【課題を解決するための手段】
【0013】
本明細書はまず、本発明の医薬組成物の重要成分が、グリセロール、1,2−プロパンジオール、水溶性ラウロカプラム、またはデシルメチルスルホキシドと水により特定の配合比で構成されることを強調する。この重要成分は、皮膚の種々の損傷創面を治療する際に、単独で使用すれば、速やかに創面を塞ぎ、創面滲出液を吸収し、透明で薄い痂皮を形成し、外部の細菌の侵入を防ぐことができ、精選された薬剤処方と巧みに結び付ければ、多くの望ましい治療効果を実現することができる!この重要な成分およびその特定の配合比が、本発明の最大の特徴である。
【0014】
人体は、外周がすべて皮膚に覆われた有機体であり、血液循環と体液の交換によって、有機体を構成する最小単位、すなわち個々の生細胞に、完全に密閉された相対的に定常な環境で外界と物質交換を行わせ、新陳代謝を実現し、生命の作用を維持する。皮膚に様々な原因のため損傷がもたらされれば、皮膚に保護された損傷部位の組織細胞が露出することになり、損傷した局部に「災難」が生じ、有機体は有限な力を動員して患部に到達させて「緊急災害救助」を行い、これにより、患部に一連の病理的生理的変化が生じるが、有機体が動員可能な防御力は有限であり、創面が大きければ、外部からの援助、つまり薬剤に依存せざるを得ない。医者としては、皮膚の種々の損傷創面を前にして、まず、創面を完全な密閉状態に速やかに戻し、周囲の空気から隔絶し、さらには、止血、滲出止め、腫れの解消、滅菌といった創面の病理的変化を逆転させ、創面の生理的修復を促せば、皮膚の種々の損傷創面は「災難」を順調に乗り切って、常態に戻ることができる。ここで「皮膚の種々の損傷創面に対する治療の第1の重要任務は、速やかかつ完全に創面を塞ぐことである」と提起する。この論述は既存の文献ではいずれも強調されていないが、本発明者はまさにこの論述について徹底的な観察と思考を行ってはじめて、真剣に繰り返し実践し、グリセロール、1,2−プロパンジオール、水溶性ラウロカプラムと少量の水を探し当てて選択・使用し、特定の配合比で、本発明の医薬組成物の基礎的な薬の組み合わせとし、精選した漢方薬材を組み合わせて医薬組成物をなし、基礎的な薬の組み合わせを構成する4種の物質の機能を余すところなく掘り起こして発揮させ、本発明を達成する。皮膚の種々の損傷創面は、顕著な刺激を有する薬剤を再び塗って創面の組織細胞を再び損傷させてはならない。本発明が選択・使用するこの基礎的な薬の組み合わせは、上記要求を満たすことができるだけでなく、漢方薬材の薬用有効成分を抽出することもでき、吸水や湿気を吸収し、滲出液を止め、浸透を促し、薄い痂皮を作り、気血を活性化し、脈絡を通じ、栄養を供給し、新生を促す。これらはいずれも創面をできるだけ速やかに癒合させ、瘢痕を少なくするのに役立つ措置である。
【0015】
本発明は、皮膚の種々の損傷創面を治療する医薬組成物を開示しており、前記医薬組成物の重要成分が、グリセロール、1,2−プロパンジオール、水溶性ラウロカプラム、またはデシルメチルスルホキシド、および水を含んでおり特定の配合比で構成され、前記グリセロールが組成物に占める含有量は80〜90体積%である。
【0016】
いくつかの実例においては、前記1,2−プロパンジオールが組成物に占める含有量は6〜15体積%であり;前記水溶性ラウロカプラムが組成物に占める含有量は0.2〜2体積%であり、好ましい含有量は0.6〜1体積%であり、より好ましい含有量は0.2〜0.5体積%であり;前記デシルメチルスルホキシドが組成物に占める含有量は1〜4体積%であり、好ましい含有量は1〜3体積%であり、より好ましい含有量は1〜1.5体積%であり;前記水が組成物に占める含有量は3〜8体積%であり、好ましい含有量は3〜5体積%であり、より好ましくは3〜4体積%である。
