(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記下部直動ガイドは、前記スライダ本体の摺動方向の端部に配置され、前記スライダ本体から移動してきた前記転動体をすくい上げるタング部と、すくい上げられた前記転動体を前記スライダ本体に戻す戻し通路と、を有するエンドキャップをさらに含み、
前記エンドキャップは、焼き入れ鋼材により形成されている、請求項5に記載の運転模擬試験装置。
前記下部直動ガイドの移動範囲は、通常動作時の移動範囲である通常移動範囲と、前記通常移動範囲の前記第1方向の外側に設けられ、通常動作では移動しない予備的な移動範囲である予備移動範囲とを含み、
前記予備移動範囲における前記下部直動ガイドの予圧は、前記通常移動範囲における前記下部直動ガイドの予圧よりも大きくなるように構成されている、請求項1〜9のいずれか1項に記載の運転模擬試験装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1では、X方向移動機構およびY方向移動機構がベルト駆動方式であるため、ベルトを急加速、急減速させた場合に、ベルトに滑りが生じると考えられる。このため、移動体の加速度を大きくする(高い加減速性能を得る)ことが困難であるという不都合がある。また、ベルトに滑りが生じるため、X方向移動機構およびY方向移動機構から移動体に高トルクを伝達することが困難である。このため、静止状態から移動体を移動させる際の速度の立ち上がりの応答性を高めることが困難であるという不都合がある。上記のように、特許文献1のような従来のベルト駆動方式の運転模擬試験装置では、移動体の移動において高い加減速性能および高い応答性を得ることが困難であるという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、移動体の移動において高い加減速性能および高い応答性を得ることが可能な運転模擬試験装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明による運転模擬試験装置は、第1方向および平面視で第1方向に直交する第2方向に並進運動される模擬車両を含む移動体と、第1方向に移動可能であるとともに、移動体を支持する支持台を第2方向に移動可能に支持する移動基台と、第1方向に沿って延びるように設けられ、第1可動子を第1方向に沿って移動させて、移動基台を第1方向に移動させる下部リニアモータと、第1方向に沿って延びるように設けられ、移動基台を第1方向に移動させる際のガイドとなる下部直動ガイドと、移動基台上に第2方向に沿って延びるように設けられ、第2可動子を第2方向に沿って移動させて、支持台を第2方向に移動させる上部リニアモータと、移動基台上に第2方向に沿って延びるように設けられ、支持台を第2方向に移動させる際のガイドとなる上部直動ガイドとを備え
、下部直動ガイドは、第2方向に並んで配置される第1直動ガイドおよび第2直動ガイドを含み、第1直動ガイドおよび第2直動ガイドは、第1方向に接続された複数種類の長さの案内レールをそれぞれ有し、複数種類の長さの案内レールの配置順を互いに異ならせることにより、第1直動ガイドの複数の案内レールの接続部分と、第2直動ガイドの複数の案内レールの接続部分とは、第1方向において互いに位置をずらして配置されている。
【0008】
この運転模擬試験装置では、上記のように、移動基台を第1方向に移動させる下部リニアモータと、支持台を第2方向に移動させる上部リニアモータとを設ける。これにより、第1方向において下部リニアモータにより移動基台を移動させることができるので、ベルト駆動方式と異なり、下部リニアモータを急加速、急減速させた場合でも、滑ることなく移動基台を移動させることができる。これにより、移動体の加速度を大きくすることができる。また、ベルト駆動方式と比べて、下部リニアモータから移動基台に高トルクを伝達することができるので、静止状態から移動体を移動させる際の速度の立ち上がりの応答性を高めることができる。第2方向においても、上部リニアモータにより支持台を移動させることができるので、移動体の加速度を大きくすることができるとともに、静止状態から移動体を移動させる際の速度の立ち上がりの応答性を高めることができる。これらの結果、移動体の移動において高い加減速性能および高い応答性を得ることが可能な運転模擬試験装置を提供することができる。
【0009】
また、移動基台を第1方向に移動させる際のガイドとなる下部直動ガイドと、支持台を第2方向に移動させる際のガイドとなる上部直動ガイドとを設ける。これにより、下部リニアモータにより大きい加速度(高加減速)で移動を行う場合にも、下部直動ガイドにより下部リニアモータの固定子と可動子との間の距離を所定の範囲内に保つことができるので、下部リニアモータを安定して駆動させることができる。また、上部直動ガイドにより上部リニアモータの固定子と可動子との間の距離を所定の範囲内に保つことができるので、上部リニアモータにより大きい加速度(高加減速)で移動を行う場合にも、上部リニアモータを安定して駆動させることができる。
【0010】
また、下部直動ガイドは、第2方向に並んで配置される第1直動ガイドおよび第2直動ガイドを含み、第1直動ガイドおよび第2直動ガイドは、第1方向に接続された複数の案内レールをそれぞれ有し、第1直動ガイドの複数の案内レールの接続部分と、第2直動ガイドの複数の案内レールの接続部分とは、第1方向において互いに位置をずらして配置されている。
これにより、移動基台を第1方向に移動させる場合に、案内レールの接続部分を超える際の衝撃が複数の下部直動ガイドにおいて集中するのを抑制することができる。これにより、移動基台を大きい加速度で移動させる場合にも、複数の下部直動ガイドで衝撃が集中するのを防止することができるので、大きな衝撃に備えるために移動基台の剛性を過度に高くする必要がない。これにより、移動基台を軽量化することができる。その結果、軽量化された移動基台の移動において高い加減速性能および高い応答性を容易に得ることができる。
【0011】
