特許第6681424号(P6681424)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6681424
(24)【登録日】2020年3月25日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】ピン径判別治具及びピン径判別方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 43/00 20060101AFI20200406BHJP
【FI】
   H01R43/00 Z
【請求項の数】7
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-70624(P2018-70624)
(22)【出願日】2018年4月2日
(65)【公開番号】特開2019-185848(P2019-185848A)
(43)【公開日】2019年10月24日
【審査請求日】2019年6月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 光明
(72)【発明者】
【氏名】稲見 尚人
【審査官】 鈴木 重幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−141036(JP,A)
【文献】 特開2001−035624(JP,A)
【文献】 特開2009−272116(JP,A)
【文献】 特開2006−242676(JP,A)
【文献】 特開2011−129436(JP,A)
【文献】 特開平09−045450(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0057676(US,A1)
【文献】 韓国登録実用新案第20−0477422(KR,Y1)
【文献】 特開平11−312699(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R43/00−43/28
H05K 3/30
H05K13/00−13/08
G01R 1/06− 1/073
G01R31/02−31/06
G01B 5/00− 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導通検査治具の導通ピンのピン径を判別するコイルバネと、
前記コイルバネを一体に結合した把持部と、
を備えたことを特徴とするピン径判別治具。
【請求項2】
請求項1記載のピン径判別治具であって、
前記コイルバネの先端部に螺旋状に外側に拡径するテーパ部を設けたことを特徴とするピン径判別治具。
【請求項3】
請求項1記載のピン径判別治具であって、
前記把持部の両側にそれぞれ径の異なるコイルバネを一体に結合したことを特徴とするピン径判別治具。
【請求項4】
請求項3記載のピン径判別治具であって、
前記導通ピンの外径をφP、前記把持部の一方の側の大径のコイルバネの内径をφA、前記把持部の他方の側の小径のコイルバネの内径をφBとした場合に、φA≧φP>φBの関係となることを特徴とするピン径判別治具。
【請求項5】
請求項4記載のピン径判別治具であって、
前記把持部の両側の外径を異なるコイルバネの径に合わせてそれぞれ異ならせて形成したことを特徴とするピン径判別治具。
【請求項6】
請求項5記載のピン径判別治具であって、
前記把持部の両側を分割形成し、かつ、着脱自在にし、
前記分割形成した一方の分割体に異なる径の前記大径のコイルバネを一体に結合し、
前記分割形成した他方の分割体に異なる径の前記小径のコイルバネを一体に結合したことを特徴とするピン径判別治具。
【請求項7】
導通検査治具の導通ピンのピン径を判別するコイルバネと、前記コイルバネを一体に結合した把持部と、を備え、前記把持部の両側にそれぞれ径の異なるコイルバネを一体に結合したピン径判別治具を用いて導通検査治具の導通ピンのピン径を判別するピン径判別方法であって、
前記導通ピンの外径をφP、前記ピン径判別治具の把持部の一方の側の大径のコイルバネの内径をφA、前記把持部の他方の側の小径のコイルバネの内径をφBとした場合に、
前記導通ピンの外径φPと前記大径のコイルバネの内径φAと前記小径のコイルバネの内径φBの関係がφA≧φP>φBの場合は、前記導通ピンが適正品であると判別し、
φA>φP<φB及びφA<φP>φBの場合は、前記導通ピンが不適正品であると判別することを特徴とするピン径判別方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導通検査治具に使用される導通ピンの先端径を判別するピン径判別治具及びピン径判別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両内に配索されて各種電子機器等の接続に用いられるワイヤハーネスは、コネクタハウジングに収容される端子が端末に設けられた複数の電線を有している。そして、このようなワイヤハーネスに対して、電線の断線や端子の接続不良等を検出するための導通検査が行われる。
【0003】
導通検査は、複数の電線の端末に接続された端子の数の複数の導通ピンを有した導通検査治具を用い、この導通検査治具の各導通ピンを雌コネクタハウジングの複数の端子収容室内に収容されている各雌端子と接触させることで行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−13195号公報
