特許第6681466号(P6681466)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6681466免疫調節活性を有する均質多糖類及びその調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6681466
(24)【登録日】2020年3月25日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】免疫調節活性を有する均質多糖類及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
   C08B 30/20 20060101AFI20200406BHJP
   C08B 33/00 20060101ALI20200406BHJP
   C12N 15/113 20100101ALN20200406BHJP
【FI】
   C08B30/20
   C08B33/00
   !C12N15/113 ZZNA
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-518439(P2018-518439)
(86)(22)【出願日】2018年2月9日
(65)【公表番号】特表2019-533025(P2019-533025A)
(43)【公表日】2019年11月14日
(86)【国際出願番号】CN2018075902
(87)【国際公開番号】WO2019052119
(87)【国際公開日】20190321
【審査請求日】2018年4月4日
(31)【優先権主張番号】201710817533.2
(32)【優先日】2017年9月12日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518117810
【氏名又は名称】広州中医薬大学第二附属医院
【氏名又は名称原語表記】THE SECOND AFFILIATED HOSPITAL OF GUANGZHOU UNIVERSITY OF CHINESE MEDICINE
(74)【代理人】
【識別番号】717007675
【氏名又は名称】許 麗穎
(72)【発明者】
【氏名】曾星
【審査官】 佐久 敬
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第104371036(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第104558230(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第102451163(CN,A)
【文献】 米国特許第05773426(US,A)
【文献】 Carbohydrate Polymers (2017), Vol.155, p.61-67
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08B
CAplus(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一のクロマトグラフィーのピークを有し、分子量が6880±50Da、旋光度が158.4±0.5°であり、赤外吸収スペクトルにおいて847.6 cm-1に特徴的な吸収ピークを示し、水素スペクトルにおける水素プロトンの化学シフトがそれぞれδ 5.40(brs),3.95(t,J =7.2 Hz),3.84m,3.61mであり、炭素スペクトルにおける炭素信号の化学シフトがそれぞれδ99.6,δ76.6,δ73.3,δ71.5,δ71.1,δ60.4であることを特徴とする免疫調節活性を有する均質多糖類。
【請求項2】
上記均質多糖類における単糖成分は、α-D-グルコピラノースであり、構造が全てα型であり、結合方式が1→4結合である請求項1に記載の免疫調節活性を有する均質多糖類。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、均質多糖類の技術分野に関し、特に、免疫調節活性を有する均質多糖類及びその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
いくつかの漢方薬の多糖類は、免疫細胞の活性化や生体免疫機能の改善などの作用を有し、効果が正確で、副作用が小さい等の利点により、注目されている。開発可能性を有する免疫調節剤として、疾患治の療及び体の抵抗力の増強において期待されている。しかし、現在、漢方薬の多糖類に対する研究は、ほとんど全多糖類に限られ、その具体的な分子成分及び作用メカニズムについては明確に分かっていない。そのため、漢方薬の多糖類物質の構造及びその免疫系に対する作用やメカニズムを深く研究することにより、漢方薬の多糖類の有効物質をより深く認識できると考えられている。
【0003】
