(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6681423
(24)【登録日】2020年3月25日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】液化ガス気化装置の運転方法
(51)【国際特許分類】
F17C 9/02 20060101AFI20200406BHJP
【FI】
F17C9/02
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-66428(P2018-66428)
(22)【出願日】2018年3月30日
(65)【公開番号】特開2019-178686(P2019-178686A)
(43)【公開日】2019年10月17日
【審査請求日】2019年4月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231235
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】落 猛
(72)【発明者】
【氏名】對馬 臣輔
【審査官】
佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−291324(JP,A)
【文献】
特開2016−080082(JP,A)
【文献】
特開昭50−045317(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2018/0172209(US,A1)
【文献】
国際公開第2016/010478(WO,A1)
【文献】
特開2017−145985(JP,A)
【文献】
中国実用新案第206386687(CN,U)
【文献】
韓国公開特許第10−2018−0029793(KR,A)
【文献】
特開2013−15308(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 9/02
F17C 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温流体槽内の温流体中に浸漬された液化ガス気化配管と、該液化ガス気化配管に液化ガスを供給する液化ガス供給経路と、前記液化ガス気化配管で前記温流体と熱交換して気化した気化ガスを送出する気化ガス送出経路と、前記温流体を加温する温流体加熱流体を前記温流体槽内に供給する加熱流体供給経路と、該加熱流体供給経路に設けられた加熱流体供給弁と、前記気化ガス送出経路に設けられて前記気化ガスの流量を測定する気化ガス流量計と、前記温流体槽内に設けられて前記温流体の温度を測定する温流体温度計とを備えるとともに、該温流体温度計で測定した温流体槽内の温流体の温度に基づいて前記加熱流体供給弁の弁開度を制御する弁開度制御手段とを備えた液化ガス気化装置の運転方法において、前記気化ガス流量計で測定した気化ガスの流量に対応する前記加熱流体供給弁の最小開度及び最大開度をあらかじめ設定し、前記気化ガスの流量が増大したときに、前記加熱流体供給弁の弁開度が前記最小開度より小さいときには、増大した気化ガスの流量に対応した最小開度に切り替え、前記気化ガスの流量が減少したときに、前記加熱流体供給弁の弁開度が前記最大開度より大きいときには、減少した気化ガスの流量に対応した最大開度に切り替えることを特徴とする液化ガス気化装置の運転方法。
【請求項2】
温流体槽内の温流体中に浸漬された液化ガス気化配管と、該液化ガス気化配管に液化ガスを供給する液化ガス供給経路と、前記液化ガス気化配管で前記温流体と熱交換して気化した気化ガスを送出する気化ガス送出経路と、前記温流体を加温する温流体加熱流体を前記温流体槽内に供給する加熱流体供給経路と、該加熱流体供給経路に設けられた加熱流体供給弁と、前記液化ガス供給経路に設けられて前記液化ガスの流量を測定する液化ガス流量計と、前記温流体槽内に設けられて前記温流体の温度を測定する温流体温度計とを備えるとともに、該温流体温度計で測定した温流体槽内の温流体の温度に基づいて前記加熱流体供給弁の弁開度を制御する弁開度制御手段とを備えた液化ガス気化装置の運転方法において、前記液化ガス流量計で測定した液化ガスの流量に対応する前記加熱流体供給弁の最小開度及び最大開度をあらかじめ設定し、前記液化ガスの流量が増大したときに、前記加熱流体供給弁の弁開度が前記最小開度より小さいときには、増大した液化ガスの流量に対応した最小開度に切り替え、前記液化ガスの流量が減少したときに、前記加熱流体供給弁の弁開度が前記最大開度より大きいときには、減少した液化ガスの流量に対応した最大開度に切り替えることを特徴とする液化ガス気化装置の運転方法。