上記の運転模擬試験装置において、好ましくは、移動基台および支持台のうち、少なくとも移動基台は、網目状の骨組構造を有するように形成されている。このように構成すれば、移動基台を容易に軽量化することができるので、少なくとも移動基台の移動において高い加減速性能および高い応答性を容易に得ることができる。
【0012】
この場合、好ましくは、移動基台および支持台のうち、少なくとも移動基台は、鋼材を組み合わせることにより網目状の骨組構造を有するように形成されている。このように構成すれば、鋼材により少なくとも移動基台の剛性を確保しつつ、容易に軽量化することができる。
【0013】
上記移動基台が鋼材を組み合わせた網目状の骨組構造を有する構成において、好ましくは、移動基台および支持台の両方が、中空構造の鋼材を組み合わせることにより、網目状の骨組構造を有するように形成されている。このように構成すれば、中実構造の鋼材を用いて移動基台および支持台を形成する場合に比べて、移動基台および支持台のさらなる軽量化を図ることができる。また、移動基台および移動基台上に配置される支持台の両方を軽量化することができるので、第1方向における移動基台の移動において高い加減速性能および高い応答性をより容易に得ることができる。
【0014】
上記の運転模擬試験装置において、好ましくは、下部直動ガイドは、案内レールと、案内レールに対して第1方向に摺動可能に取り付けられ、案内レールとの間に転動体が配置されるスライダ本体とを含み、スライダ本体は、第1方向の長さが、第2方向の長さよりも大きくなるように形成されている。このように構成すれば、スライダ本体の許容荷重を大きくすることができるので、移動基台を支えるためのスライダ本体の数を減少させることができる。これにより、スライダ本体内の転動体の移動方向を変えるエンドキャップの総数を減少させることができるので、スライダ本体を高加減速および高速で移動させた場合に特に負荷が大きくなるエンドキャップの数を減らして、破損を効果的に抑制することができる。これによっても、移動基台を安定して大きい加速度(高加減速)で移動させることができる。
【0015】
この場合、好ましくは、下部直動ガイドは、スライダ本体の摺動方向の端部に配置され、スライダ本体から移動してきた転動体をすくい上げるタング部と、すくい上げられた転動体をスライダ本体に戻す戻し通路と、を有するエンドキャップをさらに含み、エンドキャップは、焼き入れ鋼材により形成されている。このように構成すれば、エンドキャップの剛性を高めることができるので、スライダ本体を高加減速および高速で移動させた場合でも、転動体の高速の衝突に起因してエンドキャップが破損するのを効果的に抑制することができる。
【0016】
上記下部直動ガイドがエンドキャップをさらに含む構成において、好ましくは、タング部は、尖った先端が除去されている形状を有する。このように構成すれば、タング部の転動体が衝突する部分の厚みを大きくすることができるので、スライダ本体を高加減速および高速で移動させた場合でも、タング部の破損を効果的に抑制することができる。
【0017】
上記下部直動ガイドがエンドキャップをさらに含む構成において、好ましくは、タング部は、転動体を2点支持の接触状態ですくい上げる溝形状を有する。このように構成すれば、転動体を1点支持の接触状態ですくい上げる場合に比べて、転動体のタング部への衝突力を緩和することができるので、スライダ本体を高加減速および高速で移動させた場合でも、タング部の破損を効果的に抑制することができる。
【0018】
上記下部直動ガイドが案内レールとスライダ本体とを含む構成において、好ましくは、転動体は、セラミック球を含む。このように構成すれば、転動体を軽量化することができるので、スライダ本体を高加減速および高速で移動させた場合でも、転動体の慣性力が大きくなるのを抑制することができる。これにより、移動体の移動において高い加減速性能および高い応答性をより安定して得ることができる。
【0019】
上記の運転模擬試験装置において、好ましくは、下部直動ガイドの移動範囲は、通常動作時の移動範囲である通常移動範囲と、通常移動範囲の第1方向の外側に設けられ、通常動作では移動しない予備的な移動範囲である予備移動範囲とを含み、予備移動範囲における下部直動ガイドの予圧は、通常移動範囲における下部直動ガイドの予圧よりも大きくなるように構成されている。このように構成すれば、予備移動範囲の下部直動ガイドの予圧が大きくなるので、下部直動ガイドの移動抵抗を大きくすることができる。これにより、移動基台が大きい加減速で移動を行った場合に予備移動範囲に侵入した場合でも、移動基台を効果的に減速させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、上記のように、移動体の移動において高い加減速性能および高い応答性を得ることが可能な運転模擬試験装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0023】
図1〜
図11を参照して、一実施形態による運転模擬試験装置100について説明する。
【0024】
(運転模擬試験装置の概要)
図1に示すように、本実施形態による運転模擬試験装置100は、ユーザが搭乗可能な模擬車両を備え、模擬車両内におけるユーザの運転操作に応じた車両の運転走行をシミュレートする装置(いわゆるドライビングシミュレータ)である。
【0025】
本実施形態の運転模擬試験装置100は、ユーザが搭乗可能な模擬車両1aを収容するドーム1を移動させることにより、運転中に発生する加速度をシミュレート可能なように構成されている。後述するように、運転模擬試験装置100は、模擬車両1aに設定した直交座標系における3軸方向(Z、X、Y方向)および3軸周りの回転方向(ヨー、ピッチ、ロール方向)の合計6軸方向に、模擬車両1aを動かすことが可能である。なお、X、Y方向は、水平面内で直交する2方向であり、Z方向はXおよびY方向と直交する上下方向である。ヨー、ピッチ、ロール方向は、それぞれ、Z軸、X軸、Y軸周りの回転方向である。また、Y方向は、特許請求の範囲の「第1方向」の一例であり、X方向は、特許請求の範囲の「第2方向」の一例である。
【0026】
図1および
