特許第6681414号(P6681414)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6681414
(24)【登録日】2020年3月25日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】メチル化DNAの改善された検出
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6806 20180101AFI20200406BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALI20200406BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20200406BHJP
   C12N 15/10 20060101ALI20200406BHJP
   B01J 20/10 20060101ALI20200406BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20200406BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALN20200406BHJP
【FI】
   C12Q1/6806 ZZNA
   C12Q1/6869 Z
   C12M1/00 A
   C12N15/10 120Z
   B01J20/10 A
   B01J20/28 Z
   !C12Q1/686 Z
【請求項の数】12
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2017-563560(P2017-563560)
(86)(22)【出願日】2016年6月10日
(65)【公表番号】特表2018-524976(P2018-524976A)
(43)【公表日】2018年9月6日
(86)【国際出願番号】EP2016063269
(87)【国際公開番号】WO2016198582
(87)【国際公開日】20161215
【審査請求日】2018年6月1日
(31)【優先権主張番号】15171523.2
(32)【優先日】2015年6月10日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514281751
【氏名又は名称】バイオカーティス エヌ ヴイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ノウェラルス ダーフィット
(72)【発明者】
【氏名】ケネンス ハンナ
【審査官】 福澤 洋光
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−058217(JP,A)
【文献】 特開2005−151977(JP,A)
【文献】 特表2014−526905(JP,A)
【文献】 特開2006−083292(JP,A)
【文献】 特表2002−528093(JP,A)
【文献】 2013 TRANSDUCERS & EUROSENSORS XXVII: THE 17TH INTERNATIONAL CONFERENCE ON SOLID-STATE SENSORS, ACTUATORS AND MICROSYSTEMS,2013年,p.2181 - 2184
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00− 3/00
C12M 1/00− 3/10
C12N 1/00−15/90
CA/MEDLINE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抽出膜を有する抽出チャンバを備えた自動化システムでの核酸のメチル化状態の検出のための方法であって:
a)核酸の供給源を自動化システム内に導入し、バイサルファイトを該核酸に添加し、その後即時に、該核酸の該供給源を40℃〜80℃の温度まで加熱して該核酸を含むライセートを作製する、および前記核酸内に存在している非メチル化シトシン塩基を脱アミノ化させる工程;
b)結合バッファーを該ライセートに添加し、結合バッファー/ライセート溶液を生成させる工程;
c)該結合バッファー/ライセート溶液を抽出膜に通す制御ポンピングにより、該核酸を該抽出膜に結合させ、該バイサルファイトを除去する工程;
d)脱スルホン化バッファーを抽出チャンバに添加し、該脱スルホン化バッファーを該抽出膜に通して制御ポンピングし、工程a)で脱アミノ化された該核酸内の該塩基を脱スルホン化する、および前記塩基をウラシル塩基に変換させる工程、
e)変換済核酸を該抽出膜から溶出させる工程;ならびに
f)該変換済核酸を該自動化システムで解析する工程
を含み、
前記制御ポンピングは、マイクロ空気式制御装置で、流速が0.1ml/秒以下のポンピングによって行なわれ、
前記工程d)での流速は前記工程c)での流速より遅い、方法。
【請求項2】
該核酸の該供給源の即時の加熱が40℃〜60℃の温度である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程c)での流速および工程d)での流速が0.001ml/秒〜0.1ml/秒である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
抽出膜がシリカ膜、または2つもしくは3つのシリカ膜層を備えた複合膜である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法による核酸のメチル化状態の検出のためのカートリッジの使用。
【請求項6】
前記カートリッジが、抽出膜を有する抽出チャンバを備えている、請求項5に記載のカートリッジの使用。
【請求項7】
カートリッジが、請求項1〜4のいずれかに記載の方法の工程a)〜b)が行なわれる溶解チャンバと、請求項1〜4に記載の方法の工程c)〜e)が行なわれる抽出チャンバとを備えており、該溶解チャンバと該抽出チャンバの間には、流体を該溶解チャンバから該抽出チャンバに輸送するためのチャネルが存在していることを特徴とする、請求項5または6に記載のカートリッジの使用。
【請求項8】
核酸の供給源中の核酸のメチル化状態の検出のための自動化システムの使用であって、該自動化システムが請求項5〜7のいずれかに記載のカートリッジを受け入れるのに適しており、該システムが:
a)バイサルファイトを、該システム内に導入された核酸の供給源に添加し、その後即時に、該核酸の該供給源を40℃〜80℃の温度まで加熱して該核酸を含むライセートを作製する、および前記核酸内に存在している非メチル化シトシン塩基を脱アミノ化させる工程、
b)結合バッファーを、核酸を含む該ライセートに添加し、結合バッファー/ライセート溶液を生成させる工程、
c)該結合バッファー/ライセート溶液を抽出膜に通す制御ポンピングにより、該核酸を該抽出膜に結合させ、該バイサルファイトを除去する工程、
d)脱スルホン化バッファーを抽出チャンバに添加し、該脱スルホン化バッファーを該抽出膜に通して制御ポンピングし、工程a)で脱アミノ化された該核酸内の該塩基を脱スルホン化する、および前記塩基をウラシル塩基に変換させる工程、
e)変換済核酸を該抽出膜から溶出させる工程、ならびに
f)該変換済核酸を解析する工程、
ここで、記制御ポンピングは、マイクロ空気式制御装置で、流速が0.1ml/秒以下のポンピングによって行なわれ、前記工程d)での流速は前記工程c)での流速より遅い、
を制御するものである
該自動化システムの使用。
【請求項9】
a.抽出チャンバ、抽出膜、バイサルファイト、結合バッファーおよび脱スルホン化バッファーを備えた、自動化システムにおける使用のための請求項5〜7のいずれかに記載のカートリッジと、
b.使用のための説明書と
を備えた、自動化システムでバイサルファイト反応を行なうためのキット。
【請求項10】
抽出膜を有する抽出チャンバ、バイサルファイト、結合バッファーおよび脱スルホン化バッファーを備えている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法による核酸のメチル化状態の検出のためのカートリッジ。
【請求項11】
前記カートリッジが、結合バッファー/ライセート溶液を抽出膜に通して輸送したときに、核酸を結合させ、バイサルファイトを除去するための抽出膜を有する抽出チャンバを備えている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法による核酸のメチル化状態の検出のためのカートリッジ。
【請求項12】
a.自動化システムにおける使用のための請求項10または11に記載のカートリッジと、
b.使用のための説明書と
を備えた、自動化システムでバイサルファイト反応を行なうためのキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本出願は、自動化システムでの核酸内のメチル化シトシンの検出方法、ならびにメチル化核酸の検出および解析のための前記システムおよび前記システム用のカートリッジの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
緒言
DNAのメチル化は、遺伝子発現のエピジェネティクス制御機構の1つである。ゲノムDNAのメチル化状態の改変により遺伝子のサイレンシングがもたらされ得る。かかる制御は、広範な生物学的プロセスに、例えば、腫瘍抑制遺伝子などの極めて重要な成長調節因子の転写型サイレンシングによる細胞増殖などに重要である。遺伝子発現の調節におけるDNAのメチル化の生物学的重要性およびそのがんにおける役割が徐々に認識されてきている。
【0003】
DNAのメチル化は、シトシン環の5’位の炭素にメチル基が共有結合的に付加し、このシトシンがゲノムDNA内で5−メチルシトシンに変換されることによって起こる。哺乳動物のDNAでは、5−メチルシトシンはゲノムDNAのおよそ4%において、主に、シトシン−グアノシンジヌクレオチド(CpGs)の含有率が高い配列鎖、いわゆる「CpGアイランド」にみられる。ゲノムDNA内の一部のCpGアイランドの過剰メチル化により遺伝子サイレンシングがもたらされる場合があり、脱メチル化により、転写および遺伝子発現がもたらされ得る。
【0004】
CpGアイランドにおけるゲノムDNAのメチル化を解析するための分子的手法の開発に対する関心が高まってきている。重亜硫酸ナトリウムでのDNAの処理によりシトシンがウラシルに変換されるが、5−メチルシトシンはそのまま維持されるという知見により、地域レベルおよび世界レベルの両方で、ゲノムDNAのメチル化を調べるためのいくつかのストラテジーに対する道が開かれた(Frommer et al.)。
典型的には、該方法は以下の基本工程:
1)試料からのDNAの精製、
2)DNAの変性(98℃で少なくとも10分間のDNAの加熱工程)、
3)DNAとバイサルファイト(変換試薬)との高温(少なくとも54℃で1時間以上)でのインキュベーションによって変換済DNAを生成させることによる、スルホン化による脱アミノ化、
4)通常、DNA結合媒体(樹脂または膜)を有するカラムでの精製によるバイサルファイトの除去、
5)脱スルホン化、すなわち脱スルホン化バッファーの添加後、通常、室温で20分間のインキュベーションおよび遠心分離による脱スルホン化バッファーの除去、
6)1回以上の洗浄工程、
7)通常、溶出バッファーの添加および遠心分離工程によるDNAの溶出(カラムで)
を伴うものである。
【0005】
DNAのメチル化の検出は、現在、顕著には疾患の診断方法に適用されている。特に、かかる方法は、がん診断検査に適用され得る。
【0006】
種々の下流の解析における使用のための変換済DNAを有効かつ効率的に調製するため、理想的なDNAバイサルファイト修飾法は:(1)メチルシトシンのチミンへの脱アミノ化を伴うことなくシトシンのウラシルへの完全な変換を可能にするために高度に正確である;(2)DNAの分解が最小限となるのに充分に保存的である、および(3)バイサルファイトプロセスができるだけ短時間となることが可能なようにできるだけ急速なものであるのがよい。残念ながら、現在使用されているDNA変換の方法のほとんどは、手作業による取扱いによる不充分な制御、およびバイサルファイト変換の成功の鍵となる考慮事項であるバイサルファイトインキュベーション時間の不充分さのため、大きなばらつきを示す。
