【実施例1】
【0042】
《構成》
図1は、本発明の実施例1に係る蒸発式バーナ1を下流側から観察した様子を示す模式図である。
図2は、
図1のA−A線断面図である。以下の説明においては、蒸発式バーナ1が使用される状態(例えば、車両に搭載される状態等)における鉛直方向上側(
図1及び
図2の紙面の上側)を「上方」、その反対側である下側を「下方」とする。更に、
図2の紙面に向かって左側を「上流側」、その反対側である右側を「下流側」とする。
【0043】
蒸発式バーナ1は、外側ハウジング2と、外側ハウジング2の内側に配設された内側ハウジング3とを備える。外側ハウジング2及び内側ハウジング3の形状は特に限定されず、例えば、蒸発式バーナ1の用途及び使用環境等に応じて適宜設計することができる。本実施例においては、外側ハウジング2は円筒状の周壁として形成し、内側ハウジング3は外側ハウジング2の周壁と同軸の円筒状の周壁3aと当該周壁の上流側の端部に配設された底壁15とからなる有底筒状の容器として形成した。但し、本実施例においては、後述する「押さえ部材」によって底壁15を構成した。従って、以下の説明においては、底壁15を「押さえ部材15」と称する場合がある。
【0044】
外側ハウジング2の周壁と内側ハウジング3の周壁との間には、上流側及び下流側の両端が閉じられた空間である給気通路4が形成されている。外側ハウジング2の周壁には開口部である第3給気口が形成されており、この第3給気口には給気管5が接続され、図示しない給気手段によって外側ハウジング2内の給気通路4に空気が供給されるようになっている。給気通路4に供給される空気の流量は、図示しない流量制御部によって任意に変更することができるようになっている。
【0045】
尚、上記のように外側ハウジング2の周壁と内側ハウジング3の周壁との間に形成された給気通路4を通じて供給される空気の層は、断熱層として機能することができる。その結果、燃料の燃焼時において燃焼室30内の熱が外側ハウジング2に伝導されて蒸発式バーナ1以外の設備等へ熱による影響を与えることを防止することができる。
【0046】
外側ハウジング2の下流側の端部には、フランジ等からなる取付用部材6が外向きに突出して設けられている。
【0047】
燃焼室30は、内側ハウジング3によって画定される空間である。燃焼室30における内側ハウジング3の底壁を構成する押さえ部材15側(上流側)の端部である第1端部には含浸部材8が配設されている。従って、実質的には、内側ハウジング3の内部空間の含浸部材8よりも下流側の空間が燃焼室30に該当する。一方、内側ハウジング3の第1端部(上流側端部)とは反対側の端部である第2端部(下流側端部)は、開口部2aとして開口している。
【0048】
含浸部材8は、耐熱性、燃料に対する化学的安定性(例えば、耐腐食性等)及び柔軟性を有すると共に、その内部に燃料を含浸させることが可能な材料によって形成される。具体的には、含浸部材8は、例えば金属及びセラミック材料等によって形成され、毛細管構造及び/又は多孔質構造を有する部材である。本実施例においては、金属繊維及び/又はセラミック繊維を押し固めることによって形成されたウィックを含浸部材8として使用した。
【0049】
また、含浸部材8は、略円盤状に形成され、内側ハウジング3の軸に直交する平面による燃焼室30の断面全体に亘るように設けられている。本実施例における含浸部材8は、
図2及び
図3に示すように、その下流側の主面の外周部(外縁部)全体に亘って凹状の段部8aが形成され、段部8a及び後述する凹部8c以外は平面状に形成されている。一方、含浸部材8の上流側の主面8bは、平面又は曲面からなる(凹凸の無い)平滑面として形成される。本実施例においては、含浸部材8の上流側の主面8bは平面として形成した。これにより、冒頭で述べた従来技術に係る蒸発式バーナのように着火装置(グロープラグ)を取り囲むように含浸部材(蒸発用エレメント)を湾曲させる場合に比べて、含浸部材の成形加工が容易となり、製造工程を簡素化し、製造コストを削減することができる。