図2に示すように、運転模擬試験装置100は、模擬車両1aを含むドーム1と、ドーム1をY方向に移動させるためのY軸並進機構2とを備える。また、運転模擬試験装置100は、ドーム1をX方向に移動させるためのX軸並進機構3を備える。なお、ドーム1は、特許請求の範囲の「移動体」の一例である。
【0027】
また、運転模擬試験装置100は、ドーム1を揺動駆動可能に支持するヘキサポッド機構(揺動機構)4を備える。運転模擬試験装置100は、下方から、Y軸並進機構2、Yサドル7、X軸並進機構3、Xサドル6、ヘキサポッド機構4、ドーム1をこの順番で積み上げた構成を有している。Yサドル7およびXサドル6は、それぞれ、ドーム1を支持する支持台である。なお、Xサドル6は、特許請求の範囲の「支持台」の一例であり、Yサドル7は、特許請求の範囲の「移動基台」の一例である。運転模擬試験装置100は、これらのY軸並進機構2、X軸並進機構3およびヘキサポッド機構4の動作を組み合わせることにより、模擬車両1aを収容するドーム1を6軸方向に移動させる。運転模擬試験装置100は、運転シミュレーションの制御を行うための制御装置5を備える。制御装置5により、Y軸並進機構2、X軸並進機構3およびヘキサポッド機構4の動作が制御される。制御装置5は、Y軸並進機構2の外部に設置されている。制御装置5とY軸並進機構2、X軸並進機構3、ヘキサポッド機構4およびドーム1との間は、各種配線により接続されている。
【0028】
ドーム1は、内部に模擬車両1aを収容可能な箱状構造を有する。ドーム1は、模擬車両1aの周囲に設置された表示装置やスピーカを備えている。模擬車両1aは人が搭乗して運転操作を行えるよう、実際の車両と同様に作られている。制御装置5は、ドーム1内のユーザの運転操作に応じて、シミュレーション画像の表示やシミュレーション音声の出力が可能である。
【0029】
ヘキサポッド機構4は、たとえば油圧シリンダや電動アクチュエータなどによりそれぞれ独立して伸縮可能な複数本(たとえば3対6本)のリンクを組み合わせて構成されたパラレルリンク機構である。ヘキサポッド機構4は、制御装置5によるそれぞれのリンクの伸縮量の制御によって、ドーム1を6軸方向に並進移動および揺動(傾斜)させることが可能である。ヘキサポッド機構4は、Xサドル6上に設置されている。
【0030】
Xサドル6は、Yサドル7上でドーム1およびヘキサポッド機構4を支持するように構成されている。
図3に示すように、Xサドル6は、形鋼や鋼管などの鋼材6aの組み合わせにより構成された網目状の骨組構造を有する。具体的には、Xサドル6は、
図5に示すように、矩形の中空構造の鋼材6aを組み合わせることにより、網目状の骨組構造を有するように形成されている。中空構造の鋼材6aは、I形鋼、T形鋼、山形鋼などを互いに溶接することにより形成されている。この網目状の骨組構造により、Xサドル6の軽量化が図られている。また、Xサドル6は、
図3に示すように、ヘキサポッド機構4を設置するための取付基台61を有している。取付基台61は、3つ設けられている。2つの取付基台61は、Y方向において一方側の端部近傍のX方向における両端にそれぞれ配置されている。残りの1つの取付基台61は、Y方向において他方側の端部近傍のX方向における中央または略中央に配置されている。なお、
図1および
図2では、簡略化を図るためXサドル6を平板として図示している。Xサドル6は、全体としてほぼ矩形の平板状の外形形状に形成されている。Xサドル6は、たとえば約3m〜約7m(X寸法)×約2m〜約4m(Y寸法)程度の大きさを有する。
【0031】
X軸並進機構3は、制御装置5による駆動制御に従って、Xサドル6(ドーム1およびヘキサポッド機構4)をX方向に移動させるように構成されている。X軸並進機構3は、X方向に延びるYサドル7上に設置されている。本実施形態では、X軸並進機構3は、後述するように、直動ガイド41とリニアモータ51との組み合わせにより構成されている。なお、直動ガイド41は、特許請求の範囲の「上部直動ガイド」の一例であり、リニアモータ51は、特許請求の範囲の「上部リニアモータ」の一例である。
【0032】
Yサドル7は、ドーム1、ヘキサポッド機構4およびX軸並進機構3を支持するように構成されている。
図4に示すように、Yサドル7は、形鋼や鋼管などの鋼材7aの組み合わせにより構成された網目状の骨組構造を有する。具体的には、Yサドル7は、
図5に示すように、矩形の中空構造の鋼材7aを組み合わせることにより、網目状の骨組構造を有するように形成されている。中空構造の鋼材7aは、I形鋼、T形鋼、山形鋼などを互いに溶接することにより形成されている。この網目状の骨組構造により、Yサドル7の軽量化が図られている。なお、
図1および
図2では、簡略化を図るためYサドル7を平板として図示している。Yサドル7は、Y軸並進機構2の後述する複数の基台(第1基台10aおよび第2基台10b)の各々に架け渡されるように、全体としてX方向に延びる長方形の平板状形状に形成されている。Yサドル7は、たとえば約10m〜約15m(X寸法)×約3m〜約7m(Y寸法)程度の大きさを有する。
【0033】
Y軸並進機構2は、Yサドル7の下方に設けられ、Yサドル7をY方向に移動させるように構成されている。Y軸並進機構2は、制御装置5による駆動制御に従って、Yサドル7(ドーム1)をY方向に移動させる。本実施形態では、Y軸並進機構2は、後述するように、直動ガイド21とリニアモータ31との組み合わせにより構成されている。なお、直動ガイド21は、特許請求の範囲の「下部直動ガイド」の一例であり、リニアモータ31は、特許請求の範囲の「下部リニアモータ」の一例である。
【0034】
このように、運転模擬試験装置100では、Yサドル7がY軸並進機構2によってY方向に移動され、Xサドル6がYサドル7上のX軸並進機構3によってX方向に移動される。したがって、ドーム1は、Y軸並進機構2およびYサドル7によってY方向に移動可能に支持されている。ドーム1は、X軸並進機構3およびXサドル6によってX方向に移動可能に支持されている。
【0035】