【0007】
現在使用されている多くの市販のキットのさらなる制限は、これに含まれるバイサルファイト除去工程が通常、該変換後、試料のさらなる下流解析が行なわれ得る前であることである。これにより、不可避的に、手作業による取扱いのさらなる工程、例えば、数種類のバッファー(例えば、洗浄バッファーおよび溶出バッファー)の添加、さらなる遠心分離工程の実施、低溶出スピンカラムでの試料の連続操作などが導入される。さらに、現在入手可能なキットの多くが患者試料の事前の調製、例えば、DNAの精製および/または加熱工程でのDNAの変性を必要とすることを考慮すると、既存のDNAバイサルファイト修飾法は、たくさんの手作業による取扱いを伴い、これにより自動化することが困難になり、また多大な時間を要する。
【0008】
上記した要因によって最適なDNAバイサルファイト変換が制限されており、さらに、熟練研究員によって行なわれるべき多大な時間を要する方法となっている。したがって、課された問題に対する解決策をもたらすメチル化DNAの検出システムの必要性が存在していると思われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
発明の概要
特許請求の範囲に示す本発明は、a)試料からの事前の核酸精製を必要とすることなく、および98℃の高温での事前の核酸変性を必要とすることなく、DNA変換試薬(例えば、バイサルファイト試薬)を直接、核酸含有試料とともにインキュベートすることによって変換前の過度なDNA分解を制御すること、ならびに、b)自動化システム内部の抽出膜に通すバイサルファイト処理済試料流のポンピング速度を制御することによってバイサルファイト除去を最適化することによる、感度のよい特異的なメチル化の検出を見出したことに基づいたものである。
【0010】
したがって、本発明は、第1の態様において、抽出膜を有する抽出チャンバを備えた自動化システムでの核酸のメチル化状態の検出のための方法であって:
−核酸の供給源を自動化システム内に導入し、バイサルファイトを該核酸に添加し、その後即時に、該核酸の該供給源を加熱して該核酸を含むライセートを作製する、および前記核酸内に存在している非メチル化シトシン塩基を脱アミノ化させる工程;
−結合バッファーを該ライセートに添加し、結合バッファー/ライセート溶液を生成させる工程;
−該結合バッファー/ライセート溶液を抽出膜に通して輸送することにより、該核酸を該抽出膜に結合させ、該バイサルファイトを除去する工程;
−脱スルホン化バッファーを抽出チャンバに添加し、該脱スルホン化バッファーを該抽出膜に通して輸送し、先の工程で脱アミノ化された該核酸内の該塩基を脱スルホン化する、および前記塩基をウラシル塩基に変換させる工程、
−変換済核酸を該抽出膜から溶出させる工程;ならびに
該変換済核酸を解析する工程
を含む方法を提供する。
【0011】
より具体的な一態様では、抽出膜を有する抽出チャンバを備えた自動化システムでの核酸のメチル化状態の検出のための方法であって:
−核酸の供給源を自動化システム内に導入し、バイサルファイトを該核酸に添加し、その後即時に、該核酸の該供給源を40℃〜80℃の温度まで加熱して該核酸を含むライセートを作製する、および前記核酸内に存在している非メチル化シトシン塩基を脱アミノ化させる工程;
−結合バッファーを該ライセートに添加し、結合バッファー/ライセート溶液を生成させる工程;
−該結合バッファー/ライセート溶液を抽出膜に通す制御ポンピングにより、該核酸を該抽出膜に結合させ、該バイサルファイトを除去する工程;
−脱スルホン化バッファーを抽出チャンバに添加し、該脱スルホン化バッファーを該抽出膜に通して制御ポンピングし、先の工程で脱アミノ化された該核酸内の該塩基を脱スルホン化する、および前記塩基をウラシル塩基に変換させる工程、
−変換済核酸を該抽出膜から溶出させる工程;ならびに
該変換済核酸を該自動化システムで解析する工程
を含む方法を提供する。
【0012】
より具体的な一態様では、抽出膜を有する抽出チャンバを備えた自動化システムでの核酸のメチル化状態の検出のための方法であって:
−核酸の供給源を自動化システム内に導入し、バイサルファイトを該核酸に添加し、その後即時に、該核酸の該供給源を40℃〜60℃の温度まで加熱して該核酸を含むライセートを作製する、および前記核酸内に存在している非メチル化シトシン塩基を脱アミノ化させる工程;
−結合バッファーを該ライセートに添加し、結合バッファー/ライセート溶液を生成させる工程;
−該該結合バッファー/ライセート溶液を0.1ml/秒以下の流速で該抽出膜に通してポンピングすることにより、該核酸を該抽出膜に結合させ、該バイサルファイトを除去する工程;
−脱スルホン化バッファーを抽出チャンバに添加し、該脱スルホン化バッファーを0.1ml/秒以下の流速で該抽出膜に通してポンピングし、第1工程で脱アミノ化された該核酸内の該塩基を脱スルホン化する、および前記塩基をウラシル塩基に変換させる工程;
−変換済核酸を該抽出膜から溶出させる工程;ならびに
該変換済核酸を該自動化システムで解析する工程
を含む方法を提供する。
【0013】
本発明の方法はカートリッジに応用することができ、カートリッジ自体が自動化システム内に装填され得る。したがって、さらなる一態様では、カートリッジが:
−核酸の供給源を受容すること、バイサルファイト溶液を該核酸の該供給源に添加すること、ならびにその後即時に、該核酸の該供給源を40℃〜80℃の温度まで加熱して該核酸を含むライセートを作製する、および前記核酸内に存在している非メチル化シトシン塩基を脱アミノ化させること、ならびに変換済の該ライセートに結合バッファーを添加して結合バッファー/ライセート溶液を形成することを許容する溶解チャンバ、
−該結合バッファー/ライセート溶液を受容すること、該該結合バッファー/ライセート溶液を抽出膜に通す制御ポンピングによる、その後の該バイサルファイトの除去を可能にすること、その後の抽出チャンバへの脱スルホン化バッファーの添加および該脱スルホン化バッファーを該抽出膜に通す制御ポンピングを可能にし、第1工程で脱アミノ化された該核酸内の該塩基のアルカリ脱スルホン化を行なう、および前記塩基をウラシル塩基に変換させること、ならびにその後の該抽出膜からの変換済核酸の溶出を可能にすることを許容する抽出膜を有する抽出チャンバ、
ここで、該溶解チャンバと該抽出チャンバの間には、流体を該溶解チャンバから該抽出チャンバに輸送するためのチャネルが存在している、ならびに
−該変換済核酸の下流の解析を可能にするPCRチャンバ、
ここで、該抽出チャンバと該PCRチャンバの間には、変換済核酸を該抽出チャンバから該PCRチャンバに輸送するためのチャネルが存在している、
を備えたものである、核酸のメチル化状態の検出のためのカートリッジの使用を提供する。
【0014】
より具体的な一態様では、カートリッジが:
−核酸の供給源を受容すること、バイサルファイト溶液を該核酸の該供給源に添加すること、ならびにその後即時に、該核酸の該供給源を40℃〜60℃の温度まで加熱して該核酸を含むライセートを作製する、および前記核酸内に存在している非メチル化シトシン塩基を脱アミノ化させること、ならびに変換済の該ライセートに結合バッファーを添加して結合バッファー/ライセート溶液を形成することを許容する溶解チャンバ、
−該結合バッファー/ライセート溶液を受容すること、該結合バッファー/ライセート溶液を0.1ml/秒以下の流速で該抽出膜に通してポンピングすることにより、その後の該バイサルファイトの除去を可能にすること、その後の抽出チャンバへの脱スルホン化バッファーの添加および0.1ml/秒以下の流速で該抽出膜に通す該脱スルホン化バッファーのポンピングを可能にし、第1工程で脱アミノ化された該核酸内の該塩基のアルカリ脱スルホン化を行なう、および前記塩基をウラシル塩基に変換させること、ならびにその後の該抽出膜からの変換済核酸の溶出を可能にすることを許容する抽出膜を有する抽出チャンバ、
ここで、該溶解チャンバと該抽出チャンバの間には、流体を該溶解チャンバから該抽出チャンバに輸送するためのチャネルが存在している、ならびに
−該変換済核酸の下流の解析を可能にするPCRチャンバ、
ここで、該抽出チャンバと該PCRチャンバの間には、変換済核酸を該抽出チャンバから該PCRチャンバに輸送するためのチャネルが存在している、
を備えたものである、核酸のメチル化状態の検出のためのカートリッジの使用を提供する。
【0015】
本発明の次の一態様では、核酸の供給源中の核酸のメチル化状態の検出のための自動化システムの使用であって、該自動化システムが本発明によるカートリッジを受け入れるのに適しており、該システムが:
−バイサルファイトを、該システム内に導入された核酸の供給源に添加し、その後即時に、該核酸の該供給源を40℃〜80℃の温度まで加熱して該核酸を含むライセートを作製する、および前記核酸内に存在している非メチル化シトシン塩基を脱アミノ化させる工程、
−核酸を含む該ライセートに結合バッファーを添加し、結合バッファー/ライセート溶液を生成させる工程、
−該結合バッファー/ライセート溶液を抽出膜に通す制御ポンピングにより、該核酸を該抽出膜に結合させ、該バイサルファイトを除去する工程、
−脱スルホン化バッファーを抽出チャンバに添加し、該脱スルホン化バッファーを該抽出膜に通して制御ポンピングし、先の工程で脱アミノ化された該核酸内の該塩基を脱スルホン化する、および前記塩基をウラシル塩基に変換させる工程、
−変換済核酸を該抽出膜から溶出させる工程、ならびに
−該変換済核酸を解析する工程
を制御するものである、
該自動化システムの使用を提供する。
【0016】
本発明のより具体的な一態様では、核酸の供給源中の核酸のメチル化状態の検出のための自動化システムの使用であって、該自動化システムが、本出願を通じて規定されたカートリッジを受け入れるのに適しており、該システムが:
−該自動化システム内に導入された核酸の供給源にバイサルファイトを添加し、その後即時に、該核酸の該供給源を40℃〜60℃の温度まで加熱して該核酸を含むライセートを作製する、および前記核酸内に存在している非メチル化シトシン塩基を脱アミノ化させる工程、
−核酸を含む該ライセートに結合バッファーを添加し、結合バッファー/ライセート溶液を生成させる工程、
−該該結合バッファー/ライセート溶液を0.1ml/秒以下の流速で該抽出膜に通してポンピングすることにより、該核酸を該抽出膜に結合させ、該バイサルファイトを除去する工程、
−脱スルホン化バッファーを抽出チャンバに添加し、該脱スルホン化バッファーを0.1ml/秒以下の流速で該抽出膜に通してポンピングし、第1工程で脱アミノ化された該核酸内の該塩基を脱スルホン化する、および前記塩基をウラシル塩基に変換させる工程、
−変換済核酸を該抽出膜から溶出させる工程、ならびに
−該変換済核酸を解析する工程
を制御するものである、
該自動化システムの使用を提供する。
【0017】
また:
−バイサルファイト、結合バッファーおよび脱スルホン化バッファーを備えた、自動化システムにおける使用のための本発明によるカートリッジと、
−使用のための説明書と
を備えた、試料中のDNAのバイサルファイト変換によるメチル化DNAの検出のためのキットを提供することも本発明の一態様である。
【0018】
本発明は、そのすべての態様および実施形態において、熟練研究者および実験室設備の使用によって行なわれる非制御の手作業による取扱いが省かれることにより、プロセスの自動化が可能である。より具体的には、本発明では、別途のDNAの精製、DNAの変性、カラムでの溶出および遠心分離が省かれ、代わりに、試料中のDNAのバイサルファイト変換に必要とされる全工程が、すべての核酸取扱い工程(自動化されたフロー工程やタイミング工程を含む)を制御する自動化システム内部で行なわれる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、カートリッジ内でのA)バイサルファイト変換後のメチル化DNAおよびB)バイサルファイト変換後の非メチル化DNAのPCR増幅の結果を示すグラフである。変換された非メチル化DNAは、非メチル化特異的プローブにVICフルオロフォアが付加したことによるHEXシグナルを示す。変換されたメチル化DNAは、メチル化特異的プローブにFAMフルオロフォアが付加したため、FAMシグナルを伴うPCRを示す。
