【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、本発明によれば、請求項1に記載の装置によって実現される。本発明の有利な実施形態は、従属請求項に準拠する。
【0007】
本明細書に記載の装置は、エネルギー源、たとえばエネルギービーム、特にレーザビーム又は電子ビームによって固化することができる粉末状の造形材料(「造形材料」)の層を連続して選択的に層ごとに固化することによって3次元の物体、たとえば技術的構成要素を付加製造する装置である。それぞれの造形材料は、金属、セラミック、又はポリマー粉末とすることができる。それぞれのエネルギービームは、レーザビーム又は電子ビームとすることができる。それぞれの装置は、たとえば、選択的レーザ焼結装置、選択的レーザ溶融装置、又は選択的電子ビーム溶融装置とすることができる。別法として、造形材料を連続して層ごとに選択的に固化することは、少なくとも1つの結合材料を介して実行することができる。結合材料は、対応する塗布ユニットによって塗布することができ、たとえば適したエネルギー源、たとえばUV光源によって照射することができる。
【0008】
この装置は、その動作中に使用される複数の機能ユニットを備えることができる。例示的な機能ユニットには、プロセスチャンバ、プロセスチャンバ内に配置された造形材料層を少なくとも1つのエネルギービームで選択的に照射するように適合された照射デバイス、及び所与の流れ特性、たとえば所与の流れプロファイル、流速などでプロセスチャンバを通って少なくとも部分的に流れるガス状流体流を生成するように適合された流れ生成デバイスが挙げられる。ガス状流体流は、プロセスチャンバを通って流れる間に、固化されていない粒子状の造形材料、特に装置の動作中に生成される煙又は煙残留物で充填することが可能である。ガス状流体流は、典型的には不活性であり、すなわち典型的には、不活性ガス、たとえばアルゴン、窒素、二酸化炭素などの流れである。
【0009】
前述したように、付加製造プロセス中に、特に付加製造装置のプロセスチャンバ内で、場合によって使用者に危険を与えるプロセス条件が生じる可能性がある。本発明は、付加製造装置と相互作用するとき、特にプロセスチャンバ内の構成要素と相互作用するとき、使用者が面する危険を低減させることを可能にする安全デバイスを提供する。
【0010】
本発明は、少なくとも1つの化学的パラメータ及び/又は少なくとも1つの物理的パラメータを判定するように適合された少なくとも1つの安全デバイスが提供され、安全デバイスは、判定された化学的及び/又は物理的パラメータに応じてプロセスチャンバのアクセス状態を制御するように適合されるという概念に基づいている。したがって、使用者が潜在的に有害なプロセス環境に接触する可能性を避けるように、プロセスチャンバのアクセス状態を制御することができる。プロセスチャンバのアクセス状態の制御のため、安全デバイスは、使用者にアクセスを与えるかどうか、又は使用者がプロセスチャンバ及びプロセスチャンバ内の潜在的に有害なプロセス環境へのアクセスを取得することを防止するかどうかを、能動的に制御することができる。
【0011】
プロセスチャンバのアクセス状態をどのように制御する必要があるか、又は使用者にアクセスを与えるべきであるか否かを決定するために、少なくとも1つの安全デバイスは、少なくとも1つの化学的パラメータ及び/又は少なくとも1つの物理的パラメータを判定するように適合されている。したがって、安全デバイスは概して、プロセス環境の化学的及び/又は物理的パラメータを判定して、使用者がプロセスチャンバにアクセスすることが安全か否かを判定するように適合されている。本出願の範囲内で付加製造装置の「プロセスチャンバ」という用語は、プロセス環境が使用者に対する潜在的なリスクとなりうる装置又は装置の密閉体積のすべてのチャンバを指す。特に、グローブボックスなどの取扱いステーションの取扱いチャンバが、本出願の範囲内で「プロセスチャンバ」という用語に含まれる。
【0012】
プロセスチャンバは、エネルギー源を介して直接に照射され、それによって潜在的に有害な温度まで加熱される造形平面内の造形材料をさらに備えるだけでなく、プロセスチャンバは、他の表面又は構成要素、たとえば造形平面のうち直接に照射されないがプロセス要件による造形平面又は粉末床の調温のために加熱される部分も備えることができる。追加として、装置のうちたとえば散乱放射又は熱伝達によって間接的に加熱される表面又は構成要素もまた、少なくとも1つの化学的及び/又は物理的パラメータの判定を介して観察することができる。
【0013】
