特許第6681394号(P6681394)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6681394骨折骨または非骨折骨を安定させるためのインプラント
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6681394
(24)【登録日】2020年3月25日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】骨折骨または非骨折骨を安定させるためのインプラント
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/86 20060101AFI20200406BHJP
【FI】
   A61B17/86
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-523996(P2017-523996)
(86)(22)【出願日】2015年10月15日
(65)【公表番号】特表2017-533759(P2017-533759A)
(43)【公表日】2017年11月16日
(86)【国際出願番号】EP2015073845
(87)【国際公開番号】WO2016071089
(87)【国際公開日】20160512
【審査請求日】2018年9月11日
(31)【優先権主張番号】14306759.3
(32)【優先日】2014年11月4日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513110997
【氏名又は名称】ハイプリヴェンション
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エービ,マックス
(72)【発明者】
【氏名】スパルスキ,マレク
(72)【発明者】
【氏名】ギュンツブルク,ローベルト
(72)【発明者】
【氏名】ビーネイ,セシール
【審査官】 宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2003/0083662(US,A1)
【文献】 国際公開第2014/149746(WO,A1)
【文献】 米国特許第08574273(US,B2)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0030135(US,A1)
【文献】 国際公開第2013/079753(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0123481(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00 − 17/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨折骨または非骨折骨を安定させるための骨インプラント(1)であって、前記骨インプラントは、インプラント本体(2)を備え、前記インプラント本体(2)は、長手方向軸(3)に沿って前側(4)から端部側(5)まで延在し、前記長手方向軸(3)に対して垂直に延在するインプラント幅(6)を有し、前記長手方向軸(3)に沿った前記インプラント本体(2)の長さは、前記インプラント幅(6)の少なくとも5倍であり、前記インプラント本体(2)は、少なくとも第1の面(7)と第2の面(8)とに分割される外面を有し、
前記第1の面(7)は、少なくとも部分的に前記外面にわたって延在するアンカー固定領域(9)で構成され、
前記骨インプラントは、拡幅部を近位端に備えておらず、
前記外面は、孔軸(11)の周囲に壁を有する複数の孔(12)を備え、
複数の前記孔(12)は、前記外面または前記第2の面(8)の前記長手方向軸(3)を中心とした360°の領域に実質的に均等に分布し、ある列における隣接する孔(12)同士の間の距離が実質的に同一であるように前記長手方向軸(3)に沿って列をなして分布しており、かつ、複数の前記孔(12)の各々は溝によって互いに接続されていない、骨インプラント(1)。
【請求項2】
第1の列における第1の前記孔(12)と、前記第1の列に隣接する第2の列における第1の前記孔(12)とは、前記前側(4)までの距離が異なっている、請求項1に記載の骨インプラント(1)。
【請求項3】
前記骨インプラント(1)は、骨への導入中に前記骨インプラント(1)を保持することを可能にする固定コネクタを備える、請求項1または2に記載の骨インプラント(1)。
【請求項4】