猪苓均質多糖類 ( polyperus polysaccharide) は、漢方薬である猪苓の水抽出物における主要な活性成分であり、良好な免疫調節剤として、抗腫瘍、免疫調節、肝保護、抗酸化、抗放射線、抗変異誘発等の効果を有する。本研究グループの以前の研究において、猪苓全多糖類は、BBN 誘発性膀胱がんに対して比較的良好な予防作用を有し、免疫機能に対して顕著な向上作用を有する。猪苓全多糖類の免疫調節作用及びメカニズムについても研究したが、これらの研究のいずれにおいても、猪苓全多糖類を研究対象とし、猪苓均質多糖類における具体的な成分及びその免疫関連活性に及んでいない。一方、猪苓均質多糖類成分の研究については、猪苓に水溶性の多糖類6-分枝-β-1,3-グルカンが含まれ、その単糖成分がグルコースのみであり、いずれもβ型であることが報道されている。猪苓から主要成分がD-グルコースである均質多糖類(分子量:約227万)、グルコース及びグルクロン酸を含む均質多糖類(分子量:1.4万)、グルクロン酸を含む均質多糖類(分子量が約8800)を分離したことも報道されている。
【0004】
本研究は、簡単且つ有効な多糖類抽出プロセス及び方法を採用して、猪苓生薬から従来技術文献の記載と異なる新規な均質多糖類 (PPS)を初めて分離して鑑定し、その単糖成分がグルコース(いずれもα型)のみであり、主要な結合方式が1→4結合であることを実証した。また、その抗腫瘍、免疫調節活性及び作用メカニズムについても研究した結果、該均質多糖類が強い免疫調節及び治療作用を有し、疾患に対して潜在的な予防と保健作用を有することを初めて発見した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記問題を解決するために、本発明は、比較的強い免疫調節活性を有する均質多糖類及その調製方法を提供する。均質多糖類は、生体免疫を高める機能を有し、免疫に関連する疾患についての調節が良好な抗腫瘍、抗ウイルス、抗感染等の作用を奏し、疾患を治療及び予防するための医薬品、保健品分野において潜在的な開発価値を有する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
免疫調節活性を有する均質多糖類を提供する。該均質多糖類は、単一のクロマトグラフィーのピークを有し、分子量が6880±50Da、旋光度が158.4±0.5°であり、赤外吸収スペクトルにおいて847.6 cm-1に特徴的な吸収ピークを示し、水素スペクトルにおける水素プロトンの化学シフトがそれぞれδ 5.40(brs),3.95(t,J =7.2 Hz),3.84m,3.61mであり、炭素スペクトルにおける炭素信号の化学シフトがそれぞれδ99.6,δ76.6,δ73.3,δ71.5,δ71.1,δ60.4である。
【0007】
具体的には、上記の技術的解決策において、上記均質多糖類における多糖類の含有量(質量百分率)が92〜98%である。Agilent1200液体クロマトグラフィー(検出器:示差屈折率検出器RID;カラム:TSK-GEL G4000 PWxL;移動相:超純水;流速:0.3〜1ml/min;検出器温度:30〜40℃;カラム温度:30〜50℃)により分析した結果、単一のクロマトグラフィーのピークを示し、保持時間が10〜30 minである。
【0008】
さらに、上記の技術的解決策において、上記均質多糖類における単糖成分は、α-D-グルコピラノース(いずれもα型;1→4結合)である。
【0009】
さらに、上記の技術的解決策において、上記均質多糖類には、蛍光標識生成物、カルボキシメチル化生成物、メチロール化生成物、ヒドロキシプロピル化生成物、エチレングリコール化生成物、プロピレングリコール生成物、又はポリエチレングリコール化生成物のうちの1種がさらに添加されている。
【0010】
免疫調節活性を有する均質多糖類の調製方法を提供する。該方法は、以下のステップ1〜4を含む。
ステップ1:水中で加熱し抽出し、アルコール沈殿を行い、全多糖類を調製する。具体的に、
猪苓生薬を粉砕し、300gをとり、そこに3 L脱イオン水を加え、室温で1時間浸漬後、100℃で加熱還流することで2回(1時間/回)抽出し、その後、ろ過し、濾液を併合して600 mlに濃縮した後、3000 rpmで10 min遠心分離し、次いで、エタノールの割合が80%を超えるように上清を調整し、4℃で一晩放置した後、上清を濾別し、沈殿して凍結乾燥させ、多糖類粗生成物を得、多糖類粗生成物に純水を加えて25〜35の溶液を作成する。
ステップ2:Sevag法により多糖類粗生成物のタンパク質を除去する。具体的には、
糖液、クロロホルム、n-ブタノールを25:4:1の比で添加し、分液ロートに投げて3min十分に振とうした後、静置分層し、有基層及び沈殿物を廃棄し、白色沈殿が発生しないまでタンパク質の除去を複数回繰り返し、その後、上清を取集し、ロータリーエバポレーターを用いて適切な体積に濃縮させた後、転移し、凍結乾燥させ、タンパク質を除去した多糖類粗生成物を得る。
ステップ3:DEAE-52セルロースで色素を除去する。具体的には、
