアルキルからなる群より選択され、
各R
3は、同じまたは異なり、任意に置換されてもよいアルキレンおよび任意に置換されてもよいヘテロアルキレンからなる群より選択され、
nは、25〜250,000の整数である。
【0038】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物に対し、
各R
1は、同じまたは異なり、−[C(R’
2)]
g−であり、
各R
2は、同じまたは異なり、水素および任意に置換されてもよいアルキルからなる群より選択され、
各R
3は、同じまたは異なり、任意に置換されてもよいC
2−10アルキレンおよび任意に置換されてもよいヘテロC
2−8アルキレンからなる群より選択され、
各R’は、同じまたは異なり、水素および任意に置換されてもよいアルキルからなる群より選択され、
gは、1、2、3、4、または5であり、
nは、25〜250,000の整数である。
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物に対し、
各R
1は、同じまたは異なり、−[C(R’
2)]
g−であり、
各R
2は、同じまたは異なり、水素および任意に置換されてもよいアルキルからなる群より選択され、
各R
3は、同じまたは異なり、任意に置換されてもよいC
4−8アルキレンおよび−(CH
2CH
2O)
m−からなる群より選択され、
各R’は、同じまたは異なり、水素および任意に置換されてもよいアルキルからなる群より選択され、
gは、1、2、3、4、または5であり、
mは、1、2、または3であり、
nは、25〜250,000の整数である。
【0039】
いくつかの実施形態では、式(I)の第1のポリマーは、構造:
【化5】
または薬学的に許容可能なその塩(式中、R
3、m、およびnは本明細書に記載の通りである)を含む。例えば、各R
3は、同じまたは異なり、任意に置換されてもよいC
4−8アルキレンおよび−(CH
2CH
2O)
m−からなる群より選択され、mは、1、2、または3であり、nは、25〜250,000の整数である。いくつかのこのような実施形態では、各R
3は、同じまたは異なり、任意に置換されてもよいC
4−8アルキレンである。
【0040】
いくつかの実施形態では、式(I)の第1のポリマーは、構造:
【化6】
または薬学的に許容可能なその塩(式中、nは本明細書に記載の通りである)を含む。
【0041】
いくつかの実施形態では、第1のポリマーは、アクリロイルアミノアルキレン酸モノマーのポリマー、またはその塩からなる群より選択される。特定の実施形態では、アクリロイルアミノアルキレン酸モノマーは、アクリロイル−5−アミノペンタン酸、アクリロイル−6−アミノカプロン酸、アクリロイル−7−アミノヘプタン酸、アクリロイル−8−アミノオクタン酸、アクリロイル−9−アミノノナン酸(aminonoanoic acid)、アクリロイル−10−アミノデカン酸、アクリロイル−11−アミノウンデカン酸、アクリロイル−12−アミノドデカン酸、メタクリロイル−5−アミノペンタン酸、メタクリロイル−6−アミノカプロン酸、メタクリロイル−7−アミノヘプタン酸、メタクリロイル−8−アミノオクタン酸、メタクリロイル−9−アミノノナン酸、メタクリロイル−10−アミノデカン酸、メタクリロイル−11−アミノウンデカン酸、メタクリロイル−12−アミノドデカン酸、これらの塩、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0042】
特定の実施形態では、第1のポリマーはアクリロイル−6−アミノカプロン酸またはその塩のホモポリマーである。
【0043】
いくつかの実施形態では、第2のポリマーは式(II):
【化7】
または薬学的に許容可能なその塩
(式中、
各R
4は、同じまたは異なり、任意に置換されてもよいアルキレンおよび任意に置換されてもよいヘテロアルキレンからなる群より選択され、
各R
5は、同じまたは異なり、任意に置換されてもよいアルキレンおよび任意に置換されてもよいヘテロアルキレンからなる群より選択され、
各R
6は、同じまたは異なり、水素、任意に置換されてもよいアルキル、および任意に置換されてもよいヘテロアルキルからなる群より選択され、
各R
7は、同じまたは異なり、水素、任意に置換されてもよいアルキル、および任意に置換されてもよいヘテロアルキルからなる群より選択され、
各R
8は、同じまたは異なり、任意に置換されてもよいアルキルであり、
pは、1〜10の整数であり、
qは、1〜10の整数であり、
zは、1〜150,000の整数であり、但し、(p+q)*zは20以上である)
を含んでよい。
【0044】
特定の実施形態では、各R
4は、同じまたは異なり、任意に置換されてもよいC
1−10アルキレン(例えば、任意に置換されてもよいC
1−8アルキレン、任意に置換されてもよいC
1−5アルキレン、任意に置換されてもよいC
1−3アルキレン)および任意に置換されてもよいヘテロC
1−10アルキレン(例えば、ヘテロC
1−5アルキレン、ヘテロC
1−3アルキレン)からなる群より選択される。特定の実施形態では、各R
4は、同じまたは異なり、−[C(R”
2)]
e−であり、各R”は、同じまたは異なり、水素および任意に置換されてもよいアルキルからなる群より選択され、eは、1、2、3、4、または5である。いくつかの事例では、eは、1、2、または3である(例えば、eは、1または2である)。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの(例えば、少なくとも2つの、それぞれの)R
4は任意に置換されてもよいヘテロアルキレンである。いくつかのこのような実施形態では、ヘテロアルキレンは1つまたはそれを超える酸素原子を含んでよい。いくつかの事例では、ヘテロアルキレンはアルコキシレン(alkoxyene)である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのR
4は、本明細書に記載の任意に置換されてもよいヘテロアルキレンであり、また、少なくとも1つのR
4は、本明細書に記載の任意に置換されてもよいアルキレンである。
【0045】
特定の実施形態では、各R
5は、同じまたは異なり、任意に置換されてもよいC
1−10アルキレン(例えば、任意に置換されてもよいC
1−8アルキレン、任意に置換されてもよいC
1−5アルキレン、任意に置換されてもよいC
1−3アルキレン)および任意に置換されてもよいヘテロC
1−10アルキレン(例えば、ヘテロC
1−5アルキレン、ヘテロC
1−3アルキレン)からなる群より選択される。特定の実施形態では、各R
5は、同じまたは異なり、−[C(R”
2)]
e−であり、各R”は、同じまたは異なり、水素および任意に置換されてもよいアルキルからなる群より選択され、eは、1、2、3、4、または5である。いくつかの事例では、eは、1、2、または3である(例えば、eは、1または2である)。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの(例えば、少なくとも2つの、それぞれの)R
4は任意に置換されてもよいヘテロアルキレンである。いくつかのこのような実施形態では、ヘテロアルキレンは1つまたはそれを超える酸素原子を含んでよい。いくつかの事例では、ヘテロアルキレンはアルコキシレン(alkoxyene)である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのR
5は、本明細書に記載の任意に置換されてもよいヘテロアルキレンであり、また、少なくとも1つのR
5は、本明細書に記載の任意に置換されてもよいアルキレンである。
【0046】
特定の実施形態では、各R
6は、同じまたは異なり、水素および任意に置換されてもよいアルキル(例えば、任意に置換されてもよいC
1−8アルキル、任意に置換されてもよいC
1−5アルキル、任意に置換されてもよいC
1−3アルキル)からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの(例えば、少なくとも2つの、それぞれの)R
6は水素である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのR
6は、任意に置換されてもよいアルキルである。特定の実施形態では、少なくとも2つの(例えば、それぞれの)R
6は、同じまたは異なり、任意に置換されてもよいアルキルである。いくつかのこのような実施形態では、各R
6は、同じまたは異なり、任意に置換されてもよいC
1−10アルキル(例えば、任意に置換されてもよいC
1−8アルキル、任意に置換されてもよいC
1−5アルキル、任意に置換されてもよいC
1−3アルキル)である。例えば、各R
6は、同じでも異なっていてもよく、また、メチルまたはエチルであってよい。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのR
6は、任意に置換されてもよいヘテロアルキルである。特定の実施形態では、少なくとも2つの(例えば、それぞれの)R
6は、同じまたは異なり、任意に置換されてもよいヘテロアルキルである。
【0047】
特定の実施形態では、各R
7は、同じまたは異なり、水素および任意に置換されてもよいアルキル(例えば、任意に置換されてもよいC
1−8アルキル、任意に置換されてもよいC
1−5アルキル、任意に置換されてもよいC
1−3アルキル)からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの(例えば、少なくとも2つの、それぞれの)R
7は水素である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのR
7は、任意に置換されてもよいアルキルである。特定の実施形態では、少なくとも2つの(例えば、それぞれの)R
7は、同じまたは異なり、任意に置換されてもよいアルキルである。いくつかのこのような実施形態では、各R
7は、同じまたは異なり、任意に置換されてもよいC
1−10アルキル(例えば、任意に置換されてもよいC
1−8アルキル、任意に置換されてもよいC
1−5アルキル、任意に置換されてもよいC
1−3アルキル)である。例えば、各R
7は、同じでも異なっていてもよく、また、メチルまたはエチルであってよい。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのR
7は、任意に置換されてもよいヘテロアルキルである。特定の実施形態では、少なくとも2つの(例えば、それぞれの)R
7は、同じまたは異なり、任意に置換されてもよいヘテロアルキルである。
【0048】
特定の実施形態では、各R
8は、同じまたは異なり、任意に置換されてもよいC
1−10アルキレン(例えば、任意に置換されてもよいC
1−8アルキレン、任意に置換されてもよいC
1−5アルキレン、任意に置換されてもよいC
1−3アルキレン)である。例えば、各R
7は、同じでも異なっていてもよく、また、メチルまたはエチルであってよい。
【0049】
いくつかの実施形態では、pおよび/またはqは、1〜9、1〜8、1〜7、1〜6、1〜5、1〜4、2〜10、2〜9、2〜8、2〜7、2〜6、2〜5、または2〜4である。
【0050】
いくつかの実施形態では、zは、1〜150,000、25〜150,000、50〜150,000、75〜150,000、100〜150,000、250〜150,000、400〜150,000、500〜150,000、750〜150,000、1,000〜150,000、1〜125,000、1〜100,000、1〜75,000、または25〜50,000であり、但し、(p+q)*zは20以上である。
【0051】
いくつかの実施形態では、式(II)の第2のポリマーに対し、
各R
4は、同じまたは異なり、任意に置換されてもよいアルキレンであり、
各R
5は、同じまたは異なり、任意に置換されてもよいアルキレンであり、
各R
6は、同じまたは異なり、水素および任意に置換されてもよいアルキルからなる群より選択され、
各R
7は、同じまたは異なり、水素および任意に置換されてもよいアルキルからなる群より選択され、
各R
8は、同じまたは異なり、任意に置換されてもよいアルキルであり、
pは、1〜10の整数であり、
qは、1〜10の整数であり、
zは、1〜150,000の整数であり、但し、(p+q)*zは20以上である。
いくつかの実施形態では、式(II)の第2のポリマーに対し、
各R
4は、同じまたは異なり、−[C(R”
2)]
e−であり、
各R
5は、同じまたは異なり、−[C(R”
2)]
e−であり、
各R
6は、同じまたは異なり、水素および任意に置換されてもよいアルキルからなる群より選択され、
各R
7は、同じまたは異なり、水素および任意に置換されてもよいアルキルからなる群より選択され、
各R
8は、同じまたは異なり、任意に置換されてもよいアルキルであり、
各R”は、同じまたは異なり、水素および任意に置換されてもよいアルキルからなる群より選択され、
pは、1〜10の整数であり、
qは、1〜10の整数であり、
eは、1、2、3、4、または5であり、
zは、1〜150,000の整数であり、但し、(p+q)*zは20以上である。
【0052】
いくつかの実施形態では、式(II)の第2のポリマーは、構造:
【化8】
または薬学的に許容可能なその塩(式中、R
6、R
7、R
