特許第6681482号(P6681482)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6681482皮膚の種々の損傷創面の治療の外用医薬組成物およびその調製方法
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  • 特許6681482-皮膚の種々の損傷創面の治療の外用医薬組成物およびその調製方法 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6681482
(24)【登録日】2020年3月25日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】皮膚の種々の損傷創面の治療の外用医薬組成物およびその調製方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/047 20060101AFI20200406BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20200406BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20200406BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20200406BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20200406BHJP
   A61K 36/481 20060101ALI20200406BHJP
   A61K 36/232 20060101ALI20200406BHJP
   A61K 36/537 20060101ALI20200406BHJP
   A61K 36/65 20060101ALI20200406BHJP
   A61K 36/718 20060101ALI20200406BHJP
   A61K 36/539 20060101ALI20200406BHJP
   A61K 36/756 20060101ALI20200406BHJP
   A61K 36/744 20060101ALI20200406BHJP
   A61K 36/87 20060101ALI20200406BHJP
   A61K 36/37 20060101ALI20200406BHJP
   A61K 36/898 20060101ALI20200406BHJP
   A61K 36/24 20060101ALI20200406BHJP
   A61K 36/484 20060101ALI20200406BHJP
   A61K 36/328 20060101ALI20200406BHJP
   A61K 36/324 20060101ALI20200406BHJP
   A61K 36/889 20060101ALI20200406BHJP
   A61K 36/74 20060101ALI20200406BHJP
   A61K 31/7036 20060101ALI20200406BHJP
   A61K 31/165 20060101ALI20200406BHJP
【FI】
   A61K31/047
   A61K9/08
   A61K47/20
   A61K47/22
   A61P17/02
   A61K36/481
   A61K36/232
   A61K36/537
   A61K36/65
   A61K36/718
   A61K36/539
   A61K36/756
   A61K36/744
   A61K36/87
   A61K36/37
   A61K36/898
   A61K36/24
   A61K36/484
   A61K36/328
   A61K36/324
   A61K36/889
   A61K36/74
   A61K31/7036
   A61K31/165
【請求項の数】10
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2018-563615(P2018-563615)
(86)(22)【出願日】2017年5月23日
(65)【公表番号】特表2019-517533(P2019-517533A)
(43)【公表日】2019年6月24日
(86)【国際出願番号】CN2017085443
(87)【国際公開番号】WO2017206758
(87)【国際公開日】20171207
【審査請求日】2018年11月29日
(31)【優先権主張番号】201610369784.4
(32)【優先日】2016年5月30日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518424969
【氏名又は名称】傅 遠橋
【氏名又は名称原語表記】FU, Yuanqiao
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】傅 遠橋
【審査官】 伊藤 清子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/033308(WO,A1)
【文献】 特表2017−529334(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/047
A61K 9/08
A61K 31/165
A61K 31/7036
A61K 36/232
A61K 36/24
A61K 36/324
A61K 36/328
A61K 36/37
A61K 36/481
A61K 36/484
A61K 36/537
A61K 36/539
A61K 36/65
A61K 36/718
A61K 36/74
A61K 36/744
A61K 36/756
A61K 36/87
A61K 36/889
A61K 36/898
A61K 47/20
A61K 47/22
A61P 17/02
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重要成分として、グリセロール、1,2−プロパンジオール、水溶性ラウロカプラムまたはデシルメチルスルホキシド、および水を含んでおり特定の配合比で構成され、
前記グリセロールが組成物に占める含有量は80〜90体積%であり;前記1,2−プロパンジオールが組成物に占める含有量は6〜15体積%であり;前記水溶性ラウロカプラムが組成物に占める含有量は0.2〜2体積%であり;前記デシルメチルスルホキシドが組成物に占める含有量は1〜4体積%であり;前記水が組成物に占める含有量は3〜8体積%であり、前記医薬組成物の重要成分は、創面を塞ぎ生薬の薬用有効成分を抽出・分散・調合するために用いられる、皮膚の種々の損傷創面を治療する医薬組成物。
【請求項2】
前記水溶性ラウロカプラムが組成物に占める含有量は、0.2〜1体積%または0.2〜0.5体積%であり;
前記デシルメチルスルホキシドが組成物に占める含有量は、1〜3体積%または1〜1.5体積%であり;
前記水が組成物に占める含有量は、3〜5体積%または3〜4体積%である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
1)キバナオウギ、トウキ、タンジン、セキシャクのうち少なくとも1種の生薬から、グリセロールと微量の水とを用いて高温高圧を経て所定の時間をかけて抽出された薬用有効成分と;
2)オウレン、オウゴン、オウバク、クチナシのうち少なくとも1種の生薬から、グリセロールと微量の水とを用いて高温高圧を経て所定の時間をかけて抽出された薬用有効成分と;
3)ビャクレン、マサキ、ビャクキュウ、カンゾウのうち少なくとも1種の生薬から、グリセロールと微量の水とを用いて高温高圧を経て所定の時間をかけて抽出された薬用有効成分と;
4)ニュウコウ、モツヤク、ケッケツ、アセンヤクのうち少なくとも1種の生薬から、1,2−プロパンジオールを用いて抽出した後、グリセロールを入れた薬用有効成分と、
のうち少なくとも1種以上をさらに含む、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
1)前記キバナオウギが組成物に占める含有量は10〜30g/Lまたは10〜20g/Lまたは10〜15g/Lであり;
2)前記トウキが組成物に占める含有量は5〜20g/Lまたは5〜10g/Lまたは6〜8g/Lであり;
3)前記タンジンが組成物に占める含有量は5〜20g/Lまたは5〜15g/Lまたは8〜10g/Lであり;
4)前記セキシャクが組成物に占める含有量は5〜20g/Lまたは5〜15g/Lまたは8〜10g/Lである、
請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
1)前記オウレンが組成物に占める含有量は5〜20g/Lまたは5〜10g/Lまたは6〜8g/Lであり;
2)前記オウゴンが組成物に占める含有量は5〜20g/Lまたは5〜10g/Lまたは6〜8g/Lであり;
3)前記オウバクが組成物に占める含有量は5〜20g/Lまたは5〜10g/Lまたは6〜8g/Lであり;
4)前記クチナシが組成物に占める含有量は5〜20g/Lまたは5〜10g/Lまたは6〜8g/Lである、
請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項6】
1)前記ビャクレンが組成物に占める含有量は5〜20g/Lまたは6〜15g/Lまたは8〜10g/Lであり;
2)前記マサキが組成物に占める含有量は5〜20g/Lまたは5〜15g/Lまたは8〜10g/Lであり;
3)前記ビャクキュウが組成物に占める含有量は5〜20g/Lまたは6〜15g/Lまたは8〜10g/Lであり;
4)前記カンゾウが組成物に占める含有量は5〜15g/Lまたは6〜12g/Lまたは8〜10g/Lである、
