(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
揮散性薬剤を保持可能な間隙が形成された薬剤保持層と、前記間隙より大きいサイズの空隙が形成された通気層とを有する薬剤保持体を回転駆動部によって回転させて、前記揮散性薬剤を空気中に揮散させる薬剤揮散方法であって、
前記間隙は、前記薬剤保持層の厚みが0.2〜1.0mmの場合において、毛管現象により前記揮散性薬剤を前記薬剤保持層の内部に吸い上げることができる大きさに設定され、
前記空隙は、前記通気層の厚みが3.9〜4.8mmの場合において、前記間隙に保持された前記揮散性薬剤が当該空隙に移動できる大きさに設定され、
前記薬剤保持体は、回転軸に平行な、内径(R2)が6.0〜10.0cmの中空円筒形状に構成され、
前記中空円筒形状に構成される前記薬剤保持体において、厚みが0.2〜1.0mmの前記薬剤保持層上に、厚みが3.9〜4.8mmの前記通気層が積層され、
回転体の遠心力の強さを示す指標である遠心効果(G)は、次式(I)によって示され、
遠心効果(G) = R × N2 / 894 ・・・ (I)
〔R:回転半径(m)、N:回転数(rpm)〕
前記式(I)中のRが0.005×R2(単位:m)であり、前記薬剤保持体の回転時に33.6〜150(G)の遠心効果が得られるように、前記回転駆動部によって前記薬剤保持体の回転速度を調整する回転調整工程を包含し、
前記薬剤保持体は、前記通気層の1層の厚み(A)と前記薬剤保持層の1層の厚み(B)との比率(P=A/B)が9以上24以下の値となるように設定され、
前記回転駆動部は、前記遠心効果(G)を前記比率(P)で除した遠心揮散指数(T=G/P)が1.40以上12.2以下の値となるように、前記回転速度が設定されている薬剤揮散方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
薬剤揮散装置は、主に屋内で使用されるケースが多いが、昨今の住宅事情の変化等により、薬剤揮散装置の使用空間は大型化する傾向がある。また、一般住宅における居間等だけでなく、オフィス、店舗、作業場等の比較的大きな空間や、さらには、屋外においても薬剤揮散装置を使用したいという要望も増えている。
【0006】
この点に関し、特許文献1及び特許文献2に係る発明は、大きな空間や屋外において使用することを想定したものではない。特許文献1において使用されている薬剤保持体は、通常の家屋の居室程度の空間において使用されることが記載されている(特許文献1の明細書第0029段落を参照)。特許文献2の薬剤保持体は、実施例として6畳間の居室における害虫防除試験が示されている(特許文献2の明細書第0032段落を参照)。このように、特許文献1及び特許文献2に係る発明は、いずれも一般的な住宅の居室等で使用されるものであるため、比較的大きな空間で使用したり、屋外に持ち出したりすると、薬剤の揮散効果を十分に発揮させることができない場合がある。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、比較的大きな空間や屋外における使用であっても、薬剤保持体から薬剤を効率よく揮散させ、且つ十分に拡散させることを可能とする薬剤揮散装置、及び薬剤揮散方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明に係る薬剤揮散装置の特徴構成は、
揮散性薬剤を保持可能な間隙が形成された薬剤保持層と、前記間隙より大きいサイズの空隙が形成された通気層とを有する薬剤保持体と、
前記薬剤保持体を回転させる回転駆動部と、
を備えた薬剤揮散装置であって、
前記薬剤保持体の回転時に10〜150(G)の遠心効果が得られるように、前記薬剤保持体の形状及びサイズ、並びに前記回転駆動部の回転速度が設定されていることにある。
【0009】
薬剤保持体に保持された揮散性薬剤の揮散効率を高めるためには、一般に、特許文献1に記載のように薬剤保持体を回転させて気流を発生させたり、また、特許文献2に記載のように薬剤保持体にファンの風を当てる等の対策が行われる。従来技術においては、例えば、特許文献1の場合、薬剤保持体に作用する遠心力を大きくする必要があると考えられていた。ところが、本発明者らによる最近の検討結果によれば、薬剤保持体からの揮散性薬剤の揮散効率を高めるためには、単に薬剤保持体の回転数や風力を上げたり、薬剤保持体のサイズを大きくして当該薬剤保持体に作用する遠心力を高めればよいとは限らず、薬剤保持体において適切な遠心効果が得られるように各種の調整を行うことが重要であることが明らかとなった。そこで、本発明では、薬剤揮散装置として上述の構成を採用した。
本構成の薬剤揮散装置によれば、薬剤保持体は、揮散性薬剤を保持可能な間隙が形成された薬剤保持層と、前記間隙より大きいサイズの空隙が形成された通気層とを有するため、薬剤保持層の間隙に保持された揮散性薬剤は、通気層の空隙に移動することにより空気中に揮散し易い状態となる。この状態で回転駆動部が薬剤保持体を回転させると、揮散性薬剤は空気中に揮散するが、このとき、薬剤保持体において10〜150(G)の遠心効果が得られるように、薬剤保持体の形状及びサイズ、並びに回転駆動部の回転速度が設定されている。このため、薬剤保持体に保持されている揮散性薬剤は、空気中に効率よく揮散し、且つ十分に拡散することができる。従って、本構成の薬剤揮散装置であれば、比較的大きな空間や屋外における使用であっても、揮散性薬剤の効果を十分に発揮させることが可能となる。