【請求項3】
温流体槽内の温流体中に浸漬された液化ガス気化配管と、該液化ガス気化配管に液化ガスを供給する液化ガス供給経路と、前記液化ガス気化配管で前記温流体と熱交換して気化した気化ガスを送出する気化ガス送出経路と、前記温流体を加温する温流体加熱流体を前記温流体槽内に供給する加熱流体供給経路と、該加熱流体供給経路に設けられた加熱流体流量制御器と、前記液化ガス供給経路に設けられて前記液化ガスの流量を測定する液化ガス流量計と、前記温流体槽内に設けられて前記温流体の温度を測定する温流体温度計とを備えるとともに、該温流体温度計で測定した温流体槽内の温流体の温度に基づいて前記加熱流体流量制御器の流量設定値を制御する流量制御手段とを備えた液化ガス気化装置の運転方法において、前記液化ガス流量計で測定した液化ガスの流量に対応する前記加熱流体流量制御器の最小流量及び最大流量をあらかじめ設定し、前記液化ガスの流量が増大したときに、前記加熱流体流量制御器の設定流量が前記最小流量より小さいときには、増大した液化ガスの流量に対応した最小流量に切り替え、前記液化ガスの流量が減少したときに、前記加熱流体流量制御器の設定流量が前記最大流量より大きいときには、減少した液化ガスの流量に対応した最大流量に切り替えることを特徴とする液化ガス気化装置の運転方法。
【請求項4】
温流体槽内の温流体中に浸漬された液化ガス気化配管と、該液化ガス気化配管に液化ガスを供給する液化ガス供給経路と、前記液化ガス気化配管で前記温流体と熱交換して気化した気化ガスを送出する気化ガス送出経路と、前記温流体を加温する温流体加熱流体を前記温流体槽内に供給する加熱流体供給経路と、該加熱流体供給経路に設けられた加熱流体流量制御器と、前記気化ガス送出経路に設けられて前記気化ガスの流量を測定する気化ガス流量計と、前記温流体槽内に設けられて前記温流体の温度を測定する温流体温度計とを備えるとともに、該温流体温度計で測定した温流体槽内の温流体の温度に基づいて前記加熱流体流量制御器の流量設定値を制御する流量制御手段とを備えた液化ガス気化装置の運転方法において、前記気化ガス流量計で測定した気化ガスの流量に対応する前記加熱流体流量制御器の最小流量及び最大流量をあらかじめ設定し、前記気化ガスの流量が増大したときに、前記加熱流体流量制御器の設定流量が前記最小流量より小さいときには、増大した気化ガスの流量に対応した最小流量に切り替え、前記気化ガスの流量が減少したときに、前記加熱流体流量制御器の設定流量が前記最大流量より大きいときには、減少した気化ガスの流量に対応した最大流量に切り替えることを特徴とする液化ガス気化装置の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化ガス気化装置の運転方法に関し、詳しくは、低温液化ガスを気化用温流体により加温して気化させ、気化したガスを使用先に供給する液化ガス気化装置における気化用温流体を加熱する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、比較的大量のガス、例えば酸素、窒素等のガスを使用する設備では、低温液化ガス貯槽内に充填した液化酸素や液化窒素等の低温液化ガスを液化ガス気化装置で気化させて使用している。液化ガス気化装置としては、低温液化ガスを気化させる熱源として、高温、高圧のスチームで加温した温水と伝熱コイル内に供給される低温液化ガスとを熱交換させる温水式液化ガス気化装置が広く用いられている。この温水式液化ガス気化装置の運転方法としては、温水式液化ガス気化装置で気化して送出される製品ガスの流量あるいは温水式液化ガス気化装置に供給される液化ガスの流量を測定するとともに、水槽内の温水の温度を測定し、測定した流量と温度とに基づいてスチーム供給弁を開閉制御する方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−291324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、製品ガスの流量あるいは液化ガスの流量が少量の状態から急激に増大した場合、水槽内の温水がほとんど静止した状態になっているため、液化ガスを気化させるための伝熱コイル周辺の温度は急激に低下するが、水槽外周部の温水の温度変化は緩慢である。温水の温度測定を行う温度計は、一般的に、伝熱コイルから離れた位置に設置されている場合が多く、水槽外周部の温水温度を検出している。このため、温水の温度低下を即座に検出できないことから、温水加熱源となるスチームの供給に遅延が生じ、気化ガスの温度及び圧力に大きな変動が生じることがある。