タンパク質を除去した猪苓多糖類粗生成物にそれぞれ少量の水を加えて溶解させた後、前処理されたDEAE-52セルロースカラム(35×3cm)を通して脱色させ、フェノール-濃硫酸法により流出液に糖を検出できないまで、1mL/min超純水、0.1〜0.5%塩化ナトリウム溶液で溶出し、ピークに対応する溶出液を収集して、ロータリーエバポレーターで濃縮させた後、凍結乾燥、脱塩し、緩い白色粉末として純粋な多糖類を得る。
ステップ4:Sephadex G-100ゲルカラムにより純化する。
具体的には、純粋な多糖類を蒸留水に適量に溶解させ、Sephadex G-100ゲルカラムを通し、純水、0.1〜0.5%塩化ナトリウム溶液により流速1ml/minで溶出し、溶出液を10 mLごとに収集し、フェノール-濃硫酸法により常時監視し、検出管番号を横座標、吸光度を縦座標として多糖類溶出曲線を描き、ピークに対応する溶出液を収集し、凍結乾燥、脱塩し、均質多糖類を得る。
【0011】
さらに、具体的には、上記の技術的解決策において、上記ステップ3におけるDEAE-52セルロースカラムの前処理方法は以下のステップ1〜3を含む。
ステップ1:乾燥粉末であるセルロースを蒸留水に2〜5h浸漬し、不純物を除去した後、乾燥させる。
ステップ2: 0.5mol/LのHCL溶液で1〜3h浸漬し、pHが中性となるように脱イオン水で洗浄し、乾燥させる。
ステップ3:乾燥したセルロースを0.5mol/LのNaOH溶液に1〜3h浸漬し、pHが中性となるように脱イオン水で洗?し、乾燥させる。
【0012】
本発明の有益な効果は以下の通りである。即ち、均質多糖類は生体免疫を増強する機能を有し、免疫に関連する疾患についての調節により優れた抗腫瘍、抗ウイルス、抗感染等の作用を奏することができ、疾患を治療及び予防するための医薬品、保健品分野において潜在的な開発価値を有する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
以下、図面及び実施例により本発明をさらに説明する。
図1図1は、猪苓均質多糖類PPSのHPLC-RIDによるクロマトグラム図である。
図2図2は、猪苓均質多糖類PPSの赤外吸収スペクトル図である。
図3図3は、猪苓均質多糖類PPS の1H-NMR (400 MHz, D2O) スペクトル図である。
図4図4は、猪苓均質多糖類PPSの13C-NMR (100 MHz, D2O)スペクトル図である。
図5図5は、猪苓均質多糖類PPSのRAW264.7細胞生存率に対する影響の模式図である。
図6a図6aは、猪苓均質多糖類PPSの、RAW264.7細胞膜表面分子CD11bの発現に対する影響の模式図である。
図6b図6bは、猪苓均質多糖類PPSの、RAW264.7細胞膜表面分子CD16/32の発現に対する影響の模式図である。
図6c図6cは、猪苓均質多糖類PPSの、RAW264.7細胞膜表面分子CD40の発現に対する影響の模式図である。
図7A図7Aは、猪苓均質多糖類PPS の、ヒト膀胱移行上皮癌のT24 細胞とRAW264.7マクロファージとの共培養系のNO分泌量に対する影響の模式図である。
図7B図7Bは、猪苓均質多糖類PPSの、ヒト膀胱移行上皮癌のT24 細胞とRAW264.7マクロファージとの共培養系の炎症性サイトカインに対する影響の模式図である。
図8図8は、猪苓均質多糖類PPSの、T24とRAW264.7との 細胞共培養系のCOX2及びINOS mRNAタンパク質発現に対する影響の模式図である。
図9a図9aは、猪苓均質多糖類PPSの、CD14プロテインキナーゼリン酸化発現に対する作用の模式図である。
図9b図9bは、猪苓均質多糖類PPSの、CD284プロテインキナーゼリン酸化発現に対する作用の模式図である。
図9c図9cは、猪苓均質多糖類PPSの、CD282プロテインキナーゼリン酸化発現に対する作用の模式図である。
図9d図9dは、猪苓均質多糖類PPSのP38プロテインキナーゼリン酸化発現に対する作用の模式図である。
図9e図9eは、猪苓均質多糖類PPSのP65プロテインキナーゼリン酸化発現に対する作用の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明を詳しく説明する。これらの図面は、簡略化された模式図であり、本発明の基本的な構成を例示的に説明するため、本発明に関連する構成のみを示す。
【0015】
