(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6681697
(24)【登録日】2020年3月26日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】脱落防止クリップ、シール材、及び外壁パネルの目地構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/684 20060101AFI20200406BHJP
E04F 13/08 20060101ALI20200406BHJP
【FI】
E04B1/684 B
E04F13/08 Y
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-216086(P2015-216086)
(22)【出願日】2015年11月2日
(65)【公開番号】特開2017-89113(P2017-89113A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2018年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000196107
【氏名又は名称】西川ゴム工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】藤田 知城
(72)【発明者】
【氏名】山下 光貞
(72)【発明者】
【氏名】野間 賢
【審査官】
須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭61−113807(JP,U)
【文献】
特開平05−148916(JP,A)
【文献】
特開平10−131317(JP,A)
【文献】
特開2015−132142(JP,A)
【文献】
特開2001−303687(JP,A)
【文献】
米国特許第06427405(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62−1/99
E04F 13/00−13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外壁パネルの間の目地をシールすることが可能な弾性を有するシール材の、当該目地に挿入された状態における当該目地からの脱落を防止する脱落防止クリップであって、
上記外壁パネルを固定する固定金具に取り付けられ、
上記目地と対向する表面には、上記シール材の一部分から突出して設けられたリップを引掛ける腕部が形成されており、
上記腕部は、
上記表面の一端から離間し、かつ、上記表面の、当該一端と対向する他端側へと延伸しており、上記シール材の一部分が接触したときに、当該一部分をその先端部まで案内して当該先端部に引掛けるものであり、
上記先端部を含む一部の区間において、上記表面側へと傾斜していることを特徴とする脱落防止クリップ。
【請求項2】
弾性を有し、
外壁パネルの間の目地をシールすることが可能な弾性を有するシール材の、当該目地に挿入された状態における当該目地からの脱落を防止する脱落防止クリップであって、
上記外壁パネルを固定する固定金具に取り付けられ、
上記目地と対向する表面には、上記シール材の一部分から突出して設けられたリップを引掛ける腕部が形成された上記脱落防止クリップが設置された上記外壁パネルの間の上記目地に挿入された状態で当該目地をシールする上記シール材であって、
上記目地の内部で当該目地をシールする一次シール部と、
上記外壁パネルの内壁側から上記目地をシールする二次シール部と、を備え、
上記二次シール部は、
上記二次シール部の長手方向に亘って上記一次シール部側へ突出し、上記内壁へ接触して、当該内壁、上記一次シール部及び上記二次シール部の間に防水空間を形成する第1リップと、
上記二次シール部の長手方向に亘って上記一次シール部とは反対側へ突出し、上記外壁パネルに設置された上記脱落防止クリップに上記二次シール部を固定させる第2リップと、を備えていることを特徴とするシール材。
【請求項3】
弾性を有し、
外壁パネルの間の目地をシールすることが可能な弾性を有するシール材の、当該目地に挿入された状態における当該目地からの脱落を防止する脱落防止クリップであって、
上記外壁パネルを固定する固定金具に取り付けられ、
上記目地と対向する表面には、上記シール材の一部分から突出して設けられたリップを引掛ける腕部が形成されており、
上記腕部は、
上記表面の一端から離間し、かつ、上記表面の、当該一端と対向する他端側へと延伸しており、上記シール材の一部分が接触したときに、当該一部分をその先端部まで案内して当該先端部に引掛けるものであり、
上記先端部を含む一部の区間において、上記表面側へと傾斜している上記脱落防止クリップが設置された上記外壁パネルの間の上記目地に挿入された状態で当該目地をシールする上記シール材であって、