本実施形態の構成例では、Y軸並進機構2は、2つの並進機構の内の長軸側であり、Y方向の動作範囲(ストローク量)は非常停止のための予備移動範囲も含めて約25m〜約35mである。Y軸並進機構2は、Y方向において約10m/s
2(約1G)以上の加速度を発生させることが可能である。X軸並進機構3は、短軸側であり、X方向のストローク量は非常停止のための予備移動範囲も含めて約5m〜約10mである。X軸並進機構3は、X方向において約3m/s
2以上の加速度を発生させることが可能である。
【0036】
図2に示すように、Y軸並進機構2のY方向の動作範囲の両端部と、X軸並進機構3のX方向の動作範囲の両端部とには、それぞれ、非常停止用のダンパ機構8が複数ずつ設けられている。ダンパ機構8は、予備ストローク領域を超えた場合のXサドル6またはYサドル7とそれぞれ接触して、制動力を付与しながらXサドル6またはYサドル7をそれぞれ停止させる。
【0037】
(Y軸並進機構の構造)
次に、Y軸並進機構2の構造について詳細に説明する。
【0038】
運転模擬試験装置100は、Y方向に沿って延びる2列の第1基台10aおよび1列の第2基台10bと、ドーム1を移動させる際のガイドとなる複数の並進ガイド部20と、ドーム1をY方向に移動させる複数の並進駆動部30と、を備える。第1基台10aおよび第2基台10bと、並進ガイド部20および並進駆動部30とにより、Y軸並進機構2が構成されている。
【0039】
図6に示すように、各々の並進駆動部30は、Y方向に沿って延びる複数(4本)のリニアモータ31により構成されている。複数のリニアモータ31は、X方向に並んで配置されている。また、各々の並進ガイド部20は、Y方向に沿って延びる複数(2本)の直動ガイド21(21aおよび21b)により構成されている。複数の直動ガイド21aおよび21bは、X方向に並んで配置されている。なお、直動ガイド21aは、特許請求の範囲の「第1直動ガイド」の一例であり、直動ガイド21bは、特許請求の範囲の「第2直動ガイド」の一例である。
【0040】
〈基台〉
図2および
図6に示すように、Y軸並進機構2の2列の第1基台10aおよび1列の第2基台10bは、平面視でX方向に互いに離間して配置されている。第1基台10aおよび第2基台10bは、Y方向に直線状に形成されている。第1基台10aおよび第2基台10bは、金属材料(鋳鉄や鋼材など)により構成されている。第1基台10aおよび第2基台10bは、たとえばY方向の全長で約40m〜約50mの長さを有する。各第1基台10aおよび第2基台10bのY方向の両端部には、それぞれ、ダンパ機構8が配置されている。
【0041】
図6に示すように、第1基台10aおよび第2基台10bは、X方向の中央部に、Z方向(下方向)に窪んだ凹部11を有している。第1基台10aおよび第2基台10bは、凹部11のX方向の両側の壁部12が凹部11の底面に対して上方に突出した形状を有する。凹部11および両側の壁部12は、第1基台10a(第2基台10b)の全長にわたってY方向に延びている。凹部11の底面(上面)および壁部12の上面はそれぞれ平坦面として形成されている。第1基台10a(第2基台10b)のうち、X方向の両側の壁部12がそれぞれ並進ガイド部20の設置部として構成されている。X方向の中央の凹部11は、並進駆動部30(または配線ダクト80)の設置部として構成されている。
【0042】
第1基台10aは、平面視において、Yサドル7のX方向の中心に対してX方向に対称または略対称となるように一対(2列)配置されている。一対(2列)の第1基台10aは、X方向においてYサドル7の中心からそれぞれ等しい間隔で配置されている。第1基台10aには、複数(2つ)の並進駆動部30および複数(2つ)の並進ガイド部20が、X方向に並んで配置されている。
【0043】
配線ダクト80は、変形可能であり、第2基台10bの凹部11上に湾曲部を介して上下に重なる(
図1参照)ように配置されている。配線ダクト80の一端(下側の端部)が第2基台10bに設けられた端子ボックス(図示せず)に接続されている。配線ダクト80の他端(上側の端部)がYサドル7の端子ボックス(図示せず)に接続されている。なお、配線ダクト80は、第2基台10bのほか、3列の基台10のX方向の両外側に配置されたダクト支持部81上にも配置されている。配線ダクト80は、第2基台10bおよび2つのダクト支持部81上において、Yサドル7に対してY方向の両側にそれぞれ延びるように対で設けられている。つまり、Y軸並進機構2の配線ダクト80は、第2基台10b上に2対、2つのダクト支持部81上に1対ずつの、合計4対8本設けられている。
【0044】
配線ダクト80内には、並進駆動部30への配線(動力線、信号線)、X軸並進機構3への配線、ヘキサポッド機構4およびドーム1への配線やホースなどの各種の配線部材が配置される。第2基台10b上およびダクト支持部81上の各配線ダクト80は、固定端側では凹部11に沿って敷かれ、湾曲部を形成してからYサドル7に接続されており、Yサドル7の移動に伴って、配線ダクト80は、湾曲部を形成する部分が変化するように、Yサドル7の移動に追従する。配線ダクト80は、各種の配線部材を、端子ボックスを介してYサドル7、Xサドル6、ヘキサポッド機構4およびドーム1などの各部まで引き回すために設けられている。
【0045】
〈並進ガイド部〉
並進ガイド部20は、それぞれの第1基台10a上および第2基台10b上に設置され、Yサドル7をY方向に移動可能に支持している。並進ガイド部20によって、Yサドル7のX方向およびZ方向の移動が拘束されている。
【0046】
図6に示すように、並進ガイド部20は、第1基台10aおよび第2基台10bの各々において、X方向両側の壁部12の上面上に一対配置されている。各並進ガイド部20は、X方向において、各第1基台10a(第2基台10b)の中心位置に対して対称まはた略対称に配置されている。
【0047】
図6の例では、各並進ガイド部20は、2本の直動ガイド21によって構成されているため、個々の基台(第1基台10aおよび第2基台10b)上には、2対4本の直動ガイド21が設けられている。
【0048】
