特許第6681714号(P6681714)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6681714
(24)【登録日】2020年3月26日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】運転模擬試験装置
(51)【国際特許分類】
   G09B 9/04 20060101AFI20200406BHJP
   H02K 41/03 20060101ALI20200406BHJP
   H02K 41/02 20060101ALI20200406BHJP
【FI】
   G09B9/04 A
   H02K41/03 A
   H02K41/02 C
【請求項の数】8
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-4361(P2016-4361)
(22)【出願日】2016年1月13日
(65)【公開番号】特開2017-125915(P2017-125915A)
(43)【公開日】2017年7月20日
【審査請求日】2018年10月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】東芝機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】多田 敦司
(72)【発明者】
【氏名】満園 正昭
(72)【発明者】
【氏名】井口 貴博
【審査官】 古川 直樹
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/087172(WO,A1)
【文献】 特開2008−051525(JP,A)
【文献】 特公平07−087688(JP,B2)
【文献】 特開2001−086727(JP,A)
【文献】 特開2002−190695(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0267504(US,A1)
【文献】 特開2002−305866(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 1/00 − 9/56
G09B 17/00 − 19/26
H02K 41/00 − 41/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
模擬車両を含む移動体と、
前記移動体を支持するとともに水平面内の第1方向に移動する支持台と、
前記第1方向に沿って延びるように設けられ、前記支持台を前記第1方向に並進運動させるリニアモータと、
前記第1方向に沿って延びるように設けられ、接触状態で前記支持台を前記第1方向に移動可能に支持するとともに、水平面内で前記第1方向と直交する第2方向の移動を拘束する直動ガイドと、
前記第1方向に沿って延びるように設けられ、前記リニアモータおよび前記直動ガイドが配置される基台と、
前記支持台の複数の基準位置に設置され、前記支持台と共に移動しながら前記基台に設けられた基準面と前記複数の基準位置との間の前記第2方向の変位を検出する複数の変位検出部と、
前記支持台の並進運動を制御するとともに、前記複数の変位検出部による前記基準面に対する複数の変位の検出結果に基づいて、並進運動中の前記支持台の変形を監視する制御装置と、を備える、運転模擬試験装置。
【請求項2】
前記リニアモータは、前記支持台に固定された可動子と、前記基台に固定された固定子とを含み、
前記可動子および前記固定子は、前記第2方向において互いに対向するように配置されており、
前記変位検出部は、前記可動子および前記固定子の近傍における前記基台の前記基準面および前記支持台の基準位置間の変位を検出するように構成されている、請求項1に記載の運転模擬試験装置。
【請求項3】
前記変位検出部は、前記第2方向において、前記基台上に配置された前記リニアモータと前記直動ガイドとの間の位置に配置されている、請求項2に記載の運転模擬試験装置。
【請求項4】
前記基台は、上面に設けられ前記第1方向に延びる凹部を含み、
前記凹部の底面には、前記リニアモータが配置され、
前記変位検出部は、前記基台の前記凹部の内側面を前記基準面として、前記内側面と前記変位検出部との間の変位を検出するように構成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の運転模擬試験装置。
【請求項5】
前記変位検出部は、前記支持台の前記第1方向の一方側端部近傍の前記基準位置と、前記支持台の前記第1方向の他方側端部近傍の前記基準位置とに、それぞれ設置されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の運転模擬試験装置。
【請求項6】
前記基台は、前記支持台の前記第2方向の中心に対して前記第2方向の一方側に配置された一方基台と、前記支持台の前記第2方向の中心に対して前記第2方向の他方側に配置された他方基台と、を含み、
前記変位検出部は、前記一方基台の前記基準面および前記支持台の基準位置間の変位と、前記他方基台の前記基準面および前記支持台の基準位置間の変位とを、それぞれ検出するように複数設けられている、請求項のいずれか1項に記載の運転模擬試験装置。
【請求項7】
前記変位検出部は、前記第1方向および前記第2方向における同一の基準位置において、上下方向に間隔を隔てて複数設けられ、上下方向の異なる高さ位置における、前記基台の前記基準面および前記支持台の基準位置間の変位をそれぞれ検出するように構成されている、請求項のいずれか1項に記載の運転模擬試験装置。
【請求項8】
前記変位検出部は、前記リニアモータによる前記支持台の並進運動中に変位の検出を行い、
前記制御装置は、前記変位検出部による変位の検出結果に基づく値が所定の閾値を超えている場合は、前記支持台の並進運動を停止させる制御を行うように構成されている、請求項1〜のいずれか1項に記載の運転模擬試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、運転模擬試験装置に関し、特に、並進運動可能な移動体を備えた運転模擬試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、並進運動可能な移動体を備え、移動体内の模擬車両に対する運転操作に応じて移動体を並進運動させる運転模擬試験装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、支持台をX方向に移動させるベルト駆動方式のX方向移動機構と、支持台上に設置され、ドーム設置台をY方向に移動させるベルト駆動方式のY方向移動機構とを備えた運転模擬試験装置が開示されている。ドーム設置台上には、模擬車両を収容したドームからなる移動体が設置されている。X方向移動機構およびY方向移動機構によって、ドーム(移動体)がX方向およびY方向に並進運動される。
【0004】
しかし、上記特許文献1のようなベルト駆動方式では、ベルトを急激に変動させた場合にベルトに滑りが生じるため、移動体の加速度を大きくすることが困難であり、加減速性能や速度の立ち上がりの応答性の更なる向上を実現することは困難である。そこで、並進運動の駆動源として、ベルト駆動方式に代えてリニアモータおよび直動ガイドを含むリニアモータ駆動方式を採用することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−33561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、加減速性能や応答性を向上させるためにリニアモータ駆動方式を採用した場合、運転模擬試験装置の支持台は、加減速性能や応答性を向上させるためにできるだけ軽量化されるため、剛性が低く(変形しやすく)なり易い。この場合に、運転模擬試験装置の加減速性能が向上されて大きな加速度で支持台が並進運動されると、重量物(移動体など)が設置された支持台の変形も大きくなる。その結果、支持台の大きな変形に起因して、支持台を移動させるためのリニアモータの可動子および固定子間のクリアランスの大きさが変動するため、リニアモータの推力ムラが発生する場合があり、その場合には、安定して動作させることが困難になるという問題点が生じると考えられる。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、リニアモータ駆動方式および軽量化された支持台を採用した場合にも、安定した動作が可能な運転模擬試験装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、この発明による運転模擬試験装置は、模擬車両を含む移動体と、移動体を支持するとともに水平面内の第1方向に移動する支持台と、第1方向に沿って延びるように設けられ、支持台を第1方向に並進運動させるリニアモータと、第1方向に沿って延びるように設けられ、接触状態で支持台を第1方向に移動可能に支持するとともに、水平面内で第1方向と直交する第2方向の移動を拘束する直動ガイドと、第1方向に沿って延びるように設けられ、リニアモータおよび直動ガイドが配置される基台と、支持台の複数の基準位置に設置され、支持台と共に移動しながら基台に設けられた基準面と複数の基準位置との間の第2方向の変位を検出する複数の変位検出部と、支持台の並進運動を制御するとともに、複数の変位検出部による基準面に対する複数の変位の検出結果に基づいて、並進運動中の支持台の変形を監視する制御装置と、を備える。
