(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら各実施例について詳細に説明する。
【0010】
図1は、一実施例による携帯キー1の外観を示す斜視図である。
図1には、直交する3軸X,Y,Zが定義されている。また、X,Y,Z軸のそれぞれには、それぞれの側がX1,X2等で示される。Z軸は、携帯キー1の厚み方向に対応し、X軸は、携帯キー1の長手方向に対応し、Y軸は、携帯キー1の短手方向に対応する。
【0011】
携帯キー1は、車両のユーザに携帯されるキーである。携帯キー1は、キーレスエントリシステムやスマートキーレスエントリシステム等で用いられる電子キーである。
【0012】
携帯キー1は、筐体10と、操作ノブ30とを含む。
【0013】
筐体10は、X方向(第1方向の一例)を長手方向としてY方向(第2方向の一例)を短手方向とする略矩形の形態である。"略矩形"とは、矩形の角に角アールなどを有してもよい概念である。筐体10は、例えば上ケース10aと下ケース10bとを含む。筐体10は、上ケース10aと下ケース10bを嵌め合せることで一体化される。
【0014】
筐体10の上ケース10aは、Z方向(第3方向の一例)に開口する開口部12を有する。開口部12には、操作ノブ30が設けられる。
【0015】
操作ノブ30は、ユーザにより操作されるスイッチの形態である。操作ノブ30は、樹脂材料(例えばアクリル樹脂)により形成される。操作ノブ30は、例えば複数個設けられる。操作ノブ30のそれぞれには各種機能が割り当てられる。各種機能は、例えばドアロック、ドアアンロック、トランク開閉等の機能である。
【0016】
本実施例では、一例として、操作ノブ30は、4つあり、X2側の操作ノブ30は、Y方向を長手方向としてX方向を短手方向とする矩形の形態であり、X方向の中央の操作ノブ30も、Y方向を長手方向としてX方向を短手方向とする略矩形の形態である。他方、Y方向に2つ並んで設けられたX1側の操作ノブ30は、X2側の操作ノブ30に対してY方向の長さが約半分であり、略正方形の形態である。
【0017】
操作ノブ30は、筐体10の開口部12を介して露出する操作部32を備える。尚、操作部32の表面には、対応する操作ノブ30の機能を表す絵などが付与されてもよい。操作ノブ30は、Z方向に可動であり、Z2側に押されることで操作される。
【0018】
図2及び
図3は、携帯キー1の内部を示す斜視図であり、
図2は、上ケース10aや操作ノブ30等を取り外した状態の斜視図であり、
図3は、上ケース10aや、操作ノブ30、防水シート50等を取り外した状態の斜視図である。
【0019】
筐体10の内部には、防水シート50を介して、各種の電子部品が設けられる。
図3に示す例では、電子部品70はアンテナであり、電子部品72はバッテリである。例えば、アンテナである電子部品70は、操作ノブ30が操作されてタクトスイッチ(図示せず)(電子部品の他の一例)がオンすると、所定のワイヤレス信号を送信する。
【0020】
防水シート50は、ラバーシート(ゴム材料のシート)により形成され、筐体10の内部の各種の電子部品に対する防水機能を果たす。防水シート50は、上ケース10a及び操作ノブ30に対してZ2側から隣接する態様で設けられ、略XY平面内に延在する。略XY平面内に延在とは、完全な平らな形態ではなく、凹凸を有することを意味する。尚、
図2に示す例では、防水シート50は、タクトスイッチ用のドーム状部位52を備える。防水シート50は、携帯キー1の外形に対応した外形を有し、外周部がZ方向で上ケース10aと下ケース10bとの間に挟まれて保持される。この際、防水シート50は、弾性変形した状態で保持されることで、防水機能を発現する。
【0021】
次に、
図4以降を参照して、操作ノブ30及び上ケース10aについて更に詳しく説明する。
【0022】
図4及び
図5は、一の操作ノブ30の単品図であり、
図4は、Z1側から視た斜視図であり、
図5は、Z2側から視た平面図である。
図4及び
図5では、代表として、複数の操作ノブ30のうちの、X方向でX2側の操作ノブ30が示される。
【0023】
操作ノブ30は、操作部32と、フランジ部34とを含む。
【0024】
操作部32は、上述したように、上ケース10aの開口部12を介して露出する部位であり、操作時にユーザの指が触れて押される部位である。
【0025】