図2図2は、変換済の非メチル化DNAおよびメチル化DNAのアンプリコンのシーケンシングの結果の視覚的表示である。シーケンシングアンプリコンの部分を灰色で示す。最初の配列は非メチル化DNAのものである;すべてのシトシンは非メチル化型であり、バイサルファイト変換の際にはチミンに変換される。変換後のアンプリコンの相補鎖はアンプリコンの配列に相補的であることに注意のこと。すべてのシトシンがメチル化されており、バイサルファイト変換によって変換されないことが知られている変換済のメチル化DNAでは、バイサルファイト反応前の相補鎖は反応後と同じである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
発明の詳細な説明
一般的に、本発明の方法は、試料中の1つ以上の標的配列内の1個以上の標的ヌクレオチドのメチル化状態を解析することに関する。本発明により、患者試料中のDNAのメチル化状態の解析が容易になる。本発明は、第1の態様において、抽出膜を含む自動化システムでのDNA(試料中の)のバイサルファイト変換のための方法であって、処理した試料を該抽出膜に通す数回の自動化ポンピング工程にてポンピングする方法を提供する。患者試料の事前のDNAの精製とDNAの変性の両方を不要にすること、および自動化システム内部でバイサルファイト処理試料を抽出膜に通してポンピングすることにより、バイサルファイト変換プロセスの有効性および使用し易さが改善される。
【0021】
本発明の一実施形態では、抽出膜を有する抽出チャンバを備えた自動化システムでの核酸のメチル化状態の検出のための方法であって:
−核酸の供給源を自動化システム内に導入し、バイサルファイトを該核酸に添加し、その後即時に、該核酸の該供給源を40℃〜80℃の温度まで加熱して該核酸を含むライセートを作製する、および前記核酸内に存在している非メチル化シトシン塩基を脱アミノ化させる工程;
−結合バッファーを該ライセートに添加し、結合バッファー/ライセート溶液を生成させる工程;
−該結合バッファー/ライセート溶液を抽出膜に通す制御ポンピングにより、該核酸を該抽出膜に結合させ、該バイサルファイトを除去する工程;
−脱スルホン化バッファーを抽出チャンバに添加し、該脱スルホン化バッファーを該抽出膜に通して制御ポンピングし、第1工程で脱アミノ化された該核酸内の該塩基を脱スルホン化する、および前記塩基をウラシル塩基に変換させる工程;
−変換済核酸を該抽出膜から溶出させる工程;ならびに
該変換済核酸を該自動化システムで解析する工程
を含む、または該工程を特徴とする方法を提供する。
【0022】
あるいはまた、変換済核酸を、バイサルファイト変換を行なうために使用される自動化システムとは別の自動化システムで解析してもよい。変換済核酸を自動システム内で抽出膜から溶出させた後、変換されたこの核酸を別のシステム、例えば(DNA)シーケンサーで解析してもよい。
【0023】
本発明との関連において、核酸は、CpG部位にメチル化シトシン塩基が含まれているかもしれないゲノムDNAである。DNAをバイサルファイトで処理すること(バイサルファイト変換またはバイサルファイト反応)により、非メチル化シトシンはウラシルに化学修飾されるが、(5−)メチル化シトシンは不変のままである。重亜硫酸ナトリウムによる(非メチル化)シトシンの脱アミノ化の化学反応は、3つの工程:(1)スルホン化:シトシンの5−6二重結合へのバイサルファイトの付加、(2)加水分解性の脱アミノ化:得られたシトシン/バイサルファイト誘導体の加水分解性の脱アミノ化によりウラシル/バイサルファイト誘導体が得られる、(3)アルカリ脱スルホン化:アルカリ処理によるスルホン酸基の除去によりウラシルが得られる、を伴う。いったん変換されると、DNAのメチル化プロフィールは、所望の下流のアプリケーション(メチル化DNAおよび非メチル化DNA(対比)に特異的なプライマーを用いたその後の増幅)を用いて調べることができる。用語「変換済DNA」および「変換済核酸」は、本明細書で用いる場合、「バイサルファイト処理済DNA」および「バイサルファイト処理済核酸」を意味する。厳密に考慮すると、DNA/核酸内の非メチル化シトシンのみがバイサルファイト処理によってウラシルに化学修飾または変換されるが、(5−)メチル化シトシンはバイサルファイト処理によって修飾または変換されない。しかしながら、本明細書全体を通して、DNA/核酸がバイサルファイトによって処理されている場合、これを変換済DNA/変換済核酸と記載している。
【0024】
関連する一実施形態では、抽出膜を有する抽出チャンバを備えた自動化システムでの、試料中のDNAのバイサルファイト変換によるメチル化DNAの検出のための代替的な方法であって:
−試料を自動化システム内に導入し、バイサルファイトを該試料に添加し、即座に、該試料を40℃〜80℃の温度まで加熱してDNAを含むライセートを作製する、および該DNAのバイサルファイト変換を行なう工程;
−結合バッファーをDNAを含む該ライセートに添加して結合バッファー/ライセート溶液を生成させる工程;
−該結合バッファー/ライセート溶液を該抽出膜に通して制御ポンピングすることにより、DNAを該抽出膜に結合させ、該バイサルファイトを除去する工程;
−脱スルホン化バッファーを抽出チャンバに添加し、該脱スルホン化バッファーを該抽出膜に通して制御ポンピングする工程;
−該抽出膜から変換済DNAを溶出させる工程;ならびに
該変換済DNAを該自動化システムで解析する工程
を含む、または該工程を特徴とする方法を提供する。
【0025】
また、本発明は、抽出膜を有する抽出チャンバを備えた自動化システムでの、試料中のDNAのバイサルファイト変換によるメチル化の解析のための試料の調製方法であって:
−試料を自動化システム内に導入し、バイサルファイトを該試料に添加し、即座に、該試料を40℃〜80℃の温度まで加熱してDNAを含むライセートを作製する、および該DNAのバイサルファイト変換を行なう工程;
−結合バッファーをDNAを含む該ライセートに添加して結合バッファー/ライセート溶液を生成させる工程;
−該結合バッファー/ライセート溶液を該抽出膜に通して制御ポンピングすることにより、該DNAを抽出膜に結合させ、該バイサルファイトを除去する工程;
−脱スルホン化バッファーを抽出チャンバに添加し、該脱スルホン化バッファーを該抽出膜に通して制御ポンピングし、変換済DNAのアルカリ脱スルホン化を行なう工程;ならびに
−該抽出膜から変換済DNAを溶出させる工程
を含む、または該工程を特徴とする方法も包含している。
【0026】
本発明の好ましい実施形態では、核酸の供給源の即時の加熱は40℃〜60℃までの温度である、および/または制御ポンピングは、好ましくは0.1ml/秒以下、0.001ml/秒〜0.1ml/秒、より好ましくは0.001〜0.0017ml/秒の流速である。
【0027】
ライセート:生物学的試料中の核酸(1つもしくは複数)またはDNAを放出させ、自動化システム内での直接の核酸/DNAの変換および解析を可能にすることは本発明の一態様である。本発明によれば、バイサルファイトを核酸または生物学的試料、例えば組織試料に添加し、該核酸またはDNA含有試料を加熱することによりライセートを作製する。重要なことには、ライセートは自動化システム内を輸送可能なものであるのがよい。ライセートは、バイサルファイトとともにインキュベートされ、自動化システム内で解析(下流の核酸/DNA解析)されるはずのDNAを含む。
【0028】
溶解チャンバまたは試料調製チャンバ:ここでは、高温下でバイサルファイトを用いた本発明の方法において、試料が自動化システム内に添加され、試料の溶解が行なわれる。溶解チャンバは、カートリッジ内の流体通路における第1工程である。具体的な一実施形態では、溶解チャンバの底部は該システム内の加熱エレメント(「ペルチェ」)上部に直接配置される。好ましくは、溶解チャンバは、この溶解チャンバ上部の液体中に熱が最適に伝わるように設計される。好ましい一実施形態では、溶解チャンバ内のすべての反応温度が、溶解チャンバの外面の赤外線での温度測定によって直接モニタリングされる。溶解チャンバの反応温度を測定するための他の手段も同様に使用され得る。
【0029】
核酸の供給源は、核酸を含む任意の供給源であり得る;これは、核酸の生物学的供給源であってもよく、バッファー溶液中に核酸、例えばDNAを含む任意の溶液であってもよい。
【0030】
試料は、ヒトまたは動物の身体からの生物学的試料、好ましくは患者試料である。生物学的試料は、本発明の方法により解析される核酸またはDNA含有細胞を含む。試料は組織試料、スワブ被検査物、体液、体液沈殿物または洗浄液被検査物であり得る。非限定的な例としては、ヒトまたは動物の新鮮組織試料、凍結組織試料、FFPE包埋組織試料(ホルマリン固定パラフィン包埋組織)、全血、血漿、血清、尿、便、唾液、脳脊髄液、腹水、胸膜液、リンパ液、乳頭吸引液、痰および射精液が挙げられる。試料は、当該技術分野で知られた任意の適当な方法を用いて採取され得る。
【0031】
本発明は、例えば、バイサルファイト変換済DNAを結合させるため、および下流のアプリケーション前にバイサルファイト変換反応液を除去するための抽出膜の使用を伴う。抽出膜はカートリッジの抽出チャンバ内に存在させる。核酸は、さらなる精製、濃縮または加工のために抽出膜に通して保持され得る。好適な抽出膜としては、ガラス膜およびシリカ膜が挙げられる。好ましい実施形態では、抽出膜はシリカ膜である。適宜、1つ以上のシリカ膜、例えば2、3、4もしくは5つのシリカ膜、または2つもしくは3つのシリカ膜層を含む複合膜を使用してもよい。具体的な一実施形態では、本発明による抽出膜は、互いに(密に)積層されて抽出膜を形成した2つまたは3つの独立した別個のシリカ膜からなり、これにより、抽出チャンバ内への流体のポンピングが前記積層シリカ膜に通して/該膜を通過させて行なわれる。
【0032】
自動化システムでは、該方法が自動化プロセスで行なわれ、これは、該方法またはプロセスの工程が、人間による外的制御または影響がほとんどまたは全くなしで動作可能な装置または機械で行なわれることを意味する。好適な自動化システムは、EP1896180、EP1904234およびEP2419705に記載されており、当該発明を記載した一部の特定の実施形態に相応して組み込まれる。好ましくは、1つ以上の反応チャンバと1つ以上の流体チャンバを含むカートリッジ系システムが使用される。一部の流体チャンバには、試料からライセートを作製するために使用される流体が保持され得る。他の一部のチャンバには、反応バッファー、洗浄用流体および増幅溶液などの流体が保持され得る。反応チャンバは、検出の種々の工程、例えば洗浄、溶解および増幅を行なうために使用される。
【0033】
用語「カートリッジ」は、チャンバおよび/またはチャネルの内蔵型アセンブリであって、単一の物体として形成されており、かかるカートリッジを受容(すなわち、収容または連結)するのに適したより大型の機器の内部または外部に装着されるものとして移送または移動させることができるものであると理解されたい。カートリッジ内に収容された一部の部品は、異なるカートリッジ部材に対してしっかり連結され得るが、他の一部のものは柔軟に連結され、可動性であり得る。本明細書で用いる場合、用語「カートリッジ」は、主に、流体、好ましくは液体の処理、加工、排出または解析に適した少なくとも1つのチャンバまたはチャネルを含むカートリッジである「流体用カートリッジ」をいう。
【0034】
自動化システムは開放型または閉鎖型の自動化システムであり得る。試料がカートリッジ系システム内に添加または挿入されている場合、カートリッジ系システムは閉鎖されており、システムの動作中は閉鎖されたままである。閉鎖型システムには必要な試薬がすべて内部に収容されており、そのため閉鎖型構成により、該システムではコンタミフリーの検出が行なわれるという利点がもたらされる。あるいはまた、開放型の露出型カートリッジを自動化システムに使用してもよい。必要な試薬が開放型カートリッジ内に必要に応じて添加され、その後、試料が開放型カートリッジ内に挿入され得、このカートリッジが閉鎖型自動化システム内で操作され得る。