【0009】
この運転模擬試験装置では、上記のように、支持台および基台の少なくとも一方に、水平面内で第1方向と直交する第2方向における、基台および支持台の基準位置間の変位を検出する変位検出部を設ける。これにより、基台および支持台にそれぞれ設定した基準位置間の第2方向の変位(位置ずれ)を取得することができる。支持台は、基台上の直動ガイドによって第2方向には移動しないように支持されるため、第2方向の変位の検出結果に基づいて、支持台の変形量を評価することが可能となる。その結果、たとえば運転中の変位量を監視してリニアモータの推力ムラを生じるような支持台の変形を早期に把握して対処することができる。これにより、本発明によれば、リニアモータ駆動方式および軽量化された支持台を採用した場合にも、安定した動作が可能な運転模擬試験装置を提供することが可能となる。また、支持台側に変位検出部を設置するだけで、容易に、並進運動に伴う支持台の変形をリアルタイムで検出して、支持台の変形が許容範囲内にあるか否かを監視することができる。
【0010】
上記の運転模擬試験装置において、好ましくは、リニアモータは、支持台に固定された可動子と、基台に固定された固定子とを含み、可動子および固定子は、第2方向において互いに対向するように配置されており、変位検出部は、可動子および固定子の近傍における基台の基準面および支持台の基準位置間の変位を検出するように構成されている。このように構成すれば、可動子−固定子間のクリアランスの方向が変位検出部による検出される変位の方向(第2方向)と一致するので、第2方向の変位の検出結果に基づいて、精度よくクリアランスの変動を把握することができる。その結果、たとえば、第2方向の変位の検出結果に基づいて、可動子−固定子間のクリアランスが許容範囲内に維持されていることを確認することが可能となる。また、可動子および固定子の近傍における変位を検出するように変位検出部を構成することにより、可動子−固定子間のクリアランスに大きく影響する可動子および固定子の近傍の支持台の変形を精度よく把握することが可能となる。
【0011】
この場合、好ましくは、変位検出部は、第2方向において、基台上に配置されたリニアモータと直動ガイドとの間の位置に配置されている。このように構成すれば、支持台への推力の作用点であるリニアモータと、第2方向に沿った支持台の移動を拘束して第2方向の荷重を支持する支持点である直動ガイドとの間の位置での変位を検出することが可能となる。すなわち、推力によって生じた支持点周りのモーメントによる支持台の変形を評価することができる。この結果、変位検出部による変位の検出結果に基づいて、支持台上の積載物(移動体など)による支持台の変形だけでなく、リニアモータが発生する推力に起因する支持台の変形をも評価することが可能となる。
【0013】
上記の運転模擬試験装置において、好ましくは、基台は、上面に設けられ第1方向に延びる凹部を含み、凹部の底面には、リニアモータが配置され、変位検出部は、基台の凹部の内側面を基準面として、内側面と変位検出部との間の変位を検出するように構成されている。このように構成すれば、リニアモータの設置部としての凹部の内側面を利用して、容易に、第1方向に延びる基準面を基台に形成することができる。また、基準面を基台に直接形成することができるので、基準面となる部材を別途用意する必要がなく、部品点数の増大および構造の複雑化を抑制することができる。
【0014】
上記変位検出部が支持台の基準位置に設置される構成において、好ましくは、変位検出部は、支持台の第1方向の一方側端部近傍の基準位置と、支持台の第1方向の他方側端部近傍の基準位置とに、それぞれ設置されている。このように構成すれば、支持台の第1方向の一方側および他方側の各位置における変位の検出結果から、支持台の全体的な変形量を評価することが可能となる。これにより、支持台の第2方向への変形が第1方向の全体にわたって許容範囲内にあることを確認することが可能となるので、可動子−固定子間のクリアランス変動の増減を確認し、その経緯を監視することにより、運転模擬試験装置の安定した運用を図ることができる。
【0015】
上記変位検出部が支持台の基準位置に設置される構成において、好ましくは、基台は、支持台の第2方向の中心に対して第2方向の一方側に配置された一方基台と、支持台の第2方向の中心に対して第2方向の他方側に配置された他方基台と、を含み、変位検出部は、一方基台の基準面および支持台の基準位置間の変位と、他方基台の基準面および支持台の基準位置間の変位とを、それぞれ検出するように複数設けられている。このように構成すれば、支持台の第2方向における一方側の一方基台上での変形量と、他方側の他方基台上での変形量とをそれぞれ把握することが可能となる。これにより、支持台の第2方向の一方側および他方側の両方において、支点反力や推力が作用して応力が集中しやすい各基台上での支持台の変形をより容易かつ精度よく評価し、支持台の変形がそれぞれの基台上で許容範囲内にあることを確認することが可能となる。
【0016】
上記変位検出部が支持台の基準位置に設置される構成において、好ましくは、変位検出部は、第1方向および第2方向における同一の基準位置において、上下方向に間隔を隔てて複数設けられ、上下方向の異なる高さ位置における、基台の基準面および支持台の基準位置間の変位をそれぞれ検出するように構成されている。このように構成すれば、水平面内の支持台の撓み変形に加えて、異なる高さ位置における変位の検出結果に基づいて、支持台のねじれ変形を評価することが可能となる。これにより、各種の方向の支持台の変形が許容範囲内に維持されていることを確認することができるので、運転模擬試験装置をより安定して動作させることが可能となる。
【0017】
上記の運転模擬試験装置において、好ましくは、変位検出部は、リニアモータによる支持台の並進運動中に変位の検出を行制御装置は、変位検出部による変位の検出結果に基づく値が所定の閾値を超えている場合は、支持台の並進運動を停止させる制御を行うように構成されている。このように構成すれば、変位の検出結果、あるいは検出結果に基づく支持台の変形量などの値を評価する所定の閾値を予め設定しておくことにより、許容範囲外となる支持台の変形を防止するための安全制御を行うことが可能となる。これにより、リニアモータ駆動方式を採用して高加速度での並進動作を可能とした場合にも、支持台の変形を許容範囲内に収めて安定した運転が可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、上記のように、リニアモータ駆動方式および軽量化された支持台を採用した場合にも、安定した動作が可能な運転模擬試験装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】一実施形態による運転模擬試験装置の全体構成を示す模式的な斜視図である。
図2】一実施形態による運転模擬試験装置の全体構成を示す模式的な平面図である。
図3】Y軸並進機構をY方向から見た模式図である。
図4】第1基台をY方向から見た模式図である。
図5】リニアモータのコイル部と永久磁石との間のクリアランスと変位検出部が検出する変位とを説明するための図4の部分拡大図である。
