(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アゾール化合物は、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、ベンゾイミダゾール及び2−オクチルベンゾイミダゾールからなる群より選択される少なくとも一種である、請求項1又は2に記載のはんだペースト。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に示されるはんだペーストは、リフローはんだ付けの後、一定期間を経過すると銅等の配線に用いられる金属を腐食することがあった。
【0008】
特許文献2には、As含有量が多いと溶融性が劣る結果が示されており、当該溶融性は、溶融はんだの濡れ性に相当すると考えられる。一般に、溶融はんだの濡れ性を向上させるためには高活性のフラックスを用いる必要がある。特許文献2に記載のフラックスにおいて、Asによる濡れ性の劣化が抑制されるためには、高活性のフラックスを用いればよいと考えられる。しかし、高活性のフラックスを用いるとはんだペーストの粘度上昇率が上がってしまう。また、特許文献2の記載を鑑みると、粘度上昇率の上昇を抑えるためにはAs含有量を増加させる必要がある。特許文献2に記載のはんだペーストが更に低い粘度上昇率と優れた濡れ性を示すためには、フラックスの活性力とAs含有量を増加しつづける必要があり、悪循環を招くことになる。
【0009】
また、微細な電極を接合するためには、はんだ継手の機械的特性等を向上させる必要がある。元素によっては、含有量が多くなると液相線温度が上昇して液相線温度と固相線温度が広がり、凝固時に偏析して不均一な合金組織が形成されてしまう。はんだ合金がこのような合金組織を有すると、引張強度などの機械的特性が劣り外部からの応力により容易に破断してしまう。この問題は、近年の電極の小型化にともない顕著になってきている。
【0010】
そこで、本発明は、金属表面の腐食抑制性に優れ、かつ、増粘抑制効果を有し、濡れ性に優れ、液相線温度と固相線温度との温度差が小さいはんだペースト及びフラックスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、特定のはんだ合金を用いることで優れた増粘抑制効果を示し、さらに、フラックスがアゾール化合物を含むことで、金属表面の腐食抑制性を向上させられることを見出した。
【0012】
本発明は、以下の[1]〜[16]に関する。
[1]
アゾール化合物と、有機酸と、溶剤とを含有するフラックス;及び
As:25〜300質量ppmと、Pb:0質量ppm超え5100質量ppm以下と、Sb:0質量ppm超え3000質量ppm以下及びBi:0質量ppm超え10000質量ppm以下の少なくとも1種と、残部:Snと、からなる合金組成を有し、下記(1)式及び(2)式:
275≦2As+Sb+Bi+Pb (1)
0.01≦(2As+Sb)/(Bi+Pb)≦10.00 (2)
[上記(1)式及び(2)式中、As、Sb、Bi、及びPbは各々前記合金組成での含有量(質量ppm)を表す]
を満たすはんだ合金;
を含む、はんだペースト。
[2]
前記アゾール化合物は、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、ベンゾイミダゾール及び2−オクチルベンゾイミダゾールからなる群より選択される少なくとも一種である、上記[1]に記載のはんだペースト。
[3]
前記フラックスは、前記アゾール化合物を前記フラックス全質量に対して0.1質量%以上10質量%以下含む、上記[1]又は[2]に記載のはんだペースト。
[4]
前記フラックスは、前記有機酸を前記フラックス全質量に対して0.5質量%以上20質量%以下含む、上記[1]〜[3]のいずれかに記載のはんだペースト。
[5]
前記フラックスは、ロジンを更に含有する、上記[1]〜[4]のいずれかに記載のはんだペースト。
[6]
前記フラックスは、前記ロジンを前記フラックス全質量に対して30質量%以上60質量%以下含む、[5]に記載のはんだペースト。
[7]
前記フラックスは、チキソ剤を更に含有する、上記[1]〜[6]のいずれかに記載のはんだペースト。
[8]
前記フラックスは、前記チキソ剤を前記フラックス全質量に対して1.5質量%以上10質量%以下含む、[7]に記載のはんだペースト。
[9]
前記はんだ合金が粒子状の形態を有する、上記[1]〜[8]のいずれかに記載のはんだペースト。
[10]
前記はんだ合金が、下記(1a)式:
275≦2As+Sb+Bi+Pb≦25200 (1a)
[上記(1a)式中、As、Sb、Bi、及びPbは各々前記合金組成での含有量(質量ppm)を表す]
を満たす、上記[1]〜[9]のいずれかに記載のはんだペースト。
[11]
前記はんだ合金が、下記(1b)式:
275≦2As+Sb+Bi+Pb≦5300 (1b)
[上記(1b)式中、As、Sb、Bi、及びPbは各々前記合金組成での含有量(質量ppm)を表す]
を満たす、上記[1]〜[10]のいずれかに記載のはんだペースト。
[12]
前記はんだ合金が、下記(2a)式:
0.31≦(2As+Sb)/(Bi+Pb)≦10.00 (2a)
[上記(2a)式中、As、Sb、Bi、及びPbは各々前記合金組成での含有量(質量ppm)を表す]
を満たす、上記[1]〜[11]のいずれかに記載のはんだペースト。
[13]
さらに、前記合金組成が、Ag:0〜4質量%及びCu:0〜0.9質量%の少なくとも1種を含有する、上記[1]〜[12]のいずれかに記載のはんだペースト。
[14]
