(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
一般に、マシニングセンタのような工作機械では、主軸の内周面に保持する部材を介して加工用工具を保持する機構を有すると共に、この加工用工具には着脱可能にする着脱部を設け、所望の加工をするための複数の工具が整列されたマガジンから必要な工具を自動搬送装置で選択して、主軸に装着して加工を行うことができるように構成されている。
【0003】
マシニングセンタではこのようなオートツールチェンジャ等の自動機器の導入が進み、機械加工の自動化が飛躍的に進展し、主軸部への加工用工具の交換頻度の増加が顕著となった。自動交換に際して主軸に当接するフランジ端面部は、加工用工具の交換時には主軸側から吹き出す圧力エアで清掃されて、異物の付着が無く清浄化された状態にあることは非常に重要である。
【0004】
もしこのような工作機械の主軸内に設けられた圧力エアの流路中に詰まりが生じていたり、圧力エア供給源に障害が生じたりすると、清掃が充分に行われず主軸と加工用工具の間に異物が存在して、加工用工具の保持姿勢寸法に誤差が生じ、加工精度に影響を及ぼす恐れがある。
【0005】
従来、この圧力エアの主軸流路の詰まりを検出するものとして、特許文献1が開示されている。そこでは、圧力エア供給源からエア供給流路に供給されたエアの圧力又は流量を測定して加工用工具の装着有無を判定し、さらに着脱のためのテーパシャンクがクランプされた状態において、圧力エアの圧力又は流量を測定し、予め測定した良好な装着状態との値を比較して装着不良の有無を判定している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、特許文献1に開示された工作機械の主軸に設けられた圧力エアの流路の詰まりを検出するものでは、エアの圧力や流量の測定を主軸側で行っているため常に状態を監視できるという利点はあるものの、構造が複雑になり、本来の加工の目的では無い付帯装置が付くため、複雑な機構によるコストアップやメンテナンス作業の煩雑化等の課題があった。また目詰まりの有無の判定のため、判定基準値の条件出しが必要であり、エアの圧力や流量の測定のディレイタイミングなど細かな調整を必要としていた。
【0008】
一方、
図10、
図11、
図12に示すような、加工用工具と同様に着脱部を有して、工作機械の主軸100に取り付けて、圧力エアの流路の詰まりを目視で検出する圧力エア測定装置が公知であって使用されている。
図10は従来の圧力エア測定装置と主軸の構成斜視図であって、
図11は従来の圧力エア測定装置が圧力エアの測定を実施した後のものを模式的に表した構成斜視図である。また
図12は
図10の圧力エア測定装置を中央で切断して表した模式的な断面斜視図である。従来の圧力エア測定装置は主軸100に8系統設けられた圧力エアを吹き出す第1の流路101に合わせた位置で、ホルダユニット2に第2の流路202があって、これと繋がって筐体41にも第3の流路203があり、さらにこれと繋がって第4の流路204、及び第6の流路206がそれぞれ8系統設けられている。そしてシリンダ42とそのシリンダ内部45で摺動可能なピストン43が第6の流路206に接続されている。主軸側の圧力エア供給源からエア流路に供給された圧力エアは主軸100側の第1の流路101、圧力エア測定装置側の第2の流路202、第3の流路203、第6の流路206を経てシリンダ内部45へ到達し、シリンダ内部45において摺動可能なピストン43を押し出し、その際のピストン43の動きや移動した距離で流路の状態を検出することができる。ピストン43aはエアの流れが良好な流路の場合であり、シリンダ42の終端まで移動している。これに対して、ピストン43b、43cは途中で留まり、エアの流路に詰まりが生じている場合である。尚、シリンダ内部45の容積を超えて注入された圧力エアは第4の流路204を通じて外部へ放出される。
【0009】
このような機構によって主軸流路の目詰まり等を検出するための従来の圧力エア測定装置では、第1の流路101の個数や位置が異なる仕様の主軸においては使用できず、各々専用品を用意する必要があり、コストの上昇とメンテナンス等の管理の煩雑さを招いていた。
【0010】
本発明は、上記の欠点を補って、異なる仕様の工作機械に容易に対応できる圧力エア測定ユニット及び圧力エア測定装置、そしてこれらを用いた工作機械システムを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係る圧力エア測定ユニットは、上記の目的を達成するために、