上記目地の内部で当該目地をシールする一次シール部と、
上記外壁パネルの内壁側から上記目地をシールする二次シール部と、を備え、
上記二次シール部は、
上記二次シール部の長手方向に亘って上記一次シール部側へ突出し、上記内壁へ接触して、当該内壁、上記一次シール部及び上記二次シール部の間に防水空間を形成する第1リップと、
上記二次シール部の長手方向に亘って上記一次シール部とは反対側へ突出し、上記外壁パネルに設置された上記脱落防止クリップに上記二次シール部を固定させる第2リップと、を備えていることを特徴とするシール材。
【請求項4】
上記二次シール部は、上記一次シール部との接続位置から上記二次シール部の短手方向に延伸し、かつ上記第1リップ及び上記第2リップが形成された基部を備え、
上記基部は、硬質材で構成されていることを特徴とする請求項2または3に記載のシール材。
【請求項5】
上記二次シール部は、上記一次シール部との接続位置から上記二次シール部の短手方向に延伸し、かつ上記第2リップが形成された基部を複数備え、
上記第2リップは、軟質材で構成されていることを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載のシール材。
【請求項6】
上記二次シール部は、上記一次シール部との接続位置から上記二次シール部の短手方向に延伸し、かつ上記第2リップが形成された基部を備え、
上記第2リップは、上記接続位置側に傾斜して形成されていることを特徴とする請求項2から5のいずれか1項に記載のシール材。
【請求項7】
請求項1に記載の脱落防止クリップを備えていることを特徴とする外壁パネルの目地構造。
【請求項8】
請求項2から6のいずれか1項に記載のシール材を備えていることを特徴とする外壁パネルの目地構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅等の建造物において、外壁パネル間の目地をシールするシール材、シール材の脱落を防止する脱落防止クリップ、及び外壁パネルの目地構造に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅等の外壁の工法として、住宅に複数の外壁パネルを固定した後、外壁パネル間の目地をシール材によりシールする工法が知られている。目地のシールに関する技術として、例えば特許文献1〜4に開示されている技術が挙げられる。特許文献1には、目地の内部で目地をシールする頭部シール部及び腕部シール部(一次シール部)と、目地を室内側からシールする脚部シール部(二次シール部)とを備えた目地材が開示されている。特許文献2には、上記一次シール部の機能を有する定型シール部材が開示されている。特許文献3には、一次シール部材、クリップ部材及び二次防水部材を備えた構造が開示されている。これらの部材は連結して目地に挿入される。特許文献4には、上記一次シール部の機能を有する耐火目地材と、耐火目地材の目地からの脱落を防止するクリップとを備えた耐火防水構造が開示されている。特許文献5には、一次シール部および二次シール部を備え、当該二次シール部には、目地を防水するシールリップと、目地に挿入するときのガイド機能を果たすガイドリップとが形成されている。
【0003】
その他、従来の目地のシール構造としては、
図7及び
図8に示すシール構造が挙げられる。
図7の(a)〜(d)は、外壁パネルの目地をシールするために従来用いられてきた部材の一例を示す図であり、特許文献6に記載の防水構造を示すものである。
図7の(a)は、従来の一次シール材101の形状を示す図である。
図7の(b)は、従来の脱落防止クリップ102の形状を示す図である。
図7の(c)は、従来の二次シール材103の形状を示す図である。
図7の(d)は、従来の引掛かり防止金具104の形状を示す図である。
図7の(e)は、
図7の(a)〜(d)に示した部材により、外壁パネル31の縦目地32がシールされている状態を示す図である。
図7の(e)に示すように、外壁パネル31は、縦目地32と連通する、内壁31aにより規定される空洞を有する。また、外壁パネル31は、外壁固定金具34により、住宅の軸組35に固定されている。
【0004】
従来の方法では、外壁パネル31間の縦目地32をシールする時には、まず外壁固定金具34に引掛かり防止金具104を取り付ける。次に、二次シール材103を縦目地32から外壁パネル31の空洞へ挿入する。二次シール材103は、外壁固定金具34と対向する側の面が内側になるように折り曲げられた状態で縦目地32に挿入され、外壁パネル31の内壁31aに沿って広がる。次に、一次シール材101に脱落防止クリップ102を取り付ける。脱落防止クリップ102を取り付けた状態の一次シール材101を縦目地32に挿入することで、縦目地32のシールが完了する。
【0005】
図8の(a)は、一次シール材101に脱落防止クリップ102を取り付けた状態を示す斜視図である。