図6】Yサドルにおける基準位置の配置を説明するための模式的な平面図である。
図7】X軸並進機構をX方向から見た模式図である。
図8】運転模擬試験装置の変位監視処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1図7を参照して、一実施形態による運転模擬試験装置100について説明する。
【0022】
(運転模擬試験装置の概要)
図1に示すように、本実施形態による運転模擬試験装置100は、ユーザが搭乗可能な模擬車両を備え、模擬車両内におけるユーザの運転操作に応じた車両の運転走行をシミュレートする装置(いわゆるドライビングシミュレータ)である。
【0023】
本実施形態の運転模擬試験装置100は、ユーザが搭乗可能な模擬車両1aを収容するドーム1を移動させることにより、運転中に発生する加速度をシミュレート可能なように構成されている。後述するように、運転模擬試験装置100は、模擬車両1aに設定した直交座標系における3軸方向(Z、X、Y方向)および3軸周りの回転方向(ヨー、ピッチ、ロール方向)の合計6軸方向に、模擬車両1aを動かすことが可能である。なお、X、Y方向は、水平面内で直交する2方向であり、Z方向はXおよびY方向と直交する上下方向である。ヨー、ピッチ、ロール方向は、それぞれ、Z軸、X軸、Y軸周りの回転方向である。Y方向およびX方向は、それぞれ、特許請求の範囲の「第1方向」および「第2方向」の一例である。
【0024】
図1および図2に示すように、運転模擬試験装置100は、模擬車両1aを含むドーム1と、ドーム1をY方向に移動させるためのY軸並進機構2とを備える。また、運転模擬試験装置100は、ドーム1をX方向に移動させるためのX軸並進機構3を備える。なお、ドーム1は、特許請求の範囲の「移動体」の一例である。
【0025】
また、運転模擬試験装置100は、ドーム1を揺動駆動可能に支持するヘキサポッド機構(揺動機構)4を備える。運転模擬試験装置100は、下方から、Y軸並進機構2、X軸並進機構3、ヘキサポッド機構4、ドーム1をこの順番で積み上げた構成を有している。運転模擬試験装置100は、これらのY軸並進機構2、X軸並進機構3およびヘキサポッド機構4の動作を組み合わせることにより、模擬車両1aを収容するドーム1を6軸方向に移動させる。運転模擬試験装置100は、運転シミュレーションの制御を行うための制御装置5を備える。制御装置5により、Y軸並進機構2、X軸並進機構3およびヘキサポッド機構4の動作が制御される。
【0026】
ドーム1は、内部に模擬車両1aを収容可能な箱状構造を有する。ドーム1は、模擬車両1aの周囲に設置された表示装置やスピーカを備えている。模擬車両1aは人が搭乗して運転操作を行えるよう、実際の車両と同様に作られている。制御装置5は、ドーム1内のユーザの運転操作に応じて、シミュレーション画像の表示やシミュレーション音声の出力が可能である。
【0027】
ヘキサポッド機構4は、たとえば油圧シリンダや電動アクチュエータなどによりそれぞれ独立して伸縮可能な複数本(たとえば3対6本)のリンクを組み合わせて構成されたパラレルリンク機構である。ヘキサポッド機構4は、制御装置5によるそれぞれのリンクの伸縮量の制御によって、ドーム1を6軸方向に並進運動および揺動(傾斜)させることが可能である。ヘキサポッド機構4は、Xサドル6上に設置されている。
【0028】
Xサドル6は、ドーム1およびヘキサポッド機構4を支持するとともにX方向に移動する支持体である。Xサドル6は、形鋼や鋼管などの鋼材の組み合わせにより構成された網目状の骨組み構造を有する。この網目状の骨組み構造により、Xサドル6の軽量化が図られている。なお、各図では、簡略化を図るためXサドル6を平板として図示している。Xサドル6は、全体として略矩形の平板状の外形形状に形成されている。Xサドル6は、たとえば約3m〜約7m(X寸法)×約2m〜約4m(Y寸法)程度の大きさを有する。
【0029】
X軸並進機構3は、制御装置5による駆動制御に従って、Xサドル6(ドーム1およびヘキサポッド機構4)をX方向に移動させる。X軸並進機構3は、X方向に延びるYサドル7上に設置されている。Yサドル7は、特許請求の範囲の「支持台」の一例である。
【0030】
Yサドル7は、ドーム1、ヘキサポッド機構4およびX軸並進機構3を支持するとともにY方向に移動する支持台である。Yサドル7は、形鋼や鋼管などの鋼材の組み合わせにより構成された網目状の骨組み構造を有する。この網目状の骨組み構造により、Yサドル7の軽量化が図られている。なお、各図では、簡略化を図るためYサドル7を平板として図示している。Yサドル7は、Y軸並進機構2の後述する複数の基台(第1基台10a1、10a2および第2基台10b)の各々に架け渡されるように、全体としてX方向に延びる長方形の平板状形状に形成されている。Yサドル7は、たとえば約10m〜約15m(X寸法)×約3m〜約7m(Y寸法)程度の大きさを有する。第1基台10a1は、特許請求の範囲の「基台」および「一方基台」の一例である。第1基台10a2は、特許請求の範囲の「基台」および「他方基台」の一例である。
【0031】
Y軸並進機構2は、制御装置5による駆動制御に従って、Yサドル7(ドーム1)をY方向に移動させる。本実施形態では、X軸並進機構3およびY軸並進機構2は、後述するように、それぞれの直動ガイド41とリニアモータ51との組み合わせにより構成されている。
【0032】
このように、運転模擬試験装置100は、Xサドル6とYサドル7とを備えている。Yサドル7がY軸並進機構2によってY方向に移動され、Xサドル6がYサドル7上のX軸並進機構3によってX方向に移動される。したがって、ドーム1は、Y軸並進機構2およびYサドル7によってY方向に移動可能に支持されている。ドーム1は、X軸並進機構3およびXサドル6によってX方向に移動可能に支持されている。
【0033】
本実施形態の構成例では、Y軸並進機構2は、2つの並進機構の内の長軸側であり、Y方向の動作範囲(ストローク量)は非常停止のための予備ストロークも含めて約25m〜約35mである。Y軸並進機構2は、Y方向において約10m/s(約1G)以上の加速度を発生させることが可能である。X軸並進機構3は、短軸側であり、X方向のストローク量は非常停止のための予備ストロークも含めて約5m〜約10mである。X軸並進機構3は、X方向において約3m/s以上の加速度を発生させることが可能である。
【0034】
Y軸並進機構2のY方向の動作範囲の両端部と、X軸並進機構3のX方向の動作範囲の両端部とには、それぞれ、非常停止用のダンパ機構8が複数ずつ設けられている。ダンパ機構8は、予備ストローク領域を超えた場合のXサドル6またはYサドル7とそれぞれ接触して、制動力を付与しながらXサドル6またはYサドル7をそれぞれ停止させる。
【0035】
(Y軸並進機構の構造)
次に、Y軸並進機構2の構造について詳細に説明する。
【0036】
本実施形態では、図2に示すように、運転模擬試験装置100は、Y方向に沿って延びる第1基台10a1、第1基台10a2および第2基台10bと、ドーム1を並進運動させる際のガイドとなる並進ガイド部20と、ドーム1をY方向に並進運動させる並進駆動部30と、を備える。第1基台10a1、10a2および第2基台10bと、並進ガイド部20および並進駆動部30とにより、Y軸並進機構2が構成されている。
【0037】
また、運転模擬試験装置100は、Yサドル7をY方向に移動可能に支持する直動ガイド21を備える。直動ガイド21は、Y方向に沿って延びるように設けられている。各々の並進ガイド部20が、Y方向に沿って延びる複数(2本)の直動ガイド21(図4参照)により構成されている。
【0038】
また、運転模擬試験装置100は、Yサドル7をY方向に並進運動させるリニアモータ31を備える。リニアモータ31は、Y方向に沿って延びるように設けられている。各々の並進駆動部30が、Y方向に沿って延びる複数(4本)のリニアモータ31(図4参照)により構成されている。
【0039】