さらに、少なくとも1つの化学的及び/又は物理的パラメータの判定は、造形平面又は固化区間などの造形平面の直接に照射領域に限定されるものではなく、熱伝達によって加熱された固化区間に隣接する区間も観察することができる。また、たとえば2つ以上のエネルギー源が使用される場合、又は2つ以上の固化区間が同時に照射される場合、2つ以上の区間又は領域を判定することも可能である。したがって、本発明により、使用者に対する潜在的な危険を直接に判定することが可能になる。たとえば、造形板の温度を測定し、測定された温度からプロセスチャンバ内の造形平面又は他の構成要素の温度を間接的に推定するのではなく、造形平面(直接に照射される造形チャンバ内の造形材料の最上層)の温度を直接に測定又は判定することができる。
【0014】
少なくとも1つの化学的及び/又は物理的パラメータは、好ましくは、
− プロセスチャンバ内の雰囲気に関するパラメータ、及び/又は
− プロセスパラメータ、及び/又は
− プロセスチャンバの少なくとも1つの領域の温度とすることができ又はこれらを含むことができる。
【0015】
したがって、パラメータは、プロセスチャンバ内に含まれる雰囲気と使用者との接触が使用者の健康にリスクを与えるかどうかを判定するために、プロセスチャンバ内の雰囲気に関することができる。追加又は別法として、付加製造装置内の付加製造プロセスの実行を指すプロセスパラメータを判定することができる。そのようなプロセスパラメータは、たとえば、不活性化状態などのプロセスチャンバの事前調整ステップ又はプロセス雰囲気が所定の温度まで加熱される加熱ステップなどのプロセスステップとすることができる。特に、とりわけプロセスガス中の微粒子の化学組成若しくは比、又はプロセスガスの温度に関することができる雰囲気値を定義することができ、たとえば酸素比が所定の値を上回る場合、又は許容範囲内である場合、たとえば19%を上回る場合にのみ、使用者にアクセスが与えられる。当然ながら、照射パラメータ、流れ生成デバイスに関するパラメータ、プロセスチャンバ内の加熱デバイスの動作など、プロセスチャンバ内のプロセス雰囲気に関連する任意の他のプロセスパラメータも計算に入れることができる。
【0016】
少なくとも1つの化学的及び/又は物理的パラメータはまた、プロセスチャンバの少なくとも1つの領域の少なくとも1つの温度に関する情報を含むことができ、プロセスチャンバの複数の領域(又はプロセスチャンバの構成要素)を定義及び観察して、使用者がプロセスチャンバへのアクセスを取得することが安全であるか否か、並びに使用者がプロセスチャンバの定義及び観察された領域及び構成要素と安全に相互作用することができるかどうかを判定することができる。したがって、それを下回ると使用者とプロセスチャンバ、特に造形平面との安全な相互作用が可能になる温度値を定義することができる。通常、温度値は、任意で定義することができ、サービススタッフ又は使用者がグローブなどの個人安全装備によってプロセスチャンバと相互作用するか否かを計算に入れることができる。例示的な許容温度範囲は、30℃〜100℃、好ましくは45℃〜75℃で定義することができ、且つ/又は温度値を定義することができ、判定された温度が所定の温度値を下回る場合、使用者にアクセスが与えられ、好ましい温度値は、51℃として定義することができる。
【0017】
安全デバイスの別の態様は、プロセスチャンバ内の雰囲気に関するパラメータを、雰囲気中のプロセスガスの比及び/若しくは微粒子の比、並びに/又は雰囲気中のガスの温度及び/若しくはガスの化学組成とすることができることを計算に入れることができる。したがって、たとえば、付加製造プロセスが終了し、プロセスガスがプロセスチャンバから除去された場合、プロセスチャンバ内に含まれるプロセスガスの比(又はそれぞれ酸素の比)に応じて、アクセス状態を制御することができる。追加として、プロセスチャンバ内に依然として含まれるプロセスガスは、使用者がプロセスガスに接触するのを避け、且つプロセスガスが環境中に解放されるのを避けるために、収集することができる。プロセスチャンバ中の雰囲気に関するパラメータが含むことができる別の態様は、雰囲気中のガスに充填された固化されていない造形材料又は煙若しくは燻りなど、雰囲気中の微粒子の比である。好ましくは、使用者が微粒子を吸い込むのを防止するために、微粒子の比が検出される。したがって、アクセス状態は、微粒子の比が所定の微粒子値を下回る場合にのみ、使用者にアクセスが与えられるように制御される。
【0018】
前述したように、使用者が高温のガスに接触するのを避けるために、ガスの温度も判定及び考慮することができる。ガス中の成分が使用者の健康にとって有害となるのを避けるために、考慮すべき別の態様は、ガスの化学組成とすることができる。好ましくは、プロセスガス中の酸素の比が19%を下回る場合、使用者にアクセスが与えられない。
【0019】