図8の(a)に示すように、脱落防止クリップ102は、一次シール材101の室内側に、所定の間隔(例えば0.6m間隔)で複数取り付けられる。また、
図8の(b)は、縦目地32(
図7の(e)参照)がシールされた状態における各部材の位置関係を示す図である。
図8の(b)に示すように、脱落防止クリップ102は、二次シール材103の室外側であって、引掛かり防止金具104及び外壁固定金具34(
図7の(e)参照)と接触(干渉)しない位置に配される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−262724号公報(2001年9月26日公開)
【特許文献2】特開平9−41505号公報(1997年2月10日公開)
【特許文献3】特開2011−157707号公報(2011年8月18日公開)
【特許文献4】特開2011−169028号公報(2011年9月1日公開)
【特許文献5】特開2015−132142号公報(2015年7月23日公開)
【特許文献6】特開2011−179216号公報(2011年9月15日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1〜5、並びに特許文献6に示される
図7及び
図8に示す従来技術においては、外壁固定金具側に脱落防止クリップを固定する構成については検討されていない。そのため、従来技術では、外壁固定金具側に固定された脱落防止クリップに、一次シール材と二次シール材とを一体化したシール材を固定し、かつ防水性能を向上させることについては、当然ながら何ら検討されていない。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑み、シール材を目地へ装着する際に、予めシール材に装着させておくことなく、当該シール材の目地からの脱落を防止することが可能な脱落防止クリップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明に係る脱落防止クリップは、外壁パネルの間の目地をシールすることが可能な弾性を有するシール材の、当該目地に挿入された状態における当該目地からの脱落を防止する脱落防止クリップであって、上記外壁パネルを固定する固定金具に取り付けられ、上記目地と対向する表面には、上記シール材の一部分から突出して設けられたリップを引掛ける腕部が形成されている。
【0010】
上記構成によれば、シール材が目地から挿入されたときに、上記固定金具に取り付けられた脱落防止クリップの腕部にシール材のリップを引掛けることができる。そのため、シール材側に脱落防止クリップを設けることなく、挿入されたシール材が目地から脱落することを防止できる。
【0011】
また、本発明に係る脱落防止クリップでは、上記腕部は、上記表面の一端から離間し、かつ、上記表面の、当該一端と対向する他端側へと延伸しており、上記シール材の一部分が接触したときに、当該一部分をその先端部まで案内して当該先端部に引掛けるものであり、上記先端部を含む一部の区間において、上記表面側へと傾斜していてもよい。
【0012】
上記構成によれば、腕部は、上記先端部を含む一部の区間において、上記表面側へと傾斜している。そのため、折れ曲がった状態で目地から脱落防止クリップの方向へと挿入してきたシール材の一部分を、目地の中心軸から外壁パネル側へ向かう方向にスムースに案内できる。
【0013】
また、本発明に係るシール材は、弾性を有し、上記脱落防止クリップが設置された外壁パネルの間の目地に挿入された状態で当該目地をシールするシール材であって、上記目地の内部で当該目地をシールする一次シール部と、上記外壁パネルの内壁側から上記目地をシールする二次シール部と、を備え、上記二次シール部は、上記二次シール部の長手方向に亘って上記一次シール部側へ突出し、上記内壁へ接触して、当該内壁、上記一次シール部及び上記二次シール部の間に防水空間を形成する第1リップと、上記二次シール部の長手方向に亘って上記一次シール部とは反対側へ突出し、上記外壁パネルに設置された上記脱落防止クリップに上記二次シール部を固定させる第2リップと、を備えていてもよい。
【0014】
上記構成によれば、シール材に上記第1リップが設けられていることで、シール材が目地に挿入された状態において上記防水空間を形成できる。それゆえ、シール材は、上記第1リップを備えることで、防水性能を向上させることができる。また、上記第2リップが設けられていることで、第2リップと相対する、シール材の目地からの脱落を防止する脱落防止クリップに上記二次シール部を固定させることができる。そのため、当該脱落防止クリップをシール材に装着する必要がない。したがって、シール材は、防水性能を向上させることができるとともに、上記脱落防止クリップを装着することなく目地からの脱落を防止できる。
【0015】