【0017】
本発明の1つの実施例は、皮膚の種々の損傷創面を治療する医薬組成物およびその重要成分を開示しており、前記医薬組成物の重要成分は、組成物に占める最終体積比が80〜90体積%のグリセロール、6〜15体積%の1,2−プロパンジオール、0.2〜2体積%の水溶性ラウロカプラムまたは1〜4体積%のデシルメチルスルホキシド、3〜8体積%の水から構成される。
【0018】
本発明の1つの具体的実施例は、皮膚の種々の損傷創面を治療する医薬組成物の重要成分を開示しており、無菌創口の創面を単独で治療し、前記医薬組成物の重要成分は、組成物に占める最終体積比が83.5体積%のグリセロール、10体積%の1,2−プロパンジオール、0.5体積%の水溶性ラウロカプラム、6体積%の水から構成される。
【0019】
いくつかの具体的実例では、本発明に記載の、皮膚の種々の損傷創面治療用の医薬組成物の重要成分のグリセロールは、好ましくは、医療用分析用試薬のグリセロール(Glycerol、グリセリン、密度1.236g/ml、500mlの重さ628g、分子式C
3H
8O
3、分子量92.09、純度≧99%)、1,2−プロパンジオール(1,2−Propanediol、分子式C
3H
8O
2、分子量76.09、純度≧99%)、水溶性ラウロカプラムと水により特定の配合比で構成され、最終体積の百分率含有量で計算すると、そのうちグリセロールが80%〜90%を占め、1,2−プロパンジオールが6〜15%を占め、これは、これら2つの成分が有する液体形態と吸湿保湿の特性を十分に利用し、創面の滲出液を吸収すると同時に、創面が過度の乾燥に至らない。
【0020】
本発明に記載の、皮膚の種々の損傷創面の治療のための組成物にラウロカプラム(Laurocapram、分子式C18H35NO、分子量281.48、分析用試薬>98%、相対密度(20℃)0.906〜0.926、pH中性)が含まれており、本品は、油溶性ラウロカプラムが水溶性ラウロカプラムに改質されたものであり、デシルメチルスルホキシドと
ピロリドンの錯体であり、無色透明で粘稠な液体である。親水性薬剤の活性成分に対して顕著な皮膚透過浸透促進作用があり、皮膚の角質層と脂質を相互作用させ、有効物質が角質層の隙間の中の脂質に相転移する温度を低くし、流動性を高めており、薬剤または活性添加剤の角質層での拡散抵抗を低下させ、強い浸透促進作用を起こしている。
【0021】
水溶性ラウロカプラムは、組成物に含まれる薬剤の浸透吸収効果を有効に高めることにより、創面の表層を殺す病原菌を抑制するだけでなく、創面の深層を殺す病原菌も抑制することができるようにし、薬剤の治療効果を十分に発揮させ、薬剤の用量を減らすことができる。いくつかの実施例において、前記水溶性ラウロカプラムの好ましい含有量は2〜20ml/Lであり、6〜10ml/Lがより好ましく、2〜5mL/Lが最も好ましい。いくつかの具体的実施例において、前記水溶性ラウロカプラムは、好ましくは医薬品レベルの水溶性ラウロカプラムである。
【0022】
いくつかの実施例においては、効能が似ているため、ラウロカプラムの代わりにデシルメチルスルホキシドを用いてもよく、前記デシルメチルスルホキシドの好ましい含有量は10〜40ml/Lであり、10〜30ml/Lがより好ましく、10〜15mL/Lが最も好ましい。いくつかの具体的実施例において、前記デシルメチルスルホキシドは、好ましくは医薬品レベルのデシルメチルスルホキシドである。