【0005】
温度計の位置を伝熱コイルに近づければ、温度測定誤差を小さくすることはできるが、伝熱コイル周辺の温水が低温となる領域は非常に狭いため、温度計を伝熱コイルに近接させる必要があるが、伝熱コイルに温度計が接触してしまった場合、伝熱コイル内の冷流体側の温度を測定してしまうことになる。したがって、温度計の最適な設置位置を決定することは困難であった。また、自動制御として一般的に用いられているPID制御による水槽内の温水の温度制御は、一般的に制御遅れが生じやすく、水槽内の温水温度が±20℃以上で変動する場合もある。温水温度の変動は、気化ガス温度の低下だけではなく、過度な温度上昇を引き起こすことがある。製品ガス使用先のプロセスによっては、一定温度以下の気化ガスが必要な場合があり、この製品ガスの温度上昇は望ましいものではない。
【0006】
そこで本発明は、送出する気化ガスや原料となる液化ガスの流量が大きく変動した場合でも、安定した状態で気化ガスを使用先に送出することができる液化ガス気化装置の運転方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の液化ガス気化装置の運転方法における第1の構成は、温流体槽内の温流体中に浸漬された液化ガス気化配管と、該液化ガス気化配管に液化ガスを供給する液化ガス供給経路と、前記液化ガス気化配管で前記温流体と熱交換して気化した気化ガスを送出する気化ガス送出経路と、前記温流体を加温する温流体加熱流体を前記温流体槽内に供給する加熱流体供給経路と、該加熱流体供給経路に設けられた加熱流体供給弁と、前記気化ガス送出経路に設けられて前記気化ガスの流量を測定する気化ガス流量計と、前記温流体槽内に設けられて前記温流体の温度を測定する温流体温度計とを備えるとともに、該温流体温度計で測定した温流体槽内の温流体の温度に基づいて前記加熱流体供給弁の弁開度を制御する弁開度制御手段とを備えた液化ガス気化装置の運転方法において、前記気化ガス流量計で測定した気化ガスの流量に対応する前記加熱流体供給弁の最小開度及び最大開度をあらかじめ設定し、前記気化ガスの流量が増大したときに、前記加熱流体供給弁の弁開度が前記最小開度より小さいときには、増大した気化ガスの流量に対応した最小開度に切り替え、前記気化ガスの流量が減少したときに、前記加熱流体供給弁の弁開度が前記最大開度より大きいときには、減少した気化ガスの流量に対応した最大開度に切り替えることを特徴としている。
【0008】
また、本発明の液化ガス気化装置の運転方法における第2の構成は、温流体槽内の温流体中に浸漬された液化ガス気化配管と、該液化ガス気化配管に液化ガスを供給する液化ガス供給経路と、前記液化ガス気化配管で前記温流体と熱交換して気化した気化ガスを送出する気化ガス送出経路と、前記温流体を加温する温流体加熱流体を前記温流体槽内に供給する加熱流体供給経路と、該加熱流体供給経路に設けられた加熱流体供給弁と、前記液化ガス供給経路に設けられて前記液化ガスの流量を測定する液化ガス流量計と、前記温流体槽内に設けられて前記温流体の温度を測定する温流体温度計とを備えるとともに、該温流体温度計で測定した温流体槽内の温流体の温度に基づいて前記加熱流体供給弁の弁開度を制御する弁開度制御手段とを備えた液化ガス気化装置の運転方法において、前記液化ガス流量計で測定した液化ガスの流量に対応する前記加熱流体供給弁の最小開度及び最大開度をあらかじめ設定し、前記液化ガスの流量が増大したときに、前記加熱流体供給弁の弁開度が前記最小開度より小さいときには、増大した液化ガスの流量に対応した最小開度に切り替え、前記液化ガスの流量が減少したときに、前記加熱流体供給弁の弁開度が前記最大開度より大きいときには、減少した液化ガスの流量に対応した最大開度に切り替えることを特徴としている。
【0009】
