特許第6681434号(P6681434)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6681434真空ポンプの磁気支承部のマグネットリングのマーキングの為の方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6681434
(24)【登録日】2020年3月25日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】真空ポンプの磁気支承部のマグネットリングのマーキングの為の方法
(51)【国際特許分類】
   F04D 19/04 20060101AFI20200406BHJP
   F16C 32/04 20060101ALI20200406BHJP
【FI】
   F04D19/04 A
   F16C32/04 Z
【請求項の数】14
【外国語出願】
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-114171(P2018-114171)
(22)【出願日】2018年6月15日
(65)【公開番号】特開2019-49255(P2019-49255A)
(43)【公開日】2019年3月28日
【審査請求日】2018年6月15日
(31)【優先権主張番号】17190093.9
(32)【優先日】2017年9月8日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】391043675
【氏名又は名称】プファイファー・ヴァキューム・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(72)【発明者】
【氏名】アドリーアン・ヴィルト
(72)【発明者】
【氏名】ヨアヒム・カール
【審査官】 角田 貴章
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第1477695(EP,A2)
【文献】 欧州特許出願公開第02829757(EP,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0028004(US,A1)
【文献】 特開2014−146795(JP,A)
【文献】 特開2015−158201(JP,A)
【文献】 特表2014−514519(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D1/00−13/16
F04D17/00−19/02
F04D21/00−25/16
F04D29/00−35/00
F16C32/00−32/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空ポンプ(111)、又はターボ分子ポンプの磁気支承部(183)のマグネットリング(195,197)のマーキングの為の方法であって、この方法において、マグネットリング(195,197)の表面に、当該表面において、マグネットリング(195,197)の他の残りの表面と比較して異なる表面特性が加熱によって生じることによって、マーキング(225,227)が生じ、マグネットリング(195,197)が、少なくともマーキング(225,227)の領域においてコーティングを施されておらず、及び表面が、マーキング(225,227)の領域において焼き戻されるが、しかし溶融しないことを特徴とする方法。
【請求項2】
加熱が、ナノセカンド領域のパルス幅、及び/又は約1064nmの波長を有するレーザーによって、又はファイバーレーザーによって実施されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
レーザーが、スキャナーによってマグネットリングの表面にわたってハッチングするよう転向されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
レーザーの為の光学装置が、スキャナーに、5cmから70cmの間の焦点距離で設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
レーザーがマーキングの際に、10ワットから40ワットの出力により運転されることを特徴とする請求項2から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