8、p、q、およびzは本明細書に記載の通りである)を含む。例えば、各R
7は、同じまたは異なり、水素および任意に置換されてもよいアルキルからなる群より選択され、各R
8は、同じまたは異なり、任意に置換されてもよいアルキルであり、pは、1〜10の整数であり、qは、1〜10の整数であり、zは、1〜150,000の整数であり、但し、(p+q)*zは20以上である。
【0053】
いくつかの実施形態では、式(II)の第2のポリマーは、構造:
【化9】
または薬学的に許容可能なその塩(式中、p、q、およびzは本明細書に記載の通りである)を含む。
【0054】
いくつかの実施形態では、第2のポリマーは、ポリ(メタクリル酸−co−アクリル酸エチル)またはその塩を含む。いくつかの事例では、ポリ(メタクリル酸−co−アクリル酸エチル)は、メタクリル酸モノマー単位のアクリル酸エチルモノマー単位に対するモル比が約1:1である。
【0055】
いくつかの実施形態では、第1のポリマーは、非共有結合相互作用(例えば、水素結合)を介して第2のポリマーに結合してよい。いくつかの事例では、非共有結合相互作用は、水素結合、イオン相互作用、供与結合、および/またはファンデルワールス相互作用である。いくつかの実施形態では、第1のポリマーと第2のポリマーとは、少なくとも1つの水素結合を介して互いに相互作用してよい。いくつかのこのような実施形態では、第1のポリマー上の1つまたはそれを超える官能基が、水素結合ドナーおよび/またはアクセプターとして機能してよい。このような場合には、第2のポリマー上の1つまたはそれを超える官能基が、水素結合ドナーおよび/またはアクセプターとして機能してよい。水素結合ドナーは、水素結合アクセプター上の1対の電子と結合して水素結合を形成するように構成された少なくとも1つの水素原子を含んでよい。水素結合を形成し得る第1および/または第2のポリマー上の官能基の非限定的例には、カルボニル基、アミン、ヒドロキシル、などが挙げられる。いくつかの事例では、第1および/または第2のポリマーは、1つまたはそれを超える、電子が豊富なまたは電子が乏しい部分を含んでよい。1つまたはそれを超える、電子が豊富なまたは電子が乏しい部分は、第1のポリマーと第2のポリマーとの間で、1つまたはそれを超える静電相互作用を形成し得る。
【0056】
いくつかの実施形態では、ポリマー複合材料はブレンドである。例えば、特定の実施形態では、ポリマー複合材料は、第1のポリマー(例えば、ポリ(アクリロイル−6−アミノカプロン酸))および第2のポリマー(例えば、ポリ(メタクリル酸−co−アクリル酸エチル))を含む。いくつかのこのような実施形態では、第1のポリマーの、第2のポリマーに対する重量比は、約1:6〜約6:1の範囲である。特定の実施形態では、第1のポリマーの、第2のポリマーに対する重量比は、少なくとも約1:6、少なくとも約1:5、少なくとも約1:4、少なくとも約1:3、少なくとも約1:2、少なくとも約1:1、少なくとも約2:1、少なくとも約3:1、少なくとも約4:1、または少なくとも約5:1である。いくつかの実施形態では、第1のポリマーの、第2のポリマーに対する重量比は、約6:1以下、約5:1以下、約4:1以下、3:1、約2:1以下、約1:1以下、約1:2以下、約1:3以下、約1:4以下、または約1:5以下である。上記参照範囲の組み合わせも可能である(例えば、約1:6〜約6:1、約1:4〜約4:1、約1:3〜約3:1、約1:2〜約2:1、約1:3〜約1:1、約1:1〜約3:1)。他の範囲も可能である。
【0057】
特定の実施形態では、ポリマー複合材料は、3種またはそれを超えるポリマーの混合物を含む。例えば、いくつかの実施形態では、ポリマー複合材料は、第1のタイプの第1のポリマー、第1のタイプとは異なる第2のタイプの第1のポリマー、および第1のタイプの第2のポリマーを含む。その他の組み合わせも可能である。
【0058】
いくつかの実施形態では、ポリマー複合材料は、第1のポリマーおよび第2のポリマー(例えば、式(I)におけるような構造を含む第1のポリマーおよび式(II)におけるような構造を含む第2のポリマー)の水溶性塩の水溶液を形成することにより製造される。特定の実施形態では、第1のポリマーおよび第2のポリマーを含む溶液を、酸水溶液で沈殿させる。いくつかの実施形態では、沈殿した混合物は、脱水され、それにより、ポリマー複合材料が形成される。当業者なら、例えば、ポリマー複合材料が形成されるように、沈殿した混合物に対する加熱および/または真空を適用することを含む、沈殿した混合物を脱水する適切な方法を選択するように構成するであろう。
【0059】
特定の実施形態では、ポリマー複合材料は、第1のポリマーおよび第2のポリマーの非水溶媒中の非水溶液を形成すること、およびステップの溶液から非水溶媒を蒸発させ、それによりポリマー複合材料を形成することにより、製造される。いくつかの事例では、ポリマー複合材料を、約1.0〜7.0のpHで水溶液と接触させて、それにより、約40重量%未満の含水率のポリマー複合材料ゲルを形成する。
【0060】
いくつかの実施形態では、非水溶媒は、THF、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、MEK、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、塩化メチレン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0061】
いくつかの実施形態では、ポリマー複合材料は、40重量%以下の含水率のポリマーゲルである。例えば、いくつかの実施形態では、ポリマー複合材料は、約40重量%以下、約30重量%以下、約20重量%以下、または約10重量%以下の含水率を有する。いくつかの実施形態では、ポリマー複合材料は、約5重量%を超える、約10重量%を超える、約20重量%を超える、または約30重量%を超える含水率を有する。上記参照範囲の組み合わせも可能である(例えば、約5重量%〜約40重量%)。
【0062】
いくつかの実施形態では、ポリマー複合材料は、注型、成形、および/または切断されて特定の形状、サイズ、および/または体積にされてよい。いくつかの実施形態では、ポリマー複合材料は、非水溶媒により軟化し、加圧成形により、その軟化したポリマー複合材料が所望の形状にされる。特定の実施形態では、ポリマー複合材料を、約90℃未満の温度まで加熱し、所望の形状に加圧成形してよい。
【0063】
特定の実施形態では、ポリマー複合材料は、注型、成形、および/または切断されて、被験体の内部開口部中に保持され得るようなサイズおよび/または形状にされてよい。例えば、いくつかの実施形態では、ポリマー複合材料の非圧縮断面寸法は、少なくとも約2cm、少なくとも約4cm、少なくとも約5cm、または少なくとも約10cmである。特定の実施形態では、ポリマー複合材料の非圧縮断面寸法は、約15cm以下、約10cm以下、約5cm以下、または約4cm以下である。上記参照範囲のいずれかに終点を有するあらゆる閉区間も可能である(例えば、約2cm〜約15cm)。当業者なら、構造体が保持されるように、被験体の特定の開口部に対する、本明細書の教示に基づく構造体の好適な非圧縮断面寸法を選択することができるであろう。
【0064】
特定の実施形態では、ポリマー複合材料は、ポリマー複合材料の少なくとも一部を別のポリマーと接触させ、前記接触したポリマーを加熱および/またはそれに圧力を適用して境界面で結合を形成することにより、別のポリマーに結合させてよい(例えば、構造体の形成において)。特定の事例では、非水溶媒中のポリマー複合材料の非水溶液を、非水溶媒中で別のポリマーと接触させて、ポリマー複合材料と別のポリマーとの間の界面で結合が形成されるように非水溶媒を除去する。結合は、イオン結合、共有結合、水素結合、ファンデルワールス相互作用、などであってよい。共有結合は、例えば、炭素−炭素、炭素−酸素、酸素−ケイ素、硫黄−硫黄、リン−窒素、炭素−窒素、金属−酸素、またはその他の共有結合であってよい。水素結合は、例えば、ヒドロキシル、アミン、カルボキシル、チオール、および/または類似の官能基間であってよい。
【0065】
いくつかの実施形態では、ポリマー複合材料は、治療薬、診断薬、および/または強化剤などの活性物質で事前充填される。他の実施形態では、ポリマー複合材料は、それが被験体内の位置、例えば胃腔などに既に保持された後で、治療薬、診断薬、および/または強化剤で充填される。いくつかの実施形態では、ポリマー複合材料は、長期間にわたり適さない生理的環境(例えば、胃中環境)中で、治療薬、診断薬、および/または強化剤の安定性を維持するように構成される。さらなる実施形態では、ポリマー複合材料は、バースト放出の可能性が低い〜バースト放出の可能性がなく、治療薬、診断薬、および/または強化剤の放出を制御するように構成される。いくつかの実施形態では、ポリマー複合材料は、活性物質の組み合わせで事前充填および/または充填される。例えば、特定の実施形態では、ポリマー複合材料は、1種またはそれを超える、2種またはそれを超える、3種またはそれを超える、または4種またはそれを超える活性物質を含む。
【0066】
治療薬、診断薬、および/または強化剤は、限定されないが、粉末混合、直接添加、溶媒充填、融解充填、物理的ブレンド、超臨界二酸化炭素支援、およびエステル結合およびアミド結合などの抱合反応などの標準的方法により、ポリマー複合材料およびその他の薬物送達材料に充填することができる。その後、治療薬、診断薬、および/または強化剤の放出は、限定されないが、ポリマー複合材料の溶解、ポリマー複合材料の分解、ポリマー複合材料の膨潤、薬剤の拡散、加水分解、および抱合結合の化学的または酵素的開裂などの方法により行うことができる。いくつかの実施形態では、活性物質は、ポリマー複合材料のポリマーマトリックスに共有結合している(例えば、そのため、ポリマーマトリックスが分解すると放出される)。
【0067】
特定の実施形態では、ポリマー複合材料は、ポリマー複合材料から活性物質を放出するように構築され、配置される。特定の実施形態では、活性物質は、ポリマー複合材料から放出されるように設計される。このような実施形態は、薬物送達の文脈において有用であろう。他の実施形態では、活性物質は、ポリマー複合材料に永久に固定される。このような実施形態は、分子認識および精製の状況下で有用であろう。特定の実施形態では、活性物質は、ポリマー複合材料中に埋め込まれる。いくつかの実施形態では、活性物質は、イオン結合、共有結合、水素結合、ファンデルワールス相互作用、などの結合の形成により、ポリマー複合材料に結合される。共有結合は、例えば、炭素−炭素、炭素−酸素、酸素−ケイ素、硫黄−硫黄、リン−窒素、炭素−窒素、金属−酸素、またはその他の共有結合であってよい。水素結合は、例えば、ヒドロキシル、アミン、カルボキシル、チオール、および/または類似の官能基間であってよい。
【0068】
いくつかの実施形態によれば、本明細書で記載のポリマー複合材料は、1種またはそれを超える治療薬、診断薬、および/または強化剤、例えば、薬物、栄養素、微生物、インビボセンサーおよびトレーサーと適合性である。いくつかの実施形態では、活性物質は、治療薬、栄養補助食品、予防薬または診断薬である。活性物質は、ポリマー複合材料内に封入されてもよく、またはポリマー複合材料中の1つまたはそれを超える原子に化学結合により直接結合してもよい。特定の実施形態では、活性物質は、ポリマー複合材料に共有結合する。いくつかの実施形態では、活性物質は、カルボン酸誘導体を介して、ポリマー複合材料に結合する。いくつかの事例では、カルボン酸誘導体が、活性物質とエステル結合を形成してよい。
【0069】
薬剤には、限定されないが、被験体(例えば、ヒトまたは非ヒト動物)に投与時に、局所的および/または全身性作用により所望の薬理的、免疫原性、および/または生理的効果を誘発する、任意の合成または天然に存在する生物学的に活性な化合物または物質の組成物が挙げられる。例えば、特定の実施形態の文脈内で有用な、または潜在的に有用なものは、従来から薬物、ワクチン、およびバイオ医薬品と見なされている化合物または化学物質であり、特定のこのような薬剤には、限定されないが、疾患または疾病の医学または獣医学処置、予防、診断、および/または緩和を含む、治療、診断、および/または強化分野で使用するための、タンパク質、ペプチド、ホルモン、核酸、遺伝子構築物など(例えばロスバスタチンなどのHMG co−A還元酵素阻害剤(スタチン)、メロキシカムなどの非ステロイド性抗炎症薬、エスシタロプラムなどの選択的セロトニン再取り込み阻害剤、クロピドグレルなどの抗凝血剤(blood thinning agent)、プレドニゾンなどのステロイド、アリピプラゾールやリスペリドンなどの抗精神病薬、ブプレノルフィンなどの鎮痛剤、ナロキソン、モンテルカスト、およびメマンチンなどのアンタゴニスト、ジゴキシンなどの強心配糖体、タムスロシンなどのアルファ遮断薬、エゼチミブなどのコレステロール吸収阻害剤、コルヒチンなどの代謝物、ロラタジンやセチリジンなどの抗ヒスタミン剤、ロペラミドなどのオピオイド、オメプラゾールなどのプロトンポンプ阻害剤、エンテカビルなどの抗ウイルス剤、ドキシサイクリン、シプロフロキサシンおよびアジスロマイシンなどの抗生物質、抗マラリア剤、ならびにシントロイド(synthroid)/レボチロキシン);薬物乱用処置(substance abuse treatment)(例えば、メサドンおよびバレニクリン);家族計画(例えば、ホルモン不妊法);能力増強(performance enhancement)(例えば、カフェインなどの刺激薬);ならびに栄養および栄養補助剤(supplement)(例えば、タンパク質、葉酸、カルシウム、ヨウ素、鉄、亜鉛、チアミン、ナイアシン、ビタミンC、ビタミンD、およびその他のビタミンまたはミネラル栄養補助剤)などの分子を含めてよい。