【0010】
本発明に係る薬剤揮散装置において、
前記薬剤保持体は、前記通気層の厚み(A)と前記薬剤保持層の厚み(B)との比率(P=A/B)が1.5より大きく50以下の値となるように設定され、
前記回転駆動部は、前記遠心効果(G)を前記比率(P)で除した遠心揮散指数(T=G/P)が1.1より大きく22未満の値となるように、前記回転速度が設定されていることが好ましい。
【0011】
本構成の薬剤揮散装置によれば、薬剤保持体における通気層の厚み(A)と薬剤保持層の厚み(B)との比率(P=A/B)、及び回転駆動部における遠心揮散指数(T=G/P)が適切な範囲に設定されているため、薬剤保持体に保持されている揮散性薬剤は、より効率よく揮散し、且つ十分に空気中に拡散することができる。従って、本構成の薬剤揮散装置であれば、比較的大きな空間や屋外における使用であっても、揮散性薬剤の効果を確実に発揮させることが可能となる。
【0012】
本発明に係る薬剤揮散装置において、
前記薬剤保持体は、前記薬剤保持層と前記通気層とを積層したものであり、積層方向において、前記薬剤保持層は、前記通気層の片側又は両側に配置されていることが好ましい。
【0013】
本構成の薬剤揮散装置によれば、薬剤保持層及び通気層が適切な積層体として薬剤保持体を構成しているため、通気層の通気性を維持しながら、薬剤保持層に保持されている揮散性薬剤を空気中に効率よく揮散させ、且つ確実に拡散させることができる。
【0014】
本発明に係る薬剤揮散装置において、
前記薬剤保持体は、前記通気層に隣接する位置に、当該通気層の形態を維持する形態維持層を有することが好ましい。
【0015】
本構成の薬剤揮散装置によれば、通気層に隣接する位置に設けられた形態維持層によって通気層の形態が維持されるため、薬剤保持体の通気性を十分に確保することができる。従って、薬剤保持体に保持されている揮散性薬剤を略すべて空気中に揮散させて無くなるまで、薬剤揮散装置を使用することが可能となる。
【0016】
本発明に係る薬剤揮散装置において、
前記薬剤保持体は、回転軸に直交する円盤形状に構成されていることが好ましい。
【0017】
本構成の薬剤揮散装置によれば、薬剤保持体を回転軸に直交する円盤形状とすることで、薬剤保持体が薄型化されるため、携帯性に優れた薬剤揮散装置を構成することができる。
【0018】
本発明に係る薬剤揮散装置において、
前記薬剤保持体は、回転軸に平行な中空円筒形状に構成されていることが好ましい。
【0019】
本構成の薬剤揮散装置によれば、薬剤保持体を回転軸に平行な中空円筒形状とすることで、長さ方向において回転軸から薬剤保持層までの距離が等しくなるため、薬剤保持層のあらゆる位置において揮散性薬剤に作用する遠心効果が略等しくなる。その結果、薬剤保持体の全周に亘って、略均一な薬剤揮散効果を発揮させることができる。
【0020】
本発明に係る薬剤揮散装置において、
前記薬剤保持体は、前記回転駆動部が接続される回転カートリッジに収納されていることが好ましい。
【0021】
本構成の薬剤揮散装置によれば、薬剤保持体は回転カートリッジに収納された状態で回転駆動部によって回転されるため、遠心力で薬剤保持体が変形することが抑制される。その結果、薬剤保持体の回転時における遠心効果のバラツキを低減することができる。
【0022】
本発明に係る薬剤揮散装置において、
前記揮散性薬剤は、30℃における蒸気圧が2×10
−4〜1×10
−2mmHgであるピレスロイド化合物を含むことが好ましい。
【0023】
本構成の薬剤揮散装置によれば、揮散性薬剤として適度な蒸気圧を有するピレスロイド化合物を使用しているため、薬剤保持体の遠心効果により、ピレスロイド化合物を空気中に効率よく揮散させ、且つ十分に拡散させることができる。
【0024】
上記課題を解決するための本発明に係る薬剤揮散方法の特徴構成は、
揮散性薬剤が保持された薬剤保持体を回転させて、前記揮散性薬剤を空気中に揮散させる薬剤揮散方法であって、
10〜150(G)の遠心効果が得られるように、前記薬剤保持体の回転速度を調整する回転調整工程を包含することにある。
【0025】
本構成の薬剤揮散方法によれば、上述した本発明の薬剤揮散装置と同様の優れた効果を奏することができる。
すなわち、薬剤保持体の回転速度を調整する回転調整工程を行うにあたり、薬剤保持体において10〜150(G)の遠心効果が得られるように、薬剤保持体の形状及びサイズ、並びに回転駆動部の回転速度が設定されているため、薬剤保持体に保持されている揮散性薬剤は、空気中に効率よく揮散し、且つ十分に拡散することができる。従って、本構成の薬剤揮散方法を実施すれば、比較的大きな空間や屋外における使用であっても、揮散性薬剤の効果を十分に発揮させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の薬剤揮散装置に関する実施形態について説明する。本発明の薬剤揮散方法については、薬剤揮散装置の説明中で併せて説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態や図面に記載される構成に限定されることを意図しない。