レーザーが、マーキングの際、50kHzから400kHzの間のパルス周波数でもって運転されることを特徴とする請求項2から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
レーザーが、マーキング(225,227)の領域の加熱を少なくとも一回繰り返すことを特徴とする請求項2からの少なくとも一項に記載の方法。
【請求項8】
マーキング(225,227)が、レーザーの焦点面の外に位置するように、レーザー、及び/又はマグネットリングが整向されることを特徴とする請求項2からの少なくとも一項に記載の方法。
【請求項9】
表面が、稜線形成が行われない程度のみ加熱されることを特徴とする請求項1からの少なくとも一項に記載の方法。
【請求項10】
マーキング(225,227)が、マグネットリング(195,197)の外側面、及び/又は正面に配置されていることを特徴とする請求項1からの少なくとも一項に記載の方法。
【請求項11】
方法が、更に、マグネットリング(195,197)の極性と、方向依存する更なる特性の検出を含み、その際、唯一のマーキング(225,227)が施され、このマーキングが、方向依存する特性に相当するマグネットリングの角度位置に配置されることによって、マーキングが、極性も、方向依存する別の特性も認識可能とさせることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
複数のマグネットリング(195,197)を有する磁気支承部(183)を有する真空ポンプ(111)の製造の為の方法であって、この方法において、
少なくとも一つのマグネットリング(195,197)が、その特性の一つに応じて請求項1から11のいずれか一項に記載の方法によってマーキングされ、そして、
マグネットリング(195,197)が、マーキングに応じて真空ポンプの磁気支承部(183)内に配置されることを特徴とする方法。
【請求項13】
マグネットリング(195,197)が、圧入によって真空ポンプ(111)内で固定され、そしてマーキング(225,227)が圧入に関与するマグネットリング(195,197)の表面に配置されていることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも一つのマグネットリング(195,197)を有する磁気支承部(183)を有する真空ポンプ(111)であって、
その際、マグネットリング(195,197)が、表面にマーキング(225,227)を有し、その際、当該表面が、マーキング(225,227)の領域において、マグネットリングの他の残りの表面と比較して異なる表面特性を有し、マグネットリング(195,197)が、少なくともマーキング(225,227)の領域においてコーティングを施されておらず、及び表面が、マーキング(225,227)の領域において焼き戻されるが、しかし溶融しないことによって異なる表面特性が作られていることを特徴とする真空ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空ポンプ、特にターボ分子真空ポンプの磁気支承部のマグネットリングをマーキングする方法、少なくとも一つのマグネットリングを有する磁気支承部を有する真空ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
真空ポンプの模範的な磁気支承部は、複数のマグネットリングを有する。これらは、例えば極性のような方向に応じた特性を有する。よって磁気支承部の組立の為には、通常、マグネットリングにマーキングを付す。これらは、方向に応じた特性を見分けることが可能となる。
【0003】
先行技術においては、そのようなマーキングは例えば、フェルトペンによりマグネットリングに施される。しかしこれは、真空の汚染に通じ得る。特に、フェルトペンマーキングは、一般的に、溶剤によって可溶であり、そして溶剤は、真空ポンプの組立の際、しばしば必要不可欠だからである。更に、可溶性のフェルトペンカラーは流れ、及び/又は視認可能な残留物を形成し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、真空ポンプの磁気支承部のマグネットリングを、真空発生を損なうことなくマーキングすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、請求項1に記載の方法によって、特にマーキングが、マグネットリングの表面に形成されること、当該表面において加熱によってマグネットリングの残りの表面と比較して異なる表面特性が形成されることによって解決される。