本発明において、均質多糖類は、猪苓から抽出しても、他の真菌、植物から分離してもよく、その分子量及び物理化学的性質の分光特性を有する限り、微生物発酵、人工合成等の手段で得られるものであってもよい。このように得られた均質多糖類は、マクロファージのNO分泌を顕著に促進し、マクロファージIL-1β、IL-6、TNF-α、iNOS遺伝子及びiNOS、COX-2のタンパク質発現を顕著に増加し、マクロファージ膜表面受容体CD11b、CD16/32、CD40、CD14、CD284、CD282の発現を増加する作用、及びP-P38、P-P65プロテインキナーゼリン酸化発現の作用を有するため、疾患を治療及び予防するための医薬品、保健品分野において潜在的な開発価値を有する。該均質多糖類は、薬学的に許容される任意の剤形に調製されることができ、単一または複合薬剤の形で自己免疫に関連する疾患の予防及び治療(アンチエイジング、抗腫瘍、抗感染、抗ウイルス、自己免疫性疾患を含む)に適用できる。本発明における均質多糖類は、一酸化窒素合成酵素及びNO発現の活性化;CD14/TRL4/P38及びTRL2/NF-kB経路の活性化に関連する抗腫瘍、抗ウイルス、抗感染;並びに、免疫関連疾患の調節におけるすべての応用に適用できる。
【0016】
上記均質多糖類は、単一のクロマトグラフィーのピークを有し、分子量が6880±50 Da、旋光度が158.4±0.5°であり、赤外吸収スペクトルが847.6 cm-1に特徴的な吸収ピークを示し、水素スペクトルにおける水素プロトン化学シフトがそれぞれδ 5.40brs,3.95 t,J =7.2 Hz,3.84m,3.61mであり、炭素スペクトルにおける炭素信号化学シフトがそれぞれδ99.6,δ76.6,δ73.3,δ71.5,δ71.1,δ60.4である。
【0017】
均質多糖類における多糖含有量(質量百分率)は92〜98%である。Agilent1200液体クロマトグラフィー(検出器:示差屈折率検出器RID;カラム:TSK-GEL G4000 PWxL;移動相:超純水;流速:0.3〜1ml/min;検出器温度:30〜40℃;カラム温度:30〜50℃)により分析した結果、単一のクロマトグラフィーのピークを示し、保持時間が10〜30 minである。均質多糖類における単糖成分は、α-D-グルコピラノース(いずれもα型;1→4結合)である。均質多糖類には、蛍光標識生成物、カルボキシメチル化生成物、メチロール化生成物、ヒドロキシプロピル化生成物、エチレングリコール化生成物、プロピレングリコール生成物、又はポリエチレングリコール化生成物のうちの1種がさらに添加されている。
【0018】
免疫調節活性を有する均質多糖類の調製方法を提供する。該方法は、以下のステップ1〜4を含む。ステップ1:水中で加熱し抽出し、アルコール沈殿を行い、全多糖類を調製する。具体的に、猪苓生薬を粉砕し、300gをとり、そこに3 L脱イオン水を加え、室温で1時間浸漬後、100℃で加熱還流することで2回(1時間/回)抽出し、その後、ろ過し、濾液を併合して600 mlに濃縮した後、3000 rpmで10 min遠心分離し、次いで、エタノールの割合が80%を超えるように上清を調整し、4℃で一晩放置した後、上清を濾別し、沈殿して凍結乾燥させ、多糖類粗生成物を得、多糖類粗生成物に純水を加えて30の溶液を作成する。ステップ2:Sevag法により多糖類粗生成物のタンパク質を除去する。具体的には、糖液、クロロホルム、n-ブタノールを25:4:1の比で添加し、分液ロートに投げて3min十分に振とうした後、静置分層し、有基層及び沈殿物を廃棄し、白色沈殿が発生しないまでタンパク質の除去を複数回繰り返し、その後、上清を取集し、ロータリーエバポレーターを用いて適切な体積に濃縮させた後、転移し、凍結乾燥させ、タンパク質を除去した多糖類粗生成物を得る。ステップ3:DEAE-52セルロースで色素を除去する。具体的には、タンパク質を除去した猪苓多糖類粗生成物にそれぞれ少量の水を加えて溶解させた後、前処理されたDEAE-52セルロースカラム(35×3cm)を通して脱色させ、フェノール-濃硫酸法により流出液に糖を検出できないまで、1mL/min超純水、0.1〜0.5%塩化ナトリウム溶液で溶出し、ピークに対応する溶出液を収集して、ロータリーエバポレーターで濃縮させた後、凍結乾燥、脱塩し、緩い白色粉末として純粋な多糖類を得る。ステップ4:Sephadex G-100ゲルカラムにより純化する。具体的には、純粋な多糖類を蒸留水に適量に溶解させ、Sephadex G-100ゲルカラムを通し、純水、0.1〜0.5%塩化ナトリウム溶液により流速1ml/minで溶出し、溶出液を10 mLごとに収集し、フェノール-濃硫酸法により常時監視し、検出管番号を横座標、吸光度を縦座標として多糖類溶出曲線を描き、ピークに対応する溶出液を収集し、凍結乾燥、脱塩し、均質多糖類を得る。
【0019】
上記ステップ3におけるDEAE-52セルロースカラムの前処理方法は以下のステップ1〜3を含む。ステップ1:乾燥粉末であるセルロースを蒸留水に2〜5h浸漬し、不純物を除去した後、乾燥させる。ステップ2: 0.5mol/LのHCL溶液で1〜3h浸漬し、pHが中性となるように脱イオン水で洗浄し、乾燥させる。ステップ3:乾燥したセルロースを0.5mol/LのNaOH溶液に1〜3h浸漬し、pHが中性となるように脱イオン水で洗?し、乾燥させる。
【0020】