【0028】
本発明の薬剤揮散装置は、基本構成として、薬剤保持体と回転駆動部とを備える。説明の便宜上、初めに薬剤保持体及び当該薬剤保持体に保持される揮散性薬剤について説明し、その後、本発明の薬剤揮散装置について説明する。
【0029】
〔薬剤保持体〕
図1は、本発明の薬剤揮散装置に使用される薬剤保持体50の概略斜視図である。
図1中の拡大円は、薬剤保持体50の積層面の一部を拡大したものである。薬剤保持体50は、薬剤保持層10と通気層20とを備えており、さらに任意の構成として形態維持層30を備えている。薬剤保持層10には、後述する揮散性薬剤を保持可能な間隙11が形成されている。薬剤保持層10は、間隙11の毛管現象によって揮散性薬剤を薬剤保持層10の内部に吸い上げ、保持することができる。通気層20には、空気が通流可能な空隙21が形成されている。通気層20の空隙21は、薬剤保持層10の間隙11より大きいサイズに設定されている。これにより、薬剤保持層10の間隙11に保持された揮散性薬剤は、通気層20の空隙21に移動することにより空気中に揮散し易い状態となる。
【0030】
薬剤保持層10及び通気層20には、メッシュ状繊維シート、織布、不織布、編物等の繊維構造体が好適に使用されるが、多孔質シート、多孔質フィルム等の多孔質体を使用することも可能である。薬剤保持層10及び通気層20は、同一の素材で構成してもよく、異なる素材で構成してもよい。薬剤保持層10及び通気層20を同一の素材で構成する場合は、同一素材で構成された間隙11を有する薬剤保持層10と空隙21を有する通気層20とを別々に準備し、これらを互いに接合することで薬剤保持体50を形成する。あるいは、薬剤保持層10と通気層20とを一体化した繊維構造体又は多孔質体として形成し、繊維構造体における繊維間隙又は多孔質体における孔径が、薬剤保持層10の側より通気層20の側の方が大きくなるような段階構造又は傾斜構造を備えたものとすることも可能である。薬剤保持層10及び通気層20を異なる素材で構成する場合は、例えば、薬剤保持層10として織布を使用し、通気層20としてメッシュ状繊維シートを使用し、両者を接合した繊維構造体とする。この場合、薬剤保持層10及び通気層20に使用する繊維は、保持している揮散性薬剤を安定して揮散できるとともに、その揮散状態を良好に持続できる素材が選択される。繊維構造体の素材(繊維)としては、例えば、木綿、麻、羊毛、絹等の天然繊維、レーヨン等の半合成繊維、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなど)、ナイロン、アクリル、ビニロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、アラミド、ポリフェニレンサルファイド等の合成繊維、ガラス繊維、カーボン繊維、セラミック繊維、金属繊維等の無機繊維が挙げられる。これらの繊維のうち、ポリエステル、ナイロンが好ましく使用される。また、上掲の繊維は、単独で使用することも可能であるが、異なる複数種の繊維を組み合わせて使用することも可能である。
【0031】
なお、薬剤保持層10と通気層20とを積層して薬剤保持体50を形成する場合、
図1に示すように、その積層方向において、薬剤保持層10を通気層20の片側にのみ配置してもよいが、通気層20の両側に配置することも可能である。また、薬剤保持層10と通気層20とを通常この順に繰り返し交互に積層し、三層以上の構成とすることも可能である。さらには、薬剤保持層10の薬剤保持能力や強度に支障を来さない限りにおいて、薬剤保持層10に通気孔を適宜穿設し、薬剤揮散性の改善を図ることも可能である。
【0032】
ところで、薬剤保持体50の通気層20に立体メッシュ状の繊維シート等の繊維構造体を使用する場合においては、薬剤保持体50の通気性を良好に確保する必要があり、そのためには通気層20における繊維間隙(空隙21)が崩れないようにする必要がある。そこで、薬剤保持体50においては、
図1に示すように、通気層20に隣接する位置に形態維持層30を設けることが好ましい。形態維持層30は、通気層20を構成する繊維を製編することで、通気層20の空隙21を維持するように機能する。これにより、薬剤保持体50は通気性を十分に確保することができる。その結果、薬剤保持体50に保持されている揮散性薬剤を略すべて空気中に揮散させて無くなるまで使用することが可能となる。なお、薬剤保持体50の素材の通気性は、日本工業規格(JIS L 1096)に準拠して測定される通気度として、200〜500cm
3/cm
2/秒の範囲となるように設定することが好ましい。素材の通気度が上記の範囲であれば良好な毛管現象をもたらし、揮散性薬剤の移動がスムーズに行われて、効率的な揮散に繋がる。
【0033】