フランジ部34は、筐体10の内部側に位置する部位である。フランジ部34は、Z方向に視て、操作部32まわりに全周にわたり設けられる。フランジ部34は、操作部32のZ2側の端部に位置し、XY平面内に延在する。フランジ部34は、上ケース10aの内部側表面(Z2側の表面)における開口部12まわりにZ方向に当接する。即ちフランジ部34は、Z1側の表面が上ケース10aの内部側表面(Z2側の表面)にZ方向に当接する(後出の
図9参照)。フランジ部34は、上ケース10aの開口部12を介した操作ノブ30の抜けを防止する機能を果たす。
【0026】
フランジ部34は、
図5に示すように、4隅の角部310を有する。角部310は、内R形状で形成された内R部位311(第2部位の一例)と、外R形状で形成された外R部位312(第1部位の一例)と、外R形状で形成された外R部位313(第3部位の一例)とを含む。「内R」及び「外R」は、Z方向に視てフランジ部34の中心側を内側として定義されている。即ち、「内R」は、Z方向に視てフランジ部34の中心側に凹となる態様のRであり、「外R」は、Z方向に視てフランジ部34の中心側から離れる側に凸となる態様のRである。外R部位312,313は、内R部位311の両側に位置する。尚、
図4及び
図5では、外R部位312,313の一部は、比較的小さい外R形状で形成されているが、製造上必要な外R形状で形成されているものとする。
【0027】
図6は、上ケース10aを内部側(Z2側)から視た平面図である。
図7は、操作ノブ30及び上ケース10aを内部側(Z2側)から視た平面図である。
図7には、ノブガイド部材90についても図示されている。
図8は、ノブガイド部材90の単品状態を示す平面図である。
図9は、
図7のラインA−Aの沿った断面図であり、
図10は、
図7のラインB−Bの沿った断面図である。
【0028】
上ケース10aは、
図6に示すように、内部側の表面に開口部12まわりにZ方向に(Z2側に)突出するガイド部14を有する。ガイド部14は、
図7に示すように、操作ノブ30のフランジ部34の外周形状に沿って、フランジ部34まわりに設けられる。ガイド部14は、Z方向に突出することで、操作時における操作ノブ30のZ方向の変位をガイドする。尚、
図7に示す例では、ガイド部14は、フランジ部34まわりの全周にわたり設けられていないが、フランジ部34まわりの全周にわたり設けられてもよい。
【0029】
ガイド部14は、
図9及び
図10に示すように、XY平面内においてフランジ部34に対して僅かにクリアランスを有する。ただし、操作ノブ30は、XY平面内において開口部12に対してもクリアランスを有するため、操作ノブ30が開口部12に対するクリアランスに起因して変位すると、ガイド部14とフランジ部34とはXY平面内で当たる場合がある。
【0030】
本実施例では、一例として、ノブガイド部材90が設けられる。ノブガイド部材90は、上ケース10aに固定され、筐体10を形成する。ノブガイド部材90は、
図7及び
図8に示すように、ガイド部14と同様の機能を果たすガイド部94を備える。ノブガイド部材90は、梁部92,93,96を有する。梁部92は、X方向のX2側の操作ノブ30とX方向の中央の操作ノブ30との間に、Y方向に延在し、梁部93は、X方向の中央の操作ノブ30と、X方向のX1側の操作ノブ30とX方向の中央の操作ノブ30との間に、Y方向に延在する。梁部96は、X方向のX1側の2つの操作ノブ30の間に、X方向に延在する。ノブガイド部材90を備えることで、XY平面内における各操作ノブ30のガタツキが低減される。
【0031】
図11は、
図7のC部の拡大図である。但し、
図11では、ノブガイド部材90の図示は省略されており、上ケース10aのガイド部14と操作ノブ30のフランジ部34との詳細な形状関係を示す。
【0032】
図11に示すように、上ケース10aのガイド部14と操作ノブ30のフランジ部34とは、X方向で対向かつ近接する個所P(以下、単に「近接箇所P」と称する)を有する。
図11では、代表として、2つの近接箇所Pが示される。近接箇所Pは、1つの操作ノブ30に対して4隅の4か所同様に存在する。
【0033】
近接箇所Pにおけるフランジ部34は、
図11に示すように、外R形状で形成された外R部位312を有する。また、近接箇所Pにおけるガイド部14は、
図11に示すように、平面視(Z方向に視て)で、X方向に対して傾斜した方向D(第4方向の一例)に延在する。方向Dは、好ましくは、
図11に示すように、X方向に対して約45度をなす。尚、