【0035】
具体的な状況の一例では、自動化システムは、以下の要素:機器、コンソールおよびカートリッジからなる。機器およびコンソールは、消耗品のカートリッジとのコンビネーションで機能を果たす。機器は、アッセイを行なうための制御モジュールを備えている。コンソールは、アッセイ中の機器の動作およびカートリッジの状態を制御およびモニタリングするためのコンピュータである。カートリッジ内でアッセイが実行される。試薬が予備装填されたカートリッジ内に試料を挿入した後、このカートリッジが機器内に装填され、カートリッジ内で自立的に行なわれるアッセイがこの機器によって制御される。アッセイが実行された後、コンソールのソフトウェアによって結果が処理され、自動化システムのエンドユーザーが利用可能なレポートが作成される。
【0036】
本発明を説明した好ましい実施形態では、メチル化DNAの検出アッセイを行なうために必要とされる試薬がすべてカートリッジ内に事前に配置されており、そのため、このカートリッジは核酸アッセイを行なうための内蔵型使い捨て装置である。好適な手段としては、DNAマイクロアレイもしくはタンパク質マイクロアレイベースのバイオチップおよび/またはサーモサイクリング(例えば、PCR、LCRなど)を実施するためのデバイスおよび/またはシーケンシングのための手段が挙げられる。好ましくは、カートリッジには、サーモサイクリング、好ましくはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)または逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)を行なうための手段が組み込まれている。PCR法は当該技術分野でよく知られており、核酸の融解のための加熱と冷却の反応および該核酸の酵素的複製を反復するサイクルからなるサーマルサイクリングによるものである。かかる増幅反応では、典型的には、標的核酸ならびに核酸合成の開始に必要とされる反応成分、例えば耐熱性DNAポリメラーゼ(例えば、Taqポリメラーゼ)、ヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチド(例えば、プライマー、プローブ、ブロック因子...)が使用される。好ましい適用例では、自動化システムに、該システム内に乾燥形態で存在させる試薬が使用されるサーモサイクリングが適用される。試料を本発明に記載のようにして処理して核酸を含むライセートを形成し、自動化システム内に事前に配置された試薬を、自動化システム内での試料に対するアッセイの実行時点/試料の試験時点で再構成させる。核酸を自動化システム内で(抽出膜から)溶出させる。したがって、溶出液は自動化システム内で直接、下流のPCR/核酸解析が可能である。典型的には、マイクロ空気式制御装置が、アッセイの完結のために必要に応じてライセート、試薬および溶出液を指向(「ポンピング」)するために使用される。アッセイとしてはエンドポイント検出またはリアルタイム検出が挙げられ得;どちらの方法も当該技術分野でよく知られている。
【0037】
ポンピング:本発明の具体的な一実施形態において、「ポンピング」は、流体(液体または気体)が抽出チャンバを通過して/抽出膜を通過して輸送または移動されることを意味する。「制御ポンピング」は、自動化システムでの制御ポンピングを意味するか、または流速がシステム内で指定され得ることを意味する。自動化システムは、かくして該自動化システム内での流体のポンピングの流速を制御する(これは、流体をある場所から別の場所に移動させるために、例えば重力または遠心力(1つまたは複数)を使用するのと比べると異なっている)。制御ポンピング(フロー制御)により、核酸の抽出膜への最適な結合および核酸含有供給源からの試薬またはバッファーの除去が可能である。適用例としては、抽出膜に通す結合バッファー/ライセート溶液の制御ポンピングによるバイサルファイト試薬の最適な除去、ならびに脱スルホン化バッファーの添加および抽出膜に通す脱スルホン化バッファーの制御ポンピングによる核酸内の脱アミノ化された塩基の最適な脱スルホン化および前記塩基のウラシル塩基への変換が挙げられる。制御ポンピングは、システムに当該システムでの必要に応じて可変速度のポンピングを適用することができるという利点を有する。これは、本明細書に記載の発明の方法工程の制御において特に有用である。
【0038】
流速:本発明の具体的な一実施形態において、「流速」は、抽出チャンバ/抽出膜を貫通する流体のポンピング速度を意味する。好ましい一実施形態では、流速は単位:ml/秒で表示される。
【0039】
メチル化DNAの検出のための現在入手可能なキットでは、試料の調製、例えばDNAの精製(例えば、血液、組織または細胞からのDNAの精製)およびDNAの変性工程(典型的には、DNA含有試料を98℃で10分間加熱することによる)が必要とされる。本発明の方法では、このような調製工程が省かれている。したがって、核酸の精製およびその後の核酸変性工程、95℃〜98℃での10分間の加熱の後、核酸変換試薬での処理を伴う既存の核酸変換の方法およびシステムとは反対に、本発明では、試料を98℃より下、好ましくは95℃より下、94℃より下、93℃より下、92℃より下、91℃より下、90℃より下、85℃より下、80℃より下、70℃より下、60℃より下の反応温度に維持し、感度のよい特異的な下流のメチル化の検出は大きく影響されない。実際、核酸変換試薬を直接、核酸または試料に添加し、直接、40℃〜60℃、45℃〜55℃、より好ましくは49℃〜53℃の反応温度まで加熱してライセートを作製する。より好ましくは、ライセートを作製するための反応温度は40℃、42℃、44℃、46℃、48℃、49℃、50℃、50.5℃、51℃、51.5℃、52℃、53℃、54℃、56℃、58℃、59℃、60℃、62℃、64℃、66℃、68℃、70℃、72℃、74℃、76℃、78℃、80℃である。具体的な一実施形態では、ライセートを作製するための反応温度は51℃である。
【0040】
核酸/試料は溶解チャンバ内で加熱される。自動化システム、より具体的には機器には、溶解チャンバを、該溶解チャンバの壁を通して所与の反応温度まで昇温させることができる加熱エレメントが含まれている。溶解チャンバ内で反応温度に達するのに必要とされる時間は、求められる温度および溶解チャンバ内部の加熱対象の流体(ライセート)の容量に関連/比例する。必要とされる反応温度の高さおよび加熱される容量に応じて、求められる温度に達するには最大5分、10分、15分、20分、25分または30分かかり得る。自動化システムは、溶解チャンバ内部の反応温度を溶解チャンバの外面の温度測定によって制御する。しかしながら、溶解チャンバ内部の昇温は溶解チャンバの外面の温度より25℃上までであり得る。溶解チャンバの壁面温度を40℃に設定し、溶解チャンバ内部に700μlの変換試薬が存在している場合、溶解チャンバ内の反応温度は51℃であると推定される。
【0041】
同様に、内部に抽出膜を有する抽出チャンバは、自動化システム内部、より具体的には機器内部に配置され、抽出チャンバのすぐそばに配置された加熱エレメントによって加熱され得る。加熱エレメントは、抽出チャンバの壁を通して抽出チャンバを昇温させることができるものである。本発明の一実施形態では、洗浄工程が、バイサルファイト除去工程後、洗浄バッファーを抽出チャンバに添加し、この洗浄バッファーを40℃の温度にて0.1ml/秒以下の流速で該抽出膜に通してポンピングすることにより行なわれる。本発明の別の実施形態では、脱スルホン化が、脱スルホン化バッファーを抽出チャンバに添加し、この脱スルホン化バッファーを20℃の温度にて本明細書に記載の流速で該抽出膜に通してポンピングすることにより行なわれる。
【0042】
本発明の方法、カートリッジおよびシステムではすべて、核酸/DNAを含むライセートを作製するために、直接、バイサルファイト溶液が核酸/試料に添加され、より低い加熱温度およびより長いインキュベーション時間を使用することにより核酸分解が制御される。好ましい実施形態では、加熱は、適当な反応温度、好ましくは40〜60℃の反応温度で30分〜1時間である。最適な感度および特異性を得るためには、加熱時間は40〜60℃の温度でおよそ1時間であり、加熱時間は、好ましくは適当な温度で30分、35分、40分、45分、50分、51分、52分、53分、54分、55分、56分、57分、58分、59分、60分、61分、62分、63分、64分、65分、66分、67分、68分、69分、70分、75分、80分である。温度の測定は本明細書の他の箇所に詳述している。
【0043】
本発明では、抽出膜に通してポンピングする溶液が必要とされ、典型的にはポンピング工程は自動化システム内での制御ポンピング、より好ましくは低速ポンピング、例えば、0.1ml/秒以下の流速、好ましくは0.001ml/秒〜0.1ml/秒の流速、より好ましくは0.001〜0.0017ml/秒の流速でのポンピングを伴う。具体的な一実施形態では、本発明による方法では、0.001〜0.0017ml/秒の少なくとも1つの流速が存在する。
【0044】
メチル化DNAの検出のための現在入手可能なキットのいくつかでは、バイサルファイト変換試薬を除去するためにバイサルファイト除去を低速溶出スピンカラムを用いて行ない、このカラムは、まず結合バッファーで洗浄し、その後、変換済DNA溶液をカラムに添加する。本発明によれば、バイサルファイト変換後、結合バッファーがライセートに添加され、該結合バッファー/ライセート溶液が0.1ml/秒以下の流速、好ましくは0.001ml/秒〜0.1ml/秒の流速、より好ましくは0.001〜0.0017ml/秒で抽出膜に通されてポンピングされてバイサルファイト変換試薬が除去され、溶出カラム工程の必要性がない。
【0045】
メチル化DNAの検出のための現在入手可能なキットのいくつかでは複数回の遠心分離工程が必要とされる。このようなキットでは、脱スルホン化工程は、変換済DNA溶液を脱スルホン化バッファーとともに室温で20分間インキュベートした後、遠心分離工程により行ない;次いで、洗浄バッファーを添加した後、次の遠心分離工程を行ない;次いで、溶出バッファーを添加した後、再度、遠心分離工程を行ない、変換済DNAを溶出させる。本発明によれば、脱スルホン化工程は、脱スルホン化バッファーが変換済DNA溶液に自動化システム内で添加され、0.1ml/秒以下の流速、好ましくは0.001ml/秒〜0.1ml/秒の流速、より好ましくは0.001〜0.0017ml/秒での該抽出膜に通す該脱スルホン化バッファーのポンピングにより行なわれ、遠心分離工程はない。同様に、洗浄工程および抽出膜からの変換済DNAの溶出も、溶出バッファーを0.1ml/秒以下の流速で該抽出膜に通すポンピングにより行なわれ、遠心分離工程は全く必要とされない。
【0046】
該結合バッファー/ライセート溶液からの核酸の抽出膜への最適な結合は、0.1ml/秒以下、または0.001ml/秒〜0.1ml/秒、または0.001〜0.0017ml/秒の流速、好ましくは0.1ml/秒以下、0.090ml/秒、0.080ml/秒、0.075ml/秒、0.070ml/秒、0.0625ml/秒、0.060ml/秒、0.050ml/秒、0.040ml/秒、0.030ml/秒、0.020ml/秒、0.01ml/秒、0.0090ml/秒、0.0080ml/秒、0.0070ml/秒、0.0060ml/秒、0.0050ml/秒、0.0040ml/秒、0.0030ml/秒、0.0020ml/秒、0.0019ml/秒、0.0018ml/秒、0.0017ml/秒、0.0016ml/秒、0.0015ml/秒、0.0014ml/秒、0.0013ml/秒、0.0012ml/秒、0.0011ml/秒または0.0010ml/秒の流速を伴う。最も好ましくは、該結合バッファー/ライセート溶液からの核酸の抽出膜への最適な結合は0.1ml/秒の流速を伴う。
【0047】
