【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 発行日 平成27年8月2日 刊行物 IEEE 58th International Midwest Symposium on Circuits and Systems、第41〜45頁、IEEE 〔刊行物等〕 開催日 平成27年8月4日 集会名、開催場所 ・MWSCAS 2015 International Midwest Symposium on Circuits and Systems ・コロラド州立大学ローリースチューデントセンタープラザ
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1の実施形態>
本発明の知見は、例示として示された添付図面を参照して以下の詳細な記述を考慮することによって容易に理解できる。引き続いて、添付図面を参照しながら、本発明のA/D変換器、イメージセンサデバイス、及びアナログ信号からディジタル信号を生成する方法の実施の形態を説明する。可能な場合には、同一の部分には同一の符号を付する。
【0018】
図1は、第1の実施形態に係るA/D変換器11の回路図である。A/D変換器11は、いわゆるフォールディング積分型のA/D変換である第1のA/D変換動作と、巡回型A/D変換である第2のA/D変換動作を、同一の回路構成を用いて実施する。A/D変換器11は、当該A/D変換器11が含むスイッチの時系列の制御パターンの変更により、第1のA/D変換動作及び第2のA/D変換動作を実現する。
【0019】
このA/D変換器11は、ゲインステージ15と、A/D変換回路17と、論理回路19と、D/A変換回路21とを備える。また、A/D変換器11は、参照電圧発生回路37及びクロック発生器(クロック発生回路)41を含む。
【0020】
ゲインステージ15は、入力15a、及び出力15bを含む。入力15aは、ディジタル値に変換されるアナログ信号V
INを受ける。出力15bは、第1の演算値V
OP1及び第2の演算値V
OP2を提供する。また、ゲインステージ15は、前段容量部20、シングルエンド型の演算増幅回路23、及びスイッチ回路60を含む。
【0021】
前段容量部20は、第1の容量部としての第1のキャパシタ25、及び第2の容量部としての第2のキャパシタ27を含む。また、ゲインステージ15は、演算増幅回路23の帰還容量としての第3のキャパシタ29を含む。
【0022】
第1のキャパシタ25、第2のキャパシタ27、及び第3のキャパシタ29は、各種の信号値の格納及び演算のための容量である。ここで、第3のキャパシタ29の容量C
2は、第1のキャパシタ25の容量C
1aより大きい。また、第3のキャパシタ29の容量C
2は、第2のキャパシタ27の容量C
1bより大きい。これにより、フォールディング積分型A/D変換である第1のA/D変換動作において入力されるアナログ信号V
OP1は、その容量比(C
1a/C
2,C
1b/C
2)に従って減衰されて積分される。従って、フォールディング積分型A/D変換において出力されるアナログ信号V
INの電圧範囲も、第1のキャパシタ25と第2のキャパシタ27との容量比に従って小さくなるので、シングルエンド構成により当該A/D変換器11を構成できる。
【0023】
第3のキャパシタ29の容量は、第1のキャパシタ25の容量又は第2のキャパシタ27の容量の2倍である。即ち、C
1a=1/2×C
2及びC
1b=1/2×C
2といった関係が成立する。このような第1のキャパシタ25及び第2のキャパシタ27を含むA/D変換器11によれば、フォールディング積分型A/D変換において入力されるアナログ信号V
INは、1/2に減衰されてサンプリング及び積分される。従って、フォールディング積分型A/D変換において出力されるアナログ信号である第1の演算値V
OP1の電圧範囲も、第1のキャパシタ25と第2のキャパシタ27との容量比に従って1/2となる。従って、巡回型A/D変換である第2のA/D変換動作において、シングルエンド構成のA/D変換器に適した入力電圧が提供される。
【0024】
演算増幅回路23は、第1の入力23a、出力23b、及び第2の入力23cを含む。第1の入力23aは、反転入力端子である。第2の入力23cは、非反転入力端子である。出力23bは、出力端子である。従って、出力23bの信号の位相は、第1の入力23aに与えられた信号の位相と反転する。第2の入力23cは、基準電位線L
COMに接続される。第2の入力23cは、基準電位V
COMを受ける。
【0025】
ゲインステージ15は、複数のスイッチ43,47,49,51,53,55,57,59,61,63,67を含む。
図1に示されるスイッチ43,47,49,51,53,55,57,59,61,63,67の配置は一例である。これらのスイッチ43,47,49,51,53,55,57,59,61,63,67の制御は、クロック発生器41によって行われる。スイッチ回路60は、スイッチ47,49,55,57を含む。スイッチ回路60は、クロック信号(φ
11,φ
21,φ
12,φ
22)を利用して、演算増幅回路23の第1の入力23aに第1のキャパシタ25及び第2のキャパシタ27の一方を接続させ、基準電位線L
COMに第1のキャパシタ25及び第2のキャパシタ27の他方を接続させる。具体的には、スイッチ47は、基準電位線L
COMに第1のキャパシタ25を接続させる。スイッチ49は、演算増幅回路23の第1の入力23aに第1のキャパシタ25を接続させる。スイッチ55は、基準電位線L
COMに第2のキャパシタ27を接続させる。スイッチ57は、演算増幅回路23の第1の入力23aに第2のキャパシタ27を接続させる。
【0026】
基準電圧源33,35は、参照電圧発生回路37へ第1の基準参照電圧V
RH及び第2の基準参照電圧V
RLを供給する。
【0027】
参照電圧発生回路37は、第1の基準参照電圧V
RH及び第2の基準参照電圧V
RLの少なくとも一方に基づき、第1の変換参照電圧V
RCH及び第2の変換参照電圧V
RCLの少なくとも一方を生成する。
【0028】
A/D変換回路17は、ゲインステージ15の出力15bから出力される第1の演算値V
OP1又は第2の演算値V
OP2に基づき、参照電圧発生回路37から提供される変換参照電圧V
RCH,V
RCLに応じたディジタル信号Dを生成する。例えば、第1のA/D変換動作では、第1の変換参照電圧V
RCHとして電圧V
RC1Hが参照電圧発生回路37からA/D変換回路17へ提供される。また、第2のA/D変換動作では、第1の変換参照電圧V