また、本発明に係るシール材では、上記二次シール部は、上記一次シール部との接続位置から上記二次シール部の短手方向に延伸し、かつ上記第1リップ及び上記第2リップが形成された基部を備え、上記基部は、硬質材で構成されていてもよい。
【0016】
上記構成によれば、二次シール部が備える基部は、一次シール部との接続位置から二次シール部の短手方向に延伸している。そのため、二次シール部は目地の幅よりも広い幅を有することになるため、二次シール部を折り曲げて目地に挿入する必要がある。この点を考慮すれば、二次シール部は、長手方向(挿入される目地に沿って延伸する方向)に沿って容易に折り曲がるように作製されていることが好ましい。
【0017】
上記構成によれば、上記基部が硬質材で構成されている。そのため、二次シール部の一部を折り曲げれば、その一部の折り曲がりに追従して、二次シール材全体を長手方向に沿って折り曲げた状態にすることができる。それゆえ、シール材の目地への挿入を容易に行うことが可能となる。
【0018】
また、本発明に係るシール材では、上記二次シール部は、上記一次シール部との接続位置から上記二次シール部の短手方向に延伸し、かつ上記第2リップが形成された基部を複数備え、上記第2リップは、軟質材で構成されていてもよい。
【0019】
上記構成によれば、シール材の目地への挿入時、二次シール部は、それぞれの基部に形成された第2リップが互いに相対するように折り曲げられる。そして、二次シール部が折り曲げられたとき、第2リップが互いに接触する可能性がある。
【0020】
上記構成によれば、第2リップが軟質材で構成されている。そのため、第2リップは、上記のように第2リップが互いに接触した場合に、変形することができる。したがって、二次シール部の短手方向の長さ(二次シール部の幅)がより狭くなるように二次シール部を折り曲げることが可能となる。そのため、シール材の目地への挿入を容易に行うことが可能となる。
【0021】
また、本発明に係るシール材では、上記二次シール部は、上記一次シール部との接続位置から上記二次シール部の短手方向に延伸し、かつ上記第2リップが形成された基部を備え、上記第2リップは、上記接続位置側に傾斜して形成されていてもよい。
【0022】
上記構成によれば、上記脱落防止クリップが、目地の中心軸から外壁パネル側へと延伸する腕部に第2リップを引掛けて固定するものである場合、当該腕部に引掛けられた第2リップを、当該腕部から外れにくくすることが可能となる。そのため、シール材を目地から脱落しにくくすることができる。
【0023】
また、本発明に係る外壁パネルの目地構造は、本発明に係る脱落防止クリップを備えていてもよい。
【0024】
上記構成によれば、シール材側に当該シール材の脱落を防止するためのクリップを設けることなくシール材の脱落を防止できる目地構造となる。
【0025】
また、本発明に係る外壁パネルの目地構造は、本発明に係るシール材を備えていてもよい。
【0026】
上記構成によれば、目地の防水性能を向上させることができるとともに、シール材の脱落を防止するためのクリップをシール材に装着することなく目地からの脱落を防止できる目地構造となる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の脱落防止クリップは、シール材を目地へ装着する際に、予めシール材に装着させておくことなく、当該シール材の目地からの脱落を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の実施形態1に係るシール材の構成を示す断面図である。
【
図2】本発明の実施形態1に係るシール材を用いる住宅の外壁を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態1に係る脱落防止クリップの形状を示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)は断面図である。
【
図4】(a)〜(d)は、シール材の目地への取り付けの過程を示す断面図である。
【
図5】本発明の実施形態2に係るシール材の形状を示す断面図である。
【
図6】(a)は本発明の実施形態3に係るシール材の断面図であり、(b)は本発明の実施形態3に係る脱落防止クリップの斜視図であり、(b)は本発明の実施形態3に係る脱落防止クリップの断面図であり、(d)は(a)〜(c)に示したシール材及び脱落防止クリップにより縦目地がシールされている状態を示す図である。
【
図7】(a)〜(d)は外壁パネルの目地をシールするために従来用いられてきた部材の一例を示す図であり、(e)は(a)〜(d)に示した部材により目地がシールされている状態を示す図である。
【
図8】(a)は従来の一次シール材に従来の脱落防止クリップを取り付けた状態を示す斜視図であり、(b)は目地がシールされた状態における各部材の位置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