前記アンカー固定領域(9)は、骨に移植したときに前記骨インプラント(1)の前記近位端に位置する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の骨インプラント(1)。
【請求項5】
前記骨インプラント(1)は、各々の前記列に、3つの前記孔(12)を有している、請求項1〜4のいずれか1項に記載の骨インプラント(1)。
【請求項6】
前記骨インプラント(1)は、前記アンカー固定領域(9)を1つだけ備えている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の骨インプラント(1)。
【請求項7】
前記孔(12)の前記壁は、円筒形状を有している、請求項1〜6のいずれか1項に記載の骨インプラント(1)。
【請求項8】
前記外面は、少なくとも部分的に円錐形状を有する第3の面を備えている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の骨インプラント(1)。
【請求項9】
前記アンカー固定領域(9)は、骨内での前記骨インプラントの固定を向上させるための手段を備え、前記手段は、表面構造および/または凹凸および/または凹部を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の骨インプラント(1)。
【請求項10】
前記第3の面は、前記アンカー固定領域の反対側に配置されている、請求項8に記載の骨インプラント(1)。
【請求項11】
前記インプラント本体の前記前側は、半球を形成するように丸みを帯びている、請求項1〜10のいずれか1項に記載の骨インプラント(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項に係る骨インプラント、インプラントの使用、および骨折骨または非骨折骨を安定させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
骨折骨を安定させるために骨インプラントが広く使用されている。
US2009/0157078には、たとえば、上腕骨または大腿骨の欠損を修復するためのカニューレ型ねじが開示されている。当該ねじの一部は、ねじ山ではなく孔を含んでおり、当該孔を通してセメントを骨の中の空隙に導入することができる。この装置は、インプラントの一方の側にねじ頭を備え、ねじが部分的に骨の外側に延在することを必要とする。インプラントの他方の側はねじが切られており、その結果、ねじ頭の反対側でねじ山を骨内に固定できる場合に限ってねじが固定される。このようなインプラントは、その用途が限定される。
【0003】
WO2012/142032には、骨準備のための方法および装置が開示されている。当該装置は、穿孔を有する挿入構造を備え、当該穿孔を通して流体を骨に導入することができる。当該装置は、破片の内部固定に使用される場合もあれば、脆いおよび/またはがんに侵されている可能性のある骨に組み込まれる場合もある。流体は、骨セメントであってもよい。当該装置のインプラント部は、骨の外側で固定され、そのため非常に複雑である。さらに、1つの骨にいくつかのインプラントが使用されるため、導入経路の数に起因して骨組織が脆弱になる。
【0004】
WO2012/066236は、大腿骨の骨折の予防的または治療的処置のために2つの交差インプラントを組み合わせた装置に向けられる。当該交差インプラントは、互いに対して固定され、それによってインプラントのいかなる動きも防止する。このような装置は、交差インプラントを可能にする骨にしか適用できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、先行技術の欠点を回避して、人体のさまざまな骨で万能に使用でき、かつ、骨内での安定した位置決めを可能にする、骨インプラント、骨インプラントの使用、および骨折骨または非骨折骨を安定させるための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
当該目的は、好ましくは円筒形本体であるインプラント本体を備える、骨折骨または非骨折骨を安定させるための骨インプラントによって達成される。当該インプラント本体は、長手方向軸に沿って前側から端部側まで延在する。当該インプラント本体は、長手方向軸に対して垂直に延在するインプラント幅を有し、長手方向軸に沿ったインプラント本体の長さは、インプラント幅の少なくとも5倍である。当該インプラント本体は、少なくとも第1の面と第2の面とに分割される外面を有し、当該第1の面は、少なくとも部分的に外面にわたって、好ましくは最大で外面の半分にわたって延在するアンカー固定領域で構成される。