直動ガイド21は、基台(第1基台10a、第2基台10b)上にY方向に沿って延びるように設けられ、Yサドル7をY方向へ移動可能に支持している。直動ガイド21は、直線状に延びる案内レール22と、案内レール22に係合するスライダ本体23(
図8参照)とによって構成されている。スライダ本体23の案内レール22側の内面部には、球状の転動体230(
図10参照)が収容されている。直動ガイド21は、転動体230の転がりによって、案内レール22に沿ってスライダ本体23を低抵抗かつ精密に移動させることが可能である。
【0049】
案内レール22は、各基台(第1基台10aおよび第2基台10b)の壁部12の上面上に固定されている。スライダ本体23は、Yサドル7の下面に固定されている。
図7および
図8に示すように、スライダ本体23は、1本の案内レール22上に複数配置されている。また、
図8に示すように、スライダ本体23は、Y方向(摺動方向)の長さLaが、X方向(摺動方向と直交する方向)の長さLbよりも大きくなるように形成されている。たとえば、スライダ本体23は、Y方向(摺動方向)の長さLaがX方向(摺動方向と直交する方向)の長さLbの2倍以上になるように形成されている。
【0050】
ここで、本実施形態では、
図6に示すように、直動ガイド21は、第1直動ガイド21aおよび第2直動ガイド21bを含んでいる。第1直動ガイド21aおよび第2直動ガイド21bは、第1基台10a(第2基台10b)上に、X方向に並んで配置されている。具体的には、第1基台10a(第2基台10b)上に、X方向の一方側から他方側に、第1直動ガイド21a、第2直動ガイド21b、第2直動ガイド21b、第1直動ガイド21aの順で配置されている。
【0051】
図9に示すように、第1直動ガイド21aおよび第2直動ガイド21bは、Y方向に接続された複数の案内レール22(22a、22b、22c)をそれぞれ有している。
図9の例では、第1直動ガイド21aおよび第2直動ガイド21bは、それぞれ、7本の案内レール22aと、2本の案内レール22bと、6本の案内レール22cとの3種類の案内レール22を有している。3種類の案内レール22a、22bおよび22cは、互いに異なる長さを有している。具体的には、案内レール22aは、L1の長さを有し、案内レール22bは、L2の長さを有し、案内レール22cは、L3の長さを有している。ただし、それぞれの案内レール22(22a、22b、22c)の長さは、L1<L2<L3の関係を有している。
【0052】
また、本実施形態では、第1直動ガイド21aの複数の案内レール22(22aおよび22c)の接続部分と、第2直動ガイド21bの複数の案内レール22(22aおよび22c)の接続部分とは、Y方向において互いに位置をずらして配置されている。
図9の例では、少なくとも通常移動範囲において、第1直動ガイド21aの複数の案内レール22(22aおよび22c)の接続部分と、第2直動ガイド21bの複数の案内レール22(22aおよび22c)の接続部分とが、Y方向において互いに位置をずらして配置されている。
【0053】
詳しくは、第1直動ガイド21aは、Y方向の一方端側(
図9の上側)から、案内レール22b、案内レール22a、案内レール22a、案内レール22c、案内レール22a、案内レール22a、案内レール22a、案内レール22c、案内レール22c、案内レール22c、案内レール22a、案内レール22a、案内レール22c、案内レール22c、案内レール22bの順に、案内レール22が接続されている。また、第2直動ガイド21bは、Y方向の一方端側(
図9の上側)から、案内レール22b、案内レール22c、案内レール22c、案内レール22a、案内レール22a、案内レール22c、案内レール22c、案内レール22c、案内レール22a、案内レール22a、案内レール22a、案内レール22c、案内レール22a、案内レール22a、案内レール22bの順に、案内レール22が接続されている。
【0054】
つまり、第1直動ガイド21aおよび第2直動ガイド21bは、3種類の案内レール22a、22bおよび22cが、それぞれ、同じ本数ずつ接続されている。また、第1直動ガイド21aおよび第2直動ガイド21bは、両端には、3種類の案内レール22a、22bおよび22cのうち、案内レール22bがそれぞれ配置されている。そして、第1直動ガイド21aおよび第2直動ガイド21bは、両端を除く位置に、3種類の案内レール22a、22bおよび22cのうち、案内レール22aおよび22cが互いに異なる順番で接続されている。これにより、第1直動ガイド21aおよび第2直動ガイド21bの全長を揃えるとともに、第1直動ガイド21aの複数の案内レール22(22aおよび22c)の接続部分と、第2直動ガイド21bの複数の案内レール22(22aおよび22c)の接続部分とを、Y方向において互いに位置をずらして配置することが可能である。
【0055】
ここで、L3−L1=dとした場合、第1直動ガイド21aの複数の案内レール22(22aおよび22c)の接続部分と、第2直動ガイド21bの複数の案内レール22(22aおよび22c)の接続部分とは、Y方向において、d、2dまたは3dだけ互いにずれて配置される。
【0056】
また、直動ガイド21は、
図10に示すように、タング部231aと、戻し通路231bとを有するエンドキャップ231をさらに含んでいる。エンドキャップ231は、スライダ本体23の摺動方向の端部(Y方向の両端部)に配置されている。また、本実施形態では、エンドキャップ231は、焼き入れ鋼材により形成されている。転動体230は、球形状を有している。また、転動体230は、セラミック材により形成されたセラミック球を含んでいる。
【0057】
また、本実施形態では、タング部231aは、摺動に伴ってスライダ本体23から移動してきた転動体230をすくい上げるように構成されている。タング部231aは、
図11の一点鎖線部分に示すように、戻し通路231bの先端近傍の部分に形成されている。また、
図11に示すように、タング部231aは、尖った先端が除去されている形状を有している。つまり、タング部231aは、先端が面取りされた形状を有している。また、