さらに、本発明の液化ガス気化装置の運転方法における第3の構成は、温流体槽内の温流体中に浸漬された液化ガス気化配管と、該液化ガス気化配管に液化ガスを供給する液化ガス供給経路と、前記液化ガス気化配管で前記温流体と熱交換して気化した気化ガスを送出する気化ガス送出経路と、前記温流体を加温する温流体加熱流体を前記温流体槽内に供給する加熱流体供給経路と、該加熱流体供給経路に設けられた加熱流体流量制御器と、前記液化ガス供給経路に設けられて前記液化ガスの流量を測定する液化ガス流量計と、前記温流体槽内に設けられて前記温流体の温度を測定する温流体温度計とを備えるとともに、該温流体温度計で測定した温流体槽内の温流体の温度に基づいて前記加熱流体流量制御器の流量設定値を制御する流量制御手段とを備えた液化ガス気化装置の運転方法において、前記液化ガス流量計で測定した液化ガスの流量に対応する前記加熱流体流量制御器の最小流量及び最大流量をあらかじめ設定し、前記液化ガスの流量が増大したときに、前記加熱流体流量制御器の設定流量が前記最小流量より小さいときには、増大した液化ガスの流量に対応した最小流量に切り替え、前記液化ガスの流量が減少したときに、前記加熱流体流量制御器の設定流量が前記最大流量より大きいときには、減少した液化ガスの流量に対応した最大流量に切り替えることを特徴としている。
【0010】
また、本発明の液化ガス気化装置の運転方法における第4の構成は、温流体槽内の温流体中に浸漬された液化ガス気化配管と、該液化ガス気化配管に液化ガスを供給する液化ガス供給経路と、前記液化ガス気化配管で前記温流体と熱交換して気化した気化ガスを送出する気化ガス送出経路と、前記温流体を加温する温流体加熱流体を前記温流体槽内に供給する加熱流体供給経路と、該加熱流体供給経路に設けられた加熱流体流量制御器と、前記気化ガス送出経路に設けられて前記気化ガスの流量を測定する気化ガス流量計と、前記温流体槽内に設けられて前記温流体の温度を測定する温流体温度計とを備えるとともに、該温流体温度計で測定した温流体槽内の温流体の温度に基づいて前記加熱流体流量制御器の流量設定値を制御する流量制御手段とを備えた液化ガス気化装置の運転方法において、前記気化ガス流量計で測定した気化ガスの流量に対応する前記加熱流体流量制御器の最小流量及び最大流量をあらかじめ設定し、前記気化ガスの流量が増大したときに、前記加熱流体流量制御器の設定流量が前記最小流量より小さいときには、増大した気化ガスの流量に対応した最小流量に切り替え、前記気化ガスの流量が減少したときに、前記加熱流体流量制御器の設定流量が前記最大流量より大きいときには、減少した気化ガスの流量に対応した最大流量に切り替えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の液化ガス気化装置の運転方法によれば、気化ガスや液化ガスの流量が増大したときに、増大後の気化ガス流量に応じて加熱流体の流量を速やかに増大させることができるので、温流体温度計で測定する温流体の温度変化によって加熱流体の流量を増大させる場合に比べて短時間で加熱流体の流量を増大させることができる。これにより、温流体槽内の温流体を速やかに加熱できるとともに、加熱された温流体が温流体槽内で対流するので、温流体槽内の温流体の温度が均一化し、温流体温度計で温流体の温度変化を正確に測定することができ、温流体温度計で測定した温流体槽内の温流体の温度に基づく制御に速やかに移行することができる。また、気化ガスや液化ガスの流量が減少したときに、加熱流体の流量を速やかに減少させることができるので、温流体の温度を速やかに下げることができ、送出する気化ガスの温度上昇を抑えることができる。これにより、送出する気化ガスの温度及び圧力に大きな変動が生じることがなくなり、安定した状態で気化ガスを送出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の運転方法の第1形態例を実施可能な液化ガス気化装置の一例を示す系統図である。
【
図2】第1形態例における気化ガスの流量と加熱流体供給弁の弁開度との関係を示す説明図である。
【
図3】本発明の運転方法を実施可能な液化ガス気化装置の第2形態例を示す系統図である。
【
図4】第2形態例における液化ガスの流量と加熱流体供給弁の弁開度との関係を示す説明図である。
【
図5】本発明の運転方法を実施可能な液化ガス気化装置の第3形態例を示す系統図である。