【0006】
これによって色が省略され、そしてこれと関連する問題が回避されることが可能となる。色の省略によって、特に高真空において存在する部材(ここでは磁気支承部のようなもの)のガス放出特性が減少されることが可能である。これは、必要な排ポンプ時間を短縮し、そして達成可能なより低い最終圧力を可能とする。よって真空、又はポンプは、全体として極めて清潔に保持されることも可能である。その上、発明に係るマーキングは、耐溶剤性である。よって、場合によっては発生する溶剤との接触の際にも、マーキングの流れと残留が効率的に防止されることができる。
【0007】
異なる表面特性は、例えば、異なる組成、及び/又は異なる粗さを含み得る。異なる表面特性は、特に視覚的に知覚可能、又は視認可能である。
【0008】
一つの実施形においては、レーザーによる加熱が実施される。これは、特に正確かつ迅速なマーキングを可能とする。特に、これによってマグネットリングの表面の加熱が正確に制御されることが可能だからである。これはまた、マーキングの領域における局所的な加熱を、強烈に制限することも可能とする。マグネットは、通常、その磁性特性が極めて温度に敏感であるので、よって、脱磁は少なくとも基本的に、又はほぼ防止されることが可能である。マーキングの領域における脱磁が発生した場合、これはレーザーパラメーターを適当に選択することによって低く保たれることが可能である。例えばレーザーによるマーキングが、支承性能及びポンプ性能に関する磁気的特徴値に応じて通常行われるマグネットリングのカテゴリー化に影響しないということも示された。
【0009】
マーキングの適当な位置決めとレーザーパラメーターの選択によって、例えば不均一磁場が生じることによって乱流が派生した結果としての加熱といった悪影響が支承性能及びポンプ性能に及ばないようにすることも可能である。理想的なレーザーパラメーターは、通常、レーザーの焦点直径と、磁石の材料特性及び表面特性に応じる。
【0010】
レーザーとして、例えばファイバーレーザー、ダイオードレーザー、固体レーザー、又はガスレーザーが意図され得る。レーザーは、パルス化して、特にナノセカンド領域のパルス幅で、連続運転で作動することが可能である。レーザーの波長は、有利には、少なくとも700nm、特に少なくとも1000nm、及び/又は最高1500nm、特に最高1100nm、特に約1064nmであり得る。特に好ましくは、約1064nmの波長と、ナノセカンド領域のパルス幅を有するパルス化されたファイバーレーザーが使用され得る。
【0011】
レーザーは、一つの実施形に従い、転向ユニット、特にスキャナー、特に2Dスキャナーによってマグネットリングの表面にわたって細かく平行線を引くように(ハッチングするように、独語:schraffierend)転向されることが可能である。スキャナーは、例えば一、又は複数のガルボミラー(独語:Galvospiegel)を有し得る。光学装置、特に少なくとも一つのレンズがレーザーの為に、特にスキャナーに、又はそn出口に設けられていることが可能である。これは、少なくとも5cm、特に少なくとも20cm、及び/又は最高70cm、特に最高50cmの焦点距離を有する。レーザーの焦点は、例えば少なくとも0.02mm、及び/又は最高1mmの直径を有し得る。転向ユニットは、レーザー線を、例えば周期的に、マーキングの領域の表面にわたって移動し、これを塗りつぶす、及び/又はハッチングする(独語:schraffieren)。代替的に、レーザーの線は、転向されることなくマーキングすべき表面へと向けられることも可能である。その際、レーザー、及び/又はマグネットリングは、ある面積をもつ(独語:flaechig)マーキングの製造の為に移動させられる。
【0012】
レーザーは、マーキングの際、例えば、少なくとも10ワット、及び/又は最高40ワット、特に少なくとも20ワット、及び/又は最高30の出力で運転されることが可能である。
【0013】
パルス周波数、又は繰り返し周波数は、例えば少なくとも50kHz、特に少なくとも150kHz、及び/又は最高400kHz、特に最高250kHz、特に約200kHzの値を取り得る。代替として、例えば連続的に放射するレーザー、又は「CW」レーザーが設けられていることが可能である。
【0014】