図10に示すように、タング部231aは、転動体230を2点支持の接触状態ですくい上げる溝形状を有している。たとえば、タング部231aは、転動体230をすくい上げる方向にみて、ゴシックアーク形状を有するように形成されている。
【0058】
戻し通路231bは、タング部231aによりすくい上げられた転動体230をスライダ本体23に戻すように構成されている。戻し通路231bは、転動体230の移動方向をY方向において180度転換させるように構成されている。具体的には、戻し通路231bは、Y方向に沿って案内レール22とスライダ本体23との間を転動した転動体230を、スライダ本体23内で反対方向に進ませるように、方向転換させるように構成されている。また、戻し通路231bは、スライダ本体23内をY方向に沿って移動した転動体230を、案内レール22とスライダ本体23との間を反対方向に進ませるように、方向転換させるように構成されている。
【0059】
また、本実施形態では、
図9示すように、直動ガイド21の移動範囲は、通常動作時の移動範囲である通常移動範囲と、通常移動範囲のY方向の外側に設けられ、通常動作では移動しない予備的な移動範囲である予備移動範囲とを含んでいる。予備移動範囲における直動ガイド21の予圧は、通常移動範囲における直動ガイド21の予圧よりも大きくなるように構成されている。たとえば、直動ガイド21の予備移動範囲における案内レール22の断面積を大きく形成することにより、予備移動範囲における直動ガイド21の予圧を大きくしている。この場合、通常移動範囲と予備移動範囲との境界近傍を徐々に断面積を変化させるテーパ形状に形成してもよい。
【0060】
〈並進駆動部〉
図6に示すように、並進駆動部30は、2列の第1基台10aの凹部11上にそれぞれ設置されている。各第1基台10aにおいて、並進駆動部30は、一対の並進ガイド部20の間の位置に一対配置されている。並進駆動部30は、第1基台10aの両端にわたってY方向に直線状に延びる(
図2参照)ように形成され、Yサドル7にY方向の推力を付与することが可能である。したがって、Y軸並進機構2のリニアモータ31(並進駆動部30)は、Y軸並進機構2の中央部に対してX方向の一方側(X1方向側)および他方側(X2方向側)にそれぞれ配置されている。
【0061】
並進駆動部30は、一体化された複数のリニアモータ31により構成されている。なお、一体化とは、ここでは、複数のリニアモータ31のそれぞれの可動子およびそれぞれの固定子が、対応する共通の構造体(可動子ユニット、固定子ユニット)に一体的に組み付けられている構造を意味する。
【0062】
図6の構成例では、並進駆動部30は、複数のリニアモータ31の固定子を一体化した固定子ユニット32と、複数のリニアモータ31の可動子を一体化した可動子ユニット33とを含む。固定子ユニット32が第1基台10a上に設置され、可動子ユニット33がYサドル7の下面側に設置されている。
【0063】
固定子ユニット32は、上方に立ち上がるとともにY方向に沿って延びる複数の支持部に支持された複数の永久磁石を含んでいる。永久磁石は所定間隔を隔ててX方向に対向する。対向する一対の永久磁石は対向面が互いに異極となるように着磁され、それぞれY方向に沿ってS極とN極とが交互に並ぶように配列されている。
【0064】
可動子ユニット33は、固定子ユニット32の永久磁石間の隙間部分にそれぞれ配置された複数のコイル部を備える。可動子ユニット33は、固定子ユニット32の上方で固定子ユニット32と上下に対向するように配置された支持ブロックを介してYサドル7の下面に固定されている。可動子ユニット33は、X方向に対向する一対の永久磁石によるX方向の磁界中に配置されたコイル部に電流供給が行われることにより、Y方向の推力を発生させる。
【0065】
それぞれのリニアモータ31は、コアレス型リニアモータである。すなわち、可動子ユニット33のコイル部に鉄芯(コア)が設けられていない。
【0066】
(X軸並進機構の構造)
次に、X軸並進機構3の構造について説明する。
図7に示すX軸並進機構3は、基本的な構造はY軸並進機構2と同様であるので、簡略化して説明する。なお、
図7では、Xサドル6上のヘキサポッド機構4等を省略している。
【0067】
運転模擬試験装置100は、ドーム1をX方向に移動させる1つの並進駆動部50と、ドーム1をX方向に移動させる際のガイドとなる4つの並進ガイド部40とを備える。並進駆動部50および並進ガイド部40により、X軸並進機構3が構成されている。
【0068】
本実施形態では、並進駆動部50は、X方向に沿って延びる3本のリニアモータ51により構成されている。各々の並進ガイド部40は、X方向に沿って延びる1本または2本の直動ガイド41により構成されている。
【0069】
4つの並進ガイド部40は、Y方向に間隔を隔てて設けられている。並進ガイド部40は、それぞれのYサドル7上に設置され、Xサドル6をX方向に移動可能に支持している。4つの並進ガイド部40は、Yサドル7のY1方向側とY2方向側とにそれぞれ2つずつ、2対配置されている。具体的には、並進ガイド部40は、Xサドル6上の取付基台61の近傍において、取付基台61を挟み込むようにして配置されている。つまり、並進ガイド部40は、Y1方向側の取付基台61の近傍の下側、および、Y2方向側の取付基台61の近傍の下側に配置されている。これにより、ヘキサポッド機構4およびドーム1を支持する取付基台61の近傍に並進ガイド部40が配置されるので、ヘキサポッド機構4およびドーム1をバランスよく支持することが可能である。並進ガイド部40によって、Xサドル6のY方向およびZ方向の移動が拘束されている。なお、
図2に示したように、2対の並進ガイド部40のX方向の両端部に、それぞれダンパ機構8(
図7では図示省略)が配置されている。
【0070】
並進駆動部50は、Yサドル7のY方向の中央近傍の位置に1つ設置されている。並進駆動部50は、Yサドル7上でX方向に直線状に延びる(
図2参照)ように形成され、Xサドル6にX方向の推力を付与することが可能である。並進駆動部50は、2対の並進ガイド部40の間の位置に設置されている。
【0071】