【0070】
いくつかの実施形態では、活性物質は、タングステンカーバイドまたは硫酸バリウムなどの放射線不透過性材料である。
【0071】
特定の実施形態では、活性物質は、1種またはそれを超える特定の治療薬である。本明細書で使用される場合、「治療薬」または「薬物」とも称される用語は、疾患、障害、またはその他の臨床的に認識される状態を処置するために、または予防目的のために被験体に投与され、また、臨床的に意味のある効果を被験体の身体に与えて、疾患、障害、または状態を処置および/または予防する作用物質を意味する。既知の治療薬例のリストは、例えば、米国薬局方(USP)、Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,10th Ed.,McGraw Hill,2001;Katzung,B.(ed.)Basic and Clinical Pharmacology,McGraw−Hill/Appleton & Lange;8th edition(September 21,2000);Physician’s Desk Reference(Thomson Publishing)、および/またはThe Merck Manual of Diagnosis and Therapy,17th ed.(1999)もしくはその出版後の18th ed.(2006)、Mark H. Beers and Robert Berkow (eds.), Merck Publishing Group、または、動物の場合には、The Merck Veterinary Manual,9th ed.,Kahn,C.A.(ed.),Merck Publishing Group,2005;および米国食品医薬品局(F.D.A)出版の“Approved Drug Products with Therapeutic Equivalence and Evaluations,”(「オレンジブック」)に見出すことができる。ヒトの使用に対し承認された薬物の例は、FDAによる、21 C.F.R 330.5、331〜361、および440〜460にリストされている(参照により本明細書に組み込まれる);獣医学使用に対する薬物は、FDAによる、21 C.F.R 500〜589にリストされている(参照により本明細書に組み込まれる)。特定の実施形態では、治療薬は小分子である。代表的種類の治療薬には、限定されないが、鎮痛剤、抗鎮痛剤(anti−analgesic)、抗炎症薬、解熱剤、抗うつ剤、抗てんかん薬、抗精神病薬、神経保護薬、抗癌剤などの抗増殖剤、抗ヒスタミン剤、抗片頭痛薬、ホルモン、プロスタグランジン、抗菌剤(例えば、抗生物質、抗真菌薬、抗ウイルス薬、抗寄生生物薬)、抗ムスカリン薬、抗不安薬(anxioltyics)、静菌薬、免疫抑制剤、鎮静薬、催眠薬、抗精神病薬、気管支拡張剤、抗ぜんそく薬、心血管薬物、麻酔剤、抗凝固剤、酵素阻害剤、ステロイド剤、ステロイドまたは非ステロイド抗炎症剤、コルチコステロイド、ドーパミン作動薬、電解質、胃腸薬、筋弛緩剤、栄養剤、ビタミン、副交感神経作動薬、刺激薬、食欲抑制薬および抗ナルコレプシー薬(anti−narcoleptic)が挙げられる。栄養補助食品を薬物送達デバイス中に組み込むこともできる。これらは、ビタミン、カルシウムまたはビオチンなどの栄養補助剤、または植物抽出物もしくは植物ホルモンなどの天然成分であってよい。
【0072】
いくつかの実施形態では、治療薬は1種またはそれを超える抗マラリア薬である。代表的抗マラリア薬には、キニーネ、ルメファントリン、クロロキン、アモジアキン、ピリメタミン、プログアニル、クロルプログアニル−ダプソン、スルファドキシンおよびスルファメトキシピリダジンなどのスルホンアミド、メフロキン、アトバクオン、プリマキン、ハロファントリン、ドキシサイクリン、クリンダマイシン、アルテミシニン、およびアルテミシニン誘導体が挙げられる。いくつかの実施形態では、抗マラリア薬は、アルテミシニンまたはその誘導体である。代表的アルテミシニン誘導体には、アーテメータ、ジヒドロアルテミシニン、アルテテルおよびアルテスナートが挙げられる。特定の実施形態では、アルテミシニン誘導体はアルテスナートである。
【0073】
カルボン酸基を含む活性物質は、さらなる修飾を必要とせずに、エステルおよびヒドロキシル基を含むポリマーマトリックス中に直接組み込み得る。アルコールを含む活性物質は、最初にコハク酸またはフマル酸モノエステルとして誘導体化された後に、ポリマーマトリックス中に組み込み得る。チオールを含む活性物質は、硫黄−エン反応を介してオレフィンまたはアセチレン含有マトリックス中に組み込み得る。他の実施形態では、1種またはそれを超える薬剤は、非共有結合でポリマーマトリックスに結合される(例えば、マトリックス中に分散または封入される)。
【0074】
他の実施形態では、活性物質は、タンパク質またはその他の生体高分子である。このような物質は、利用可能なカルボキシレート含有アミノ酸を使って、エステル結合によりポリマーマトリックスに共有結合し得る、またはチオール−エン型反応を使って、オレフィンまたはアセチレン部分を含むポリマー材料中に組み込まれ得る。いくつかの事例では、活性物質は、エポキシド官能基と反応してアミドまたはエステル結合を形成することが可能なアミン官能基を含む。他の実施形態では、活性物質は、非共有結合でポリマーマトリックスに結合する。いくつかのこのような実施形態では、活性物質は、親水性力(hydrophilic force)および/または疎水性力(hydrophobic force)により内部に分散または封入され得る。
【0075】
いくつかの事例では、ポリマー複合材料中での活性物質の分配係数を、調整することができる。例えば、活性物質が疎水性の場合には、いくつかの事例では、疎水性のポリマー材料骨格が水溶液中への放出を遅らせ得るが、親水性ポリマー材料骨格は、放出を加速するはずである。さらに、親水性ポリマー材料骨格は、いくつかの事例では、材料中への吸水速度を高め、ポリマー複合材料を膨張(例えば、膨潤)させて、放出速度を加速する。いくつかの実施形態では、遊離反応性基が水性媒体の存在下で電荷を持つようになるイオン化可能部分を含む条件下では、材料の膨張と溶解が増加するであろう。いくつかのこのような実施形態では、イオン性反発により材料が崩壊するに伴い、拡散を介した内容物の放出速度が増加する、および/または切断可能な結合へのより良好なアクセスが与えられるであろう。当業者なら、活性物質の分配係数を決定する適切な方法、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などを選択することができるであろう。
【0076】
活性物質は、任意の好適な量で、ポリマーマトリックスに結合する、および/またはポリマー複合材料中に存在してよい。いくつかの実施形態では、活性物質は、ポリマー複合材料中に、合計ポリマー複合材料の重量に対して約0.01重量%〜約50重量%の範囲の量で存在する。いくつかの実施形態では、活性物質は、合計ポリマー複合材料の重量に対して、少なくとも約0.01重量%、少なくとも約0.05重量%、少なくとも約0.1重量%、少なくとも約0.5重量%、少なくとも約1重量%、少なくとも約2重量%、少なくとも約3重量%、少なくとも約5重量%、少なくとも約10重量%、少なくとも約20重量%、少なくとも約30重量%、少なくとも約40重量%の量でポリマー複合材料中に存在する。特定の実施形態では、活性物質は、約50重量%以下、約40重量%以下、約30重量%以下、約20重量%以下、約10重量%以下、約5重量%以下、約3重量%以下、約2重量%以下、約1重量%以下、約0.5重量%以下、約0.1重量%以下、または約0.05重量%以下の量でポリマー複合材料中に存在する。いずれかの上記参照範囲内に終了点を有するいずれかのおよび全ての閉区間も可能である(例えば、約0.01重量%〜約50重量%)。他の範囲も可能である。
【0077】
好都合にも、本明細書で記載のポリマー複合材料の特定の実施形態は、特定の従来のヒドロゲルなどのその他のポリマーに比べて、より高い濃度(重量パーセント)の治療薬などの活性物質を組み込むのを可能とし得る。いくつかの実施形態では、活性物質(例えば、活性物質)は、ポリマー複合材料から放出され得る。特定の実施形態では、活性物質は、ポリマー複合材料から拡散により放出される。いくつかの実施形態では、活性物質は、ポリマー複合材料の分解(例えば、生分解、酵素分解、加水分解)により放出される。いくつかの実施形態では、活性物質は、ポリマー複合材料から特定の速度で放出される。当業者なら、放出速度は、いくつかの実施形態では、ポリマー複合材料が暴露されている媒体、例えば胃液などの生理学的流体中の活性物質の溶解度に依存する場合があることを理解するであろう。活性物質の放出および/または放出速度に関する含まれる範囲と記述は通常、模擬胃液(例えば、米国薬局方(USP)で定義されている)中の親水性、疎水性、および/または親油性の活性物質に応じて変わる。模擬胃液は当技術分野において既知であり、当業者なら、本明細書の教示に基づいて適切な模擬胃液を選択することができるであろう。
【0078】
いくつかの実施形態では、最初にポリマー複合材料中に含まれている0.05重量%〜99重量%の活性物質が、24時間〜1年間の間に放出される(例えば、インビボで)。いくつかの実施形態では、約0.05重量%〜約99.0重量%の活性物質が一定の時間後に、ポリマー複合材料中から放出される(例えば、インビボで)。いくつかの実施形態では、少なくとも約0.05重量%、少なくとも約0.1重量%、少なくとも約0.5重量%、少なくとも約1重量%、少なくとも約5重量%、少なくとも約10重量%、少なくとも約20重量%、少なくとも約50重量%、少なくとも約75重量%、少なくとも約90重量%、少なくとも約95重量%、または少なくとも約98重量%のポリマー複合材料に結合している活性物質が、約24時間以内に、36時間以内に、72時間以内に、96時間以内に、または192時間以内に、その要素から放出される(例えば、インビボで)。特定の実施形態では、少なくとも約0.05重量%、少なくとも約0.1重量%、少なくとも約0.5重量%、少なくとも約1重量%、少なくとも約5重量%、少なくとも約10重量%、少なくとも約20重量%、少なくとも約50重量%、少なくとも約75重量%、少なくとも約90重量%、少なくとも約95重量%、または少なくとも約98重量%のポリマー要素に結合している活性物質が、1日以内に、5日以内に、30日以内に、60日以内に、120日以内に、または365日以内に、その要素から放出される(例えば、インビボで)。例えば、いくつかの事例では、少なくとも約90重量%のポリマー要素に結合している活性物質が120日以内にその要素から放出される(例えば、インビボで)。
【0079】
いくつかの実施形態では、活性物質が、最初の24時間の放出(例えば、内部空洞などの被験体の内部の所望の位置での活性物質の放出)で決定される特定の初期平均速度(「初速度」)でポリマー複合材料から放出される。特定の実施形態では、活性物質は、最初の24時間の放出後の24時間の期間にわたり、初期平均速度の、少なくとも約1%、少なくとも約2%、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約98%の平均速度で放出される。いくつかの実施形態では、活性物質は、最初の24時間の放出後の24時間の期間にわたり、初期平均速度の約99%以下、約98%以下、約95%以下、約90%以下、約80%以下、約75%以下、約50%以下、約%以下、約30%以下、約20%以下、約10%以下、約5%以下、または約2%以下の平均速度で放出される。いずれかの上記参照範囲内に終了点を有するいずれかのおよび全ての閉区間も可能である(例えば、約1%〜約99%、約1%〜約98%、約2%〜約95%、約10%〜約30%、約20%〜約50%、約30%〜約80%、約50%〜約99%)。他の範囲も可能である。
【0080】
活性物質は、初期放出後、48時間〜約1年間(例えば、48時間〜1週間、3日〜1ヶ月間、1週間〜1ヶ月間、1ヶ月間〜6ヶ月間、3ヶ月間〜1年間、6ヶ月間〜2年間)の少なくとも1つの選択された連続する24時間にわたり、初速度の約1%〜約99%の速度の平均速度で放出されてよい。
【0081】
例えば、いくつかの事例では、活性物質は、放出の2日目に、放出の3日目に、放出の4日目に、放出の5日目に、放出の6日目に、および/または放出の7日目に、初速度の約1%〜約99%の速度で放出されてよい。
【0082】
特定の実施形態では、ポリマー複合材料からの活性物質のバースト放出は通常、回避される。例示的実施形態では、少なくとも約0.05重量%の活性物質が24時間以内にポリマー複合材料から放出され、約0.05重量%〜約99重量%が放出の1日目中に放出され(例えば、被験体の内部の位置で)、さらに、約0.05重量%〜約99重量%が放出の2日目中に放出される。当業者なら、ポリマー複合材料および/または活性物質の特性に応じて、3日目、4日目、5日目、などに、類似の量で活性物質がさらに放出され得ることを理解するであろう。