例えば、レーザーが、マーキングの領域の加熱を、特に細かく平行線を引くように(ハッチングするように)、少なくとも一回、及び/又は最高20回繰り返すことが意図されていることが可能である。特に有利には、例えば少なくとも2回、及び/又は、せいぜい5回マーキング実施、又はハッチングの実施が行われる。好ましくは、少なくとも一度のマーキング実施、又はハッチングの実施は、前回のマーキング実施、又はハッチングの実施に対して向きを反転するように(独語:gedreht)行われることが可能である。
【0015】
レーザーによるマーキングの別の有利なパラメーターには、レーザー線、特にその焦点のの送り速度、特にコーティングされたマグネットリングにおいては少なくとも50mm/s、特に少なくとも500mm/s、及び/又は、最高2500mm/s、特に最高2000mm/s、及び/又は、特にコーティングされていない特に希土類を含むマグネットにおいては、少なくとも100mm/s、及び/又は最高500mm/sの送り速度が含まれる。
【0016】
さらなる発展形においては、マーキングが、レーザーの焦点面の外側に存在し、特に少なくとも0mm、及び/又は最高50mm、特に少なくとも0mm、及び/又は最高30mm、特に少なくとも0mm、及び/又は最高20mm、特に最高10mm、特に最高7mmの間隔分だけ焦点面の外側に存在するよう、レーザー、及び/又はマグネットリングは形成されている。
【0017】
稜線形成がされない程度のみ、表面が加熱されると有利である。よって表面はなめらかなままであり、そして、例えばポリッシングのような更なる処理が必要とされることなく、例えばマグネットリングの圧入に関与することが可能である。上述した有利なレーザーパラメーターは、少ない稜線形成に有利に働き、又はこれを完全に防止することができる。
【0018】
別の実施形は、マグネットリングが、少なくともマーキングの領域において、コーティングされておらず、マーキングの領域の表面が焼き戻されるが、しかし溶融されないということが意図されている。ここで磁石材料は、直接、かつ表面近傍において加熱され、そして高性能磁石材料は、しばしば融解の後に不均一に固まるのみで、そして稜線を形成するので、これによって稜線形成の防止しつつ、しかし良好に視認可能なマーキングが作られることが可能である。また、そのようにして脱磁も低く保たれることが可能である。
【0019】
他の実施形に従い、表面は、少なくともマーキングの領域において、マグネットリングのコーティングによって形成されており、そしてマーキングの領域の表面は、短時間で溶ける。コーティング材料は、融解の後も、特に冷却の際の溶融層の表面応力に基づいて、稜線を形成しないので、これはここでは無害である。更に、コーティング材料は、焼き戻しによって着色を行わないことが意図され得る。その代りに、この実施形に従い溶融によって、視認可能な変化、例えば平滑化(独語:Glaettung)が、コーティング材料の表面構造中に形成される。平滑化は、特に表面応力によって引き起こされる。これは、特にコーティングが化学的にガルバニックに、又はスパッタプロセス、スプレープロセス、若しくは浴潜プロセスによって施され、そしてこれらの方法に典型的な表面を有し、しかしこの表面が、状態変化の後、当該表面と視覚上異なっているとき、特に有利に可能である。更に、コーティングのみが溶かされるとき有利である。その際、コア材料の磁化は、非本質的にのみ影響を受ける。
【0020】
例えば、マグネットリングは、ニッケルコーティングを有し得る。マグネットリングは特に、コバルト合金を含み得る。マグネットリングは、サマリウム、又は他の希土類を含み得る。有利には、マグネットリングは、SmCo5、又はSmCo17を含む。
【0021】
発展形においては、マーキングがマグネットリングの外側面、及び/又は正面に配置されていることが意図されている。これらは、特に簡単に発明に従い加熱される、又はマーキングされることが可能である。これ、又はこれらはレーザーによって行われる。
【0022】
有利には、まさに一つのマーキングがマグネットリング上に設けられていることが可能である。例えば、発明に係る方法は、更に、マグネットリングの磁石極性の検出と、方向依存する更なる特性の検出を含む。これは特に、エラー箇所、例えば角度エラーや、不均一性や、その優先方向である。その際、唯一のマーキングが施される。このマーキングは、極性も、方向依存する別の特性も検出可能とする。
【0023】
磁気支承部が複数のマグネットリングを有する真空ポンプの製造の為の有利な方法においては、少なくとも一つのマグネットリングが、その特性に応じて、本発明に係るマーキング方法によってマーキングされ、そしてマグネットリングは、真空ポンプの磁気支承部内でマーキングに応じて配置される。
【0024】