結合バッファー/ライセート溶液を抽出膜に通してポンピングすることによる結合バッファー/ライセート溶液からのバイサルファイト除去は、0.1ml/秒以下、または0.001ml/秒〜0.1ml/秒、または0.001〜0.0017ml/秒の流速、好ましくは0.1ml/秒以下、0.090ml/秒、0.080ml/秒、0.075ml/秒、0.070ml/秒、0.0625ml/秒、0.060ml/秒、0.050ml/秒、0.040ml/秒、0.030ml/秒、0.020ml/秒、0.01ml/秒、0.0090ml/秒、0.0080ml/秒、0.0075ml/秒、0.0070ml/秒、0.0060ml/秒、0.0050ml/秒、0.0040ml/秒、0.0030ml/秒、0.0020ml/秒、0.0019ml/秒、0.0018ml/秒、0.0017ml/秒、0.0016ml/秒、0.0015ml/秒、0.0014ml/秒、0.0013ml/秒、0.0012ml/秒、0.0011ml/秒または0.0010ml/秒の流速を伴う。最も好ましくは、抽出膜に通す結合バッファー/ライセート溶液からの最適なバイサルファイト除去は0.1ml/秒の流速を伴う。
【0048】
脱スルホン化バッファーを抽出膜に通してポンピングすることによる核酸の最適な脱スルホン化は、0.1ml/秒以下、または0.001ml/秒〜0.1ml/秒、または0.001〜0.0017ml/秒の流速、好ましくは、0.1ml/秒以下、0.090ml/秒、0.080ml/秒、0.075ml/秒、0.070ml/秒、0.0625ml/秒、0.060ml/秒、0.050ml/秒、0.040ml/秒、0.030ml/秒、0.020ml/秒、0.01ml/秒、0.0090ml/秒、0.0080ml/秒、0.0075ml/秒、0.0070ml/秒、0.0060ml/秒、0.0050ml/秒、0.0040ml/秒、0.0030ml/秒、0.0020ml/秒、0.0019ml/秒、0.0018ml/秒、0.0017ml/秒、0.0016ml/秒、0.0015ml/秒、0.0014ml/秒、0.0013ml/秒、0.0012ml/秒、0.0011ml/秒または0.0010ml/秒の流速を伴う。最も好ましくは、脱スルホン化バッファーを抽出膜に通してポンピングすることによる核酸の最適な脱スルホン化は0.0017ml/秒の流速を伴う。
【0049】
(アルカリ)脱スルホン化は、脱スルホン化バッファーを0.1ml/秒以下の流速で抽出膜に通してポンピングすることにより行なわれる。変換済DNAのアルカリ脱スルホン化のポンピング工程では、流速を、好ましくは非常に低速に、好ましくは0.01ml/秒以下、0.075ml/秒、0.0625ml/秒、0.0090ml/秒、0.0080ml/秒、0.0075ml/秒、0.0070ml/秒、0.0060ml/秒、0.0050ml/秒、0.0040ml/秒、0.0030ml/秒、0.0020ml/秒、より好ましくは0.0017ml/秒以下、さらにより好ましくは0.001〜0.0017ml/秒に維持するのがよい。抽出膜に通すポンピングの流速を低速に維持することにより、例えばバイサルファイト変換中に形成され得る試料中の不純物および不要な要素が、該膜を通してポンピングしたときに処理済試料から適正に除去される。ライセートからのバイサルファイト除去のポンピング工程は、変換済DNAの(アルカリ)脱スルホン化のポンピング工程よりもいくぶん高速で行なわれ得る。
【0050】
本発明の好ましい一実施形態では、抽出膜を有する抽出チャンバを備えた自動化システムでの核酸のメチル化状態の検出のための方法であって:
−核酸の供給源を自動化システム内に導入し、バイサルファイトを該核酸に添加し、その後即時に、該核酸の該供給源を40℃〜60℃の温度まで加熱して該核酸を含むライセートを作製する、および前記ライセート中に存在している前記核酸内に存在している非メチル化シトシン塩基を脱アミノ化させる工程;
−結合バッファーを該ライセートに添加し、結合バッファー/ライセート溶液を生成させる工程;
−該結合バッファー/ライセート溶液を0.001ml/秒〜0.0017ml/秒の流速で該抽出に通してポンピングすることにより、該核酸を該抽出膜に結合させ、該バイサルファイトを除去する工程、
−脱スルホン化バッファーを抽出チャンバに添加し、該脱スルホン化バッファーを0.001ml/秒〜0.0017ml/秒の流速で該抽出膜に通してポンピングし、第1工程で脱アミノ化された該核酸内の該塩基を脱スルホン化する、および前記塩基をウラシル塩基に変換させる工程;
−変換済核酸を該抽出膜から溶出させる工程;ならびに
該変換済核酸を該自動化システムで解析する工程
を含む、または該工程を特徴とする方法を提供する。
【0051】
さらに好ましい一実施形態では、抽出膜を有する抽出チャンバを備えた自動化システムでの、試料中のDNAのバイサルファイト変換によるメチル化DNAの検出のための方法であって:
−試料を自動化システム内に導入し、バイサルファイトを該試料に添加し、即座に、該試料を40℃〜60℃までの温度まで加熱してDNAを含むライセートを作製する、および前記DNAのバイサルファイト変換を行なう工程;
−結合バッファーをDNAを含む該ライセートに添加して結合バッファー/ライセート溶液を生成させる工程;
−該結合バッファー/ライセート溶液を0.001ml/秒〜0.0017ml/秒の流速で該抽出膜に通してポンピングすることにより、DNAを該抽出膜に結合させ、該バイサルファイトを除去する工程;
−脱スルホン化バッファーを抽出チャンバに添加し、該脱スルホン化バッファーを0.001ml/秒〜0.0017ml/秒の流速で該抽出膜に通してポンピングし、変換済DNAのアルカリ脱スルホン化を行なう工程;
−該抽出膜から変換済DNAを溶出させる工程;ならびに
該変換済DNAを該自動化システムで解析する工程
を含む、または該工程を特徴とする方法を提供する。
【0052】
本発明によれば、バイサルファイト除去工程および(アルカリ)脱スルホン化工程は、それぞれ結合バッファー/ライセート溶液および脱スルホン化バッファーを、2つの独立した別個のポンピング工程にて逐次1つの同じ抽出膜に通してポンピングすることにより行なわれる。さらに好ましい一実施形態では、バイサルファイト除去工程および(アルカリ)脱スルホン化工程は、逐次抽出膜に通してポンピングすることにより行なわれ、このとき、脱スルホン化のポンピング工程はバイサルファイト除去のポンピング工程より低速で行なわれる。さらに、洗浄バッファーを1回以上の洗浄工程にて抽出膜に通してポンピングしてもよく、該洗浄工程は好ましくは、バイサルファイト除去のポンピング工程と(アルカリ)脱スルホン化のポンピング工程の間および(アルカリ)脱スルホン化のポンピング工程後に再度である。好ましい一実施形態では、洗浄バッファーは0.0625ml/秒の流速で抽出膜に通してポンピングされる。
【0053】
本発明の一実施形態では、抽出膜を有する抽出チャンバを備えた自動化システムでの核酸のメチル化状態の検出のための方法であって:
−核酸の供給源を自動化システム内に導入し、バイサルファイトを該核酸に添加し、その後即時に、該核酸の該供給源を40℃〜60℃の温度まで加熱して該核酸を含むライセートを作製する、および前記核酸内に存在している非メチル化シトシン塩基を脱アミノ化させる工程;
−結合バッファーを該ライセートに添加し、結合バッファー/ライセート溶液を生成させる工程;
−該該結合バッファー/ライセート溶液を0.1ml/秒以下の流速および2〜15分の時間で該抽出膜に通してポンピングすることにより、該核酸を該抽出膜に結合させ、該バイサルファイトを除去する工程;
−脱スルホン化バッファーを抽出チャンバに添加し、該脱スルホン化バッファーを0.1ml/秒以下の流速および6〜20分の時間で該抽出膜に通してポンピングし、第1工程で脱アミノ化された該核酸内の該塩基を脱スルホン化する、および前記塩基をウラシル塩基に変換させる工程;
−変換済核酸を該抽出膜から溶出させる工程;ならびに
該変換済核酸を該自動化システムで解析する工程
を含む、または該工程を特徴とする方法を提供する。
【0054】
既に本明細書に記載のものと同様に、抽出膜を有する抽出チャンバを備えた自動化システムでの、試料中のDNAのバイサルファイト変換によるメチル化DNAの検出のための方法であって:
−試料を自動化システム内に導入し、バイサルファイトを該試料に添加し、その後即時に、該試料を40℃〜60℃までの温度まで加熱してDNAを含むライセートを作製する、および該DNAのバイサルファイト変換を行なう工程、
−結合バッファーをDNAを含む該ライセートに添加して結合バッファー/ライセート溶液を生成させる工程;
−該該結合バッファー/ライセート溶液を0.1ml/秒以下の流速および2〜15分の時間で該抽出膜に通してポンピングすることにより、DNAを該抽出膜に結合させ、該バイサルファイトを除去する工程;
−脱スルホン化バッファーを抽出チャンバに添加し、該脱スルホン化バッファーを0.1ml/秒以下の流速および6〜20分の時間で該抽出膜に通してポンピングし、変換済DNAのアルカリ脱スルホン化を行なう工程;
−該抽出膜から変換済DNAを溶出させる工程;ならびに
該変換済DNAを該自動化システムで解析する工程
を含む方法を提供する。
【0055】
上記のように、バイサルファイト変換プロセスの有効性が改善され、最小限のDNA分解を可能にする。したがって、本発明の方法は、ゲノムDNAが比較的少量の試料のメチル化の解析に特に有用である。例えば、一部の試料は10、9、8、7、6、5、4、3、2または1ナノグラムのDNAを含むものであり得る。他の一部の試料は500、400、300、200または100ピコグラムという少量のDNAを含むものであり得る。かかる試料は尿および血漿が例示され、これらに含まれている循環DNAは比較的少量である。これに関連して、本発明の方法は、含まれているゲノムDNAが別の様式で枯渇しているかまたは充分でない試料の解析に有用である。
【0056】
本発明の方法は、自動化システムにおけるその適用が見出される。一部の特定の実施形態では、自動化システム内に試料中のメチル化DNAの検出のためのカートリッジが保持される。本発明の一実施形態では、本発明の方法による試料中のメチル化DNAの検出のためのカートリッジは、例えばヒト組織試料において使用される。好ましくは、カートリッジは抽出チャンバを備えており、この抽出チャンバには抽出膜が収容されている。より好ましくは、カートリッジは溶解チャンバと抽出チャンバを備えており、抽出チャンバには抽出膜が収容されており、ここで、溶解チャンバと抽出チャンバの間には、流体を該溶解チャンバから該抽出チャンバに輸送するためのチャネルが存在している。チャネルは、カートリッジ内で溶解チャンバを抽出チャンバと連結している流体通路である。チャネルは、単純なチャネルであってもよく、それ自体の内部に、溶解チャンバと抽出チャンバの間のさらなるチャンバが収容されたチャネルであってもよい。より好ましくは、カートリッジは溶解チャンバ、抽出チャンバを備えており、抽出チャンバには抽出膜が収容されており、ここで、溶解チャンバと抽出チャンバの間に流体を該溶解チャンバから該抽出チャンバに輸送するためのチャネルと、カートリッジ内でのPCRプロセス工程のためのPCRモジュールが存在している。
【0057】
したがって、好適なカートリッジは、複数のチャンバ、好ましくは少なくとも3つのチャンバ:溶解チャンバ、抽出チャンバ(抽出チャンバには抽出膜が収容されている)およびPCRチャンバ(下流のDNA解析を可能にする)を備えている。核酸のメチル化の検出のためのプロセスにおける使用に適した試薬の保存のための他のチャンバが必要とされる場合もあり得る。流体チャネルは、異なるチャンバ間の連結をもたらし、本発明において記載の方法により必要に応じて、1つのチャンバから別のチャンバへの流体(液体および気体)の輸送を可能にする。
【0058】
典型的には、カートリッジ内の溶解チャンバは:
−試料を受容すること、
−バイサルファイト溶液を該試料に添加すること、
−該試料を直接、40℃〜60℃まで加熱し、DNAを含むライセートを作製する、および該DNAのバイサルファイト変換を該ライセート中で行なうこと、
−結合バッファーを該ライセートに添加すること
を許容するものである。
【0059】
バイサルファイト溶液および結合バッファーはカートリッジ内のさらなるチャンバまたは容器内に保存され、該さらなるチャンバまたは容器は流体チャネルを介して溶解チャンバと連結されている。
【0060】
本明細書の他の箇所に詳述しているように、カートリッジ内の抽出チャンバには抽出膜が収容されている。カートリッジ内の抽出チャンバは:
−ライセートを受容すること、