図7に示した例では、並進駆動部50は、並進駆動部30と同様の構成を有しており、一体化された3本のリニアモータ51により構成されている。並進駆動部50は、3本のリニアモータ51の固定子を一体化した固定子ユニット52と、3本のリニアモータ51の可動子を一体化した可動子ユニット53とを含む。固定子ユニット52がYサドル7上に設置され、可動子ユニット53がXサドル6の下面側に設置されている。
【0072】
(本実施形態の効果)
次に、本実施形態の効果について説明する。
【0073】
本実施形態では、上記のように、Yサドル7をY方向に移動させるリニアモータ31と、Xサドル6をX方向に移動させるリニアモータ51とを設ける。これにより、Y方向においてリニアモータ31によりYサドル7を移動させることができるので、ベルト駆動方式と異なり、リニアモータ31を急加速、急減速させた場合でも、滑ることなくYサドル7を移動させることができる。これにより、ドーム1の加速度を大きくすることができる。また、ベルト駆動方式と比べて、リニアモータ31からYサドル7に高トルクを伝達することができるので、静止状態からドーム1を移動させる際の速度の立ち上がりの応答性を高めることができる。X方向においても、リニアモータ51によりXサドル6を移動させることができるので、ドーム1の加速度を大きくすることができるとともに、静止状態からドーム1を移動させる際の速度の立ち上がりの応答性を高めることができる。これらの結果、ドーム1の移動において高い加減速性能および高い応答性を得ることが可能な運転模擬試験装置100を提供することができる。
【0074】
また、本実施形態の運転模擬試験装置100によれば、Yサドル7をY方向に移動させる際のガイドとなる直動ガイド21と、Xサドル6をX方向に移動させる際のガイドとなる直動ガイド41とを設ける。これにより、リニアモータ31(51)により大きい加速度(高加減速)で移動を行う場合にも、直動ガイド21(41)によりリニアモータ31(51)の固定子と可動子との間の距離を所定の範囲内に保つことができるので、リニアモータ31(51)を安定して駆動させることができる。
【0075】
また、本実施形態では、上記のように、X方向に並んで配置される第1直動ガイド21aおよび第2直動ガイド21bは、Y方向に接続された複数の案内レール22(22a、22bおよび22c)をそれぞれ有し、第1直動ガイド21aの複数の案内レール22の接続部分と、第2直動ガイド21bの複数の案内レール22の接続部分とを、Y方向において互いに位置をずらして配置する。これにより、Yサドル7をY方向に移動させる場合に、案内レール22の接続部分を超える際の衝撃が複数の直動ガイド21において集中するのを抑制することができる。その結果、Yサドル7を大きい加速度で移動させる場合にも、複数の直動ガイド21で衝撃が集中するのを防止することができるので、大きな衝撃に備えるためにYサドル7の剛性を過度に高くする必要がない。これにより、Yサドル7を軽量化することができる。その結果、軽量化されたYサドル7の移動において高い加減速性能および高い応答性を容易に得ることができる。
【0076】
また、本実施形態では、上記のように、Yサドル7およびXサドル6を、網目状の骨組構造を有するように形成する。これにより、Yサドル7およびXサドル6を容易に軽量化することができるので、Yサドル7およびXサドル6の並進運動において高い加減速性能および高い応答性を容易に得ることができる。
【0077】
また、本実施形態では、上記のように、Yサドル7およびXサドル6を、鋼材を組み合わせることにより網目状の骨組構造を有するように形成する。これにより、鋼材によりYサドル7およびXサドル6の剛性を確保しつつ、Yサドル7およびXサドル6を容易に軽量化することができる。
【0078】
また、本実施形態では、上記のように、Yサドル7およびXサドル6の両方を、中空構造の鋼材を組み合わせることにより、網目状の骨組構造を有するように形成する。これにより、中実構造の鋼材を用いてYサドル7およびXサドル6を形成する場合に比べて、Yサドル7およびXサドル6のさらなる軽量化を図ることができる。また、Yサドル7およびYサドル7上に配置されるXサドル6の両方を軽量化することができるので、Y方向におけるYサドル7の移動において高い加減速性能および高い応答性をより容易に得ることができる。
【0079】
また、本実施形態では、上記のように、直動ガイド21のスライダ本体23を、Y方向の長さLaが、X方向の長さLbよりも大きくなるように形成する。これにより、スライダ本体23の許容荷重を大きくすることができるので、Yサドル7を支えるためのスライダ本体23の数を減少させることができる。その結果、スライダ本体23内の転動体230の移動方向を変えるエンドキャップ231の総数を減少させることができるので、スライダ本体23を高加減速および高速で移動させた場合に特に負荷が大きくなるエンドキャップ231の数を減らして、破損を効果的に抑制することができる。これによっても、Yサドル7を安定して大きい加速度(高加減速)で移動させることができる。
【0080】
また、本実施形態では、上記のように、エンドキャップ231を、焼き入れ鋼材により形成する。これにより、エンドキャップ231の剛性を高めることができるので、スライダ本体23を高加減速および高速で移動させた場合でも、転動体230の高速の衝突に起因してエンドキャップ231が破損するのを効果的に抑制することができる。
【0081】
また、本実施形態では、上記のように、タング部231aを、尖った先端が除去されている形状を有するように形成する。これにより、タング部231aの転動体230が衝突する部分の厚みを大きくすることができるので、スライダ本体23を高加減速および高速で移動させた場合でも、タング部231aの破損を効果的に抑制することができる。
【0082】
また、本実施形態では、上記のように、タング部231aを、転動体230を2点支持の接触状態ですくい上げる溝形状を有するように形成する。これにより、転動体230を1点支持の接触状態ですくい上げる場合に比べて、転動体230のタング部231aへの衝突力を緩和することができるので、スライダ本体23を高加減速および高速で移動させた場合でも、タング部231aの破損を効果的に抑制することができる。