この製造方法の発展形においては、マグネットリングは圧入によって真空ポンプ内で固定され、そしてマーキングは、例えばマグネットリングの圧入に関与する面に配置されている。
【0025】
本発明の課題は、独立装置請求項に従う真空ポンプによって解決され、これは特に、マグネットリングが表面にマーキングを有し、その際、表面が、マーキングの領域において、マグネットリングの他の残された表面と比較して異なる表面特性を有することによって解決される。
【0026】
発明に係るマーキング方法は、有利には、ここで記載した製造方法及び真空ポンプの実施形の意味においても形成されることが可能であり、そしてその逆も可能である。
【0027】
以下に本発明を、添付の図面を参照しつつ、有利な実施形に基づいて例示的に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】ターボ分子ポンプの斜視図
図2図1のターボ分子ポンプの下側の図
図3図2に示された切断線A−Aに沿うターボ分子ポンプの断面図
図4図2に示された切断線B−Bに沿うターボ分子ポンプの断面図
図5図2に示された切断線C−Cに沿うターボ分子ポンプの断面図
図6図2のターボ分子ポンプの磁気支承部の二つのマグネットリング
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明が意図されていることが可能である図1に示されたターボ分子ポンプ111は、インレットフランジ113によって取り囲まれるポンプインレット115を有する。ポンプインレットには、公知の方法で図示されないレシーバーが接続されることが可能である。レシーバーからのガスは、ポンプインレット115を介してレシーバーから吸引され、そしてポンプを通してポンプアウトレット117へと搬送されることが可能である。これには、予真空ポンプ(例えばロータリーベーンポンプのようなもの)が接続されていることが可能である。
【0030】
インレットフランジ113は、図1の真空ポンプの向きにおいて、真空ポンプ111のハウジングの上側の端部を形成する。ハウジング119は、下部分121を有する。これには、側方にエレクトロニクスハウジング123が設けられている。エレクトロニクスハウジング123内には、電気的、及び/又は電子的な真空ポンプ111のコンポーネントが入れられている。これは例えば、真空ポンプ内に配置された電動モーター125の駆動の為のものである。エレクトロニクスハウジング123は、アクセサリの為の複数の接続部127を設けられている。その上、データインターフェース129、例えばRS485スタンダードに従うものと、電流供給接続部131がエレクトロニクスハウジング123に設けられている。
【0031】
ターボ分子ポンプ111のハウジング119には、フラットインレット133、特にフラットバルブの形式のものが設けられている。下部分121の領域には、更に、シールガス接続部135が設けられている。これは、洗浄ガス接続部とも称される。これを介して、ポンプによってモーター室137内に搬送されるガスに対する電動モーター125の保護の為の洗浄ガスが、運ばれることが可能である。モーター室137内には、真空ポンプ111内の電動モーター125が入れられている。下部分121内には、更に、二つの冷却媒体接続部139が設けられている。その際、冷却媒体の為の冷却媒体接続部の一方はインレットとして、そして冷却媒体接続部の他方は、アウトレットとして設けられている。これは、冷却目的で真空ポンプ内に導かれることができる。
【0032】
真空ポンプの下側の面141は、起立面として使用されるので、真空ポンプ11は下側面141状に起立して運転されることが可能である。しかしまた、真空ポンプ111は、インレットフランジ113を介してレシーバーに固定されることも可能である。これによっていわば懸吊・懸架されて運転されることができる。その上、真空ポンプ111は、図1に示されているのとことなるように向けられているとき、これが運転されることが可能であるよう形成されていることも可能である。下側面141が、下に向かってでなく、当該側の方に向けて、又は上に向けられて配置されることも可能である真空ポンプの実施形も実現可能である。
【0033】
図2に表されている下側面141には、いくつかのスクリュー143が設けられている。これによって、ここでは更に特定されない真空ポンプの部材が互いに固定されている。例えば、支承部カバー145が下側面141に固定されている。
【0034】
下側面141には、更に複数の固定孔147が設けられている。これを介して、ポンプ111が、例えば当接面に固定されることが可能である。