【
図6】第3形態例における液化ガス又は気化ガスの流量と加熱流体流量制御器の設定流量との関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1及び
図2は本発明の液化ガス気化装置の運転方法の第1形態例を示しており、
図1は、本発明の運転方法の第1形態例を実施可能な液化ガス気化装置の系統図である。本形態例に示す液化ガス気化装置は、気化ガスを一定圧力で送出する構成を有しており、温流体、例えば温水を貯留した温流体槽11と、該温流体槽11内の温流体中に浸漬されたコイル状の液化ガス気化配管12と、該液化ガス気化配管12に液化ガスを供給する液化ガス供給経路13と、前記液化ガス気化配管12で前記温流体と熱交換して気化した気化ガスを送出する気化ガス送出経路14と、前記温流体を加温するための温流体加熱流体、例えば高圧蒸気を前記温流体槽11内に供給する加熱流体供給経路15と、該加熱流体供給経路15に設けられた加熱流体供給弁16と、前記気化ガス送出経路14に設けられて前記気化ガスの流量を測定する気化ガス流量計(FI)17と、前記温流体槽11内に設けられて前記温流体の温度を測定する温流体温度計18とを備えるとともに、該温流体温度計18で測定した温流体槽11内の温流体の温度に基づいて前記加熱流体供給弁16の弁開度を制御する温度制御手段(温度指示調節計(TIC))19と、気化ガス送出経路14から送出する気化ガスの圧力を、流量変動に関係なく一定に保つための圧力指示調節計(PIC)20とを備えるとともに、気化ガス流量計17で測定した気化ガスの流量に応じて前記温度制御手段19に変更信号を出力する変更信号発生手段(FX)21とを備えている。
【0014】
一定範囲内の流量で気化ガスを送出している通常の運転状態では、温流体温度計18で測定した温流体槽11内の温流体の温度に基づいて温度制御手段19が作動し、加熱流体供給弁16の弁開度を制御する。すなわち、温流体の温度が下がったときには加熱流体供給弁16を開弁方向に制御し、温流体の温度が上がったときには加熱流体供給弁16を閉弁方向に制御することにより、温流体の温度を一定の範囲内に保持し、気化ガスを一定範囲内の圧力及び一定範囲内の温度で送出している。
【0015】
そして、気化ガス流量計17で測定した気化ガスの流量が、通常の流量増減範囲に比べて短時間で大きく増減した場合には、気化ガス流量計17で測定した増減後の気化ガスの流量に応じて変更信号発生手段21が作動する。変更信号発生手段21には、
図2に示すように、気化ガスの流量に対応する加熱流体供給弁16の最小開度及最大開度があらかじめ設定されており、気化ガスの流量変動量に基づいて変更信号発生手段21から温度制御手段19に変更信号が送出される。
【0016】
例えば、
図2において、気化ガス流量F1、弁開度V1で運転中の状態で、気化ガス流量が流量F2に増大したときには、変更信号発生手段21から温度制御手段19に加熱流体供給弁16の弁開度を、増大後の流量F2に対応した最小開度である弁開度V2に切り替える信号が出力され、温度制御手段19が作動して加熱流体供給弁16の弁開度を弁開度V2に切り替え、加熱流体供給経路15から温流体槽11内に供給する温流体加熱流体を増量する。
【0017】
これにより、温流体槽11内の温流体を速やかに加熱でき、液化ガス気化配管12で液化ガスを十分に気化させることができ、気化ガス量が不足したり、気化ガスの温度が低下したりすることがなく、安定した状態で気化ガスを送出することができる。さらに、加熱流体供給経路15から供給される温流体加熱流体による温流体槽11内の温流体の撹拌及び温流体槽11内における加熱された温流体の対流により、温流体槽11内の温流体の温度が均一化し、温流体温度計18で温流体の温度変化を正確に測定することができ、温流体温度計18で測定した温流体槽11内の温流体の温度に基づく温度制御手段19による最大開度と最小開度との間の通常状態の制御に速やかに移行することができる。
【0018】
一方、
図2において、流量F3、弁開度V3で運転中の状態で、気化ガスの流量Fが流量F4に減少したときには、変更信号発生手段21から温度制御手段19に加熱流体供給弁16の弁開度を、減少後の流量F4に対応した最大開度である弁開度V4に切り替える信号が出力され、温度制御手段19が作動して加熱流体供給弁16の弁開度を弁開度V4に切り替え、加熱流体供給経路15から温流体槽11内に供給する温流体加熱流体を減少させる。