図11に示す例では、近接箇所Pにおけるガイド部14の壁部141は、方向DにY2側(Y方向でフランジ部34から離れる側)へと延在する際に端点E1で終端しているが、
図11に示す端点E1を超えて更に延在してもよい。
【0034】
次に、
図12乃至
図14を参照して、本実施例の効果について説明する。
【0035】
図12及び
図13は、比較例の説明図であり、
図12は、比較例による上ケースのガイド部241と操作ノブのフランジ部341との関係を示す図である。
【0036】
比較例では、フランジ部341の形状に沿って一定のクリアランスでガイド部241が形成されている。従って、比較例では、
図12に示すように、フランジ部341の内R形状に沿ってガイド部241の外R形状が形成されている。
【0037】
図13は、比較例による携帯キーの落下時における操作ノブに加わる衝撃の伝達態様の説明図である。携帯キーの落下時は、筐体を介して操作ノブに衝撃が加わる。携帯キーは、比較的重量があり、かつ、操作ノブのフランジ部は薄肉であるため、操作ノブのフランジ部に衝撃が加わると、操作ノブのフランジ部が破断し易い。
【0038】
比較例の場合、
図13に示すように、X方向に落下し、X1側で地面等に当たりX2側に衝撃が加わった場合を想定すると、フランジ部341には、
図13にて矢印Fで示すように、X方向でX2に向かう衝撃力が作用する。フランジ部341は、薄肉であるので、内R形状の部位342の中心付近の応力集中部には、衝撃力に起因して比較的大きな応力が発生し、破断へと至る(
図13に、破断のラインCrが模式的に示される)。
【0039】
図14は、本実施例による携帯キー1の落下時における操作ノブ30に加わる衝撃の伝達態様の説明図である。
【0040】
本実施例の場合、
図14に示すように、X方向に落下し、X1側で地面等に当たりX2側に衝撃が加わった場合を想定すると、フランジ部34には、
図14にて矢印F1で示すように、衝撃力が作用する。このとき衝撃力F1は、ガイド部14が上述のようにX方向に対して斜め方向に延在することに起因して、X方向に平行にならない。即ち、
図14に模式的に示すように、衝撃力F1は、X方向の成分F2と、Y方向の成分F3とに分解される。従って、本実施例では、X方向の成分F2は、比較例による衝撃力Fよりも大きさが小さくなる。この結果、本実施例によれば、比較例に比べて、フランジ部34における内R部位311の中心付近の応力集中部に発生する応力が低減され、破断へと至る可能性が低減される。このようにし本実施例によれば、フランジ部34に加わる力の方向がY方向成分にも分散されるので、携帯キー1の落下時などにおける操作ノブ30の破断を低減できる。
【0041】
ここで、携帯キー1は、X方向に落下する以外にも、例えばY方向等、他の方向にも落下しうる。但し、携帯キー1は、上述のようにX方向が長手方向であるので、X方向に落下する形態が操作ノブ30にとって最も厳しい形態となる(地面等からの荷重を受ける面積が小さくなるため)。従って、本実施例によれば、X方向以外の方向での落下に対しても、同様に携帯キー1の落下時などにおける操作ノブ30の破断を低減できる。
【0042】
尚、
図11では、代表として、2つの近接箇所Pにおいて、2つの上ケース10aのガイド部14と操作ノブ30のフランジ部34との詳細な形状関係を説明したが、
図15に模式的に示すように、他の多数の近接箇所P(Q部内の近接箇所)においても同様の形状関係が実現されてよい。このとき、ノブガイド部材90のガイド部94についても、ガイド部14と同様に扱うことができる。
【0043】
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。
【0044】
例えば、上述した実施例では、フランジ部34の角部310は、内R形状で形成された内R部位311と、外R形状で形成された外R部位312,313とを含むが、これに限られない。例えば、
図16に示すように、フランジ部34Aの角部310Aは、外R形状で形成された外R部位312A(第1部位の一例)のみを有してもよい。この場合、ガイド部14Aは、
図16に示すように、平面視(Z方向に視て)で、X方向に対して傾斜した方向Dに延在する。方向Dは、好ましくは、
図16に示すように、X方向に対して約45度をなす。この場合も、上述した実施例と同様の効果を得ることができる。
【0045】
本願は、日本特許庁に2017年3月14日に出願された基礎出願2017-049177号の優先権を主張するものであり、その全内容を参照によりここに援用する。