RCHとして電圧V
RC2Hが参照電圧発生回路37からからA/D変換回路17へ供給され、第2の変換参照電圧V
RCLとして電圧V
RC2Lが参照電圧発生回路37からからA/D変換回路17へ供給される。
【0029】
論理回路19は、ディジタル信号Dに応じた制御信号V
CONT(例えばφ
DH,φ
DL,φ
DS)を生成する。
【0030】
D/A変換回路21は、第1の出力21a、第2の出力21b、及びスイッチ回路31を含む。D/A変換回路21は、第1の基準参照電圧V
RH及び第2の基準参照電圧V
RLの少なくともいずれか一方を、制御信号V
CONTに基づくスイッチ回路31の動作により、第1の出力21a及び第2の出力21bの少なくとも一方を介してゲインステージ15に提供する。
【0031】
ここで、スイッチ回路31は、スイッチ31a,31bを動作させることにより第1の基準参照電圧V
RH及び第2の基準参照電圧V
RLをそれぞれ第1の出力21a及び第2の出力21bに供給する。スイッチ回路31は、スイッチ31a,31cを動作させることにより第1の基準参照電圧V
RHを第1の出力21a及び第2の出力21bの両方に供給する。スイッチ回路31は、スイッチ31b,31cを動作させることにより第2の基準参照電圧V
RLを第1の出力21a及び第2の出力21bの両方に供給する。D/A変換回路21の第1の出力21aは、スイッチ63を介して第1のキャパシタ25の一端25aに接続される。D/A変換回路21の第2の出力21bは、スイッチ67を介して第2のキャパシタ27の一端27aに接続される。スイッチ31a,31b,31cの開閉は、それぞれ、論理回路19からの制御信号φ
DH,φ
DS,φ
DLによって制御されるので、ディジタル信号B
1,B
0の値は、制御信号φ
DH,φ
DS,φ
DLのうちのいずれがアクティブになるかを決定する。
【0032】
ゲインステージ15は、
図2に示されるように、第1の格納動作ST1a及び第1の演算動作ST1bを並行して行う第1の動作ST1と、第2の格納動作ST2a及び第2の演算動作ST2bを並行して行う第2の動作ST2と、を交互に行う。また、ゲインステージ15は、第3の格納動作ST3aを行う第3の動作ST3と、第4の演算動作ST4bを行う第4の動作ST4と、を交互に行う。
【0033】
第1の演算動作ST1b及び第2の演算動作ST2bでは、演算増幅回路23、第1のキャパシタ25、第2のキャパシタ27、及び第3のキャパシタ29により第1の演算値V
OP1を生成する。
【0034】
第1の格納動作ST1aでは、第1のキャパシタ25は、ゲインステージ15の入力15aから供給されるアナログ信号V
INを格納する。
【0035】
第2の格納動作ST2aでは、第2のキャパシタ27は、ゲインステージ15の入力15aから供給されるアナログ信号V
INを格納する。
【0036】
第1の演算動作ST1bでは、第2の格納動作ST2aにおいてアナログ信号V
INが第2のキャパシタ27に格納された場合には、第2のキャパシタ27がD/A変換回路21の第2の出力21bと演算増幅回路23の第1の入力23aとの間に接続される。また、第1の演算動作ST1bでは、第3のキャパシタ29が演算増幅回路23の出力23bと演算増幅回路23の第1の入力23aとの間に接続される。上述した第2のキャパシタ27、第3のキャパシタ29と、演算増幅回路23との接続により、第1の演算値V
OP1がゲインステージ15の出力15bに生成される。
【0037】
第2の演算動作ST2bでは、第1のキャパシタ25がD/A変換回路21の第1の出力21aと演算増幅回路23の第1の入力23aとの間に接続される。また、第2の演算動作ST2bでは、第1の演算動作ST1bと同様に、第3のキャパシタ29が演算増幅回路23の出力23bと演算増幅回路23の第1の入力23aとの間に接続される。上述した第1のキャパシタ25、第3のキャパシタ29と、演算増幅回路23との接続により、第1の演算値V
OP1がゲインステージ15の出力15bに生成される。
【0038】
ゲインステージ15は、第3の格納動作ST3aを行う第3の動作ST3と、第4の演算動作ST4bを行う第4の動作ST4と、を交互に行う。
【0039】
第3の格納動作ST3aでは、第1の演算値V
OP1又は第2の演算値V
OP2を第1のキャパシタ25及び第2のキャパシタ27に格納する。第4の演算動作ST4bでは、演算増幅回路23、第1のキャパシタ25、第2のキャパシタ27、及び第3のキャパシタ29により第2の演算値V
OP2を生成する。すなわち、第4の演算動作ST4bでは、第1のキャパシタ25がD/A変換回路21の第1の出力21aと演算増幅回路23の第1の入力23aとの間に接続され、第2のキャパシタ27がD/A変換回路21の第2の出力21bと演算増幅回路23の第1の入力23aとの間に接続され、第3のキャパシタ29が演算増幅回路23の出力23bと演算増幅回路23の第1の入力23aとの間に接続される。この回路構成により、第2の演算値V
OP2がゲインステージ15の出力15bに生成される。
【0040】
次に、
図2、
図3及び
図4を参照して、A/D変換器11において行われる積分型A/D変換ステップとしての第1のA/D変換動作、及び巡回型A/D変換ステップとしての第2のA/D変換動作について説明する。
【0041】
まず、A/D変換器11における第1のA/D変換動作を説明する。
図2の(a)部に示されるように、第1のA/D変換動作は、第1のキャパシタ25を利用する第1の動作ST1と、第2のキャパシタ27を利用する第2の動作ST2とを含む。すなわち、
図1に示されたA/D変換器11によれば、第1のA/D変換動作に含まれる格納処理と演算処理とが、第1のキャパシタ25及び第2のキャパシタ27によって並列処理される。従って、1クロックあたりの処理数を増加させ得るので、A/D変換器11における積分動作を高速化させることができる。
【0042】
以下に説明する各ステップにおける格納動作及び演算動作は、スイッチ回路31及びスイッチ43,47,49,51,53,55,57,59,61,63,67により実現される。
【0043】
まず、A/D変換器11は、第1の初期格納ステップSTf1を行う。この動作では、クロック信号(φ
11=1,φ
21=0,φ
12=1,φ
22=0,φ
3=0,φ
R=1,φ
S=1,φ
Sl1=1,φ
Sl2=0,φ
P1=0,φ
N1=1)により、スイッチ43,47,55,57,59,67は導通とされ、スイッチ49,51,57,61,63は非導通とされる。