【特許文献2】特開2016−57296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記導通検査治具の複数の導通ピンによる導通検査の際に、雌端子の大きさに合った先端径の導通ピンを使用しなければ端子変形の原因となるため、適正な先端径の導通ピンが使用されている導通検査治具であるかどうか、即ち、導通検査治具が適正品か否かのチェックをする必要があるが、導通ピンの先端径を判別する具体的な手段や手法はなく、例えば、ノギス等の測定機器や筒状の部品を代用して対応していた。
【0006】
しかしながら、未完成状態の導通検査治具に組み付けた導通ピンをノギス等の測定機器で1本毎測定しようとしても、複数の導通ピン間のピッチが小さくて測定が困難であり、また、筒状の部品で測定するために導通ピンの先端に押し込もうとした場合、誤って導通ピンを変形させたり、破損させる恐れがあり、適正品であるか否かの判別に時間と熟練を要した。
【0007】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、導通検査治具の導通ピンのピン径を簡単かつ短時間で正確に判別することができるピン径判別治具及びピン径判別方法を提供することを目的とする。詳述すると、導通検査治具に使用する導通ピンが誤って、異なる先端径の導通ピンが取り付けられた際(製造時、受入時、メンテナンス時等)に、ピン径の違いを容易に確認させることで、導通検査治具のピン径違い品を流出させないことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、導通検査治具の導通ピンのピン径を判別するピン径判別治具であって、導通検査治具の導通ピンのピン径を判別するコイルバネと、前記コイルバネを一体に結合した把持部と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、ピン径判別治具を用いて導通検査治具の導通ピンのピン径を判別するピン径判別方法であって、前記導通ピンの外径をφP、前記ピン径判別治具の把持部の一方の側の大径のコイルバネの内径をφA、前記把持部の他方の側の小径のコイルバネの内径をφBとした場合に、前記導通ピンの外径φPと前記大径のコイルバネの内径φAと前記小径のコイルバネの内径φBの関係がφA≧φP>φBの場合は、前記導通ピンが適正品であると判別し、φA>φP<φB及びφA<φP>φBの場合は、前記導通ピンが不適正品であると判別することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、導通検査治具の導通ピンのピン径を簡単かつ短時間で正確に判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態のピン径判別治具の側面図である。
図2】上記ピン径判別治具の一方の側の大径のコイルバネに導通ピンを挿入した状態を一部断面で示す要部拡大図である。
図3】上記ピン径判別治具の他方の側の小径のコイルバネに導通ピンを挿入した状態を一部断面で示す要部拡大図である。
図4】上記導通ピンの判定結果を比較した説明図である。
図5】(a)は本発明の第2実施形態のピン径判別治具のコイルバネを他のピン径に対応したものに取り換えるための組み合わせを示す側面図、(b)は同組み合わせた一例を示すピン径判別治具の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は本発明の第1実施形態のピン径判別治具の側面図、図2は同ピン径判別治具の一方の側の大径のコイルバネに導通ピンを挿入した状態を一部断面で示す要部拡大図、図3は同ピン径判別治具の他方の側の小径のコイルバネに導通ピンを挿入した状態を一部断面で示す要部拡大図である。
【0014】
図1に示すように、ピン径判別治具1は、導通検査治具(図示省略)に設計段階で選定された導通ピン10が正規の状態で組み付けられているかどうかを容易に判別できる治具であり、導通ピン10の先端径(ピン径)を判別する長尺で金属製の一対のねじりコイルバネ(コイルバネ)3,4と、この一対のねじりコイルバネ(コイルバネ)3,4を一体に結合した合成樹脂製で四角棒状の把持部2と、を備えている。
【0015】
把持部2は、左右両側にそれぞれ径の異なるねじりコイルバネ3,4を一体に結合してあり、かつ把持部2の左右両側は、その外径を異なるねじりコイルバネ3,4の径に合わせてそれぞれ異ならせて形成してある。即ち、把持部2の一方の側(図1中左のA側)は大径部2aになっており、把持部2の他方の側(図1中右のB側)は小径部2bになっている。このように、2つの導通ピン10の先端径の判別部である各ねじりコイルバネ3,4を容易に判別でき、かつ取り間違い防止のため、把持部2と各ねじりコイルバネ3,4は一体構造で、判別部である各ねじりコイルバネ3,4の大小に応じてその取付外形に段差を設けている。
【0016】