【0035】
図2から5には、冷却媒体配管148が表されている。この中で、冷却媒体接続部139を介して導入及び導出される冷却媒体が循環されることが可能である。
【0036】
図3から5の断面図に示すように、真空ポンプは、複数のポンプ段を有する。ポンプインレット115におよぶプロセスガスをポンプアウトレット117に搬送するためのものである。
【0037】
ハウジング119内には、ローター149が設けられている。これは、回転軸151を中心として回転可能なローターシャフト153を有している。
【0038】
ターボ分子ポンプ111は、ポンプ効果を奏するよう互いにシリアルに接続された複数のターボ分子ポンプ段を有する。これは、ローターシャフト153に固定された半径方向の複数のローターディスク155と、ローターディスク155の間に配置され、ハウジング119内に固定されて複数のステーターディスク157を有する。その際、ローターディスク155、および隣接するステーターディスク157は、各一のポンプ段を形成する。ステーターディスク157は、スペーサーリング159によって所望の軸方向間隔に互いに保持されている。
【0039】
真空ポンプは、その上、軸方向において互いに入れ子式に配置され、そしてポンプ効果を奏するよう互いにシリアルに接続されたホルベックポンプ段を有している。ホルベックポンプ段のローターは、ローターシャフト153に設けられたローターハブ161と、ローターハブ161に固定され、そしてこれによって担持されるシリンダー側面形状の二つのホルベックロータースリーブ163,166を有する。これらは、回転軸151に対して同軸に向けられており、そして半径方向で互いに入れ子式に接続されている。更に、二つのシリンダー側面形状のホルベックステータースリーブ167,169が設けられている。これらは、どうように回転軸151に対して同軸に向けられており、半径歩行でみて互いに入れ子式に接続されている。
【0040】
ホルベックポンプ段のポンプ効果を発する表面は、ホルベックロータースリーブ163,165とホルベックステータースリーブ167,169の側面によって、つまり半径方向内側面及び/又は外側面形成されている。外側のホルベックステータースリーブ167の半径方向内側面は、外側のホルベックロータースリーブ163の半径方向外側面と、半径方向のホルベック間隙171を形成しつつ向かい合っており、そしてこれともに、ターボ分子ポンプ段に続く第一のホルベックポンプ段を形成する。外側のホルベックロータースリーブ163の半径方向内側面は、内側のホルベックステータースリーブ169の半径方向外側面と、半径方向のホルベック間隙173を形成しつつ向かい合っており、そしてこれとともに、第二のホルベックポンプ段を形成する。内側のホルベックスタータースリーブ169の半径方向内側面は、内側のホルベックロータースリーブ165の半径方向外側面と半径方向のホルベック間隙175を形成しつつ向かい合っており、そしてこれと共に、第三のホルベックポンプ段を形成する。
【0041】
ホルベックロータースリーブ163の下側の端部には、半径方向に推移するチャネルが設けられていることが可能である。これを介して、半径方向外側に位置するホルベック間隙171が中央のホルベック間隙173と接続されている。更に、内側のホルベックステータースリーブ169の上側の端部には、半径方向に推移するチャネルが設けられていることが可能である。これを介して、中央のホルベック間隙173が半径方向内側のホルベック間隙175と接続されている。これによって、互いに入れ子式に接続されたホルベックポンプ段が、互いにシリアルに接続される。半径方向内側に位置するホルベックロータースリーブ165の下側の端部は、更に、アウトレット117への接続チャネル179を設けられていることが可能である。
【0042】
ホルベックステータースリーブ163,165の上述したポンプ効果を発する表面は、其々、回転軸151の周りを軸方向にらせん形状に推移する複数のホルベック溝を有する。他方で、ホルベックロータースリーブ163,165の向かい合った側面は滑らかに形成されており、そしてガスを真空ポンプ111の運転の為、ホルベック溝内へと促進する。
【0043】
ローターシャフト153の回転可能な支承の為に、ローラー支承部181がポンプアウトレット117の領域に設けられ、そして永久磁石支承部183がポンプインレット115の領域内に設けられている。
【0044】