本実施形態では、図3に示すように、運転模擬試験装置100は、第1基台10a1(10a2)の基準位置とYサドル7の基準位置との間の変位(距離)D(図5参照)を検出する変位検出部60を備えている。本実施形態では、変位検出部60は、Yサドル7に設けられ、X方向における第1基台10a1(10a2)の基準位置(内側面13(図5参照))とYサドル7の基準位置(後述するP1〜P8(図6参照))との間の変位Dを検出するように構成されている。ここで、Yサドル7は、合計12本の直動ガイド21(6つの並進ガイド部20)によってX方向移動が拘束されている。そのため、変位検出部60の変位Dの検出結果から、Yサドル7のX方向の変形を把握することが可能である。変位検出部60は、後述するように合計10箇所に設けられ、それぞれが制御装置5に接続されている。制御装置5は、変位検出部60の検出結果に基づいてY軸並進機構2の制御を行う。この変位検出部60については、後に詳細に説明する。
【0040】
〈基台〉
図2および図3に示すように、第1基台10a1、10a2および第2基台10bは、それぞれY方向に沿って延びるように設けられている。第1基台10a1、10a2および第2基台10bは、平面視でX方向に互いに等間隔で離間して配置されている。各基台(10a1、10a2、10b)は、直線状に形成されている。各基台(10a1、10a2、10b)は、平面視で矩形状を有する。各基台(10a1、10a2、10b)は、金属材料(鋳鉄や鋼材など)により構成されている。各基台(10a1、10a2、10b)は、設置面FL(図3参照)上に固定されている。各基台(10a1、10a2、10b)は、それぞれ、たとえばY方向に数m単位で分割されており、分割部分をY方向に沿って連結することにより長尺の基台として構成されている。各基台(10a1、10a2、10b)は、たとえばY方向の全長で約40m〜約50mの長さを有する。各基台(10a1、10a2、10b)のY方向の両端部には、それぞれ、ダンパ機構8が配置されている。
【0041】
図3に示すように、各基台(10a1、10a2、10b)は、上面に設けられY方向に延びる凹部11を含む。凹部11は、各基台(10a1、10a2、10b)のX方向の中央部において、Z方向(下方向)に窪んでいる。各基台(10a1、10a2、10b)は、凹部11のX方向の両側の壁部12が凹部11の底面に対して上方に突出したU字状形状(XZ断面の形状)を有する。凹部11の底面(上面)および壁部12の上面はそれぞれ平坦面として形成されている。また、凹部11の内側面13は、凹部11の底面(上面)および壁部12の上面に対して直交し、Y方向に延びる平坦面からなる。内側面13は、特許請求の範囲の「基準面」および「基準位置」の一例である。
【0042】
第1基台10a1は、Yサドル7のX方向の中心に対してX方向の一方側(X1方向側)に配置され、第1基台10a2は、Yサドル7のX方向の中心に対してX方向の他方側(X2方向側)に配置されている。第1基台10a1と10a2とは、X方向においてYサドル7の中心から同じ間隔を隔てて配置されている。各第1基台10a1(10a2)には、複数(2つ)の並進駆動部30および複数(2つ)の並進ガイド部20が、X方向に並んで配置されている。すなわち、第1基台10a1(10a2)には、リニアモータ31および直動ガイド21が配置されている。
【0043】
また、第2基台10bは、Yサドル7のX方向の中心又はほぼ中心を通る位置に配置されている。第2基台10bは、Yサドル7のX方向の中心又はほぼ中心でYサドル7を支持している。したがって、Y軸並進機構2の全体としては、Yサドル7のX方向の一方側および他方側と、X方向の中心又はほぼ中心との3箇所で、3つの基台(第1基台10a1、10a2および第2基台10b)がそれぞれYサドル7を支持している。第2基台10bには、並進駆動部30が設けられずに並進ガイド部20が配置されている。つまり、第2基台10bの凹部11には、並進駆動部30が設置されておらず、第2基台10bの凹部11は配線ダクト80の設置部として構成されている。
【0044】
配線ダクト80は、変形可能であり、第2基台10bの凹部11上に湾曲部を介して上下に重なる(図1参照)ように配置されている。配線ダクト80は、第2基台10bのほか、3列の基台のX方向の両外側に配置されたダクト支持部81上にも配置されている。配線ダクト80は、第2基台10bおよび2つのダクト支持部81上において、Yサドル7に対してY方向の両側にそれぞれ延びるように対で設けられている。
【0045】
配線ダクト80内には、並進駆動部30への配線(動力線、信号線)、変位検出部60への配線、X軸並進機構3への配線、ヘキサポッド機構4およびドーム1への配線やホースなどの各種の配線部材が配置される。第2基台10b上およびダクト支持部81上の各配線ダクト80は、固定端側では凹部11に沿って敷かれ、湾曲部を形成してからYサドル7に接続されており、Yサドル7の移動に伴って、配線ダクト80は、湾曲部を形成する部分が変化するようにYサドル7の移動に追従する。配線ダクト80は、各種の配線部材を、端子ボックスを介してYサドル7、Xサドル6、ヘキサポッド機構4およびドーム1などの各部まで引き回すために設けられている。
【0046】
〈並進ガイド部〉
並進ガイド部20は、それぞれの基台(10a1、10a2、10b)上に設置され、Yサドル7をY方向に移動可能に支持している。並進ガイド部20によって、Yサドル7のX方向およびZ方向の移動が拘束されている。
【0047】
図3および図4に示すように、本実施形態では、並進ガイド部20は、各基台(10a1、10a2、10b)のX方向の両端部近傍に一対ずつ配置されている。すなわち、並進ガイド部20は、各基台(10a1、10a2、10b)のX方向両側の壁部12の上面上に、それぞれ設置されている。
【0048】
各並進ガイド部20は、X方向において、各基台(10a1、10a2、10b)の中心位置に対して対称に配置されている。また、各並進ガイド部20は、各基台(10a1、10a2、10b)の壁部12の上面上において同じ高さ位置に設置されている。
【0049】
直動ガイド21は、図4に示すように、直線状に延びる案内レール22と、案内レール22に係合するスライドブロック23とによって構成されている。スライドブロック23の案内レール22側の内面部には、ボールまたはローラ(ころ)などの転動体(図示せず)が収容されている。直動ガイド21は、転動体の転がりによって、案内レール22に沿ってスライドブロック23を低抵抗かつ精密に移動させることが可能である。
【0050】
案内レール22は、各基台(10a1、10a2、10b)の壁部12の上面上に固定されている。スライドブロック23は、Yサドル7の下面に固定されている。スライドブロック23は、1本の案内レール22上に複数配置(図7参照)されている。
【0051】
〈並進駆動部〉
図3および図4に示すように、並進駆動部30(リニアモータ31)は、第1基台10a1(10a2)の凹部11の底面に配置されている。並進駆動部30は、各第1基台10a1(10a2)の両端にわたってY方向に直線状に延びる(図2参照)ように形成され、Yサドル7にY方向の推力を付与することが可能である。並進駆動部30は、図4に示すように、第1基台10a1(10a2)の一対の並進ガイド部20(直動ガイド21)の間の位置に一対配置されている。そのため、Y軸並進機構2の全体(図3参照)としては、2列の第1基台10a1および10a2上の合計4箇所に並進駆動部30が設けられている。
【0052】
各並進駆動部30は、X方向において、第1基台10a1(10a2)の中心位置に対して対称に配置されている。また、各並進駆動部30は、第1基台10a1の凹部11内の上面上において同じ高さ位置に設置されている。
【0053】
並進駆動部30は、一体化された複数のリニアモータ31により構成されている。図4に示した例では、個々の並進駆動部30の4本のリニアモータ31が一体化されている。なお、一体化とは、ここでは、複数のリニアモータ31のそれぞれの可動子およびそれぞれの固定子が、対応する共通の構造体(可動子ユニット、固定子ユニット)に一体的に組み付けられている構造を意味する。
【0054】
図4の構成例では、並進駆動部30は、複数のリニアモータ31の固定子を一体化した固定子ユニット32と、複数のリニアモータ31の可動子を一体化した可動子ユニット33とを含む。固定子ユニット32が第1基台10a1上に設置され、可動子ユニット33がYサドル7の下面側に設置されている。
【0055】