請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項7】
1)前記ニュウコウが組成物に占める含有量は3〜10g/Lまたは5〜8g/Lまたは5〜6g/Lであり、
2)前記モツヤクが組成物に占める含有量は3〜10g/Lまたは5〜8g/Lまたは5〜6g/Lであり、
3)前記ケッケツが組成物に占める含有量は3〜10g/Lまたは5〜8g/Lまたは4〜5g/Lであり、
4)前記アセンヤクが組成物に占める含有量は3〜10g/Lまたは5〜8g/Lまたは4〜5g/Lである、
請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項8】
混溶されたゲンタマイシン、クロラムフェニコールをさらに含むことができる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
適量のキバナオウギ、トウキ、タンジン、セキシャクのうち少なくとも1種;オウレン、オウゴン、オウバク、クチナシのうち少なくとも1種;ビャクレン、マサキ、ビャクキュウ、カンゾウのうち少なくとも1種、計少なくとも3種を精選して秤量し、対応する量のグリセロールを投入し対応する量の蒸留水に混合し、水蒸気の気圧0.02MPaおよび温度105℃の環境で、原薬を含むグリセロール合水を、10分間、隔層加熱し、冷却してから薬剤残渣を濾過して除去し、失われたグリセロール合水を十分な量だけ補充し;適量のニュウコウ、モツヤク、ケッケツ、アセンヤクのうち少なくとも1種を精選して秤量し、対応する量の1,2−プロパンジオールに投入し、24時間浸漬した後、薬剤残渣を濾過して除去し、失われた1,2−プロパンジオールを十分な量だけ補充し;原薬の有効成分を含有するグリセロール合水、原薬の有効成分を含有する1,2−プロパンジオールと、対応する量の水溶性ラウロカプラムまたはデシルメチルスルホキシドとを混合し、十分に攪拌して均一にし、パッケージングして滅菌する方法を含む、請求項3に記載の医薬組成物の調製方法。
【請求項10】
皮膚の種々の損傷創面を治療するための、請求項1〜7のいずれか一項に記載の医薬組成物であって、
該医薬組成物が、外用で適用され、
該皮膚の種々の損傷創面が、火傷・湯傷創面、皮膚の擦傷・挫傷創面、切開後の縫合創口、褥瘡創面、皮膚感染創面、および肉芽組織創面を含む、医薬組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本発明は、2016年5月30日に出願された中国特許出願番号201610369784.4の優先権を主張しており、そのすべての内容が、引用によって本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、ヒトの皮膚の種々の損傷創面の治療のための液状外用医薬組成物に関する。本発明は、中国医学と西洋医学が結合した外科分野に属する。
【背景技術】
【0003】
ヒトの皮膚の、各種の損傷創面の修復・癒合は、複雑な病理的生理的過程であり、軽微で小さな損傷創面が、受傷後の創面の出血または滲出を経て、乾燥して痂皮が形成され、痂皮の下で癒合する。大多数の、比較的大きいかもしくは特殊な皮膚損傷(火傷など)の創面は、損傷後の創面で滲出、感染を経て、壊死組織が除去され、感染が抑制され、創面の滲出が減少し、痂皮が形成されるかまたは創面が生物材料に覆われ、創面が徐々に瘢痕となって癒合する。
【0004】
皮膚の損傷創面の複雑な癒合過程において、全身性治療の薬剤使用を除き、創面処理の1つの重要なポイントは、創面での薬剤使用の選択である。現在、皮膚の損傷創面治療のための薬物製剤は非常に多いが、懸濁剤、軟膏剤、消毒剤、成膜剤に大まかに分けることができる。当業者は、臨床での、皮膚の損傷創面の治療において、以上数タイプの創面への薬剤使用にはいずれも治療効果があるが、ある種の限界性も存在することを理解することができる。
【0005】
上記のように、皮膚の損傷創面を治療するにあたって、現在選択使用可能な薬物製剤のうち、懸濁剤を用いるとすれば、大量の被覆材で創面を包まなければならず、薬剤中の水分が乾燥した後、被覆材がしばしば創面に粘り付き、被覆材を交換する際に創面の新生組織を裂いて出血に至ることがあり、患者は耐えがたいほど痛い上、被覆材を交換するのに時間がかかり、医療スタッフの仕事量が多い。軟膏剤を用いるとすれば、軟膏と創面滲出液が溶け合わず、創面滲出液が多い場合には、軟膏が流れやすく、被覆材が創面に付着する現象につながることがあり、被覆材の交換に困難をもたらす。成膜噴霧剤は、比較的うまく創面を塞ぐことができるが、創面滲出液を吸い取ってうまく解決することはできず、膜の下に膿がたまりやすい。
【0006】
中国医学では「河流が草木を芽生えさせて守り、気血が皮膚を生成させて守る」と考える。草木が水や土と切っても切り離せないのと同様、皮膚の損傷創面を修復するには、人体の気血で十分に養生する必要がある。漢方薬のキバナオウギ、トウキ、タンジン、セキシャクは気を増やして血を活性化し、腫れを取って痛みを止め、気血が通れば皮膚が生成する。
【0007】
オウレン、オウゴン、オウバク、クチナシは古代の名処方「黄連解毒湯」であり、東晋の葛洪の『肘後備急方』と唐代のWang Taoの『外台秘要方』に由来し、後世の医者が、種々のできものや熱の毒を治療するために内服させた。近現代の医書や雑誌に、オウレン、オウゴン、オウバクをゴマ油で煎じるかまたは調合してから火傷・湯傷の創面に塗って治療する療法がしばしば見られる。痛みやかゆみ、できものはすべて心臓に属すが、オウゴンは、心臓や肺など「上焦」の熱を排出し、オウレンは、心臓や肺など「上焦」と、胃などの「中焦」の熱を排出し、オウバクは、肝臓や腎臓、腸など「下焦」の熱を排出し、『薬品化義』では、オウバクは頭頂部からかかとに至るまで、皮膚から骨髄に至るまでくまなく熱を下げることができ、クチナシは「上焦」「中焦」「下焦」の「三焦」の熱をまとめて下げることができると述べられている。このようにすれば全身の熱の毒を根本的に取り除くことができ、外に向かってできものができることはない。現代の研究で、この処方には、抗炎症静菌作用があり、エンドトキシンを分解して免疫機能を調節する作用があり、脳、肝臓、腎臓、腸粘膜血管を保護する作用および抗アポトーシスの作用があり、抗凝血、抗血栓形成の作用があることが判明している。
【0008】
ビャクレンは解熱解毒し、マサキも解熱解毒し、また、湿疹やできものを治し、さらに、血液を冷やして止血し、ビャクキュウは湿疹やできものを治し、カンゾウは様々な薬を調和させ、解毒して炎症を抑え、キバナオウギ、トウキ、タンジン、セキシャクと共に、創面組織の生細胞に対して栄養作用を有する。
【0009】
ニュウコウは気の通りを良くする傾向があり、モツヤクは鬱血を解消する傾向があり、ニュウコウ、モツヤクは辛い香りをまき散らし、気の滞りや鬱血を駆逐する重要な薬である。大きなできものであっても、気や血のめぐりを良くすることにより腫れを解消し、局部的損傷の修復を促すことができる。ニュウコウ、モツヤクの、腫れを解消して皮膚を生成する作用は、一般の薬剤で代替するのは困難である。
【0010】
ケッケツは生理痛を取り除き、血を調和させる妙薬であり、もっぱら血にかかわり、幅広い効き目があるのに対し、ニュウコウ、モツヤクは主に血の病の薬だが、気の薬も兼ねる。ケッケツは鬱血を散らし、新たな血を生じさせる重要な薬であり、主に血瘤を破り、刃物などによる傷を治療し、痛みを止め、単独で用いても直ちに効果があり、ニュウコウ、モツヤクと合わせて用いれば、「強者連合」となり、血のめぐりを良くして鬱血を解消する薬効がさらに大きくなる。血が止まり、鬱血が残らず、血のめぐりを良くして痛みを止めることができるので、これら3種の薬は「血家三剣客」であり、鬱血や滞りがあれば、どこであろうとそれら薬の剣の刃が向けられ、必ず血のめぐりを良くして痛みを止める。アセンヤクは、抗菌と収斂の作用のほか、痂皮を取り除く作用もある。
【0011】
伝統的中国医学の文献に記載されている瘡瘍科治療用の生薬は数十種あり、上記16種の漢方薬材は、各種の処方に散発的に出現するだけである。煎じ薬、粉薬、膏薬を調製する成分としてのみ用いられる。これら数種の剤形で火傷創面を治療する限界性については前述の通りである。
【0012】
実際のところ、創面での望ましい薬剤使用は、鎮痛する、速やかに創面を塞ぐ、創面滲出液を吸収する、滲出を減らす、排液に役立つ、創面を保護することができる、創面上皮細胞の成長を促す、抗菌スペクトルが広くかつ抗菌作用が強い、薬剤耐性菌株を発生させないかまたは薬剤耐性菌株の発生を少なくする、毒性がない、副作用が少ない、創面癒合後の瘢痕が少ない等の特徴を有していなければならない。従って、本発明が解決しようとする課題はすなわち、使用しやすく、効果の高い、皮膚の種々の損傷創面を治療する液状外用医薬組成物を探求することであり、重要な原薬を用いることに加え、中国と西洋の考え方を結び付け、これまでとは異なる発想で、特定の方法でこの医薬組成物を調製し、創面での望ましい薬剤使用が備えるべき条件を可能な限り満たす。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本明細書はまず、本発明の医薬組成物の重要成分が、グリセロール、1,2−プロパンジオール、水溶性ラウロカプラム、またはデシルメチルスルホキシドと水により特定の配合比で構成されることを強調する。この重要成分は、皮膚の種々の損傷創面を治療する際に、単独で使用すれば、速やかに創面を塞ぎ、創面滲出液を吸収し、透明で薄い痂皮を形成し、外部の細菌の侵入を防ぐことができ、精選された薬剤処方と巧みに結び付ければ、多くの望ましい治療効果を実現することができる!この重要な成分およびその特定の配合比が、本発明の最大の特徴である。
【0014】