【0083】
特定の実施形態では、活性物質は、パルス放出プロファイルで放出されてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、活性物質は、投与後の最初の日および、3日目、4日目、または5日目中に開始するなどの別の24時間中に放出されるが、その他の日には、実質的に放出されない。当業者なら、その他の日および/またはパルスおよび連続放出の組み合わせも可能であることを理解するであろう。
【0084】
活性物質は少なくとも約24時間にわたり、比較的一定の平均速度(例えば、実質的にゼロ次平均放出速度)で放出される。特定の実施形態では、活性物質は、少なくとも約24時間にわたり、1次放出速度(例えば、活性物質の放出速度は通常、活性物質の濃度に比例する)で放出される。
【0085】
ポリマー複合材料は、材料プラットフォームとして使用することができる。いくつかの実施形態では、本材料プラットフォームは、調整可能なエラストマー特性を特徴とし、酸性環境中で安定であり、および/またはよりアルカリ性の環境中で溶解可能である。したがって、ポリマー複合材料プラットフォームは、酸性の胃中環境に適合し、小腸/結腸環境中における標的化された溶解のための能力を有する。いくつかの実施形態によれば、ポリマー複合材料は、限定されないが、胃腸管構造体製造、および幽門を越えての標的化放出による胃腸管特異的薬物送達などの多くの適用に有用である。
【0086】
ポリマー複合材料と結合した構造体は、アルカリ環境の存在下での溶解に供される。したがって、いくつかの実施形態によれば、インビボで滞留し、ポリマー複合材料を含む胃中構造体の場合には、被験体がアルカリ溶液(例えば、重炭酸ナトリウム)を摂取して、ポリマー複合材料の溶解を促し、構造体の分解を可能とすると、構造体の通過を誘発することができる。
【0087】
特定の実施形態は、本明細書で記載のポリマー複合材料を含む滞留構造体を、滞留構造体が、放出される前に、被験体の内部位置で特定期間(例えば、少なくとも約24時間)保持されるように、被験体(例えば、患者)に投与すること(例えば、経口で)を含む。滞留構造体は、いくつかの事例では、胃中滞留構造体であってよい。いくつかの実施形態では、本明細書で記載の構造体およびシステムは、高レベルの活性物質(例えば、治療薬)充填、酸性環境中での活性物質および/または構造体の高い安定性、内部開口部(例えば、胃腔)中での機械的可撓性および強度、および/または生理的環境(例えば、腸環境)中での急速溶解/分解のために構成された1種またはそれを超えるポリマーを含む。特定の実施形態では、構造体は、胃中滞留に必要な構造材料を使った、治療薬、診断薬および/または強化剤の制御放出のために構成されるが、保持形状の完全性が失われて構造体が胃腔から排出される時間を決定するように制御されたおよび/または調整可能な分解/溶解のために構成された材料を組み合わせたモジュール設計を有する。
【0088】
いくつかの実施形態では、ポリマー複合材料を含む滞留構造体は、弛緩状態で特定のサイズおよび/または形状(例えば、多腕星形)を含む特定の構成を有する。特定の実施形態では、滞留構造体は、第2の圧縮された構成を得るように折り畳まれてよい。例えば、いくつかの事例では、滞留構造体は、滞留構造体が経口送達され得るように、第2の構成でカプセル内に折り畳まれてよい。カプセルは、いくつかの事例では、滞留構造体が被験体の特定の内部位置(例えば、胃内)で放出され、可逆的に第1の構成を得る(すなわち、跳ね返る)ように溶解してよい。いくつかの実施形態では、構造体は、胃腔中でさらに通過(例えば、胃本体から幽門へ通過)するのを遅らせるかまたは阻止する形状および/またはサイズをとるように構成される。いくつかの実施形態では、構造体は、可溶性容器および/または可溶性保持要素からの放出時に、保持(例えば、胃中滞留)するように構成された形状および/またはサイズをとる。いくつかの実施形態では、構造体は、24時間を超える、例えば、約1年までの期間、そのカプセル化形状および/またはサイズで保存された後に、胃中滞留用に構成された形状および/またはサイズをとるように構成される。いくつかの実施形態では、構造体の機械的性質が、24時間を超える、例えば、約1年までの期間、胃腔などの内部開口部中での安全な一時的保持のために最適化される。
【0089】
いくつかの実施形態によれば、滞留構造体は、腸閉塞および/または穿孔の可能性が低い〜腸閉塞および/または穿孔の可能性がなく安全性を維持するように構成することができる。制御溶解は、いくつかの事例では、胃腸管閉塞のリスクを軽減するために重要である。いくつかの実施形態では、ポリマー複合材料を含む構造体は、幽門の遠位で溶解するように設計される。いくつかの実施形態では、ポリマー複合材料は、構造体に結合されおよび/またはそれに組み込まれ、ポリマー複合材料の分解/溶解時に、構造体は、胃腸管を閉塞させることなく通過する(例えば、回盲弁を横断して)ように構成されたより小さい構造体へと壊れる。例示的実施形態では、ポリマー複合材料は、被験体の胃中(例えば、約1〜約5の範囲のpHを有する)に位置する場合は、実質的に溶解および/または分解せず、腸中(例えば、約6.7〜約7.4の範囲のpHを有する)に位置する場合(例えば、幽門を通過後)、実質的に分解する。
【0090】
いくつかの実施形態では、構造体(例えば、1つまたはそれを超えるポリマー要素を含む)は1つまたはそれを超える構成を含む。例えば、特定の実施形態では、構造体は、画定された形状、サイズ、配向、および/または体積などの特定の構成を有する。構造体は任意の好適な構成を含んでよい。いくつかの実施形態では、構造体は構造体の断面領域により画定される特定の形状を有する。好適な断面形状の非限定的例には、正方形、円形、楕円形、多角形(例えば、五角形、六角形、七角形、八角形、九角形、十二角形など)、チューブ、環、星または星状(例えば、3腕星形、4腕星形、5腕星形、6腕星形、7腕星形、8腕星形)、などが挙げられる。当業者なら、用途に応じて(例えば、胃中保持構造体用に星状)、および本明細書の教示に基づいて好適な形状を選択するように構成される。
【0091】
構造体は、いくつかの事例では、初期構成を有し、これは、構造体が、初期構成とは異なる新しい構成を得るように変更して(例えば、変形させて)もよい。例えば、いくつかの実施形態では、構造体は、第1の構成および第1の構成とは異なる第2の構成を有する。
【0092】
特定の実施形態では、構造体の構成は、最大の断面寸法により特徴付けられてよい。いくつかの実施形態では、第1の構成の最大断面寸法は、第2の構成の最大の断面寸法より、少なくとも約10%小さい、少なくとも約20%小さい、少なくとも約40%小さい、少なくとも約60%小さい、または少なくとも約80%小さい寸法であってよい。特定の実施形態では、第2の構成の最大断面寸法は、第1の構成の最大の断面寸法より、少なくとも約10%小さい、少なくとも約20%小さい、少なくとも約40%小さい、少なくとも約60%小さい、または少なくとも約80%小さい寸法であってよい。上記参照範囲のいずれかに終点を有するあらゆる閉区間も可能である(例えば、約10%〜約80%、約10%〜約40%、約20%〜約60%、約40%〜約80%)。他の範囲も可能である。
【0093】
いくつかの実施形態では、構造体の構成は、構造体の凸包体積により特徴付けられてよい。用語「凸包体積」は、当該技術分野で既知であり、通常、3−Dオブジェクトの周囲により画定される一組の表面を意味し、この表面は、特定の体積を画定する。例えば、
図14に示すように、3D星状オブジェクト150は、凸包160により画定される凸包体積を有する。いくつかの実施形態では、第1の構成の凸包体積は、第2の構成の凸包体積よりも、少なくとも約10%小さい、少なくとも約20%小さい、少なくとも約40%小さい、少なくとも約60%小さい、または少なくとも約80%小さい体積であってよい。特定の実施形態では、第2の構成の凸包体積は、第1の構成の凸包体積より、少なくとも約10%小さい、少なくとも約20%小さい、少なくとも約40%小さい、少なくとも約60%小さい、または少なくとも約80%小さい体積であってよい。上記参照範囲の組み合わせも可能である(例えば、約10%〜約80%、約10%〜約40%、約20%〜約60%、約40%〜約80%)。他の範囲も可能である。
【0094】
当業者なら、第1の構成および第2の構成の差異は、構造体の膨潤または収縮(溶媒の存在下で)をいうのではなく、代わりに2つの構成の間である程度の膨潤または収縮が起こるであろうが、構造体の少なくとも一部の形状および/または配向の変化(例えば、熱および/または機械的圧力/圧縮などの刺激の存在下で)をいうことを理解するであろう。
【0095】
いくつかの実施形態では、第1の構成は、構造体が被験体の内部の位置で保持されるように構築および配置され、第2の構成は、構造体が(例えば、カプセル内の構造体の経口送達のために)カプセル化され得るように構築および配置される。いくつかの事例では、第1の構成は、構造体が被験体の内部の位置で保持されるように十分に大きく、第2の構成は、構造体が被験体への経口送達に適切な特定のサイズのカプセル内に適合するように十分に小さい。
【0096】
特定の実施形態では、構造体は第1の構成に重合および/または注型され、構造体が第2の構成になるように機械的に変形され、カプセル内に配置されるかまたはいくつかのその他の格納構造体により制約されてよい。構造体は、例えば、構造体の、曲げ、捩じり、折り畳み、成形(例えば、材料を新しい形状の型中に圧縮する)、膨張(例えば、材料に引張力を加える)、圧縮、および/またはしわ形成(wrinkling)などの任意の好適な方法を使用して機械的に変形されてよい。構造体は、刺激/放出の前に、任意の好適な期間にわたり第2の構成を維持してよい。好都合にも、本明細書で記載の構造体の特定の実施形態は、構造体の機械的性質の顕著な分解もなく、構造体が長期間にわたり保存され得るように、第1および/または第2の構成で比較的安定であり得る。いくつかの実施形態では、構造体は、周囲条件下(例えば、室温、大気圧および相対湿度)および/または生理的条件下(例えば、生理学的流体中37℃でまたは約37℃で)で、少なくとも約1日間、少なくとも約3日間、少なくとも約7日間、少なくとも約2週間、少なくとも約1ヶ月間、少なくとも約2ヶ月間、少なくとも約6ヶ月間、少なくとも約1年間、または少なくとも約2年間にわたり安定であり得る。特定の実施形態では、構造体は、約3年間以下、約2年間以下、約1年間以下、約1ヶ月間以下、約1週間以下、または約3日間以下の貯蔵寿命を有する。いずれかの上記参照範囲内に終了点を有するいずれかのおよび全ての閉区間も可能である(例えば、約24時間〜約3年、約1週間〜1年、約1年〜3年)。他の範囲も可能である。
【0097】
いくつかの実施形態では、第2の構成の構造体は、構造体が第1の構成に戻るように跳ね返り得る。例えば、いくつかの実施形態では、第2の構成の構造体は、カプセル中に収容され、被験体に経口送達される。いくつかのこのような実施形態では、構造体は、胃に移動し、カプセルはカプセルから構造体を放出することが可能で、その際に、構造体は第1の構成を得る(例えば、第1の構成に跳ね返る)。
【0098】
本明細書で記載のポリマー複合材料を使って作製された医用構造体(例えば、インプラント)は、特定の実施形態によれば、いくつかの利点のうち1つまたはそれを超える利点を有する。例えば、いくつかの実施形態では、医用構造体(例えば、インプラント)は、成形プロセスで直接作製してよく、または機械加工、切断、穿孔、または別の方法で所望の構造体に変換することができるポリマー複合材料ストックを作製してよい。
【0099】
さらなる実施形態では、ポリマー複合材料を使って医用構造体が作製される。例えば、ポリマー複合材料を使って、部分的にまたは完全に吸収性の生体適合性医用構造体、またはその要素を作製してよい。いくつかの事例では、作製される構造体は、ポリマー複合材料の機械的性質に依存する。例えば、弾性/可撓性のポリマー複合材料を使って、有効であるためにこのような特性を必要とする構造体を形成してよい。弾性および可撓性材料は、通常、架橋度のより低い材料であり、この特性は、例えば、ポリマー複合材料の焼成時間、反応させて複合材料を形成するポリマー、および/またはポリマーの比率を制御することにより達成することができる。いくつかの事例では、弾性および可撓性の特性は、ポリマー複合材料中への追加のポリマーの組み込みおよび/または添加剤により付与してよい。
【0100】
