特許第6681443号(P6681443)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6681443
(24)【登録日】2020年3月25日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】ランドセル用カバー
(51)【国際特許分類】
   A45F 3/04 20060101AFI20200406BHJP
   A45C 3/02 20060101ALI20200406BHJP
【FI】
   A45F3/04 400S
   A45C3/02 Z
   A45F3/04 400Z
   A45F3/04 400N
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-143631(P2018-143631)
(22)【出願日】2018年7月31日
(65)【公開番号】特開2020-18464(P2020-18464A)
(43)【公開日】2020年2月6日
【審査請求日】2019年1月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】500067330
【氏名又は名称】株式会社マルヨシ
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】特許業務法人竹内・市澤国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸吉 裕和
【審査官】 石井 茂
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3207415(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3208150(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3214391(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45F 3/04
A45C 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランドセルの冠の外側面を被覆する被覆面部を有するランドセル用カバーであって、該被覆面部の裏面側に、カバー横方向に架け渡し、該冠の下端部を挿し込みできる差込み部を備え、該差込み部の上縁部の両端部付近に切欠き部を有するランドセル用カバー。
【請求項2】
前記切欠き部は、三角形状に切り欠いてある請求項1に記載のランドセル用カバー。
【請求項3】
前記切欠き部は、最大深さを3mm〜10mmとしてある請求項1又は2に記載のランドセル用カバー。
【請求項4】
前記カバーは、表面側をポリプロピレン樹脂、中間をエチレン・酢酸ビニル共重合樹脂、裏面側をポリエチレン樹脂とした三層構成のシートから形成してなる請求項1〜3のいずれかに記載のランドセル用カバー。
【請求項5】
前記切欠き部は、前記カバーの側端部から5mm〜30mmの位置に形成してある請求項1〜4のいずれかに記載のランドセル用カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランドセルの冠(かぶせ)の外側面を被覆するランドセル用カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
ランドセルは、小学校時代の6年間使用されるものであり、その間に古くなり傷んでくるものである。特に、ランドセルの冠は、収納部の外側を覆うものであるため、傷がつきやすく、また、雨に濡れて品質が劣化しやすい部分である。
そこで、ランドセルが傷付くことなどを防ぐため、ランドセル用カバーでランドセル全体や冠の外側面を覆うことが行われている。
【0003】
そのようなランドセル用カバーとしては、例えば、ランドセルの冠の外側面を被覆する被覆面を有するカバーであって、被覆面は表側を塩化ビニル系合成樹脂シート、裏側をオレフィン系合成樹脂シートとしてなる重合シートにより形成し、重合シート周縁は縁取りして縫着した構成を有するランドセル用カバーがある(下記特許文献1参照)。
【0004】
また、ランドセルの収納部の開口部を覆った蓋と収納部の開口部との隙間をランドセルの一方の側面から覆う一方側面覆い部と、ランドセルの収納部の開口部を覆った蓋と収納部の開口部との隙間をランドセルの他方の側面から覆う他方側面覆い部とを設けたランドセルカバーがある(下記特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−312879号公報
【特許文献2】特開2014−110835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記に示したランドセル用カバーは、冠の外側面を被覆面部で覆うようにして冠に装着するものである。カバーには、位置ずれしないように固定するため、下端部付近に冠の下端部を挿し込む差込み部を設けてあるものがある。差込み部は、例えば、カバーの横方向に架け渡す帯状に形成したり、カバーの下端部にポケット状に形成したりしてある。
【0007】