【0023】
本発明に記載の、皮膚の種々の損傷創面の処置治療のための医薬組成物の重要成分のうち、水は優れた天然の溶媒であり、水を含有する作用は次の通りである:一定の比率のプロピレングリコールと水の混合液は、いくつかの薬剤の加水分解を遅延させ、その安定性を高めることにより、組成物の有効期間を延ばすことができる。また、高濃度のグリセロールは吸湿性が強く、少量の水を加えれば、その強い吸湿性をバランスさせることができる。グリセロール合水は、高温高圧の条件下で漢方薬材の薬用有効成分の溶解性を高めることができる。水の好ましい含有量は30〜80ml/Lであり、より好ましい含有量は30〜50ml/Lであり、最も好ましい含有量は30〜40ml/Lである。
【0024】
具体的な使用において、本出願人は、このような、特定の配合比で構成された医薬組成物の重要成分と、精選した配合比の漢方薬材の薬用有効成分とからなる医薬組成物を創面に塗れば、速やかに創面を塞ぐとともに、創面に一層の透明な痂皮を作らせることができ、創面の感染を有効に予防および治療することができ、創面の水腫を取り除き、創面の滲出を停止させ、患者の体質の消耗を軽減し、ラジカルに抗することができ、創面を保護することができ、創面の胚芽細胞に栄養を与えて創面を修復することができ、創面を痂皮の下で速やかに癒合させ、一般にII度の火傷創面であれば瘢痕が残ることは少ないことを見出した。
【0025】
本発明の医薬組成物には、以下の漢方薬原薬が含まれている:
本発明に記載の医薬組成物は、キバナオウギ、トウキ、タンジン、セキシャクのうち少なくとも1種をさらに含み、前記キバナオウギ、トウキ、タンジン、セキシャクのうち少なくとも1種の生薬の薬用有効成分は、高温高圧の条件でグリセロール合水を用いて抽出される。
【0026】
キバナオウギ
キバナオウギは種々の化学的有効成分を含有しており、主にサポニン類、フラボン類、多糖類、アミノ酸および微量元素等を含み、気を補って陽を高め、唾液や体液の分泌と血液の生成を促し、毒と膿を排出し、できものを抑え組織を生成する効能を有する。組成物におけるキバナオウギの好ましい含有量は10〜30g/Lであり、より好ましい含有量は10〜20g/Lであり、最も好ましい含有量は10〜15g/Lである。
【0027】
トウキ
トウキは、揮発油、α−アンゲリカラクトン、フェルラ酸、ニコチン酸、コハク酸、β−シトステロール、ダウコステロール、単糖類、多糖類、レシチン、種々のアミノ酸および無機元素等を含有しており、血液を補って活性化し、月経を順調にして痛みを止め、毒を除いて腫れを解消し、気血を補って滞りを解消し、陰を潤して血液の生成を促し、皮膚や髪に潤いと光沢を与える作用を有する。トウキの好ましい含有量は5〜20g/Lであり、より好ましい含有量は5〜10g/Lであり、最も好ましい含有量は6〜8g/Lである。
【0028】
タンジン
タンジンは、タンシノール、サルビオール、バイカリン等の有効成分を含有しており、抗酸化し、抗菌し、血を活性化して月経を順調にし、鬱血を排出し、血の温度を下げて痛みを解消し、膿を排出して痛みを止め、肉を成長させ組織を生成し、創面の癒合を促す作用を有する。タンジンの好ましい含有量は5〜20g/Lであり、より好ましい含有量は5〜15g/Lであり、最も好ましい含有量は8〜10g/Lである。
【0029】
セキシャク
