特許第6681573号(P6681573)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6681573
(24)【登録日】2020年3月26日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】電磁比例弁のスリーブ固定方法
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/06 20060101AFI20200406BHJP
【FI】
   F16K31/06 305M
   F16K31/06 305A
   F16K31/06 305B
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-110177(P2016-110177)
(22)【出願日】2016年6月1日
(65)【公開番号】特開2017-214997(P2017-214997A)
(43)【公開日】2017年12月7日
【審査請求日】2019年4月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100158355
【弁理士】
【氏名又は名称】岡島 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100192614
【弁理士】
【氏名又は名称】梅本 幸作
(72)【発明者】
【氏名】谷口 和成
(72)【発明者】
【氏名】古野 貴広
(72)【発明者】
【氏名】河原 寛之
【審査官】 北村 一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−031085(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第102759233(CN,A)
【文献】 特開平11−294620(JP,A)
【文献】 特開平02−129474(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/06−31/11
F16K 27/00−27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スリーブのスリーブ孔に摺動自在に嵌挿されたスプールにより油圧供給口を形成する調圧部と、前記調圧部に一体的に取り付けられた電磁部とを有する電磁比例弁において、
前記調圧部は、
前記スリーブの端部の外周面に形成された断面凹状溝と、
前記断面凹状溝に形成された回転規制部と、
前記スリーブの端部に形成され前記スリーブ孔に連通し半径方向に指向する切欠き部と、
を備え、
前記電磁部は、
前記スリーブの端面に係合する大径部面及び該大径部面に形成され前記スリーブ孔に挿嵌される突起部とを有するストッパと、
前記ストッパの前記突起部端面に形成され半径方向に指向する切欠き部と、
前記断面凹状溝に挿嵌される断面皿状のフランジと、
前記フランジに形成されたU字状の開口部と、
前記開口部の先端に形成された切欠き部と、
前記開口部の円弧面に形成した回転規制部と、
前記フランジの外周面に形成されて前記電磁部のコネクタを係着し、該コネクタを所定位置に固定する位相固定部と、を備え、
前記フランジを前記スリーブの断面凹状溝に挿嵌し、前記フランジ及び前記スリーブの前記回転規制部を係合させて該フランジ及び該スリーブを一体にして前記調圧部を形成し、
前記電磁部の前記ストッパの突起部を前記調圧部の前記スリーブ孔に係合すると共に、該フランジの外周面を前記電磁部のボディの内周面に挿嵌して、加締め固定により該ボディの外縁を前記フランジの傾斜面に圧着形成することを特徴とする電磁比例弁のスリーブ固定方法。
【請求項2】
請求項1の電磁比例弁のスリーブ固定方法において、前記調圧部及び前記電磁部は略水平状態に設置された状態において、前記スリーブの前記切欠き部及び前記ストッパの前記切欠き部が天方向に指向し、前記フランジの切欠き部が地方向に指向するように配置することを特徴とする電磁比例弁のスリーブ固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁比例弁に関し、特にスリーブの固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電磁比例弁は、スリーブの加工法を改善しバー材からの加工を可能とするため、スリーブの固定方法を工夫した事例として特許文献1がある。特許文献1に記載されたスリーブには拡径部がなく、第1方向(縦方向)は径が長く、第2方向(横方向)には径が短い形状の切欠き部を形成し、直接ソレノイドケースに挿入後90度ひねり嵌合させ、ケース内のモールド成形体に形成されたスリーブ切欠き部と同形状の凹部に嵌合することにより、回転位置決めを行っている。その後、内部部品を介して、後方から押さえつけ加締めを行うことで、油圧部と電磁部を固定している(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、鍔部の端面に一端が鍔部の外周面に開口し、他端がスリーブの中央穴に連通した連通溝を鍔部の周方向に延設して中央穴を外部に連通する呼吸路を形成する。スリーブ基端の鍔部の端面に呼吸路を形成する連通溝を鍔部の周方向に延設することで、スリーブの中央穴を外部に連通する長さ寸法を有した油の供給路を形成することができる(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2010/024280