【0007】
本発明に係るアンカー固定領域は、骨に移植されたときにインプラントの固定を向上させる表面を備える。骨組織は、さらに容易にインプラントに入り込むように成長することができ、骨へのインプラントのアンカー固定が向上する。
【0008】
このようなインプラントは、骨、特に椎骨内に容易に導入されて固定される。アンカー固定領域は、好ましくは、骨に移植したときにインプラントの近位端に位置する。
【0009】
インプラント本体は、好ましくは、少なくとも第1の面および第2の面にわたって一定のインプラント幅を有する。さらに、インプラントは、たとえばねじ頭のような拡幅部を近位端に備えていない。したがって、好ましくは、インプラント幅は、少なくとも第1および第2の面にわたって一定であるが、インプラント幅は、他の領域でのみ小さくなっていてもよい。
【0010】
第1の面および第2の面はそれぞれ、好ましくは、長手方向軸に沿って、長手方向軸を中心として360°にわたって延在している。
【0011】
インプラントは、長手方向軸に沿ってまたは長手方向軸に平行に延在するボアを備えてもよく、当該ボアは、前側および/または端部側に少なくとも1つ、好ましくは2つの開口を有する。
【0012】
骨インプラント内部のボアにより、インプラントが軽量になり、開口が2つある場合には骨に流体を導入することが可能になる。
【0013】
骨インプラントの長さは、10mm〜250mmの範囲内であってもよい。
特定の骨インプラントは、さまざまな骨で使用することができ、それぞれの骨を安定させるために必要な長さを依然として有する。
【0014】
骨の幅は、5mm(肋骨の場合)〜50mm(大腿骨幹の場合)または80mm(上腕骨頭の場合)の範囲内であり得る。骨インプラントの幅は、2mm〜10mmの範囲内であってもよい。
【0015】
このような骨インプラントは、骨組織をさらに破壊することなく骨に容易に導入することができ、それにもかかわらず、その骨を安定させる目的を果たすのに十分な安定性を提供する。
【0016】
外面、好ましくは第2の面は、孔軸の周囲に壁を有する孔を備えてもよい。
骨インプラントが外面または第2の面にそれぞれ孔を有することにより、一方では、骨組織が孔に入り込むように成長し、それによってインプラントの位置決めを向上させることが可能になり、骨インプラントがボアを有する場合には、孔が位置しているインプラントの周囲の骨組織に流体を仕向けることが可能になる。
【0017】
流体は、好ましくは、PMMA骨セメント、生体吸収性の骨セメント、または骨内でのインプラントの固定を可能にするその他の製品などの骨セメントである。
【0018】
孔は、それぞれ外面または第2の面上で0.2mm〜5mmの直径を有してもよい。
このような孔を通して、骨組織は素早く成長することができ、骨セメントなどの流体を骨に容易に導入することができる。
【0019】
孔の壁は、円筒形状、好ましくは円錐形状を有してもよい。
円筒形の孔は、製造が容易であり、それによって製造コストが安価であり、円錐形状は、骨インプラントを介して骨に導入される流体の分布を最適化する。
【0020】
インプラントは、孔の第1の組を備えていてもよく、孔の第1の組の孔軸は、長手方向軸に対して実質的に垂直に配置される。
【0021】
孔の組は、1つ以上の孔を備えていてもよい。
孔が長手方向軸に対して垂直に配置される孔軸を有することにより、孔を通る流体が径方向にインプラントから離れて分布し、そのため、骨セメントができる限り遠くに達する。
【0022】
インプラントは、孔の第2の組を備えていてもよく、孔の第2の組の孔軸は、長手方向軸に対して傾斜し、好ましくは長手方向軸に対して90°よりも大きいが150°よりも小さい角度で傾斜する。
【0023】
傾斜した孔軸により、インプラントが骨内に設置されたときに流体を骨内の特定の箇所に分布させることが可能になる。
【0024】
インプラントは、孔の第3の組を備えていてもよく、孔の第3の組の孔軸は、孔の第2の組とは異なる角度で長手方向軸に対して傾斜し、好ましくは長手方向軸に対して90°よりも小さいが30°よりも大きい角度で傾斜する。
【0025】
傾斜した孔軸により、インプラントが既に骨内にあるときに骨内の流体を特定の領域に分布させることが可能になる。さらに、傾斜した孔により、神経の敏感な領域にさえ骨セメントを導入することが可能になる。なぜなら、セメント流を特定の領域に仕向けることができるからである。
【0026】