薬剤保持体50を構成する薬剤保持層10及び通気層20、並びに任意の構成である形態維持層30は、夫々適切な厚みに設定される。薬剤保持層10は、0.05〜3mm、好ましくは0.2〜1mmに設定される。薬剤保持層10の厚みが0.05mm未満の場合、揮散性薬剤を保持する容量が不足し、揮散性薬剤の効果を十分且つ持続的に発揮させることが困難となる。薬剤保持層10の厚みが3mmを超える場合、薬剤保持層10による揮散性薬剤の保持力が過大となって揮散性薬剤の一部が薬剤保持層10に残留し、効率よく揮散させることが困難となる。また、薬剤保持層10が嵩張るため、様々な形態に加工することが困難となる。通気層20は、0.5〜6mm、好ましくは1〜5mmに設定される。通気層20の厚みが0.5mm未満の場合、通気層20が揮散性薬剤によって過剰に湿潤され、また、通気層によって生起される風力(攪拌気流)が弱くなり、揮散性薬剤を効率よく揮散させることが困難となる。通気層20の厚みが6mmを超える場合、薬剤保持体50の厚みに対する制約から薬剤保持層10の厚みを薄くせざるを得ず、その結果、薬剤保持体10の薬剤保持能力に支障が生じたり、あるいは、通気層20の通気抵抗が増大したりして、揮散性薬剤の揮散状態が不安定となる。形態維持層30は、0.2〜1mmに設定される。形態維持層30の厚みが上記の範囲であれば、薬剤保持体50の通気性を確保しながら、薬剤保持体50の形態を長時間に亘って維持することができる。
【0034】
〔揮散性薬剤〕
薬剤保持体50に保持される揮散性薬剤は、室温において通常の揮散性を有する薬剤であれば、特に限定されない。また、薬剤保持体50の揮散性薬剤の保持量は、使用用途や有効持続時間等の条件に応じて、40〜2000mgの範囲で調整可能である。本発明において使用可能な揮散性薬剤は、例えば、揮散性を有するピレスロイド化合物、殺虫剤、殺ダニ剤、忌避剤、抗菌剤、防虫香料、消臭剤等が挙げられる。これらのうち、揮散性を有するピレスロイド化合物は、防虫効果及び殺虫効果に優れた揮散性薬剤であるため好ましく使用されるが、特に、30℃における蒸気圧が2×10
−4〜1×10
−2mmHgであるピレスロイド化合物は、揮散性と持続性とのバランスが良好であるため、より好ましく使用される。有用な揮散性を有するピレスロイド化合物を例示すると、2,3,5,6−テトラフルオロベンジル 2,2−ジメチル−3−(2,2−ジクロロビニル)シクロプロパンカルボキシレート(トランスフルトリン)、4−メチル−2,3,5,6−テトラフルオロベンジル 2,2−ジメチル−3−(1−プロペニル)シクロプロパンカルボキシレート(プロフルトリン)、4−メトキシメチル−2,3,5,6−テトラフルオロベンジル 2,2−ジメチル−3−(1−プロペニル)シクロプロパンカルボキシレート(メトフルトリン)、4−メトキシメチル−2,3,5,6−テトラフルオロベンジル 2,2,3,3−テトラメチルシクロプロパンカルボキシレート、4−プロパルギル−2,3,5,6−テトラフルオロベンジル 2,2,3,3−テトラメチルシクロプロパンカルボキシレート、エムペントリン等が挙げられる。これらのピレスロイド化合物には、各種の異性体を有するものが存在するが、その場合、異性体のうちの一種のみからなる単独物、又は任意の比率の異性体混合物の何れであっても使用可能である。また、上掲のピレスロイド化合物から2種以上を適宜選択し、揮散性の調整を図って長期間の使用に耐え得る製剤とすることも可能である。
【0035】
上掲のピレスロイド化合物以外の揮散性薬剤には、殺虫剤として、ジノテフラン等のネオニコチノイド系殺虫成分、フェニトロチオン等の有機リン系殺虫成分、プロポクスル等のカーバメート系殺虫成分が挙げられる。殺ダニ剤として、5−クロロ−2−トリフルオロメタンスルホンアミド安息香酸メチル、サリチル酸フェニル、3−ヨード−2−プロピニルブチルカーバメート等が挙げられる。忌避剤(忌避成分)として、ディート、ジメチルフタレート、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール等が挙げられる。抗菌剤(抗菌成分)として、ヒノキチオール、テトラヒドロリナロール、オイゲノール、アリルイソチオシアネート等が挙げられる。防虫香料として、シトロネラ油、オレンジ油、レモン油、ライム油、ユズ油、ラベンダー油、ペパーミント油、ユーカリ油、ジャスミン油、檜油、緑茶精油、リモネン、α−ピネン、シトロネラール、テルピネオール、リナロール、ゲラニオール、フェニルエチルアルコール、アミルシンナミックアルデヒド、クミンアルデヒド、ベンジルアセテート等が挙げられる。また、消臭剤の他に、「緑の香り」と呼ばれる青葉アルコールや青葉アルデヒドを配合することも有用である。
【0036】