さらに、酸化ジルコニウム粉末を有する、上記[1]〜[13]のいずれかに記載のはんだペースト。
[15]
前記酸化ジルコニウム粉末を前記はんだペーストの全質量に対して0.05〜20.0質量%含有する、上記[14]に記載のはんだペースト。
[16]
As:25〜300質量ppmと、Pb:0質量ppm超え5100質量ppm以下と、Sb:0質量ppm超え3000質量ppm以下及びBi:0質量ppm超え10000質量ppm以下の少なくとも1種と、残部:Snと、からなる合金組成を有し、下記(1)式及び(2)式:
275≦2As+Sb+Bi+Pb (1)
0.01≦(2As+Sb)/(Bi+Pb)≦10.00 (2)
[上記(1)式及び(2)式中、As、Sb、Bi、及びPbは各々前記合金組成での含有量(質量ppm)を表す]
を満たすはんだ合金をはんだ付けするための、
アゾール化合物と、有機酸と、溶剤とを含有するフラックス。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、金属表面の腐食抑制性に優れ、かつ、増粘抑制効果を有し、濡れ性に優れ、液相線温度と固相線温度との温度差が小さいソルダスペースト及びフラックスを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0015】
[はんだペースト]
本実施形態のはんだペーストは、フラックス及びはんだ合金を含む。
上述のフラックスは、アゾール化合物と、有機酸と、溶剤とを含有する。
上述のはんだ合金は、As:25〜300質量ppmと、Pb:0質量ppm超え5100質量ppm以下と、Sb:0質量ppm超え3000質量ppm以下及びBi:0質量ppm超え10000質量ppm以下の少なくとも1種と、残部:Snと、からなる合金組成を有し、下記(1)式及び(2)式:
275≦2As+Sb+Bi+Pb (1)
0.01≦(2As+Sb)/(Bi+Pb)≦10.00 (2)
[上記(1)式及び(2)式中、As、Sb、Bi、及びPbは各々前記合金組成での含有量(質量ppm)を表す]
を満たす。
本実施形態のはんだペーストによれば、増粘抑制効果を有し、腐食抑制性に優れる。
【0016】
<フラックス>
(アゾール化合物)
本実施の形態のフラックスは、アゾール化合物を含有する。後述の有機酸と組み合わせることで、接合対象物の金属表面(例えば銅板)の腐食抑制性を向上させることができる。
ここでいう「アゾール化合物」とは、窒素原子を1つ以上含む複素5員環構造を有する化合物を意味し、当該複素5員環構造と他の環構造との縮合環も包含する。
【0017】
アゾール化合物としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾール、エポキシ−イミダゾールアダクト、2−メチルベンゾイミダゾール、2−オクチルベンゾイミダゾール、2−ペンチルベンゾイミダゾール、2−(1−エチルペンチル)ベンゾイミダゾール、2−ノニルベンゾイミダゾール、2−(4−チアゾリル)ベンゾイミダゾール、ベンゾイミダゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−tert−オクチルフェノール]、1,2,3−ベンゾトリアゾール、1−[N,N−ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、1−[N,N−ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル]メチルベンゾトリアゾール、2,2’−[[(メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)メチル]イミノ]ビスエタノール、1−(1’,2’−ジカルボキシエチル)ベンゾトリアゾール、1−(2,3−ジカルボキシプロピル)ベンゾトリアゾール、1−[(2−エチルヘキシルアミノ)メチル]ベンゾトリアゾール、2,6−ビス[(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)メチル]−4−メチルフェノール、5−メチルベンゾトリアゾール、5−フェニルテトラゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムクロライド、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン、6−(2−ベンゾトリアゾリル)−4−tert−オクチル−6’−tert−ブチル−4’−メチル−2,2’−メチレンビスフェノール等が挙げられる。
【0018】
アゾール化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
アゾール化合物は、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、ベンゾイミダゾール及び2−オクチルベンゾイミダゾールからなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましく、2−フェニルイミダゾールを含むものがより好ましい。
本実施の形態のフラックスは、アゾール化合物を0.1質量%以上10質量%以下含むことが好ましく、より好ましくは、アゾール化合物を0.5質量%以上5.0質量%以下含む。
【0019】
(有機酸)
本実施の形態のフラックスは、有機酸を含有する。