【0050】
図3に示すように、含浸部材8の下流側(第2端部側)の主面の下部には、含浸部材8の外縁から内側(中心側)に向かって凹部8cが形成されている。凹部8cは、含浸部材8の径方向の外側と下流側とに開口している。凹部8cは、後述する着火装置22の少なくとも一部を収容する限り、任意の形状として形成することができる。
【0051】
また、凹部8cを形成する周方向の周壁面と上流側の底壁面とがなす角部及び凹部8cを形成する周方向の周壁面と下流側の主面とがなす角部は、
図3に示したように面取りを施さないエッジのある形状としてもよく、或いは、例えば
図4に示すように曲面状等に面取りを施した形状としてもよい。
【0052】
本実施例においては、凹部8cは含浸部材8の径方向の外側の端部から含浸部材8の中心に向かって形成されており、凹部8cの径方向の外側の端部は含浸部材8の中心よりも下方に位置し、且つ、凹部8cの中心側の端部は含浸部材8の上下方向の中央よりも下方に位置するように形成されている。但し、本発明に係る蒸発式バーナにおいて、凹部8cは必須の構成要件ではなく、凹部8cを形成しなくてもよい。
【0053】
含浸部材8は、1つの層によって構成しても或いは複数の層によって構成してもよい。後者の場合、例えば、含浸部材8を毛細管構造及び/又は多孔質構造を有する部材からなる複数の層を含む積層体によって構成し、含浸部材8を構成する複数の層のうち、第1端部側(上流側)に露出している層の目の粗さが第2端部側(下流側)に露出している層の目の粗さよりも細かくなるようにしてもよい。本実施例においては、含浸部材8を2つの層によって構成し、上流側の層には下流側の層よりも細い繊維によって形成されたウィックを採用することにより目を細かくして燃料の浸透性を高め、下流側の層に目を粗くして燃料の燃焼時における火炎に対する耐久性を高めた。
【0054】
燃焼室30における含浸部材8よりも下流側(第2端部側)には、含浸部材8と所定の間隔を空けて促進部材10が設けられている。促進部材10は、多数の貫通孔が形成された部材である。本実施例における促進部材10は、真円状のプレートとして形成され、内側ハウジング3の軸に直交する平面による燃焼室30の断面全体に亘るように設けられている。また、含浸部材8と促進部材10との間には、それらの間に空間11を形成するための空間形成部材12が配設されている。
【0055】
空間形成部材12は、凹部8cを除く含浸部材8の段部8aと係合すると共に、凹部8cに対応する部分が切り欠かれたC字状の外周部12aと、外周部12aの周方向に適宜間隔を空けて設けられ且つ外周部12aから下流側に向かって突出している複数の脚部12bと、を備える。これら複数の脚部12bの下流側の端部が促進部材10と当接することにより、含浸部材8と促進部材10との間に所定の間隔が確保されて、それらの間に空間11が形成される。
【0056】
図1及び
図2に示すように、促進部材10は、その下部以外の全面に亘って所定の間隔にて多数の貫通孔10aが形成されている。更に、含浸部材8の凹部8cの下流側に位置する促進部材10の部分には、貫通した長孔10bが形成されている。
【0057】
促進部材10は、これを内側ハウジング3の上流側から挿入した際に内側ハウジング3の周壁3aから内側に突出した位置決め部14に当接することにより位置決めされるようになっている。位置決め部14の構成としては、任意の構造及び/又は機構を採用することができる。本実施例においては、内側ハウジング3の周壁3aを内側に突出させることにより位置決め部14を形成した。位置決め部14は、内側ハウジング3と一体的に形成してもよく、或いは内側ハウジング3とは別個の部品として形成してもよい。
【0058】
更に、含浸部材8の上流側には押さえ部材15が溶接等の手法により内側ハウジング3に固定されている。このように押さえ部材15と空間形成部材12との間に含浸部材8を挟持することにより、蒸発式バーナ1の使用時等に生ずる振動等に起因する含浸部材8の破損等を防止することができる。本実施例においては、押さえ部材15は内側ハウジング3の底壁としても機能する。
【0059】
但し、内側ハウジング3の内部に画定された燃焼室30における含浸部材8及び促進部材10の位置決めをする手法は上記に限定されない。例えば、含浸部材8及び促進部材10のそれぞれに位置決め部を形成してもよく、或いは、含浸部材8及び促進部材10のそれぞれを溶接等の手法によって内側ハウジング3の周壁3aの内側に固定してもよい。
【0060】
押さえ部材15には貫通孔が形成されており、この貫通孔には燃料供給管16が接続されている。これにより、図示しない燃料供給部から燃料供給管16を通して、平滑面である含浸部材8の上流側の主面8bに燃料が供給されるようになっている。押さえ部材15における貫通孔の位置(即ち、燃料供給管16を接続する位置)は、含浸部材8の平滑面に燃料を供給することが可能である限り、特に限定されない。本実施例においては、含浸部材8の上流側の主面8bの中心部に対応する押さえ部材15の位置に燃料供給管16を接続した。
【0061】
内側ハウジング3の下流側の端部には、オリフィス20を内嵌固定して、燃焼室30の断面積を小さくした(即ち、燃焼ガスの流路を狭くした)。これにより、燃焼室30の下流側の端部に到達した燃焼ガスの一部が上流側へと転向して、燃焼室30におけるガスの混合を促進すると共に、未燃燃料を上流側へと環流させて燃焼させることにも繋がる。但し、燃焼室30の下流部における断面積を小さくするための手法は上記に限定されず、例えば、上記のように別個の部品としてのオリフィス20ではなく、内側ハウジング3の周壁3aを内側に屈曲させてオリフィスを形成してもよい。また、本発明に係る蒸発式バーナにおいて、オリフィス20は必須の構成要件ではなく、オリフィス20を形成しなくてもよい。
【0062】
更に、
図2に示すように、外側ハウジング2における、凹部8cの径方向の外側の端部に対応する位置には、着火装置取付部材21が配設されている。着火装置取付部材21の先端(燃焼室30側の端部)は、給気通路4の内部に達しているが、内側ハウジング3とは当接しないように構成されている。これにより、燃料の燃焼時において燃焼室30内の熱が着火装置取付部材21を経由して外側ハウジング2に伝導されて蒸発式バーナ1以外の設備等へ熱による影響を与えることを防止することができる。
【0063】
着火装置取付部材21には着火装置22が固定されている。着火装置22は、含浸部材8から蒸発する燃料の蒸気を加熱して着火させることが可能である限り特に限定されず、任意の点火プラグを使用することができる。本実施例においては、着火装置22としてグロープラグを使用した。
【0064】
着火装置22の配設位置は、含浸部材8から蒸発する燃料の蒸気を加熱して着火させることが可能である限り特に限定されないが、典型的には燃焼室30において促進部材10よりも第1端部側(上流側)に位置する空間である着火空間(空間11を含む)に露出するように配設される。尚、燃焼室30において促進部材10よりも第2端部側(下流側)に位置する空間は「燃焼空間」と称される。
【0065】
本実施例においては、着火装置22は、含浸部材8の上下方向の中央よりも下側の内側ハウジング3の周壁3aから着火空間において上方に向かって突出するように配設されている。加えて、着火装置22の先端部(発熱部)は、含浸部材8の上下方向の中央よりも下側に位置するように配設されており、その少なくとも一部が凹部8cの内部に位置するように配設されている。
【0066】
内側ハウジング3の周壁3aには、着火空間に少なくとも一部が開口し且つ着火空間に空気を供給する第1給気口24が形成されている。即ち、第1給気口24は、その全体が着火空間内に開口するように形成されていてもよく、或いは、
図2に示す本実施例のように、着火空間と燃焼空間とに跨がって開口するように形成されていてもよい。
【0067】
尚、本実施例においては、内側ハウジング3の周壁3aに穿設された小孔からなる第1給気口24が、所定の間隔にて周方向の全体に亘って複数形成されている。但し、第1給気口24を周壁3aの周方向の全体に亘って形成するのではなく、周壁3aの下部のみに形成してもよい。
【0068】
更に、本実施例においては、内側ハウジング3の周壁3aの促進部材10の下流側近傍にも、内側ハウジング3の周壁3aに穿設された小孔からなる補助給気口25が形成されている。但し、本発明に係る蒸発式バーナにおいて、補助給気口25は必須の構成要件ではなく、補助給気口25を形成しなくてもよい。
【0069】
加えて、内側ハウジング3の周壁3aには、燃焼室30において促進部材10よりも第2端部側(下流側)に位置する空間である燃焼空間に開口し且つ当該燃焼空間に空気を供給する第2給気口28が形成されている。本実施例においては、内側ハウジング3の周壁3aの促進部材10から所定の距離だけ離れた領域に穿設された小孔からなる第2給気口28が、所定の間隔にて周方向の全体に亘って複数形成されている。
【0070】
尚、第2給気口28の構成(例えば、個々の開口の形状、大きさ及び配列等)については後述する他の実施例において詳しく説明する。
【0071】
《作動》
以下、蒸発式バーナ1の作動について説明する。
【0072】
燃料供給部から燃料供給管16を通じて含浸部材8に燃料が供給されると、含浸部材8に燃料が浸透する。本実施例においては、平滑面である含浸部材8の上流側の主面8bに燃料が供給されるので、含浸部材8に燃料が均一且つ円滑に浸透し易い。このようにして含浸部材8に燃料が浸透すると、含浸部材8から燃料が蒸発する。燃焼室30には、給気管5及び給気通路4を通じて空気が供給される。
【0073】
次に、着火装置22としてのグロープラグに通電され、含浸部材8から蒸発した燃料の蒸気が着火するのに十分な温度へと、その先端部が発熱する。含浸部材8と促進部材10との間の空間11に連通する着火空間には第1給気口24が少なくとも一部が開口しているので、含浸部材8から蒸発した燃料の蒸気を着火させるのに必要な量の空気が着火空間に供給される。その結果、前述した従来技術に係る蒸発式バーナに比べて、より早く且つ容易に燃料を着火させることができる。また、不安定燃焼に起因して含浸部材8の寿命が短くなることも防止することができる。
【0074】
燃料供給管16から供給された燃料は、重力の作用により、含浸部材8の内部において下方に浸透して広がる傾向が強く、少なくとも浸透開始当初は、含浸部材8からの燃料の蒸発は上方よりも下方の方が多い。一方、着火装置22は含浸部材8の上下方向の中央よりも下側の内側ハウジング3の周壁3aから着火空間において上方に向かって突出するように配設されており、その先端部(発熱部)は含浸部材8の上下方向の中央よりも下側に位置するように配設されている。これにより、更に早く且つ容易に燃料を着火させることができる。また、燃料の着火により発生した火炎は上方に向かうので、このように含浸部材8の下方において燃料を着火させることにより、含浸部材8の下流側の主面全体に亘って火炎を早期に成長させることができる。
【0075】
また、着火装置22は、その少なくとも一部が凹部8cの内部に位置するように配設されている。これにより、燃料の蒸気を発生させる含浸部材8の表面と着火装置22の表面との間の距離を小さくすることができるので、着火性を向上させることができると共に、着火空間を小型化して、蒸発式バーナ1の小型化にも繋がる。
【0076】
更に、含浸部材8の下流側に促進部材10が配設されているので、例えば下流側の開口部2aから流入した排気ガス及び第2給気口28から燃焼室30の燃焼空間に流入した空気等により、着火装置22の温度が低下したり、一旦着火した火炎が吹き消されたりすることを防止して、着火性を向上させることができる。
【0077】
このようにして火炎が成長すると、含浸部材8が暖められ、燃料の蒸発が促進される。促進部材10もまた火炎によって加熱され、その輻射熱によっても含浸部材8が暖められ、燃料の蒸発が更に促進される。
【0078】
このようにして燃料の蒸発が促進されると、燃料の蒸気が促進部材10の貫通孔を通過して燃焼室30の燃焼空間へと流れ出すようになる。この際、燃料の蒸気を含む混合気が促進部材10の貫通孔を通過したり、貫通孔が形成されていない表面に衝突したりすることにより、当該混合気における燃料の濃度を均一化して、燃焼状態を均一化することができる。
【0079】
更に燃焼が進むと、含浸部材8からの燃料の蒸発がより一層促進され、着火空間における燃料の濃度が高まり、燃焼室30における促進部材10よりも下流側の空間である燃焼空間において火炎が発生する「定常燃焼」となる。つまり、着火開始当初の「着火期間」においては促進部材10よりも上流側の着火空間において火炎が発生し、その後の「定常燃焼期間」においては促進部材10よりも下流側の燃焼空間において火炎が発生する。従って、定常燃焼期間においては含浸部材8が火炎によって直接加熱されることが抑制されるので、含浸部材8の寿命を延ばすことができる。
【0080】
《作用効果》
以上説明してきたように、蒸発式バーナ1によれば、着火装置による燃料の着火に好適な量の空気を、第1給気口を介して着火装置の近傍に供給することができる。その結果、蒸発式バーナの着火性を向上させると共にウィックの寿命を延ばすことができる。即ち、前述した第1の課題を解決することができる。
【0081】
更に、含浸部材の第1端部側の表面に形成された平滑面に対して燃料を供給するので、含浸部材の内部に燃料を容易且つ均一に浸透させることができる。加えて、含浸部材の着火装置に対向する領域に形成された凹部(又は切り欠き)の内部に着火装置の少なくとも一部が位置するように配設されるので、着火機構から含浸部材への熱伝達を向上させて、蒸発式バーナの着火性を更に向上させることができる。即ち、前述した第2の課題を解決することができる。
【0082】
《実施例1の変形例》
〈促進部材の変形例1〉
促進部材10の構成は、
図1及び
図2に示したような貫通孔10a及び長孔10bが形成された構成に限定されない。例えば、
図5に示すように同一の形状(真円状)及び大きさを有する貫通孔10cを促進部材10の全面に亘って形成してもよく、
図6に示すように同一の形状(真円状)及び大きさを有する貫通孔10cを促進部材10の中央部を除く外周部の全面に亘って形成してもよい。
【0083】
また、
図7に示すように促進部材10の中心を中心とする円弧状の長孔10dを周方向に適宜間隔を空けて複数設けてもよく、このような円弧状の長孔10dを径方向に複数段に形成してもよい。更に、
図8に示すように多数の長孔10eを周方向に適宜間隔を空けて促進部材10の中央部を除く外周部の全面に亘って放射状に(即ち、長孔10eの長手方向が促進部材10の中心を通るように)形成してもよい。
【0084】
加えて、
図9に示すように多数の長孔10eを周方向に適宜間隔を空け且つ長孔10eの長手方向と促進部材10の径方向とが所定の角度をなすように傾けて促進部材10の中央部を除く外周部の全面に亘って形成してもよい。また、異なる形状及び大きさを有する貫通孔を組み合わせて形成してもよい。例えば、
図10に示すように、促進部材10の下部から中央部にかけては真円状の小孔10fを形成し、上部には長手方向が上下方向となるように長孔10gを形成してもよい。
【0085】
〈促進部材の変形例2〉
図2に示した例においては、上述したように、促進部材10をプレートとして形成し、含浸部材8と促進部材10との間に空間形成部材12を配設して、これらの間に空間11を形成させた。しかしながら、含浸部材と促進部材との間の間隔を空けて空間を形成させるための手法は上記に限定されず、例えば、促進部材の一部を屈曲させて含浸部材に当接させることにより空間を形成させてもよい。
【0086】
具体的には、例えば、
図11に示すように、促進部材35の中央部を上流側が凸となるように屈曲させて当接部35aを形成し、当接部35aが含浸部材8の下流側の主面に当接するようにしてもよい。また、