揮散性薬剤は、そのままの状態で使用してもよいが、各種の溶剤で希釈したり、あるいは各種の添加剤を加えて使用することも可能である。溶剤としては、n−パラフィン、イソパラフィン等の炭化水素系溶剤、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキシレングリコール等の炭素数3〜6のグリコール、及びこれらのグリコールエーテル、ケトン系溶剤、並びにエステル系溶剤などが挙げられる。揮散性薬剤は、これらの溶剤を用いて適宜希釈され、薬剤保持体50に保持される。添加剤として、例えば、BHT、BHA、2,2´−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2´−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4´−メチレンビス(2−メチル−6−t−ブチルフェノール)、3,5−ジーt−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、メルカブトベンズイミダゾール等の安定剤が挙げられる。また、必要に応じて、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、光沢剤、消炎剤、制汗剤、保湿剤、界面活性剤、分散剤、香料等の種々の成分を添加することも可能である。
【0037】
〔薬剤揮散装置〕
次に、上記のように構成した薬剤保持体を備える本発明の薬剤揮散装置について説明する。本発明の薬剤揮散装置は、殺虫剤や忌避剤等の揮散性薬剤を空気中に揮散させることにより、蚊類、ユスリカ類、コバエ類等の飛翔害虫や、ゴキブリ類、アリ類、ムカデ類、クモ類等の匍匐害虫を防除するために使用されるものである。以下、本発明の薬剤揮散装置における代表的な二つの実施形態について説明する。
【0038】
<第一実施形態>
図2は、本発明の第一実施形態に係る薬剤揮散装置100の概略構成図である。(a)は薬剤揮散装置100の縦断面図であり、(b)は薬剤揮散装置100のA−A´位置における横断面図である。薬剤揮散装置100は、基本構成として、薬剤保持体51と回転駆動部60とを備えている。薬剤保持体51は、薬剤保持層10と通気層20とを積層したものである。また、通気層20に隣接する位置に形態維持層30が設けられている。本実施形態の薬剤揮散装置100では、薬剤保持体51として、
図2(b)に示すように、円盤形状に加工されたものが使用される。すなわち、これは、
図1に示す薬剤保持層10、通気層20、及び形態維持層30の積層物からなるシート状の薬剤保持体50を円形に型抜きしたものである。この場合、薬剤保持体51のサイズは直径R1が約4〜8cmに設定され、薬剤保持層10と通気層20とを合わせた厚みD1が約1〜7mmに設定される。このような円盤形状の薬剤保持体51とすれば、薬剤保持体51が薄型化されるため、携帯性に優れた薬剤揮散装置100を構成することができる。
【0039】
円盤形状の薬剤保持体51は、回転カートリッジ70に収納した状態で使用される。回転カートリッジ70は、シャフト71、及びケース72を備えており、薬剤保持体51の中心がシャフト71によって貫通された状態で固定される。回転カートリッジ70のケース72には、薬剤保持体51から揮散性薬剤を効率よく揮散させるため、開口部(図示せず)が適宜設けられる。回転カートリッジ70のシャフト71は、回転駆動部60に接続される。回転駆動部60は、電源61及び駆動モーター62が内蔵されており、薬剤保持体51が収納された回転カートリッジ70を設定した回転速度で回転させることができる。このように、薬剤保持体51を回転カートリッジ70に収納した状態で回転駆動部60によって回転させると、遠心力で薬剤保持体51が変形することが抑制されるため、薬剤保持体51の回転時における遠心効果(これについては後述する)のバラツキを低減することができる。回転駆動部60の電源61は、直流電源又は交流電源の何れでも構わないが、薬剤揮散装置100を携帯する場合は、アルカリ電池、マンガン電池、充電式電池、太陽電池等の電池が好適に使用される。電池の容量は、用法や用量に応じて適宜選択可能である。例えば、薬剤揮散装置100を携帯用又は屋内部屋用の揮散装置として利用する場合は、単2型乃至単4型電池を使用することが好ましく、大空間用の大型揮散装置として利用する場合は、単1型乃至単2型電池を複数本使用することが好ましい。駆動モーター62は、一般に使用されるモーターであれば特に限定されず、例えば、ブラシモーターやブラシレスモーターが挙げられる。特に、ブラシレスモーターは、耐久性及び使用性に優れているため、薬剤揮散装置100の駆動モーター62として好適である。駆動モーター62の回転数(すなわち、薬剤保持体51の回転数)は、500〜2000rpmに設定され、好ましくは700〜1600rpmに設定される。回転数が500rpm未満の場合、十分な薬剤揮散効果が得られない可能性があり、回転数が2000rpmを超える場合、電源61として電池を使用した場合に消耗が早まり、長時間の使用ができなくなる。また、回転駆動部60には、ON−OFFスイッチや、使用終了時期を知らせるパイロットランプ等を設けることも可能である。パイロットランプ等を設けた場合、発熱によって回転駆動部60の表面温度が若干上昇するため、この熱を利用して薬剤保持体51に保持されている揮散性薬剤の揮散性を向上させることも可能である。
【0040】