冠を差込み部に挿し込む際には、差込み部の上縁部を指に引っ掛けてランドセル用カバーの被覆面部との隙間を拡げ、冠を挿入していくことになる。冠を挿入するときに、差込み部の上縁部が引っ掛かり、差込み部の上縁部、特に差込み部と被覆面部の継ぎ目付近が裂けて切れ目ができてしまうことがあった。このような切れ目が深くなると、カバーが振動により揺れ動いてしまい、しっかりと固定できなくなってしまうこともあった。さらには、差込み部が被覆面部から完全に切り裂かれてしまい、カバーとして使うことができなくなってしまうこともあった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、差込み部の上縁部を裂けにくくしたランドセル用カバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態のランドセル用カバーは、ランドセルの冠の外側面を被覆する被覆面部を有するランドセル用カバーであって、被覆面部の裏面側に、カバー横方向に架け渡し、冠の下端部を挿し込みできる差込み部を備え、差込み部の上縁部の両端部付近に切欠き部を有することを特徴とする。
【0010】
このように、差込み部の上縁部の両端部付近に切欠き部を設けることにより、冠を挿し込む際に差込み部が引っ掛かり引っ張られたとしても上縁部が裂けにくくなり、切れ目が入り込みにくくなる。そのため、従来に比べて長年に渡り使用することができる。
【0011】
上記形態のランドセル用カバーは、表面側をポリプロピレン樹脂、中間をエチレン・酢酸ビニル共重合樹脂、裏面側をポリエチレン樹脂とした三層構成のシートから形成してなるのが好ましい。このようにすることにより、カバーがランドセルに貼り付くことを防止しつつ、ソフトな風合いにすることができる。
【0012】
上記形態のランドセル用カバーは、切欠き部を三角形状に切り欠くことが好ましく、また、切欠き部の最大深さを3mm〜10mmとするのが好ましい。切欠き部をこのような形状にすることにより、差込み部が裂けにくくなる。
さらに、切欠き部をカバーの側端部から5mm〜30mmの位置に形成するのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明のランドセル用カバーの一実施形態を示した斜視図である。
図2図1に示したランドセル用カバーにおいて、被覆面部裏面側の下端部を拡大した部分拡大図である。
図3図2のA−A線断面図である。
図4図1に示したランドセル用カバーにおいて、切欠き部付近を拡大した部分拡大図である。
図5図1に示したランドセル用カバーを、ランドセルの冠に装着する手順を示した図である。
図6図1に示したランドセル用カバーを、ランドセルに装着した状態を示した図である。
図7】比較試験に用いたランドセル用カバーを示し、(A)は本発明相当品、(B)は比較品、(C)は概略寸法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のランドセル用カバーの一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
本発明の一実施形態のランドセル用カバー1は、図1に示すように、被覆面部2と、差込み部3と、を備えるものであり、図6に示すように、ランドセル5の冠5aに装着して冠5aの外側面を覆うことができるものである。
【0016】
ランドセル用カバー1は、特に限定するものではないが、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリプロピレン樹脂(PP)などのオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)などの合成樹脂シートから形成するのが好ましい。
【0017】
ランドセル用カバー1を合成樹脂シートから形成する場合、シートは単層でもよいが、二層、三層などの複層構成にしてもよい。例えば、表面側をポリプロピレン樹脂(PP)、中間をエチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、裏面側をポリエチレン樹脂(PE)とした三層構成にすることができる。このようにすることにより、ソフトな風合いにすることができ、また、カバー1をランドセル5に装着した際、カバー1がランドセル5に貼り付くことを防止できる。
ランドセル用カバー1を形成するシートの厚みは、特に限定するものではないが、0.1mm〜1mm、特に0.2mm〜0.7mmが好ましい。
また、ランドセル用カバー1は、有色、無色(透明)のいずれでもよく被覆面部2に絵柄を設けてもよい。
【0018】
被覆面部2は、図1又は図6に示すように、ランドセル5の冠5aの外側面を被覆するものであり、おおよそ縦幅40cm〜50cm、横幅25cm〜35cmの縦長長方形シート状に形成してある。被覆面部2の裏面側の下端部付近には、差込み部3が設けてある。被覆面部2の上端部の中央付近には、円形状の孔が設けてあり、輪状にしたゴム紐などを挿し通して掛け輪2aを形成してある。掛け輪2aは、カバー1をランドセル5に装着した際、ランドセル5の背かん首5cに掛けることができるようにしてある。
【0019】