この装置の別の実施形態によれば、安全デバイスは、所定の値に応じて、特に所定の値未満のパラメータによって、プロセスチャンバへのアクセスを使用者に与えるために、アクセス状態を制御するように適合することができる。したがって、使用者にアクセスを与えるか否かを決定するための少なくとも1つの化学的及び/又は物理的パラメータに対する値を定義することができる。したがって、安全デバイスは、少なくとも1つの化学的及び/又は物理的パラメータを絶えず又は間隔をあけて判定し、アクセス状態は、所定の値が満たされない場合、特に所定の値を超過した場合、使用者にアクセスを与えないように制御される。たとえば、それを上回ると安全デバイスが使用者にプロセスチャンバへのアクセスを与えないようにアクセス状態を制御する温度値、好ましくは51℃を定義することができる。
【0020】
さらに、装置の少なくとも1つの領域又は構成要素の温度、及び雰囲気に関する少なくとも1つのパラメータなど、複数のパラメータを定義することが可能である。好ましくは、アクセス状態は、判定されたすべてのパラメータが対応する所定の値を満たす場合、特に対応する所定の値を下回る場合にのみ、使用者にアクセスが与えられるように、安全デバイスを介して制御される。所定の値はまた、閾値として考え又は定義することができる。当然ながら、所定の値を有する代わりに、許容範囲を定義することができ、安全デバイスは、対応する判定されたパラメータが対応する許容範囲内にある場合にのみ、使用者にアクセスが与えられるように、アクセス状態を制御するように適合されている。
【0021】
この装置は、安全デバイスが、プロセスチャンバの少なくとも1つの表面及び/又は造形平面、特に造形平面の表面の少なくとも1つの領域、好ましくは造形平面のうち最後に照射された部分及び/又は最後に塗布された造形材料層の温度を判定するように適合することができるように、さらに改善することができる。対応する表面の温度を直接に判定することによって、使用者の健康に対するリスクも直接に推定することができる。特に、所定の温度まで加熱された構成要素が別の表面又は構成要素に与える影響を推定する必要がなくなる。代わりに、使用者がプロセスチャンバと相互作用することによって接触しうる対応する表面又は構成要素の温度を直接に判定することができ、好ましくは測定することができる。
【0022】
好ましくは、造形平面のうち最後に照射された領域及び/又は造形平面のうち造形材料層が最後に塗布された部分が観察される。したがって、製造プロセスの任意のステップで、特に製造プロセスの初めに塗布又は照射された造形板又は造形材料層の温度を推定する代わりに、造形平面のうち最後に照射された又は造形材料層が最後に塗布された領域又は部分が判定される。したがって、最後に照射された部分は、造形平面のうち温度が最も高い部分であると見なすことができる。したがって、使用者の健康に危険を与えるリスクは、温度が最も高い、特に最後に照射された表面又は構成要素で最も高くなる。
【0023】
さらに、安全デバイスは、プロセスチャンバ内の少なくとも1つの開口部、特にドアのロック状態を制御するように適合することができる。少なくとも1つの開口部は、アクセスポイントとして考えることができ、使用者はアクセスポイントを通って、それぞれプロセスチャンバへのアクセスを取得し、又はプロセスチャンバの内側と相互作用することができる。安全デバイスを介して判定された少なくとも1つの化学的及び/又は物理的パラメータに応じて、プロセスチャンバ内の少なくとも1つの開口部のロック状態を制御することができる。したがって、少なくとも1つの化学的及び/又は物理的パラメータが、プロセス環境が使用者の健康に対して潜在的な危険を与えることを示す場合、プロセスチャンバ内の開口部をロックしたままにすることができる。安全デバイスが、少なくとも1つのパラメータが所定の値を満たし若しくは下回り、又は許容範囲内にあると判定した場合、少なくとも1つの開口部のロック状態は、少なくとも1つの開口部、特にドアをロック解除して使用者にアクセスを提供することができ、使用者が開口部を開放することができるように制御することができる。
【0024】
この装置の別の実施形態によれば、安全デバイスは、少なくとも1つの運搬デバイスが造形平面を別の装置又はこの装置の別の領域、特に取扱いチャンバへ運搬する動きを制御するように適合することができる。前述したように、固化されていない造形材料を付加造形された物体から除去することができる取扱いステーションもまた、本出願の範囲内の装置であると考えることができ、対応する取扱いチャンバは、本出願の範囲内のプロセスチャンバであると考えることができる。また、3次元の物体を付加製造する装置は、実際の製造プロセスが行われるプロセスチャンバと、固化されていない造形材料が付加造形された物体から除去され又は物体が清浄にされる取扱いチャンバとをそれぞれ備えることも可能である。
【0025】