回転駆動部60を駆動させると、薬剤保持体51は回転カートリッジ70と一体となってシャフト71の軸心(回転軸)Xの周りを回転する。このとき、薬剤保持体51には回転による遠心力が作用するとともに、回転に伴って薬剤保持体51の周囲には
図2(a)の矢印で示すように攪拌気流が発生する。そうすると、薬剤保持層10に保持されていた揮散性薬剤は、通気層20から空気中に揮散し、さらに拡散して、薬剤揮散装置100の周囲において防虫効果及び殺虫効果が発揮される。
【0041】
<第二実施形態>
図3は、本発明の第二実施形態に係る薬剤揮散装置200の概略構成図である。(a)は薬剤揮散装置200の縦断面図であり、(b)は薬剤揮散装置200のB−B´位置における横断面図である。薬剤揮散装置200は、第一実施形態の薬剤揮散装置100と同様に基本構成として、薬剤保持体52と回転駆動部60とを備えている。薬剤保持体52は、薬剤保持層10と通気層20とを積層したものである。また、通気層20に隣接する位置に形態維持層30が設けられている。本実施形態の薬剤揮散装置200では、薬剤保持体52として、
図3(b)に示すように、中空円筒形状に加工されたものが使用される。すなわち、これは、
図1に示す薬剤保持層10、通気層20、及び形態維持層30の積層物からなるシート状の薬剤保持体50を薬剤保持層10が内側となるように筒状に巻いたものである。この場合、薬剤保持体52のサイズは内径R2が約6〜10cmに設定され、薬剤保持層10と通気層20とを合わせた厚みD2が約1〜7mmに設定され、高さT1が3〜10cmに設定される。このような中空円筒形状の薬剤保持体52とすれば、長さ方向において中心軸(後述の回転軸)から薬剤保持層10までの距離が等しくなるため、薬剤保持層10のあらゆる位置において揮散性薬剤に作用する遠心効果(これについては後述する)が略等しくなる。その結果、薬剤保持体52の全周に亘って、略均一な薬剤揮散効果を発揮させることができる。
【0042】
中空円筒形状の薬剤保持体52は、回転カートリッジ70に収納した状態で使用される。回転カートリッジ70は、シャフト71、ケース72、及び係止片73を備えており、薬剤保持体52は、ケース72と係止片73との隙間に挿入して固定される。回転カートリッジ70のケース72には、薬剤保持体52から揮散性薬剤を効率よく揮散させるため、開口部(図示せず)が適宜設けられる。回転カートリッジ70のシャフト71は、電源61及び駆動モーター62が内蔵された回転駆動部60に接続される。回転駆動部60の構成は第一実施形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0043】
回転駆動部60を駆動させると、薬剤保持体52は回転カートリッジ70と一体となってシャフト71の軸心(回転軸)Xの周りを回転する。このとき、薬剤保持体52には回転による遠心力が作用するとともに、回転に伴って薬剤保持体52の周囲には
図3(a)の矢印で示すように攪拌気流が発生する。そうすると、薬剤保持層10に保持されていた揮散性薬剤は、通気層20から空気中に揮散し、さらに拡散して、薬剤揮散装置200の周囲において防虫効果及び殺虫効果が発揮される。
【0044】
〔薬剤揮散装置における遠心効果〕
上述の第一実施形態に係る薬剤揮散装置100、及び第二実施形態に係る薬剤揮散装置200においては、薬剤保持体50(51,52)の回転時に適切な遠心効果が得られるように設定することが重要である。ここで、遠心効果(G)とは、回転体の遠心力の強さを表す指標であり、下記の式(I)によって示される数値(G=m/秒
2)である。
遠心効果(G) = R × N
2 / 894 ・・・ (I)
〔R:回転半径(m)、N:回転数(rpm)〕
【0045】
本発明者らは、薬剤保持体50(51,52)の回転時に10〜150(G)の遠心効果が得られるように、薬剤保持体50(51,52)の形状及びサイズを設定し、さらに回転駆動部60の回転速度を調整すると、薬剤保持体50(51,52)から揮散性薬剤を効率よく揮散させ、且つ十分に拡散させることができることを見出した。遠心効果が10(G)未満の場合、薬剤揮散装置100,200としての揮散性能が不足し、揮散性薬剤による防虫効果及び殺虫効果が十分に得られない虞がある。遠心効果が150(G)を超える場合、薬剤保持体50(51,52)に保持されている揮散性薬剤が周囲に飛散し、防虫効果及び殺虫効果が十分に得られない虞がある。また、揮散性薬剤が液体のまま飛び散って周囲を汚染する原因にもなり得る。薬剤揮散装置100,200を用いて本発明の薬剤揮散方法を実施するにあたっては、10〜150(G)の遠心効果が得られるように、薬剤保持体50(51,52)の回転速度を調整すれば(回転調整工程)、薬剤保持体50(51,52)に保持されている揮散性薬剤を空気中に効率よく揮散させ、且つ十分に拡散させることができるため、薬剤揮散装置100,200を比較的大きな空間や屋外で使用しても、防虫効果及び殺虫効果を十分に発揮させることが可能となる。
【0046】