ローラー支承部181の領域内には、ローターシャフト153に円すい形のスプラッシュナット185が設けられている。これは、ローラー支承部181の方に向かって増加する外直径を有している。スプラッシュナット185は、少なくとも一つのスキマー(作動媒体貯蔵部のスキマー)と滑り接触している。作動媒体貯蔵部は、互いに積層された吸収性の複数のディスク187を有する。これは、ローラー支承部181の為の作動媒体、例えば潤滑剤を染み込ませられている。
【0045】
真空ポンプ11の運転中、作動媒体を毛細管効果によって作動媒体貯蔵部からスキマーを介して、回転するスプラッシュナット185へと伝達する。そして遠心力によってスプラッシュナット185に沿って大きくなる外直径185(スプラッシュナット92の外直径)の方へと、ローラー支承部181に向かって搬送される。そこで例えば潤滑機能を発揮する。ローラー支承部181と作動媒体貯蔵部は、槽形状のインサート189と支承部カバー145によって真空ポンプ内にはめ込まれている。
【0046】
永久磁石支承部183は、ローター側の支承半部191とステーター側の支承半部193を有する。これらは、其々、リング積層部を有する。リング積層部は、軸方向に連続して積層された永久磁石の複数のリング195,197から成っている。リングマグネット195,197は、互いに半径方向の支承間隙199を形成しつつ互いに向かい合っている。その際、ローター側のリングマグネット195は半径方向外側に配置され、そしてステーター側のリングマグネット197は半径方向内側に配置されている。支承間隙199内に存在する磁場は、磁気的な反発力をリングマグネット195,197の間に引き起こす。これは、ローターシャフト153の半径方向の支承を実現する。ローター側のリングマグネット195は、ローターシャフト153の担持部分201によって担持されている。これはリングマグネット195を半径方向外側で取り囲んでいる。ステーター側のリングマグネット197は、ステーター側の担持部分により担持されている。これは、リングマグネット197を通って延在し、そしてハウジング119の半径方向の支柱に懸架されている。回転軸151に平行に、ローター側のリングマグネット195が担持部分203と連結あされたカバー要素207によって固定されている。ステーター側のリングマグネット197は、回転軸151に平行に、一方の方向で担持部分203と接続される固定リングによって、及び担持部分203と接続される固定リング211によって固定されている。固定リング211とリングマグネット197の間には、更にさらばね213が設けられていることが可能である。
【0047】
磁石支承部の内部には、緊急用又は安全用支承部215が設けられている。これは、真空ポンプの通常の運転では非接触で空転し、そしてローター149がステーターに対して半径方向に過剰に偏向した際に初めて係合するに至り、ローター149のための半径方向のストッパーを形成する。ローター側の構造がステーター側の構造と衝突するのを防止するためである。安全用支承部215は、潤滑されていないローラー支承部として形成されており、そしてローター、及び/又はステーターと半径方向の間隙を形成する。この間隙は、安全用支承部215が通常運転中は、係合外であることを実現する。安全用支承部215が係合する半径方向の偏向は、十分大きくとられているので、安全用支承部215は真空ポンプの通常の運転では係合せず、そして同時に十分小さいので、ローター側の構造がステーター側の構造と衝突することがあらゆる状況で防止される。
【0048】
真空ポンプ111は、ローター149の回転駆動の為の電動モーター125を有する。電動モーター125のアンカーは、ローター149によって形成されている。そのローターシャフト153は、モーターステーター217を通って延在している。モーターステーター217を通って延在するローターシャフト153の部分には、永久磁石装置が半径方向外側に配置されているか、又は埋め込まれて配置されていることが可能である。モーターステーター217とモーターステーター217を通って延在するローター149の部分の間には、中間空間219が設けられている。この中間空間は、半径方向のモーター間隙を有する。これを介してモーターステーター217と永久磁石が駆動トルク伝達のため磁気的に影響することが可能である。
【0049】