有機酸としては、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、エイコサン二酸、クエン酸、グリコール酸、コハク酸、サリチル酸、ジグリコール酸、ジピコリン酸、ジブチルアニリンジグリコール酸、スベリン酸、セバシン酸、チオグリコール酸、テレフタル酸、ドデカン二酸、パラヒドロキシフェニル酢酸、ピコリン酸、フェニルコハク酸、フタル酸、フマル酸、マレイン酸、マロン酸、ラウリン酸、安息香酸、酒石酸、イソシアヌル酸トリス(2−カルボキシエチル)、グリシン、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジエチルグルタル酸、2−キノリンカルボン酸、3−ヒドロキシ安息香酸、リンゴ酸、p−アニス酸、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等が挙げられる。
【0020】
また、有機酸としては、ダイマー酸、トリマー酸、ダイマー酸に水素を添加した水添物である水添ダイマー酸、トリマー酸に水素を添加した水添物である水添トリマー酸が挙げられる。
【0021】
例えば、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸、オレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸、アクリル酸の反応物であるダイマー酸、アクリル酸の反応物であるトリマー酸、メタクリル酸の反応物であるダイマー酸、メタクリル酸の反応物であるトリマー酸、アクリル酸とメタクリル酸の反応物であるダイマー酸、アクリル酸とメタクリル酸の反応物であるトリマー酸、オレイン酸の反応物であるダイマー酸、オレイン酸の反応物であるトリマー酸、リノール酸の反応物であるダイマー酸、リノール酸の反応物であるトリマー酸、リノレン酸の反応物であるダイマー酸、リノレン酸の反応物であるトリマー酸、アクリル酸とオレイン酸の反応物であるダイマー酸、アクリル酸とオレイン酸の反応物であるトリマー酸、アクリル酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸、アクリル酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸、アクリル酸とリノレン酸の反応物であるダイマー酸、アクリル酸とリノレン酸の反応物であるトリマー酸、メタクリル酸とオレイン酸の反応物であるダイマー酸、メタクリル酸とオレイン酸の反応物であるトリマー酸、メタクリル酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸、メタクリル酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸、メタクリル酸とリノレン酸の反応物であるダイマー酸、メタクリル酸とリノレン酸の反応物であるトリマー酸、オレイン酸とリノレン酸の反応物であるダイマー酸、オレイン酸とリノレン酸の反応物であるトリマー酸、リノール酸とリノレン酸の反応物であるダイマー酸、リノール酸とリノレン酸の反応物であるトリマー酸、上述した各ダイマー酸の水添物である水添ダイマー酸、上述した各トリマー酸の水添物である水添トリマー酸等が挙げられる。
【0022】
有機酸は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
本実施の形態のフラックスは、有機酸を0.5質量%以上20質量%以下含むことが好ましく、3質量%以上18質量%以下含むことがより好ましい。
【0023】
本実施の形態のフラックスにおいて、有機酸の含有量と、アゾール化合物の含有量との比率は、有機酸の含有量/アゾール化合物の含有量で表される質量比として、0.5以上10以下が好ましく、1以上9以下がより好ましい。この質量比が前記の好ましい範囲内であれば、接合対象物の金属表面(例えば銅板)の腐食抑制性がより高められやすくなる。
【0024】
本実施の形態のフラックスにおいて、有機酸とアゾール化合物の合計含有量は、フラックスの全質量量に対して、好ましくは3質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上であり、さらに好ましくは6質量%以上である。また、有機酸とアゾール化合物の合計含有量は、フラックスの全質量量に対して、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下であり、さらに好ましくは15質量%以下である。この含有量が前記の好ましい範囲内であれば、接合対象物の金属表面(例えば銅板)の腐食抑制性がより高められやすくなり、濡れ性がより向上する傾向にある。
【0025】
(ロジン)
本実施の形態のフラックスは、ロジンを含有していてもよい。
ロジンとしては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン及びトール油ロジン等の原料ロジン、並びに該原料ロジンから得られる誘導体が挙げられる。該誘導体としては、例えば、精製ロジン、水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、酸変性ロジン、フェノール変性ロジン及びα,β不飽和カルボン酸変性物(アクリル化ロジン、マレイン化ロジン、フマル化ロジン等)、並びに該重合ロジンの精製物、水素化物及び不均化物、並びに該α,β不飽和カルボン酸変性物の精製物、水素化物及び不均化物等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
【0026】
本実施の形態のフラックスは、ロジンを30質量%以上60質量%以下含むことが好ましく、より好ましくは、ロジンを35質量%以上60質量%以下含む。
【0027】
(チキソ剤)