固定子ユニット32は、Y方向に沿って延びるU字状断面の支持部と、支持部の一対の支持壁32aの内側表面(対向面)に設置された永久磁石32bとを構成単位(単一の固定子)とする。固定子ユニット32は、構成単位の一部(支持壁32a)を共通化してX方向に4つ配列した結果、5つの支持壁32aにより櫛歯状の断面形状に形成されている。永久磁石32bは、各支持壁32aの互いに対向する内側表面にそれぞれ設けられている。永久磁石32bは隣接する支持壁32aの間で所定間隔を隔ててX方向に対向する。対向する一対の永久磁石32bは対向面が互いに異極となるように着磁され、それぞれY方向に沿ってS極とN極とが交互に並ぶように配列されている。永久磁石32bは、特許請求の範囲の「固定子」の一例である。
【0056】
可動子ユニット33は、固定子ユニット32の永久磁石32b間の4箇所の隙間部分にそれぞれ配置された4つのコイル部33aを備える。また、可動子ユニット33は、固定子ユニット32の上方で固定子ユニット32と上下に対向するように配置された支持ブロック33bを備える。支持ブロック33bは、Yサドル7の下面に固定されている。4つのコイル部33aは、それぞれ、支持ブロック33bの下面から下方に延びるように設けられている。コイル部33aと永久磁石32bとは、X方向において互いに対向するように配置されている。図5に示すように、コイル部33a(可動子)と永久磁石32b(固定子)とは、所定のクリアランスCLを隔てて対向している。可動子ユニット33は、X方向に対向する一対の永久磁石32bによるX方向の磁界中に配置されたコイル部33aに電流供給が行われることにより、Y方向の推力を発生させる。コイル部33aは、特許請求の範囲の「可動子」の一例である。
【0057】
リニアモータ31は、コアレス型リニアモータである。すなわち、可動子ユニット33のコイル部33aに鉄芯(コア)が設けられていない。そのため、リニアモータ31は、固定子ユニット32の永久磁石32bと可動子ユニット33のコイル部33aとの間に磁気吸引力が発生しないように構成されている。
【0058】
〈変位検出部〉
変位検出部60は、変位センサにより構成されている。変位センサとしては、非接触型のセンサが好ましい。非接触型変位センサの種類は特に限定されないが、本実施形態では、たとえば渦電流型のセンサが採用されている。変位検出部60は、変位検出部60から検出対象までの距離(変位)を検出するように構成されている。
【0059】
図5に示すように、変位検出部60は、コイル部33a(可動子ユニット33)および永久磁石32b(固定子ユニット32)の近傍における、第1基台10a1(10a2)の基準位置とYサドル7の基準位置との間の変位(距離)Dを検出するように構成されている。言い換えると、変位検出部60は、それぞれの第1基台10a1(10a2)上のリニアモータ31の近傍に配置されている。本実施形態では、Yサドル7の基準位置(後述するP1〜P8(図6参照))に設置された変位検出部60が、第1基台10a1(10a2)の基準位置(内側面13)との間の変位を検出することにより、基準位置間の変位が検出される。
【0060】
具体的には、変位検出部60は、Yサドル7の基準位置に設置され、Yサドル7と共に移動しながら第1基台10a1(10a2)に設けられた基準面(内側面13)と変位検出部60の検出面60aとの間の変位Dを検出するように構成されている。変位検出部60は、第1基台10a1(10a2)の凹部11の上方(一対の壁部12の間)の位置で、検出面60aが凹部11の内側面13とX方向に所定間隔を隔てて対向するようにYサドル7に設置されている。これにより、変位検出部60は、第1基台10a1(10a2)の凹部11の内側面13を基準面(基準位置)として、内側面13と変位検出部60の検出面60aとの間の変位(距離)Dを検出するように構成されている。
【0061】
また、本実施形態では、図3に示したように、変位検出部60は、第1基台10a1およびYサドル7の基準位置間の変位Dと、第1基台10a2およびYサドル7の基準位置間の変位Dとをそれぞれ検出するように、複数設けられている。
【0062】
具体的には、変位検出部60は、X方向において、各第1基台10a1および10a2上に配置されたリニアモータ31と直動ガイド21との間の位置にそれぞれ配置されている。本実施形態では、変位検出部60は、第1基台10a1および10a2の各々における、X1方向側のリニアモータ31(並進駆動部30)と直動ガイド21(並進ガイド部20)との間の位置、および、X2方向側のリニアモータ31(並進駆動部30)と直動ガイド21(並進ガイド部20)との間の位置に、それぞれ配置されている。言い換えると、変位検出部60は、第1基台10a1および10a2のそれぞれにおいて、リニアモータ31と直動ガイド21との間に形成された内側面13と、Yサドル7の基準位置との間の変位を検出する。変位検出部60(すなわち、Yサドル7の基準位置)は、第1基台10a1の2つの内側面13(13a、13b)および第1基台10a2の2つの内側面13(13c、13d)に対応するように、Yサドル7にそれぞれ設けられている。
【0063】
なお、図5に示したように、変位検出部60の検出面60aは、リニアモータ31と直動ガイド21(図4参照)との間で、リニアモータ31からは所定の距離Lを隔てて配置されている。コアレス型のリニアモータは、可動子(コイル部33a)にコアが無いため、コア付き型と比較して外部への磁束漏れが大きい。変位検出部60の検出面60aが距離Lだけリニアモータ31から離間することにより、変位検出部60の検出面60aに外部磁界(リニアモータ31の磁界)の影響が及ばないようになっている。外部磁界の影響を受けない(受けにくい)変位センサを変位検出部60に採用する場合、変位検出部60をリニアモータ31に近接させてもよい。
【0064】
また、変位検出部60は、図6に示すように、Yサドル7のY方向の一方側(Y1方向側)端部近傍の基準位置(P2、P4、P6、P8)と、Yサドル7のY方向の他方側(Y2方向側)端部近傍の基準位置(P1、P3、P5、P7)とに、それぞれ設置されている。したがって、第1基台10a1および第1基台10a2のそれぞれの内側面13に対する変位が、Yサドル7においてY方向に離間した各基準位置の変位検出部60によってそれぞれ計測される。なお、図6では、Yサドル7のX方向の両端および中央部を省略している。
【0065】
さらに、図5に示したように、変位検出部60は、Y方向およびX方向における同一の基準位置において、上下方向に間隔を隔てて複数設けられ、上下方向の異なる高さ位置における、第1基台10a1(10a2)およびYサドル7の基準位置間の変位Dをそれぞれ検出するように構成されている。本実施形態では、図6に示すように、4つの内側面13のうち、X方向の両外側の2つの内側面13aおよび13dに対応し、かつ、Y2方向側の端部に位置する2箇所の基準位置(P1、P7)において、変位検出部60が上下に2つずつ並んで配置されている。上下に並んだ2つの変位検出部60の検出面60aは、それぞれ共通の内側面13(図5参照)に対向している。図示は省略するが、その他の基準位置では、変位検出部60が1つずつ配置されている。上下に並んだ2つの変位検出部60のうち、下側の変位検出部60は、その他の基準位置で1つずつ配置された変位検出部60の配置高さ位置と一致している。基準位置P1およびP7の上側の変位検出部60が、他の変位検出部60よりも上方位置に配置されている。
【0066】
以上を総合すると、Yサドル7側の基準位置は、第1基台10a1(10a2)の1つの内側面13に対して、Yサドル7のY2方向側端部とY1方向側端部とに2箇所設定されている。つまり、図6に示したように、第1基台10a1の内側面13aに対して基準位置P1およびP2が設定され、第1基台10a1の内側面13bに対して基準位置P3およびP4が設定されている。同様に、第1基台10a2の内側面13cに対して基準位置P5およびP6が設定され、第1基台10a2の内側面13dに対して基準位置P7およびP8が設定されている。したがって、第1基台10a1および第1基台10a2の合計4つの内側面13に対応して、Yサドル7側の基準位置は合計8箇所(P1〜P8)に設定されている。
【0067】