加工用工具が着脱可能な工作機械の主軸に設けられた第1の流路から吹き出される圧力エ
アの状態を測定する圧力エア測定ユニットであって、
主軸に着脱可能に当接するフランジ端面部を有して第1の流路に繋がる第2の流路を有
するホルダユニットに分離可能に接続できて、圧力エアの状態の測定に係る測定用部材を
収納し、第2の流路に対応するように設けられた第3の流路と、第3の流路に直列に繋が
って外部に開口するように設けられた直線状の第4の流路と、第3の流路に接続して設け
られた測定空間と、を備えた筐体と、
測定用部材の一部を構成して測定空間に配置され、圧力エアの状態を電気信号に変換し
て出力するセンサと、
測定用部材の一部を構成してセンサから出力される電気信号を基に圧力エアの状態情報
を生成する制御回路と、
を有し、
第3の流路が、ホルダユニットと筐体を接続する弾性体の接続部材を介して第2の流路
に繋が
り、
ホルダユニット及び接続部材の少なくとも1つは、第2の流路の個数に係る識別情報を備
え、
制御回路は、識別情報を検出する識別情報検出手段と、識別情報に基づき測定を実施す
るセンサを選択指定する指定手段と、で構成されている。
【0012】
請求項2に係る圧力エア測定ユニットは、上記の目的を達成するために、
状態情報が、圧力エアの圧力及び流量の少なくとも1つの測定値を含んで構成されている。
【0014】
請求項
3に係る圧力エア測定装置は、上記の目的を達成するために、
加工用工具が着脱可能な工作機械の主軸に設けられた第1の流路から吹き出される圧力エアの状態を測定する、主軸に着脱可能な圧力エア測定装置であって、
主軸に着脱可能に当接するフランジ端面部を有して第1の流路に繋がった第2の流路を有するホルダユニットと、
ホルダユニットに分離可能に接続できて、圧力エアの状態の測定に係る測定用部材を収納し、第2の流路に対応して設けられた第3の流路と、第3の流路に直列に繋がって外部に開口するように設けられた直線状の第4の流路と、第3の流路に接続して設けられた測定空間と、を備えた筐体と、
測定用部材の一部を構成して測定空間に配置され、圧力エアの状態を電気信号に変換して出力するセンサと、
測定用部材の一部を構成してセンサから出力される電気信号を基に圧力エアの状態情報を生成する制御回路と、
第2の流路と第3の流路を繋げ、かつホルダユニットと筐体を接続する弾性体の接続部材と、
を有し、
ホルダユニット及び接続部材の少なくとも1つは、第2の流路の個数に係る識別情報を備え、
制御回路は、識別情報を検出する識別情報検出手段と、識別情報に基づき測定を実施するセンサを選択指定する指定手段と、で構成されている。
【0015】
請求項
4に係る圧力エア測定装置は、上記の目的を達成するために、
状態情報が、圧力エアの圧力及び流量の少なくとも1つの測定値を含んで構成されている。
【0017】
請求項
5に係る工作機械システムは、上記の目的を達成するために、
主軸に着脱可能に装着される加工用工具の着脱部へ圧力エアを吹き出すための第1の流路を主軸に設けた工作機械と、
主軸に装着される請求項
3又は4に記載の圧力エア測定装置と、で構成されている。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の発明の圧力エア測定ユニットによれば、圧力エアの流路の数や位置が異なる仕様の主軸に容易に変更対応できるので汎用性が高いという利点があ
り、圧力エアの流路の数や位置が異なる仕様の主軸に対応するために変更をした時、使用する部材の自動判別を行うことが可能であり、変更によるセッティングの時間短縮や誤設定防止を可能とする。
【0019】
請求項2に記載の発明の圧力エア測定ユニットによれば、上記の効果に加えて圧力エアの圧力及び流量の少なくとも1つの測定値を基に圧力エアの状態情報としているため、幅広い圧力エア発生源やその変動に対応できる。
【0021】
請求項
3に記載の発明の圧力エア測定装置によれば、ホルダユニットが分離可能な構成であって、圧力エアの流路の数や位置が異なる仕様の主軸に容易に変更対応できるので汎用性が高いという利点があ
り、圧力エアの流路の数や位置が異なる仕様の主軸に対応するために変更をした時、使用する部材の自動判別を行うことが可能であり、変更によるセッティングの時間短縮や誤設定防止を可能とする。
【0022】
請求項
4に記載の発明の圧力エア測定装置によれば、上記の効果に加えて圧力エアの圧
力及び流量の少なくとも1つの測定値を基に圧力エアの状態情報としているため、幅広い
圧力エア発生源やその変動に対応できる。