−該結合バッファー/ライセート溶液を0.1ml/秒以下、0.001ml/秒〜0.1ml/秒、より好ましくは0.001〜0.0017ml/秒の流速で該抽出膜に通してポンピングすることにより、その後の該バイサルファイトの除去を可能にすること、
−その後の抽出チャンバへの脱スルホン化バッファーの添加および0.1ml/秒以下、0.001ml/秒〜0.1ml/秒、より好ましくは0.001〜0.0017ml/秒の流速で該抽出膜に通す該脱スルホン化バッファーのポンピングを可能にし、変換済DNAのアルカリ脱スルホン化を行なうこと、ならびに
−その後の抽出膜からの変換済DNAの溶出を可能にすること
を許容するものである。
【0061】
種々の工程の実施を可能にするために、溶解チャンバと抽出チャンバの間には、流体を該溶解チャンバから該抽出チャンバに輸送するためのチャネルが存在している。カートリッジにはまた、変換済DNAの下流の解析を可能にするためのPCRチャンバも収容されている。抽出チャンバとPCRチャンバの間には、変換済DNAを該抽出チャンバから該PCRチャンバに輸送するための流体チャネルが存在している。
【0062】
本発明は、自動化システムでの本発明の方法による核酸のメチル化状態の検出のためのカートリッジであって、抽出膜を有する抽出チャンバ、バイサルファイト、結合バッファーおよび脱スルホン化バッファーを備えたカートリッジを提供する。カートリッジの抽出チャンバ内の抽出膜は、結合バッファー/ライセート溶液を抽出膜に通して輸送したときに、核酸を結合させ、バイサルファイトを除去することを許容する。
【0063】
また、本発明は、核酸のメチル化状態の検出のためのカートリッジであって:
−核酸の供給源を受容すること、バイサルファイト溶液を該核酸の該供給源に添加すること、ならびにその後即時に、該核酸の該供給源を40℃〜60℃の温度まで加熱して該核酸を含むライセートを作製する、および前記核酸内に存在している非メチル化シトシン塩基を脱アミノ化させること、ならびに結合バッファーを該ライセートに添加して結合バッファー/ライセート溶液を形成することを許容する溶解チャンバ;
−該結合バッファー/ライセート溶液を受容すること、該結合バッファー/ライセート溶液を0.1ml/秒以下、0.001ml/秒〜0.1ml/秒、より好ましくは0.001〜0.0017ml/秒の流速で該抽出膜に通してポンピングすることにより、その後の該バイサルファイトの除去を可能にすること、その後の抽出チャンバへの脱スルホン化バッファーの添加および0.1ml/秒以下、0.001ml/秒〜0.1ml/秒、より好ましくは0.001〜0.0017ml/秒の流速で該抽出膜に通す該脱スルホン化バッファーのポンピングを可能にし、第1工程で脱アミノ化された該核酸内の該塩基を脱スルホン化する、および前記塩基をウラシル塩基に変換させること、ならびにその後の該抽出膜からの変換済核酸の溶出を可能にすることを許容する抽出膜を有する抽出チャンバ、
ここで、該溶解チャンバと該抽出チャンバの間には、流体を該溶解チャンバから該抽出チャンバに輸送するためのチャネルが存在している、ならびに
−該変換済核酸の下流の解析を可能にするPCRチャンバ、
ここで、該抽出チャンバと該PCRチャンバの間には、変換済核酸を該抽出チャンバから該PCRチャンバに輸送するためのチャネルが存在している、
を備えているカートリッジを提供する。
【0064】
また、本発明は、試料中のメチル化DNAの検出のためのカートリッジであって:
−試料を受容すること、バイサルファイト溶液を該試料に添加すること、該試料を加熱してDNAを含むライセートを作製する、および該DNAのバイサルファイト変換を該ライセート中で行なうこと、ならびに変換済の該ライセートに結合バッファーを添加して結合バッファー/ライセート溶液を形成することを許容する溶解チャンバ、
−該結合バッファー/ライセート溶液を受容すること、該結合バッファー/ライセート溶液を0.1ml/秒以下、0.001ml/秒〜0.1ml/秒、より好ましくは0.001〜0.0017ml/秒の流速で該抽出膜に通してポンピングすることにより、その後の該バイサルファイトの除去を可能にすること、その後の抽出チャンバへの脱スルホン化バッファーの添加および0.1ml/秒以下、0.001ml/秒〜0.1ml/秒、より好ましくは0.001〜0.0017ml/秒の流速で該抽出膜に通す該脱スルホン化バッファーのポンピングを可能にし、変換済DNAのアルカリ脱スルホン化を行なうこと、ならびにその後の抽出膜からの変換済DNAの溶出を可能にすることを許容する抽出膜を内部に有する抽出チャンバ、
ここで、該溶解チャンバと該抽出チャンバの間には、流体を該溶解チャンバから該抽出チャンバに輸送するためのチャネルが存在している、ならびに
−変換済DNAの下流の解析を可能にするPCRチャンバ、
ここで、該抽出チャンバと該PCRチャンバの間には、変換済DNAを該抽出チャンバから該PCRチャンバに輸送するためのチャネルが存在している、
を備えているカートリッジを提供する。
【0065】
最も好ましい一実施形態では、カートリッジは、溶解チャンバ、8つの試薬容器、フィルター領域、抽出チャンバ(内部に抽出膜を有する)、PCRチャンバおよび廃棄物チャンバならびにすべての連結チャネルを含む。試薬容器には、メチル化された核酸またはDNAの検出に必要とされる必要な試薬(脱スルホン化バッファー、洗浄バッファーなど)が保存される。
【0066】
また、本発明は、本発明の方法の実施に適した、メチル化DNAの自動検出のためのシステムを提供する。本記載の方法の適用には、記載のカートリッジを受容するための自動システムが必要とされ得る。
【0067】
本発明の具体的な一実施形態では、自動化システム内にカートリッジが挿入/装填され、該カートリッジは溶解チャンバと抽出チャンバ(内部に抽出膜を有する)を備えており、該溶解チャンバと該抽出チャンバの間に流体チャネルが存在しており、該流体チャネルにはフィルターが収容されている。機器(これは、自動化システムの構成要素の1つである)は、カートリッジ内部で行なわれるアッセイ工程(試料中のDNAのバイサルファイト変換)を制御する。カートリッジには必要な試薬およびバッファーが予備装填される。試料をカートリッジの溶解チャンバ内に導入した後、カートリッジを該機器内に装填し、該機器によって、カートリッジ内で自立的に行なわれるアッセイを制御する。バイサルファイトをカートリッジの溶解チャンバ内の試料に添加し、溶解チャンバ内の反応温度を少なくとも40〜60℃まで上昇させ、試料中のDNAのバイサルファイト変換を行なう。溶解チャンバ内でのバイサルファイト変換後、結合バッファーを溶解チャンバ内に添加し、結合バッファー/ライセート溶液を生成させる。溶解チャンバから、結合バッファー/ライセート溶液がチャネルを通ってカートリッジ内の抽出チャンバの方に誘導される。チャネルには1つ以上のフィルターが予想され得る。該フィルターの主な機能は、ライセートを清浄化して、溶解チャンバ内で形成される残屑を除去すること、自動化システムまたはカートリッジ内の下流のいずれかの狭いチャネルを塞ぐのに充分大きいものであり得る粒子(あれば)を除去することである。抽出チャンバ内では、ライセート由来のDNAを抽出膜に結合させ、結合バッファー/ライセート溶液を記載の流速で抽出膜に通してポンピングすることによりバイサルファイトを除去する。次いで、洗浄バッファー(エタノールを含むもの)を0.001ml/秒〜0.1ml/秒の流速で抽出膜に通してポンピングし、残留しているかもしれない結合バッファー/ライセート溶液(あれば)を除去する。脱スルホン化バッファーを抽出チャンバ内に添加し、上記の流速で抽出膜に通してポンピングし、変換済DNAのアルカリ脱スルホン化を行なう。この具体的な実施形態から、当業者には、本発明の自動化システムまたはカートリッジはまた、フィルターも備えていてもよいことが理解されよう。具体的な一実施形態では、カートリッジはこのように、溶解チャンバと抽出チャンバの間のチャネル内にフィルターと、該抽出チャンバ内に抽出膜とを備えている。かかるフィルターは、流体が前記フィルターを通過するときにフィルター機能を果たすことは明白である。フィルターは、単一フィルターの構成を有するものであっても、より難儀な試料用に3層積層型フィルターの構成を有するものであってもよい。
【0068】
したがって、別の態様では、本発明は、核酸の供給源中の核酸のメチル化状態の検出のための自動化システムであって、該自動化システムが、抽出膜を有する抽出チャンバを備えたカートリッジを受け入れるのに適しており、前記システムが:
−該自動化システム内に導入された核酸の供給源にバイサルファイトを添加し、その後即時に、該核酸の該供給源を40℃〜60℃の温度まで加熱して該核酸を含むライセートを作製する、および前記核酸内に存在している非メチル化シトシン塩基を脱アミノ化させる工程、
−核酸を含む該ライセートに結合バッファーを添加し、結合バッファー/ライセート溶液を生成させる工程、
−該該結合バッファー/ライセート溶液を0.1ml/秒以下、または0.001ml/秒〜0.1ml/秒、より好ましくは0.001〜0.0017ml/秒の流速で該抽出膜に通してポンピングすることにより、該核酸を該抽出膜に結合させ、該バイサルファイトを除去する工程、
−脱スルホン化バッファーを抽出チャンバに添加し、該脱スルホン化バッファーを0.1ml/秒以下、0.001ml/秒〜0.1ml/秒、より好ましくは0.001〜0.0017ml/秒の流速で該抽出膜に通してポンピングし、第1工程で脱アミノ化された該核酸内の該塩基を脱スルホン化する、および前記塩基をウラシル塩基に変換させる工程、
−変換済核酸を該抽出膜から溶出させる工程、ならびに
−該変換済核酸を解析する工程
を制御するものである、
自動化システムに関する。
【0069】
また、本発明では、試料中のDNAのバイサルファイト変換によるメチル化DNAの自動検出のためのシステムであって、該システムが、少なくとも抽出チャンバ(内部に抽出膜を有する)を有するカートリッジを受け入れるのに適しており、該システムが:
−自動化システム内に導入された試料にバイサルファイトを添加し、該試料を直接、40℃〜60℃に加熱してDNAを含むライセートを作製する、および該DNAのバイサルファイト変換を行なう工程;
−結合バッファーをDNAを含む該ライセートに添加して結合バッファー/ライセート溶液を生成させる工程;
−該該結合バッファー/ライセート溶液を0.1ml/秒以下、または0.001ml/秒〜0.1ml/秒、より好ましくは0.001〜0.0017ml/秒の流速で該抽出膜に通してポンピングすることにより、DNAを該抽出膜に結合させ、該バイサルファイトを除去する工程;
−脱スルホン化バッファーを抽出チャンバに添加し、該脱スルホン化バッファーを0.1ml/秒以下、0.001ml/秒〜0.1ml/秒、より好ましくは0.001〜0.0017ml/秒の流速で該抽出膜に通してポンピングし、変換済DNAのアルカリ脱スルホン化を行なう工程;
−該抽出膜から変換済DNAを溶出させる工程;ならびに
−該変換済DNAを解析する工程
を制御するものである、
システムが想定される。
【0070】
自動化システムには、流体をある場所から別の場所にポンピングするための構成要素が収容されている。該システムのポンピングシステムは、必要に応じた特定の増大速度で液状物をカートリッジ内の抽出膜に通してポンピングされるように調整され得る。抽出膜に通すポンピング工程は、自動化システムにプログラムされているとおりに機械的に行なわれ、試料を低速溶出スピンカラムで、および/または遠心分離によって加工することにより、試料の手作業での清浄化(例えば、バイサルファイト除去、脱スルホン化および洗浄工程)が代行される。かかる自動化により、本発明の方法における工程では、なんらヒトによる相互作用なしで短時間での試料のハイスループットが可能になる。
【0071】
本発明の一実施形態では、抽出膜に通すポンピング工程は、抽出膜に通す2回以上のポンピング工程で行なわれ得る。例えば、本来の容量の半分の容量の脱スルホン化バッファーを抽出膜に通すことを2回実施するポンピングにより行なわれ得る。同様に、洗浄工程の際のポンピング、例えば、試料を洗浄バッファーとともに抽出膜に通すポンピングは、1回より多くのポンピング工程で行なわれ得る。一実施形態では、最初の洗浄工程が1回のポンピング工程で行なわれ、最後の洗浄工程が3回のポンピング工程で行なわれる。別の例では、最初の洗浄工程が3つのポンプで行なわれ、最後の洗浄工程が7つのポンプで行なわれる。