〔実施形態1〕
以下、本発明の実施形態について、
図1〜
図4を用いて詳細に説明する。まず、
図2は、本実施形態に係るシール材1(
図1参照)を用いる住宅(建造物)の外壁3を示す図である。
図2に示すように、住宅の外壁3には、複数の外壁パネル31が取り付けられている。複数の外壁パネル31の間には、縦目地32及び横目地33が形成されている。すなわち、縦目地32及び横目地33は外壁パネル31の継ぎ目である。縦目地32及び横目地33を挟んで、複数の外壁パネル31が互いに隣り合っている。
【0030】
(シール材1)
図1は、本実施形態に係るシール材(ガスケット)1の構成を示す断面図である。シール材1は弾性を有し、後述の脱落防止クリップ2が設置された外壁パネル31の間の縦目地32または横目地33に挿入された状態で当該目地をシールする。
図1に示すように、シール材1は、一次シール部1aと二次シール部1bとを備える。一次シール部1aと二次シール部1bとは、接続され、一体化されている。以下では、シール材1により縦目地32をシールする実施形態について説明する。ただし、シール材1は、横目地33のシールに用いられてもよい。
【0031】
一次シール部1aは、縦目地32の内部で縦目地32をシールする部材である。一次シール部1aは、断面形状において室内外へ延びる柱状の一次基部11と、一次基部11の形状を維持するために埋め込まれた芯材12と、一次基部11からシール材1の短手方向(
図1のx方向)の両側に延びる複数組の一次防水リップ13とを有する。本実施形態においては、3組の一次防水リップ13が設けられている。
【0032】
一次シール部1aは、芯材12を除いて全体が軟質材で構成されている。ここで、軟質材とは、JIS−A規格における硬度が80度以下の材料である。軟質材としては、例えば、一般的なゴム(例えば、EPDM(Ethylene Propylene Diene Monomer)ゴム、天然ゴム、またはクロロプレンゴム)、熱可塑性エラストマー(例えば、オレフィン系(TPO;ThermoPlastic Olefin)、スチレン系(TPS;ThermoPlastic Styrene))、または軟質塩化ビニルなどのゴム様弾性体が用いられる。また、本実施形態における芯材12は、鋼材である。
【0033】
二次シール部1bは、一次シール部1aよりも室内側において、外壁パネル31の内壁31a(
図4参照)側から縦目地32をシールする部材である。二次シール部1bは、二次基部14(基部)、二次防水リップ15(第1リップ)、及び引掛け部16(第2リップ)を有する。
【0034】
二次基部14は、二次防水リップ15及び引掛け部16が形成される部分である。二次基部14は、一次シール部1aの室内側の端部から突出するもので、該一次シール部1aと二次シール部1bとの接続位置から二次シール部1bの短手方向に延伸する、一対の部材である。一対の二次基部14は、それぞれ湾曲部14aと平坦部14bと接続区間14cとを有する。接続区間14cは、一次シール部1aと二次シール部1bとの接続部であり、一次シール部1aを構成する材質がそのまま突出した部分である。そして、接続区間14cから、二次シール部1b特有の材質で構成された湾曲部14aが延びている。さらに、湾曲部14aから、二次シール部1b特有の材質で構成された平坦部14bが延びている。二次防水リップ15及び引掛け部16は、平坦部14bに形成されている。なお、二次基部14の数は、複数であれば、1対、すなわち2つに限定されず、3つ以上であってもよい。
【0035】
本実施形態においては、二次基部14特有の材質とは、硬質材である。ここで、硬質材とは、JIS−A規格における硬度が80度以上の材料であり、好ましくは90度以上の材料である。硬質材の具体的な例としては、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、ポリカーボネート、硬質塩化ビニルといった樹脂が挙げられる。なお、二次基部14の全体が硬質材で構成される必要はなく、少なくとも一部に硬質材を含んでいればよい。
【0036】
二次防水リップ15は、それぞれの二次基部14から、二次シール部1bの長手方向(
図1のy方向)に亘って一次シール部1a側へ突出する部分である。二次防水リップ15は、軟質材で構成されている。ただし、二次防水リップ15は、硬質材で構成されていてもよい。ここでいう軟質材及び硬質材の定義及び材料の具体例は、一次シール部1aを構成する軟質材及び二次基部14を構成する硬質材と同じである。また、二次防水リップ15は、