人体は、外周がすべて皮膚に覆われた有機体であり、血液循環と体液の交換によって、有機体を構成する最小単位、すなわち個々の生細胞に、完全に密閉された相対的に定常な環境で外界と物質交換を行わせ、新陳代謝を実現し、生命の作用を維持する。皮膚に様々な原因のため損傷がもたらされれば、皮膚に保護された損傷部位の組織細胞が露出することになり、損傷した局部に「災難」が生じ、有機体は有限な力を動員して患部に到達させて「緊急災害救助」を行い、これにより、患部に一連の病理的生理的変化が生じるが、有機体が動員可能な防御力は有限であり、創面が大きければ、外部からの援助、つまり薬剤に依存せざるを得ない。医者としては、皮膚の種々の損傷創面を前にして、まず、創面を完全な密閉状態に速やかに戻し、周囲の空気から隔絶し、さらには、止血、滲出止め、腫れの解消、滅菌といった創面の病理的変化を逆転させ、創面の生理的修復を促せば、皮膚の種々の損傷創面は「災難」を順調に乗り切って、常態に戻ることができる。ここで「皮膚の種々の損傷創面に対する治療の第1の重要任務は、速やかかつ完全に創面を塞ぐことである」と提起する。この論述は既存の文献ではいずれも強調されていないが、本発明者はまさにこの論述について徹底的な観察と思考を行ってはじめて、真剣に繰り返し実践し、グリセロール、1,2−プロパンジオール、水溶性ラウロカプラムと少量の水を探し当てて選択・使用し、特定の配合比で、本発明の医薬組成物の基礎的な薬の組み合わせとし、精選した漢方薬材を組み合わせて医薬組成物をなし、基礎的な薬の組み合わせを構成する4種の物質の機能を余すところなく掘り起こして発揮させ、本発明を達成する。皮膚の種々の損傷創面は、顕著な刺激を有する薬剤を再び塗って創面の組織細胞を再び損傷させてはならない。本発明が選択・使用するこの基礎的な薬の組み合わせは、上記要求を満たすことができるだけでなく、漢方薬材の薬用有効成分を抽出することもでき、吸水や湿気を吸収し、滲出液を止め、浸透を促し、薄い痂皮を作り、気血を活性化し、脈絡を通じ、栄養を供給し、新生を促す。これらはいずれも創面をできるだけ速やかに癒合させ、瘢痕を少なくするのに役立つ措置である。
【0015】
本発明は、皮膚の種々の損傷創面を治療する医薬組成物を開示しており、前記医薬組成物の重要成分が、グリセロール、1,2−プロパンジオール、水溶性ラウロカプラム、またはデシルメチルスルホキシド、および水を含んでおり特定の配合比で構成され、前記グリセロールが組成物に占める含有量は80〜90体積%である。
【0016】
いくつかの実例においては、前記1,2−プロパンジオールが組成物に占める含有量は6〜15体積%であり;前記水溶性ラウロカプラムが組成物に占める含有量は0.2〜2体積%であり、好ましい含有量は0.6〜1体積%であり、より好ましい含有量は0.2〜0.5体積%であり;前記デシルメチルスルホキシドが組成物に占める含有量は1〜4体積%であり、好ましい含有量は1〜3体積%であり、より好ましい含有量は1〜1.5体積%であり;前記水が組成物に占める含有量は3〜8体積%であり、好ましい含有量は3〜5体積%であり、より好ましくは3〜4体積%である。
【0017】
本発明の1つの実施例は、皮膚の種々の損傷創面を治療する医薬組成物およびその重要成分を開示しており、前記医薬組成物の重要成分は、組成物に占める最終体積比が80〜90体積%のグリセロール、6〜15体積%の1,2−プロパンジオール、0.2〜2体積%の水溶性ラウロカプラムまたは1〜4体積%のデシルメチルスルホキシド、3〜8体積%の水から構成される。
【0018】
本発明の1つの具体的実施例は、皮膚の種々の損傷創面を治療する医薬組成物の重要成分を開示しており、無菌創口の創面を単独で治療し、前記医薬組成物の重要成分は、組成物に占める最終体積比が83.5体積%のグリセロール、10体積%の1,2−プロパンジオール、0.5体積%の水溶性ラウロカプラム、6体積%の水から構成される。
【0019】
いくつかの具体的実例では、本発明に記載の、皮膚の種々の損傷創面治療用の医薬組成物の重要成分のグリセロールは、好ましくは、医療用分析用試薬のグリセロール(Glycerol、グリセリン、密度1.236g/ml、500mlの重さ628g、分子式C、分子量92.09、純度≧99%)、1,2−プロパンジオール(1,2−Propanediol、分子式C、分子量76.09、純度≧99%)、水溶性ラウロカプラムと水により特定の配合比で構成され、最終体積の百分率含有量で計算すると、そのうちグリセロールが80%〜90%を占め、1,2−プロパンジオールが6〜15%を占め、これは、これら2つの成分が有する液体形態と吸湿保湿の特性を十分に利用し、創面の滲出液を吸収すると同時に、創面が過度の乾燥に至らない。
【0020】
本発明に記載の、皮膚の種々の損傷創面の治療のための組成物にラウロカプラム(Laurocapram、分子式C18H35NO、分子量281.48、分析用試薬>98%、相対密度(20℃)0.906〜0.926、pH中性)が含まれており、本品は、油溶性ラウロカプラムが水溶性ラウロカプラムに改質されたものであり、デシルメチルスルホキシドとピロリドンの錯体であり、無色透明で粘稠な液体である。親水性薬剤の活性成分に対して顕著な皮膚透過浸透促進作用があり、皮膚の角質層と脂質を相互作用させ、有効物質が角質層の隙間の中の脂質に相転移する温度を低くし、流動性を高めており、薬剤または活性添加剤の角質層での拡散抵抗を低下させ、強い浸透促進作用を起こしている。
【0021】
水溶性ラウロカプラムは、組成物に含まれる薬剤の浸透吸収効果を有効に高めることにより、創面の表層を殺す病原菌を抑制するだけでなく、創面の深層を殺す病原菌も抑制することができるようにし、薬剤の治療効果を十分に発揮させ、薬剤の用量を減らすことができる。いくつかの実施例において、前記水溶性ラウロカプラムの好ましい含有量は2〜20ml/Lであり、6〜10ml/Lがより好ましく、2〜5mL/Lが最も好ましい。いくつかの具体的実施例において、前記水溶性ラウロカプラムは、好ましくは医薬品レベルの水溶性ラウロカプラムである。
【0022】
いくつかの実施例においては、効能が似ているため、ラウロカプラムの代わりにデシルメチルスルホキシドを用いてもよく、前記デシルメチルスルホキシドの好ましい含有量は10〜40ml/Lであり、10〜30ml/Lがより好ましく、10〜15mL/Lが最も好ましい。いくつかの具体的実施例において、前記デシルメチルスルホキシドは、好ましくは医薬品レベルのデシルメチルスルホキシドである。
【0023】
本発明に記載の、皮膚の種々の損傷創面の処置治療のための医薬組成物の重要成分のうち、水は優れた天然の溶媒であり、水を含有する作用は次の通りである:一定の比率のプロピレングリコールと水の混合液は、いくつかの薬剤の加水分解を遅延させ、その安定性を高めることにより、組成物の有効期間を延ばすことができる。また、高濃度のグリセロールは吸湿性が強く、少量の水を加えれば、その強い吸湿性をバランスさせることができる。グリセロール合水は、高温高圧の条件下で漢方薬材の薬用有効成分の溶解性を高めることができる。水の好ましい含有量は30〜80ml/Lであり、より好ましい含有量は30〜50ml/Lであり、最も好ましい含有量は30〜40ml/Lである。
【0024】
具体的な使用において、本出願人は、このような、特定の配合比で構成された医薬組成物の重要成分と、精選した配合比の漢方薬材の薬用有効成分とからなる医薬組成物を創面に塗れば、速やかに創面を塞ぐとともに、創面に一層の透明な痂皮を作らせることができ、創面の感染を有効に予防および治療することができ、創面の水腫を取り除き、創面の滲出を停止させ、患者の体質の消耗を軽減し、ラジカルに抗することができ、創面を保護することができ、創面の胚芽細胞に栄養を与えて創面を修復することができ、創面を痂皮の下で速やかに癒合させ、一般にII度の火傷創面であれば瘢痕が残ることは少ないことを見出した。
【0025】
本発明の医薬組成物には、以下の漢方薬原薬が含まれている:
本発明に記載の医薬組成物は、キバナオウギ、トウキ、タンジン、セキシャクのうち少なくとも1種をさらに含み、前記キバナオウギ、トウキ、タンジン、セキシャクのうち少なくとも1種の生薬の薬用有効成分は、高温高圧の条件でグリセロール合水を用いて抽出される。
【0026】
キバナオウギ
キバナオウギは種々の化学的有効成分を含有しており、主にサポニン類、フラボン類、多糖類、アミノ酸および微量元素等を含み、気を補って陽を高め、唾液や体液の分泌と血液の生成を促し、毒と膿を排出し、できものを抑え組織を生成する効能を有する。組成物におけるキバナオウギの好ましい含有量は10〜30g/Lであり、より好ましい含有量は10〜20g/Lであり、最も好ましい含有量は10〜15g/Lである。
【0027】
トウキ
トウキは、揮発油、α−アンゲリカラクトン、フェルラ酸、ニコチン酸、コハク酸、β−シトステロール、ダウコステロール、単糖類、多糖類、レシチン、種々のアミノ酸および無機元素等を含有しており、血液を補って活性化し、月経を順調にして痛みを止め、毒を除いて腫れを解消し、気血を補って滞りを解消し、陰を潤して血液の生成を促し、皮膚や髪に潤いと光沢を与える作用を有する。トウキの好ましい含有量は5〜20g/Lであり、より好ましい含有量は5〜10g/Lであり、最も好ましい含有量は6〜8g/Lである。
【0028】
タンジン
タンジンは、タンシノール、サルビオール、バイカリン等の有効成分を含有しており、抗酸化し、抗菌し、血を活性化して月経を順調にし、鬱血を排出し、血の温度を下げて痛みを解消し、膿を排出して痛みを止め、肉を成長させ組織を生成し、創面の癒合を促す作用を有する。タンジンの好ましい含有量は5〜20g/Lであり、より好ましい含有量は5〜15g/Lであり、最も好ましい含有量は8〜10g/Lである。
【0029】
セキシャク
セキシャクは、ペオニフロリン、ペオニン、ペオノール、アセンヤクエキス、没食子酸エチル、揮発油等を含み、心筋虚血に抗し、血液の微小循環を改善し、血小板の凝集を抑制して血栓の形成に抗するほか、鎮痛してけいれんを解消し、肝臓を守り、抗炎抗菌する作用を有しており、黄色ブドウ球菌および緑膿菌、真菌、ヘルペスウイルス、エンテロウイルスに対していずれも抑制作用を有する。セキシャクの好ましい含有量は5〜20g/Lであり、より好ましい含有量は5〜15g/Lであり、最も好ましい含有量は8〜10g/Lである。