【0024】
請求項
5に記載の発明の工作機械システムによれば、圧力エアの流路の数や位置が異なる仕様の主軸を有する工作機械に対しても、汎用性の高い圧力エア測定装置によって容易に仕様変更を行って測定を行うことができるので生産効率が高い工作機械システムを実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明による実施形態について、図面を基に詳細な説明を行う。
【0027】
図1は本発明の第1の実施形態を示した圧力エア測定ユニット16を含む圧力エア測定装置1の外観斜視図である。圧力エア測定装置1は、工作機械の主軸側から加工用工具の着脱部へ清掃用の圧力エアを吹き出すために存在する主軸側の流路の詰まりを検出することを目的とした装置である。
【0028】
テーパシャンク2aは、従来例の
図7で示すように主軸100の内部に引き込まれ、主軸100にテーパシャンク2aのテーパ面とフランジ2bのフランジ端面部2c(
図2参照)の2面拘束で拘束される。本実施形態ではJIS B 6065−1,2規格による2面拘束形モジュラテーパホルダ部を用いているが、他の2面拘束形ホルダ部でも実施は可能である。
【0029】
フランジ2bは、テーパシャンク2aと一体となっていて、マシニングセンタのオートツールチェンジャにて工具マガジンに保管されている複数の加工用工具を所望の加工内容に応じて選択、交換のために設けられているものであり、本発明の圧力エア測定装置1でもこれを有している。また主軸の清掃用の圧力エア吹き出し口すなわち第1の流路101に対応したエア流路を有している。エア流路の詳細については後述する。
【0030】
ホルダユニット2はテーパシャンク2aとフランジ2bによって構成されており、圧力エア測定装置1は加工用工具の着脱部同様のホルダユニット2を介して、工作機械の主軸に着脱可能である。
【0031】
カバーケース3は円盤状の形状を成して、筐体4と共に圧力エア測定装置1の内部の部材を覆うように設けられ、Oリング8によってその気密が保たれている。圧力エア測定装置1はマシニングセンタなどの工作機械で使用されるため、クーラント及び切り粉などが飛散する環境であって、これらから電気回路等を保護するための気密性を保つことが必要である。
【0032】
次いで
図2を参照して本発明の圧力エア測定ユニット16を含む圧力エア測定装置1の第1の実施形態について説明する。
図2は圧力エア測定装置1を中央で切断した断面図である。
【0033】
筐体4内には接続部材13aを介してフランジ2bと繋がって、10系統のエア流路を有すると共に、圧力エアの状態を測定する測定用部材、すなわち後述のセンサ5、配線基板6、制御回路基板9等が収納されている。筐体4は例えばカップ状の形状であって、材質はクーラント等による腐食を防止するためA6061なるアルミ合金を用いている。
図2では10系統の流路のうち2つの流路断面が示されている。尚、10系統の流路は全て同一形状で、カップ状の筐体4の中心軸を中心として放射状に形成されている。
【0034】
フランジ端面部2cは主軸100と当接する面であり、前述のように加工用工具ではこの面に異物等が無いように保たれることが重要である。
【0035】
フランジ端面部2cを起点として、
図7に示すような主軸100の10系統の第1の流路101それぞれに繋がって、第2の流路202が軸方向へ設けられている。第2の流路202は直線状であって貫通して設けられている。
【0036】
第2の流路202、第3の流路203はそれぞれホルダユニット2、筐体4に連続して繋がっており、接続部材13aはホルダユニット2と筐体4の間にあって、第2の流路202と第3の流路203を繋げると同時にホルダユニット2と筐体4双方に挟み込まれて境界部の気密がなされている。接続部材13aはゴムなどの弾性体であって円盤状の板である。接続部材13aの詳細については後述する。本実施形態では第3の流路203は直線状であって方向を変えて軸方向に対して斜め方向へ向かう流路形状となっている。
【0037】
測定空間205は第3の流路203と交差及び分岐して筐体4の軸方向へ向かって設けたものであり、センサ5がそれぞれ測定空間205内に置かれている。
【0038】
第4の流路204は第3の流路203と繋がって、第3の流路203の延長線方向にさらに伸びて、直線状で外部へ開口して設けられている。よって第3の流路203と第4の流路204は直線状で直列の配置となっている。
【0039】