特に、孔の第1、第2および第3の組の組み合わせにより、インプラント内部からインプラントに対する骨の特定の領域に流体を仕向けることが可能になる。
【0027】
孔は、外面または第2の面の長手方向軸を中心とした360°の領域に実質的に均等に分布し、好ましくはある列における隣接する孔同士の間の距離が実質的に同一であるように長手方向軸に沿って列をなして分布してもよい。
【0028】
このような配置により、流体の最適な分布およびインプラントに入り込むように成長する組織の均一な分布が可能になる。
【0029】
孔は、外面または第2の面の長手方向軸を中心とした180°〜270°の領域に位置し、好ましくはある列における隣接する孔同士の間の距離が実質的に同一であるように長手方向軸に沿って列をなして分布してもよい。
【0030】
長手方向軸を中心とした180°〜270°の領域における孔の配置により、インプラントを介して、流体が必要とされる骨の部分にのみ流体を仕向けることが可能になる。
【0031】
第1の列の第1の孔と第2の隣接する列の第1の孔とは、前側までの距離が異なっていてもよく、好ましくは、当該距離の差は、ある列における2つの隣接する孔の距離の半分に等しい。
【0032】
このような隣接する列の隣接する孔の分布は、インプラントを介して骨に導入される流体の最適な分布をもたらす。
【0033】
孔の分布は、好ましくは、インプラントの安定性が損なわれないまたは大幅には損なわれないが、特定の状況に対して流体の分布が最適であるように選択される。脊柱では、孔は、椎体に移植されるインプラントの遠位部に設置され、孔は、端板破損の場合に漏出を回避するために、上部端板の側ではなく長手方向軸を中心として270〜300°のところにセメントを注入できるように配置される。
【0034】
上腕骨への適用例では、孔は、全てがインプラントに沿って、長手方向軸を中心として360°にわたって設置され、360°のセメント流を可能にする。これにより、優れたインプラントの固定、骨の補強、および該当する場合には腫瘍を完全にふさぐことが可能になる。
【0035】
アンカー固定領域は、骨内でのインプラントの固定を向上させるための手段、好ましくは表面構造および/または凹凸および/または凹部を備えていてもよい。
【0036】
表面構造は、溝、ねじ山またはリング状構造であってもよく、ねじ山または溝ピッチまたはリング構造は、長方形、対称三角形または非対称三角形であってもよい。代替的にまたはさらに、表面構造は、直線的な凹部、らせん状の凹部、または十字もしくはダイヤモンド形状のピッチを備える凹部を備えていてもよい。アンカー固定領域における凹部は、0.5mm〜3mmの深さであってもよい。
【0037】
本発明に係る全ての深さの値は、上から下に測定される。当然のことながら、統計的変動が生じ得る。
【0038】
表面構造は、インプラントのアンカー固定を向上させる。
凹凸は、1マイクロメートル〜0.5mmで変動してもよい。
【0039】
アンカー固定領域は、長手方向軸の周囲に実質的に均等に分布し、長手方向軸に沿って同軸に延在する、溝、好ましくは6個または8個の溝の形態の表面構造を備えていてもよい。
【0040】
溝は、凹部と同一の形状および/または高さを有していてもよく、表面構造は、ねじ山またはリング状である。
【0041】
溝の形態の表面構造の使用は、インプラントのアンカー固定を向上させ、したがって、インプラントの耐久性および安全性が向上する。
【0042】
アンカー固定領域は、ねじ山またはリング状溝の形態の表面構造を備えていてもよい。このようなアンカー固定領域は、骨内でのインプラントの固定を向上させる。
【0043】
溝の断面は、U字型、V字型または四角形であってもよい。溝によって、骨とインプラントとの間の表面接触が増加し、骨に対する応力集中が制限される。また、それは、セメント注入前のインプラントの回転安定化を可能にし、これは、たとえば注入孔を方向付けなければならない脊椎インプラントでは重要である。セメント注入後、インプラントの安定化、たとえばインプラントの回転および平行移動安定化は、セメントによってなされる。
【0044】
インプラントは、骨への導入中にインプラントを保持することを可能にする固定コネクタを備えていてもよい。
【0045】
固定コネクタは、たとえば、骨インプラントをツールに接続するねじ山であってもよい。好ましくは、固定コネクタは、骨インプラントのボアの内部のねじ山であり、ツールの容易な導入を向上させるために、内部ねじ山は、好ましくはボアの残部よりも広い直径を有する。このような内部ねじ山によって、骨内でのインプラントの固定に対して外面を最適化することができる。
【0046】