【0030】
本発明に記載の医薬組成物は、オウレン、オウゴン、オウバク、クチナシのうち少なくとも1種をさらに含んでもよく、前記オウレン、オウゴン、オウバク、クチナシのうち少なくとも1種の生薬の薬用有効成分は、高温高圧の条件でグリセロール合水を用いて抽出される。
【0031】
オウレン
オウレンは、種々のイソキノリンアルカロイドやベルベリンを含有している。エンドトキシンを除去し、黄色ブドウ球菌や大腸菌に抗することができ、熱と湿気を取り除き、熱を排出して解毒する作用を有する。火傷に対し、オウレンの煎じ薬を外用すれば、感染に抗することができるだけでなく、滲出を減らし、痂皮の形成を促すこともできる。オウレンの好ましい含有量は5〜20g/Lであり、より好ましい含有量は5〜10g/Lであり、最も好ましい含有量は6〜8g/Lである。
【0032】
オウゴン
オウゴンは主に、バイカレイン、オウゴニン、オウゴノシドなどのフラボン類化合物を含み、揮発油、アミノ酸の糖類を含有している。オウゴンは静菌能力が強く、黄色ブドウ球菌、溶血性連鎖球菌、大腸菌、緑膿菌に対して顕著な抑制作用を有し、抗炎、抗酸化作用もさらに有する。オウゴンの好ましい含有量は5〜20g/Lであり、より好ましい含有量は5〜10g/Lであり、最も好ましい含有量は6〜8g/Lである。
【0033】
オウバク
オウバクは主に、ベルベリン、フェロデンドリン、オバクノン、オバクラクトンを含む。中国医学では、熱毒によるできものにはオウバクが良いとされ、黄色ブドウ球菌、溶血性連鎖球菌、大腸菌、緑膿菌ばい菌に対して顕著な抑制作用を有する。オウバクの好ましい含有量は5〜20g/Lであり、より好ましい含有量は5〜10g/Lであり、最も好ましい含有量は6〜8g/Lである。
【0034】
クチナシ
クチナシは主に、イリドイド類のゲニポシド、クロシン、ルチン等のフラボン類を含み、熱を排出して苦痛を除き、熱を除いて水分を排出し、血の温度を下げて解毒することができ、外用すれば腫れを解消して痛みを止め、黄色ブドウ球菌や溶血性連鎖球菌に対して優れた静菌作用を有する。クチナシの好ましい含有量は5〜20g/Lであり、より好ましい含有量は5〜10g/Lであり、最も好ましい含有量は6〜8g/Lである。
【0035】
本発明に記載の医薬組成物は、ビャクレン、マサキ、ビャクキュウ、カンゾウのうち少なくとも1種をさらに含み、前記ビャクキュウ、ビャクレン、マサキ、カンゾウのうち少なくとも1種の生薬の薬用有効成分は、高温高圧の条件でグリセロール合水を用いて抽出される。
【0036】
ビャクレン
ビャクレンの主成分には、没食子酸、酒石酸、シトステロール、クリソファノール、粘液質があり、解熱解毒し、腫れを解消して皮膚を生成する作用を有する。本品は、熱を取り去り、辛さで腫れを解消し、できものを抑え組織を生成して痛みを止め、黄色ブドウ球菌、緑膿菌、大腸菌に対して顕著な抑制作用を有する。ビャクレンは民間で俗に「見腫消」と呼ばれており、単独の薬として応用すれば、強い抗感染作用を有する。ビャクレンの好ましい含有量は5〜20g/Lであり、より好ましい含有量は6〜15g/Lであり、最も好ましい含有量は8〜10g/Lである。
【0037】
マサキ
マサキの主成分は、プロトカテク酸、プロトカテクアルデヒド、縮合型タンニン酸、フラボン類および揮発油であり。解熱解毒し、血液を冷やして止血し、できものを抑える作用を有する。マサキは、抗菌抗炎し、冠状動脈の血流量を増加させ、心筋虚血に抗し、火傷創面に対して保護性膜状痂皮を形成し、感染を予防することができ、滲出を阻止する機能を有しており、吸着能力を有し、一定の透過性を有し、創面の深さを大きくしない等の利点を有する。マサキの好ましい含有量は5〜20g/Lであり、より好ましい含有量は5〜15g/Lであり、最も好ましい含有量は8〜10g/Lである。
【0038】
ビャクキュウ
ビャクキュウの主成分は、ビベンジル類、フェナントレン類およびその誘導体、少量の揮発油粘液質である。収斂止血し、腫れを解消して皮膚を生成する作用を有する。あかぎれ、湯や火による火傷の治療に用いられ、創面の滲出物を吸収し、創面を保護し、創口の癒合を促すことができる。ビャクキュウの好ましい含有量は5〜20g/Lであり、より好ましい含有量は6〜15g/Lであり、最も好ましい含有量は8〜10g/Lである。
【0039】
カンゾウ
カンゾウは、100種余りのフラボン類化合物、60タイプ余りのトリテルペン類化合物、18種のアミノ酸および種々のアルカロイド等を含有している。副腎グルココルチコイド様の作用を有し、抗炎、抗酸化、調節免疫、および解毒作用を有し、抗ウイルスおよび抗菌し、脾臓を補って気を増進し、解熱解毒し、急を緩め、痛みを止め、様々な薬を調和させる効能をさらに有する。カンゾウの好ましい含有量は5〜15g/Lであり、より好ましい含有量は6〜12g/Lであり、最も好ましい含有量は8〜10g/Lである。
【0040】
本発明に記載の医薬組成物は、ニュウコウ、モツヤク、ケッケツ、アセンヤクのうち少なくとも1種をさらに含み、前記ニュウコウ、モツヤク、ケッケツ、アセンヤクのうち少なくとも1種の生薬の薬用有効成分は、1,2−プロパンジオールを用いて浸漬法により抽出される。
【0041】
ニュウコウ
ニュウコウは主に、樹脂、植物ゴム、および揮発油を含む。鎮痛消炎することができ、血を活性化し気の流れを良くして痛みを止め、腫れを解消して皮膚を生成する効能を有しており、できものや腫瘍を治療する重要な薬剤である。ニュウコウの好ましい含有量は3〜10g/Lであり、より好ましい含有量は5〜8g/Lであり、最も好ましい含有量は5〜6g/Lである。
【0042】
モツヤク
モツヤクは主に、揮発油、樹脂、植物ゴムを含む。水浸剤は真菌に対して抑制作用を有し、常にニュウコウと組み合わされ、血を活性化し痛みを止め、腫れを解消して皮膚を生成し、滞りを解消する作用を発揮する。中国医学は、鬱血がなくならなければ新しい血が生成されないと考える。モツヤクの好ましい含有量は3〜10g/Lであり、より好ましい含有量は5〜8g/Lであり、最も好ましい含有量は5〜6g/Lである。
【0043】
ケッケツ
ケッケツは、ドラコロジン、ドラコルビン、樹脂酸等を含有する。止血して血を活性化し、抗炎鎮痛することができ、血を活性化して滞りを解消し、できものを抑え組織を生成する効能を有する。ケッケツの好ましい含有量は3〜10g/Lであり、より好ましい含有量は5〜8g/Lであり、最も好ましい含有量は4〜5g/Lである。
【0044】
アセンヤク
アセンヤクはカテコールを含有しており、抗酸化と抗菌(グラム陽性菌と陰性菌を抑制し、黄色ブドウ球菌、腸球菌、大腸菌を抑制し、インフルエンザウイルスに抗する)が可能であり、血を活性化して傷を治療し、止血して組織を生成し、湿疹やできものを治す作用を有する。アセンヤクの好ましい含有量は3〜10g/Lであり、より好ましい含有量は5〜8g/Lであり、最も好ましい含有量は4〜5g/Lである。
【0045】
本発明に記載の医薬組成物において、前記医薬組成物は、混溶された抗生剤をさらに含むことができる。
【0046】
本発明に記載の抗生剤はゲンタマイシン、クロラムフェニコールを含む。
【0047】
本発明の組成物は、上記調合成分以外に、創面の感染が深刻な症例については、創面感染の病因学的診断に基づき、薬剤感受性試験を指針として、組成物100ml毎に、例えば、ゲンタマイシン8万単位とクロラムフェニコール0.25g(ただし、上記2種に限定されず、他の適当な1組の抗生剤を選択してもよい)など、1組の抗生剤を臨時に加え、十分に振り混ぜてから創面に塗布する。
【0048】
本発明の1つの実施例は、キバナオウギ10〜30g/L、トウキ5〜20g/L、タンジン5〜20g/L、セキシャク5〜20g/L、オウレン5〜20g/L、オウゴン5〜20g/L、オウバク5〜20g/L、クチナシ5〜20g/L、ビャクレン5〜20g/L、マサキ5〜20g/L、ビャクキュウ5〜20g/L、カンゾウ5〜15g/L、ニュウコウ3〜10g/L、モツヤク3〜10g/L、ケッケツ3〜10g/L、アセンヤク3〜10g/Lという最終質量体積比の原薬と、最終体積百分率含有量のグリセロール80〜90%、1,2−プロパンジオール6〜15%、水溶性ラウロカプラム0.2〜2%またはデシルメチルスルホキシド1〜4%、水3〜8%とから作製される、皮膚の種々の損傷創面を治療する医薬組成物を開示している。
【0049】
本発明の1つの実施例は、前記原薬の最終質量体積比が、キバナオウギ10〜20g/L、トウキ5〜10g/L、タンジン5〜15g/L、セキシャク5〜15g/L、オウレン5〜10g/L、オウゴン5〜10g/L、オウバク5〜10g/L、クチナシ5〜10g/L、ビャクレン6〜15g/L、マサキ5〜15g/L、ビャクキュウ6〜15g/L、カンゾウ6〜12g/L、ニュウコウ5〜8g/L、モツヤク5〜8g/L、ケッケツ5〜8g/L、アセンヤク5〜8g/Lであり、最終体積百分率含有量がグリセロール80〜90%、1,2−プロパンジオール6〜15%、水溶性ラウロカプラム0.6〜1%またはデシルメチルスルホキシド1〜3%、水3〜5%である、皮膚の種々の損傷創面を治療する医薬組成物を開示している。
【0050】
本発明の1つの実施例は、前記原薬の最終質量体積比が、キバナオウギ10〜15g/L、トウキ6〜8g/L、タンジン8〜10g/L、セキシャク8〜10g/L、オウレン6〜8g/L、オウゴン6〜8g/L、オウバク8〜10g/L、クチナシ6〜8g/L、ビャクレン8〜10g/L、マサキ8〜10g/L、ビャクキュウ8〜10g/L、カンゾウ8〜10g/L、ニュウコウ5〜6g/L、モツヤク5〜6g/L、ケッケツ4〜5g/L、アセンヤク4〜5g/Lであり、最終体積百分率含有量がグリセロール80〜90%、1,2−プロパンジオール6〜15%、水溶性ラウロカプラム0.2〜0.5%またはデシルメチルスルホキシド1〜1.5%、水3〜4%である、皮膚の種々の損傷創面を治療する医薬組成物を開示している。