また、薬剤揮散装置100,200の揮散性能に関し、通気層20の空隙21は、薬剤保持層10の間隙11よりも大きいサイズに設定されているため、薬剤保持体50(51,52)の回転に伴って発生する攪拌気流は、揮散性薬剤の揮散に影響すると考えられる。本発明者らはさらなる鋭意検討の末、上記の遠心効果(G)が得られる範囲において、薬剤保持体50(51,52)を構成する薬剤保持層10及び通気層20を適切な厚み比率に設定すると、薬剤揮散装置100,200は効率的に揮散性能を発揮し得ることを見出した。ここで、通気層20の厚みをAとし、薬剤保持層10の厚みをBとすると、厚み比率(P){P=A/B}は、1.5より大きく50以下の値となるように設定することが好ましい。厚み比率(P)が1.5以下の場合、通気層20の厚み(A)が薬剤保持層10の厚み(B)に対して不足するため、薬剤保持層10に保持されている揮散性薬剤を安定して揮散させることが困難となる。また、通気層20がもたらす攪拌気流が弱くなるため、揮散性薬剤の揮散効率が低下することになる。一方、厚み比率(P)が50を超える場合、通気層20の厚み(A)が薬剤保持層10の厚み(B)に対して過大となるため、薬剤保持層10に保持されている揮散性薬剤は早期に大半が揮散し、揮散性薬剤の持続的な効果を得ることが困難となる。また、薬剤保持体50(51,52)を回転カートリッジ70に収納した状態では、薬剤保持層10と通気層20との厚みの和に制約があるため、薬剤保持層20の厚みが相対的に薄くなる。その結果、揮散性薬剤の保持量が少なくなり、長時間に亘って揮散性薬剤の効果を発揮させることが困難となる。
【0047】
さらに、本発明者らは、遠心効果(G)と厚み比率(P)との関係を詳細に検証したところ、遠心効果(G)を厚み比率(P)で除した値(G/P)を遠心揮散指数(T)と規定し、回転負荷等のファクターを考慮した上で、遠心揮散指数(T)を適切な範囲に設定すれば、薬剤揮散装置100,200はさらに効率的に揮散性能を発揮し得ることを見出した。本発明においては、遠心揮散指数(T)が1.1より大きく22未満の値となるように、薬剤保持体50(51,52)の回転速度(すなわち、回転駆動部60の回転数)を設定することが有効である。この場合、薬剤保持体50(51,52)に保持されている揮散性薬剤は、より効率よく揮散し、且つ十分に空気中に拡散するため、薬剤揮散装置100,200をより大きな空間や屋外で使用しても、防虫効果及び殺虫効果を確実に発揮させることが可能となる。
【0048】
なお、第二実施形態に係る薬剤揮散装置200においては、薬剤保持体52は中空円筒形状であるため、第一実施形態における円盤形状の薬剤保持体51と比べると、一般に大型化し、回転負荷が大きくなる傾向がある。一方、中空円筒形状の薬剤保持体52は、円盤形状の薬剤保持体51よりも薬剤保持層10の表面積を大きくすることができる。そこで、第二実施形態においては、薬剤保持層10の厚みを薄くし、回転負荷の増大を相殺するように設計することも可能である。
【実施例】
【0049】
本発明の薬剤揮散装置を使用した場合の防虫効果及び殺虫効果を確認するため、屋外における効力確認試験(実施例1、2及び3)、並びに室内における効力確認試験(実施例4及び5)を実施した。
【0050】
<実施例1>
ポリエステル繊維からなる薬剤保持層(厚み:0.3mm)と、ポリエステル繊維からなる通気層(厚み:1.6mm)とを、拠糸状態のポリエステル繊維を用いて積層するように接合し、さらに通気層の上部に隣接するようにポリエステル繊維からなる形態維持層(厚み:0.2mm)を設けて円盤形状の薬剤保持体(厚み:2.1mm、外径:4.5cm)を形成した。この薬剤保持体における通気層と薬剤保持層との厚み比率(P)は5.3となる。次いで、薬剤保持体をポリカーボネート製の回転カートリッジ(厚み:8mm、外径5.2cm)に収納し、揮散性薬剤としてメトフルトリン40mgをケロシン0.07mLに溶解させた薬液を薬剤保持体に万遍なく滴下し、メトフルトリンを薬剤保持体に保持させた。そして、回転カートリッジを回転駆動部に接続し、実施例1の薬剤揮散装置を構成した。
【0051】
実施例1の薬剤揮散装置において、回転駆動部を1200rpmで回転させると(この場合、薬剤保持体も1200rpmで回転する)、薬剤保持体に作用する遠心効果(G)は36.2(G)であり、遠心効果(G)を厚み比率(P)で除した遠心揮散指数(T)は6.8であった。この回転状態のまま薬剤揮散装置を被験者の腰に携帯し、屋外において延べ120時間使用したところ、試験期間中に亘って被験者は蚊等の不快な害虫に悩まされることはなかった。このように、実施例1の薬剤揮散装置においては、揮散性薬剤の揮散による優れた防虫効果が確認された。
【0052】
<実施例2>
実施例1で形成した円盤形状の薬剤保持体を二枚重ねて実施例1と同じポリカーボネート製の回転カートリッジに収納し、揮散性薬剤としてメトフルトリン60mgをケロシン0.08mLに溶解させた薬液を薬剤保持体に万遍なく滴下し、メトフルトリンを薬剤保持体に保持させた。そして、回転カートリッジを回転駆動部に接続し、実施例2の薬剤揮散装置を構成した。
【0053】
実施例2の薬剤揮散装置において、実施例1と同様の操作を行ったところ、その防虫効果は240時間に亘って有効であった。
【0054】
<実施例3>