【0044】
上記したクロック信号によれば、ゲインステージ15は、
図3の(a)部に示されるような回路を構成する。具体的には、第1のキャパシタ25は、ゲインステージ15の入力15aと基準電位線L
COMとの間に接続される。また、演算増幅回路23の出力23bは、演算増幅回路23の第1の入力23aに接続される。この回路構成によれば、ゲインステージ15の入力15aを介して受けたアナログ信号V
INが第1のキャパシタ25に格納される。また、第2のキャパシタ27は、D/A変換回路21の第2の出力21bと基準電位線L
COMとの間に接続される。この回路構成によれば、D/A変換回路21の第2の出力21bから供給された第2の基準参照電圧V
RLが第2のキャパシタ27に格納される。また、第3のキャパシタ29は、演算増幅回路23の出力23bと演算増幅回路23の第1の入力23aとの間に接続される。
【0045】
第1の初期格納ステップSTf1において第1のキャパシタ25(容量C
1a)に蓄積される電荷(Q
1a)は、式(1)により示される。
【数1】
【0046】
続いて、A/D変換器11は、第2のステップとしての第2の動作ST2を行う。第2の動作ST2は、第2の演算ステップとしての第2の演算動作ST2b、及び第2の格納ステップとしての第2の格納動作ST2aを含む。この第2のステップでは、クロック信号(φ
11=0,φ
21=1,φ
12=1,φ
22=0,φ
3=0,φ
R=0,φ
S=1,φ
Sl1=0,φ
Sl2=1,φ
P1=1,φ
N1=0)により、スイッチ43,49,55,61,63は導通とされ、スイッチ47,51,53,57,59,67は非導通とされる。
【0047】
上記したクロック信号によれば、ゲインステージ15は、
図3の(b)部に示されるような回路を構成する。具体的には、第1のキャパシタ25は、D/A変換回路21の第1の出力21aと演算増幅回路23の第1の入力23aとの間に接続される。第3のキャパシタ29は、演算増幅回路23の出力23bと演算増幅回路23の第1の入力23aとの間に接続される。この回路構成によれば、第1のキャパシタ25に格納されたアナログ信号V
INに対応する第1の演算値V
OP1がゲインステージ15の出力15bに生成される。すなわち、第2の演算ステップとしての第2の演算動作ST2bが行われる。
【0048】
第1の初期格納ステップSTf1に続いて行われる第2の演算動作ST2bにおいて、D/A変換回路21は、第2の基準参照電圧V
RLを第1の出力21a及びスイッチ63を介して第1のキャパシタ25の一端25aに提供する。なお、このような動作は、第1の初期格納動作STf1に続いて行われる第2の演算動作ST2bのみに行われる。2回目以降の演算動作では、A/D変換回路17が生成するディジタル値に基づいてD/A変換回路21が動作する。この動作については後述する。
【0049】
そして、第2の演算動作ST2bにおいて生成される第1の演算値V
OP1は、式(2A)により示され、C
1aとC
2の関係が式(2B)とすると、式(2C)により示される。
【数2】
【0050】
第2のステップにおいて、第2のキャパシタ27は、ゲインステージ15の入力15aと基準電位線L
COMとの間に接続される。この回路構成によれば、ゲインステージ15の入力15aを介して受けたアナログ信号V
INが第2のキャパシタ27に格納される。すなわち、第2の格納ステップとしての第2の格納動作ST2aが行われる。第2のキャパシタ27(容量C
1b)に蓄積される電荷(Q
1b)は、式(3)により示される。
【数3】
【0051】
続いて、A/D変換器11は、ディジタル信号D(=B
1)の値に従って、第1のステップとしての第1の動作ST1を行う。第1の動作ST1は、第1の演算ステップとしての第1の演算動作ST1b、及び第1の格納ステップとしての第1の格納動作ST1aを含む。この第1のステップでは、クロック信号(φ
11=1,φ
21=0,φ
12=0,φ
22=1,φ
3=0,φ
R=0,φ
S=1,φ
Sl1=1,φ
Sl2=0,φ
P1=0,φ
N1=1)により、スイッチ43,47,57,59,67は導通とされ、スイッチ49,51,53,55,61,63は非導通とされる。
【0052】
上記したクロック信号によれば、ゲインステージ15は、
図3の(c)部に示されるような回路を構成する。具体的には、第1のキャパシタ25は、ゲインステージ15の入力15aと基準電位線L
COMとの間に接続される。この回路構成によれば、ゲインステージ15の入力15aを介して受けたアナログ信号V
INが第1のキャパシタ25に格納される。すなわち、第1の格納ステップとしての第1の格納動作ST1aが行われる。
【0053】
また、第2のキャパシタ27は、D/A変換回路21の第2の出力21bと演算増幅回路23の第1の入力23aとの間に接続される。さらに、第3のキャパシタ29は、演算増幅回路23の出力23bと演算増幅回路23の第1の入力23aとの間に接続される。この回路構成によれば、第2のキャパシタ27に格納されたアナログ信号V
INに対応する第1の演算値V
OP1がゲインステージ15の出力15bに生成される。すなわち、第1の演算ステップとしての第1の演算動作ST1bが行われる。
【0054】
第1の演算動作ST1bでは、A/D変換回路17は、1つのコンパレータ17aを用いてディジタル信号Dを生成する。この場合には、ディジタル信号Dは、1ビット(B
1)のみであり、2値を表せる。コンパレータ17aにおいて基準として用いられる信号は、変換参照電圧V
RC1Hである。コンパレータ17aは、以下のように動作する。
V
OP1,V
OP2>V
RC1Hであるとき B
1=1
V
OP1,V
OP2≦V
RC1Hであるとき B
1=0
【0055】
D/A変換回路21は、コンパレータ17aからのディジタル信号B
1に基づく制御信号V
CONTに応じて、以下のような制御を行う。
B
1=1であるとき:V
DA1=V
RH,V
DA2=V
RL
B
1=0であるとき:V
DA1=V
DA2=V
RL
【0056】
第1の演算動作ST1bにおいて生成される第1の演算値V
OP1は、式(4A)により示され、C
1bとC
2の関係が式(4B)とすると、式(4C)により示される。式(4C)におけるΔV
Rは下記式(4D)により示される。
【数4】
【0057】
続いて、ディジタル信号D(2)の値に応じて、A/D変換器11は、