【0051】
本発明の具体的実施例は、前記原薬の最終質量体積比が、キバナオウギ20g/L、トウキ15g/L、タンジン15g/L、セキシャク15g/L、オウレン10g/L、オウゴン10g/L、オウバク10g/L、クチナシ10g/L、ビャクレン15g/L、マサキ15g/L、ビャクキュウ15g/L、カンゾウ12g/L、ニュウコウ8g/L、モツヤク8g/L、ケッケツ6g/L、アセンヤク6g/Lであり、最終体積百分率含有量がグリセロール80%、1,2−プロパンジオール14%、水溶性ラウロカプラム1%、水5%である、皮膚の種々の損傷創面を治療する医薬組成物を開示している。
【0052】
本発明の具体的実施例は、前記原薬の最終質量体積比が、タンジン20g/L、オウバク20g/L、マサキ20g/L、ビャクキュウ15g/L、カンゾウ15g/L、アセンヤク8g/Lであり、最終体積百分率含有量がグリセロール88.4%、1,2−プロパンジオール8%、水溶性ラウロカプラム0.6%、水3%である、皮膚の種々の損傷創面を治療する医薬組成物を開示している。
【0053】
本発明の具体的実施例は、前記原薬の最終質量体積比が、キバナオウギ10g/L、トウキ8g/L、タンジン8g/L、セキシャク8g/L、オウレン6g/L、オウゴン6g/L、オウバク6g/L、クチナシ6g/L、ビャクレン10g/L、マサキ10g/L、ビャクキュウ10g/L、カンゾウ8g/L、ニュウコウ5g/L、モツヤク5g/L、ケッケツ4g/L、アセンヤク4g/Lであり、最終体積百分率含有量がグリセロール84.7%、1,2−プロパンジオール12%、水溶性ラウロカプラム0.3%、水4%である、皮膚の種々の損傷創面を治療する医薬組成物を開示している。
【0054】
本発明のもう1つの態様は、適量のキバナオウギ、トウキ、タンジン、セキシャク、オウレン、オウゴン、オウバク、クチナシ、ビャクレン、マサキ、ビャクキュウ、カンゾウのうち少なくとも3種を精選して秤量し、対応する量のグリセロールを投入し対応する量の蒸留水に混合し、水蒸気の気圧0.02MPaおよび温度105℃の環境で、原薬を含むグリセロールを、10分間、隔層加熱し、冷却後に薬剤残渣を濾過して除去し、失われたグリセロール合水を十分な量だけ補充し;ニュウコウ、モツヤク、ケッケツ、アセンヤクのうち少なくとも1種を精選して秤量し、対応する量の1,2−プロパンジオールに投入し、24時間浸漬した後、薬剤残渣を濾過して除去し、失われた1,2−プロパンジオールを十分な量だけ補充し;原薬の有効成分を含有するグリセロール、原薬の有効成分を含有する1,2−プロパンジオールと、対応する量の水溶性ラウロカプラムまたはデシルメチルスルホキシドとを混合し、十分に攪拌して均一にし、パッケージングして滅菌する方法を含む、前記医薬組成物の調製方法を開示している。
【0055】
本発明の1つの具体的実施例において、前記調製方法は:適量のキバナオウギ、トウキ、タンジン、セキシャクのうち少なくとも1種;オウレン、オウゴン、オウバク、クチナシのうち少なくとも1種;ビャクレン、マサキ、ビャクキュウ、カンゾウのうち少なくとも1種、計少なくとも3種を精選して秤量し、対応する量のグリセロールを投入し対応する量の蒸留水に混合し、水蒸気の気圧0.02MPaおよび温度105℃の環境で、原薬を含むグリセロール合水を、10分間、隔層加熱し、冷却後に薬剤残渣を濾過して除去し、失われたグリセロール合水を十分な量だけ補充し;適量のニュウコウ、モツヤク、ケッケツ、アセンヤクのうち少なくとも1種を精選して秤量し、対応する量の1,2−プロパンジオールに投入し、24時間浸漬した後、薬剤残渣を濾過して除去し、失われた1,2−プロパンジオールを十分な量だけ補充し;原薬の有効成分を含有するグリセロール合水、原薬の有効成分を含有する1,2−プロパンジオールと、対応する量の水溶性ラウロカプラムまたはデシルメチルスルホキシドとを混合し、十分に攪拌して均一にし、パッケージングして滅菌する方法を含む。
【0056】
本発明の組成物に含まれる漢方薬材の薬用有効成分は、グリセロールまたは1,2−プロパンジオールを溶媒として抽出される。常温下では、漢方薬材の薬用有効成分はグリセロール中での溶解度が低く、かつ、析出が遅い。本出願人は、グリセロールに少量の水を加え、適当な圧力と温度を用い、一定の時間が経過すれば、漢方薬材の薬用有効成分へのグリセロールの溶解度が良好であることを見出した。グリセロールの沸点は290℃である。実際の操作では、高圧水蒸気でグリセロール合水を105℃まで隔層加熱し、時間を10分間維持する。このような温度と時間を選んだのは、グリセロールの化学的安定性を保つとともに、投入された漢方薬材の薬用有効成分をうまく溶出させられるようにするためである。
【0057】
1,2−プロパンジオールは、組成物の共通成分中の含有量比率が低いが、その使用量は、組成物中のニュウコウ、モツヤク、ケッケツ、アセンヤクの薬用有効成分を浸漬・溶解・抽出する溶媒としては十分である。
【0058】
本発明は、中国医学の外科学の、解熱解毒し、血を活性化して腫れを解消し、腐敗物を取り除いて組織を生成し、湿疹やできものを治す、という治療法則に従い、通りを良くして助け合い、「通」をもって「補」となし、補うことと排出することをバランスさせ、「通」と「補」を共に施す、という考え方で、キバナオウギ、トウキ、タンジン、セキシャク;オウレン、オウゴン、オウバク、クチナシと;ビャクレン、マサキ、ビャクキュウ、カンゾウと;ニュウコウ、モツヤク、ケッケツ、アセンヤクとで、生薬の品目が多く薬剤の量が軽い、4つの薬の組み合わせから構成された新たな大処方をなし、吸湿、保湿、成膜を行うとともに溶媒にもなる基礎的な薬の組み合わせを加える。5つの組み合わせが力を合わせ、理法が周到であり、薬の処方が的確であり、1つの新たな製剤を創出しており、本発明者は臨床の実践においてしばしば用い、しばしば効果を上げている。
【0059】
処方構成の面では、マクロレベルにおいて、第1の薬の組み合わせは、キバナオウギ、トウキ、タンジン、セキシャクであり、気血を補って毒を排出し、「君」に属し;第2の薬の組み合わせは、オウレン、オウゴン、オウバク、クチナシであり、毒を除去して熱を排出し、「臣」に属し;第3の薬の組み合わせは、ビャクレン、マサキ、ビャクキュウ、カンゾウであり、湿疹やできものを治し腫れを解消し、「佐」に属し;第4の薬の組み合わせは、ニュウコウ、モツヤク、ケッケツ、アセンヤクであり、気の流れを良くし血を活性化して経絡を通じ、腐敗物を取り除いて組織を生成し、「使」に属する。ミクロレベルでは、4つの薬の組み合わせは4つの小処方であり、処方ごとに4種の漢方薬があり、その機能と性状に基づき、上記順序により、対応する「君」、「臣」、「佐」、「使」をそれぞれ構成する。
【0060】
本発明は、前記医薬組成物の、皮膚の種々の損傷創面を治療するための外用薬剤の調製における用途をさらに開示している。
【0061】
いくつかの実施例において、前記皮膚の種々の損傷創面は、結核菌感染または悪性腫瘍に起因する皮膚潰瘍や、性ホルモン分泌失調のため生じるにきびを含まない。
【0062】
いくつかの具体的実施例において、本発明に記載の、皮膚の種々の損傷創面は、火傷創面、湯傷創面、皮膚の擦傷・挫傷創面、切開後の縫合創口、褥瘡創面、皮膚感染創面、および肉芽組織創面を含む。
【発明の効果】
【0063】
本発明の有益な効果は、ヒトの皮膚の種々の損傷創面の治療のための液状外用医薬組成物を開示しているところにある。このような、漢方薬の原薬用の有効成分を含有する医薬組成物を使用すれば、速やかかつ有効に創面を塞ぎ、創面の水腫を取り除き、創面の滲出を減らしたり止めたりすることができ、医薬組成物と創面の既存の滲出液が結び付いて透明な薄い痂皮を形成し、創面基底部および周囲の、生命力のある細胞を、さらに損傷されないように保護し、創面の感染を予防および抑制し、創面が痂皮の下で癒合するよう促し、瘢痕の形成を最大限減らすことができる。この医薬組成物は、皮膚の種々の損傷創面を治療するための外用薬剤の用途を有する。
【図面の簡単な説明】
【0064】
図1図1に示すのは、本発明の医薬組成物製剤3の完成品実況図である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
以下、具体的な実施形態および実施例のデータを通じて、本発明についてさらに説明する。明確にする目的のため、下記文中で専門用語を使用しているが、これらの用語は、本発明の範囲を定義または限定することを意味しない。
【0066】
本明細書で使用されているように、「医療用」という用語は、純度が95%を上回る試薬を指し、本発明中の実施例で使用される「医療用グリセロール」は分析用試薬レベルの医療用グリセリンであり、密度1.236g/mL、500mlの重さ628g、分子式C、分子量92.09、純度≧99%であり;「医療用1,2−プロパンジオール」の純度≧99%である。
【0067】
本明細書で使用されているように、「医薬品レベル」という用語は、化学品の純度がヒトに用いられ得る水準である薬剤を指す。本発明における水溶性ラウロカプラムは医薬品レベルである。
【0068】
本明細書で使用されているように、「治療」という用語は、この用語が適用される疾病の進展、もしくは疾病の1種類または複数種の症状を逆転、軽減または抑制することを指す。本明細書で使用されているように、患者の状況に応じて、この用語は、疾病を予防することも含み、疾病またはそれに関連する何らかの症状の発生を予防することと、疾患またはそれが発生する前の何らかの病状の深刻性を軽減することとを含む。
【0069】
本明細書で使用されているように、「グリセロール合水」という用語は、特定の配合比でグリセロールと水を混合して得られる溶媒を指す。本発明の実施例で使用される「グリセロール合水」におけるグリセロールの体積は80〜90部であり、水の体積は3〜8部である。本発明の具体的実施例で使用される「グリセロール合水」におけるグリセロールと水の体積比は、好ましくは、800:50または884:30または87:40または835:60である。