チキソ剤としては、ワックス系チキソ剤、アマイド系チキソ剤、ソルビトール系チキソ剤が挙げられる。ワックス系チキソ剤としては例えばヒマシ硬化油等が挙げられる。アマイド系チキソ剤としては例えば、モノアマイド系チキソ剤、ビスアマイド系チキソ剤、ポリアマイド系チキソ剤が挙げられる。モノアマイド系チキソ剤としては、例えば、ラウリン酸アマイド、パルミチン酸アマイド、ステアリン酸アマイド、ベヘン酸アマイド、ヒドロキシステアリン酸アマイド、飽和脂肪酸アマイド、オレイン酸アマイド、エルカ酸アマイド、不飽和脂肪酸アマイド、p−トルアマイド、p−トルエンメタンアマイド、芳香族アマイド等が挙げられる。ビスアマイド系チキソ剤としては、例えば、メチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスラウリン酸アマイド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アマイド、飽和脂肪酸ビスアマイド、メチレンビスオレイン酸アマイド、不飽和脂肪酸ビスアマイド、m−キシリレンビスステアリン酸アマイド、芳香族ビスアマイド等が挙げられる。ポリアマイド系チキソ剤としては、例えば、飽和脂肪酸ポリアマイド、不飽和脂肪酸ポリアマイド、芳香族ポリアマイド、置換アマイド、メチロールステアリン酸アマイド、メチロールアマイド、脂肪酸エステルアマイド等が挙げられる。ソルビトール系チキソ剤としては例えば、ジベンジリデン−D−ソルビトール、ビス(4−メチルベンジリデン)−D−ソルビトールが挙げられる。チキソ剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0028】
本実施の形態のフラックスは、好ましくは、チキソ剤を0.1質量%以上15.0質量%以下、より好ましくは、チキソ剤を1.0質量%以上10.0質量%以下、さらに好ましくは、チキソ剤を2.0質量%以上8.3質量%以下含む。
【0029】
また、本実施の形態のフラックスは、チキソ剤としてエステル化合物を含むことが好ましく、エステル化合物を0質量%以上8.0質量%以下、より好ましくは、エステル化合物を0質量%以上4.0質量%以下含む。
エステル化合物としては、例えば、ヒマシ硬化油等が挙げられる。
【0030】
(その他の添加剤)
本実施の形態のフラックスは、さらに、アミン(アゾール化合物を除く)、ハロゲン(有機ハロゲン化合物、アミンハロゲン化水素酸塩)を含んでもよい。本実施の形態のフラックスは、アミン(アゾール化合物を除く)を0質量%以上20質量%以下含むことが好ましく、より好ましくは、アミンを0質量%以上5質量%以下含む。本実施の形態のフラックスは、ハロゲンとして有機ハロゲン化合物を0質量%以上5質量%以下含むことが好ましく、アミンハロゲン化水素酸塩を0質量%以上2質量%以下含むことが好ましい。
【0031】
アミンとしては、モノエタノールアミン、エチルアミン、トリエチルアミン、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、2,4−ジアミノ−6−ビニル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ビニル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−s−トリアジン等が挙げられる。
【0032】
有機ハロゲン化合物としては、trans−2,3−ジブロモ−2−ブテン−1,4−ジオール、トリアリルイソシアヌレート6臭化物、1−ブロモ−2−ブタノール、1−ブロモ−2−プロパノール、3−ブロモ−1−プロパノール、3−ブロモ−1,2−プロパンジオール、1,4−ジブロモ−2−ブタノール、1,3−ジブロモ−2−プロパノール、2,3−ジブロモ−1−プロパノール、2,3−ジブロモ−1,4−ブタンジオール、2,3−ジブロモ−1,4−ブタンジオール、2,3−ジブロモ−2−ブテン−1,4−ジオール、イソシアヌル酸トリス(2,3−ジブロモプロピル)、無水クロレンド酸等が挙げられる。
【0033】
アミンハロゲン化水素酸塩は、アミンとハロゲン化水素を反応させた化合物である。
アミンハロゲン化水素酸塩のアミンとしては、上述したアミンを用いることができ、エチルアミン、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、トリエチルアミン、ジフェニルグアニジン、ジトリルグアニジン、メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等が挙げられる。ハロゲン化水素としては、塩素、臭素、ヨウ素、フッ素の水素化物(塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素、フッ化水素)が挙げられる。また、アミンハロゲン化水素酸塩に代えて、あるいはアミンハロゲン化水素酸塩と合わせてホウフッ化物を含んでもよく、ホウフッ化物としてホウフッ化水素酸等が挙げられる。
アミンハロゲン化水素酸塩としては、アニリン塩化水素、シクロヘキシルアミン塩化水素、アニリン臭化水素、ジフェニルグアニジン臭化水素、ジトリルグアニジン臭化水素、エチルアミン臭化水素等が挙げられる。
【0034】
本実施の形態のフラックスは、更に、酸化防止剤を含んでもよく、酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤等が挙げられ、酸化防止剤を0質量%以上5質量%以下含むことが好ましい。
【0035】
(溶剤)
本実施形態のフラックスは、溶剤を含有する。