差込み部3は、図2又は図3に示すように、カバー1の横方向に架け渡して形成してあり、ランドセル5の冠5aの下端部を挿し込み、納めることができるようにしてある。差込み部3は、両側縁部及び下縁部を綴じたポケット状に形成し、差込み部3の上縁部3a側を開口部3bとし、ランドセル5の冠5aを挿し込めるようにしてある。下縁部付近には、細横長矩形状に開口したスリット部3cを設け、ランドセル5のバックル5bが挿し通せるようにしてある。
本実施形態では、差込み部3をポケット状に形成してあるが、両側縁部のみを綴じた帯状に形成してもよい。また、本実施形態では、上縁部3aを水平直線状に形成してあるが、凸状又は凹状の湾曲状に形成してもよい。
【0020】
差込み部3を被覆面部2に固着するには、例えば、両側縁部や下縁部などをウェルダーなどで熱溶着するなどして固着することができる。なお、被覆面部2の周縁部や差込み部3の周縁部は、ウェルダーなどで熱により圧縮して縁取りをしておくのが好ましい。
【0021】
差込み部3の上縁部3aには、両端部付近に凹状に形成した切欠き部4が設けてある。
切欠き部4は、図4に示すように、本実施形態では、三角形状に形成してあり、カバー外側に位置する外側辺4aを、カバー内側に位置する内側辺4bよりも傾斜角を急にした左右非対称状の直角乃至鈍角三角形状に形成してある。
切欠き部4の角部4cは、角度を70°〜130°、特に80°〜110°にするのが好ましく、角折れ状ではなく微小半径の円弧状に形成しておくのが好ましい。切欠き部4を左右非対称状の三角形状にした場合は、角部4cはカバー1の外側寄りに位置させるのが好ましい。
また、本実施形態では、外側辺4a及び内側辺4bを直線状に形成してあるが、円弧状に形成してもよく、例えば、切欠き部4をU字形状や弓形状などに切り欠いて形成してもよい。
【0022】
切欠き部4は、特に限定するものではないが、図4に示すように、上縁部3a側の幅(図4の寸法w)を、カバー1の横幅に対して1:0.03〜1:0.1にするのが好ましく、具体的には、5mm〜30mm、特に10mm〜20mmにするのが好ましい。また、上縁部3aからの最大深さ(図4の寸法d)を、差込み部3の縦幅に対して1:0.005〜1:0.05にするのが好ましく、具体的には、2mm〜20mm、特に3mm〜15mmにするのが好ましい。
【0023】
切欠き部4は、特に限定するものではないが、カバー1の側端部からの水平方向の位置(図4の寸法x)を、カバー1の側端部からカバー1の横幅に対して1:0.03〜1:0.1の位置に設けるのが好ましく、具体的には、カバー1の側端部から5mm〜30mmの位置に設けるのが好ましく、特に10mm〜25mmの位置に設けるのが好ましい。
【0024】
カバー1を、ランドセル5に取り付けるには、図5に示すように、差込み部3の上縁部3aに指などを掛けて開口部3bを拡げ、開口部3bに冠5aの下端部を挿し込み、バックル5bをスリット部3aに挿し通して下方に露出させる。その後、被覆面部2を冠5aの外側面を覆うようにして被せていき、カバー1の上端部に設けた掛け輪2aをランドセル5の背かん首5cに掛け、図6に示すように、カバー1をランドセル5に取り付けることができる。
【0025】
従来では、カバー1をランドセル5に取付ける際、冠5aが差込み部3の上縁部に掛り、上縁部が引っ張られて裂かれやすく、特に差込み部3と被覆面部2との継ぎ目が裂かれやすくなり、大きな切れ目ができやすくなるものであった。
本発明のカバー1は、差込み部3の上縁部に切欠き部4を設けたため、上縁部が裂かれにくくなり、切れ目ができにくくなる。これは、切欠き部4を設けたことにより、上縁部3aにかかる引張力を適度に吸収するためであると思料される。
【0026】
ランドセル用カバー1を用いて耐久試験を行った。
図7(A)、(B)に示すように、表面側をポリプロピレン樹脂、中間をエチレン・酢酸ビニル共重合樹脂、裏面側をポリエチレン樹脂とした三層構成のシート(厚み0.3μm)からなるランドセル用カバーを作製して比較試験を行った。
図7(A)に示すカバーは、本発明に相当するものであり、差込み部の上縁部の両端部側に切欠き部を設けたものである。このカバーの概略寸法は図7(C)に示すとおりである。
図7(B)に示すカバーは、切欠き部を設けない以外は図7(A)のカバーと同形状としてある。
【0027】
図7(A)及び(B)に示すカバーそれぞれに、カバーの上端部中間部にクリップを挟み、差込み部の上縁部中間部にフックを引っ掛け、それぞれを反対方向に引っ張り、カバーが切り裂かれるまでの耐荷重を測定した。
測定した結果、図7(A)に示すカバーは、446N以上の荷重に耐えたのに対し、図7(B)に示すカバーは、270Nを超える荷重で裂け始めてしまった。
【0028】
上記実施形態の構成態様は、本発明を限定するものとして挙げたものではなく、技術目的を共通にするかぎり変更は可能であり、本発明はそのような変更を含むものである。
【符号の説明】
【0029】
1ランドセル用カバー
2被覆面部
2a掛け輪
3差込み部
3a上縁部
3b開口部
3cスリット部
4切欠き部
4a外側片
4b内側片
4c角部
5ランドセル
5a冠
5bバックル
5c背かん首
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7