図12に示すように、促進部材40の外周部を上流側に屈曲させて複数の脚部40aを設けると共に、脚部40a同士の間に切り欠き部40bを形成して、脚部40aが含浸部材8の下流側の主面に当接するようにしてもよい。即ち、
図2に示した例における促進部材10及び空間形成部材12を、脚部40a及び切り欠き部40bを有する促進部材40として一体的に形成してもよい。
【0087】
更に、促進部材10、35及び40等により空間11を複数の区画に分割してもよい。但し、この場合、少なくとも着火装置22が露出する空間を含む区画において、第1給気口の少なくとも一部が開口するように構成する必要がある。
【0088】
〈促進部材の変形例1及び2における作用効果〉
以上説明してきた促進部材の各種変形例の何れにおいても、上述した実施例1と同様の作用及び効果を奏することができる。
【0089】
また、変形例2に係る促進部材35及び40のように促進部材を含浸部材に当接させて含浸部材と促進部材との間に空間を形成する場合、火炎によって加熱された促進部材から含浸部材への熱伝導が促進され、含浸部材からの燃料の蒸発を更に促進させることができる。更に、空間形成部材12を省略することができるので製造コストの削減にも繋がる。
【0090】
〈含浸部材の変形例1〉
実施例1においては、
図3に示したように、含浸部材8の径方向の外側と下流側とに開口する凹部8cを形成した。しかしながら、上述したように、凹部8cの構成は、着火装置22の少なくとも一部を収容する限り、特に限定されない。例えば、
図13に示すように、含浸部材8の径方向の外側と下流側と上流側との3方向に開口する切り欠き32を形成してもよい。
【0091】
〈含浸部材の変形例2〉
実施例1及び上記変形例1においては、含浸部材8の段部8a及び凹部8c又は切り欠き32以外の下流側の主面を平面状に形成したが、含浸部材8の下流側の主面は必ずしも平面状である必要は無く、例えば凹凸等が形成されていてもよい。例えば、
図14に示すように下流側に突出する凸部37を設けてもよく、或いは
図15に示すように下流側に開口する凹部38を設けてもよい。
【0092】
また、含浸部材8の上流側の主面8bについても、少なくとも燃料が供給される部分が平滑面によって構成されていればよく、例えば他の部材との係合等を目的として、その他の部分に凹凸等が形成されていてもよい。
【0093】
〈含浸部材の変形例3〉
実施例1並びに上記変形例1及び2においては、含浸部材8の凹部8c又は切り欠き32と着火装置22とをそれぞれ1つずつ設けた。しかしながら、本発明に係る蒸発式バーナが使用される状態において含浸部材の上下方向の中央よりも下側の内側ハウジングの周壁から着火空間において上方に向かって突出するように着火装置が配設され、着火装置の先端部が含浸部材の上下方向の中央よりも下側に位置するように配設され、且つ凹部又は切り欠きの内部に着火装置の少なくとも一部を収容する限り、それらの数は2つ以上の複数個であってもよい。
【0094】
例えば、
図16に示すように、含浸部材8の下端部及び側方部にそれぞれ1つずつ、合計2つの凹部8cを設け、それら2つの凹部8cの内部に着火装置22の先端部の少なくとも一部が位置するように構成してもよい。
【0095】
〈含浸部材の変形例1乃至3における作用効果〉
以上説明してきた含浸部材の各種変形例の何れにおいても、上述した実施例1と同様の作用及び効果を奏することができる。
【実施例2】
【0096】
上記のように、本発明の実施例1に係る蒸発式バーナ1によれば、着火装置による燃料の着火に好適な量の空気を着火装置の近傍に供給することにより蒸発式バーナの着火性を向上させると共にウィックの寿命を延ばすという第1の課題と、ウィック内への燃料の浸透が困難となることを回避しつつ着火機構からウィックへの熱伝達を向上させることにより蒸発式バーナの着火性を向上させるという第2の課題と、を同時に解決することができる。