溶剤としては、水、アルコール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、テルピネオール類等が挙げられる。アルコール系溶剤としてはイソプロピルアルコール、1,2−ブタンジオール、イソボルニルシクロヘキサノール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール、2,3−ジメチル−2,3−ブタンジオール、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)エタン、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2,2’−オキシビス(メチレン)ビス(2−エチル−1,3−プロパンジオール)、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、1,2,6−トリヒドロキシヘキサン、ビス[2,2,2−トリス(ヒドロキシメチル)エチル]エーテル、1−エチニル−1−シクロヘキサノール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、エリトリトール、トレイトール、グアヤコールグリセロールエーテル、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール等が挙げられる。グリコールエーテル系溶剤としては、ヘキシルジグリコール、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、2−メチルペンタン−2,4−ジオール、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
【0036】
本実施の形態のフラックスは、残部が溶剤であり、好ましくは、溶剤を10.0質量%以上90.0質量%以下、より好ましくは、溶剤を20.0質量%以上80.0質量%以下、さらに好ましくは、溶剤を30.0%以上70.0質量%以下含む。
【0037】
<はんだ合金>
はんだ合金は、As:25〜300質量ppmと、Pb:0質量ppm超え5100質量ppm以下と、Sb:0質量ppm超え3000質量ppm以下及びBi:0質量ppm超え10000質量ppm以下の少なくとも1種と、残部:Snと、からなる合金組成を有し、下記(1)式及び(2)式:
275≦2As+Sb+Bi+Pb (1)
0.01≦(2As+Sb)/(Bi+Pb)≦10.00 (2)
[上記(1)式及び(2)式中、As、Sb、Bi、及びPbは各々前記合金組成での含有量(質量ppm)を表す]
を満たす。本実施形態のはんだペーストは、上記のはんだ合金を含むことにより、増粘抑制効果を向上できる。また、当該はんだ合金は、上記の構成を備えることにより、液相線温度(T
L)と固相線温度(T
S)との差(ΔT=T
L−T
S)を小さくできる。このため、例えば、上記はんだ合金を含有するはんだペーストを電子機器の基板に塗布し、凝固させても、はんだペーストは、はんだ合金の組織の均一性を保つことができる。その結果、はんだペーストは、サイクル特性等の信頼性に優れる。更に、本実施形態のはんだペーストを構成するはんだ合金は、上記の構成を備えることにより、濡れ性に優れるため、はんだ付け不良の発生を抑制できる。このように、はんだペーストは、上記構成を備えることにより、増粘抑制効果を有し、濡れ性に優れ、液相線温度と固相線温度との温度差が小さくなる。
【0038】
Asは、はんだペーストの粘度の経時変化を抑制することができる元素である。Asは、フラックスとの反応性が低く、またSnに対して貴な元素であるために増粘抑制効果を発揮することができると推察される。Asが25質量ppm未満であると、増粘抑制効果を十分に発揮することができない。As含有量の下限は25質量ppm以上であり、好ましくは50質量ppm以上であり、より好ましくは100質量ppm以上である。一方、Asが多すぎるとはんだ合金の濡れ性が劣化する。As含有量の上限は300質量ppm以下であり、このましくは250質量ppm以下であり、より好ましくは200質量ppm以下である。
【0039】
Sbは、フラックスとの反応性が低く増粘抑制効果を示す元素である。本実施形態に係るはんだ合金がSbを含有する場合、Sb含有量の下限は0質量ppm超えであり、好ましくは25質量ppm以上であり、より好ましくは50質量ppm以上であり、さらに好ましくは100質量ppm以上であり、特に好ましくは300質量ppm以上である。一方、Sb含有量が多すぎると、濡れ性が劣化するため、適度な含有量にする必要がある。Sb含有量の上限は3000質量ppm以下であり、好ましくは1150質量ppm以下であり、より好ましくは500質量ppm以下である。
【0040】
Bi及びPbは、Sbと同様に、フラックスとの反応性が低く増粘抑制効果を示す元素である。また、Bi及びPbは、はんだ合金の液相線温度を下げるとともに溶融はんだの粘性を低減させるため、Asによる濡れ性の劣化を抑えることができる元素である。
【0041】
Sb、Bi及びPbの少なくとも1元素が存在すれば、Asによる濡れ性の劣化を抑えることができる。本実施形態に係るはんだ合金がBiを含有する場合、Bi含有量の下限は0質量ppm超えであり、好ましくは25質量ppm以上であり、より好ましくは50質量ppm以上であり、さらに好ましくは75質量ppm以上であり、特に好ましくは100質量ppm以上であり、最も好ましくは250ppm以上である。本実施形態に係るはんだ合金がPbを含有する場合、Pb含有量の下限は0質量ppm超えであり、好ましくは25質量ppm以上であり、より好ましくは50質量ppm以上であり、さらに好ましくは75質量ppm以上であり、特に好ましくは100質量ppm以上であり、最も好ましくは250質量ppm以上である。