そして、合計8箇所の基準位置(P1〜P8)のうち、X方向両端かつY2方向側の2箇所(P1、P7)では、2つの変位検出部60(図5参照)が上下に間隔を隔てて配置されており、残りの6箇所(P2〜P6、P8)では、変位検出部60がそれぞれ1つずつ配置されている。この結果、合計8箇所の基準位置P1〜P8において、変位検出部60が合計10個設けられている。
【0068】
図5に示したように、それぞれの基準位置P1〜P8において、変位検出部60は、ブラケット61を介してYサドル7に固定されている。本実施形態では、基準位置がYサドル7のY方向端部にそれぞれ設定されているため、ブラケット61は、Yサドル7のY方向端面に取り付けられている。ブラケット61は、Yサドル7の端面から凹部11の底面に向けて下向きに延びており、内側面13とX方向に対向するブラケット61の下端側の位置で変位検出部60を保持している。図5に示す例では、ブラケット61は、直交する取付面62および63を有するLアングル(断面L字状の部材)である。すなわち、X方向に沿う取付面62がYサドル7の端面に取り付けられ、Y方向に沿う取付面63に対して変位検出部60がX方向の内側面13側に向けて固定されている。
【0069】
なお、上記の通り、第1基台10a1および第1基台10a2の各々において、Yサドル7はX方向の両側の直動ガイド21(並進ガイド部20)によってX方向移動が拘束されている。このため、第1基台10a1(10a2)上の各5箇所の変位検出結果は、主としてX方向両側の直動ガイド21の間の領域(リニアモータ31の上側領域)におけるYサドル7の変形に起因すると考えることができる。
【0070】
図6に示したように、本実施形態の構成において、同一の内側面13(たとえば13a)に対する変位(距離)がY1方向側端部(P2)とY2方向側端部(P1)とで異なる場合、Yサドル7がXY平面内でX方向側に曲がる撓み変形の発生(可動子ユニット33のY方向の真直度の低下)が読み取れる。また、同一の基準位置(たとえばP1)における上下2箇所の変位Dが相違する場合、両側の直動ガイド21の間でのY軸周りのねじれ変形の発生が読み取れる。このように、合計10箇所の変位Dの検出結果から、Yサドル7の様々な変形を読み取ることが可能である。そして、このように検出したX方向変位から、Yサドル7の変形に起因するリニアモータ31の可動子(コイル部33a)(図5参照)と固定子(永久磁石32b)との間のクリアランスCLの変動量も推定することが可能である。
【0071】
(X軸並進機構の構造)
次に、X軸並進機構3の構造について説明する。図7に示すX軸並進機構3は、基本的な構造はY軸並進機構2と同様であるので、簡略化して説明する。なお、図7では、Xサドル6上のヘキサポッド機構4等を省略している。
【0072】
運転模擬試験装置100は、ドーム1をX方向に並進運動させる1つの並進駆動部50と、ドーム1をX方向に並進運動させる際のガイドとなる4つの並進ガイド部40とを備える。並進駆動部50および並進ガイド部40により、X軸並進機構3が構成されている。
【0073】
本実施形態では、並進駆動部50は、X方向に沿って延びる3本のリニアモータ51により構成されている。各々の並進ガイド部40は、X方向に沿って延びる1本または2本の直動ガイド41により構成されている。
【0074】
4つの並進ガイド部40は、Y方向に間隔を隔てて設けられている。並進ガイド部40は、それぞれのYサドル7上に設置され、Xサドル6をX方向に移動可能に支持している。4つの並進ガイド部40は、Yサドル7のY1方向側とY2方向側とにそれぞれ2つずつ、2対配置されている。並進ガイド部40によって、Xサドル6のY方向およびZ方向の移動が拘束されている。なお、図2に示したように、2対の並進ガイド部40のX方向の両端部に、それぞれダンパ機構8(図7では図示省略)が配置されている。
【0075】
並進駆動部50は、Yサドル7のY方向の中央近傍の位置に1つ設置されている。並進駆動部50は、Yサドル7上でX方向に直線状に延びる(図2参照)ように形成され、Xサドル6にX方向の推力を付与することが可能である。並進駆動部50は、2対の並進ガイド部40の間の位置に設置されている。
【0076】
図7に示した例では、並進駆動部50は、並進駆動部30と同様の構成を有しており、一体化された3本のリニアモータ51により構成されている。並進駆動部50は、3本のリニアモータ51の固定子を一体化した固定子ユニット52と、3本のリニアモータ51の可動子を一体化した可動子ユニット53とを含む。固定子ユニット52がYサドル7上に設置され、可動子ユニット53がXサドル6の下面側に設置されている。
【0077】
なお、2対の並進ガイド部40の間には、Yサドル7の端子ボックス(図示せず)とXサドル6の端子ボックス(図示せず)とを接続する配線ダクト80が隣接して配置されている。配線ダクト80は、2対の並進ガイド部40の間に2つ並んで配置されている。2つの配線ダクト80は、Xサドル6に対してX方向の両側(図2参照)に設けられており、合計4つの配線ダクト80がXサドル6側に接続されている。Yサドル7上の各配線ダクト80は、固定端側ではYサドル7に沿って敷かれ、湾曲部を形成してからXサドル6に接続されており、Xサドル6の移動に伴って、配線ダクト80は、湾曲部を形成する部分が変化するようにXサドル6の移動に追従する。
【0078】
(変位監視処理)
次に、図8を参照して、運転模擬試験装置100の変位検出部60を用いた変位監視処理を説明する。変位監視処理は、運転模擬試験装置100によるシミュレーション動作(Y軸並進機構2の並進動作)中に変位検出部60による変位の検出結果を監視する処理である。変位監視処理は、制御装置5によって行われる。
【0079】
運転模擬試験装置100によるシミュレーション動作が開始されると、図8のステップS1において、制御装置5は、Y軸並進機構2およびX軸並進機構3の並進運動を開始させる。制御装置5が、ドーム1内の模擬車両1aに搭乗したユーザのシミュレーションでの運転操作に伴って生じる各軸方向の加速度を反映するように、Y軸並進機構2およびX軸並進機構3を動作させる。
【0080】
ステップS2において、制御装置5は、各変位検出部60により変位検出を行う。変位検出は、Y軸並進機構2およびX軸並進機構3の並進運動と並行して行われる。このように、本実施形態では、変位検出部60は、リニアモータ31によるYサドル7の並進運動中に変位Dの検出を行うように構成されている。変位検出部60の検出結果は、並進運動中にリアルタイムで制御装置5に出力され、制御装置5の図示しない記憶部に記録される。
【0081】
ステップS3において、制御装置5は、変位検出部60による変位Dの検出結果に基づく値Vが所定の閾値Thを超えているか否かを判断する。そして、変位Dの検出結果に基づく値Vが所定の閾値Thを超えている場合には、制御装置5は、ステップS5においてY軸並進機構2およびX軸並進機構3の並進運動を停止させる。このように、本実施形態では、運転模擬試験装置100は、変位検出部60による変位Dの検出結果に基づく値Vが所定の閾値Thを超えている場合は、Yサドル7の並進運動を停止するように構成されている。
【0082】
なお、変位検出部60による変位Dの検出結果に基づく値Vは、変位の検出値そのものであってもよいし、変位Dの検出値から算出したYサドル7の各種方向の変形量(推定値)であってもよいし、変位Dの検出値から算出したリニアモータ31の可動子−固定子間のクリアランスCLの変動量(推定値)であってもよい。いずれの値を採用する場合でも、許容範囲の上限値となる所定の閾値Thを、比較対象となる値Vに応じて換算した閾値(変位検出値の閾値、Yサドル7の変形量の閾値、クリアランスCLの変動量の閾値)として設定すればよい。
【0083】
また、並進運動を停止するか否かの判定は、10個の変位検出部60の検出結果のうち複数を用いて総合的に得られた値(複数の検出結果の平均値など)を用いて閾値Thと比較してもよいし、個々の変位検出部60の検出結果に対して個別に閾値Thを設定して、複数の閾値判定結果が所定の条件を満たした場合に停止するなどの方法を採用してもよい。
【0084】
なお、ステップS3において変位検出部60による変位Dの検出結果に基づく値Vが所定の閾値Thを超えていないと判断した場合には、制御装置5は、ステップS4に処理を進める。ステップS4において、制御装置5は、並進運動を停止するか否かを判断する。制御装置5は、たとえば、シミュレーション処理が終了した場合や、図示しない入力装置から運転停止の指示が入力された場合などに、並進運動を停止すると判断する。