【0070】
以下、具体的実施例を通じて本発明についてさらに詳しく記述するが、当業者が本発明に基づいて各種変更を行った場合、本発明に添付された特許請求の範囲にいずれも属していなければならない。下記実施例中の実施方法は、特別な説明がなければ、いずれも通常の方法である。
【実施例】
【0071】
具体的実施例:
実施例1 医薬組成物の調製
本発明の組成物製剤1〜3は表1の配合量および下記の工程フローにより調製される。
【0072】
調製する工程フローは次の通りである:
1)漢方薬材のキバナオウギ、トウキ、タンジン、セキシャク、オウレン、オウゴン、オウバク、クチナシ、ビャクレン、マサキ、ビャクキュウ、カンゾウを精選し、表1中の製剤の組成分量に基づいて秤量し、表1中の同じ製剤の、対応する量のグリセロールを投入して、対応する量の蒸留水(グリセロール合水)に混合し、水蒸気の気圧0.02MPa、約105℃を用いて、漢方薬材を含むグリセロールを、10分間、隔層加熱し、冷却後に薬剤残渣を濾過して除去し、失われたグリセロール合水を十分な量だけ補充する。
【0073】
2)漢方薬材のニュウコウ、モツヤク、ケッケツ、アセンヤクを精選し、表1中の製剤の対応する量に基づいて秤量し、表1中の同じ製剤の、対応する量の1,2−プロパンジオールに投入し、24時間浸漬した後、薬用有効成分が溶出し、薬剤残渣を濾過して除去し、失われた1,2−プロパンジオールを十分な量だけ補充する。
【0074】
3)漢方薬汁を含有するグリセロール合水、1,2−プロパンジオールに、表1中の同じ製剤の、対応する量の蒸留水および水溶性ラウロカプラムを加えて混合し、十分に攪拌して均一にし、パッケージングして滅菌すれば完成する。
【0075】
製剤4の調製工程は以上のステップに準ずるが、漢方薬材は秤量していない。
【0076】
【表1】
【0077】
本発明の組成物は、上記の調合成分以外に、創面の感染が深刻な症例については、創面感染の病因学的診断に基づき、薬剤感受性試験を指針として、組成物100ml毎に、例えば、ゲンタマイシン8万単位とクロラムフェニコール0.25g(ただし、上記2種に限定されず、他の適当な1組の抗生剤を選択してもよい)など、1組の抗生剤を臨時に加え、十分に振り混ぜてから創面に塗布する。
【0078】
実施例2 医薬組成物製剤4で皮膚切開後の縫合創口を治療する臨床評価
表1中の製剤4は本発明の医薬組成物の重要な構成部分であり、グリセロール、1,2−プロパンジオール、水溶性ラウロカプラムと水により特定の配合比で構成される。皮膚の切開創口の縫合後に、従来の治療法は、75%アルコールガーゼで覆う。以下は、皮膚切開後の縫合創口を治療し、本発明の医薬組成物製剤4を用いるケースと、従来のアルコール被覆材を用いるケースの臨床対比観察である。
【0079】
1)一般データ:
無菌手術の症例計50人を選択し、年齢は20歳〜60歳であり、そのうち男性40人、女性10人であり、平均して治療群と対照群とに分け、皮膚の切り口の長さはいずれも8センチ以上である。
【0080】
2)治療方法:
a.治療群:皮膚の切り口の縫合と清掃・消毒が完了した後、縫合した創口の縫い目に綿球で製剤4を塗り、1〜2分後に消毒ガーゼで創口の縫合箇所を覆い、絆創膏で固定した。2日目に創口の被覆材を交換するとき、製剤4をもう一度塗り、7〜8日目に抜糸した後、直ちに製剤4を塗って縫い目を閉じた。
b.対照群:皮膚の切り口の縫合と清掃・消毒を完了し、75%アルコールガーゼを創口の縫合箇所に敷き、さらに消毒ガーゼで覆い、絆創膏で固定した。3日目に創口の被覆材を交換し、創口に感染の形跡があった症例は少なかったが、それ以降毎日、創口が癒合するまで創口の被覆材を交換した。
【0081】
3)治療効果の評価基準
創口を縫合して3日〜7日後に抜糸する際に、創口の癒合状態および縫合縫い目の炎症反応に基づいて治療効果を評価する。
a.癒合が良好:3日後の創口の縫い目にいずれも痂皮があり、滲出物はないかまたは少なく、創口の被覆材は汚れが少なく、術後7日後には創口が一次癒合となり、縫い目の炎症反応は小さい。
b.癒合が比較的良好:3日後に創口の縫い目に少量の滲出液が生じ、創口の被覆材に顕著な汚れがあり、ヨードチンキを塗り、3日連続で創口の被覆材を交換し、滲出物は徐々に少なくなり、創口の縫い目に徐々に痂皮が形成され、一般的には、術後8〜9日目に抜糸し、創口はほぼ一次癒合であり、縫い目が充血しており赤みとつやがある。
c.癒合不良:術後3日で縫合箇所の被覆材を交換し、創口に分泌物があり、被覆材に湿り気があり、縫い目が赤くなっており、創口の分泌物の排液のため、間隔をおいて抜糸しなければならず、被覆材を毎日交換し、創口の癒合期間が延びる。
【0082】
4)治療結果(表2参照)
【0083】
【表2】
【0084】
5)検討
表2の臨床対比観察結果の統計から説明すると、本発明の医薬組成物製剤4の、皮膚切開創口の縫合を治療する治療効果は、75%アルコールガーゼで縫合創口を覆う従来の治療方法よりも優れており、これは、アルコールは殺菌を行うことができるが、揮発しやすい殺菌剤であり、75%アルコールガーゼを縫合創口に敷けば、数時間後にアルコールがすべて揮発し、創面にはガーゼだけが残るためである。患者のケアが行き届かなければ、細菌がガーゼの縁から創口の縫い目に容易に侵入し、さらには、様々な程度の創口感染を引き起こす。一方、本発明の医薬組成物製剤4の中の成分は主にグリセロールと1,2−プロパンジオールであり、揮発しにくく、創口の縫い目に接触した後、創口の縫い目を速やかかつ完全に密閉し、創口の縫い目の少量の滲出液を吸収し、滲出液の中のタンパク質と結合して1層の透明な薄い痂皮を形成し、外来細菌に侵襲されないように創面を厳密に保護することができるので、創口の縫い目を清潔にして乾燥させ、良好な癒合を実現することができる。
【0085】
実施例3 医薬組成物で火傷患者の創面を治療する臨床観察
皮膚の種々の損傷創面の病理的生理的癒合機序から考えると、火傷で形成された皮膚の損傷創面が最も深刻で最も複雑であり、最も代表的である。本発明者は火傷創面をモデルとして、発明した医薬組成物の、皮膚の損傷創面に対する治療の実例を説明する。
【0086】
火傷を処置および治療する原則は、早期に予防することとショックを治療することでなければならず、効果の高い抗生物質を早期に手早く十分な量だけ用い、火傷創面を早期に科学的に処置し、創面が隙間なく覆われるようにし、創面の滲出を減らすことが、患者の体力の消耗を低減することであり、創面を乾燥した状態に保つとともに、広域スペクトラム抗菌剤が創面の深部に達するようにし、ラジカルに抗し、酸化に抗し、残存する上皮胚芽細胞が脱落死しないよう保護し、創面ができるだけ早く癒合するよう促すことが、火傷に対する治療の重要なポイントである。
【0087】
本発明の、皮膚の種々の損傷創面を治療する医薬組成物はまさに、以上の、創面に対する治療の原則の要求に基づいて設計されたものである。組成物の重要成分は基質でもあり、濃いグリセロールと1,2−プロパンジオールを主とするよう選択し、高い吸湿性と適度な保湿性を有しており、創面滲出液の中の水分および血漿含有量よりも高いアミノ酸と結合して、乾いているが硬くない透明な痂皮を形成し、創面が速やかに密閉されるようにし、薬剤を塗った後、空気中で創面に落ちた細菌は成長することができず、細菌は外部から侵入することができず、また、配合比の中に適当な含有量のラウロカプラムまたはデシルメチルスルホキシドを有しているので、処方における、抗菌静菌し、栄養を与え、酸化に抗し、微小循環を改善する薬剤の有効成分が創面の深部まで浸透するように導くことにより、創面組織の血液供給を改善し、血液循環によって創面に達する腸管の細菌を死滅させ、創面の早期の炎症が再び損傷するケースを減らし、「内と外を共に整える」という理想的な治療効果を果たしており、これは、本発明の実践における本発明者の喜ばしい発見である。これが、火傷創面修復科学が分子メカニズムと細胞学的な面から新たな探求を行うために、先駆けとなって好結果を呼び込む役割を果たすと信ずる。
【0088】
本発明者は長期間にわたる臨床医療の実践において、本発明の医薬組成物を自ら配合して使用し、皮膚の種々の損傷創面の多くの患者を治療しており、外来診療と病棟の一般外科の包帯交換、皮膚の擦傷・挫傷の救急処置治療、火傷・湯傷創面の薬剤使用、長期間にわたる横臥による褥瘡の治療等、千例近くに関わり、従来の創面での薬剤使用よりも著しく優れた治療効果を全面的に得ており、創面の癒合を促しており、創面の治療プロセスを短縮しており、患者の苦痛を減らしており、医療費を節約するとともに、医療スタッフの労働も軽減している。本発明の医薬組成物の構成成分はいずれも、中国薬局方に記載された公知の一般用医薬品に由来するが、本発明者が実践において、中国医学と西洋医学が結合した外科の医学理論と薬理の処方配合比により、特定の方法で薬用有効成分を抽出し、新しい剤形を与え、中国医学と西洋医学を結合させて皮膚の種々の損傷創面を治療する効能が、大いに輝きを放っている。
【0089】
本発明の医薬組成物製剤3で火傷患者の創面を治療する58例の臨床観察
1)一般データ:
火傷面積がいずれも体表面積の10%未満の軽傷火傷患者31例を外来診療で治療した。
火傷面積が体表面積の10%〜30%を占める患者27例を入院治療した。
性別で分けると、男性37例、女性21例である。
年齢で分けると、2〜14歳が12例、15歳以上が46例である。
火傷の深さで分けると、浅達性II度が43例、深達性II度が11例、III度またはIII度相当が4例である。
【0090】
2)診断基準:
浅達性II度の火傷は、受傷箇所の皮膚に水疱ができ、水疱を切開すると創面が鮮紅色であり、激痛を感じる。