セキシャクは、ペオニフロリン、ペオニン、ペオノール、アセンヤクエキス、没食子酸エチル、揮発油等を含み、心筋虚血に抗し、血液の微小循環を改善し、血小板の凝集を抑制して血栓の形成に抗するほか、鎮痛してけいれんを解消し、肝臓を守り、抗炎抗菌する作用を有しており、黄色ブドウ球菌および緑膿菌、真菌、ヘルペスウイルス、エンテロウイルスに対していずれも抑制作用を有する。セキシャクの好ましい含有量は5〜20g/Lであり、より好ましい含有量は5〜15g/Lであり、最も好ましい含有量は8〜10g/Lである。
【0030】
本発明に記載の医薬組成物は、オウレン、オウゴン、オウバク、クチナシのうち少なくとも1種をさらに含んでもよく、前記オウレン、オウゴン、オウバク、クチナシのうち少なくとも1種の生薬の薬用有効成分は、高温高圧の条件でグリセロール合水を用いて抽出される。
【0031】
オウレン
オウレンは、種々のイソキノリンアルカロイドやベルベリンを含有している。エンドトキシンを除去し、黄色ブドウ球菌や大腸菌に抗することができ、熱と湿気を取り除き、熱を排出して解毒する作用を有する。火傷に対し、オウレンの煎じ薬を外用すれば、感染に抗することができるだけでなく、滲出を減らし、痂皮の形成を促すこともできる。オウレンの好ましい含有量は5〜20g/Lであり、より好ましい含有量は5〜10g/Lであり、最も好ましい含有量は6〜8g/Lである。
【0032】
オウゴン
オウゴンは主に、バイカレイン、オウゴニン、オウゴノシドなどのフラボン類化合物を含み、揮発油、アミノ酸の糖類を含有している。オウゴンは静菌能力が強く、黄色ブドウ球菌、溶血性連鎖球菌、大腸菌、緑膿菌に対して顕著な抑制作用を有し、抗炎、抗酸化作用もさらに有する。オウゴンの好ましい含有量は5〜20g/Lであり、より好ましい含有量は5〜10g/Lであり、最も好ましい含有量は6〜8g/Lである。
【0033】
オウバク
オウバクは主に、ベルベリン、フェロデンドリン、オバクノン、オバクラクトンを含む。中国医学では、熱毒によるできものにはオウバクが良いとされ、黄色ブドウ球菌、溶血性連鎖球菌、大腸菌、緑膿菌ばい菌に対して顕著な抑制作用を有する。オウバクの好ましい含有量は5〜20g/Lであり、より好ましい含有量は5〜10g/Lであり、最も好ましい含有量は6〜8g/Lである。
【0034】
クチナシ
クチナシは主に、イリドイド類のゲニポシド、クロシン、ルチン等のフラボン類を含み、熱を排出して苦痛を除き、熱を除いて水分を排出し、血の温度を下げて解毒することができ、外用すれば腫れを解消して痛みを止め、黄色ブドウ球菌や溶血性連鎖球菌に対して優れた静菌作用を有する。クチナシの好ましい含有量は5〜20g/Lであり、より好ましい含有量は5〜10g/Lであり、最も好ましい含有量は6〜8g/Lである。
【0035】
本発明に記載の医薬組成物は、ビャクレン、マサキ、ビャクキュウ、カンゾウのうち少なくとも1種をさらに含み、前記ビャクキュウ、ビャクレン、マサキ、カンゾウのうち少なくとも1種の生薬の薬用有効成分は、高温高圧の条件でグリセロール合水を用いて抽出される。
【0036】
ビャクレン
ビャクレンの主成分には、没食子酸、酒石酸、シトステロール、クリソファノール、粘液質があり、解熱解毒し、腫れを解消して皮膚を生成する作用を有する。本品は、熱を取り去り、辛さで腫れを解消し、できものを抑え組織を生成して痛みを止め、黄色ブドウ球菌、緑膿菌、大腸菌に対して顕著な抑制作用を有する。ビャクレンは民間で俗に「見腫消」と呼ばれており、単独の薬として応用すれば、強い抗感染作用を有する。ビャクレンの好ましい含有量は5〜20g/Lであり、より好ましい含有量は6〜15g/Lであり、最も好ましい含有量は8〜10g/Lである。