センサ5は、筐体4に設けられた測定空間205内に配置されて、この空間内の圧力エアの状態、例えば圧力を測定しこれを電気信号に変換して出力する。本実施形態では、センサ5はアナログ気圧センサを用いている。勿論センサ5はデジタルで測定値を出力するものを用いても良い。そして筐体4には10系統のエア流路があるため、それぞれの経路に対してセンサ5が計10個設けられている。
【0040】
配線基板6は10個のセンサ5の入出力配線を行う基板であって、個々に筐体4の内部にて固定されている。センサ5がこの基板上に実装されていて、センサ5の駆動用電源と測定値に係る出力電圧の電気配線がなされており、コネクタ及び不図示のケーブルによって後述の制御回路基板9と接続されている。また配線基板6は、リジッドなベース材上に貼られたフレキシブル配線板であっても良く、制御回路基板9との接続配線部がこのフレキシブル配線板の延長部で構成されていても良い。さらに配線基板6には、識別情報検出手段17aが実装されている。この識別情報検出手段17aは例えば直線状に動く接触子を持ったスイッチであって、バリエーションがあって識別情報を備えた接続部材の識別を行うものである。
【0041】
電源7は、不図示の電線ケーブル若しくは導電性の金属板など電気的に接続する手段により、センサ5及び制御回路基板9へ電力を供給している。本実施形態では充電可能な2次電池であって、ニッケル水素電池を用いている。電源7の種類は、センサ5及び制御回路基板9の消費電力や圧力エア測定装置1に要求される連続使用時間を考慮して適宜選択されるものである。すなわち圧力エア測定装置1の使用頻度が低い場合はアルカリ電池などの1次電池でも充分であって、使用頻度が高く非常に短時間での充電が必要な場合はリチウムイオン電池、電気二重層キャパシタ等も使用することができる。また本実施形態では電源7は筐体4とカバーケース3に囲まれた内部にあるが、これを外装が別になった電池パックとして着脱可能なもので構成しても良い。
【0042】
制御回路基板9は、圧力エア測定装置1の制御回路を搭載した基板であって、センサ5から出力されたアナログ電圧や電流の電気信号を受けてこれを基に圧力エア状態情報を生成し、これを無線にて外部へ送信する。圧力エア状態情報とは、圧力エアの圧力及び流量の少なくとも1つの測定値を基にしたものを含んで無線にて外部へ送信する形式に変換したものである。尚、圧力エア測定装置1の制御回路とは、制御回路基板9、配線基板6、センサ5及び識別情報検出手段17aを含んだ回路で構成されている。
【0043】
圧力エアの状態の測定における圧力の測定では、圧力エア発生源からの一連のエア流路の形状や、圧力エア発生源が発するエア圧力の大きさによっては良好な時と詰まり発生時の差が小さい場合があり、また圧力エア発生源が発するエア圧力の変動が大きい場合もあり、その際は圧力エアの流量を用いて検出することが好ましい。
【0044】
圧力エアの状態の測定において流量を用いる場合は、センサ5に流量センサを用いて圧力エアの状態情報としても良いが、センサ5に圧力センサを用いて、測定した圧力値と外気との差圧から流量を演算して圧力エアの状態情報とすることも可能である。また本実施形態においては、制御回路基板9では、センサ5から受けた電気信号から所定の時間内での平均値を演算加工して状態情報を生成しているが、これらの演算を圧力エア測定装置1から送信された情報を受信する側において行っても良い。
【0045】
本実施形態では、発光素子15を有していて赤外線による無線通信を用いているが、その他の光線による無線通信であっても良いし、2.4GHz帯、5GHz帯、920MHz帯などの周波数の電気的な無線による通信であっても良い。無線にて送信された信号は、専用の受信機、受信機を有するパーソナルコンピュータ、受信機を有する工作機械、若しくは工作機械に繋がって受信機を有するパーソナルコンピュータなどで受信及び復調されて、圧力エア測定値がデータにて保管される。したがってこのような構成であれば予め圧力エア測定値にしきい値を設けておき、しきい値以下であった場合、警告音を発したり、工作機械を停止させたりすることが可能である。さらに電源7の電圧やインピーダンスを所定の時間間隔でサンプリングして電源7の残量を監視し、電源7の残量が所定の値以下になった際に、残量不足の警告信号を無線にて送信して、充電を促す機能も有している。このような工作機械のシステムに関しての詳細は後述する。
【0046】