【0072】
好ましい一実施形態では、本発明の方法、カートリッジおよびシステムに使用される試料はヒト組織試料である。
【0073】
本発明の好ましい一実施形態では、自動化システムでのDNA解析/核酸の解析は、DNAの増幅/核酸の増幅を含む。本発明による特に好ましい増幅方法はメチル化特異的PCR法(MSP)(これは当該技術分野で知られている)、例えば、バイサルファイト変換体特異的アッセイを使用するリアルタイム−PCR(RT−PCR)反応である。好ましい一実施形態では、該方法は、さらに、増幅させた核酸を検出する工程を含み得る。特異的配列とのオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションおよびその後のハイブリッドの検出を利用するプローブベースのアッセイがある。また、当業者に知られたさらなる工程の後に標的核酸のシーケンシングを行なうことも可能である。本発明の特に好ましい一実施形態では、核酸は、増幅中の蛍光強度を、例えば、変換済の非メチル化DNAを検出するための特異的シグナルおよび変換済のメチル化DNAを検出するための特異的シグナルを用いて測定することにより検出される。この方法はリアルタイム蛍光のモニタリングを伴う。
【0074】
典型的には、少なくとも1つの遺伝子を1、2、3、4または5個のさらなる遺伝子とともに含む遺伝子パネルのメチル化状態が評価され、このとき、パネル内の該少なくとも1つの遺伝子のメチル化状態の変化は、がんなどの疾患の素因または発病を示す。用語「メチル化状態」は、対象の核酸または遺伝子内の1つ以上のCpGジヌクレオチド内のメチル化シトシン残基の有無をいう。多くの遺伝子では、CpGアイランドはプロモーター領域内にみられ、プロモーターの(すぐ)上流の開始点にある場合もあり、下流の転写領域内に延在している場合もある。プロモーター領域内におけるCpG分布は、どちらかというと稀であり、メチル化レベルはイントロンおよび/またはエキソン領域において評価され得る。評価対象領域は、イントロン配列とエキソン配列の両方を含み、したがって両方の領域が重なっている領域であってもよい。
【0075】
好ましくは、本発明による方法は、診断検査において、ヒトまたはさらには動物の身体に由来する組織または体液を特定のメチル化パターンの存在についてスクリーニングするために使用される。核酸またはDNA内のメチル化シトシン塩基の有無は細胞増殖性障害を示す。本発明による方法は、核酸内のメチル化部位の検出の速度およびユーザーフレンドリー性(手作業による取扱いなし)を向上させるために使用される。
【0076】
あるいはまた、本発明による方法は、試料中においてがんの素因または発病を検出するために使用され、このとき、DNAメチル化状態の変化の検出はがんの素因または発病を示す。上記の方法は、がん抑制薬でのがんの処置に対する抵抗性の尤度の予測またはがんに対する好適な処置レジメンの選択に使用され得る。または、該方法は、がん抑制薬でのがんの処置に対する抵抗性/奏功の尤度を予測するために使用され得、ここで、メチル化の変化の検出は、処置に対する抵抗性の尤度が、メチル化修飾が検出されない場合より低い/高いことを示す。さらなる使用は、がんに対する好適な処置レジメンの選択に関するものであり、ここで、メチル化状態の変化の検出はがん抑制薬を選択する結果となり、メチル化の変化が検出されない場合はそのがん抑制薬が治療に選択されない、またはその逆である。
【0077】
既に広範に記載した本発明の自動化システムに付け加えて、最も好ましい一実施形態では、自動化システムは、溶解チャンバ、抽出チャンバ(内部に抽出膜を有する)を含むカートリッジが収容された自動化システムにおける、患者試料中のメチル化DNAの検出のための方法であって:
−患者試料を自動化システムの溶解チャンバ内に導入する工程、
−バイサルファイトを該溶解チャンバ内の該試料に添加し、その後即時に、溶解チャンバ内部で40℃〜60℃の温度で1時間加熱して、DNAを含むライセートを作製する、および該DNAのバイサルファイト変換を行なう工程、
−結合バッファーをDNAを含む該ライセートに添加して結合バッファー/ライセート溶液を生成させる工程、
−該結合バッファー/ライセート溶液を該溶解チャンバから該抽出チャンバに輸送する工程、該抽出チャンバには抽出膜が収容されている、
−該結合バッファー/ライセート溶液を0.001ml/秒〜0.1ml/秒、より好ましくは0.001〜0.0017ml/秒の流速で該抽出膜に通してポンピングすることにより、ライセート由来のDNAを該抽出膜に結合させ、該バイサルファイトを除去して該バイサルファイト、該結合バッファーおよびライセートを除去するとともに、ライセート由来のDNAを該抽出膜上に保持させる工程、
−エタノールを含む洗浄バッファーを0.001ml/秒〜0.1ml/秒の流速で該抽出膜に通してポンピングし、残留しているかもしれない結合バッファー/ライセート溶液(あれば)を除去する工程、
−脱スルホン化バッファーを抽出チャンバに添加し、該脱スルホン化バッファーを0.001ml/秒〜0.1ml/秒、より好ましくは0.001〜0.0017ml/秒の流速で該抽出膜に通してポンピングし、変換済DNAのアルカリ脱スルホン化を行なう工程、
−エタノールを含む洗浄バッファーを該抽出チャンバに添加し、該洗浄バッファーを少なくとも3回のポンピング工程、より好ましくは7回のポンピング工程にて0.001ml/秒〜0.1ml/秒の流速で該抽出膜に通してポンピングし、残留しているかもしれない脱スルホン化バッファー(あれば)を除去する工程、
−空気を0.1ml/秒の流速で該抽出膜に通してポンピングすることにより、エタノールの蒸発を行なう工程、
−溶出バッファーまたは水を0.001ml/秒〜0.1ml/秒の流速で該抽出膜に通してポンピングすることにより、該抽出膜から変換済DNAを溶出させる工程、ならびに
該変換済DNAを該自動化システムで解析する工程
を含む方法に適用される。
【0078】
自動化システム内のカートリッジ内の溶解チャンバの温度は、溶解チャンバの壁面温度を第一選択の特定の温度に調整することにより調節され得る。具体的な一実施形態では、溶解チャンバの壁面温度を、自動化システムのペルチェを40℃まで加熱することにより少なくとも40℃まで上昇させた。ペルチェは、溶解チャンバ(内部の液状物)を加熱するために使用される素子であり、これは溶解チャンバの外面に配置される。壁面温度が40℃の設定は、カートリッジの溶解チャンバ内部の実際の反応温度が溶解チャンバ内部で少なくとも40℃またはさらにはおよそ50℃〜60℃であることを意味する。そのため、本発明の方法では、温度が直接、室温から少なくとも40℃またはイコール40℃の反応温度になる:変換試薬(バイサルファイト)が溶解チャンバ内の患者試料に添加されたら、溶解チャンバ内の反応温度を即座に少なくとも40℃またはさらにはおよそ50〜60℃まで1時間上昇させ、ライセートを作製する、および前記患者試料中の核酸内のシトシン塩基を脱アミノ化する(前記患者試料中のDNAのバイサルファイト変換を行なうため)。Zymo Research EZ DNA Methylation−Lightning(商標)Kitプロトコルには、バイサルファイト変換試薬をDNA試料に添加し、次いで温度を98℃まで8分間、次の工程で54℃まで60分間上昇させると記載されている。そのため、本自動化システムでは、この第1工程、すなわち98℃での加熱が省かれている。あるいはまた、変換試薬(バイサルファイト)が試料の挿入時点で既に溶解チャンバ内に存在している。そのため、患者試料が溶解チャンバ(これには事前に充填された変換試薬(バイサルファイト)が入っている)に添加されたら、溶解チャンバ内の反応温度を即座に少なくとも40℃またはさらにはおよそ50〜60℃まで1時間上昇させ、ライセートを作製する、および前記患者試料中の核酸内のシトシン塩基を脱アミノ化する(前記患者試料中のDNAのバイサルファイト変換を行なうため)。当業者には、本発明のいくつかの工程を別の順序で行なってもよいこと、例えば、結合バッファーは核酸に、該核酸へのバイサルファイト試薬の添加後に行なってもよく、該添加と同時に行なってもよく、該添加の前に行なってもよいことが理解されよう。
【0079】
必要とされる変換試薬容量は溶解チャンバの容積に依存する。具体的な一実施形態では、自動化システム内での流体のポンピングが適正に機能することを確実にするために、700μlの容量の変換試薬(例えば、バイサルファイト試薬)が溶解チャンバにおいて使用される。市販で現在入手可能なZymo Research EZ DNA Methylation−Lightning(商標)Kitでは、20μlのDNA試料に対して130μlの容量の変換試薬が使用される。そのため、本発明の具体的な一実施形態によれば、変換試薬の容量は、このキットと比較して、カートリッジ内でのポンピングシステムの適正な機能発揮を可能にするために自動化システム内の溶解チャンバが充分に満たされるように700μlまで増量する。あるいはまた、必要に応じて(使用される試料に応じて)他の(高)量の容量の変換試薬が溶解チャンバ内の試料に添加され得、例えば、700μl、800μl、900μl、1ml、1100μl、1200μl、1300μl、1400μl、1500μl、1600μl、1700μl、1800μl、1900μl、2ml、2100μl、2200μl、2300μl、2400μl、2500μl、2600μl、2700μl、2800μl、2900μlまたは3mlのバイサルファイト試薬が、自動化システム内に導入された試料に添加され、本発明の方法による核酸/DNAのバイサルファイト変換が行なわれ得る。
【0080】
別の実施形態では、本発明は:
−バイサルファイト、結合バッファーおよび脱スルホン化バッファーを備えた、自動化システムにおける使用のための本発明によるカートリッジと、
−使用のための説明書と
を備えた、自動化システムでバイサルファイト反応を行なうためのキットに関する。
【0081】
また別の実施形態では、本発明は:
−抽出膜を有する抽出チャンバ、バイサルファイト、結合バッファーおよび脱スルホン化バッファーを備えた、自動化システムにおける使用のための本発明によるカートリッジと、
−使用のための説明書と
を備えた、自動化システムでバイサルファイト反応を行なうためのキットを提供する。
【0082】
好ましくは、本発明による方法、カートリッジおよびキットは、診断検査において、例えば、ヒトまたはさらには動物の身体に由来する組織または体液を特定のメチル化パターンの存在についてスクリーニングするため(例えば、細胞増殖性障害の発症リスクを予測するため)に使用される。本発明の方法、検出システム、カートリッジおよびキットならびにこれらの使用は、がんのスクリーニング、早期検出、疾患進行および治療応答の転帰の予測のために実施され得る。
【0083】
クローズ
クローズ1.抽出膜を有する抽出チャンバを備えた自動化システムでの核酸のメチル化状態の検出のための方法であって:
−核酸の供給源を自動化システム内に導入し、バイサルファイトを該核酸に添加し、その後即時に、該核酸の該供給源を40℃〜80℃の温度まで加熱して該核酸を含むライセートを作製する、および前記核酸内に存在している非メチル化シトシン塩基を脱アミノ化させる工程;
−結合バッファーを該ライセートに添加し、結合バッファー/ライセート溶液を生成させる工程;
−該結合バッファー/ライセート溶液を抽出膜に通す制御ポンピングにより、該核酸を該抽出膜に結合させ、該バイサルファイトを除去する工程;
−脱スルホン化バッファーを抽出チャンバに添加し、該脱スルホン化バッファーを該抽出膜に通して制御ポンピングし、先の工程で脱アミノ化された該核酸内の該塩基を脱スルホン化する、および前記塩基をウラシル塩基に変換させる工程、
−変換済核酸を該抽出膜から溶出させる工程;ならびに
該変換済核酸を該自動化システムで解析する工程
を含む方法。
【0084】
クローズ2.以下の工程を含む、クローズ1による、抽出膜を有する抽出チャンバを備えた自動化システムでの核酸のメチル化状態の検出のための方法。