図4に示すように、内壁31aへ接触して、内壁31a、一次シール部1a及び二次シール部1bの間に防水空間(二次排水空間)36を形成する。より具体的には、二次防水リップ15は、内壁31a、二次シール部1bに最も近い一次防水リップ13、二次基部14、及び二次防水リップ15の間に防水空間36を形成する。防水空間36は、二次シール部1bに最も近い一次防水リップ13よりも外壁パネル31の内部へ浸入した水が排水される流路である。防水空間36が形成されることにより、水が二次シール部1bよりも外壁パネル31の内部へ浸入する虞が低減される。なお、各一次防水リップ13と縦目地32を形成する外壁パネル31の側面との間に形成される空間(一次排水空間)は、外部から縦目地32に浸入した水が排水される流路である。
【0037】
引掛け部16は、それぞれの二次基部14から、二次シール部1bの長手方向に亘って一次シール部1aとは反対側へ突出する部分である。引掛け部16は、外壁パネル31に設置された後述の脱落防止クリップ2に二次シール部1bを固定させる。本実施形態において、引掛け部16は、軟質材で構成されている。ただし、引掛け部16は、硬質材で構成されていてもよい。ここでいう軟質材及び硬質材の定義及び材料の具体例は、一次シール部1aを構成する軟質材及び二次基部14を構成する硬質材と同じである。また、引掛け部16は、一次シール部1aと二次シール部1bとの接続位置側に傾斜して形成されている。すなわち、引掛け部16と二次基部14との成す角αが鋭角に形成されている。このため、引掛け部16が軟質材であっても、外壁固定金具34(固定金具)側から脱離する虞が低減される。
【0038】
(脱落防止クリップ2)
図3は本実施形態に係る脱落防止クリップ2の形状を示す図である。
図3の(a)は脱落防止クリップ2の斜視図である。
図3の(b)は脱落防止クリップ2の断面図である。脱落防止クリップ2は、外壁パネル31の間の縦目地32をシールすることが可能な弾性を有するシール材1の、縦目地32に挿入された状態における縦目地32からの脱落を防止する部材である。脱落防止クリップ2は、従来技術の一例として
図7の(d)に示した引掛かり防止金具104に置き換わる部材である。脱落防止クリップ2は、シール材1の外壁固定金具34への引掛かりを防止する機能(引掛かり防止金具104が有する機能)に加え、シール材1の縦目地32からの脱落を防止する機能を有する。脱落防止クリップ2は、引掛かり防止金具104と同様、外壁パネル31を住宅に固定する外壁固定金具34(
図4参照)に取り付けられる。換言すれば、脱落防止クリップ2は、外壁パネル31に設置される。本実施形態において、脱落防止クリップ2の材質は、バネ鋼である。
図3の(a)及び(b)に示すように、脱落防止クリップ2は、表面21と側面22と腕部23とを備える。
【0039】
表面21は、脱落防止クリップ2が外壁固定金具34に固定された状態において、縦目地32と対向する部分である。表面21は、脱落防止クリップ2が外壁固定金具34に取り付けられた状態において、外壁固定金具34が備えるネジへのアクセスを可能にするための開口21aを有する。
【0040】
側面22は、脱落防止クリップ2を外壁固定金具34に固定する部分である。側面22は、それぞれ鉤部22aを有する。鉤部22aは、外壁固定金具34に取り付けられた脱落防止クリップ2が外壁固定金具34から脱離することを防止する。
【0041】
腕部23は、シール材1の二次シール部1bの一部分から突出して設けられた引掛け部16を引掛ける部材である。腕部23は、表面21に複数設けられる。腕部23は、表面21の一端から離間し、かつ当該一端と対向する表面21の他端側へと延伸している。
【0042】
本実施形態において、腕部23は、1対の引掛け部16のそれぞれに引っ掛かる、一対の部材である。腕部23は、根元の部分である根元部23aと、折り曲げた部分である折り曲げ部23bと、先端の部分である先端部23cを有する。一対の腕部23は、脱落防止クリップ2を表面21の中心軸周りに180度回転させたときの当該脱落防止クリップ2の形状が略同一(長尺方向の中間位置、かつ短尺方向の中間位置である点の周りにおいて点対称)となるように、表面21に設けられている。
【0043】
また、本実施形態において、腕部23は、先端部23cを含む一部の区間において、表面21側へ傾斜している。具体的には、折り曲げ部23bから先端部23cまでの区間は、折り曲げ部23bを含む、表面21に平行な水平面24から、先端部23cが離間するように、表面21の方向へ傾斜している。ただし、折り曲げ部23bから先端部23cまでの区間が表面21に対して水平であってもよい。
【0044】
なお、腕部23は、折り曲げ部23bを有しなくてもよい。腕部23は、少なくとも根元部23aから先端部23cまでの区間のうち、先端部23cを含む一部の区間において、表面21へ向かう傾斜を有していればよい。例えば、腕部23の全体が、円弧状に形成されていてもよい。また、腕部23が一対である必要は必ずしもないし、複数の腕部23の配置位置も特に限定されない。例えば、その配置位置が表面21の端部でなくてもよく、表面21上または脱落防止クリップ2の側面であってもよい。すなわち、腕部23は、二次シール部1bを先端部23cまで案内して、引掛け部16を先端部23cに引掛けることが可能な構成であればよい。