尚、本実施形態における圧力エア測定ユニット16とは、少なくとも筐体4、センサ5、配線基板6、Oリング8、制御回路基板9及びカバーケース3を含み、ホルダユニット2を除いたものを指している。ただし前述のように電源7は、筐体4内に内蔵しても良いが、電池パックとして筐体4及びカバーケース3に着脱可能で別途設けることでも構わない。またホルダユニット2と筐体4はボルト18で締結されていることから、ホルダユニット2と圧力エア測定ユニット16は容易に分離可能な構成となっている。
【0047】
本実施形態における圧力エア測定ユニット16及び圧力エア測定装置1が使用される環境は、クーラントのミスト若しくは加工の際に生ずる被加工物の切り粉等が飛散しており、主軸100に圧力エア測定装置1が装着され、第1の流路101から清掃用の圧力エアが吹き出るのと同時にクーラントや切り粉も圧力エアに混合されて圧力エア測定ユニット16及び圧力エア測定装置1へ侵入することが起こりうる。本実施形態による圧力エア測定ユニット16は、従来のものと比較して、筐体4の流路が直線状でかつ外部に開口して設けられているのでクーラントや切り粉等が堆積しにくく、仮に堆積しても清掃が容易である。
【0048】
また本実施形態による圧力エア測定装置1は、ホルダユニット2と圧力エア測定ユニット16が分離可能であって、ホルダユニット2の流路も直線状であるため、クーラントや切り粉等が堆積しにくく、また仮にクーラントや切り粉等が堆積しても、ホルダユニット2と圧力エア測定ユニット16を分離して各々清掃が容易である。
【0049】
図3は主軸100側に10系統の圧力エア吹き出し口すなわち10系統の第1の流路101がある場合の、接続部材13aとホルダユニット2の位置関係を示すものである。接続部材13aには、ホルダユニット2に設けられた10系統の第2の流路202に対応して10個の穴と、ホルダユニット2と圧力エア測定ユニット16を位置決めする位置決めピン14を逃げた穴と、中央にホルダユニット2と圧力エア測定ユニット16を締結するボルト18の逃げ穴が設けられている。したがって
図2に示すように、識別情報検出手段17a、17b双方ともに
接続部材13aによって識別情報検出手段17a、17bの接触子は押された状態となっている。ここではこの識別情報検出手段17a、17bであるスイッチが押された状態をONと定義することにする。
【0050】
図3の状態ではホルダユニット2は10系統の第2の流路202が存在していて、接続部材13aはこれを圧力エア測定ユニット16の10系統の第3の流路203へそのまま繋いでいる。したがってセンサ5は10個全部が測定対象となる。この時、接続部材13aは識別情報として、識別情報検出手段17a、17b両方のスイッチが押されたON状態にするため穴などが無い平坦な形状となっている。
【0051】
図4及び
図5は本発明の第2の実施形態に係る圧力エア測定装置1を示すものであって、
図4は中央で切断した断面図、
図5はホルダユニット20と圧力エア測定ユニット16を分解した斜視外観図である。第2の実施形態では、ホルダユニット20には8系統の第2の流路202が存在していて、接続部材13bはこれを変換して、圧力エア測定ユニット16の10系統のうちの8系統の第3の流路203へ繋いでいる。すなわち圧力エア測定ユニット16の10系統の第3の流路203のうち2系統は不要であるため、接続部材13bはこの2系統の第3の流路203を塞いでいることになる。またホルダユニット20の8系統の第2の流路202と圧力エア測定ユニット16の10系統の第3の流路203の位相は合致していないため、接続部材13bには長穴を含めた8個の穴が設けられている。
【0052】
このようにホルダユニット20の第2の流路202の個数が、圧力エア測定ユニット16の10系統の第3の流路203に対応するセンサ5の個数より少ない場合は、センサ5のいずれかを測定対象から外す必要がある。この時どのセンサ5を対象から外すかは制御回路基板9の制御回路に備えられた指定手段によって選択指定される。そのため接続部材13bはホルダユニット20の第2の流路202の個数に関する識別情報を有していて、識別情報検出手段17aのスイッチがOFFとなっていて、識別情報検出手段17bのスイッチのみがON状態になる場合に、8系統のホルダユニット20が装着されていると制御回路が判断できるようになっている。すなわち接続部材13bは識別情報として識別穴19aを有していて、制御回路は接続部材13bにある識別情報に基づき、識別情報検出手段17aのスイッチによってOFFであることを検出し、予め設定された所定のセンサ5のみを測定対象として測定を実施する。
【0053】
図6及び
図7は本発明の第3の実施形態に係る圧力エア測定装置1を示すものであって、
図6は中央で切断した断面図、