【0019】
これにより、温流体槽11内の温流体の温度を速やかに低下させることができ、液化ガス気化配管12での液化ガスの加熱量を低くでき、気化ガス量が過剰になって圧力が上昇したり、気化ガスの温度が上昇したりすることがなく、安定した状態で気化ガスを送出することができる。また、温流体槽11内には、温流体加熱流体が継続して供給されているので、温流体加熱流体による温流体槽11内の温流体の撹拌効果が失われることはなく、温流体槽11内の温流体の温度の均一化によって温流体温度計18で測定した温流体槽11内の温流体の温度に基づく温度制御手段19による通常状態の制御に速やかに移行することができる。
【0020】
図3及び
図4は本発明の液化ガス気化装置の運転方法の第2形態例を示しており、
図3は、本発明の運転方法の第2形態例を実施可能な液化ガス気化装置の系統図である。なお、以下の説明において、前記第1形態例に示した液化ガス気化装置の運転方法の構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0021】
本形態例に示す液化ガス気化装置は、加熱流体供給弁16の弁開度を切り替えるための検出手段として、前記第1形態例における気化ガス流量計で測定した気化ガスの流量に代えて、液化ガス供給経路13に設けた液化ガス流量計31で測定した液化ガスの流量変化を利用している。すなわち、液化ガス流量計31で測定した液化ガスの流量変化に基づいて前記温度制御手段19に変更信号を出力する変更信号発生手段(FX)21を備えている。
【0022】
前述のように、通常の運転状態で一定範囲内の流量で気化ガスを送出し、気化ガスの原料となる液化ガスの流量が一定範囲内で変動しているときには、温流体温度計18で測定した温流体槽11内の温流体の温度に基づいて温度制御手段19が作動し、加熱流体供給弁16の弁開度を制御している。
【0023】
液化ガス流量計31で測定した液化ガスの流量が、通常の流量増減範囲に比べて短時間で大きく増減した場合には、液化ガス流量計31で測定した増減後の液化ガスの流量に応じて変更信号発生手段21が作動する。変更信号発生手段21には、
図4に示すように、液化ガスの流量に対応する加熱流体供給弁16の最小開度及最大開度があらかじめ設定されており、液化ガスの流量変動量に基づいて変更信号発生手段21から温度制御手段19に変更信号が送出される。
【0024】
例えば、
図4において、液化ガス流量F1、弁開度V1で運転中の状態で、液化ガス流量が流量F2に増大したときには、変更信号発生手段21から温度制御手段19に加熱流体供給弁16の弁開度を、増大後の流量F2に対応した最小開度である弁開度V2に変更する信号が出力され、温度制御手段19が作動して加熱流体供給弁16の弁開度を弁開度V2に切り替え、加熱流体供給経路15から温流体槽11内に供給する温流体加熱流体を増量する。
【0025】
これにより、温流体槽11内の温流体を速やかに加熱でき、液化ガス気化配管12で液化ガスを十分に気化させることができ、気化ガス量が不足したり、気化ガスの温度が低下したりすることがなく、安定した状態で気化ガスを送出することができる。さらに、加熱流体供給経路15から供給される温流体加熱流体による温流体槽11内の温流体の撹拌及び温流体槽11内における加熱された温流体の対流により、温流体槽11内の温流体の温度が均一化し、温流体温度計18で温流体の温度変化を正確に測定することができ、温流体温度計18で測定した温流体槽11内の温流体の温度に基づく温度制御手段19による通常状態の制御に速やかに移行することができる。
【0026】
一方、
図4において、流量F3、弁開度V3で運転中の状態で、液化ガスの流量が流量F4に減少したときには、変更信号発生手段21から温度制御手段19に加熱流体供給弁16の弁開度を、減少後の流量F4に対応した最大開度である弁開度V4に変更する信号が出力され、温度制御手段19が作動して加熱流体供給弁16の弁開度を弁開度V4に切り替え、加熱流体供給経路15から温流体槽11内に供給する温流体加熱流体を減少させる。
【0027】