深達性II度の火傷は、受傷箇所の皮膚に水疱があるかまたは透明で乾燥した痂皮があり、水疱内または痂皮の下の創面は赤と白が交互になっており、痛みは軽い。
III度の火傷は、受傷箇所の皮膚が、半透明で褐色の焼痂となり、創面の痛覚が失われたが、あるいは、II度の火傷創面に感染が生じて皮膚全層を失ったためかもしれない。
【0091】
3)治療方法:
II度の火傷については、受傷した当日に水疱を切開し、滲出液を排除し、本発明の医薬組成物製剤3を使い、水疱の皮に薬を塗り;受傷後24時間が経過した後、水疱の皮をはがし、火傷創面に薬を塗り、面積の小さいIII度の火傷については、肉芽組織が周囲組織とフラットになるまで成長するのを待ってから、肉芽組織に薬を塗り、いずれも露出法を採用する。
【0092】
4)治療効果の評価基準:
薬を3〜5日間塗った後に創面の推移・変化を観察する。浅達性II度の火傷創面を8日間観察し、乾燥した痂皮と創面が結合する状況に基づいて創面の癒合傾向を判断し;深達性II度の火傷創面に薬を塗り20日間観察し、痂皮の下に膿がたまっているかどうかで創面の癒合傾向を判断し;すでに深刻に感染しているII度の火傷または小面積のIII度の火傷は、壊死組織を除去し続け、創面の肉芽組織が成長して平らになった後、繰り返し薬を塗り、計30日間観察し、創面の痂皮形成と創面周辺の状況に基づいて創面の癒合傾向を判断することができる。癒合傾向を確定できない少数の症例については、最終的な治療結果で判定する。
【0093】
著効:浅達性II度の火傷は2週間以内に創面が癒合して痂皮が脱落し、深達性II度の火傷創面は4週間以内に癒合して痂皮が脱落し、小面積のIII度の火傷は創面が乾燥し、痂皮の下にぐらつきがなく、肉芽創面の感染が効果的に抑えられている。
【0094】
好転:創面のわずかな部分に感染が生じ、薬を塗る期間が5日間を超え、創面の癒合時間が延びる。
【0095】
無効:上記好転の基準を満たさない。創面は皮膚移植により癒合する。
【0096】
5)治療効果(表3参照):
【0097】
【表3】
【0098】
実施例4 長期の臨床実践における皮膚の種々の損傷創面の治療カルテ
実例1のタイプ 本発明の医薬組成物製剤3を使用
浅達性II度または深達性II度の火傷・湯傷の創面については、水疱を剪除し、消毒綿球を組成物の薬液に浸漬し、創面に軽く塗り、薬液の厚さは1ミリでよく、薬を塗った後に創面を露出させ、被覆材は使わず、創面に4〜6時間以内に透明な薄い痂皮が形成される。創面の滲出液が多ければ、6時間後に再び薬を1回塗り、1日目に最大3回薬を塗る。2日目に痂皮の下の創面が清潔で、透明な痂皮が乾燥していることが分かった場合、透明な痂皮に薬液をもう1回塗り重ねさえすればよい。透明な痂皮の下に壊死組織があることが分かった場合、生理食塩水の綿球で透明な痂皮を潤し、壊死組織を除去し、再び組成物を塗ればよい。3日目に、透明な痂皮がきれいで、痂皮の下の創面が清潔であれば、引き続き創面を露出させ、創面に薬を1回塗りさえすればよい。痂皮の下に壊死組織がまだあることが分かった場合、引き続き除去して再び薬を塗る。
【0099】
以上のように浅達性II度と深達性II度の火傷・湯傷を治療するが、受診が適時でありさえすれば、大部分の創面は感染が生じず、所期の日数で癒合することができる。
【0100】
火傷・湯傷で皮膚全層が損傷したり、皮下組織まで傷付いたりしている場合、III度の火傷の治療原則により処理する。周辺の正常な皮膚とフラットになるまで肉芽組織が成長した後、創面が大きくなければ、皮膚移植を行う必要はなく、本組成物の薬液のみを塗り、創面の肉芽組織は透明な痂皮を速やかに形成することができ、創面の水腫は消えていき、痂皮の下で徐々に癒合する。創面の癒合が速く、肉芽組織は繰り返し増殖しないので、本発明の組成物の薬液を塗って治療した後、肉芽創面が癒合した瘢痕も比較的平らで軟らかい。
【0101】
1)徐さん、女性、2歳、市街地に居住。1994年5月21日に受診した。母親が台所から大きなうつわに入ったできたての煮込み肉を持って食卓の方へ歩いていたところ、2歳の女児・徐さんが足もとにまとわりついて母親を呼び、母親の足にぶつかり、高温のスープがこぼれて女児の頭にかかり、患児の頭部と顔が湯傷を負い、急いで受診したという。検査したところ、患児の左耳、左前の額、左頬が赤く腫れて水疱ができており、左目を開くことができない。診断:左側顔面がII度の湯傷であり、受傷面積が体表面積の約2%を占める。治療:水疱を剪除し、水疱の皮に本発明の組成物の薬液を塗り、当日に2回塗った。2日目に、水疱の皮を剪除し、創面に引き続き薬を塗った。3日目に創面がすべて透明な痂皮で覆われて保護され、滲出はなく、分泌物はない。4日目に創面は乾燥し、感染はなく、薬の塗布を中止した。5日目には、左側頭部と顔面および左耳の腫れが徐々に消え、綿棒で軽く触れても痛まなかった。10日目には、創面の保護痂皮の部分が脱落し始め、湯傷創面の一次癒合を示した。半年後に訪れてくると、顔面と左耳には受傷後に瘢痕が残らなかった。
【0102】
耳朶は2層の皮膚が1層の軟骨を包んでおり、表面は平らではなく、かつては湯傷を負った後、薬剤を使用すると包帯を巻きにくく、感染しやすく、感染後の治療が困難だった。本発明の組成物を用いてII度の火傷・湯傷の耳朶に塗れば、耳朶上の受傷した創面が薬剤ですべて覆われるようにすることができ、包帯をする必要がなく、保護痂皮を速やかに形成することができ、有効に感染に抗することができ、癒合が速い。顔面のII度の火傷・湯傷が感染すれば、III度の火傷・湯傷を負う可能性があり、癒合後に様々な程度の瘢痕が形成され、容姿を損なうことになるおそれがある。顔面と頸部のII度の火傷・湯傷は、受傷後に本発明の組成物の薬液を速やかに用いて正しく治療しさえすれば、感染が生じることはなく、瘢痕が形成されることはない。
【0103】
2)於さん、男性、3歳、市街地に居住。1995年7月6日に受診した。家で遊んでいて卓上の保温ポットを引き倒し、頸、胸、腹部および会陰部と2本の下肢の一部の皮膚が湯傷を負い、受傷後約2時間で来院受診し、患部の複数箇所に大きな水疱ができ、陰茎および陰嚢にも水疱があるという。診断:身体前部の一部皮膚がII度の湯傷を負い、受傷面積が体表面積の約10%を占める。治療:全身に液体補給する等の治療のほか、受傷した創面に本発明の組成物の薬液を塗って治療し、薬を塗る厚さは約1mmであり、創面はすべての過程で露出される。1日目に、水疱の皮を切って破り、薬液を水疱の皮に塗り、1日に3回塗った。2日目に、水疱の皮をはがし、薬液を創面に塗り、1日に3回塗った。3日目には、創面に透明な保護痂皮が形成されており、一部の痂皮の下には鮮紅色の毛細血管が見られ、痂皮の下に壊死組織は見当たらず、引き続き痂皮面に1回薬を塗った。4日目には、創面が乾燥し、綿棒で触ってみても分泌物はなく、顕著な痛みはなく、創面に薬剤を使用するのを中止し、栄養を強化するよう申し付けた。8日目には、患児は元気があり、飲食が正常であり、創面に痂皮ができて退院し、1週間後に来院して再診するよう申し付けたところ、創面は痂皮に良く覆われており、乾燥しており、触っても痛みはなかった。さらに1週間経ってから来院して再診したところ、痂皮が徐々に脱落していることが分かり、創面は赤く柔らかで平らであり、外生殖器の形態は正常だった。会陰部の創面は包帯が巻きにくく、感染しやすい。本発明の医薬組成物を用いる露出療法は効果が優れている。
【0104】
3)梅さん、男性、38歳、農民。1996年7月25日に受診した。昨日深夜に小型トラクターを運転して田畑で作業していたところ、機械が突然故障してエンストした。その場で自ら修理していたとき、ディーゼル燃料が高温のエンジンシリンダに噴霧された瞬間に火の光が一閃し、炎で患者の頭、顔面と頸部を火傷したという。本日早朝に来院して受診したが、患者の頭と顔面、頸部がところどころ油で汚れており、両耳、頭髪、額、顔面が腫れており、容貌が全面的に損なわれているが、検査したところ、両眼の角膜および気道は損傷を受けていなかった。診断:頭部および顔面と頸部がII度の火傷であり、受傷面積が体表面積の約8%を占める。治療:全身に輸液して感染を予防する治療を行ったほか、乾いた綿棒で局部を軽く拭いて油汚れを取り除いた後、1日目に受傷部に本発明の組成物の薬液を塗り、1日に3回塗った。2日目に、1層の水疱の皮をできるだけはがし、創面に本発明の組成物の薬液を塗り、1日に3回塗った。3日目には、大部分の創面が痂皮に覆われて保護され、乾燥し、髪の生えぎわと耳殻だけに少数の小さな水疱が除去も吸収もされずに残っており、引き続き創面を清掃してから組成物の薬液を塗った。5日目になると、創面全体で痂皮の下に体液がたまっておらず、腫れも引き始めていた。8日目になると、創面は痂皮の下でしっかりと保護されており、薬を塗るのを中止した。14日目には、痂皮が乾燥し、周囲組織の腫れが引き、触った際の顕著な痛みはなかった。さらに2週間が過ぎた後には、痂皮が浮いており、一部ははがすことができ、創面の癒合は良好だった。半年後に訪れてくると、瘢痕で容姿が損なわれてはいなかった。
【0105】