【0042】
一方、これらの元素の含有量が多すぎると、固相線温度が著しく低下するため、液相線温度と固相線温度との温度差であるΔTが広くなりすぎる。ΔTが広すぎると、溶融はんだの凝固過程において、BiやPbの含有量が少ない高融点の結晶相が析出するために液相のBiやPbが濃縮される。その後、さらに溶融はんだの温度が低下すると、BiやPbの濃度が高い低融点の結晶相が偏析してしまう。このため、はんだ合金の機械的強度等が劣化し、信頼性が劣ることになる。特に、Bi濃度が高い結晶相は硬くて脆いため、はんだ合金中で偏析すると信頼性が著しく低下する。
【0043】
このような観点から、本実施形態に係るはんだ合金がBiを含有する場合、Bi含有量の上限は10000質量ppm以下であり、好ましくは1000質量ppm以下であり、より好ましくは600質量ppm以下であり、さらに好ましくは500質量ppm以下である。本実施形態に係るはんだ合金がPbを含有する場合、Pb含有量の上限は5100質量ppm以下であり、好ましくは5000質量ppm以下であり、より好ましくは1000質量ppm以下であり、さらに好ましくは850質量ppm以下であり、特に好ましくは500質量ppm以下である。
【0044】
本実施形態に係るはんだ合金は、下記(1)式を満たす。
【0045】
275≦2As+Sb+Bi+Pb (1)
上記(1)式中、As、Sb、Bi、及びPbは各々合金組成での含有量(質量ppm)を表す。
【0046】
As、Sb、Bi及びPbは、いずれも増粘抑制効果を示す元素である。これらの合計が275質量ppm以上である。(1)式中、As含有量を2倍にしたのは、AsがSbやBiやPbと比較して増粘抑制効果が高いためである。
【0047】
(1)式が275未満であると、増粘抑制効果が十分に発揮されない。(1)式の下限は275以上であり、好ましくは350以上であり、より好ましくは1200以上である。一方、(1)の上限は、増粘抑制効果の観点では特に限定されることはないが、ΔTを適した範囲にする観点から、好ましくは25200以下であり、より好ましくは10200以下であり、さらに好ましくは5300以下であり、特に好ましくは3800以下である。
【0048】
上記好ましい態様の中から上限及び下限を適宜選択したものが、下記(1a)式及び(1b)式である。
【0049】
275≦2As+Sb+Bi+Pb≦25200 (1a)
275≦2As+Sb+Bi+Pb≦5300 (1b)
上記(1a)及び(1b)式中、As、Sb、Bi、及びPbは各々合金組成での含有量(質量ppm)を表す。
【0050】
本実施形態に係るはんだ合金は、下記(2)式を満たす。
【0051】
0.01≦(2As+Sb)/(Bi+Pb)≦10.00 (2)
上記(2)式中、As、Sb、Bi、及びPbは各々合金組成での含有量(質量ppm)を表す。
【0052】
As及びSbは含有量が多いとはんだ合金の濡れ性が劣化する。一方、Bi及びPbは、Asを含有することによる濡れ性の劣化を抑制するが、含有量が多すぎるとΔTが上昇してしまうため、厳密な管理が必要である。特に、Bi及びPbを同時に含有する合金組成では、ΔTが上昇しやすい。これらを鑑みると、Bi及びPbの含有量を増加させて過度に濡れ性を向上させようとするとΔTが広がってしまう。一方、AsやSbの含有量を増加させて増粘抑制効果を向上させようとすると濡れ性が劣化してしまう。そこで、本実施形態では、As及びSbのグループ、Bi及びPbのグループに分け、両グループの合計量が適正な所定の範囲内である場合に、増粘抑制効果、ΔTの狭窄化、及び濡れ性のすべてが同時に満たされるのである。
【0053】
(2)式が0.01未満であると、Bi及びPbの含有量の合計がAs及びPbの含有量の合計と比較して相対的に多くなるため、ΔTが広がってしまう。(2)式の下限は0.01以上であり、好ましくは0.02以上であり、より好ましくは0.41以上であり、さらに好ましくは0.90以上であり、特に好ましくは1.00以上であり、最も好ましくは1.40以上である。一方、(2)式が10.00を超えると、As及びSbの含有量の合計がBi及びPbの含有量の合計より相対的に多くなるため、濡れ性が劣化してしまう。(2)の上限は10.00以下であり、好ましくは5.33以下であり、より好ましくは4.50以下であり、さらに好ましくは2.67以下であり、さらにより好ましくは4.18以下であり、特に好ましくは2.30以下である。
【0054】
なお、(2)式の分母は「Bi+Pb」であり、これらを含有しないと(2)式が成立しない。すなわち、本実施形態に係るはんだ合金は、Bi及びPbの少なくとも1種を必ず含有することになる。Bi及びPbを含有しない合金組成は、前述のように、濡れ性が劣る。
上記好ましい態様の中から上限及び下限を適宜選択したものが、下記(2a)式である。
【0055】
0.31≦(2As+Sb)/(Bi+Pb)≦10.00 (2a)
上記(2a)式中、As、Sb、Bi及びPbは各々合金組成での含有量(質量ppm)を表す。
【0056】
Agは、結晶界面にAg
3Snを形成してはんだ合金の信頼性を向上させることができる任意元素である。また、Agはイオン化傾向がSnに対して貴な元素であり、As、Pb、及びBiと共存することによりこれらの増粘抑制効果を助長する。Ag含有量は好ましくは0〜4質量%であり、より好ましくは0.5〜3.5質量%であり、さらに好ましくは1.0〜3.0質量%である。
【0057】