これにより、温流体槽11内の温流体の温度を速やかに低下させることができ、液化ガス気化配管12での液化ガスの加熱量を低くでき、気化ガス量が過剰になって圧力が上昇したり、気化ガスの温度が上昇したりすることがなく、安定した状態で気化ガスを送出することができる。また、温流体槽11内には、温流体加熱流体が継続して供給されているので、温流体加熱流体による温流体槽11内の温流体の撹拌効果が失われることはなく、温流体槽11内の温流体の温度の均一化によって温流体温度計18で測定した温流体槽11内の温流体の温度に基づく温度制御手段19による通常状態の制御に速やかに移行することができる。
【0028】
図5及び
図6は本発明の液化ガス気化装置の運転方法の第3形態例を示しており、
図5は、本発明の運転方法の第3形態例を実施可能な液化ガス気化装置の系統図である。
【0029】
本形態例に示す液化ガス気化装置は、通常運転時における温流体加熱流体の流量を制御する手段として、温流体温度計18で測定した温流体槽11内の温流体の温度に基づいて弁開度制御信号を発生する前記同様の温度制御手段19と、液化ガス流量計31で測定した液化ガスの流量に基づいて変更信号を発生する前記同様の変更信号発生手段21と、温度制御手段19弁開度制御信号と変更信号発生手段21からの変更信号とに基づいて流量制御信号を発生する流量制御信号発生手段(FY)41と、流量制御信号発生手段41からの流量制御信号と加熱流体供給経路15を流れる温流体加熱流体の流量とに応じて加熱流体供給弁16の弁開度を制御することにより流量を調節する流量指示調節計(IFC)42とを備えている。
【0030】
通常の運転状態において、温流体槽11内の温流体の温度が低下したときには、温度制御手段19から弁開度を開弁方向に制御する信号が出力され、この弁開度信号が流量制御信号発生手段41にて温流体加熱流体の流量を増加方向に制御する流量信号に変換され、この流量制御信号発生手段41からの流量信号によって設定された新たな流量設定値と、流量計測部42aで計測した現時点での加熱流体供給経路15の温流体加熱流体の流量とに基づいて、流量指示調節計42が加熱流体供給弁16を開弁方向に制御することにより、温流体加熱流体の流量が、新たな流量設定値で設定された流量に増加して温流体槽11内の温流体の温度を上昇させる。
【0031】
また、温流体槽11内の温流体の温度が上昇したときには、温度制御手段19、流量制御信号発生手段41及び流量指示調節計42が、温流体温度上昇に対応して作動し、流量指示調節計42が加熱流体供給弁16を閉弁方向に制御することにより、温流体加熱流体の流量が減少して温流体槽11内の温流体の温度を低下させる。
【0032】
このように、温流体槽11内の温流体の温度変化に応じて温流体加熱流体の流量を増減させることにより、前記第1形態例及び第2形態例と同様に、気化ガスの使用量に応じて温流体槽11内の温流体の温度を一定範囲に制御することができ、気化ガス送出経路14から一定圧力、一定温度の気化ガスを送出することができる。
【0033】
液化ガス流量計31で測定した液化ガスの流量が、通常の流量増減範囲に比べて短時間で大きく増減した場合には、液化ガス流量計31で測定した増減後の液化ガスの流量に応じて変更信号発生手段21が作動する。変更信号発生手段21には、
図6に示すように、液化ガスの流量に対応する温流体加熱流体の最小流量及び最大流量があらかじめ設定されており、液化ガスの流量変動量に基づいて変更信号発生手段21から温度制御手段19に、最小流量又は最大流量に対応させてそれぞれ設定されている変更信号が送出される。
【0034】
例えば、
図6において、液化ガス流量F1、温流体加熱流体流量R1で運転中の状態で、液化ガス流量が流量F2に増大したときには、温度制御手段19から温流体槽11内の温流体の温度に応じた弁開度制御信号が流量制御信号発生手段41に出力されるとともに、変更信号発生手段21から増大後の液化ガス流量F2に対応した変更信号が流量制御信号発生手段41に出力される。流量制御信号発生手段41では、ほとんど変化がない温度制御手段19からの弁開度制御信号を無視し、弁開度の変更量が大きな変更信号発生手段21からの変更信号を、増大後の液化ガス流量F2に対応した最小流量である温流体加熱流体流量R2に変換し、これを新たな流量設定値として流量指示調節計42に出力する。流量指示調節計42は、流量計測部42aで計測した温流体加熱流体流量が新たな流量設定値である温流体加熱流体流量R2になるように、加熱流体供給弁16を開弁方向に調節する。