4)伍さん、女性、6歳、農村に居住。1997年9月18日に受診した。40日余り前に自宅でつまずいて転倒し、かまどから床へ移動したばかりの粥鍋の中に尻もちをつき、臀部全体および両足大腿部後側の一部の皮膚が湯傷を負い、地元の医院で1日治療してから武漢同済医院に転院して40日間治療したところ、大部分の創面は癒合したが、右側臀部の大きな創面が依然として残っており、被覆材を毎日交換しなければならないという。患児の父親によると、患児のこの大きな創面は同済医院で被覆材を毎日交換しても小さくならず、医院は再手術を行おうとしたが、保護者は金を使い果たして治療費を負担できなくなり、ついに、退院して地元の医院に戻って治療することを要求した。患児が我々の病院を受診したとき、苦しそうな顔つきで、全身の栄養状態が悪く、やつれており、軽度の貧血の容貌であり、右側臀部中央に8×10cmの創面があり、創面上の肉芽組織の水腫が周囲の皮膚よりもやや高くなっていた。これらの症状がこのように現れているのは、患児が湯傷を負って1カ月余りになるが、皮膚の創面から比較的多くの滲出があり、血漿タンパクや他の栄養物質を毎日失っており、身体に対する消耗が大きいためである。身体のタンパク質があまりに少なくなれば、創面の癒合は困難になる。まず、創面を塞ぎ、身体がタンパク質等の栄養物質を失い続けるのを回避しなければならない。本発明の医薬組成物100mlを与え、綿棒に組成物を軽く含ませて患児の創面に薬を塗って一度手本を示し、患児の父親に上記組成物の薬液と綿棒を自宅に持ち帰って塗布し、毎日2回塗り、創面を露出させ、5日間連用するよう申し付け;6日目に再診のため来院すると、当初の水腫の肉芽組織が収縮しており、周囲の組織とフラットになっており、創面を1層の乾燥した痂皮が覆っており、痂皮の下に液化物はないことが分かり、創面を押圧するのを避けるため、薬を塗るのを中止してよいと申し付けた。さらに10日間経ってから再診のため来院すると、創面はやはり乾燥した痂皮で覆われており、痂皮の下で創面はさらに好転しており;また2週間経つと、創面上の痂皮は徐々に脱落し、痂皮の下の創面が軟らかい瘢痕を形成して癒合していた。
【0106】
5)張さん、女性、17歳、地区看護学校の生徒。1998年7月12日に受診した。半月前、学校で短パンをはいており、学生食堂から保温ポットを持って寮に戻っていたところ、思いもよらず保温ポットの栓が外れ、熱湯が流れ出て、患者の右大腿部外側中部から外側のくるぶしまでの皮膚が湯傷を負い、受傷後は毎日、学校の医務室で治療を受けたという。2週間後に学校が休みに入って帰宅し、我々の病院を受診した。検査:患者の右大腿部外側中部以下、下腿の外側にかけて、感染した創面が1本あり、深さは皮下組織に達しており、創面には複数箇所に黄緑色の化膿した壊死組織があり、拭き取るのが難しく、II度の湯傷であり感染していると診断した。治療:創面の壊死組織をできるだけ取り除いた後、ゲンタマイシンとクロラムフェニコールを加えた本発明の医薬組成物を創面に塗った。1日目は6時間毎に1回塗り、2日目は2回塗り、3日目は2回塗り、4日目に来院して再診したところ、患者は、創面の局部的な痛みが明らかに軽減したと述べ、検査すると、創面の大部分が乾燥しており、依然として痂皮の下に膿が少量たまっていることが分かり、生理食塩水の綿球で、膿がある局部の乾燥した痂皮を湿らせて洗った後、痂皮の下の膿汁および壊死組織を清掃し、上記薬液を引き続き塗った。このように、さらに3日続けて治療した後、患者の創面は徐々に腫れが引き、乾燥した痂皮に覆われ、痂皮の下の創面は清潔であり、痂皮の下に膿がたまっていなかった。薬を塗るのを中止し、創面上の痂皮を押したり叩いたり掻いたりするのを避け、痂皮が形成されて自然に脱落するのを静かに待つよう申し付けた。
【0107】
実例2 本発明の医薬組成物製剤2を使用
皮膚の擦傷・挫傷については、手術の切り口縫合後の皮膚創口は、創口を清潔に拭いて乾かした後、本発明の組成物の薬液を塗る。皮膚の擦傷・挫傷の創面は薬を塗ってから露出させ、一般的には被覆材を用いない。1層の薄い消毒ガーゼを用いたとしても、創口と衣服を隔てるために過ぎない。
【0108】
皮膚の擦傷・挫傷または切開後の縫合創口、または傷口を縫合して抜糸する際に、本発明の組成物の薬液を塗った後、外部の細菌が傷口に侵入して感染するのを予防することができる。
【0109】
1)余さん、男性、34歳、教師。1998年8月26日に受診した。オートバイに乗っていて道を曲がる際にコンクリートの路面に転倒し、右半身に擦傷を負い、救急で来院したという。検査:患者の右半身は、顔、手、肘、腰・腹部および大腿部・下腿の外側の皮膚が広範に擦傷を負っており、一部の傷口は血まみれになっており、全身に骨折は見られず、胸部や腹部に臓器の損傷は認められなかった。診断:右半身の皮膚の軟組織が広範に擦傷・挫傷を負っている。治療:全身の内臓および骨格に損傷がないかどうか引き続き観察し、破傷風抗毒素を注射し、皮膚創面を清掃した後、創面に本発明の組成物の薬液を塗った。1日目に3回塗った。2日目には創面すべてに痂皮が形成され、痛みがやわらいでおり、さらに痂皮に薬を2回塗った。3日目に、傷の箇所の痛みが著しく軽減し、創面が乾燥し、軽く触れても痛くなかった。薬を塗るのを中止し、10日間静養した後、創面がすべて癒合した。
【0110】
2)王さん、男性、41歳、事務員。2002年9月2日に受診した。昨晩シャワーを浴びていたとき、浴室の強化ガラスのドアが突然砕け、ガラスの破片が患者の右半身に刺さって鮮血がしきりに流れたという。地元の外科で、救急で包帯を巻く等の処置を行った後、本日我々の病院を受診し、巻き付けられた被覆材を取り外し、傷口に本発明の組成物を塗った。1日目に2回塗った。2回目には、乾燥した痂皮に傷口が完全に覆われて保護され、さらに、乾燥した痂皮に薬を1回塗った。3日目には、傷口に軽く触れても痛くなかった。薬剤の使用を中止し、傷口は一次癒合となった。
【0111】
3)李さん、男性、68歳、退職した事務員。2005年8月21日に受診した。昨晩トイレに起きたときにプラスチックのバケツの縁にぶつかり、右下腿前面の皮膚を負傷し、本日受診したところ、右小腿の脛骨前の皮膚が約1×1.5cmの大きさにめくれて皮膚片となり、皮膚片は縮まって紫色になったという。治療:破傷風抗毒素を予防注射し、通常のように傷をきれいにした後、創面に本発明の組成物を塗った。1日目に2回塗った。2日目と3日目に毎日1回ずつ塗った。4日目には創面に、周囲の皮膚とフラットな乾燥した痂皮が形成されており、創面の縁に腫れはなく、軽く触れても痛まず、薬剤の使用を中止して傷にぶつかるのを避けるよう申し付けた。15日後には痂皮がぐらつき、18日後には痂皮が脱落し、創面は成長してほぼ平らになり、瘢痕はなく、薄い灰色の色素が残って沈着した。18カ月後に訪れてくると、創面の色素は薄れており、受傷箇所に瘢痕はなかった。
【0112】
実例3 本発明の医薬組成物製剤1を使用
膿痂疹、膿痂疹、下肢潰瘍、せつ・癰などの皮膚感染性疾病が破れた後の肉芽組織創面に対しては、生理食塩水の綿球で瘡面または肉芽組織創面を洗浄して拭き取って乾かし、本発明の組成物の薬液を塗れば、瘡創面の感染が速やかに抑えられて治癒することができる。
【0113】
1)朱さん、男性、5歳、農村に居住。1996年9月6日に受診した。頭部に膿痂疹ができて10日経ち、自宅でクロルテトラサイクリン軟膏を発疹に塗ったが、発疹から膿汁が流れるのを抑えられないという。我々の病院を受診したときに検査したところ、頭髪は短く刈られており、髪の生えぎわで膿痂と短い頭髪が混ざっており、左側の症状が重いが、右側の額にも膿痂があり、体温は37.1℃であり、全身状態は良かった。治療:生理食塩水で頭部および顔面の膿痂を洗い落とし、長めの頭髪を改めて剪除し、消毒ガーゼで瘡創面を拭いて乾かした後、本発明の組成物(100mlにクロラムフェニコール0.25gを加える)を使用し、薬を持ち帰らせた。1日目に3回塗った。2日目に2回塗った。3日目に再診したところ、頭部および顔面の膿痂疹の創面にすべて痂皮が形成され、膿汁は流れておらず、感染が抑制されており、引き続き2回薬を塗ってから薬をやめて様子を見るよう申し付けた。さらに3日経ってから再診したところ、瘡創面は痂皮にしっかりと覆われており、基底部の周囲に炎性や腫れはなく、触れても痛みはなかった。瘡創面は徐々に癒合して完全に治った。
【0114】
2)張さん、女性、83歳、市街地住民。2002年11月2日に受診した。自宅で転倒し、左側大腿骨頸部を骨折するに至り、骨外科固定手術を経てから集中治療室に入り、床に伏して1週間後に仙椎の部位に褥瘡ができ、通常の褥瘡ケアを受けて包帯交換を行ったが褥瘡の感染を抑えられなかったという。本発明の医薬組成物に切り替え、褥瘡創面を清拭して乾かしてから薬を塗り、創面を露出させる。1日目に3回薬を塗った。2日目には褥瘡創面に痂皮が形成され、分泌物はなかった。引き続き毎日2回薬を塗り、5日間連用したところ、褥瘡創面は一貫して痂皮で覆われたままであり、乾燥しており、乾燥した痂皮が寝具でこすれ落ち次第、直ちに組成物の薬液を塗って補うと、創面の血行が良くなり、面積が日増しに縮小した。2週間後には創面が徐々に癒合していった。
【0115】
3)孫さん、男性、56歳、農民。1998年9月11に受診し、4日前から、左上背部が痛み始め、日増しに痛みが強まった。発症して5日目に痛みが耐えがたくなり、来院して受診したという。検査:体温38.2℃、右上背部が赤くなり、腫れ、熱く、硬くなっており、中心部の皮下に黄色い膿点が見られ、触れると著しく痛むが、破れてはおらず、局部的なぐらつきはない。診断:左上背部の蜂窩織炎(背癰)。治療:全身用テトラサイクリン0.5を6時間に1回内服し、3日間連用する。局所麻酔下で局部を
形に切開し、膿瘍腔に穴をあけ、減圧して排液し、本発明の組成物の薬液で消毒ガーゼストリップを浸して切り口内に置いてドレナージストリップとし、毎日1回交換した。2日目に、局部の痛みが著しく軽減され、体温は37.3℃だった。4日目になると、体温は36.8℃であり、局部は触れなければ痛みはなく、腫れが明らかに消えていっており、切り口から排出される分泌物の量は少なかった。7日目になると、切り口内に膿性分泌物はなく、再び排液する必要はなく、圧迫包帯に切り替えて2日後には、切り口が平らになり、創面は露出され、組成物の薬液を毎日2回塗り、計2日間塗ると、創面は、保護する乾燥した痂皮を形成し、痂皮の下の切り口の創面は徐々に癒合した。
【0116】
引用による援用
本明細書が引用する個々の特許文献と科学文献のすべての開示内容は、引用によって本明細書に援用されてあらゆる目的に用いられる。
【0117】
均等物
本発明は、その基本的特徴から逸脱しない状況で、他の具体的形態で実施することができる。従って、前記実施例は、説明的なものであって、本明細書に記載の本発明に対する限定ではないと考えられる。本発明の範囲は、前記明細書ではなく、添付の特許請求の範囲により示され、かつ、特許請求の範囲の均等物の含意および範囲に収まるあらゆる変更がその中に含まれるものとする。
図1