Cuは、はんだ継手の接合強度を向上させることができる任意元素である。また、Cuはイオン化傾向がSnに対して貴な元素であり、As、Pb、及びBiと共存することによりこれらの増粘抑制効果を助長する。Cu含有量は好ましくは0〜0.9質量%であり、より好ましくは0.1〜0.8質量%であり、さらに好ましくは0.2〜0.7質量%である。
【0058】
本実施形態に係るはんだ合金の残部はSnである。前述の元素の他に不可避的不純物を含有してもよい。不可避的不純物を含有する場合であっても、前述の効果に影響することはない。また、後述するように、本実施形態では含有しない元素が不可避的不純物として含有されても前述の効果に影響することはない。Inは、含有量が多すぎるとΔTが広がるため、1000質量ppm以下であれば前述の効果に影響することはない。
【0059】
<各成分の含有量>
ソルダスペースト中のはんだ合金及びフラックスの含有量に限定はなく、例えば、はんだ合金を5〜95質量%、フラックスを5〜95質量%とすることができる。
【0060】
本実施形態に係るはんだペーストは、酸化ジルコニウム粉末を含有することが好ましい。酸化ジルコニウムは、経時変化に伴うペーストの粘度上昇を抑制することができる。これは、酸化ジルコニウムを含有することにより、はんだ粉末表面の酸化膜厚がフラックス中に投入する前の状態を維持するためと推測される。詳細は不明であるが、以下のように推察される。通常、フラックスの活性成分は常温でもわずかに活性を持っているため、はんだ粉末の表面酸化膜が還元により薄くなり、粉末同士が凝集する原因になっている。そこで、はんだペーストに酸化ジルコニウム粉末を添加することで、フラックスの活性成分が酸化ジルコニウム粉末と優先的に反応し、はんだ粉末表面の酸化膜が凝集しない程度に維持されると推察される。
【0061】
このような作用効果を十分に発揮するためには、はんだペースト中の酸化ジルコニウム粉末の含有量ははんだペーストの全質量に対して0.05〜20.0質量%であることが好ましい。0.05質量%以上であると上記作用効果を発揮することができ、20.0質量%以下であると金属粉末の含有量を確保することができ、増粘防止効果を発揮することができる。酸化ジルコニウムの含有量は好ましくは0.05〜10.0質量%であり、より好ましい含有量は0.1〜3質量%である。
【0062】
はんだペースト中の酸化ジルコニウム粉末の粒径は5μm以下であることが好ましい。粒径が5μm以下であるとペーストの印刷性を維持することができる。下限は特に限定されることはないが0.5μm以上であればよい。上記粒径は、酸化ジルコニウム粉末のSEM写真を撮影し、0.1μm以上の各粉末について画像解析により投影円相当径を求め、その平均値とした。
【0063】
酸化ジルコニウムの形状は特に限定されないが、異形状であればフラックスとの接触面積が大きく増粘抑制効果がある。球形であると良好な流動性が得られるためにペーストとしての優れた印刷性が得られる。所望の特性に応じて適宜形状を選択すればよい。
【0064】
本実施形態のはんだペーストの製造方法に限定はなく、原料を同時に又は順次、任意の方法で混合することにより製造することができる。
フラックスの製造にあたっては、最終的にフラックスの全成分が混合されればよく、各種は予め混合して混合溶剤としておいてもよいし、別々のタイミングで各種の成分と混合してもよい。
また、はんだペーストの製造にあたっても、必ずしも、フラックスを予め調製して、これをはんだ合金とを混合する必要はなく、最終的にフラックスの全成分、はんだ合金及び必要に応じてはんだペーストに添加される添加剤とが混合されるのであれば混合の順番は問わず、フラックスの成分の一部とはんだ合金とを混合した後、フラックスの残りの成分を添加するなどしてもよい。
【0065】
本実施形態のはんだペーストは、接合対象物の金属表面(例えば銅板)に対し、高い腐食抑制性を発現することができる。
【実施例】
【0066】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0067】
[フラックスの検討]
表1に示す原料を表1に示す配合で混合し、実施例A1〜A61及び比較例A1のフラックスを調製した。なお、各原料は相溶し、容易に混合することができた。
【0068】
実施例、比較例のフラックスについて、銅板腐食抑制能を以下の手順で評価した。
【0069】
<腐食抑制能の評価>
(1)検証方法
腐食抑制能の評価は、JIS Z 3197:2012 8.4.1に準拠し、下記の銅板腐食試験により行った。
【0070】
試験銅板の作製:寸法50mm×50mm×0.5mmのりん脱酸銅板の中央に直径20mmの鋼球で深さ3mmのくぼみを作って試験片とした。試験片は、アセトンで脱脂後、65℃の硫酸に1分間浸漬して表面の酸化被膜等を除去した。次に、20℃の過硫酸アンモニウム溶液に1分間浸漬した後、精製水で洗浄し、乾燥させて試験銅板とした。
【0071】
各例のフラックスの固形分含有量を、JIS Z 3197:2012 8.1.3に規定する方法を用いて測定し、その固形分として0.035〜0.040gを含有する適量のフラックスを、前記試験銅板中央のくぼみに加えた。
次に、温度40℃、相対湿度90%の加湿条件に設定した恒温恒湿槽中に試験銅板を投入し、槽内に72時間放置した。各例のフラックスごとに、試験銅板を2個とし、1個のブランクを加えた。
槽内に96時間放置した後、恒温恒湿槽から取り出し、30倍の顕微鏡で腐食の跡をブランクと比較した。以下に示す判定基準に基づき、腐食抑制能を評価した。
【0072】
(2)判定基準
○:変色なし
×:変色がある
【0073】
結果を表1に示す。フラックスがアゾール化合物及び有機酸を含む実施例A1〜A61のフラックスは、比較例A1と比べて良好な耐腐食性を示す。