【0035】
これにより、温流体加熱流体の流量が、液化ガスの流量F2に対応した最小流量R2に増加し、温流体槽11内の温流体を速やかに加熱でき、液化ガス気化配管12で液化ガスを十分に気化させることができ、気化ガス量が不足したり、気化ガスの温度が低下したりすることがなく、安定した状態で気化ガスを送出することができる。さらに、加熱流体供給経路15から供給される温流体加熱流体による温流体槽11内の温流体の撹拌及び温流体槽11内における加熱された温流体の対流により、温流体槽11内の温流体の温度が均一化し、温流体温度計18で温流体の温度変化を正確に測定することができ、温流体温度計18で測定した温流体槽11内の温流体の温度に基づく温度制御手段19による通常状態の制御に速やかに移行することができる。
【0036】
一方、
図6において、液化ガス流量F3、温流体加熱流体流量R3で運転中の状態で、液化ガス流量が流量F4に減少したときには、温度制御手段19から温流体槽11内の温流体の温度に応じた弁開度制御信号が流量制御信号発生手段41に出力されるとともに、変更信号発生手段21から減少後の液化ガス流量F4に対応した変更信号が流量制御信号発生手段41に出力される。流量制御信号発生手段41では、弁開度の変更量が大きな変更信号発生手段21からの変更信号を、減少後の液化ガス流量F4に対応した最小流量である温流体加熱流体流量R4に変換し、これを新たな流量設定値として流量指示調節計42に出力する。流量指示調節計42は、流量計測部42aで計測した温流体加熱流体流量が新たな流量設定値である温流体加熱流体流量R4になるように、加熱流体供給弁16を開弁方向に調節する。
【0037】
これにより、温流体槽11内の温流体の温度を速やかに低下させることができ、液化ガス気化配管12での液化ガスの加熱量を低くでき、気化ガス量が過剰になって圧力が上昇したり、気化ガスの温度が上昇したりすることがなく、安定した状態で気化ガスを送出することができる。また、温流体槽11内には、温流体加熱流体が継続して供給されているので、温流体加熱流体による温流体槽11内の温流体の撹拌効果が失われることはなく、温流体槽11内の温流体の温度の均一化によって温流体温度計18で測定した温流体槽11内の温流体の温度に基づく通常状態の制御に速やかに移行することができる。さらに、本形態例においては、液化ガス流量計31に代えて、
図5に想像線で示す気化ガス流量計17を用いることもできる。
【0038】
以上説明したように、液化ガスや気化ガスの大きな流量変動に対して温流体槽11内の温流体の温度を速やかに上昇又は低下させることができるので、小流量から大流量までの広い運転範囲に対応することができる。また、温流体槽11内の温流体の温度が上昇又は低下して加熱流体供給弁16の開度が最大開度と最小開度との間になったとき、あるいは、温流体加熱流体の流量が最大流量と最小流量との間になったときには、温流体温度計18で測定した温流体槽11内の温流体の温度に基づく通常の制御状態に戻るので、気化ガスの圧力や温度を所定範囲内に保った状態で気化ガスを使用先に安定して送出することができる。また、緊急用ガス供給装置に使用する場合、通常時は気化ガスや液化ガスの流量がゼロの状態となっており、温流体槽11内の温流体は静止した状態になっているため、温流体温度計18による温流体温度に基づいた温度制御手段19によるPID制御では、大幅な遅れを生じることがあるが、各形態例に示すように、気化ガスや液化ガスの送出が始まった時点で温流体加熱流体の供給を開始して温流体槽11内の温流体を即時に加温、撹拌できるので、緊急用に大量の気化ガスを送出する必要がある場合に特に適している。
【0039】
なお、温流体加熱流体は、通常は高圧蒸気が用いられるが、温流体の温度範囲に応じて水蒸気、海水、水などを使用することができ、温流体と温流体加熱流体とを間接熱交換させて温流体の温度を調節することもできる。
【符号の説明】
【0040】
11…温流体槽、12…液化ガス気化配管、13…液化ガス供給経路、14…気化ガス送出経路、15…加熱流体供給経路、16…加熱流体供給弁、17…気化ガス流量計(FI)、18…温流体温度計、19…温度制御手段(TIC)、20…圧力指示調節計(PIC)、21…変更信号発生手段(FX)、31…液化ガス流量計、41…流量制御信号発生手段、42…流量指示調節計、42a…流量計測部