ポリエステル繊維からなる平板状の繊維立体構造体(厚み:4.5mm)をそのまま薬剤保持体として使用した。従って、この薬剤保持体では、薬剤保持層(厚み:0.3mm)と通気層(厚み:3.9mm)と形態維持層(厚み:0.3mm)とが一体で存在している。この薬剤保持体における通気層と薬剤保持層との厚み比率(P)は13となる。次いで、揮散性薬剤としてトランスフルトリン1.2gをケロシン1.2mLに溶解させた薬液を薬剤保持体に万遍なく滴下し、トランスフルトリンを薬剤保持体に保持させた。そして、この薬剤保持体を筒状に巻いて中空円筒形状に成形し、これをポリカーボネート製の回転カートリッジ(直径:8cm、高さ:5cm)に収納した。そして、回転カートリッジを回転駆動部に接続し、実施例3の薬剤揮散装置を構成した。
【0055】
実施例3の薬剤揮散装置において、回転駆動部を1000rpmで回転させると(この場合、薬剤保持体も1000rpmで回転する)、薬剤保持体に作用する遠心効果(G)は44.7(G)であり、遠心効果(G)を厚み比率(P)で除した遠心揮散指数(T)は3.4であった。この回転状態のまま薬剤揮散装置を屋外に設置し、延べ960時間使用したところ、試験期間中に亘って薬剤揮散装置を中心とした周囲約5mの範囲において蚊等の飛翔害虫が寄り付くことはなかった。このように、実施例3の薬剤揮散装置においては、揮散性薬剤の揮散による優れた防虫効果が確認された。
【0056】
<実施例4>
実施例1に準じた手順で揮散性薬剤を保持させた円盤形状の薬剤保持体を形成し、これを実施例1と同様のポリカーボネート製の回転カートリッジに収納し、さらに回転カートリッジを回転駆動部に接続し、実施例4の薬剤揮散装置を構成した。ただし、実施例4の薬剤揮散装置は240時間用に設計したため、円盤形状の薬剤保持体の厚みは実施例1の約2倍とし、揮散性薬剤としてのメトフルトリンの保持量は薬剤保持体あたり60mgとした。実施例4では、直径(R1)、及び通気層と薬剤保持層との厚み比率(P)が異なる薬剤保持体を複数準備し、薬剤保持体の回転数(N)、遠心効果(G)、及び遠心揮散指数(T)を変化させることにより、揮散性薬剤の効力の違いを検証した(表1の試験番号1〜41)。具体的には、試験番号1〜41の薬剤揮散装置を、アカイエカの雌成虫100匹を放った6畳の部屋(25m
3)の中央に設置し、揮散性薬剤の揮散による殺虫効果を確認した。殺虫効果は、KT50によって評価し、50%のアカイエカがノックダウンされるまでの時間が、5分以上30分未満を「◎」、30分以上60分未満を「○」、60分以上90分未満を「△」、90分以上を「×」とした。
【0057】
【表1】
【0058】
表1より、薬剤保持体に作用する遠心効果(G)が10〜150(m/秒
2)の範囲となるように、薬剤保持体の直径(R1)及び回転数(N)を設定すると、一定以上の殺虫効果が得られることが判明した。さらに、厚み比率(P)が1.5より大きく50以下の値となるように設定し、且つ遠心揮散指数(T)が1.1より大きく22未満の値となるように設定すると、より優れた殺虫効果が得られることも明らかとなった。これに対し、試験番号18、23のように、薬剤保持層の厚み(B)が小さく、厚み比率(P)が50を超えるものは、薬剤保持体における薬剤保持能が不足するため、殺虫効果の発現に支障をきたす懸念があった。また、試験番号22、27のように、通気層の厚み(A)が小さく、厚み比率(P)が1.5以下のものは、通気層がもたらす攪拌気流が弱くなるため、揮散性薬剤の揮散効率が低下する傾向が見られた。
【0059】
<実施例5>
実施例3に準じた手順で揮散性薬剤を保持させた中空円筒形状の薬剤保持体を形成し、これを実施例3と同様のポリカーボネート製の回転カートリッジに収納し、さらに回転カートリッジを回転駆動部に接続し、実施例5の薬剤揮散装置を構成した。実施例5では、内径(R2)、及び通気層と薬剤保持層との厚み比率(P)が異なる薬剤保持体を複数準備し、薬剤保持体の回転数(N)、遠心効果(G)、及び遠心揮散指数(T)を変えることにより、揮散性薬剤の効力の違いを検証した(表2の試験番号42〜81)。効力確認試験における試験方法、及び殺虫効果の評価方法は、25畳の部屋(105m
3)で実施した以外は実施例4と同様である。
【0060】
【表2】
【0061】
表2より、薬剤保持体に作用する遠心効果(G)が10〜150(m/秒
2)の範囲となるように、薬剤保持体の内径(R2)及び回転数(N)を設定すると、一定以上の殺虫効果が得られることが判明した。さらに、厚み比率(P)が1.5より大きく50以下の値となるように設定し、且つ遠心揮散指数(T)が1.1より大きく22未満の値となるように設定すると、より優れた殺虫効果が得られることも明らかとなった。これに対し、試験番号59、64のように、薬剤保持層の厚み(B)が小さく、厚み比率(P)が50を超えるものは、薬剤保持体における薬剤保持能が不足するため、殺虫効果の発現に支障をきたす懸念があった。また、試験番号63、68のように、通気層の厚み(A)が小さく、厚み比率(P)が1.5以下のものは、通気層がもたらす攪拌気流が弱くなるため、揮散性薬剤の揮散効率が低下する傾向が見られた。