【特許文献2】特許第5203916
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の構造では、スリーブ挿入後90度回転させる必要があり、組付時に手間がかかる。また、スリーブの加工において,二平面を作製していることから、加工に時間がかかり、コストアップとなる。
特許文献2では、スリーブの端面に連通溝を加工する工程が必要となるため、コストアップとなる。また、拡径部があるためバー材からの加工に比べ加工工程が長くなる。
本発明は係る課題を解決するためになされたもので、スリーブと、該スリーブの拡径部を別部品としたフランジの2部品を組み付け、ボディ加締工程で同時に固定する構造にして、コストの削減を可能にした電磁比例弁のスリーブ固定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために本発明の請求項1の電磁比例弁のスリーブ固定方法にあっては、スリーブのスリーブ孔に摺動自在に嵌挿されたスプールにより油圧供給口を形成する調圧部と、前記調圧部に一体的に取り付けられた電磁部とを有する電磁比例弁において、
前記調圧部は、
前記スリーブの端部の外周面に形成された断面凹状溝と、
前記断面凹状溝に形成された回転規制部と、
前記スリーブの端部に形成され前記スリーブ孔に連通し半径方向に指向する切欠き部と、
を備え、
前記電磁部は、
前記スリーブの端面に係合する大径部面及び該大径部面に形成され前記スリーブ孔に挿嵌される突起部とを有するストッパと、
前記ストッパの前記突起部端面に形成され半径方向に指向する切欠き部と、
前記断面凹状溝に挿嵌される断面皿状のフランジと、
前記フランジに形成されたU字状の開口部と、
前記開口部の先端に形成された切欠き部と、
前記開口部の円弧面に形成した回転規制部と、
前記フランジの外周面に形成されて前記電磁部のコネクタを係着し、該コネクタを所定位置に固定する位相固定部と、を備え、
前記フランジを前記スリーブの断面凹状溝に挿嵌し、前記フランジ及び前記スリーブの前記回転規制部を係合させて該フランジ及び該スリーブを一体にして前記調圧部を形成し、
前記電磁部の前記ストッパの突起部を前記調圧部のスリーブ孔に係合すると共に、該フランジの外周面を前記電磁部のボディの内周面に挿嵌し、該フランジ位相固定部と前記電磁部コネクタとを係着して、加締め固定により該ボディの外縁を前記フランジの傾斜面に圧着形成することを特徴とする。
【0007】
さらに、請求項2の電磁比例弁のスリーブ固定方法にあっては、前記調圧部及び前記電磁部は略水平状態に設置された状態において、前記スリーブの前記切欠き部及び前記ストッパの前記切欠き部が天方向に指向し、前記フランジの切欠き部が地方向に指向するように配置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、スリーブとストッパを組付ける際の90度回転やスリーブの二平加工をなくすことができ、手間や加工時間の短縮につながり、コスト削減が可能となる。
また、フランジとスリーブ端面、ストッパを組み合わせることで呼吸路を形成することにより、スリーブ端面の溝加工が不要となりコスト削減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の製造方法に係る電磁比例弁10の略縦断面図である。
図2図1のフランジとスリーブとの関係を示す調圧部の斜視図で、(イ)はスリーブとフランジを別体に状態を示し、(ロ)はスリーブとフランジが一体になった状態を示す。
図3図1に示すフランジの斜視図で、(イ)は表面を示し、(ロ)は裏面を示す。
図4図1に示すフランジにスリーブが挿嵌された詳細図で、(イ)は加締め前の状態を示し、(ロ)は加締め後の状態を示す断面図である。
図5図1のV−V線の断面図である。
図6図1のVI−VI線の断面図である。
図7図6のVII−VII線の断面図である。
図8】スリーブの斜視図である。
図9】ストッパの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の電磁比例弁のスリーブ固定法につき好適な実施の形態を挙げ、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
図1に示すように、電磁比例弁10は電磁部11、調圧部12から構成され、該電磁部11、該調圧部12は共にフランジ13により加締め固定されており、調圧部12は電磁部11の励磁に応答して軸方向(図1で横方向)に移動するようになっている。電磁部11で発生した電磁力をプッシャ17を介して調圧部12のスプール23に伝達し、該スプール23のストローク位置によって油圧を制御するバルブである。
【0012】
電磁部11は磁気回路を構成するストッパ16、プランジャ14、ボディ15、プランジャ14に発生した電磁力をスプール23に伝達するプッシャ17及び磁界を発生させるコイル18で構成されている。ピン19の両端はピンボディ圧入部15b及びピンストッパ圧入部16aに圧入固定されており、該ピン19の外径とプランジャ14の内径が摺動するようになっている。
なお、電磁比例弁10の電磁部11、調圧部12の構造は、公知であるため詳細な説明は省略する。
【0013】
図2(イ)はフランジ13とスリーブ21との概略図を示し、図2(ロ)はフランジ13とスリーブ21とを組付けた状態を示す概略図である。