【0097】
以下に説明する本発明の実施例2に係る蒸発式バーナ1aは、燃焼室の下流側における燃料の不完全燃焼の原因となる空気不足を低減するという第3の課題を解決することを目的とする。
【0098】
《構成及び作動》
蒸発式バーナ1aは、第2給気口28を介して燃焼室30の燃焼空間に供給される空気の流量が、第2給気口28の第1端部側(上流側)よりも第2端部側(下流側)の方が大きいように構成されていることを特徴とする。この点を除き、蒸発式バーナ1aは、上述した蒸発式バーナ1と同様であるので、以下の説明においては、この点に着目して説明する。また、蒸発式バーナ1aの当該特徴は、上述した蒸発式バーナ1に関する説明において参照した
図2にも描かれているので、以下の説明においては、必要に応じて
図2を参照する。
【0099】
蒸発式バーナ1aにおいて、第2給気口28は、複数の開口部の少なくとも1つの配列である給気開口配列及び少なくとも1つのスリットである給気スリットの何れか一方又は両方によって構成される。給気開口配列は、燃焼室30の燃焼空間を画定する内側ハウジング3の周壁3aの所定の領域において上流側から下流側へと所定の間隔を空けて形成された複数の開口部の少なくとも1つの配列である。給気スリットは、燃焼室30の燃焼空間を画定する内側ハウジング3の周壁3aの所定の領域において上流側から下流側へと所定の幅及び所定の長さにて形成された少なくとも1つのスリットである。
【0100】
蒸発式バーナ1aにおいては、
図2に示したように、複数の開口部29aの複数の配列である給気開口配列29によって第2給気口28を構成した。より詳しくは、
図17に示すように、各々の給気開口配列29を構成する複数の開口部29aは、各々の開口部29aの開口面積が上流側から下流側へと向かうほど徐々に大きくなるように構成されている。これにより、第2給気口28を介して燃焼室30の燃焼空間に供給される空気の流量を上流側よりも下流側の方が大きいようにすることができる。尚、
図17は、蒸発式バーナ1aの内側ハウジング3の周壁3aに形成された第2給気口28として構成された給気開口配列29を、周壁3aを平面状に展開した状態にて示す模式図(二次元視)である。
【0101】
更に、蒸発式バーナ1aにおいては、
図17に示したように、給気開口配列29の長手方向(破線の矢印)と内側ハウジング3の軸に平行な方向(実線の矢印)とが所定の角度(θ)をなすように給気開口配列29が構成されている。即ち、各々の給気開口配列29を構成する複数の開口部29aは、内側ハウジング3の中心軸を軸として螺旋を描くように配置されている。これにより、燃焼室30内に旋回流を生じさせ、燃焼室30内における燃焼の連続性及び均一性を向上させることができる。
【0102】
加えて、蒸発式バーナ1aにおいては、
図2に示したように、内側ハウジング3の外周に配設された外側ハウジング2と、外側ハウジング2の周壁に形成された開口部である第3給気口を介して外側ハウジング2内に空気を供給する給気管5と、を更に備える。外側ハウジング2の周壁と内側ハウジング3の周壁3aとの間には、上流側及び下流側の両端が閉じられた空間である給気通路4が形成されており、第3給気口は、第2給気口28よりも下流側に形成されている。より具体的には、給気開口配列29を構成する複数の開口部29aのうち最も下流側に位置する開口部29aよりも更に下流側に第3給気口が形成されている。これにより、第2給気口28を介して燃焼室30の燃焼空間に供給される空気の流量を上流側よりも下流側の方が更に大きいようにすることができる。
【0103】
《作用効果》
以上説明してきたように、蒸発式バーナ1aによれば、第2給気口28を介して燃焼室30の燃焼空間に供給される空気の流量を上流側よりも下流側の方が大きいようにすることができる。その結果、燃焼室30の下流側における燃料の不完全燃焼の原因となる空気不足を低減することができる。即ち、前述した第3の課題を解決することができる。
【0104】