さらに、ツールとインプラントとが固定コネクタによって接続される場合、流体は、ツールおよびインプラントを介して導入可能であってもよい。これにより、インプラントを導入して固定する際のインプラントの取扱いが容易になる。
【0047】
外面は、少なくとも部分的に円錐形状を有する第3の面を備えていてもよい。このような第3の面は、アンカー固定面の反対側に配置され、骨インプラントを骨にさらに容易に導入することを可能にする。
【0048】
インプラントは、PEEK、チタン、ステンレス鋼もしくはニチノール、またはそれらの組み合わせなどの任意の移植可能な材料でできていてもよい。
【0049】
当該目的は、骨折骨を復元するための上記のインプラントの使用によってさらに達成される。
【0050】
当該目的は、骨の骨折を予防するための上記のインプラントの使用によってさらに達成される。
【0051】
骨折骨は、たとえば、上腕骨頭もしくは骨幹、踵骨、手首橈骨、脛骨、骨盤または肋骨であってもよい。骨の骨折を予防するための用途の例は、たとえば深刻な骨粗鬆症または溶解性病変腫瘍が引き起こされた場合のたとえば上腕骨または肋骨または脊柱椎体である。
【0052】
当該目的は、上記の骨インプラントを骨に挿入することによって、好ましくは骨インプラントを介して骨セメントを骨折骨または非骨折骨に導入することによって、当該骨を安定させる方法によってさらに達成される。
【0053】
このような方法により、いかなる板またはさらなる固定手段を必要とすることなく骨内への骨インプラントの容易な導入および固定がもたらされる。
【0054】
以下、図面を用いて実施形態において本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1】第1の実施形態における骨インプラントを示す図である。
図2】第2の実施形態における骨インプラントの第1の断面図である。
図3】第3の実施形態における骨インプラントを通る断面図である。
図4】第4の実施形態における骨インプラントを示す図である。
図5図4に係る骨インプラントを通る断面図である。
図6】第5の実施形態における骨インプラントを示す図である。
図6a図6の詳細図である。
図6b図6の詳細図である。
図6c図6の詳細図である。
図7】第6の実施形態における骨インプラントを通る断面図である。
図8】椎骨の骨折を安定させる2つの骨インプラントを示す図である。
図9】椎骨の骨折を安定させるための第3の実施形態に係る2つのインプラントを示す図である。
図10】上腕骨を安定させるための第1の実施形態に係る骨インプラントを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
図1は、第1の実施形態に係る骨インプラント1を示す。骨インプラント1は、長手方向軸3を有するインプラント本体2を備える。インプラント本体2は、前側4と端部側5とを備える。さらに、インプラント本体2は、第1の面7と第2の面8とに分離される。第1の面7は、骨内でのインプラントのアンカー固定を向上させるためのアンカー固定領域9を備える。長手方向軸に対して垂直に、インプラント本体2はインプラント幅6を備える。インプラント幅6は、第1の面7および第2の面8に沿って一定であり、インプラント1のその他の箇所でインプラント幅6を超えることはない。第2の面8は、インプラント本体2の内部に孔12とボア10とを備える。孔12は、骨セメントなどの流体をインプラント1を介して骨に導入することを可能にし、骨組織が孔12に入り込むように成長することにより骨内でのインプラント1の固定を最適化する。インプラント本体2は、円錐形状を有する第3の面17をさらに備える。骨へのインプラント1の導入が容易になるように、インプラントの幅は第3の面では小さくなっている。インプラント本体2の前側4は、半球を形成して骨へのインプラント1の導入を容易にするように丸みを帯びている。第1の面7のアンカー固定領域9は、骨内でのインプラント1のアンカー固定を向上させるための表面構造を備える。孔は、インプラント本体2の円周の360°にわたって分布しており、孔12は、列をなして配置されている。第1の列18の第1の孔12と第2の隣接する列(図示せず)の第1の孔12とが、前側4からの距離が異なるように、列は互いに対してオフセットされている。インプラント本体の長さは100mmであり、インプラント幅は5mmである。孔12の直径は2.5mmである。孔12の壁は、円筒形状を有している。
【0057】
たとえば、標準的な脊椎インプラントの値は、長さが50〜85mm、好ましくは平均値で70mmであり、直径が4〜7mm、好ましくは5mmであり、孔が1mm〜3mm、好ましくは2〜2.5mmである。