上記方法によって調製された猪苓均質多糖類を測定した結果、その多糖類の含量は96.73%である。Agilent1200液体クロマトグラフィー(検出器:示差屈折率検出器RID;カラム:TSK-GEL G4000 PWxL 10 mm,7.8mm I.D.×30 cm;移動相:超純水;流速:0.5ml/min;検出器温度:35℃;カラム温度:40℃)により分析した結果、単一のクロマトグラフィーのピークを示し、保持時間が20 minである(図1を参照)。
【0021】
猪苓均質多糖類の分子量測定及び構造同定
調製された猪苓均質多糖類PPSを分離し、分子量及び単糖成分の測定を第三者検出機関に依頼する。図2に示すように、HPGPCゲル透過クロマトグラフィーにより測定した重量平均分子量は約6.88 kDaである。PPSをリフルオロ酢酸で加水分解し、無水酢酸でアセチル化した後、GC-MSにより分析した結果、その単糖成分はD-グルコースのみである。UV スペクトル分析において、190 nm での末端吸収は多糖類の典型的な吸収であり、260、280 nmに吸収ピークがないことがPPSに核酸及びタンパク質?を含まないことを示す。そのIRスペクトルには、多糖類の典型的な特徴吸収ピーク(3304.6,2926.9,1642.9,1362.9,1148.8,1077.8,1014.2,847.6 cm-1)を示す。IRスペクトルにもNH吸収ピークがないため、該多糖類にアミノ基又は結合タンパク質を含まないことを示す。PPSの赤外吸収スペクトルは、図2に示す赤外吸収スペクトルと基本的に一致する。
【0022】
1H-NMR (400 MHz, D2O): δ 5.40 ppmは、D-グルコピラノースの末端基の水素プロトン信号に帰属し、その5.0より大きい化学シフト値及び幅が広い単一のピークは、グルコース??の結合方式がα型であることを示し、これは、その赤外(IR)スペクトルにおいて847.6 cm-1に特徴的な吸収ピークを有すること、及び測定した旋光度α25 D = + 158.4±0.5 (c = 2.5, H2O)であることによってさらに実証できる。他の水素の化学シフトは3.61-3.98であり、糖環の炭素における他のプロトン信号であり、化学シフト値がいずれも4.0未満であることにより、該多糖類に他の糖残基のアノマー水素信号がないことを示す。13C-NMR (100 MHz, D2O) スペクトルには、6つの主要な炭素信号を示し、化学シフト値は、それぞれ99.6,76.6,73.3,71.5,71.1及び60.4である。DEPT 135スペクトルには、δ 60.4のみがメチレン基であり、他のいずれもメチン基であり、それにより、多糖類の単糖成分がグルコピラノースであり、且つその6位のメチレン基が置換されていないことを示す。さらに、HSQC、HMBC及び1H-1H- COSYのスペクトル分析に基づいて、PPSの主要な単糖単位の炭素、水素信号を完全帰属した結果、δ 99.6がグルコース残基のアノマー炭素信号に帰属し、δ 71.5、71.1及び73.3がそれぞれグルコースの置換されていないC-2、3、5の炭素信号に帰属し、δ 76.6が置換されたC-4共鳴信号に帰属し、δ 60.4が置換されていないC-6炭素信号に帰属し、その単糖成分としてα-D-グルコピラノースしか含まない。これは、上記GC-MS及びIRの分析結果と一致する。そのC-1(δ 99.6)及びC-4(δ 76.6)の化学位置が低磁場に移動することは、単糖の1,4位のヒドロキシル基が置換され、単糖同士の結合方式がα-1→4結合であることを示す。これは、HMBCスペクトルにおいて、H-1(δ 5.40)とC-4(δ 76.6)、及びH-4(δ 3.61)とC-1(δ 99.6)がリモート関連することによってさらに実証できる。炭素スペクトルには、化学シフト値がそれぞれ99.7、76.8、72.8、72.6、71.6及び69.3等の他の炭素信号を検出できる。そのうち、δ 69.3は置換されたC-6信号であり、O-6位に分枝が出ることを示す。δ 99.7、76.8、72.8、72.6、71.6は、分枝1,4,6-α-D-グルコピラノース糖のC1-5位の炭素信号である。しかし、これらの信号強度が比較的低いことで、PPSのO-6位に分枝が少ないことを示す。以上の分析より明らかになるように、猪苓均質多糖類PPSは1,4-を主要な結合方式をして、O-6位に一部の分枝があるか、又は末端糖基分枝である。上記多糖PPSの1H- NMR及び13C-NMRスペクトルの主要な信号値は、図3図4に示す水素、炭素スペクトル図における信号と基本的には一致する。
【0023】
猪苓均質多糖類の免疫調節作用についての実験
【0024】
試薬及び材料
【0025】
細胞:マウスマクロファージ細胞株RAW264.7、ヒト膀胱移行細胞癌細胞株T24 ATCC;発明者によって保存され提供される。
【0026】
DMEM培地(高グルコース):Hyclone社(ロット番号:SH3024.01B);オーストラリア産ウシ胎仔血清、FBS (Hyclone,USA,ロット番号:SH30406.02E)二重抗体(GIBCO,USA);PBS 緩衝液(Hyclone,USA,ロット番号:SH30028.01B);IFN-γインターフェロン(Peprotech,USA);Trizol (Invitrogen,USA);逆転写キット Revert Aid First Strand cDNA Synthesis Kit (Thermo,USA);蛍光定量PCR染料SYBR Greenキット(Roche,USA)。