更に、蒸発式バーナ1aにおいては、各々の給気開口配列29を構成する複数の開口部29aが内側ハウジング3の中心軸を軸として螺旋を描くように配置されていることから、燃焼室30内に旋回流を生じさせて、燃焼室30内における燃焼の連続性及び均一性を向上させることができる。
【0105】
《実施例2の変形例》
〈第2給気口の変形例1〉
上述したように、蒸発式バーナ1aにおいて、第2給気口28は、複数の開口部の少なくとも1つの配列である給気開口配列及び少なくとも1つのスリットである給気スリットの何れか一方又は両方によって構成される。少なくとも1つの給気スリットによって第2給気口28を構成する場合は、
図20に示すように、給気スリット36の幅を、上流側から下流側へと向かうほど徐々に大きくなるように構成すればよい。これにより、第2給気口28を介して燃焼室30の燃焼空間に供給される空気の流量を上流側よりも下流側の方が大きいようにすることができる。尚、
図20は、蒸発式バーナ1aの内側ハウジング3の周壁3aに形成された第2給気口28として構成された給気スリット36を、周壁3aを平面状に展開した状態にて示す模式図(二次元視)である。
【0106】
更に、蒸発式バーナ1aにおいては、
図20に示したように、給気スリット36の長手方向(破線の矢印)と内側ハウジング3の軸に平行な方向(実線の矢印)とが所定の角度(θ)をなすように給気スリット36を構成してもよい。即ち、第2給気口28を構成する給気スリット36は、内側ハウジング3の中心軸を軸として螺旋を描くように配置されている。これにより、燃焼室30内に旋回流を生じさせ、燃焼室30内における燃焼の連続性及び均一性を向上させることができる。
【0107】
尚、給気開口配列29と給気スリット36との組み合わせによって第2給気口28を構成してもよい。
【0108】
〈第2給気口の変形例2〉
上述したように、給気開口配列29及び/又は給気スリット36の長手方向と内側ハウジング3の軸に平行な方向とが所定の角度をなすように第2給気口28を構成することにより、燃焼室30内に旋回流を生じさせ、燃焼室30内における燃焼の連続性及び均一性を向上させることができる。この場合、内側ハウジング3の中心軸を軸とする第2給気口28の螺旋構造における位相(割出し)の大きさを燃焼室30内において変化させてもよい。
【0109】
給気開口配列29によって第2給気口28を構成する場合、給気開口配列29は、給気開口配列29の長手方向と内側ハウジング3の軸に平行な方向とがなす角度(θ)が上流側から下流側へと向かうにつれて変化するように構成してもよい。具体的には、例えば、
図18に示すように上流側から下流側へと向かうにつれて上記角度θが徐々に大きくなるようにしてもよく、逆に、
図19に示すように上流側から下流側へと向かうにつれて上記角度θが徐々に小さくなるようにしてもよい。尚、
図18及び
図19は、本変形例に係る蒸発式バーナ1aの内側ハウジング3の周壁3aに形成された第2給気口28として構成された給気開口配列29を、周壁3aを平面状に展開した状態にて示す模式図(二次元視)である。
【0110】
一方、給気スリット36によって第2給気口28を構成する場合、給気スリット36は、給気スリット36の長手方向と内側ハウジング3の軸に平行な方向とがなす角度(θ)が上流側から下流側へと向かうにつれて変化するように構成してもよい。具体的には、例えば、
図21に示すように上流側から下流側へと向かうにつれて上記角度θが徐々に大きくなるようにしてもよく、逆に、
図22に示すように上流側から下流側へと向かうにつれて上記角度θが徐々に小さくなるようにしてもよい。尚、
図21及び
図22は、本変形例に係る蒸発式バーナ1aの内側ハウジング3の周壁3aに形成された第2給気口28として構成された給気スリット36を、周壁3aを平面状に展開した状態にて示す模式図(二次元視)である。
【0111】
上記により、例えば、上記旋回流の強さ及び/又は燃焼室30内における旋回流の強さの分布等を制御することができる。