【0058】
図2は、本発明の第2の実施形態を通る断面図を示す。この実施形態では、インプラント本体2は、長手方向軸に沿ってボア10を備える。端部側5には、インプラント本体2と挿入ツール(図示せず)との接続を可能にするように固定コネクタが配置されている。図1における第1の実施形態とは対照的に、第2の実施形態における孔12は、小さい方の第1の面7に対して大きい方の第2の面8にわたって配置されている。孔12の第1の組は、長手方向軸3に対して垂直に配置される孔軸11aを備える。孔の第2の組は、傾斜軸11bを備え、孔軸11bの傾斜は、長手方向軸3に対して120°である。前側4は、骨へのインプラントの導入を容易にするための第3の面17をさらに備える。
【0059】
図3は、本発明の第3の実施形態の断面図を示す。この実施形態では、ボア10は、インプラント本体2の端部側5に、ねじが切られた固定コネクタ16を備える。このねじ山によって、ツールをインプラントに固定することができる。孔12は、長手方向軸を中心として270°にわたって配置され、そのため、骨セメントなどの流体は、インプラントから260°にしか向けられない。このように、敏感な領域は、流体または特定の骨セメントで充填されることはない。
【0060】
図4は、本発明の第4の実施形態を示す。この実施形態は、第1の面7がアンカー固定領域9を備えることは別として、図1における第1の実施形態に対応している。アンカー固定領域9は、ねじ山ピッチがインプラント幅6から延在するねじ山を備える。このようなアンカー固定領域9は、骨内でのインプラントの固定を向上させる。さらに、この実施形態における第3の面17は、図1における実施形態に対して短く、それによって、第3の面17の円錐形状は、図1における実施形態に対して急峻な傾斜を備える。さらに、前側4は、図1における実施形態に対して尖っている。
【0061】
図2は、図3に開示されている実施形態を示しているが、第1の面7は、ねじ山を有するアンカー固定領域9を備える。この実施形態におけるアンカー固定領域9は、図4に示されるアンカー固定領域9に対応している。
【0062】
図6は、長手方向溝13を有する第1の面7を備えるインプラント1の実施形態を示す。長手方向溝13は、骨内での骨インプラントのアンカー固定を向上させる。長手方向溝は、回転を回避するように四角形の断面形状を備えていてもよく(図6a)、四角形の形状もしくは角度と比較して挿入が容易になりかつ骨接触が良くなるように半球の断面形状を備えていてもよく(図6b)、または表面接触が最大化されるように三角形の断面形状を備えていてもよい(図6c)。図6に係る実施形態における孔12は、インプラント1の円周の270°から最大300°までしか分布していない。
【0063】
図7は、図6に係る実施形態を通る断面図を示す。長手方向軸3に沿ったボア10は、ツール(図示せず)へのねじ切り接続を可能にする固定コネクタ16を備える。孔12は、3つの異なる孔軸11a〜11cに沿って配置されている。第1の孔軸11aは、長手方向軸に対して垂直に配置されている。孔の第2の組のための孔軸11bは、長手方向軸3に対して130°で配置されている。孔の第3の組のための孔軸11cは、長手方向軸に対して60°で配置されている。このような孔の配置は、椎骨におけるインプラントに特に適している。なぜなら、ボア10および孔12を通して導入された骨セメントが椎骨内に最適に分布するからである。目的は、骨折によって損傷を受けた可能性がある、前部または後部の椎体壁を通る漏出のリスクを回避することである。
【0064】
図8a〜図8cは、椎骨でのインプラントの使用の例示的な実施形態を示す。図8aは、椎骨を安定させるために2つのインプラントが導入される椎骨からの上面図を示し、図8bは側面図を示し、図8cは背面図を示す。この実施形態において導入されるインプラントは、図1に係るインプラントである。
【0065】
図9a〜図9cは、図4に係るインプラントの実施形態を適用する、図8と同一の図を示す。
【0066】
図10は、上腕骨における安定化インプラントとして使用されるインプラント1を示す。上腕骨は、骨折していない。それにもかかわらず、上腕骨を安定させるために、インプラント1が骨に導入されている。矢印は、インプラント1を上腕骨に導入する進路を示している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図6a
図6b
図6c
図7
図8a
図8b
図8c
図9a
図9b
図9c
図10