また、一方の側(図1中左のA側)のねじりコイルバネ3は他方の側(図1中右のB側)のねじりコイルバネ4よりも大径に形成されている。さらに、各ねじりコイルバネ3,4の先端部には導通ピン10を挿入し易くするために螺旋状に外側に拡径するテーパ部3a,4aを形成してある。尚、各ねじりコイルバネ3,4は、金属製の棒を密着巻きしてねじりコイル状に形成してあり、ピッチ間が狭い複数の導通ピン10を判別する場合でも隣接する各導通ピン10にダメージを与えないようにフレキシブルに弾性変形するようになっている。
【0017】
そして、サイズ違い(大)の導通ピン10を判別する方法として、選定された導通ピン10の先端部10aが入り、且つ1サイズ先端径の大きな導通ピン10が入らないようにねじりコイルバネ3,4の内径を設定する。また、サイズ違い(小)の導通ピン10を判別する方法として、選定された導通ピン10の先端部10aが入らず、且つ1サイズ先端径の小さな導通ピン10が入るようにねじりコイルバネ3,4の内径を設定する。即ち、選定(判別)する導通ピン10の外径をφP、把持部2の一方の側(図1中左のA側)の大径のコイルバネ3の内径をφA、把持部2の他方の側(図1中右のB側)の小径のコイルバネ4の内径をφBとした場合に、φA≧φP>φBの関係となっている。
【0018】
詳述すると、前述した構成のピン径判別治具1を用いて導通検査治具の導通ピン10の先端径(ピン径)を判別する際に、選定する導通ピン10の外径をφP、把持部2のA側の大径のばね3の内径をφA、把持部2のB側の小径のばね4の内径をφBとした場合に、それらの関係がφA≧φP>φBの場合は、選定された導通ピン10が適正品(OK)であると判別し、φA>φP<φB及びφA<φP>φBの場合は、選定された導通ピン10が不適正品(NG)であると判別する。
【0019】
即ち、判別(確認)手順としては、図4に示すように、導通ピン10がA側のコイルバネ3に挿入され(Go)、B側のコイルバネ4にも挿入された(Go)場合、及び、導通ピン10がA側のコイルバネ3に挿入されず(NoGo)、B側のコイルバネ4にも挿入されない(NoGo)場合は、正規(適正品)の先端径の導通ピン10が組み付けられていないことが確認される。
【0020】
また、導通ピン10がA側のコイルバネ3に挿入され(Go)、B側のコイルバネ4に挿入されない(NoGo)場合は、正規(適正品)の先端径の導通ピン10が組み付けられていることが確認される。これらにより、導通ピン10が適正品(OK)か不適正品(NG)かが簡単に判る。
【0021】
このように、ピン径判別治具1を用いて、選定する導通ピン10を、各テーパ部3a,4aを介してコイルバネ3,4内に挿入させることができるか、挿入させることができないかを確認するだけの簡単な手作業により、導通ピン10の先端径(ピン径)を短時間で正確に判別することができる。
【0022】
導通検査治具に組み付けられた状態の導通ピン10の先端径を確認することで、完成品の検査時、製造業者からの治具受入時、メンテナンス等によるピン交換時に、ピン径が異なる導通ピン10を備えた導通検査治具の流出を確実に防止することができる。さらに、検査、受入・メンテナンス時の確認工数の削減を図ることができ、その分、低コスト化を図ることができる。
【0023】
また、選定された導通ピン10のピン径を判別する際に、フレキシブルに弾性変形する長尺のねじりコイルバネ3,4を用いたことにより、導通ピン10の変形や破損等の2次的な不具合を回避することができる。
【0024】
図5(a)は本発明の第2実施形態のピン径判別治具のコイルバネを他のピン径に対応したものに取り換えるための組み合わせを示す側面図、図5(b)は同組み合わせた一例を示すピン径判別治具の側面図である。
【0025】
この第2実施形態のピン径判別治具1は、図5(b)に示すように、把持部2の両側を径の異なる一方(図5中左のA側)の大径分割体(一方の分割体)2Aと他方(図5中右のB側)の小径分割体(他方の分割体)2Bに2分割に形成し、かつ、大径分割体2Aの他端側に形成されたネジ穴2cと小径分割体2Bの一端側に形成されたネジ部2dの螺合により着脱自在になっている。尚、ネジの代わりにマグネットにより着脱自在にしても良い。
【0026】
また、図5(a)に示すように、大径分割体2Aの一端側には、大径のうちでも径の異なる大径のコイルバネ3,3′,3″を一体に結合したものが3組み用意されている。さらに、図5(b)に示すように、小径分割体2Bの他端側には、小径のうちでも径の異なる小径のコイルバネ4,4′,4″を一体に結合したものが3組み用意されている。これらの各分割体A2,2Bを、選定する導通ピン10の他のピン径、即ち、ピン径の大小異なる導通ピン10に合わせて対応したものに取り換えて使用することにより、先端径のそれぞれ異なる複数種類の導通ピン10の判別に簡単かつ確実に対応させて判別することができる。
【0027】
尚、前記各実施形態によれば、導通ピンのピン径を判別するコイルバネを金属製の棒を密着巻きしてねじりコイル状に形成したものを用いたが、合成樹脂製のねじりコイルバネを用いても良い。
【符号の説明】
【0028】
1 ピン径判別治具
2 把持部
2A 大径分割体(一方の分割体)
2B 小径分割体(他方の分割体)
3,3′,3″ 大径のねじりコイルバネ(コイルバネ)
3a テーパ部
4,4′,4″ 小径のねじりコイルバネ(コイルバネ)
4a テーパ部
10 導通検査治具の導通ピン
図1
図2
図3
図4
図5