【0037】
マサキ
マサキの主成分は、プロトカテク酸、プロトカテクアルデヒド、縮合型タンニン酸、フラボン類および揮発油であり。解熱解毒し、血液を冷やして止血し、できものを抑える作用を有する。マサキは、抗菌抗炎し、冠状動脈の血流量を増加させ、心筋虚血に抗し、火傷創面に対して保護性膜状痂皮を形成し、感染を予防することができ、滲出を阻止する機能を有しており、吸着能力を有し、一定の透過性を有し、創面の深さを大きくしない等の利点を有する。マサキの好ましい含有量は5〜20g/Lであり、より好ましい含有量は5〜15g/Lであり、最も好ましい含有量は8〜10g/Lである。
【0038】
ビャクキュウ
ビャクキュウの主成分は、ビベンジル類、フェナントレン類およびその誘導体、少量の揮発油粘液質である。収斂止血し、腫れを解消して皮膚を生成する作用を有する。あかぎれ、湯や火による火傷の治療に用いられ、創面の滲出物を吸収し、創面を保護し、創口の癒合を促すことができる。ビャクキュウの好ましい含有量は5〜20g/Lであり、より好ましい含有量は6〜15g/Lであり、最も好ましい含有量は8〜10g/Lである。
【0039】
カンゾウ
カンゾウは、100種余りのフラボン類化合物、60タイプ余りのトリテルペン類化合物、18種のアミノ酸および種々のアルカロイド等を含有している。副腎グルココルチコイド様の作用を有し、抗炎、抗酸化、調節免疫、および解毒作用を有し、抗ウイルスおよび抗菌し、脾臓を補って気を増進し、解熱解毒し、急を緩め、痛みを止め、様々な薬を調和させる効能をさらに有する。カンゾウの好ましい含有量は5〜15g/Lであり、より好ましい含有量は6〜12g/Lであり、最も好ましい含有量は8〜10g/Lである。
【0040】
本発明に記載の医薬組成物は、ニュウコウ、モツヤク、ケッケツ、アセンヤクのうち少なくとも1種をさらに含み、前記ニュウコウ、モツヤク、ケッケツ、アセンヤクのうち少なくとも1種の生薬の薬用有効成分は、1,2−プロパンジオールを用いて浸漬法により抽出される。
【0041】
ニュウコウ
ニュウコウは主に、樹脂、植物ゴム、および揮発油を含む。鎮痛消炎することができ、血を活性化し気の流れを良くして痛みを止め、腫れを解消して皮膚を生成する効能を有しており、できものや腫瘍を治療する重要な薬剤である。ニュウコウの好ましい含有量は3〜10g/Lであり、より好ましい含有量は5〜8g/Lであり、最も好ましい含有量は5〜6g/Lである。
【0042】
モツヤク
モツヤクは主に、揮発油、樹脂、植物ゴムを含む。水浸剤は真菌に対して抑制作用を有し、常にニュウコウと組み合わされ、血を活性化し痛みを止め、腫れを解消して皮膚を生成し、滞りを解消する作用を発揮する。中国医学は、鬱血がなくならなければ新しい血が生成されないと考える。モツヤクの好ましい含有量は3〜10g/Lであり、より好ましい含有量は5〜8g/Lであり、最も好ましい含有量は5〜6g/Lである。
【0043】
ケッケツ
ケッケツは、ドラコロジン、ドラコルビン、樹脂酸等を含有する。止血して血を活性化し、抗炎鎮痛することができ、血を活性化して滞りを解消し、できものを抑え組織を生成する効能を有する。ケッケツの好ましい含有量は3〜10g/Lであり、より好ましい含有量は5〜8g/Lであり、最も好ましい含有量は4〜5g/Lである。
【0044】
アセンヤク