安全デバイスは、判定された化学的及び/又は物理的パラメータが所定の値を満たす場合、又は許容範囲内にある場合にのみ、造形平面を別の装置又はこの装置の別の領域へ動かすことができるように、少なくとも1つの運搬デバイスが造形平面を運搬する動きを制御するように適合されている。たとえば、安全デバイスは、造形平面の温度が所定の温度値、たとえば51℃を下回る場合にのみ、造形平面を別の装置又はこの装置の別の領域へ動かすことができるように、少なくとも1つの運搬デバイスの動きを制御する。
【0026】
安全デバイスは、好ましくは、少なくとも1つの非接触センサを備える。少なくとも1つの非接触センサは、赤外線センサ及び/又は高温計及び/又はカメラとすることができ又はこれらを備えることができる。少なくとも1つのセンサが少なくとも1つの非接触センサとして構築され又はこれを備えることによって、センサの配置をより柔軟に選択することができる。特に、センサは、照射デバイスの作業空間の外側、特に造形平面付近でエネルギービームが走査される空間の外側に配置することができる。当然ながら、造形平面の複数の領域などのプロセスチャンバの複数の表面又は領域を判定するために、複数のセンサを設けることもできる。また、プロセスチャンバ内、特に造形平面内の温度を空間分解するように適合された高温計又はカメラなどの2次元センサを設けることも可能である。
【0027】
この装置の別の実施形態によれば、少なくとも1つのセンサは、プロセスチャンバの開口部内又は開口部に配置することができる。これにより、プロセスチャンバ内の少なくとも1つの化学的及び/又は物理的パラメータを判定することが可能になり、また付加製造プロセスで使用される装置の構成要素の運動経路又は作業空間から外れて少なくとも1つのセンサを配置することが可能になる。好ましくは、少なくとも1つのセンサは、プロセスチャンバに連結されたガス流チャネル、好ましくは吸引チャネル及び/又は排出チャネル、特に吸引チャネル又は排出チャネルの漏斗内に配置することができる。したがって、少なくとも1つのセンサは、プロセスガスが案内されるガス流チャネルなど、プロセスチャンバ内に予め設けられた開口部内に配置することができる。特に少なくとも1つのセンサをガス流チャネル内(又はガス流チャネルの開口部の領域内)に配置することによって、センサは、プロセスチャンバ内の温度を測定することができ、またプロセスチャンバ内の少なくとも1つの表面の温度を測定することも可能になる。さらに、(たとえばセンサグループを使用することによって)好ましくは吸引チャネル及び/又は排出チャネル内でプロセスガスの温度を測定することができる。
【0028】
ガス流チャネルの漏斗内又は漏斗に少なくとも1つのセンサを配置することで、追加の支持なく光センサを造形平面上へ誘導することができるように、造形平面に対して予め配置された表面上にセンサを配置することがさらに可能になる。
【0029】
さらに、少なくとも2つのセンサ、特に異なる測定原理を有する2つのセンサが、同じパラメータを判定するために設置可能である。少なくとも2つのセンサに同じパラメータを判定させることによって、冗長性が実現されるため、判定の信頼性が増大する。特に、同じパラメータ、たとえば温度を判定又は測定するために、2つの異なる測定原理を使用する少なくとも2つのセンサを有することによって、それぞれ他のセンサ又は他の測定原理を介した少なくとも1つのパラメータの判定に依拠することで、測定原理のうちの1つ又はセンサのうちの1つの測定の誤差を検出及び補償することができる。
【0030】
さらに、本発明は、3次元の物体を付加製造する装置、特に前述した本発明の装置向けの安全デバイスに関し、この装置は、少なくとも1つの造形平面を有するプロセスチャンバを備え、造形平面内で造形材料が直接に照射され、安全デバイスは、少なくとも1つの化学的パラメータ及び/又は少なくとも1つの物理的パラメータを判定するように適合されていて、安全デバイスは、判定された化学的及び/又は物理的パラメータに応じてプロセスチャンバのアクセス状態を制御するように適合されている。
【0031】
追加として、本発明は、エネルギー源によって固化することができる造形材料の層を連続して層ごとに選択的に照射及び固化することによって3次元の物体を付加製造する少なくとも1つの装置を動作させる方法に関し、この装置は、少なくとも1つの造形平面を有するプロセスチャンバを備え、造形平面内で造形材料が直接に照射され、少なくとも1つの化学的パラメータ及び/又は少なくとも1つの物理的パラメータが判定され、判定されたパラメータに応じてプロセスチャンバのアクセス状態が制御される。本発明の方法は、当然ながら、本発明の装置で実行することができる。
【0032】
本発明の装置に関して記載のすべての特徴、詳細、及び利点は、本発明の安全デバイス及び本発明の方法に完全に移行可能であることは自明である。
【0033】
本発明の例示的な実施形態について、図を参照して説明する。