【0045】
また、
図3の(b)では、腕部23は、脱落防止クリップ2の左右対称線CLを超えて、当該腕部23の根元部23aとは逆側の側面22の真上近傍まで延びている。しかし、腕部23の長さは、
図3の(b)に示した長さより短くてもよく、長くてもよい。なお、真上とは、表面21と側面22の境界から延びる、表面21の垂線上の位置であって、表面21から腕部23が延伸する側における位置である。
【0046】
本実施形態において、脱落防止クリップ2の表面21、側面22、及び腕部23は全て、バネ鋼の1枚板を切断し、折り曲げることによって形成されている。しかし、表面21、側面22、及び腕部23は、それぞれ別個の板材で形成され、溶接されていてもよい。また、脱落防止クリップ2の材質は、樹脂であってもよい。
【0047】
(シール材1の目地への取り付け)
図4の(a)〜(d)は、シール材1の縦目地32への取り付けの過程を示す断面図である。縦目地32は、2枚の外壁パネル31の間に形成されている。外壁パネル31は、外壁固定金具34により、住宅の軸組35に固定されている。脱落防止クリップ2は、予め外壁固定金具34に固定されている。
【0048】
図4の(a)は、シール材1を縦目地32へ挿入する前の状態を示す図である。二次シール部1bの二次基部14は、一次シール部1aとは逆の方向となる室内側へ折り曲げられ、引掛け部16が互いに近づいた状態になっている。この状態においては、シール材1の縦目地32への挿入幅(リップ幅)は、縦目地32の幅(目地幅)以下となる。したがって、シール材1を容易に縦目地32へ挿入することが可能となる。
【0049】
図7、8を用いて説明した従来技術では、二次シール材103と一次シール材101とを、縦目地32に別々に挿入する必要があった。しかし、本実施形態に係るシール材1は、二次シール部1bと一次シール部1aとが予め接続されているため、縦目地32をシールする工程の工数が削減される。
【0050】
また上述した通り、二次基部14は、接続区間14cを除いて硬質材で構成されている。そのため、二次シール部1bの一部を折り曲げれば、その一部に追従して、二次シール部1b全体を折り曲げた状態にすることができる。したがって、二次シール部1bの全体を、
図4の(a)に示すような、一次シール部1aとは逆の方向へ曲がった状態にすることが容易になる。
【0051】
図4の(a)に示した例よりも湾曲部14aの曲率(半径rの円周の曲率は1/rである。すなわち、曲がり具合が急であるほど曲率は大きくなる。)が小さいか、または引掛け部16が長く突出している場合には、二次シール部1bを曲げた場合に、引掛け部16同士が接触することが考えられる。しかし、引掛け部16は、上述した通り、軟質材で構成されている。したがって、引掛け部16は、互いに接触した場合には変形することができるため、二次シール部1bの幅をさらに狭めることが可能となる。それゆえ、二次シール部1bを容易に縦目地32へ挿入できると共に、より狭い幅を有する縦目地32へも挿入できる。また、曲率が大きいと両側の湾曲部14aが干渉することもある。しかし、湾曲部14aは、上記した硬質材からなるため、ある程度は許容できる。
【0052】
図4の(b)は、縦目地32へ挿入されたシール材1の二次基部14が、脱落防止クリップ2の腕部23に接触している状態を示す図である。シール材1は、二次防水リップ15、及び複数の一次防水リップ13を縦目地32に接触させながら挿入され、腕部23の、折り曲げ部23bと先端部23cとの間の区間に接触する。
【0053】
図4の(c)は、二次シール部1bが腕部23に接触した状態を示す図である。腕部23は、二次シール部1bをその接触位置(折り曲げ部23b付近)から先端部23cまで案内して先端部23cを引掛け部16に引掛けるものである。また、上述した通り、折り曲げ部23bと先端部23cとの間の区間において、先端部23cは表面21(
図3参照)へ向かって傾斜している。このため、折れ曲がった状態で縦目地32から脱落防止クリップ2の方向へと挿入されてきた二次シール部1bを、縦目地32の中心軸(脱落防止クリップ2を縦目地32へ装着した際における、
図3の(b)に見られる該クリップの左右対称線CL)から外壁パネル31側へ向かう方向にスムースに案内できる。また、上述した通り、脱落防止クリップ2の材質は、バネ鋼である。このため、シール材1を挿入するために要する力は比較的小さくて済む。
【0054】
図4の(d)は、シール材1の縦目地32への取り付けが完了した状態を示す図である。このとき、二次シール部1bは、一次シール部1aの側(すなわち、内壁31aの側)へ開いた形状であり、かつ二次基部14が接続区間14cを除いて硬質材で構成されている。そのため、外壁パネル31の空洞に挿入された状態において、二次防水リップ15は、内壁31aに強く接触してシールし、想定した通りの防水空間(二次排水空間)36を形成する。