図3の(b)部に示される、第2のステップとしての第2の動作ST2を行う。すなわち、A/D変換器11は、第1のステップ及び第2のステップを所定回数繰り返して行う積分型A/D変換ステップを実施する。具体的に、積分型A/D変換ステップでは、第1の初期格納動作STf1の後に、第2のステップが実行される。この第2のステップでは、第2の演算動作ST2bと同時に第2の格納動作ST2aが実行される。第2のステップの後に、第1のステップが実行される。この第1のステップでは、第1の演算動作ST1bと同時に第1の格納動作ST1aが実行される。そして再び、第2のステップが実行される。この第2のステップでは、第2の演算動作ST2bと同時に第2の格納動作ST2aが実行される。このように、積分型A/D変換ステップでは、第1のステップST1と第2のステップST2とを繰り返す。
【0058】
第1のA/D変換動作において、第1の演算ステップ及び第1の格納ステップをM回繰り返して、サンプリング及び積分を行ったときの第1の演算値V
OP1は、式(5A)により示される。式(5A)におけるΔV
Rは下記式(5B)により示される。
【数5】
【0059】
なお、以上の説明は、第1の初期格納動作STf1に続いて行われる第2の演算動作における参照電圧V
RIとして第2の基準参照電圧V
RLを採用した場合の例である。これに対して、第1の初期格納動作STf1に続いて行われる第2の演算動作における参照電圧V
RIとして第1の基準参照電圧V
RHを採用してもよい。
【0060】
次に、
図2及び
図4を参照して、A/D変換器11における、巡回型A/D変換ステップとしての第2のA/D変換動作について説明する。
図2の(b)部に示されるように、第2のA/D変換動作は、第1のキャパシタ25及び第2のキャパシタ27を利用する第3のステップとしての第3の動作ST3、及び第4のステップとしての第4の動作ST4を含む。
【0061】
まず、A/D変換器11は、第3のステップとしての第3の動作ST3を行う。第3の動作ST3は、第2の初期格納ステップSTf2としての第3の格納動作ST3aを含む。この第3のステップでは、クロック信号(φ
11=1,φ
21=0,φ
12=1,φ
22=0,φ
3=1,φ
R=0,φ
S=0,φ
Sl1=1,φ
Sl2=1,φ
P1=0,φ
N1=0)により、スイッチ47,51,55,59,61は導通とされ、スイッチ43,49,53,57,63,67は非導通とされる。
【0062】
上記したクロック信号によれば、ゲインステージ15は、
図4の(a)部に示されるような回路を構成する。具体的には、第1のキャパシタ25は、演算増幅回路23の出力23bと基準電位線L
COMとの間に接続される。また、第2のキャパシタ27は、演算増幅回路23の出力23bと基準電位線L
COMとの間に接続される。第3のキャパシタ29は、演算増幅回路23の出力23bと演算増幅回路23の第1の入力23aとの間に接続される。第3のキャパシタ29の一端29aは、スイッチ51,59を介して第1のキャパシタ25の一端25aに接続される。第3のキャパシタ29の一端29aは、スイッチ51,61を介して第2のキャパシタ27の一端27aにも接続される。この回路構成によれば、第3のキャパシタ29に蓄積されていた残差アナログ信号である第1の演算値V
OP1が第1のキャパシタ25及び第2のキャパシタ27に格納される。すなわち、第3の格納ステップとしての第3の格納動作ST3aが行われる。
【0063】
また、第1の演算値V
OP1がゲインステージ15の出力15bを介してコンパレータ17a,17bに提供される。コンパレータ17a,17bは、提供された第1の演算値V
OP1に基づき、ディジタル信号B
1,B
0を生成する。ディジタル値B
1,B
0の生成については後述する。
【0064】
続いて、A/D変換器11は、第3の動作ST3に引き続き、ディジタル信号D(=B
1+B
0)の値に従って、第4のステップとしての第4の動作ST4を行う。第4の動作ST4は、第4の演算ステップとしての第4の演算動作ST4bを含む。この第4のステップでは、クロック信号(φ
11=0,φ
21=1,φ
12=0,φ
22=1,φ
3=0,φ
R=0,φ
S=0,φ
Sl1=0,φ
Sl2=0,φ
P=1,φ
N=1)により、スイッチ49,57,63,67は導通とされ、スイッチ43,47,51,53,55,59,61は非導通とされる。
【0065】
上記したクロック信号によれば、第1のキャパシタ25、第2のキャパシタ27及び第3のキャパシタ29と、演算増幅回路23とは、
図4の(b)部に示されるような回路を構成する。具体的には、第1のキャパシタ25は、D/A変換回路21の第1の出力21aと演算増幅回路23の第1の入力23aとの間に接続される。第2のキャパシタ27は、D/A変換回路21の第2の出力21bと演算増幅回路23の第1の入力23aとの間に接続される。第3のキャパシタ29は、演算増幅回路23の出力23bと演算増幅回路23の第1の入力23aとの間に接続される。この回路構成によれば、演算増幅回路23、第1のキャパシタ25、第2のキャパシタ27及び第3のキャパシタ29により第2の演算値V
OP2が生成される。すなわち、第4の演算ステップとしての第4の演算動作ST4bが行われる。
【0066】
ここで、D/A変換回路21の第1の出力21a及び第2の出力21bには、コンパレータ17a,17bからのディジタル信号D(=B
1+B
0)に従ってスイッチ回路31が制御され、第1の基準参照電圧V
RH又は第2の基準参照電圧V
RLが提供される。
【0067】
コンパレータ17a,17bは、A/D変換回路17に含まれる。コンパレータ17aは、入力アナログ信号(例えば、第1の演算値V
OP1又は第2の演算値V
OP2)を第1の変換参照電圧V
RC2Hと比較することにより、比較結果信号B
1を提供する。また、コンパレータ17bは、入力アナログ信号を第2の変換参照電圧V
RC2Lと比較することにより、比較結果信号B
0を提供する。変換参照電圧V
RC2H,V
RC2Lは、参照電圧発生回路37から提供される。ディジタル信号Dは、A/D変換値を示す。ディジタル信号Dは、例えば2ビット(B
0,B
1)を有しており、各ビット(B
0,B
1)は、「1」又は「0」を取り得る。ディジタル信号Dは、(D=B
0+B
1)と表される。A/D変換器11では、ビット(B
0,B
1)の組み合わせにより1回の積分動作又は一巡回ごとのディジタル値は第1の値(D=0)、第2の値(D=1)及び第3の値(D=2)を有する。すなわち、コンパレータ17a,17bは、以下のように動作する。