モーターステーター217は、ハウジング内、電動モーター125の為に設けられるモーター室137内に固定されている。シールガス接続部135を介して、シールガス(洗浄ガスとも称され、そして例えば空気又は窒素であることが可能である)がモーター室137内へと至る。シールガスを介して、電動モーター125がプロセスガス(例えば腐食性に作用するプロセスガスの部分)から保護されることが可能である。モーター室13は、ポンプアウトレット117を介して真空引きされることも可能である。つまりモーター室137内は、少なくとも近似的に、ポンプアウトレット117に接続される予真空ポンプによって引き起こされる真空圧となっている。
【0050】
ローターハブ161とモーター室137の間を画成する壁部221は、更に一つのいわゆる、それ自体公知であるラビリンスシール223を設けられていることが可能である。特に、半径方向外側に位置するホルベックポンプ段に対するモーター室217のより良好なシールを達成するためである。
【0051】
図6には、二つのリングマグネット、又はマグネットリング195及び197が示されている。これらは、其々マーキング225又は227を有する。マグネットリング195は、図3に示された磁気支承部183の外側のリングである。マグネットリング197は、これと反対に磁気支承部183の内側のリングである。
【0052】
外側のマグネットリング195は、外側面にマーキング225を有する。マグネットリング195は、ローター軸153のキャリア部分201と圧入を介して接続されている。このしまり嵌めには、マグネットリング195のマーキングされた外側面が関与している。
【0053】
内側のマグネットリング197は、正面にそのマーキング227を有する。運転中、外側のマグネットリング195の内側面と、内側のマグネットリング197の外側面の間には、支承間隙199が形成されている。マーキング225及び227は、つまり両方とも支承間隙と反対側の面に配置されている。よって場合によっては、マーキング225及び227によって引き起こされる磁性劣化(独語:Magnetisierungsverschlechterungen)は、間隙内の磁場に影響を与えない、又はごく僅かのみ影響を与えるということが可能である。マーキング225及び227は、よって、ローター149の回転特性に全く、又はほとんど影響しない。
【0054】
マーキング225及び227は、其々、磁極性も、方向依存する別の特性(特に角度エラー、不均質性エラー、及び/又はマグネットリング195又は197のベクトル上の優先方向(独語:Vorzugsrichtung))も表示しているように配置され、そして形成されている。その際、マーキング225は矢印として形成されている。これは、その方向によって極性を示し、そしてマグネットリング195の周囲におけるその位置によって、方向依存する別の特性と、ベクトル上の優先方向を示す。マーキング227は、これと反対に点として形成されている。これは、その軸方向の位置いよって極性を示し、そしてマグネットリング197の周囲におけるその位置によってベクトル上の優先方向を示す。
【符号の説明】
【0055】
111 ターボ分子ポンプ
113 インレットフランジ
115 ポンプインレット
117 ポンプアウトレット
119 ハウジング
121 下部分
123 エレクトロニクスハウジング
125 電動モーター
127 アクセサリー接続部
129 データインターフェース
131 電源供給接続部
133 フローインレット
135 シールガス接続部
137 モーター室
139 冷却媒体接続部
141 下側
143 スクリュー
145 支承部カバー
147 固定穴
148 冷却媒体配管
149 ローター
151 回転軸
153 ローター軸
155 ローターディスク
157 ステーターディスク
159 スペーサーリング
161 ローターハブ
163 ホルベックロータースリーブ
165 ホルベックロータースリーブ
167 ホルベックステータースリーブ
169 ホルベックステータースリーブ
171 ホルベック間隙
173 ホルベック間隙
175 ホルベック間隙
179 接続チャネル
181 ローラー支承部
183 永久磁石支承部
185 スプラッシュナット
187 ディスク
189 インサート
191 ローター側の支承半部
193 ステーター側の支承半部
195 リングマグネット
197 リングマグネット
199 支承間隙
201 キャリア部分
203 キャリア部分
205 半径方向の支柱
207 カバー要素
209 支持リング
211 固定リング
213 さらばね
215 緊急用、又は安全用支承部
217 モーターステーター
219 中間空間
221 壁部
223 ラビリンスシール
225 マーキング
227 マーキング
図1
図2
図3
図4
図5
図6