【0085】
並進運動を停止しないと判断した場合、制御装置5は、ステップS2に処理を戻し、変位監視処理を継続する。並進運動を停止すると判断した場合、制御装置5は、ステップS5に処理を進め、Y軸並進機構2およびX軸並進機構3の並進運動を停止させる。
【0086】
以上のように、運転模擬試験装置100の変位監視処理が行われる。変位監視処理を行う変位検出部60および制御装置5は、Yサドル7の変形量を監視して、変形量が閾値Thとして設定された許容範囲内に維持された状態での安定した動作を確保するための安全装置として機能する。また、動作中の10個の変位検出部60の検出結果の記録から、シミュレーション中のYサドル7にどのような変形が生じたかを詳細に検討することが可能である。そのため、加減速性能を維持しつつYサドル7の変形をさらに抑制するための改修や、効果的な運転制御方法を検討するための基礎データを収集することも可能となる。
【0087】
(本実施形態の効果)
次に、本実施形態の効果について説明する。
【0088】
本実施形態では、上記のように、Yサドル7に、水平面内でY方向と直交するX方向における、第1基台10a1(10a2)およびYサドル7の基準位置間の変位Dを検出する変位検出部60を設ける。これにより、第1基台10a1(10a2)およびYサドル7にそれぞれ設定した基準位置間のX方向の変位D(位置ずれ)を取得することができる。Yサドル7は、第1基台10a1(10a2)上の直動ガイド21によってX方向には移動しないように支持されるため、X方向の変位Dの検出結果に基づいて、Yサドル7の変形量を評価することが可能となる。その結果、運転中の変位量を監視して、リニアモータ31の推力ムラを生じるようなYサドル7の変形を早期に把握して対処することができる。これにより、本実施形態によれば、リニアモータ駆動方式および軽量化されたYサドル7を採用した運転模擬試験装置100においても、安定した動作が可能となる。
【0089】
また、本実施形態では、上記のように、リニアモータ31のコイル部33a(可動子)および永久磁石32b(固定子)をX方向において互いに対向するように配置し、変位検出部60を、コイル部33aおよび永久磁石32bの近傍における第1基台10a1(10a2)およびYサドル7の基準位置間の変位Dを検出するように構成する。これにより、コイル部33a(可動子)−永久磁石32b(固定子)間のクリアランスCLの方向が変位検出部60による検出される変位Dの方向(X方向)と一致するので、X方向の変位Dの検出結果に基づいて、精度よくクリアランスCLの変動を把握することができる。その結果、たとえば、X方向の変位Dの検出結果に基づいて、コイル部33a−永久磁石32b間のクリアランスCLが許容範囲内に維持されていることを確認することが可能となる。また、コイル部33aおよび永久磁石32bの近傍における変位Dを検出するように変位検出部60を構成することにより、コイル部33a−永久磁石32b間のクリアランスCLに大きく影響するリニアモータ31の近傍のYサドル7の変形を精度よく把握することが可能となる。
【0090】
また、本実施形態では、上記のように、変位検出部60を、X方向において、第1基台10a1(10a2)上に配置されたリニアモータ31と直動ガイド21との間の位置に配置する。これにより、Yサドル7への推力の作用点であるリニアモータ31と、X方向に沿ったYサドル7の移動を拘束してX方向の荷重を支持する支持点である直動ガイド21との間の位置での変位Dを検出することが可能となる。すなわち、推力によって生じた支持点周りのモーメントによるYサドル7の変形を評価することができる。この結果、変位検出部60による変位Dの検出結果に基づいて、Yサドル7上の積載物(移動体など)によるYサドル7の変形だけでなく、リニアモータ31が発生する推力に起因するYサドル7の変形をも評価することが可能となる。
【0091】
また、本実施形態では、上記のように、変位検出部60をYサドル7の基準位置に設置し、Yサドル7と共に移動しながら第1基台10a1(10a2)に設けられた基準面(内側面13)と変位検出部60との間の変位Dを検出するように構成する。これにより、Yサドル7側に変位検出部60を設置するだけで、容易に、並進運動に伴うYサドル7の変形をリアルタイムで検出して、Yサドル7の変形が許容範囲内にあるか否かを監視することができる。
【0092】
また、本実施形態では、上記のように、第1基台10a1(10a2)の凹部11の底面にリニアモータ31を配置し、変位検出部60を、第1基台10a1(10a2)の凹部11の内側面13を基準面として、内側面13と変位検出部60との間の変位Dを検出するように構成する。これにより、リニアモータ31の設置部としての凹部11の内側面13を利用して、容易に、Y方向に延びる基準面を第1基台10a1(10a2)に形成することができる。また、基準面(内側面13)を第1基台10a1(10a2)に直接形成することができるので、基準面となる部材を別途用意する必要がなく、部品点数の増大および構造の複雑化を抑制することができる。
【0093】
また、本実施形態では、上記のように、変位検出部60を、Yサドル7のY1方向側端部近傍の基準位置(P2、P4、P6、P8)と、Yサドル7のY2方向側端部近傍の基準位置(P1、P3、P5、P7)とに、それぞれ設置する。これにより、Yサドル7のY1方向側およびY2方向側の各位置における変位の検出結果から、Yサドル7の全体的な変形量を評価することが可能となる。その結果、Yサドル7のX方向への変形がY方向の全体にわたって許容範囲内にあることを確認することが可能となるので、コイル部33a−永久磁石32b間のクリアランス変動の増減を確認し、その経緯を監視することにより、運転模擬試験装置100の安定した運用を図ることができる。
【0094】
また、本実施形態では、上記のように、X1方向側の第1基台10a1およびYサドル7の基準位置間の変位Dと、X2方向側の第1基台10a2およびYサドル7の基準位置間の変位Dとをそれぞれ検出するように、変位検出部60を複数設ける。これにより、Yサドル7のX1方向側の第1基台10a1上での変形量と、X2方向側の第1基台10a2上での変形量とをそれぞれ把握することが可能となる。その結果、Yサドル7のX1方向側およびX2方向側の両方において、支点反力や推力が作用して応力が集中しやすい各第1基台10a1(10a2)上でのYサドル7の変形をより容易かつ精度よく評価し、Yサドル7の変形がそれぞれの第1基台10a1(10a2)上で許容範囲内にあることを確認することが可能となる。
【0095】
また、本実施形態では、上記のように、Y方向およびX方向における同一の基準位置(P1、P7)において、変位検出部60を上下方向(Z方向)に間隔を隔てて複数設け、上下方向の異なる高さ位置における、第1基台10a1(10a2)およびYサドル7の基準位置間の変位Dをそれぞれ検出するように変位検出部60を構成する。これにより、水平面内のYサドル7の撓み変形に加えて、異なる高さ位置における変位Dの検出結果に基づいて、Yサドル7のねじれ変形を評価することが可能となる。その結果、各種の方向のYサドル7の変形が許容範囲内に維持されていることを確認することができるので、運転模擬試験装置100をより安定して動作させることが可能となる。
【0096】
また、本実施形態では、上記のように、リニアモータ31によるYサドル7の並進運動中における変位検出部60による変位Dの検出結果に基づく値Vが所定の閾値Thを超えている場合は、Yサドル7の並進運動を停止するように運転模擬試験装置100を構成する。これにより、変位Dの検出結果、あるいは検出結果に基づくYサドル7の変形量などの値Vを評価する所定の閾値Thを予め設定しておくことにより、許容範囲外となるYサドル7の変形を防止するための安全制御を行うことが可能となる。その結果、リニアモータ駆動方式を採用して高加速度での並進動作を可能とした場合にも、Yサドル7の変形を許容範囲内に収めて安定した運転が可能となる。
【0097】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0098】