a)核酸の供給源を自動化システム内に導入し、バイサルファイトを該核酸に添加し、その後即時に、該核酸の該供給源を40℃〜80℃の温度まで加熱して該核酸を含むライセートを作製する、および前記核酸内に存在している非メチル化シトシン塩基を脱アミノ化させる工程;
b)結合バッファーを該ライセートに添加し、結合バッファー/ライセート溶液を生成させる工程;
c)該結合バッファー/ライセート溶液を抽出膜に通す制御ポンピングにより、該核酸を該抽出膜に結合させ、該バイサルファイトを除去する工程;
d)脱スルホン化バッファーを抽出チャンバに添加し、該脱スルホン化バッファーを該抽出膜に通して制御ポンピングし、工程a)で脱アミノ化された該核酸内の該塩基を脱スルホン化する、および前記塩基をウラシル塩基に変換させる工程、
e)変換済核酸を該抽出膜から溶出させ;該変換済核酸を該自動化システムで解析する工程
【0085】
クローズ3.該核酸の該供給源の即時の加熱を40℃〜60℃の温度で行う、および/または該制御ポンピングが0.1ml/秒以下の流速で行なわれる、クローズ1または2による方法。
【0086】
クローズ4.工程c)での流速および工程d)での流速が0.001ml/秒〜0.1ml/秒である、クローズ1〜3のいずれか1つによる方法。
【0087】
クローズ5.工程c)での流速と工程d)での流速の少なくとも一方が0.001〜0.0017ml/秒である、クローズ1〜4のいずれか1つによる方法。
【0088】
クローズ6.工程d)での流速が工程c)での流速より遅い、クローズ1〜5のいずれか1つによる方法。
【0089】
クローズ7.核酸の解析が核酸の増幅を含むことを特徴とする、クローズ1〜6のいずれか1つによる方法。
【0090】
クローズ8.核酸内のメチル化シトシン塩基の有無の検出が細胞増殖性障害を示す、クローズ1〜7のいずれか1つによる方法。
【0091】
クローズ9.核酸の供給源がヒト組織試料である、クローズ1〜8のいずれか1つによる方法。
【0092】
クローズ10.抽出膜がシリカ膜、または2つもしくは3つのシリカ膜層を備えた複合膜である、クローズ1〜9のいずれか1つによる方法。
【0093】
クローズ11.クローズ1〜10のいずれか1つの方法による核酸のメチル化状態の検出のためのカートリッジの使用。
【0094】
クローズ12.前記カートリッジが、抽出膜を有する抽出チャンバを備えているクローズ11によるカートリッジの使用。
【0095】
クローズ13.カートリッジが、クローズ1〜10のいずれかによる方法の工程a)〜b)が行なわれる溶解チャンバと、クローズ1〜10による方法の工程c)〜e)が行なわれる抽出チャンバとを備えており、該溶解チャンバと該抽出チャンバの間には、流体を該溶解チャンバから該抽出チャンバに輸送するためのチャネルが存在していることを特徴とする、クローズ11または12によるカートリッジの使用。
【0096】
クローズ14.核酸の供給源中の核酸のメチル化状態の検出のための自動化システムの使用であって、該自動化システムが、クローズ11〜13のいずれかに規定したカートリッジを受け入れるのに適しており、該システムが:
a)バイサルファイトを、該システム内に導入された核酸の供給源に添加し、その後即時に、該核酸の該供給源を40℃〜80℃の温度まで加熱して該核酸を含むライセートを作製する、および前記核酸内に存在している非メチル化シトシン塩基を脱アミノ化させる工程、
b)結合バッファーを、核酸を含む該ライセートに添加し、結合バッファー/ライセート溶液を生成させる工程、
c)該結合バッファー/ライセート溶液を抽出膜に通す制御ポンピングにより、該核酸を該抽出膜に結合させ、該バイサルファイトを除去する工程、
d)脱スルホン化バッファーを抽出チャンバに添加し、該脱スルホン化バッファーを該抽出膜に通して制御ポンピングし、工程a)で脱アミノ化された該核酸内の該塩基を脱スルホン化する、および前記塩基をウラシル塩基に変換させる工程、
e)変換済核酸を該抽出膜から溶出させる工程、ならびに
f)該変換済核酸を解析する工程
を制御するものである、
該自動化システムの使用。
【0097】
クローズ15.該核酸の該供給源の即時の加熱を40℃〜60℃の温度で行う、および/または該制御ポンピングが0.1ml/秒以下の流速で行なわれる、クローズ14によるシステムの使用。
【0098】
クローズ16.核酸の供給源がヒト組織試料である、クローズ14または15によるシステムの使用。
【0099】
クローズ17.
g)バイサルファイト、結合バッファーおよび脱スルホン化バッファーを備えた、自動化システムにおける使用のためのクローズ11〜13のいずれかに規定したカートリッジと、
h)使用のための説明書と
を備えた、自動化システムでバイサルファイト反応を行なうためのキット。
【0100】
以下の実施例は本発明の理解を補助するために示しており、本発明の真の範囲は添付の特許請求の範囲に示されている。
【実施例】
【0101】
実施例
実施例1.Idylla(商標)システムを用いたIdylla(商標)カートリッジ内でのスパイクDNA試料のバイサルファイト変換の実施
開放型のIdylla(商標)カートリッジ(抽出膜が収容されている)の異なる容器を、ZymoResearchのEZ DNA Methylation Lightning Kit(カタログ番号D5031)のバッファーで満たした。カートリッジの容器1には2mlのLightning変換試薬を入れた。容器2には2.5mlのM−結合バッファーを入れた。容器3と4には2mlのM−洗浄バッファーを添加した。ZymoResearchで洗浄バッファーを使用する前に、本発明者らは、24mlの100%エタノールが6mlの洗浄バッファー濃縮液に添加されることが確実になるようにした。カートリッジの容器5には1.5mlのL−脱スルホン化バッファーを入れ、容器6には1.5mlの溶出バッファー(これは、この場合、超純水である)を入れた。5μlの非メチル化DNA(ZymoResearchカタログ番号D5014−1で供給される)とメチル化DNA(Milliporeカタログ番号S7821によって供給される)を、Idylla(商標)カートリッジの溶解チャンバ内でスパイクした。Idylla(商標)システムでバイサルファイト変換プロトコルを行なう際、700μlの変換試薬を溶解チャンバにポンピングした。溶解チャンバ内において、温度を少なくとも40℃まで、ペルチェを加熱することにより上昇させた。壁面温度が40℃の設定は、カートリッジの溶解チャンバ内部の実際の温度がおよそ50℃であることを意味する。DNAと変換試薬を溶解チャンバ内で40℃(壁面温度)にて1時間インキュベートした。インキュベーション後、2mlのM−結合バッファー(容器2)を溶解チャンバにポンピングした。溶解チャンバの内容物をすべて、0.1ml/秒の流速で抽出膜に通してポンピングした。次いで、最初の洗浄工程を、0.2mlのM−洗浄バッファーを容器3から抽出膜に通して40℃の温度で3回ポンピングすることにより実行した。この洗浄工程後、L−脱スルホン化工程を、0.9ml(0.45mlを2回)L−脱スルホン化バッファーを0.0017ml/秒の流速で抽出膜に通して20℃の温度でポンピングすることにより行なった。このL−脱スルホン化工程はおよそ9分間かかる。最後の洗浄工程を、0.3mlの容器4内の洗浄バッファー(合計2.1ml)を0.1ml/秒の流速で抽出膜に通して7回ポンピングすることにより行なった。この最後の洗浄工程後、エタノールの蒸発を、20mlの空気(空気供給口を使用)を0.1ml/秒の流速で該膜(膜の温度は110℃である)に通してポンピングすることにより行なった。混合チャンバへのDNAの溶出を、0.25mlの溶出バッファー(容器6)を0.1ml/秒の流速で該膜に通して添加することにより行なった。
【0102】
実施例2.リアルタイム−PCR(RT−PCR)およびシーケンシングによるバイサルファイト変換の確認
得られた5μlの溶出液を25μlのRT−PCR反応液で、Qiagenによって供給されるバイサルファイト変換体特異的アッセイ(EpitectMethyLight Assay:Hs_ONECUT2.)を用いて、これを製造業者の説明書に従って用いて解析した。図1は、変換済の非メチル化DNAおよびメチル化DNAの両方のリアルタイムPCRの結果を示す。変換済の非メチル化DNAは、BioradにおいてHEXシグナル(バイサルファイト変換済の非メチル化DNAを検出するためのQiagenキットのVIC−プローブ)を有するPCR増幅を示す。変換済のメチル化DNAは、BioradにおいてFAMシグナル(FAMプローブ−バイサルファイト変換済のメチル化DNAを検出するためのQiagenキットのもの)を有する良好なPCR増幅を示す。Qiagenアッセイはバイサルファイト変換済DNAに特異的なアッセイであるため、Idylla(商標)カートリッジ内において存在する変換がなかった場合、PCRは起こり得ない。プライマーおよびプローブが未変換DNAに結合することはあり得ない。
【0103】
また、RT−PCR後に得られたアンプリコンをシーケンシングし、非メチル化シトシンの変換をメチル化シトシンと比較して調べた。図2に示されるように、非メチル化DNAの非メチル化シトシンはすべてチミンに変換され、アンプリコンの配列においてはアデニンとして検出された。
【0104】
実施例3.Idylla(商標)システムを用いたIdylla(商標)カートリッジ内でのFFPE組織試料のバイサルファイト変換の実施
Idylla(商標)カートリッジ(抽出膜が収容されている)の異なる容器を、ZymoResearchのEZ DNA Methylation Lightning Kit(カタログ番号D5031)のバッファーで満たす。カートリッジの容器1には3mlのLightning変換試薬を入れる。容器2には2.5mlのM−結合バッファーを入れる。容器3と4には各々、2mlのM−洗浄バッファーを入れる。ZymoResearchで洗浄バッファーを使用する前に、本発明者らは、24mlの100%エタノールが6mlの洗浄バッファー濃縮液に添加されることが確実になるようにする。カートリッジの容器5には1.5mlのL−脱スルホン化バッファーを入れ、容器6には1.5mlの溶出バッファー(これは、この場合、超純水である)を入れる。結腸直腸がんを有する患者由来のホルマリン固定パラフィン包埋組織のがん試料(これはヒトのがん細胞を含むものである)を導入孔からIdylla(商標)カートリッジの溶解チャンバ内に挿入する。FFPE試料の最初の液状化を、Biocartis独自のバッファーを用いて溶解チャンバ内で行なう(試料調製)。Idylla(商標)システムにおいてバイサルファイト変換プロトコルを行なうため、3mlの変換試薬を溶解チャンバにポンピングする。溶解チャンバ内部の反応温度を50℃〜55℃の温度まで、ペルチェを加熱することにより上昇させ、DNA(FFPE試料由来)と変換試薬を溶解チャンバ内で1時間インキュベートする。インキュベーション後、2mlのM−結合バッファー(容器2)を溶解チャンバにポンピングする。溶解チャンバの内容物をすべて0.0017ml/秒の流速で抽出膜に通してポンピングする。次いで、最初の洗浄工程を、0.2mlのM−洗浄バッファーを容器3から抽出膜に通して40℃の温度で3回ポンピングすることにより実行する。この洗浄工程後、L−脱スルホン化工程を、0.9ml(0.45mlを2回)L−脱スルホン化バッファーを0.0017ml/秒の流速で抽出膜に通して20℃の温度でポンピングすることにより行なう。このL−脱スルホン化工程はおよそ9分間かかる。最後の洗浄工程を、0.3mlの容器4内の洗浄バッファー(合計2.1ml)を0.1ml/秒の流速で抽出膜に通して7回ポンピングすることにより行なう。この最後の洗浄工程後、エタノールの蒸発を、20mlの空気(空気供給口を使用)を0.1ml/秒の流速で該膜(膜の温度は110℃である)に通してポンピングすることにより行なう。混合チャンバへのDNAの溶出を、0.25mlの溶出バッファー(容器6)を0.1ml/秒の流速で該膜に通して添加することにより行なう。
【0105】
本発明の他の実施形態は、本明細書に開示した本発明の明細書および実施を検討すると、当業者には自明であろう。本明細書および実施例は例示にすぎないとみなされ、本発明の真の範囲および趣旨は以下の特許請求の範囲に示されていることを意図する。
図1A
図1B
図2