V
OP1,V
OP2>V
RC2Hのとき D=2(B
1=1,B
0=1)
V
RC2L<V
OP1,V
OP2≦V
RC2Hのとき D=1(B
1=0,B
0=1)
V
OP1,V
OP2≦V
RC2Lのとき D=0(B
1=0,B
0=0)
【0068】
ディジタル信号が「D=2」のときには、D/A変換回路21の第1の出力21a及び第2の出力21bから第1の基準参照電圧V
RHが提供されるように制御されながら
図4の(b)部に示された動作が行われる。一方、ディジタル信号が「D=0」のときには、D/A変換回路21の第1の出力21a及び第2の出力21bから第2の基準参照電圧V
RLが提供されるように制御されながら
図4の(b)部に示された動作が行われる。さらに、ディジタル信号が「D=1」のときには、D/A変換回路21の第1の出力21a及び第2の出力21bからそれぞれ第1の基準参照電圧V
RH及び第2の基準参照電圧V
RLが提供されるように制御されながら
図4の(b)部に示された動作が行われる。
【0069】
第1のA/D変換動作において1個のコンパレータ17aが用いられるとき、参照電圧発生回路37は、第1の基準参照電圧V
RH及び第2の基準参照電圧V
RLに基づき、電圧V
RC1Hを生成する。また、第2のA/D変換動作において2個のコンパレータ17a,17bが用いられるとき、参照電圧発生回路37は、第1の基準参照電圧V
RH及び第2の基準参照電圧V
RLに基づき、電圧V
RC2H,V
RC2Lを生成する。参照電圧発生回路37は、第1の基準参照電圧V
RH及び第2の基準参照電圧V
RLと、第1のA/D変換動作における第1の変換参照電圧V
RC1Hと、第2のA/D変換動作における第1の変換参照電圧V
RC2H及び第2の変換参照電圧V
RC2Lと、の関係が以下に示されるように動作する。このように第1のA/D変換動作における第1の変換参照電圧V
RC1Hと、第2のA/D変換動作における第1の変換参照電圧V
RC2H及び第2の変換参照電圧V
RC2Lが生成されるので、第1のA/D変換動作及び第2のA/D変換動作が適切に実施される。
V
RC1H=(V
RH+V
RL)/2
(V
RH+V
RL)/2<V
RC2H<V
RH
V
RL<V
RC2L<(V
RH+V
RL)/2
【0070】
2個のコンパレータ17a,17bが用いられるとき、D/A変換回路21のスイッチ回路31は、制御信号V
CONTに応答して、第1の出力21aに第1の基準参照電圧V
RH及び第2の基準参照電圧V
RLのいずれかを提供する。また、スイッチ回路31は、制御信号V
CONTに応答して、第2の出力21bに第1の基準参照電圧V
RH及び第2の基準参照電圧V
RLのいずれかを提供する。
【0071】
第1の出力21aに提供される電圧をV
DA1とし、第2の出力21bに提供される電圧をV
DA2とすると、D/A変換回路21は、論理回路19からの制御信号V
CONTに応答して、例えば、下記のような制御を行う。
第1の条件(D=2)が満たされるとき:V
DA1=V
DA2=V
RH
第2の条件(D=1)が満たされるとき:V
DA1=V
RH,V
DA2=V
RL
第3の条件(D=0)が満たされるとき:V
DA1=V
DA2=V
RL
【0072】
続いて、ゲインステージ15は、第4の演算動作ST4bに引き続き、
図4の(a)部に示される、第3の格納ステップとしての第3の格納動作ST3aを行う。第3の格納動作ST3aでは、第4の演算動作ST4bにおける第2の演算値V
OP2を第1のキャパシタ25及び第2のキャパシタ27に格納する。
【0073】
そして、ゲインステージ15は、巡回型A/D変換動作として、第3の動作ST3及び第4の動作ST4を所定回数繰り返して行う。
【0074】
このA/D変換器11によれば、第1のキャパシタ25及び第2のキャパシタ27により、アナログ信号V
INを交互にサンプリング(格納)することで、同じA/D変換時間に対して積分動作の回数を約2倍まで高め、巡回型A/D変換動作でゲインを2倍にすることで、より高速且つ低ノイズのA/D変換動作を実現できる。
【0075】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態に係るA/D変換器、及び当該A/D変換器を用いたアナログ信号からディジタル信号を生成する方法について説明する。
【0076】
図5は、第2の実施形態に係るA/D変換器11Aの回路図である。A/D変換器11Aは、第1の実施形態に係るA/D変換器11と同様に、いわゆるフォールディング積分型のA/D変換である第1のA/D変換動作と、巡回型A/D変換である第2のA/D変換動作を、同一の回路構成を用いて実施する。ゲインステージ15Aの前段容量部20Aは、第1のキャパシタ25及び第4のキャパシタ26を含む第1の容量部と、第4のキャパシタ26及び第5のキャパシタ28を含む第2の容量部と、を有する。また、A/D変換器11Aのゲインステージ15Aは、スイッチ67,69,71,73をさらに含む。このような構成を含むゲインステージ15Aによれば、積分型A/D変換動作における格納動作及び演算動作を並列して行うことできる。さらに、ゲインステージ15Aによれば、巡回型A/D変換動作における格納動作及び演算動作を並列して行うことできる。
【0077】
図5に示される追加されたスイッチ67,69,71,73の配置は一例である。これらのスイッチ67,69,71,73の制御は、クロック発生器41によって行われる。スイッチ63は、D/A変換回路21の第1の出力21aに第1のキャパシタ25を接続する。スイッチ67は、D/A変換回路21の第1の出力21aに第2のキャパシタ27を接続する。スイッチ65は、D/A変換回路21の第2の出力21bに第4のキャパシタ26を接続する。スイッチ69は、D/A変換回路21の第2の出力21bに第5のキャパシタ28を接続する。スイッチ71は、第1のキャパシタ25の一端25aを第4のキャパシタ26の一端26aに接続させる。スイッチ73は、第2のキャパシタ27の一端27aを第5のキャパシタ28の一端28aに接続させる。
【0078】
図6の(b)部に示されるように、ゲインステージ15Aによって行われる動作では、第3の動作ST3が第3の格納動作ST3aと並行して行う第3の演算動作ST3bをさらに含み、第4の動作ST4が第4の演算動作ST4bと並行して行う第4の格納動作ST4aをさらに含む。
【0079】
第1の演算動作ST1b及び第2の演算動作ST2bでは、演算増幅回路23、第1のキャパシタ25、第2のキャパシタ27、第3のキャパシタ29により第1の演算値V