【0074】
【表1-1】
【0075】
【表1-2】
【0076】
【表1-3】
【0077】
【表1-4】
【0078】
[はんだ合金の検討]
表1で調整したフラックスA1と、表2〜表7に示す合金組成からなりJIS Z 3284−1:2014における粉末サイズの分類(表2)において記号4を満たすサイズ(粒度分布)のはんだ合金とを混合してはんだペーストを作製した。フラックスとはんだ合金との質量比は、フラックス:はんだ合金=11:89である。各はんだペーストについて、粘度の経時変化を測定した。また、はんだ合金の液相線温度及び固相線温度を測定した。さらに、作製直後のはんだペーストを用いて濡れ性の評価を行った。詳細は以下のとおりである。
【0079】
<増粘抑制>
作製直後の各はんだペーストについて、株式会社マルコム社製:PCU−205を用い、回転数:10rpm、25℃、大気中で12時間粘度を測定した。12時間後の粘度がはんだペーストを作製後30分経過した時の粘度と比較して1.2倍以下であれば、十分な増粘抑制効果が得られたものとして「○」と評価し、1.2倍を超える場合には「×」と評価した。
【0080】
<液相線温度と固相線温度との温度差(ΔT)>
フラックスと混合する前のはんだ合金について、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製、型番:EXSTAR DSC7020を用い、サンプル量:約30mg、昇温速度:15℃/minにてDSC測定を行い、固相線温度及び液相線温度を得た。得られた液相線温度から固相線温度を引いてΔTを求めた。ΔTが10℃以下の場合に「○」と評価し、10℃を超える場合に「×」と評価した。
【0081】
<濡れ性>
作製直後の各はんだペーストをCu板上に印刷し、リフロー炉でN
2雰囲気中、1℃/sの昇温速度で25℃から260℃まで加熱した後、室温まで冷却した。冷却後のはんだバンプの外観を光学顕微鏡で観察することで濡れ性を評価した。溶融しきれていないはんだ粉末が観察されない場合に「○」と評価し、溶融しきれていないはんだ粉末が観察された場合に「×」と評価した。
【0082】
<総合評価>
〇:上記の各評価が全て〇
×:上記の各評価において×あり
【0083】
【表2】
【0084】
【表3】
【0085】
【表4】
【0086】
【表5】
【0087】
【表6】
【0088】
【表7】
【0089】
表1に示す各実施例のフラックスと、所定のはんだ合金とを使用したはんだペーストでは、はんだペーストの腐食抑制能に対して優れた効果が得られた。
表2に示す所定のフラックスと、各種実施例のはんだ合金とを使用したはんだペーストでは、増粘抑制効果を有し、液相線温度と固相線温度との温度差(ΔT)が小さく、濡れ性に優れる。
【0090】
表2〜7に示すように、全ての実施例Bでは、増粘抑制効果、ΔTの狭窄化、及び優れた濡れ性を示すことがわかった。
【0091】
これに対して、比較例B1、B14、B27、B40、B53、及びB66は、Asを含有しないため、増粘抑制効果が発揮されなかった。
【0092】
比較例B2、B15、B28、B41、B54、及びB67は、(1)式が下限未満であるため、増粘抑制効果が発揮されなかった。
【0093】
比較例B3、B16、B29、B42、B55、及びB68は、(2)式が上限を超えるため、濡れ性が劣った。
【0094】
比較例B4、B5、B17、B18、B30、B31、B43、B44、B56、B57、B69、及びB70は、As含有量および(2)式が上限を超えているため、濡れ性が劣る結果を示した。
【0095】
比較例B6〜B8、B19〜B21、B32〜B34、B45〜B47、B58〜B60、及びB71〜B73は、Sb含有量が上限を超えているため、濡れ性が劣った。
【0096】
比較例B9、B10、B22、B23、B35、B36、B48、B49、B61、B62、B74、及びB75は、Bi含有量が上限を超えているため、ΔTが10℃を超える結果を示した。
【0097】
比較例B11、B13、B24、B26、B37、B39、B50、B52、B63、B65、B76、及びB78は、Pb含有量が上限を超えているため、ΔTが10℃を超える結果を示した。
【0098】
比較例B12、B25、B38、B51、B64、及びB77は、Bi及びPbを含有せず(2)式が成立しなかったため、濡れ性が劣った。
【0099】
<フラックスとはんだ合金の組み合わせ>
実施例A1のフラックスに代えて、実施例A2〜A61の各種フラックスをそれぞれ、実施例B1に示したはんだ合金を組み合わせた場合も、腐食抑制性、増粘抑制効果、ΔT、濡れ性においても良好な結果が得られた。
【0100】
同様に、実施例A1〜A61の各種フラックスに対して、その他の実施例Bの各種はんだ合金をそれぞれ組み合わせた場合も、腐食抑制性、増粘抑制効果、ΔT、濡れ性においても良好な結果が得られた。
【0101】
<はんだペーストへの酸化ジルコニウム粉末の添加>
表1に示した各フラックスと、表2〜7に示した各はんだ合金の粉末からなるはんだペーストに対して、粒径1μmの酸化ジルコニウム粉末を、はんだペーストの全質量に対して0.5%添加したところ、増粘抑制効果についてさらに良好な結果が得られた。また、腐食抑制効果、ΔT、濡れ性も劣ることなく、良好な結果が得られた。
As:25〜300質量ppmと、Pb:0質量ppm超え5100質量ppm以下と、Sb:0質量ppm超え3000質量ppm以下及びBi:0質量ppm超え10000質量ppm以下の少なくとも1種と、残部:Snと、からなる合金組成を有し、下記(1)式及び(2)式: