特許第6681721号(P6681721)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6681721非水電解液及びそれを用いた非水系二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6681721
(24)【登録日】2020年3月26日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】非水電解液及びそれを用いた非水系二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20200406BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20200406BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20200406BHJP
【FI】
   H01M10/0567
   H01M10/0569
   H01M10/052
【請求項の数】7
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2016-11093(P2016-11093)
(22)【出願日】2016年1月22日
(65)【公開番号】特開2016-139611(P2016-139611A)
(43)【公開日】2016年8月4日
【審査請求日】2018年8月9日
(31)【優先権主張番号】特願2015-11073(P2015-11073)
(32)【優先日】2015年1月23日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】301005614
【氏名又は名称】東ソー・ファインケム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(74)【代理人】
【識別番号】100180699
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 渓
(72)【発明者】
【氏名】平山 大輔
(72)【発明者】
【氏名】青木 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】三村 英之
【審査官】 松村 駿一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−096462(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/016212(WO,A1)
【文献】 特開2012−084384(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第2006−0075043(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05−10/0587
H01M 4/00−4/62
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水溶媒と、
リチウム塩と、
下記一般式(2)
【化1】

(式中、nは1または2であり、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜6のアルコキシ基を表し、少なくとも1つは炭素数1〜6のアルコキシ基であり、Rfは、炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐の含フッ素アルキル基を表す。)で表されるアリール基含有含フッ素リン酸エステルとを含有する非水系二次電池用の非水電解液。
【請求項2】
前記非水溶媒として、鎖状カーボネート、環状カーボネート、またはそれらの混合物を含有する請求項に記載の非水系二次電池用の非水電解液。
【請求項3】
下記一般式(3)
【化2】