OP1を生成する。
【0080】
第1の格納動作ST1aでは、第1のキャパシタ25は、ゲインステージ15Aの入力15aと基準電位線L
COMとの間に接続される。この回路構成によれば、ゲインステージ15Aの入力15aから供給されるアナログ信号V
INは、第1のキャパシタ25に格納される。
【0081】
第1の格納動作ST1aと並行して行われる第1の演算動作ST1bでは、第2のキャパシタ27がD/A変換回路21の第1の出力21aと演算増幅回路23の第1の入力23aとの間に接続される。また、第1の格納動作ST1aでは、第3のキャパシタ29は、演算増幅回路23の出力23bと演算増幅回路23の第1の入力23aに接続される。この回路構成によれば、第1の演算値V
OP1がゲインステージ15Aの出力15bに生成される。
【0082】
第2の格納動作ST2aでは、第2のキャパシタ27は、ゲインステージ15Aの入力15aと基準電位線L
COMとの間に接続される。この回路構成によれば、ゲインステージ15Aの入力15aから供給されるアナログ信号V
INが第2のキャパシタ27に格納される。
【0083】
第2の格納動作ST2aと並行して行われる第2の演算動作ST2bでは、第1のキャパシタ25がD/A変換回路21の第1の出力21aと演算増幅回路23の第1の入力23aとの間に接続される。また、第2の演算動作ST2bでは、第1の演算動作ST1bと同様に、第3のキャパシタ29が演算増幅回路23の出力23bと演算増幅回路23の第1の入力23aとの間に接続される。この回路構成によれば、第1の演算値V
OP1がゲインステージ15Aの出力15bに生成される。
【0084】
第3の格納動作ST3aでは、第1のキャパシタ25が演算増幅回路23の出力23bと基準電位線L
COMとの間に接続される。また、第4のキャパシタ26が演算増幅回路23の出力23bと基準電位線L
COMとの間に接続される。この回路構成によれば、第1の演算値V
OP1又は第2の演算値V
OP2が第1のキャパシタ25及び第4のキャパシタ26に格納される。
【0085】
第3の格納動作ST3aと並行して行われる第3の演算動作ST3bでは、第2のキャパシタ27がD/A変換回路21の第1の出力21aと演算増幅回路23の第1の入力23aとの間に接続される。また、第5のキャパシタ28がD/A変換回路21の第2の出力21bと演算増幅回路23の第1の入力23aとの間に接続される。さらに、第3の演算動作ST3bでは、第3のキャパシタ29が演算増幅回路23の出力23bと演算増幅回路23の第1の入力23aとの間に接続される。この回路構成によれば、第2の演算値V
OP2がゲインステージ15Aの出力15bに生成される。
【0086】
第4の格納動作ST4aでは、第2のキャパシタ27が演算増幅回路23の出力23bと基準電位線L
COMとの間に接続される。また、第5のキャパシタ28が演算増幅回路23の出力23bと基準電位線L
COMとの間に接続される。この回路構成によれば、第2の演算値V
OP2が第1のキャパシタ25及び第4のキャパシタ26に格納される。
【0087】
第4の格納動作ST4aと並行して行われる第4の演算動作ST4bでは、第1のキャパシタ25がD/A変換回路21の第1の出力21aと演算増幅回路23の第1の入力23aとの間に接続される。また、第4のキャパシタ26がD/A変換回路21の第2の出力21bと演算増幅回路23の第1の入力23aとの間に接続される。さらに、第4の演算動作ST4bでは、第3のキャパシタ29が演算増幅回路23の出力23bと演算増幅回路23の第1の入力23aとの間に接続される。この回路構成によれば、第2の演算値V
OP2がゲインステージ15Aの出力15bに生成される。
【0088】
次に、
図7を参照して、A/D変換器11Aにおいて行われる積分型A/D変換ステップとしての第1のA/D変換動作、及び巡回型A/D変換ステップとしての第2のA/D変換動作について説明する。
【0089】
まず、A/D変換器11Aにおける第1のA/D変換動作を説明する。
図6の(a)部は、ゲインステージ15Aにおいて行われる第1のA/D変換動作を示す。以下に説明する各ステップにおける格納動作及び演算動作は、スイッチ43,47,49,51,53,55,57,59,61,63,65,67,69,71,73により実現される。
【0090】
A/D変換器11Aは、第1のステップとしての第1の動作ST1を行う。具体的には、A/D変換器11Aは、第1の初期格納ステップとしての第1の格納動作STf1を行う。ゲインステージ15Aには、クロック信号(φ
11=1,φ
21=0,φ
12=0,φ
22=0,φ
3=0,φ
R=1,φ
S=1,φ
Sl1=1,φ
Sl2=0,φ
P1=0,φ
N1=0,φ
P2=0,φ
N2=0,φ
M1=0,φ
M2=0)が入力される。このクロック信号によれば、スイッチ43,47,53,59が導通とされ、スイッチ49,51,55,57,61,63,65,67,69,71,73が非導通とされる。
【0091】
上記したクロック信号によれば、ゲインステージ15Aは、
図7の(a)部に示されるような回路を構成する。具体的には、第1のキャパシタ25がゲインステージ15Aの入力15aと基準電位線L
COMとの間に接続される。また、演算増幅回路23の出力23bは、演算増幅回路23の第1の入力23aに接続される。この回路構成によれば、ゲインステージ15Aの入力15aを介して受けたアナログ信号V
INが第1のキャパシタ25に格納される。
【0092】
第1の初期格納ステップSTf1において第1の容量部を構成する第1のキャパシタ25(容量C
1aa)に蓄積される電荷(Q
1a)は、式(6)により示される。
【数6】
【0093】
続いて、A/D変換器11Aは、ディジタル信号D(=B
1)の値に従って、第2のステップとしての第2の動作ST2を行う。第2の動作ST2は、第2の演算ステップとしての第2の演算動作ST2b及び第2の格納ステップとしての第2の格納動作ST2aを含む。ゲインステージ15Aには、クロック信号(φ
11=0,φ
21=1,φ
12=1,φ
22=0,φ
3=0,φ
R=0,φ
S=1,φ
Sl1=0,φ
Sl2=1,φ
P1=1,φ
N1=0,φ
P2=0,φ
N2=0,φ
M1=0,φ
M2=0)が入力される。このクロック信号によれば、スイッチ43,49,55,61,63が導通とされ、スイッチ47,51,57,53,59,65,67,69,71,73が非導通とされる。