本明細書に記載の特定のポリマー複合体を含んでもよい構造体には、限定されないが、下記が挙げられる。縫合糸(例えば、かかり付き縫合糸、編組縫合糸、モノフィラメント縫合糸、モノフィラメントおよびマルチフィラメント繊維の複合型縫合糸)、編物(braid)、結紮糸、編成または織り合わせメッシュ、編組チューブ、カテーテル、モノフィラメントメッシュ、マルチフィラメントメッシュ、パッチ、創傷癒合構造体、包帯(例えば、創傷包帯、火傷包帯、潰瘍包帯)、皮膚代用物、止血鉗子、気管再構築構造体、器官サルベージ構造体(organ salvage structure)、硬膜代用物、硬膜パッチ、神経ガイド(nerve guide)、神経再生または修復構造体、ヘルニア修復構造体、ヘルニアメッシュ、ヘルニアプラグ、一時的な創傷または組織の支持のための構造体、組織工学足場、誘導組織修復/再生構造体、抗接着性膜、癒着防止材(adhesion barrier)、組織分離膜、保持膜、三角布、骨盤底再構築用構造体、尿道吊り構造体(urethral suspension structure)、尿失禁処置用構造体、膀胱尿管逆流処置用構造体、膀胱修復構造体、括約筋修復構造体、注射用粒子、注射用マイクロスフェア、バルキングまたは充填構造体、骨髄足場、クリップ、クランプ、ネジ、ピン、釘、骨髄腔釘、骨プレート、干渉釘(interference screw)、留め鋲(tack)、ファスナー、リベット、ステープル、インプラント用固定構造体、骨移植片代用物、骨欠損フィラー(bone void filler)、縫合糸アンカー、骨アンカー、靭帯修復構造体、靭帯強化構造体、靭帯移植片、前十字靱帯修復構造体、腱修復構造体、腱移植片、腱強化構造体、回旋筋腱板修復構造体、半月板修復構造体、半月板再生構造体、関節軟骨修復構造体、骨軟骨修復構造体、脊椎固定構造体、変形性関節症処置用構造体、関節保護材(viscosupplement)、ステント、例えば冠状ステント(coronary stent)、心血管ステント、末梢ステント、尿管ステント、尿道ステント、泌尿器ステント、胃腸ステント、鼻用ステント、眼用ステントまたは神経ステントおよびステントコーティング、ステント植皮、心臓血管パッチ、カテーテルバルーン、脈管閉鎖構造体、限定されないが心房中隔欠損修復構造体およびPFO(卵円孔開存)閉鎖構造体を含む心臓内中隔欠損修復構造体、左心耳(LAA)閉鎖構造体、心膜パッチ、静脈バルブ、心臓弁、血管移植片、心筋再生構造体、歯根膜のメッシュ、歯周組織用誘導組織再生膜、眼細胞インプラント、イメージング構造体、蝸牛インプラント、塞栓形成構造体、吻合構造体、細胞播種構造体、細胞カプセル化構造体、制御放出構造体、薬物送達構造体、形成外科構造体、乳房リフト構造体(breast lift structure)、乳房固定構造体、乳房再建構造体、豊胸構造体(乳房インプラントと共に使用する構造体を含む)、乳房縮小構造体(breast reduction structure)(胸部組織の除去、再形成および再配置用の構造体を含む)、乳房インプラントを伴うかまたは伴わない乳房切除後の乳房再建用構造体、顔面再建構造体、前額リフト構造体(forehead lift structure)、額リフト構造体(brow lift structure)、眼瞼リフト構造体(eyelid lift structure)、フェースリフト構造体(face lift structure)、皺皮切除構造体、スレッドリフト構造体(thread lift structure)(顔、額および頸部の弛み領域を持ち上げて、支持するための構造体)、鼻形成構造体、頬増強用構造体、耳形成術構造体、頸部リフト構造体(neck lift structure)、おとがい形成構造体、美容修復構造体および顔面傷痕修復構造体。
【0101】
さらなる実施形態では、医用構造体は、1種またはそれを超える活性物質を有するポリマー複合材料から作製される。一実施形態では、活性物質は、疼痛および/または炎症を低減、身体中の構造体の結合を強化、または感染もしくは構造体拒絶の可能性を低減することができる治療薬である。さらなる実施形態では、構造体はステントであり、活性物質は再狭窄を防ぐ薬剤である。別の実施形態では、構造体は、埋め込み型物品であり、活性物質は、移植片拒絶を防止または抑制するための薬剤および/または美容目的で意図的に線維形成を達成するために炎症を促進する薬剤である。活性物質は、上記で、より詳細に記載されている。
【0102】
本明細書に記載のように、いくつかの実施形態では、ポリマー複合材料は、特定の形状を有するように成形されてよい。特定の実施形態では、ポリマー複合材料は、特定のテクスチャを有するように成形されてよい。例えば、いくつかの実施形態では、ポリマー複合材料の表面は、粗くてよく、および/または従来の腸溶性ポリマーに比べて有利な性質を提供する特定の特徴を有してよい。特定の実施形態では、ポリマー複合材料のテクスチャは、組成物および/またはポリマー材料の湿潤性を変える(例えば、上げる、下げる)ようなものであってよい。いくつかの事例では、湿潤性は、水滴と、ポリマー複合材料の表面との接触角を測定することにより決定し得る。特定の実施形態では、ポリマー複合材料は、ポリマー複合材料の少なくとも表面が疎水性となるようにテクスチャ加工され得る。いくつかの実施形態では、水滴と、テクスチャ加工された表面を含むポリマー複合材料との接触角は、約80度〜約150度であってよい。例えば、いくつかの実施形態では、水滴と、テクスチャ加工された表面を含むポリマー複合材料との接触角は、少なくとも約80度、少なくとも約90度、少なくとも約95度、少なくとも約100度、少なくとも約110度、または少なくとも約120度であってよい。特定の実施形態では、水滴と、テクスチャ加工された表面を含むポリマー複合材料との接触角は、約150度以下、約120度以下、約110度以下、約100度以下、約95度以下、または約90度以下であってよい。上記参照範囲の組み合わせも可能である(例えば、約80度〜約150度)。他の範囲も可能である。
【0103】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の治療薬を含むポリマー複合材料は、従来の薬物送達材料に比べて、治療薬の安定性および/または貯蔵寿命を高め得る。
【0104】
別の実施形態では、ポリマー複合材料は、最終ユーザーにキットとして提供される。
【0105】
本明細書で使用される場合、例えば、1つまたはそれを超える物品、組成物、構造体、材料および/またはそれらの下位要素および/またはこれらの組み合わせの、またはこれらの間の形状、配向、整列化(alignment)、および/または幾何学的関係、および/またはこのような用語による特徴付けに適合する上記で列挙されていないあらゆる他の有形または無形の要素に関連するいずれかの用語は、他に定義も指示もない限り、必ずしもこのような用語の数学的定義に絶対的に一致することが必要とされないと理解されるべきだが、むしろ、当業者により、このような主題に最も密接に関連すると理解されるとして特徴付けられる主題に対し可能な程度にこのような用語の数学的定義に一致することを示すものと理解されるものとする。形状、配向、および/または幾何学的関係に関連するこのような用語の例としては、形状を記述している用語−例えば、丸い、正方形、円形の/円形、長方形の/長方形、三角形の/三角形、円柱の/円柱、楕円の(elipitical)/楕円、(n)角形の/(n)角形、など;角度方向を記述している用語−例えば、垂直の、直交する、平行の、垂直の、水平の、共線の、など;輪郭および/または軌跡を記述している用語−例えば、平面/平面の、共平面の、半球形の、準半球状の、直線/直線の、双曲線の、放物線の、平坦な、曲線状の、真っ直ぐな、弓状の、正弦波形状の、接線の/正接の、など;表面および/またはバルク材料特性および/または空間/時間的分解(resolution)および/または分布を記述している用語−例えば、スムーズな、反射性の、透過性の、透明な、不透明の、剛性の、不透過性の、均一な(均一に)、不活性の、非湿潤性の、不溶性の、定常の、不変の、一定の、均一の、など;ならびに当業者に明らかである多くの他のものを記述している用語が挙げられるが、これらに限定されない。一例として、本明細書で「正方形」として記載されるであろう製造物品は、このような製品が完全に平面または直線であり、および正確に90度の角度で交差する面または辺を有することを必要とせず(実際に、このような物品は数学的抽象概念としてのみ存在することができる)、むしろ、このような製品の形状は、数学で定義される「正方形」を、当業者によって理解されるかまたは具体的に記載される、言及される製造技術について、典型的に達成可能なおよび達成される程度に近似させるように解釈されるべきである。
【0106】
本明細書で使用される場合、用語の「被験体」は、例えば、ヒトまたは動物の個別の生物体を意味する。いくつかの実施形態では、被験体は哺乳動物(例えば、ヒト、非ヒト霊長類、または非ヒト哺乳動物)、脊椎動物、実験動物、家畜、農業用動物、または伴侶動物である。いくつかの実施形態では、被験体は、ヒトである。いくつかの実施形態では、被験体は、齧歯類、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ヤギ、ヒツジまたはブタである。
【0107】
本明細書で使用される場合、用語の「求電子試薬」は、電子に引き付けられ、求核試薬に結合するために電子対を受け入れることにより化学反応に関与する官能性を意味する。
【0108】
本明細書で使用される場合、用語の「求核試薬」は、求電子試薬に結合するために求電子試薬に電子対を供与する官能性を意味する。
【0109】
本明細書で使用される場合、「反応させる」または「反応すること」という用語は、2種またはそれを超える要素間に結合を形成し、安定で単離可能な化合物を生成することを意味する。例えば、第1の要素および第2の要素を反応させて、共有結合により連結された第1の要素および第2の要素を含む1種の反応生成物を形成してよい。用語の「反応すること」はまた、溶媒、触媒、塩基、リガンド、または要素(単一または複数)間の反応の発生を促進する役割をし得るその他の材料の使用を含んでよい。「安定な単離可能な化合物」は、単離された反応生成物を意味し、不安定な中間体または遷移状態を意味しない。
【0110】
用語の「アルキル」は、直鎖アルキル基、分岐鎖アルキル基、シクロアルキル(脂環式)基、アルキル置換シクロアルキル基、およびシクロアルキル置換アルキル基を含む飽和脂肪族基のラジカルを意味する。アルキル基は、以降でより完全に記載されるように、任意に置換されてもよい。アルキル基の例としては、限定されないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、2−エチルヘキシル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、などが挙げられる。「ヘテロアルキル」基は、少なくとも1つの原子がヘテロ原子(例えば、酸素、硫黄、窒素、リン、など)であり、残りの原子が炭素原子であるアルキル基である。ヘテロアルキル基の例としては、アルコキシ、ポリ(エチレングリコール)−、アルキル−置換アミノ、テトラヒドロフラニル、ピペリジニル、モルフォリニル、などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0111】
用語の「アルケニル」および「アルキニル」は、上記のアルキル基に類似するが、少なくとも1つの二重結合または三重結合をそれぞれ含む不飽和の脂肪族基を意味する。「ヘテロアルケニル」および「ヘテロアルキニル」は、1つまたはそれを超える原子がヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、硫黄、など)である本明細書に記載のアルケニルおよびアルキニル基を意味する。
【0112】
用語の「アリール」は、単環(例えば、フェニル)、複数環(例えば、ビフェニル)、または少なくとも1つが芳香族である複数縮合環(例えば、1,2,3,4−テトラヒドロナフチル、ナフチル、アントリル、またはフェナントリル)を有する芳香族炭素環式基を意味し、全て任意に置換されてもよい。「ヘテロアリール」基は、芳香環中の少なくとも1つの環原子がヘテロ原子であり、残りの環原子が炭素原子であるアリール基である。ヘテロアリール基の例には、フラニル、チエニル、ピリジル、ピロリル、N低級アルキルピロリル、ピリジルNオキシド、ピリミジル、ピラジニル、イミダゾリル、インドリルなどが含まれ、全て任意に置換されてもよい。
【0113】
用語の「アミン」および「アミノ」は、未置換および置換アミンの両方、例えば、一般式:N(R’)(R”)(R’”)によって表すことができる部分を意味し、式中、R’、R”、およびR’”は、それぞれ独立に、原子価規則により許容される基を表す。
【0114】
用語の「アシル」、「カルボキシル基」、または「カルボニル基」は、当該技術分野において理解されており、一般式:
【化10】
(式中、WはH、OH、O−アルキル、O−アルケニル、またはこれらの塩である)によって表すことが可能な部分を含むことができる。WがO−アルキルである場合には、式は「エステル」を表す。WがOHである場合には、式は「カルボン酸」を表す。一般に、上記式の酸素原子が硫黄により置換される場合には、式は「チオールカルボニル」基を表す。WがS−アルキルである場合には、式は「チオールエステル」を表す。WがSHである場合には、式は「チオールカルボン酸」を表す。他方では、Wがアルキルである場合には、上記式は「ケトン」基を表す。Wが水素である場合には、上記式は「アルデヒド」基を表す。
【0115】
本明細書で使用される場合、「ヘテロ芳香族」または「ヘテロアリール」という用語は、炭素原子環員および1つまたはそれを超えるヘテロ原子環員(例えば、酸素、硫黄または窒素)を含む単環式または多環式芳香族ヘテロ環(またはそのラジカル)を意味する。通常、芳香族ヘテロ環は5〜約14環員を有し、その中の少なくとも1つの環員は酸素、硫黄、および窒素から選択されるヘテロ原子である。別の実施形態では、芳香族ヘテロ環は、5または6員環であり、1〜約4個のヘテロ原子を含んでよい。別の実施形態では、芳香族ヘテロ環系は、7〜14環員であり、1〜約7個のヘテロ原子を含んでよい。代表的ヘテロアリールには、ピリジル、フリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、イミダゾリル、インドリジニル、チアゾリル、イソオキサゾリル、ピラゾリル、イソチアゾリル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、トリアゾリル、ピリジニル、チアジアゾリル、ピラジニル、キノリル、イソキノリル、インダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾフリル、ベンゾチアゾリル、インドリジニル、イミダゾピリジニル、イソチアゾリル、テトラゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、カルバゾリル、インドリル、テトラヒドロインドリル、アザインドリル、イミダゾピリジル、キナゾリニル(qunizaolinyl)、プリニル、ピロロ[2,3]ピリミジル、ピラゾロ[3,4]ピリミジル、ベンゾ(b)チエニル、などが挙げられる。これらのヘテロアリール基は、1つまたはそれを超える置換基により任意に置換されてもよい。
【0116】
用語の「置換された」は、有機化合物の全ての許容可能な置換基を含み、「許容可能な」は、当業者に既知の原子価の化学的規則の文脈におけるものであることを企図する。いくつかの事例では、「置換された」は通常、水素の、本明細書に記載の置換基による置換を意味する。しかし、本明細書で使用される場合、「置換された」は、分子が特定される重要な官能基の置換および/または変更(例えば、「置換される」官能基が、置換により、異なる官能基になるような)を包含しない。例えば、「置換フェニル」は、依然としてフェニル部分を含んでいる必要があり、この定義では、置換により、例えば、ピリジンなどのヘテロアリール基となるように変更され得ない。広義の態様では、許容可能な置換基には、有機化合物の非環式と環式、分岐と非分岐、炭素環式とヘテロ環式、芳香族と非芳香族置換基が含まれる。例示的置換基には、例えば、本明細書で記載のものが含まれる。許容可能な置換基は、適切な有機化合物に対し、1つまたはそれを超えるおよび同じまたは異なる置換基とすることができる。本発明の目的のために、窒素などのヘテロ原子は、ヘテロ原子の原子価を満たす、水素置換基および/または本明細書で記載の有機化合物の任意の許容可能な置換基を有してよい。本発明は、有機化合物の許容可能な置換基により何らかの形で限定することを意図するものではない。
【0117】
置換基の例には、アルキル、アリール、アラルキル、環式アルキル、ヘテロシクロアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、ペルハロアルコキシ、アラルコキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアラルコキシ、アジド、アミノ、ハロゲン、アルキルチオ、オキソ、アシル、アシルアルキル、カルボキシエステル、カルボキシル、カルボキサミド、ニトロ、アシルオキシ、アミノアルキル、アルキルアミノアリール、アルキルアリール、アルキルアミノアルキル、アルコキシアリール、アリールアミノ、アラルキルアミノ、アルキルスルホニル、カルボキサミドアルキルアリール、カルボキサミドアリール、ヒドロキシアルキル、ハロアルキル、アルキルアミノアルキルカルボキシ、アミノカルボキサミドアルキル、アルコキシアルキル、ペルハロアルキル、アリールアルキルオキシアルキル、などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0118】
本明細書で使用される場合、「ネットワーク」という用語は、架橋により相互に接続されたオリゴマーまたはポリマー鎖を有する3次元物質を意味する。
【0119】
本明細書で使用される場合、「鎖」という用語は、1つのモノマー単位のオリゴマーもしくはポリマー鎖、または2種もしくはそれを超える異なるモノマー単位のオリゴマーもしくはポリマー鎖を意味する。
【0120】
本明細書で使用される場合、「骨格」という用語は、モノマー単位が一緒に結合されている原子および結合を意味する。本明細書で使用される場合、「プレポリマー」という用語は、ネットワーク形成のために架橋されていないオリゴマーまたはポリマー鎖を意味する。
【0121】
本明細書で使用される場合、「架橋」という用語は、2つの鎖の間の連結を意味する。架橋は、化学結合、単一原子、または複数の原子のいずれであってもよい。架橋は1つの鎖のペンダント基の異なる鎖の骨格との反応により、または1つのペンダント基と別のペンダント基の反応により形成されてよい。架橋は、別の鎖分子間に存在してよく、また、同じ鎖の異なる点の間に存在してもよい。
【0122】
本明細書で使用される場合、「活性物質」という用語は、生物学的基質の変化を引き起こす化合物または化合物の混合物を意味する。医学および生物学分野における代表的な活性物質の種類には、治療薬、予防薬および診断薬が含まれる。活性物質は、小分子薬物、ビタミン、栄養素、生物学的薬物、ワクチン、タンパク質、抗体またはその他の生体高分子であってよい。活性物質は、化合物の上に列挙した種類のいずれかの混合物であってよい。
【0123】
「免疫抑制剤」は、被験体中の異物に対する免疫応答を阻害または防止する薬剤を意味する。免疫抑制剤は通常、T細胞活性化を阻害する、増殖を中断させる、または炎症を抑制することにより作用する。
【0124】
本明細書で使用される場合、「オリゴマー」および「ポリマー」という用語は、それぞれ、モノマーサブユニットを繰り返した化合物を意味する。一般的に言って、「オリゴマー」は、「ポリマー」より少ないモノマー単位を含む。当業者なら、特定の化合物がオリゴマーと指定されるかまたはポリマーと指定されるかは、化合物の正体およびそれが使われる文脈に依存することを理解するであろう。
【0125】
当業者なら、多くのオリゴマーおよびポリマー化合物が異なる数のモノマーを含む複数の化合物から構成されることを理解するであろう。このような混合物は、混合物中のオリゴマーまたはポリマー化合物の平均分子量によって指定されることが多い。本明細書で使用される場合、オリゴマーまたはポリマー化合物に関連して、単数形の「化合物(compound)」の使用は、このような混合物を含む。
【0126】
本明細書で使用される場合、さらなる調整剤(modifier)を含まない任意のオリゴマーまたはポリマー材料への言及は、任意の平均分子量を有する前記オリゴマーまたはポリマー材料を含む。例えば、用語の「ポリエチレングリコール」および「ポリプロピレングリコール」は、さらなる調整剤なしで使用される場合、任意の平均分子量のポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールを含む。
【0127】
本明細書で使用される場合、「マイケル受容体」という用語は、炭素−炭素二重結合または三重結合を有する官能基を意味し、ここで、炭素原子のうちの少なくとも1つは、さらにカルボニル基またはイミン、オキシム、およびチオカルボニルなどのカルボニル類似体に結合している。マイケル受容体と求核試薬との間の反応により、求核試薬と、カルボニル基またはカルボニル類似体に直接接続していない炭素原子との間で共有結合が形成される。マイケル受容体と求核試薬との間の反応は、「マイケル付加」と呼ばれることもある。
【0128】
用語の「脂肪族基」は、直鎖、分岐鎖、または環状脂肪族炭化水素基を意味し、アルキル基、アルケニル基、およびアルキニル基などの飽和および不飽和の脂肪族基を含む。
【0129】
用語の「アルコキシ」は、結合した酸素原子を有する、上記で定義されたアルキル基を意味する。代表的アルコキシ基には、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、およびtert−ブトキシが挙げられる。「エーテル」は、酸素により共有結合された2つの炭化水素である。
【0130】
用語の「アルキルチオ」は、結合された硫黄原子を有する上記で定義されたアルキル基を意味する。いくつかの実施形態では、「アルキルチオ」部分は、−S−アルキル、−S−アルケニル、および−S−アルキニルの内の1つにより表される。代表的アルキルチオ基には、メチルチオおよびエチルチオが挙げられる。
【0131】
用語の「アミド」は、カルボニル基により置換されたアミノとして当該分野で認められている。
【0132】
本明細書で使用される場合、用語「アラルキル」は、アリール基で置換されたアルキル基を意味する。本明細書で使用される場合、用語「ヘテロアラルキル」は、ヘテロアリール基で置換されたアルキル基を意味する。
【0133】
本明細書で使用される場合、用語の「ヘテロ原子」は、炭素または水素以外の任意の元素の原子を意味する。代表的(Examplary)ヘテロ原子は窒素、酸素、および硫黄を含む。
【0134】
本明細書で使用される場合、「チオール」という用語は、−SHを意味し、用語の「ヒドロキシル」は−OHを意味し、用語の「スルホニル」は−SO
2−を意味する。
【0135】
本明細書で使用される場合、「オキソ」という用語は、カルボニル酸素原子を意味する。
【0136】
本明細書で使用される場合、「アルカロイド」という用語は、少なくとも1つの非ペプチド性窒素原子を含む天然に存在する有機化合物を意味する。
【実施例】
【0137】
次の実施例は、本発明の特定の実施形態を例示することを意図するが、本発明の全範囲を例示することを意図するものではない。
【0138】
実施例1−腸溶性エラストマー(EE)としてのポリマーゲルの調製
図1A〜1Dは、EEポリマーゲルの提案された超分子ネットワーク構造を示す。EEは、2種の合成高分子である、ポリ(アクリロイル−6−アミノカプロン酸)(PA6ACA、M
n=61,600〜112,700。M
w=347,300〜466,300、
図6A〜6D)およびポリ(メタクリル酸−co−アクリル酸エチル)(オイドラギット(登録商標)L100−55、M
n=72,300。M
w=241,000)から構成される。L100−55は、Evonik Industriesから入手した医薬品グレードの腸溶性ポリマーである。PA6ACAは、従来の腸溶性ポリマー(例えば、L100−55、酢酸コハク酸セルロースおよびフタル酸ヒドロキシルプロピルメチルセルロース)に構造的に類似している。PA6ACAは、末端カルボキシル基が可撓性かつ接近可能となるのに充分な長さの側鎖を有し、
図1Aに示すように、分子間水素結合の形成を可能とする。カルボキシル基が脱プロトン化されていない酸性環境下では、PA6ACAおよびL100−55上のカルボキシル基とアミド単位との間の鎖間水素結合が、内部に水を捕捉した緩く架橋した超分子ネットワークを提供し、これがこの材料の弾性に寄与し得る。中性のまたはアルカリ性の水性環境では、カルボキシル基が脱プロトン化され、分子間水素結合が解消されて急速な溶解が生ずる。
【0139】
種々の組成および性質を有するEEを、6MのHCl溶液を加えた、1:0、1:1、および1:2のポリマー重量比のPA6ACAナトリウム塩およびL100−55ナトリウム塩の溶液から共沈させ、超遠心分離で圧縮することにより合成した(
図1B)。
【0140】
45mLのナノピュア水中に溶解させた、1gのPA6ACAナトリウム塩、0.853gのポリ(メタクリル(methacylic)酸−co−アクリル酸エチル)(オイドラギット(登録商標)L100−55)および0.183gのNaOHを含むよく混合された溶液に、5mLの6M HCl溶液(ACS等級37%濃塩酸から希釈)を迅速に加えた。混合物をボルテックス振とう器上に5分間置き、その後、壁が肉厚の遠心管(Beckman Coulter Inc.)中に入れ、Beckman Coulter Ultracentrifuge(Avanti(登録商標)J−26XP)中でSW32Tiローターを使って、20℃、32,000rpmで2時間、遠心分離した。得られたPA6ACA/L100−55の比率が1:1の腸溶性弾性ポリマーゲルを超遠心管の底部から抽出した。
【0141】
共沈および超遠心分離プロセスにより、強靭な弾性および比較的低い含水率(35%未満、補足情報の測定方法)を有する、目視で確認して均一な材料が得られた。
図1Cは、超遠心管から取り出した典型的EE片を示す(PA6ACA:L100−55=1:2)。EEは、構造体の構築または機械的特徴付けのために、通常、種々の形状に容易に切断可能であった。予備的機械試験(PA6ACA:L100−55=1:2、
図1Dに示す)では、立方体様形状をその元の長さの3倍に引っ張ったところ、外力を除去後、5分でその形状を完全に回復し(
図1D、下段)、材料疲労することなく所望の弾性を示した。
【0142】
図1Dでは、PA6ACA:L100−55=1:2のポリマーゲルの1.5cm片の伸長および回復試験の画像を示す。
【0143】
実施例2−EEの特徴付け
種々のPA6ACAとL100−55との比率によるEEの構造−特性の関係をさらによく理解するために、これらの材料のナノ構造、形態、細胞傷害性、膨潤、機械的特性なおよび腸溶性を特徴付けた。小角X線散乱(SAXS)および赤外線(IR)分光法を使って、分子レベルで、EEの水素結合ネットワークを特徴付けた。
【0144】
Argonne National LaboratoryのAdvanced Photon SourceのDND−CATにより、SAXS実験を行った。波長λ=0.73ÅのX線を使用し、室温で、3種の異なる試料−検出器距離(0.2、1.0、および7.5m)を使って各測定を行い、0.0026<q<4.4Å
−1のq範囲をカバーした。ここで、q=(4π/λ)sin(θ/2)は散乱ベクトルの大きさであり、θは散乱角である。ゲル試料をディスク形状に調製し、X線ビームが湿潤試料の中心を通過するように、垂直に固定した。試料は、厚さが約1.0mmで、直径が3.0cmであった。
【0145】
PA6ACAゲルの散乱プロファイル(
図2A)は、4つの幅広いピークを示す。2つのピークは、約3.1Åと2.3Å付近の周期的距離に対応するより高いq領域に認められ、これらは、純水中でも認められ、したがって、ゲル中のH
2O分子の間の水素結合に起因し得る(IV型と定義)。SAXSプロファイルのより低いq領域のその他の2つのピークは、12.5Åと5.7Åの2つの異なる周期的距離を表し、これらは、ゲル中のPA6ACA分子間の2種の共存する水素結合構成、すなわち、それぞれ、正面向き(face−on)構成(I型)および交互構成(III型)に帰属し得る(
図2B)。2種のPA6ACA水素結合の構成の形成は、IR分光法によりさらに裏付けられた。ゲル中でPA6ACAをL100−55とブレンドする場合、SAXSプロファイルの中間的q領域(6.3Å)に、新しいピークが出現し、このことは、PA6ACAとL100−55との間に新しい水素結合構成(II型、
図2B)が形成されたことを示唆する。ポリマーゲル中のL100−55の含有量を増やすことにより、SAXSプロファイルにおいて、ピーク(II)の相対的増加とピーク(I)と(III)の減少が生じた。
【0146】
走査型電子顕微鏡法(SEM)を用いてEEの微細構造を調査した。凍結乾燥ゲルのSEM画像(
図2C)からわかるように、3種のEE配合物は、マイクロメートルの範囲の多孔度を示し、L100−55のより高いブレンド比率は、孔径の減少と相関した。含水率は、PA6ACA自体の31.6±3.8%から、1:1比率のEEの27.7±4.6%まで、さらに、1:2比率のEEの26.4±3.5%まで減少し、これは、SEMによる多孔度の所見と一致している。
【0147】
EEの弾性および腸溶性も試験した。模擬胃液(SGF)中、37℃での浸漬引張応力試験を使って、機械的性質、およびこれらの性質がPA6ACAとL100−55のブレンド比によってどのように影響を受けるのかを調査した。
【0148】
循環および加熱Bionix Mini Bathおよび電子温度プローブを備えたMTS Synergie400 Tensile Test Machineを使って、浸漬引張試験を行った。試験のために、EEを約2mm×2mm×20mm片に切り出し、ウェッジアクショングリップ(wedge action grip)により保持し、試験のために6〜12mmを露出させた。37℃のSGFを浴に加え、引張る前に、EEをSGF中で10分間平衡化させた。伸長速度を10mm・分
−1に設定した。試験プロセス中、破損するまでEEをSGF中に浸した。
【0149】
L100−55の量が増加するに伴い、ヤング率および引張強度が増加し、一方、歪みは、純粋なPA6ACAの1207%歪みおよび1:1比率のEEの1230%歪みから、1:2比率のEEの943%まで減少した(
図2C)。応力−歪み試験は、EEの機械的性質が、PA6ACAとL100−55のブレンド比率を調整することにより、操作することができることを示唆する。模擬胃液(SGF、pH=約1.2)および模擬腸液(SIF、pH=約6.8)中で、EEのpH依存溶解特性を評価した。溶解を測定するために、EEを約1cm
3の寸法の立方体に切り出し、50mLのVWR遠心管中で40mLのSGFまたはSIF中に浸漬した。各時点および条件での6回の反復物を250rpmで振とう器プレート上で37℃でインキュベートした。12時間毎に新しいSGFまたはSIFと溶液を交換した。各時点で、秤量前に、立方体を48時間凍結乾燥した。残存質量パーセンテージは、残存する乾燥重量の、最初の乾燥重量に対する比率に等しい。
【0150】
図2Dに示すように、3種全てのEE配合物は、SGF中で4日間にわたり、検出可能な質量損失もなく、長期安定性を示した。対照的に、同じ期間内で、3種全てのEEは、模擬腸液(SIF)中で、類似の溶解速度により擬似ゼロ次(pseudo−zero order)の様式でほぼ溶解した。EEの腸溶性をさらに調節するために、N−アクリロイル 6−アミノカプロン酸(A6ACA)と、より疎水性のモノマーのN−アクリロイル 11−アミノウンデカン酸(A11AUA)とのコポリマーを合成し、P(A6ACA
0.5−coA11AUA
0.5)(
図6A〜6D、M
n=82,300〜170,600。M
w=358,400〜655,900)を作製した。このコポリマーをL100−55と1:2の重量比でブレンドして材料を得、この材料は18日間でSIF中に完全に溶解した(
図7)。したがって、物理的ブレンドまたは化学的共重合を行ってポリマーゲル組成を調節することにより、EEの弾性および/または腸溶性の両方を調製することが可能であろう。
【0151】
EEの生体適合性および生物学的安全性を評価するために、EEナトリウム塩形態の、HeLa、HEK293および腸株Caco−2(C2BBe1クローン)およびHT29−MTX−E12を含む複数の細胞株に対する細胞傷害性を試験した(
図8)。
【0152】
細胞傷害性調査を行うために、PA6ACAナトリウム塩およびL100−55をNaOH水溶液に溶解した。その後、1MのHClを用いて、pHを7.0に調節した。最終ポリマー溶液を、試験前にダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)(Life Technologies)で100mg/mLに希釈した。HeLa、HEK293、C2BBe1(ATCC)およびHT29−MTX−E12細胞(Public Health England)を、それぞれ6×10
3、16×10
3、16×10
3および2×10
4細胞/ウェルの密度で96ウェルプレートに播種することにより、これらの細胞での細胞傷害性を試験した。HeLaおよびHEK293細胞を、1ウェル当たり、1%の非必須アミノ酸、10%のウシ胎仔血清(FBS)および1%のペニシリン−ストレプトマイシン溶液(Life Technologies)を含む100μLのDMEM中で培養した。C2BBe1およびHT29−MTX−E12細胞を、同じ培地中で培養したが、4mg/mLのヒトトランスフェリン(Life Technologies)をさらに追加した。細胞を3日間培養物中で保持した後、培地を入れ替え、これに、溶解したポリマー水溶液を添加した(ポリマーの最終濃度は、0.078〜20mg/mLの範囲であった)。72時間後、各ウェルに10μLのアラマーブルー試薬(Life Technologies)を加えることにより細胞傷害性を定量化した。内容物をよく混合した後、37℃で1時間インキュベートした。570nmでの吸光度を、600nmの基準波長を使って、Infinite M200Pro(Tecan)で記録した。細胞を1%ツイーン20で溶解することにより陽性対照とし、いずれのポリマーにも供さなかった細胞を陰性対照とした。細胞生存率は、次式により計算した:細胞生存率(%)=100×(吸光度
(試料)−吸光度
(陽性対照))/(吸光度
(陰性対照)−吸光度
(陽性対照))。
【0153】
3種全てのEE配合物について、72時間のインキュベーション期間の終わりに、0.078〜20mg/mLの広範囲の濃度にわたり、有意な細胞傷害性は観察されなかった。非常に高濃度で観察された細胞傷害性(4.71mg/mLを超えるLD
50)は、大量の高分子量ポリマーナトリウム塩の溶解後の、細胞培養培地のpHまたは粘度の変化に起因すると思われる。植物油およびエタノールを含む、いくつかの一般に摂取される流体中でのEEの膨潤挙動をさらに評価した。酸性の水溶液(pH≦5.0)中、および10重量%の植物油と混合した酸性溶液中でEEは膨潤せず、それらの完全性を維持した(補足情報を参照されたい)。PA6ACAのエタノールを吸収する能力を評価した。PA6ACAは、10%エタノール中で目立つほどには膨潤せず(
図9)、このことは、このファミリーの材料の一般的な食事成分との適合性を裏付けている。
【0154】
膨潤を測定するために、予め秤量した(pre−weighted)EE立方体(約1cm
3)を、50mLのVWR遠心管中の、特定の比率の植物油(10%)またはエタノール(10〜50%)とブレンドした40mLのSGF中に浸漬した。各溶媒条件での3回の反復物を250rpmで振とう器プレート上で37℃でインキュベートした。24時間後、試料を秤量(weighted)し、初期重量と比較した。10%植物油を含むSGFでは、EEの、検出可能な重量の増加はなかった。エタノールを含むSGFに関しては、膨潤データを
図9に示す。
【0155】
実施例3−胃中保持構造体の製造およびインビトロ試験
胃中滞留構造体の重要な構成成分としてEEを使用するという目標に向けての1つのステップとして、EEおよびポリカプロラクトン(PCL)をプロトタイプ胃中滞留構造体に組み込んだ。その比較的高い引張強度のために、1:2重量比のPA6ACA/L100−55を使ったEEを、この調査の残りにおける胃中構造体の作製および試験用に選択した。胃中構造体の構造的要素として、PCLを選択した。PCLは、その実証済みの生体適合性、優れた機械的性質および製造の容易さのために、インプラント用の生体用材料として、また、薬物キャリアとして広く使用されている。通常、3Dプリンターを使って、ポリジメチルシロキサン(PDMS)陰性型生成用の押込み型(positive mold)を生成し、その後、一体化EE−PCL構造体の形成のために、数片のEEをその型中に置き、PCLを70℃で融解させてPCLをEEと結合させた。
【0156】
DurusWhite RGD430造形材料を使ったObjet 3DプリンターおよびSupport Fullcure 705をサポート材料として使用して、陽性モデル(positive model)としての形状を生成した。ポリジメチルシロキサン(PDMS)(SYLGARD(登録商標)184 SILICONE ELASTOMER KIT、Dow Corning)を陽性モデルの周りに注型することにより陰性型を生成した。EE(1:2の比率のPA6ACA/L100−55)を立方体または立方体状に切断し、PDMS型にはめ込み、真空下で乾燥した。PCLビーズ(Sigma、M
n80K)をPDMS型中のEE片の間に置き、70℃で12時間融解させた後、室温に冷却した。EEおよびPCLを含む得られた構造体をSGF中に2日間浸漬し、EEを完全に湿潤化させた(hydrate)後、構造体を型から取り出した。
【0157】
EEとPCLとの間の接合界面の強度および完全性を評価するために、両側にPCLを有するドッグボーン形状の構造体の中央にEEを置き、ドッグボーンを180°変形させ、破損するまで線形伸長させた。
図10に示すように、EEは、壊れずに180°の曲げに耐えるのに充分低いヤング率を有していた。破損試験中、EEとPCLとの界面は無傷であり、このことは、界面の安定性、およびPCLを胃中滞留構造体の作製のための共構成成分としてEEと共に使用することの実現性を示唆している。
【0158】
胃中構造体中のEEの弾性および腸溶性機能の有用性を実証するために、介在EEリンカーを有するPCL円弧から構成される環を作製し試験した(
図3A〜3D)。幽門の通過を防ぐことにより胃中保持が起こるように、構造体の最大直径を選択した。静止ヒト幽門の開口直径が12.8±7.0mmと考えて、外径32mm、内径28mm、幅2mm、深さ2mmを有する、環形状PDMS型中で胃中保持構造体を調製した。EEを6mm×4mm×2mmの寸法の立方体状切片に切断し、型にはめ込んだ後、真空下で乾燥した。この後で、続けてPCLを配置し、融解させた(
図3A)。
図3Bに示すように、得られた環形状構造体は、弾性要素を180度まで曲げて標準的000ゼラチンカプセル中にはめ込むことによりカプセル化可能であった。胃環境中での展開と保持をシミュレーションするために、カプセル化円形構造体を37℃でSGF中に置いた。展開された構造体は、カプセルから脱出し、8分以内にその元の形状を回復した(
図3C)。媒体をSIFに変更すると、EEリンカーはゆっくり膨潤して溶解した。その結果、環形状構造体は12時間以内に徐々にバラバラになった(
図3D)。EEの弾性によりカプセル化およびカプセルからの解放後の環形状構造体の回復が可能となり、同時に、腸溶性によりSIF中での構造体の解離が可能となった。
【0159】
大型動物モデル中の胃中滞留構造体のインビボ評価
プロトタイプ構造体中へのEEの組み込みにより付与される弾性および腸溶性をインビトロで確立したので、EEを使って形成した胃中保持構造体のインビボ適用をヨークシャーブタ動物モデルを使って試験した。45〜55kgの体重のヨークシャーブタは、通常、ヒトに類似の胃および腸の解剖学的構造および寸法を有し、また、これまで、その他の胃腸管構造体の評価に使用されてきた。
【0160】
体重約45〜55kgの6匹の別々の雌ヨークシャーブタをインビボ評価に使用した。手順の前に、動物を一晩絶食させた。手順の日に、朝の給餌を保留し、テラゾール(チレタミン/ゾラゼパム)5mg/kg、キシラジン2mg/kg、およびアトロピン0.04mg/kgを使って、動物を鎮静させた。構造体の胃中配置を確実にするために、内視鏡下で食道中に配置された食道オーバーチューブ(esophageal overtube)(US Endoscopy,Mentor,Ohio)を用いて構造体を胃中に配置した。48〜72時間毎に放射線撮影を行い、構造体の完全性と通過ならびに腸閉塞または穿孔の放射線撮影によるあらゆる証拠をモニターした。さらに、不充分な給餌、不充分な排便、腹部膨満および嘔吐を含むあらゆる閉塞の証拠について、少なくとも1日2回、全動物を臨床的にモニターした。プロトタイプ構造体から放射線不透過性基準が省略された場合には、可視化は内視鏡下で行われた。
【0161】
図3A〜3Dに示すように、環形状構造体が形成され、放射線検査モニタリング用の1mmのステンレス鋼ボールをPCL腕中に加えて、000ゼラチンカプセル中にカプセル化された。適度の鎮静下で、カプセルが内視鏡可視化下で食道を通して導入された。カプセル化環形状構造体は、展開され、胃中で15分以内にその基準形状を回復した(
図4A)。4匹の異なるブタに対して4種の個々の実験を行い、2〜5日間の構造体の胃中保持を実証した(
図4Bおよび
図4D)。胃外部には、無傷の構造体は視認されず、このことは、構造体の破壊が胃中で最初に起こったことを示唆する。無傷の構造体の消失は、放射線撮影で可視化され、1つまたは2つのEEリンカーの部分的溶解および/または破断が認められ、これによって閉構造体の直線化が生じ、胃からの容易な排出が可能となった(
図11)。胃からの排出の際、溶解可能なEEは崩壊して小さい断片を生じ、腸閉塞の証拠なしに、剛性セグメントの安全な通過を可能とする(
図4Cおよび4E)。全実験を通して、動物は正常な摂食および排便パターンを有することが観察され、臨床的または放射線検査的に、胃腸管閉塞の兆候を何ら示さなかった。上記実験の放射線検査による可視化は、構造体のPCLセグメント中への放射線不透過性ビーズの包含により可能となった。
【0162】
PCL腕中のステンレス鋼ビーズが胃中保持に寄与した可能性を評価するために、鉄ビーズを含まない4つのカプセル化環形状構造体を2匹のブタ中で展開した(動物各1匹当たり2つのカプセル)。内視鏡画像処理を使って、展開後、0.5時間、2日、4日および7日の時点で胃腔中のこれらを評価した。4つの環の全てが特定され、2日および4日後に2匹の動物の胃中でこれらは無傷であったが、7日後には、1つの環のみが特定された(
図12)。胃中保持は、構造体の合計質量の約20%に相当するステンレス鋼ビーズの除去により、大きく影響を受けたようには見えなかった。
【0163】
EEの弾性機能は、通常、快適な経口送達のために、円形状構造体の標準的000カプセル中への折り畳みを可能とし、さらに、カプセルの溶解後には、長期の胃中保持のために形状回復を可能とした。腸溶性機能は、通常、下部胃腸管を安全に通過するために、構造体の小片への解離を可能とした。このプロトタイプ構造体は、カプセルにより送達される他の報告された胃中保持構造体により達成された最大1〜2日間の胃中保持に比べて、2〜7日間にわたる長期間の胃中保持を達成した。
【0164】
カプセルにより送達される自己展開型の胃中保持構造体以外に、本発明者らは、同様にEEと一緒に連結されたPCL剛性セグメントからなる、文字「M.I.T」を形成した大きな構造体を含む、内視鏡送達および配置のための代表的胃中滞留構造体を調査した。M、I、およびT形状PMDS型を使うことにより、それらの代表的胃中滞留構造体を、EEと鉄ボールを埋め込んだPCLとを使って構築した。これらの形状は折り畳まれ、内視鏡の支援を得て食道を通って送達可能であった。放射線検査画像は、3匹のブタの胃中(
図5B〜5C、5E〜5F、および5H〜5I)でのM、I、およびT文字形状の送達直後の弾性回復を示す。内視鏡画像はまた、全3つの文字の胃中保持を確認し、それらの構造体により引き起こされる閉塞がないことを明らかにした(
図5D、5G、および5J)。3つ全てのM、I、およびT形状構造体は、断片化の前に、2〜5日間胃腔中に保持された(
図13)。
【0165】
実施例4−合成
材料。6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、NaOH、塩酸(ACS試薬、37%)、NaCl、テトラメチルエチレンジアミン、過硫酸アンモニウム、ポリカプロラクトン(PCL、平均M
n80,000)およびKH
2PO
4を、Sigma−Aldrich Company(St.Louis,MO)から入手したまま使用した。塩化アクリロイルをSigmaから購入し、使用前に真空蒸留した。ナノピュア水(18MΩ・cm)をMilli−Q水濾過システム、Millipore Corp.(St.Charles,MO)により得た。1Lの模擬胃液(SGF、pH約1.2)を、2gのNaClと8.3mLの濃HClを水中に溶解し、水を使って1000mLに調節することにより作製した。1Lの模擬腸液(SGF、pH約6.8)を、6.8gのKH
2PO
4および0.896gのNaOHを水中に溶解し、水を使って1000mLに調節することにより作製した。
【0166】
PA6ACAナトリウム塩の合成。40℃で400mLのナノピュア水中に溶解した、10g(54.1mmol)のA6ACA、2.16g(54.1mmol)のNaOH、および6.3mg(0.0541mmol)のテトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)を含む、窒素でバブリングした溶液に、62mg(0.270mmol)の過硫酸アンモニウムの10mLのナノピュア水溶液を加えた。重合のために、反応混合物を12時間撹拌した。3日間の透析のために、ポリマー溶液を透析チューブ(MWCO 3500Da)に移し、凍結乾燥して、95%の平均収率で白色固体粉末を得た。
【0167】
P(A6ACA
0.5−co−A11AUA
0.5)ナトリウム塩の合成。40℃で700mLのナノピュア水中に溶解した、10g(39.2mmol)のA11AUA、7.25g(39.2mmol)のA6ACA、3.14g(78.4mmol)のNaOH、および9.1mg(0.0784mmol)のテトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)を含む、窒素でバブリングした溶液に、89mg(0.392mmol)の過硫酸アンモニウムの10mLのナノピュア水溶液を加えた。重合のために、反応混合物を12時間撹拌した。3日間の透析のために、ポリマー溶液を透析チューブ(MWCO 3500Da)に移し、凍結乾燥して、87%の平均収率で白色固体粉末を得た。P(A6ACA
0.5−co−A11AUA
0.5)の50:50組成比をラジカル重合の供給比とした。
【0168】
いくつかの本発明の実施形態が本明細書で説明され、例示されてきたが、当業者なら、本明細書で記載の機能を実施するおよび/または結果および/または1つまたはそれを超える利点を得るための種々のその他の手段および/または構造体を容易に予測すると思われるが、それぞれのこのような変形および/または修正は本発明の範囲内に入ると見なされる。さらに一般的には、当業者なら、本明細書で記載のすべてのパラメータ、寸法、材料、および構成は、例示的であることが意図されていること、および実際のパラメータ、寸法、材料、および/または構成は、本発明の教示が使用される具体的な用途(単一または複数)に依存するであろうことを容易に理解するであろう。当業者なら、単に定型の実験を使うだけで、本明細書で記載の特定の本発明の実施形態に対する多くの等価物を認める、または確認することができるであろう。したがって、前述の実施形態は、例示の目的のみで提示されていること、および添付の特許請求の範囲およびそれらの等価物の範囲内で、特に記載および請求されている以外の方法で本発明を実施し得ることが理解されよう。本発明は、それぞれ本明細書で記載の個別の特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法に関する。さらに、2種またはそれを超えるこのような特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法の任意の組み合わせは、このような特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法が相互に矛盾しない場合には、本発明の範囲内に包含される。
【0169】
本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、特に明示的に相反して示されない限り、不定冠詞の「1つ(a)」および「1つ(an)」は、「少なくとも1つの」を意味するものと理解されるべきである。
【0170】
本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、語句の「および/または(and/or)」は、このように結合された要素の「一方または両方」、すなわち、いくつかの事例では接続的に存在する要素、その他の事例では離接的に存在する要素を意味すると理解されるべきである。語句「および/または」により具体的に特定された要素以外の、その他の要素は、特に明示的に相反して示されない限り、特に特定されたこれらの要素に関連してもまたは非関連であっても、任意に存在してよい。したがって、非限定的例として、「Aおよび/またはB」への言及は、「含む」などのオープンエンド用語と共に使用される場合、一実施形態では、BのないA(任意選択で、B以外の要素を含む);別の実施形態では、AのないB(任意選択で、A以外の要素を含む);さらに別の実施形態では、AおよびBの両方(任意選択で、その他の要素を含む);などを意味することができる。
【0171】
本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、「または(or)」は、上記で定義の「および/または」と同じを意味するものと理解されるべきである。例えば、リスト中の項目を分離する場合、「または(or)」または「および/または」は、包括的であると解釈されるべきである、すなわち、少なくとも1つの数の要素またはリストの要素を含むと解釈されるべきであるが、また2つ以上の数の要素またはリストの要素、および任意選択で、追加の非リスト項目を含むと解釈されるべきである。明確に相反して示された用語に限り、例えば、「ただ1つの」または「正確に1つの」、または特許請求の範囲で使用される場合の「からなる(consisting of)」は、要素のいくつかまたはリストの内の正確に1つを含むこと意味することになる。一般に、本明細書で使用される場合、用語の「または(or)」は、「どちらか」、「〜の1つ」、「〜の1つのみ」、または「正確に1つの」などの排他的用語が先行する場合、排他的選択肢(すなわち、「一方または他方であるが両方ではない」)を示すとのみ解釈されるものとする。特許請求の範囲で使われる場合、「本質的になる」は、特許法の分野で使用されるその通常の意味を有するものとする。
【0172】
本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、1つまたはそれを超える要素のリストに関連して、語句の「少なくとも1つの」は、要素のリスト中のいずれか1つまたはそれを超える要素から選択される少なくとも1つの要素を意味するが、要素のリスト内に具体的にリストされた各要素および全要素の少なくとも1つを必ずしも含むとは限らず、要素のリスト中の要素の任意の組み合わせを排除しないと理解されるべきである。この定義はまた、語句の「少なくとも1つの」が指す要素リスト内で具体的に特定された要素以外の要素が、これらの具体的に特定された要素に関連するまたは関連しないに関わらず、任意選択で存在してもよいことを許容する。したがって、非限定的例として、「AおよびBの少なくとも1つ」(または、同じ意味で、「AまたはBの少なくとも1つ」、または同じ意味で、「Aおよび/またはBの少なくとも1つ」)は、一実施形態では、少なくとも1つの、任意選択で、2つ以上のAを含みBが存在しない(および任意選択でB以外の要素を含む)を意味し;別の実施形態では、少なくとも1つの、任意選択で2つ以上のBを含みAが存在しない(および任意選択でA以外の要素を含む);さらに別の実施形態では、少なくとも1つの、任意選択で2つ以上の、Aを含み、および少なくとも1つの、任意選択で、2つ以上のB(および任意選択でその他の要素を含む)を含む;などを意味することができる。
【0173】
特許請求の範囲ならびに上記明細書では、全ての移行句、例えば、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「保有する(carrying)」、「有する(having)」、「含む(containing)」、「含む(involving)」、「保持する(holding)」などは、オープンエンドである、すなわち、含むがそれに限定されないを意味する、と理解されるべきである。米国特許庁特許審査手続マニュアル第2111.03に記載のように、移行句「からなる(consisting of)」および「から本質的になる(consisting essentially of)」のみをそれぞれ制限的または半制限的移行句とする。