さらに、図2に示すようにフランジ13、スリーブ21には、該フランジ13及び該スリーブ21を組付け後、周方向の位相決めを行うための回転規制部24、25が設けられて位相固定を行っている。
また、フランジ13が係合するスリーブ21の端部には油を電磁部11内に導く切欠き部37(図8参照)が半径方向に指向して形成されている。
図3図5に示すように、回転規制部24はフランジ13において開口部30の円弧部の軸心方向に指向して突起部26(図2(イ)、図3及び図5参照)が形成されている。
図5に示すように、回転規制部25はスリーブ21の外周に形成された断面凹状溝28の周方向の一箇所に軸心方向に指向して凹部29が形成されている。なお、突起部26、凹部29は断面山形状に形成されているが、他の形状、例えば断面円錐形状でもよい。
【0014】
図3(イ)はフランジ13の表面を表し、図3(ロ)は裏面を表す概略構造の斜視図である。
フランジ13は図1図4に示すように断面が皿状に形成されており、外径(外周面)13aが図1に示すストッパ16の外径に一致すると共に、該フランジ13の外径(外周面)13aがボディ15の内径(内周面)15aに一致するように形成されている。
また、フランジ13は周囲に傾斜面13bと該傾斜面13bに接続して円板状の平面13cを備えて皿状に形成され、表面及び裏面が一様の皿状に形成されている。
【0015】
フランジ13の平面13cには、図4に示すようにスリーブ21の断面凹状溝28に嵌挿する開口部30(図3参照)が形成されている。開口部30は図3に示すようにU字状に形成されており、該開口部30の幅Aの内側面30aは断面凹状溝28の下面32(図4で横面)に嵌挿されるようになっている。
開口部30の両端面は外径13aに指向して末広状に形成される切欠き部30cが形成され、フランジ13をスリーブ21の断面凹状溝28に挿嵌する際に容易に導入しやすいようになっている。
さらに、フランジ13の内側面30aをスリーブ21の断面凹状溝28に挿嵌し、該断面凹状溝28の下面32に接触させて該フランジ13とボディ16とを加締め固定する際に、該フランジ13の下面に設けた突起部34とストッパ16間で加締代Tが形成されている。
図3に示す参照符号35はフランジ13の外径部に形成された位相固定部を表し、該位相固定部35はフランジ13の外径部を面取加工している。位相固定部35は図1及び図5に示すように該位相固定部35にコネクタ20が取り付けられ、電磁部11が形成されている。
【0016】
また、図4(イ)、(ロ)に示すように、フランジ13、ストッパ16及びスリーブ21により囲繞される36は油の供給路が形成されるので、スリーブ21に形成される油の供給路の端面加工が不要となりコスト削減が可能となる。
さらに、プランジャ14のストロークにより外部から流入する油量が電磁部11の内部まで吸い上げられないようにすることができるので、異物の悪影響を防ぐことができる。
【0017】
本発明の実施の形態に係る電磁比例弁スリーブ固定法に係る電磁比例弁10は、基本的には、調圧部12においてスリーブ21と、該スリーブ21に係合するフランジ13は個別に該フランジ13及びスリーブ21が係合できるように形成されている。
すなわち、フランジ13は図3(イ)、(ロ)の形状に形成されている。一方、スリーブ21は図4に示すように、該スリーブ21の端部(図4で下端部)に形成する断面凹状溝27にフランジ13の開口部30を挿嵌する。このため、図5に示すように、フランジ13の突起部26はスリーブ21の凹部29に挿嵌され、図2(ロ)及び図5に示すように、フランジ13、スリーブ21は回転規制部24,25によって周方向位相の位置決めを行う。
さらに、フランジ13に形成した位相固定部35にコネクタ20が係合されることにより、フランジ13とコネクタ20との位相を固定することができる。
【0018】
次いで、フランジ13の外周面13aをボディ15の内周面15aに挿嵌した後に、加締め加工によりボディ15の鍔15bをフランジ13の傾斜面13bに圧着させている。
【0019】
一方、本発明の電磁比例弁10においては、フランジ13と係合するスリーブ21の端部近傍には、図7に示すように該スリーブ21に内孔に連通する切欠き部37を半径方向に形成している。さらに、図9に示すようにストッパ16に切欠き部38を形成している。
次いで、電磁比例弁10を略水平方向に配置する共に、図5に示すようにフランジ13の開口部30の切欠き部30cが地方向、該開口部30の奥部が天方向になるよう設置することにより、フランジ13の内周面13b(図4参照)、ストッパ16の切欠き部38(図9参照)、スリーブ21の切欠き部37により形成される油の供給路36が長くなってプランジャ14のストロークにより外部から入る油量がソレノイド内部まで吸い上げないので異物の悪影響を無くすことができる。
本実施例では、異物が電磁弁10に侵入するのを防ぐために、プランジャ14のストロークによる容積変化よりも油の供給路36の容積を大きくしている。
【符号の説明】
【0020】
10 電磁比例弁 11 電磁部
12 調圧部 13 フランジ
14 プランジャ 15 ボディ
16 ストッパ 17 プッシャ
18 コイル 19 ピン
20 コネクタ 21 スリーブ
23 スプール 24、25 回転規制部
26、34 突起部 28 断面凹状溝
29 凹部 30 開口部
32 下面 33 平面
35 位相固定部 36 空間部
37、38、30c 切欠き部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9