【0094】
上記したクロック信号によれば、ゲインステージ15Aは、
図7の(b)部に示されるような回路を構成する。具体的には、第1のキャパシタ25がD/A変換回路21の第1の出力21aと演算増幅回路23の第1の入力23aとの間に接続される。また、第3のキャパシタ29が演算増幅回路23の出力23bと演算増幅回路23の第1の入力23aとの間に接続される。この回路構成によれば、第1のキャパシタ25に格納されたアナログ信号V
INに対応する第1の演算値V
OP1がゲインステージ15Aの出力15bに生成される。すなわち、第2の演算ステップとしての第2の演算動作ST2bが行われる。
【0095】
また、上記したクロック信号によれば、第2のキャパシタ27がゲインステージ15Aの入力15aと基準電位線L
COMとの間に接続される。この回路構成によれば、ゲインステージ15Aの入力15aを介して受けたアナログ信号V
INが第2のキャパシタ27に格納される。すなわち、第2の格納ステップとしての第2の格納動作ST2aが行われる。
【0096】
続いて、A/D変換器11Aは、ディジタル信号D(=B
1)の値に従って、第1のステップとしての第1の動作ST1を行う。第1の動作ST1は、第1の演算ステップとしての第1の演算動作ST1b及び第1の格納ステップとしての第1の格納動作ST1aを含む。ゲインステージ15Aには、クロック信号(φ
11=1,φ
21=0,φ
12=0,φ
22=1,φ
3=0,φ
R=0,φ
S=1,φ
Sl1=1,φ
Sl2=0,φ
P1=0,φ
N1=0,φ
P2=1,φ
N2=0,φ
M1=0,φ
M2=0)が入力される。このクロック信号によれば、スイッチ43,47,57,59,67が導通とされ、スイッチ49,51,53,55,61,63,65,69,71,73が非導通とされる。
【0097】
上記したクロック信号によれば、ゲインステージ15Aは、
図7の(c)部に示されるような回路を構成する。具体的には、第1のキャパシタ25がゲインステージ15Aの入力15aと基準電位線L
COMとの間に接続される。この回路構成によれば、ゲインステージ15Aの入力15aを介して受けたアナログ信号V
INが第1のキャパシタ25に格納される。すなわち、第1の格納ステップとしての第1の格納動作ST1aが行われる。
【0098】
また、第2のキャパシタ27がD/A変換回路21の第1の出力21aと演算増幅回路23の第1の入力23aとの間に接続される。そして、第3のキャパシタ29が演算増幅回路23の出力23bと演算増幅回路23の第1の入力23aとの間に接続される。この回路構成によれば、第2のキャパシタ27に格納されたアナログ信号V
INに対応する第1の演算値V
OP1がゲインステージ15Aの出力15bに生成される。すなわち、第1の演算ステップとしての第1の演算動作ST1bが行われる。
【0099】
続いて、ディジタル信号D(=B
1)の値に応じて、A/D変換器11Aは、
図7の(b)部に示される、第2のステップとしての第2の動作ST2を行う。すなわち、A/D変換器11Aは、第1のステップ(
図7の(c)部参照)及び第2のステップ(
図7の(b)部参照)を所定回数繰り返して行う積分型A/D変換ステップを行う。
【0100】
第1のA/D変換動作において、第1の演算ステップ及び第1の格納ステップをM回繰り返して、サンプリング及び積分を行ったときの第1の演算値V
OP1は、式(7A)により示される。また、C
1aa及びC
1baは下記式(7B)及式(7C)により示される。なお、第2の実施形態におけるフォールディング積分型のA/D変換動作は、第1の実施形態におけるフォールディング積分型のA/D変換動作と全く同じ動作である。従って、式(7A)は、式(5A)と全く同じである。
【数7】
【0101】
次に、A/D変換器11Aにおける、巡回型A/D変換ステップとしての第2のA/D変換動作について説明する。
図6の(b)部に示されるように、第2のA/D変換動作は、第3のステップとしての第3の動作ST3、及び第4のステップとしての第4の動作ST4を含む。
【0102】
まず、A/D変換器11Aは、第3のステップとしての第3の動作ST3を行う。第3の動作ST3は、第2の初期格納ステップSTf2としての第3の格納動作ST3aを含む。ゲインステージ15Aには、クロック信号(φ
11=1,φ
21=0,φ
12=0,φ
22=0,φ
3=1,φ
R=0,φ
S=0,φ
Sl1=1,φ
Sl2=0,φ
P1=0,φ
N1=0,φ
P2=0,φ
N2=0,φ
M1=1,φ
M2=0)が入力される。このクロック信号によれば、スイッチ47,51,59,71が導通とされ、スイッチ43,49,53,55,57,61,63,65,67,69,73が非導通とされる。
【0103】
上記したクロック信号によれば、ゲインステージ15Aは、
図8の(a)部に示されるような回路を構成する。具体的には、第1のキャパシタ25及び第4のキャパシタ26が演算増幅回路23の出力23bと基準電位線L
COMとの間に接続される。この回路構成によれば、残差アナログ信号である第1の演算値V
OP1が第1のキャパシタ25及び第4のキャパシタ26に格納される。すなわち、第3の格納ステップとしての第3の格納動作ST3aが行われる。
【0104】
続いて、A/D変換器11Aは、ディジタル信号D(=B
1+B
0)の値に従って、第4のステップとしての第4の動作ST4を行う。第4の動作ST4は、第4の演算ステップとしての第4の演算動作ST4b及び第4の格納ステップとしての第4の格納動作ST4aを含む。ゲインステージ15Aには、クロック信号(φ
11=0,φ
21=1,φ
12=1,φ
22=0,φ
3=1,φ
R=0,φ
S=0,φ
Sl1=0,φ
Sl2=1,φ
P1=1,φ
N1=1,φ
P2=0,φ
N2=0,φ
M1=0,φ
M2=1)が入力される。このクロック信号によれば、スイッチ49,51,55,61,63,65,73が導通とされ、スイッチ43,47,53,57,59,67,69,71が非導通とされる。
【0105】
上記したクロック信号によれば、ゲインステージ15Aは、
図8の(b)部に示されるような回路を構成する。具体的には、第1のキャパシタ25がD/A変換回路21の第1の出力21aと演算増幅回路23の第1の入力23aとの間に接続される。また、第4のキャパシタ26がD/A変換回路21の第2の出力21bと演算増幅回路23の第1の入力23aとの間に接続される。また、第3のキャパシタ29が演算増幅回路23の出力23bと演算増幅回路23の第1の入力23aとの間に接続される。この回路構成によれば、第2の演算値V
OP2がゲインステージ15Aの出力15bに生成される。すなわち、第4の演算ステップとしての第4の演算動作ST4bが行われる。
【0106】
また、第2のキャパシタ27及び第5のキャパシタ28が演算増幅回路23の出力23bと基準電位線L
COMとの間に接続される。この回路構成によれば、第2の演算値V
OP2が第2のキャパシタ27及び第5のキャパシタに格納される。すなわち、第4の格納ステップとしての第4の格納動作ST4aが行われる。
【0107】
続いて、A/D変換器11Aは、ディジタル信号D(=B
1+B
0)の値に従って、第5のステップとしての第3の動作ST3を行う。第3の動作ST3は、第3の演算ステップとしての第3の演算動作ST3b及び第3の格納ステップとしての第3の格納動作ST3aを含む。ゲインステージ15Aには、クロック信号(φ
11=1,φ
21=0,φ
12=0,φ
22=1,φ
3=1,φ
R=0,φ
S=0,φ
Sl1=1,φ
Sl2=0,φ
P1=0,φ
N1=0,φ
P2=1,φ
N2=1,φ
M1=1,φ
M2=0)が入力される。このクロック信号によれば、スイッチ47,51,57,59,67,69,71が導通とされ、スイッチ43,49,53,55,61,63,65,73が非導通とされる。
【0108】
上記したクロック信号によれば、ゲインステージ15Aは、
図8の(c)部に示されるような回路を構成する。具体的には、第1のキャパシタ25及び第4のキャパシタ26が演算増幅回路23の出力23bと基準電位線L
COMとの間に接続される。この回路構成によれば、第4の演算動作ST4bにおいて生成された第2の演算値V
OP2が第1のキャパシタ25及び第4のキャパシタ26に格納される。すなわち、第3の格納ステップとしての第3の格納動作ST3aが行われる。
【0109】
第2のキャパシタ27がD/A変換回路21の第1の出力21aと演算増幅回路23の第1の入力23aとの間に接続される。また、第5のキャパシタ28がD/A変換回路21の第2の出力21bと演算増幅回路23の第1の入力23aとの間に接続される。さらに、第3のキャパシタ29が演算増幅回路23の出力23bと演算増幅回路23の第1の入力23aとの間に接続される。この回路構成によれば、第2の演算値V
OP2がゲインステージ15Aの出力15bに生成される。すなわち、第3の演算ステップとしての第3の演算動作ST3bが行われる。
【0110】
そして、ゲインステージ15Aは、巡回型A/D変換動作として、第3の動作ST3及び第4の動作ST4を所定回数だけ繰り返し行う。
【0112】
本発明の別の側面は、イメージセンサデバイスである。
図9は、イメージセンサの画素を示す図面である。このイメージセンサデバイスは、イメージセンサセル2aのアレイを含むセルアレイと、セルアレイに接続されており複数のA/D変換器11を含む変換器アレイとを備える。A/D変換器11の各々は、セルアレイのカラム線8を介してイメージセンサセル2aに接続される。A/D変換器11を備えるイメージセンサデバイスによれば、高感度で高速動作が可能であり、且つ広いダイナミックレンジを実現することができる。
【0113】
イメージセンサセル2aは、例えばCMOSイメージセンサセルの構造を有する。フォトダイオードDFが、イメージに関連する一画素分の光Lを受ける。選択トランジスタM
Sのゲートは、行方向に伸びるロウ選択線Sに接続される。リセットトランジスタM
Rのゲートはリセット線Rに接続される。転送トランジスタM
Tのゲートは、行方向に伸びる転送選択線に接続される。フォトダイオードDFの一端は転送トランジスタM
Tを介して浮遊拡散層FDに接続される。浮遊拡散層FDは、リセットトランジスタM
Rを介してリセット電位線Resetに接続されると共に、トランジスタM
Aのゲートに接続される。トランジスタM
Aの一電流端子(例えばドレイン)は、選択トランジスタM
Sを介してカラム線8に接続される。トランジスタM
Aは、選択トランジスタM
Sを介して浮遊拡散層FDの電荷量に応じた電位をカラム線に提供する。
【0114】
この構造のイメージセンサセル2aは、リセットレベルを示す第1の信号と該リセットレベルに重畳された信号レベルを示す第2の信号とを生成可能である。即ち、イメージセンサセル2aは、まず、リセット制御信号をリセットトランジスタM
Rに提供し、浮遊拡散層FDをリセットする。トランジスタM
Aを介して、このリセットレベルを読み出す。次いで、電荷転送制御信号TXを転送トランジスタM
Tに供給し、フォトダイオードDFから光誘起信号電荷を浮遊拡散層に転送する。この後、トランジスタM
Aを介して、この信号レベルを読み出す。このように、画素であるイメージセンサセル2aは、リセットレベルを示す第1の信号S1と該リセットレベルに重畳された信号レベルを示す第2の信号S2とを生成可能である。
【0115】
ここで、変換器アレイは、第1の実施形態に係るA/D変換器11に代えて、第2の実施形態に係るA/D変換器11Aを有していてもよい。すなわち、1個のイメージセンサセル2aに対して、1個のA/D変換器11Aが接続されていてもよい。このような構成によれば、1個のA/D変換器11Aで積分型A/D変換動作及び巡回型A/D変換動作を行えるので、イメージセンサデバイスにおけるA/D変換器11Aの回路面積を小さくすることができる。
【0116】
また、1個のイメージセンサセル2aに対して、A/D変換器11とA/D変換器11Aとが接続された構成とすることもできる。具体的には、イメージセンサセル2aの出力ラインにA/D変換器11のゲインステージ15Aの入力15aが接続される。そして、A/D変換器11のゲインステージ15Aの出力15bには、A/D変換器11Aのゲインステージ15Aの入力15aが接続される。この構成によれば、積分型A/D変換動作をA/D変換器11で行い、巡回型A/D変換動作をA/D変換器11Aで行う。従って、積分型A/D変換動作と巡回型A/D変換動作とが並列処理(パイプライン処理)できるので、A/D変換器の性能をさらに向上させることができる。
【0117】
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0118】
例えば、A/D変換器11,11Aは、イメージセンサセル2aからの信号に対する相関2重サンプリング(CDS)処理を適用してもよい。この処理は、アナログ領域で行ってもよいし(アナログCDS)、ディジタル領域で行ってもよい(ディジタルCDS)。