アセンヤクはカテコールを含有しており、抗酸化と抗菌(グラム陽性菌と陰性菌を抑制し、黄色ブドウ球菌、腸球菌、大腸菌を抑制し、インフルエンザウイルスに抗する)が可能であり、血を活性化して傷を治療し、止血して組織を生成し、湿疹やできものを治す作用を有する。アセンヤクの好ましい含有量は3〜10g/Lであり、より好ましい含有量は5〜8g/Lであり、最も好ましい含有量は4〜5g/Lである。
【0045】
本発明に記載の医薬組成物において、前記医薬組成物は、混溶された抗生剤をさらに含むことができる。
【0046】
本発明に記載の抗生剤はゲンタマイシン、クロラムフェニコールを含む。
【0047】
本発明の組成物は、上記調合成分以外に、創面の感染が深刻な症例については、創面感染の病因学的診断に基づき、薬剤感受性試験を指針として、組成物100ml毎に、例えば、ゲンタマイシン8万単位とクロラムフェニコール0.25g(ただし、上記2種に限定されず、他の適当な1組の抗生剤を選択してもよい)など、1組の抗生剤を臨時に加え、十分に振り混ぜてから創面に塗布する。
【0048】
本発明の1つの実施例は、キバナオウギ10〜30g/L、トウキ5〜20g/L、タンジン5〜20g/L、セキシャク5〜20g/L、オウレン5〜20g/L、オウゴン5〜20g/L、オウバク5〜20g/L、クチナシ5〜20g/L、ビャクレン5〜20g/L、マサキ5〜20g/L、ビャクキュウ5〜20g/L、カンゾウ5〜15g/L、ニュウコウ3〜10g/L、モツヤク3〜10g/L、ケッケツ3〜10g/L、アセンヤク3〜10g/Lという最終質量体積比の原薬と、最終体積百分率含有量のグリセロール80〜90%、1,2−プロパンジオール6〜15%、水溶性ラウロカプラム0.2〜2%またはデシルメチルスルホキシド1〜4%、水3〜8%とから作製される、皮膚の種々の損傷創面を治療する医薬組成物を開示している。
【0049】
本発明の1つの実施例は、前記原薬の最終質量体積比が、キバナオウギ10〜20g/L、トウキ5〜10g/L、タンジン5〜15g/L、セキシャク5〜15g/L、オウレン5〜10g/L、オウゴン5〜10g/L、オウバク5〜10g/L、クチナシ5〜10g/L、ビャクレン6〜15g/L、マサキ5〜15g/L、ビャクキュウ6〜15g/L、カンゾウ6〜12g/L、ニュウコウ5〜8g/L、モツヤク5〜8g/L、ケッケツ5〜8g/L、アセンヤク5〜8g/Lであり、最終体積百分率含有量がグリセロール80〜90%、1,2−プロパンジオール6〜15%、水溶性ラウロカプラム0.6〜1%またはデシルメチルスルホキシド1〜3%、水3〜5%である、皮膚の種々の損傷創面を治療する医薬組成物を開示している。
【0050】
本発明の1つの実施例は、前記原薬の最終質量体積比が、キバナオウギ10〜15g/L、トウキ6〜8g/L、タンジン8〜10g/L、セキシャク8〜10g/L、オウレン6〜8g/L、オウゴン6〜8g/L、オウバク8〜10g/L、クチナシ6〜8g/L、ビャクレン8〜10g/L、マサキ8〜10g/L、ビャクキュウ8〜10g/L、カンゾウ8〜10g/L、ニュウコウ5〜6g/L、モツヤク5〜6g/L、ケッケツ4〜5g/L、アセンヤク4〜5g/Lであり、最終体積百分率含有量がグリセロール80〜90%、1,2−プロパンジオール6〜15%、水溶性ラウロカプラム0.2〜0.5%またはデシルメチルスルホキシド1〜1.5%、水3〜4%である、皮膚の種々の損傷創面を治療する医薬組成物を開示している。
【0051】
本発明の具体的実施例は、前記原薬の最終質量体積比が、キバナオウギ20g/L、トウキ15g/L、タンジン15g/L、セキシャク15g/L、オウレン10g/L、オウゴン10g/L、オウバク10g/L、クチナシ10g/L、ビャクレン15g/L、マサキ15g/L、ビャクキュウ15g/L、カンゾウ12g/L、ニュウコウ8g/L、モツヤク8g/L、ケッケツ6g/L、アセンヤク6g/Lであり、最終体積百分率含有量がグリセロール80%、1,2−プロパンジオール14%、水溶性ラウロカプラム1%、水5%である、皮膚の種々の損傷創面を治療する医薬組成物を開示している。
【0052】
本発明の具体的実施例は、前記原薬の最終質量体積比が、タンジン20g/L、オウバク20g/L、マサキ20g/L、ビャクキュウ15g/L、カンゾウ15g/L、アセンヤク8g/Lであり、最終体積百分率含有量がグリセロール88.4%、1,2−プロパンジオール8%、水溶性ラウロカプラム0.6%、水3%である、皮膚の種々の損傷創面を治療する医薬組成物を開示している。
【0053】
本発明の具体的実施例は、前記原薬の最終質量体積比が、キバナオウギ10g/L、トウキ8g/L、タンジン8g/L、セキシャク8g/L、オウレン6g/L、オウゴン6g/L、オウバク6g/L、クチナシ6g/L、ビャクレン10g/L、マサキ10g/L、ビャクキュウ10g/L、カンゾウ8g/L、ニュウコウ5g/L、モツヤク5g/L、ケッケツ4g/L、アセンヤク4g/Lであり、最終体積百分率含有量がグリセロール84.7%、1,2−プロパンジオール12%、水溶性ラウロカプラム0.3%、水4%である、皮膚の種々の損傷創面を治療する医薬組成物を開示している。
【0054】
本発明のもう1つの態様は、適量のキバナオウギ、トウキ、タンジン、セキシャク、オウレン、オウゴン、オウバク、クチナシ、ビャクレン、マサキ、ビャクキュウ、カンゾウのうち少なくとも3種を精選して秤量し、対応する量のグリセロールを投入し対応する量の蒸留水に混合し、水蒸気の気圧0.02MPaおよび温度105℃の環境で、原薬を含むグリセロールを、10分間、隔層加熱し、冷却後に薬剤残渣を濾過して除去し、失われたグリセロール合水を十分な量だけ補充し;ニュウコウ、モツヤク、ケッケツ、アセンヤクのうち少なくとも1種を精選して秤量し、対応する量の1,2−プロパンジオールに投入し、24時間浸漬した後、薬剤残渣を濾過して除去し、失われた1,2−プロパンジオールを十分な量だけ補充し;原薬の有効成分を含有するグリセロール、原薬の有効成分を含有する1,2−プロパンジオールと、対応する量の水溶性ラウロカプラムまたはデシルメチルスルホキシドとを混合し、十分に攪拌して均一にし、パッケージングして滅菌する方法を含む、前記医薬組成物の調製方法を開示している。
【0055】
本発明の1つの具体的実施例において、前記調製方法は:適量のキバナオウギ、トウキ、タンジン、セキシャクのうち少なくとも1種;オウレン、オウゴン、オウバク、クチナシのうち少なくとも1種;ビャクレン、マサキ、ビャクキュウ、カンゾウのうち少なくとも1種、計少なくとも3種を精選して秤量し、対応する量のグリセロールを投入し対応する量の蒸留水に混合し、水蒸気の気圧0.02MPaおよび温度105℃の環境で、原薬を含むグリセロール合水を、10分間、隔層加熱し、冷却後に薬剤残渣を濾過して除去し、失われたグリセロール合水を十分な量だけ補充し;適量のニュウコウ、モツヤク、ケッケツ、アセンヤクのうち少なくとも1種を精選して秤量し、対応する量の1,2−プロパンジオールに投入し、24時間浸漬した後、薬剤残渣を濾過して除去し、失われた1,2−プロパンジオールを十分な量だけ補充し;原薬の有効成分を含有するグリセロール合水、原薬の有効成分を含有する1,2−プロパンジオールと、対応する量の水溶性ラウロカプラムまたはデシルメチルスルホキシドとを混合し、十分に攪拌して均一にし、パッケージングして滅菌する方法を含む。
【0056】
本発明の組成物に含まれる漢方薬材の薬用有効成分は、グリセロールまたは1,2−プロパンジオールを溶媒として抽出される。常温下では、漢方薬材の薬用有効成分はグリセロール中での溶解度が低く、かつ、析出が遅い。本出願人は、グリセロールに少量の水を加え、適当な圧力と温度を用い、一定の時間が経過すれば、漢方薬材の薬用有効成分へのグリセロールの溶解度が良好であることを見出した。グリセロールの沸点は290℃である。実際の操作では、高圧水蒸気でグリセロール合水を105℃まで隔層加熱し、時間を10分間維持する。このような温度と時間を選んだのは、グリセロールの化学的安定性を保つとともに、投入された漢方薬材の薬用有効成分をうまく溶出させられるようにするためである。
【0057】
1,2−プロパンジオールは、組成物の共通成分中の含有量比率が低いが、その使用量は、組成物中のニュウコウ、モツヤク、ケッケツ、アセンヤクの薬用有効成分を浸漬・溶解・抽出する溶媒としては十分である。
【0058】
本発明は、中国医学の外科学の、解熱解毒し、血を活性化して腫れを解消し、腐敗物を取り除いて組織を生成し、湿疹やできものを治す、という治療法則に従い、通りを良くして助け合い、「通」をもって「補」となし、補うことと排出することをバランスさせ、「通」と「補」を共に施す、という考え方で、キバナオウギ、トウキ、タンジン、セキシャク;オウレン、オウゴン、オウバク、クチナシと;ビャクレン、マサキ、ビャクキュウ、カンゾウと;ニュウコウ、モツヤク、ケッケツ、アセンヤクとで、生薬の品目が多く薬剤の量が軽い、4つの薬の組み合わせから構成された新たな大処方をなし、吸湿、保湿、成膜を行うとともに溶媒にもなる基礎的な薬の組み合わせを加える。5つの組み合わせが力を合わせ、理法が周到であり、薬の処方が的確であり、1つの新たな製剤を創出しており、本発明者は臨床の実践においてしばしば用い、しばしば効果を上げている。
【0059】
処方構成の面では、マクロレベルにおいて、第1の薬の組み合わせは、キバナオウギ、トウキ、タンジン、セキシャクであり、気血を補って毒を排出し、「君」に属し;第2の薬の組み合わせは、オウレン、オウゴン、オウバク、クチナシであり、毒を除去して熱を排出し、「臣」に属し;第3の薬の組み合わせは、ビャクレン、マサキ、ビャクキュウ、カンゾウであり、湿疹やできものを治し腫れを解消し、「佐」に属し;第4の薬の組み合わせは、ニュウコウ、モツヤク、ケッケツ、アセンヤクであり、気の流れを良くし血を活性化して経絡を通じ、腐敗物を取り除いて組織を生成し、「使」に属する。ミクロレベルでは、4つの薬の組み合わせは4つの小処方であり、処方ごとに4種の漢方薬があり、その機能と性状に基づき、上記順序により、対応する「君」、「臣」、「佐」、「使」をそれぞれ構成する。
【0060】
本発明は、前記医薬組成物の、皮膚の種々の損傷創面を治療するための外用薬剤の調製における用途をさらに開示している。
【0061】
いくつかの実施例において、前記皮膚の種々の損傷創面は、結核菌感染または悪性腫瘍に起因する皮膚潰瘍や、性ホルモン分泌失調のため生じるにきびを含まない。
【0062】
いくつかの具体的実施例において、本発明に記載の、皮膚の種々の損傷創面は、火傷創面、湯傷創面、皮膚の擦傷・挫傷創面、切開後の縫合創口、褥瘡創面、皮膚感染創面、および肉芽組織創面を含む。