【0027】
細胞培養
マウスマクロファージ細胞株RAW264.7をl00ml/Lウシ胎仔血清、1%の二重抗体を含むDMEMに接種し、37C、5% CO2のインキュベータで培養する。
【0028】
腫瘍細胞培養上清T24の調製
ヒト膀胱移行上皮癌細胞系 T24 細胞を10 %ウシ胎仔血清、100 U/mlペニシリン-ストレプトマイシンを含むDMED培地で培養し、5% CO2、37 °Cのインキュベータに置く。対数増殖期のT24細胞を3.5×107の細胞/ウェルで培養皿で培養し、18mlの培養液を添加し、細胞を90%コンフルエントに増殖するまで48 h培養し、培養上清を収集して使用まで保存する。収集した培養上清を 0.22 μm のフィルタをろ過し、ろ過した上清培養液を-80°C冷蔵庫に凍結保存する。
【0029】
T24細胞-AW264.7細胞共培養
マウスマクロファージ系 RAW264.7細胞を10%ウシ胎仔血清、100U/mlペニシリン-ストレプトマイシンを含むDMED培地に培養し、5% CO2、37°Cインキュベータに置く。対数増殖期のRAW264.7細胞とT24上清とを共培養する。培養液の40%はT24腫瘍細胞培養上清である。
【0030】
猪苓均質多糖類PPSのRAW264.7細胞生存率に対する影響の測定
RAW264.7細胞懸濁液を104細胞/ウェルの密度で96ウェルプレートに接種し、24h培養した後、液を除去し、それぞれシリーズ濃度が3.09625、7.8125、15.625、31.25、62.5、125、250、500、1000 μg/mLのPPSの培地に入れる。24 h培養し、各ウェルに20 μLの50 g? L-1 MTT溶液を加え、4 hインキュベートし続け、上清を捨て、各ウェルに200 μLのDMSOを加え、室温で溶解し、10 min振とうした後、マイクロプレートリーダーで490 nm波長の吸光度(OD)値を測定する。各薬物濃度について4ウェル繰り返し、細胞相対生存率を計算する。計算式:細胞相対生存率=OD490(投与)/OD490(対照)。OD490(投与)及びOD490(対照)は、それぞれ投与群細胞サンプル及び対照群液の細胞サンプルの、MTT実験における490nmでの吸収値である。PPSのRAW264.7マクロファージ生存率に対する影響を図5に示す。図5に示すように、薬物濃度が3.9-125 mg/mLである場合に、細胞生存率は、対照群と比較して統計的有意性がないため、PPS後続実験で選択される濃度勾配は1、10、100 mg/mLである。
【0031】
PPSの、T24-RAW264.7細胞共培養系におけるRAW264.7マクロファージ膜表面分子に対する影響の測定
【0032】
マウスマクロファージ細胞株RAW264. 7を常法で100ml/Lウシ胎仔血清を含むDMEM培養液で培養する。対数増殖期にある細胞を選択し、消化して継代培養し、カウントし細胞密度を調整し、2.5×105個/ウェルで12ウェル細胞培養プレートに接種し、各ウェルに1mlのDMEM培地を加える。完全に壁に付着するまで24 h培養する。0.5mLの培地を取り除き、0.5mLのT24上清を加える。3h後、それぞれ最終濃度100ng/mLのIFN-γ溶液及び最終濃度1、10、100μg/mLのPPSを加え、 24 h作用する。細胞を消化してフローチューブに収集し、2mLPBS溶液に加え3回洗浄し、1000rpmで遠心分離することにより上清を捨てる。その後、対応するフロー抗体CD16/32-FITC、CD40-PE、CD11b-APCをそれぞれ5 uL順次加え、対応するアイソタイプ抗体を陰性対照とする。暗所、4°Cで30minインキュベートした後、PBSで洗浄し、遠心分離して遊離のフロー抗体を除去する。500 uL PBSで細胞を再懸濁させ、フローサイトメトリーにより関連する膜表面分子の陽性発現率を測定する。その結果として、図6Aに示すように、PPSは、マクロファージのCD11bの発現量を増加させることができ、対照群に比較して統計的有意性を有する(P<0.05)。図6Bに示すように、1、10、100μg/mLのPPSは、いずれもマクロファージを刺激してCD40の発現を増加させることができ、顕著な統計的有意性を有する(P<0.01)。図6Cに示すように、1、10、100 μg/mLのPPSは、いずれもマクロファージCD16/32の発現を増加させることができ、統計的有意性を有する。濃度10、100 μg/mLのPPS群は対照群と比較して、統計的有意(P<0.01)である。CD11b、CD16/32、CD40は、いずれもマクロファージがM1に分極化した膜標識であり、PPSが比較的低い投与量1μg/mLであるときにマクロファージを活性化できることを示す。