図7はホルダユニット21と圧力エア測定ユニット16を分解した斜視外観図である。第3の実施形態では、ホルダユニット21には6系統の第2の流路202が存在していて、接続部材13cはこれを変換して、圧力エア測定ユニット16の10系統のうちの6系統の第3の流路203へ繋いでいる。すなわち圧力エア測定ユニット16の10系統の第3の流路203のうち4系統は不要であるため、接続部材13cはこの4系統の第3の流路203を塞いでいることになる。またホルダユニット21の6系統の第2の流路202と
圧力エア測定ユニット16の10系統の第3の流路203の位相は合致していないため、接続部材13cには長穴を含めた6個の穴が設けられている。
【0054】
このように第3の実施形態も上記第2の実施形態と同様に、ホルダユニット21の第2の流路202の個数が、圧力エア測定ユニット16の10系統の第3の流路203に対応したセンサ5の個数より少ないため、センサ5のいずれかを測定対象から外す必要がある。そのため接続部材13cはホルダユニット21の第2の流路202の個数に関する識別情報を有していて、識別情報検出手段17a、17bのスイッチ両方がOFFとなる場合に、6系統のホルダユニット21が装着されていると制御回路が判断できるようになっている。すなわち接続部材13cは識別穴19a、19b両方を有していて、制御回路は接続部材13bにある識別情報に基づき、識別情報検出手段17a、17bのスイッチによってOFFであることを検出し、予め設定された所定のセンサ5のみを測定対象として測定を実施する。
【0055】
接続部材13a、13b、13cはゴムなどの弾性体であってホルダユニット2、20、21の第2の流路202と筐体4の第3の流路203間の気密を保っている。また接続部材に設けられる識別情報は、上述した穴などを使用したメカニカルなもの以外であっても良く、RFIDなど電気的なものや光学的なものでも良い。さらに上記の3つの実施形態では接続部材に識別情報を設けたが、ホルダユニットに設けても、また両方に設けても良い。両方に設けることでホルダユニットと接続部材の組合せの間違いを防止することも可能となる。
【0056】
図8は、本発明の圧力エア測定装置を用いた工作機械システムの第1の実施形態の斜視構成図である。圧力エア測定装置1は工作機械500の加工エリア内にあって主軸100に装着され、主軸100から吹き出される圧力エアの圧力情報を無線によって送信している。パーソナルコンピュータ503は、圧力エアの圧力情報を受信する受信手段を有すると共に、受信した圧力エアの圧力情報から、工作機械を停止させるか否かを判断する判断手段と、この判断手段によって工作機械500の制御部502へ停止を指令する指令手段を有している。
【0057】
またパーソナルコンピュータ503は電源7の残量情報も同様に受信して、工作機械を停止させるか否かを判断する判断手段と、この判断手段によって工作機械500の制御部502へ停止を指令する指令手段を有している。さらに警告をパーソナルコンピュータ503の画面に表示し、さらに警告音を発することもできる。工作機械500の制御部502は、パーソナルコンピュータ503から工作機械の停止指令を受け取って実行すると共に、操作画面501や警告音にて警告も発することができる。
【0058】
図9は、本発明の圧力エア測定装置を用いた工作機械システムの第2の実施形態の斜視構成図である。第2の実施形態は第1の実施形態の変形であって、第1の実施形態におけるパーソナルコンピュータ503の役割を成すものが制御部502に組み込まれている。したがって工作機械500の制御部502は直接的に圧力エア測定装置1から主軸100の圧力エアの状態情報及び電源7の残量情報を受けて工作機械500の停止判断を行い、この判断によって停止指令を発して実行すると共に、操作画面501や警告音にて警告も発することができる。
【0059】
本発明による工作機械システムは、圧力エア測定装置を工作機械の清掃吹き出し穴の異なる仕様に対しても容易に変更対応できるため、専用品を各々用意する必要が無いので経済的に有利である。また変更した際に、どのセンサを使用して測定するかを自動設定できることから、誤って閉塞された流路に対応したセンサの選択をして目詰まりと誤判断することを防止できる。したがって、装置メンテナンス等加工に要する時間以外のロス時間を短縮することができる。
【0060】
本発明の態様は、上述した実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本発明の効果も上述した内容に限定されない。