たとえば、上記実施形態では、X方向およびY方向に並進運動可能な運転模擬試験装置100の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば1軸(X軸またはY軸)のみに対して移動可能な運転模擬試験装置に本発明を適用してもよい。すなわち、X軸並進機構3およびXサドル6を省略した構成としてよい。
【0099】
また、上記実施形態では、Y軸並進機構2に変位検出部60を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、Y軸並進機構2のみならずX軸並進機構3にも変位検出部60を設けてもよい。
【0100】
また、上記実施形態では、変位検出部60をYサドル7に取り付けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、変位検出部を第1基台10a1(10a2)側に取り付けて、第1基台10a1(10a2)上の変位検出部に対するYサドル7の変位を検出してもよい。この場合、Yサドル7の並進運動に伴う変位を検出するためには、たとえば第1基台10a1の内側面13に沿って多数の変位検出部60をY方向に配列すればよい。変位検出部を第1基台10a1(10a2)とYサドル7との両方にそれぞれ設けてもよい。
【0101】
また、上記実施形態では、基準位置P1〜P8に取り付けた変位検出部60と第1基台10a1(10a2)の凹部11の内側面13との間の変位Dを検出する例を示したが、本発明はこれに限られない。変位検出部60は、凹部11の内側面13以外の基準位置(基準面)に対する変位を検出してもよい。たとえば、凹部11の2つの並進駆動部30の中間位置(図4参照)に変位検出用の基準面を構成するリブ状構造をY方向に沿って形成し、変位検出部60がリブ状構造の基準面に対する変位を検出してもよい。また、たとえば、第1基台10a1(10a2)の外側面を基準面としてもよい。
【0102】
また、上記実施形態では、Yサドル7に8箇所の基準位置(P1〜P8)を設定した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、8箇所以外の数の基準位置を設定してもよい。
【0103】
また、上記実施形態では、10個の変位検出部60を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、10個以外の数の変位検出部60を設けてもよい。
【0104】
また、上記実施形態では、変位検出部60を渦電流型の変位センサにより構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、変位検出部60を渦電流型以外の、超音波型、レーザ型、静電容量型などの他の種類の変位センサにより構成してもよい。
【0105】
また、上記実施形態では、変位検出部60を、X方向において、第1基台10a1(10a2)上に配置されたリニアモータ31と直動ガイド21との間の位置に配置した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、変位検出部60をリニアモータ31と直動ガイド21との間の位置以外の位置に配置してもよい。
【0106】
また、上記実施形態では、変位検出部60を、第1基台10a1および第1基台10a2の両方に対してそれぞれ設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば第1基台10a1および第1基台10a2の一方に対して変位検出部60を設けて、他方に対しては変位検出部60を設けなくてもよい。
【0107】
また、上記実施形態では、2列の第1基台10a1および10a2を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1基台を1列または3列以上設けてもよい。
【0108】
また、上記実施形態では、変位検出部60を、Yサドル7のY1方向側端部の基準位置(P2、P4、P6、P8)と、Yサドル7のY2方向側端部の基準位置(P1、P3、P5、P7)とにそれぞれ設置した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、変位検出部60を、Yサドル7のY方向の一方側に設けて他方側には設けなくてもよい。また、変位検出部60を、Yサドル7の下面から吊り下げるようにして、Yサドル7のY方向の中央近傍に設けてもよい。
【0109】
また、上記実施形態では、変位検出部60を、同一の基準位置(P1、P7)において、上下方向に間隔を隔てて2つ設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、変位検出部60を、同一の基準位置において上下方向に3つ以上配置してもよい。
【0110】
また、上記実施形態では、変位検出部60による変位Dの検出結果に基づく値Vが所定の閾値Thを超えている場合は、Yサドル7(Y軸並進機構2)の並進運動を停止する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、変位Dの検出結果に基づく値Vが所定の閾値Thを超えている場合にYサドル7の並進運動を停止しなくてもよい。たとえば、所定の閾値Thを超えた場合に、Yサドル7の並進運動の加速度(または速度)を低下させるようにしてもよい。これにより、Yサドル7に加わる外力が小さくなるので、Yサドル7の変形を許容範囲内まで低減することが可能である。さらに、Yサドル7の並進運動の加速度(または速度)を低下させても変位Dの検出結果に基づく値Vが所定の閾値Th以下にならない場合に、Yサドル7の並進運動を停止させるような段階的な制御を行ってもよい。
【0111】
また、上記実施形態では、コイル部33a(可動子)および永久磁石32b(固定子)を、変位検出部60による変位Dの検出方向と同じX方向に対向させた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、コイル部33a(可動子)および永久磁石32b(固定子)を変位Dの検出方向とは異なる方向に対向させてもよい。
【0112】
また、上記実施形態では、各並進駆動部30を一体化された4本のリニアモータ31によって構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、並進駆動部30のリニアモータ31を、一体化せずに個別に設けてもよい。
【0113】
また、上記実施形態では、各並進駆動部30を4本のリニアモータ31によって構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、並進駆動部30を4本以外の数のリニアモータ31によって構成してもよい。
【0114】
また、上記実施形態では、並進駆動部30をコアレス型リニアモータ31により構成する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、並進駆動部30をコア付き型のリニアモータにより構成してもよい。
【0115】
また、上記実施形態では、可動子側がコイル(コイル部33a)、固定子側が磁石(永久磁石32b)となるタイプのリニアモータ31を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、可動子側が磁石、固定子側がコイルであってもよい。また、本発明では、可動子側および固定子側の両方がそれぞれコイルであってもよい。
【0116】
また、上記実施形態において説明した第1基台10a1および第2基台10bや、Xサドル6およびYサドル7などの寸法、並進機構のストロークおよび加速度などの数値は、あくまで参考のための例示であり、本発明はこれに限られない。
【符号の説明】
【0117】
1 ドーム(移動体)
1a 模擬車両
7 Yサドル(支持台)
10a1 第1基台(基台、一方基台)
10a2 第1基台(基台、他方基台)
11 凹部
13 内側面(基準面、基準位置)
21 直動ガイド
31 リニアモータ
32b 永久磁石(固定子)
33a コイル部(可動子)
60 変位検出部
100 運転模擬試験装置
D 変位
P1〜P8 基準位置
Th 閾値
V 変位の検出結果に基づく値
X方向(第2方向)
Y方向(第1方向)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8