【0033】
猪苓均質多糖類PPSの、RAW264.7マクロファージのNO因子分泌及びIL-1β、IL-6、TNF-α、iNOS mRNAの発現量に対する影響の測定
増殖状態が良好なRAW264.7マクロファージを取り、消化して継代培養し、カウントし細胞密度を調整し、12ウェルの細胞培養プレートで培養し、1mlの細胞懸濁液を加え、各ウェルにRAW264.7細胞を2.5 ×105個を加え、37°C、5%CO2インキュベータに置いて24h培養した後、陽性群に最終濃度100ng/mLのIFN-γ溶液を加え、投与群にそれぞれ3.09625、7.8125、15.625、31.25、62.5、125、250、500、1000 μg/mLのPPSを加え24 h培養する。共培養群は、細胞を24h培養した後、40%の上清を取り除き、40%のT24上清夜を加え、3時間共培養し、その後、陽性群に最終濃度100ng/mLのIFN-γ溶液を与え、各投与群に3.09625、7.8125、15.625、31.25、62.5、125、250、500、1000 μg/mLのPPSを与えて24h培養する。細胞上清を収集し、Griess法によりNOサイトカインの分泌量を測定する。結果を図7Aに示す。結果として、PPSが3.9g/mlでIFN-γ(100ng/mL)よりも多いNOを分泌するように刺激し、PPSが膀胱癌シミュレーションの腫瘍微環境(マクロファージ-膀胱癌細胞共培養)においてマクロファージがNOを分泌することを顕著に促進でき、比較的な投与量3.90625μg/mLであるときに、NOの分泌量は、陽性対照群IFN-γ(100ng/mL)の2倍よりも多い。
【0034】
2.5 ×105個の細胞を12ウェル細胞培養プレートに接種し、24h培養し、40 %の上清を取り除き、40 %のT24上清夜を加え、3時間培養した後、最終濃度100ng/mLのIFN-γ溶液、最終濃度1、10、100μg/mLのPPSを与えて24 h培養する。細胞上清を取り除き、各ウェルに600 μLのTrizolライセートを加え、細胞を収集する。RT-PCR法によりIL-1β、IL-6、TNF-α及びINOS遺伝子の発現量を測定する。実験結果を図7Bに示す。膀胱癌シミュレーションの腫瘍微環境において、PPSは、マクロファージIL-1β、IL-6、TNF-α及びINOS遺伝子の発現量を顕著に増加でき、PPSが腫瘍微環境においてマクロファージを活性化できることを示唆している。プライマー配列を表1に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
猪苓均質多糖類PPSの、T24-RAW264.7細胞共培養系のCOX2及びINOSタンパク質発現に対する影響の測定
【0037】
マクロファージ細胞株RAW264. 7を常法で100ml/Lのウシ胎仔血清を含むDMEM培養液で培養する。対数増殖期にある細胞を選択して6ウェル細胞培養プレートに接種する。完全に壁に付着するまで24 h培養した後、0.8 mLの培地を取り除き、0.8 mLのT24上清を加え、3h共培養する。最終濃度100ng/mLのIFN-γ溶液、最終濃度1、10、100 μg/mLのPPSを与え24h作用する。Western-blotデータ分析により得られた結果、対照群と比較して、1、10、100 μg/mLのPPSは、いずれもINOS及びCOX2プロテインキナーゼリン酸化発現を顕著に増加させる作用を有し(図8)、PPSが膀胱癌腫瘍微環境においてマクロファージを活性化し、INOS及びCOX2タンパク質の発現を増加させ、免疫調節作用を発揮できることを示唆している。
【0038】
PPSがマクロファージCD14/TRL4/P38MAPK及びTRL2/NF-kB経路を活性化するメカニズムの研究
マウスマクロファージ細胞株RAW264. 7を100ml/Lのウシ胎仔血清を含むDMEM培養液で培養する。対数増殖期にある細胞を選択し、消化して継代培養し、カウントし細胞密度を調整し、1×106個/ウェルで6ウェルの細胞培養プレートに接種する。完全に壁に付着するまで24 h培養する。0.8 mLの培地を取り除き、0.8 mLのT24上清を加え、3h培養する。それぞれ最終濃度が100ng/mLのIFN-γ溶液、最終濃度が1、10、100 μg/mLのPPSを与えて24h作用する。上清を取り除き、予冷したPBS緩衝液を加えて2回洗浄し、その後、適量のRIPAライセート(ホスファターゼ阻害剤及びタンパク質?阻害剤含有)を加え、氷で細胞を擦り取り、15000×gで15 min遠心分離し、細胞総タンパク質溶液として上清を取る。ローディングバッファー和及び超純水を加える(100°C、10min)。Western-blotデータ分析を行った結果、対照群と比較して、1、10、100 μg/mLのPPSは、いずれもCD14、CD284(TLR4)、CD282(TLR2)受容体発現を顕著に活性化し、P-P38、P-P65プロテインキナーゼリン酸化発現を増加する作用を有する(図9)。それによって、PPSが膀胱癌腫瘍微環境でマクロファージを活性化するのは、CD14/TRL4/P38 MAPK及びTRL2//NF-kB経路を活性化することで免疫調節作用を発揮することが示唆される。