【0055】
また、引掛け部16は、腕部23に引掛かった状態となる。上述した通り、引掛け部16は、一次シール部1aと二次シール部1bとの接続位置側に傾斜して形成されている。また、脱落防止クリップ2は、縦目地32の中心軸から離間する方向に延伸する腕部23の先端部23cに引掛け部16を引掛けて固定する。そのため、シール材1に、シール材1を縦目地32から脱落させる方向の力が加わった場合、引掛け部16と腕部23との間に生じる係止、及び二次防水リップ15と内壁31aとの間の大きな摩擦力により、シール材1を脱落しにくくすることができる。
【0056】
また、脱落防止クリップ2は、外壁固定金具34に取り付けられているため、
図7、8を用いて説明した従来技術のように、シール材1の挿入時に脱落防止クリップ2と外壁固定金具34とが接触する虞がない。さらに、二次シール部1bが脱落防止クリップ2に押されて、二次シール部1bと内壁31aとの間に隙間が生じる虞もない。
【0057】
図4の(d)に示すように、本実施形態に係る外壁パネル31の縦目地32の構造(目地構造)は、脱落防止クリップ2を備えている。これにより、シール材1の側にシール材1の脱落を防止するためのクリップを設けることなく、シール材1の脱落を防止できる。また、本実施形態に係る外壁パネル31の縦目地32の構造は、シール材1を備えている。これにより、目地の防水性能を向上させることができるとともに、シール材1の脱落を防止するためのクリップをシール材1に装着することなく、シール材1の脱落を防止できる。
【0058】
〔実施形態2〕
本発明の別の実施形態について、
図5を用いて説明する。本実施形態では、シール材1と異なる形状を有するシール材1Aについて説明する。シール材1Aの形状は、二次基部14以外についてはシール材1と同じである。
【0059】
図5は、シール材1Aの形状を示す断面図である。上述した通り、シール材1においては、二次基部14は、湾曲部14aと平坦部14bとを有する。しかし、
図5に示すように、シール材1Aは、二次基部14の全体が湾曲しており、平坦な部分を有しない。
【0060】
このようなシール材1Aも、シール材1と同様、外壁パネル31の縦目地32をシールする場合に高いシール性能を有する。
【0061】
〔実施形態3〕
本発明の別の実施形態について、
図6を用いて説明する。本実施形態では、シール材1・1Aと異なる形状を有するシール材1B、及び脱落防止クリップ2と異なる形状を有する脱落防止クリップ2Bについて説明する。シール材1Bの形状は、二次基部14以外についてはシール材1・1Aと同じである。また、脱落防止クリップ2Bの形状は、腕部23以外については、脱落防止クリップ2と同じである。
【0062】
図6の(a)は、シール材1Bの断面図である。
図6の(a)に示すように、シール材1Bにおける二次基部14は、シール材1・1Aにおける二次基部14と比較して、接続区間14cから二次シール部1bの短手方向に長く延伸している。
【0063】
図6の(b)は、脱落防止クリップ2Bの斜視図である。
図6の(c)は、脱落防止クリップ2の断面図である。
図6の(b)、(c)に示すように、脱落防止クリップ2Bにおける腕部23は、脱落防止クリップ2における腕部23と比較して長く延伸している。具体的には、
図6の(c)では、腕部23が、脱落防止クリップ2Bの左右対称線CLおよび側面22の真上を大きく超えて突出している。より具体的には、腕部23について、側面22の真上から先端部23cまでの長さ(突出量)は、左右対称線CLから側面22の真上までの長さに略等しい。しかし、腕部23の突出量は、
図6の(b)、(c)に示した例に限られず、外壁パネル31の内壁31aにより規定される空洞に収まる範囲であればよい。
【0064】
図6の(d)は、シール材1B及び脱落防止クリップ2Bにより縦目地32がシールされている状態を示す図である。シール材1B及び脱落防止クリップ2Bにより縦目地32をシールする場合、シール材1及び脱落防止クリップ2により縦目地32をシールする場合と比較して、防水空間36が広くなる。このため、二次シール部1bに最も近い一次防水リップ13よりも外壁パネル31の内部へ浸入した水が、防水空間36により排水されやすくなる。したがって、水が二次防水リップ15よりも外壁パネル31の内部へ浸入する虞がさらに低減される。
【0065】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0066】
1 シール材
1a 一次シール部
1b 二次シール部
2 脱落防止クリップ
14 二次基部(基部)
15 二次防水リップ(第1リップ)
16 引掛け部(第2リップ)
21 表面
23 腕部
23c 先端部
31 外壁パネル
31a 内壁
32 縦目地(目地)
34 外壁固定金具(固定金具)
36 防水空間