【0083】
また、本実施形態では、上記のように、転動体230は、セラミック球を含む。これにより、転動体230を軽量化することができるので、スライダ本体23を高加減速および高速で移動させた場合でも、転動体230の慣性力が大きくなるのを抑制することができる。これにより、ドーム1の移動において高い加減速性能および高い応答性をより安定して得ることができる。
【0084】
また、本実施形態では、上記のように、直動ガイド21の移動範囲は、通常動作時の移動範囲である通常移動範囲と、通常移動範囲のY方向の外側に設けられ、通常動作では移動しない予備的な移動範囲である予備移動範囲とを含み、予備移動範囲における直動ガイド21の予圧は、通常移動範囲における直動ガイド21の予圧よりも大きくなるように構成する。これにより、予備移動範囲の直動ガイド21の予圧が大きくなるので、直動ガイド21の移動抵抗を大きくすることができる。これにより、Yサドル7が大きい加減速で移動を行った場合に予備移動範囲に侵入した場合でも、Yサドル7を効果的に減速させることができる。
【0085】
(変形例)
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0086】
たとえば、上記実施形態では、2列の第1基台10aと1列の第2基台10bとを設けた構成を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第2基台10bに代えて第1基台10aを設けることにより、3列の第1基台10aを設けてもよい。また、第2基台10bを設けずに2列の第1基台10aのみとしてもよい。
【0087】
また、上記実施形態では、第1基台10aに2つの並進駆動部30を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1基台10aに3つ以上の並進駆動部30を設置してもよい。
【0088】
また、上記実施形態では、Xサドル6(支持台)およびYサドル7(移動基台)の両方を、鋼材を組み合わせることにより網目状の骨組構造を有するように形成する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、少なくとも移動基台を、鋼材を組み合わせることにより網目状の骨組構造を有するように形成してもよい。
【0089】
また、上記実施形態では、Xサドル6(支持台)およびYサドル7(移動基台)を、鋼材を組み合わせることにより網目状の骨組構造を有するように形成する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、支持台および移動基台を、鋼材以外の材料を組み合わせることにより網目状の骨組構造を有するように形成してもよい。たとえば、支持台および移動基台を、炭素繊維強化プラスチック材またはアルミ部材などにより形成してもよい。
【0090】
また、上記実施形態では、Xサドル6(支持台)およびYサドル7(移動基台)を、中空構造の鋼材を組み合わせることにより網目状の骨組構造を有するように形成する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、支持台および移動基台を、H形、I形、L形、T形、Z形、溝形などの形鋼を組み合わせることにより網目状の骨組構造を有するように形成してもよい。
【0091】
また、上記実施形態では、各並進駆動部30(50)を一体化された4本または3本のリニアモータ31(51)によって構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、並進駆動部30(50)のリニアモータ31(51)を、一体化せずに個別に設けてもよい。
【0092】
また、上記実施形態では、各並進駆動部30(50)を4本または3本のリニアモータ31(51)によって構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、並進駆動部30(50)を1本または5本以上の数のリニアモータ31(51)によって構成してもよい。並進駆動部30(50)に設けるリニアモータ31(51)の数は、必要となる推力合計、並進駆動部30(50)の設置数などに応じた数とすればよい。
【0093】
また、上記実施形態では、リニアモータ31(51)をコアレス型のリニアモータにより構成する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、リニアモータ31(51)をコア付き型のリニアモータにより構成してもよい。
【0094】
また、上記実施形態では、各並進ガイド部20(40)を1本または2本の直動ガイド21(41)によって構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、並進ガイド部20(40)に3本以上の数の直動ガイド21(41)によって構成してもよい。並進ガイド部20(40)に設ける直動ガイド21(41)の数は、積載物の重量、並進ガイド部20(40)の設置数などに応じた数とすればよい。
【0095】
また、上記実施形態では、永久磁石とコイル部とがX方向に対向するタイプのリニアモータ31(51)の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、永久磁石とコイル部とがZ方向(上下)に対向するリニアモータ31(51)により並進駆動部を構成してもよい。
【0096】
また、上記実施形態では、可動子側がコイル、固定子側が永久磁石となるタイプのリニアモータ31(51)を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、可動子側が永久磁石、固定子側がコイルであってもよい。また、本発明では、可動子側および固定子側の両方がそれぞれコイルであってもよい。
【0097】
また、上記実施形態において説明した第1基台10aおよび第2基台10bや、Xサドル6およびYサドル7などの寸法、並進機構のストロークおよび加速度などの数値は、あくまで参考のための例示であり、本発明はこれに限られない。