【0039】
以上より分かるように、猪苓均質多糖類PPSは、重要な生物調節活性を有する。CD11b、CD16/32、CD40は、いずれもマクロファージがM1に分極化した膜標識タンパク質である。本実験において、猪苓均質多糖類PPSがマクロファージに作用することで、マクロファージRAW264.7のCD11b、CD16/32、CD40等の膜分子の発現を顕著に増加でき、それによって、PPSは、腫瘍微環境においてマクロファージを活性化できることを示す。NOは、免疫反応及び炎症反応等の生体マルチシステムの生理学的および病理学的プロセスに幅広く関与し、マクロファージ、Tリンパ球、Bリンパ球、及びNK細胞等の免疫機能を調節することができる。活性化したマクロファージが生成したNO は、特異的なエフェクターとして、複数種類の病原性微生物を死滅させ、又はその増殖を阻害することができ、主に細胞内病原体を死滅させる。本実験は、(精製した猪苓均質多糖類)PPSは、マクロファージがNOを分泌することを促進でき、比較的低い投与量3.90625μg/mLの場合に、NOの分泌量がIFN-γ(100ng/mL)に接近することを発見した。膀胱癌腫瘍微環境においてマクロファージがNOを分泌するのを促進でき、比較的低い投与量3.90625μg/mLの場合に、NOの分泌量が陽性対照群IFN-γ(100ng/mL)より高いということは、PPSは、比較的低い投与量の場合に、共培養環境又は非共培養環境に関わらず、生体の非特異性免疫反応を増強し、生体の免疫機能を増強できることを示唆している。
【0040】
p38 MAPK及びNF-kB信号経路は、2つの重要な免疫炎症経路である。実験により、膀胱癌腫瘍微環境において、PPSで作用した後、CD14、TRL4及びpp38タンパク質の発現が高くなることを発見した。猪苓均質多糖類PPSは、CD14/TRL4/P38の信号経路を活性化することでマクロファージを活性化する可能性があることを示唆している。また、腫瘍微環境において、PPSで作用した後、マクロファージのTRL2及びPP65タンパク質の発現も高くなることは、TRL2/NF-kBも、PPSにマクロファージを活性化させる経路の一つである可能性があることを示唆している。
【0041】
インターフェロン(IFN-γ)は、重要な細胞免疫因子であり、生体免疫力を調節することにより抗腫瘍の作用を奏する。IFN-γは、NOを分泌するようにマクロファージを活性化し、マクロファージの抗原提示細胞がMHCII型分子を発現する能力を増強し、抗原に対する提示能力を増強できる。また、IFN-γは、マクロファージ及びNK細胞の殺傷力を増強し、細胞表面抗原及び受容体の発現を増強し、B細胞の機能を阻害することができることにより、腫瘍細胞表面の抗体ブロックのレベルを低減させる。本実験は、(精製した猪苓均質多糖類)PPSが非腫瘍微環境及び膀胱癌腫瘍微環境でNOを分泌できることを発見した。それによって、PPSはマクロファージを活性化し、免疫機能を調節する作用を有することを示唆している。IFN-γは、広域の抗ウイルス薬でもある。PPSの非腫瘍微環境及び膀胱癌腫瘍微環境における作用は、IFN-γに類似し、NOを分泌し、ウイルスの体内での複製を抑制することである。また、IFN-γは、抗腫瘍薬物であり、TNF-aを分泌して腫瘍細胞を直接殺傷し、IL-6、IL-1βを分泌して炎症微環境を調節し、腫瘍細胞に対する免疫監視作用を増強することができる。
【0042】
安全性も薬物評価の要点である。生物大分子抗原は、臨床で腫瘍等の疾患の治療に使用されているが、多くの重篤な副作用(例えば、骨髄抑制、末梢血白血球及び血小板の低減、インフルエンザ様症候群、腎臓損傷等)を引き起こす。それに対して、未だに、猪苓の臨床使用上の副作用について報道されていない。PPSは、臨床薬の中に相対的安全な漢方薬である猪苓から抽出した大分子成分であり、IFN-γよりも安全である。従って、PPSは、疾患を治療及び予防するための医薬品、保健品分野において潜在的な開発価値を有する。
【0043】
以上の実施例は本発明の好ましい実施例である。当業者は、以上の説明に基づいて、本発明の技術思想の範囲内で様々な変更及び修正を行うことができる。本発明の範囲は、明細書の内容に限定されず、特許請求の範囲に基づくべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
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図7A
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図8
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