(式中、mは0〜3の整数であり、Rは、炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐のアルキル基を表し、Rfは、炭素数1〜6の直鎖または分岐の含フッ素アルキル基を表す。)で表されるリン酸エステルをさらに含有する請求項1または2に記載の非水系二次電池用の非水電解液。
【請求項4】
前記一般式(2)で表されるアリール基含有含フッ素リン酸エステルの含有量が、非水溶媒に対し重量比で0.1〜10%である請求項1〜のいずれか1項に記載の非水系二次電池用の非水電解液。
【請求項5】
前記非水電解液中に、更に、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート及びビニルエチレンカーボネートからなる群から選ばれる1種以上の化合物を、非水溶媒に対し重量比で0.1〜10%含有する請求項1〜のいずれか1項に記載の非水系二次電池用の非水電解液。
【請求項6】
負極、正極、セパレータ及び請求項1〜のいずれか1項に記載の非水系二次電池用の非水電解液を含む非水系二次電池。
【請求項7】
前記正極がリチウム金属基準で4.5V以上の電位を発現する正極活物質を含有する請求項に記載の非水系二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水系電解液、及びそれを用いた非水系二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池等の非水系二次電池は、高出力密度、高エネルギー密度を有し、携帯電話、ノートパソコン、タブレット型コンピューター等の電源として汎用されている。また、近年、非水系二次電池の高性能化、大型化に伴い、非水電解液二次電池の更なる高エネルギー密度化が要求され、電池サイズの小型化、あるいは電気自動車の航続距離の延長が望まれている。これらの要望に対しては、従来よりも高電圧化(例えば金属リチウム基準で4.5V以上)が可能な正極活物質を用いた非水系二次電池が提案されている。
このような非水系二次電池の電解液は、炭酸エチレン、炭酸プロピレン等の高誘電率溶媒に、低粘度溶媒である炭酸ジメチル、炭酸ジエチル等を混合して成る有機溶媒に電解質塩を溶解したものが一般的に用いられている。しかし、これらの電解液は、正極、負極上での電解液の分解による電池充放電特性の低下等の問題については十分であるとは言えない。特に、高電圧条件で充放電を行った場合、電解液が正極上で酸化分解され、炭酸ガスの発生により電池の膨れを生じたり、分解生成物の堆積により電気抵抗を増大させて充放電サイクル性能の低下を招き易い課題を有している(非特許文献1、2)。
【0003】
一方、電解液として、含フッ素リン酸エステルを溶媒として含有させると、金属リチウム基準で4.5V以上の高電圧条件で充放電させた場合でも、正極上での溶媒の分解が抑制され、ガス発生の少ない電池を構成できることが開示されている(特許文献1)。しかしながら、この技術においても、充放電サイクル性能の面では未だ十分でない。
この電極上での電解液の電気化学的分解の課題に対し、これを抑制する方法として、電解液中に様々な添加剤を存在させた非水電解液が提案されている(非特許文献3、特許文献2〜4)。非特許文献3、特許文献2には電解液中にビニレンカーボネートを少量添加することで保護性被膜(SEI:Solid Electrolyte Interphase)を形成することが開示されている。また、特許文献3には電解液中にフルオロエチレンカーボネートを共存させることで、高温での充放電サイクルに伴う容量低下および高温保存時のガス発生を抑制することが開示されている。更に、特許文献4には1,3−プロパンスルトンのような表面改質剤を存在させておき、充放電時に電極上にリチウム透過性の被膜を形成させる方法が知られている。
【0004】
さらには、電解液の難燃化や不燃化等、安全性の向上を目的として難燃性のリン酸エステルを添加する方法が開示されている(特許文献5)。特許文献5には、環状カルボン酸エステルや環状炭酸エステルを含む電解液中に環状リン酸エステルや鎖状リン酸エステルを添加することで、引火点が高く、高い導電率と電気化学安定性を有し、且つ安全性に優れた電解液を提供する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2012/077712号
【特許文献2】特開2005−149985号公報
【特許文献3】特開2007−250415号公報
【特許文献4】特開2011−96672号公報
【特許文献5】特開2002−203598号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「次世代自動車用リチウムイオン電池の材料開発」株式会社シーエムシー出版(2008)p.86〜89
【非特許文献2】「自動車用リチウムイオン電池」日刊工業新聞社(2010)p.20〜25、p.130〜131
【非特許文献3】「電子とイオンの機能化学シリーズ vol.3 次世代型リチウム二次電池」株式会社エヌ・ティー・エス(2003)p.134〜137
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2〜4に開示されている方法は、主に負極表面に安定な被膜を形成させることにより、電解液の電気化学的分解を抑制するものである。
従って、正極上に被膜を形成させることは困難であり、また、高電圧条件で充放電を行った場合は、添加剤の分解により負極上のSEI生成も不十分となる場合がある。従って、これらの先行技術を用いても高電圧条件で充放電を行った際のサイクル性能改善は依然として十分でない。
一方、特許文献5に開示されている方法は、電池の熱安定性を高める効果については記載されているが、実施例6、7に記載された、アリール基を含有するリン酸エステルが特異的に電池性能を向上するものではなく、さらにはエステル側鎖にフッ素を含有することで、その効果が顕著に向上することは記載されておらず、当業者が容易に成し得るものではない。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものである。即ち、本発明は非水系二次電池において、サイクル特性の改善された電解液を提供することを目的とし、特に、リチウムイオン二次電池において、リチウム金属基準で4.5V以上の高電圧条件で充放電を行った際の充放電サイクル特性の向上に寄与する非水系電解液、及びこれを用いた非水系二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、先の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、非水電解液に、特定のアリール基を含有した含フッ素リン酸エステルを存在させることにより、充放電サイクル特性(以下、単にサイクル特性ともいう)が向上することを見出した。特に、リチウムイオン電池では、リチウム金属基準で4.5V以上の高電圧条件で充放電させた場合にサイクル特性が大幅に向上することを見出し、本発明を完成させたものである。即ち、本発明は下記の要旨に係わるものである。
【0010】
1.非水溶媒と、
リチウム塩と、
下記一般式(1)
【化1】


(式中、nは1または2であり、Aは、無置換もしくはフッ素原子、炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐のアルキル基、シアノ基、炭素数2〜6の直鎖もしくは分岐のシアノアルキル基および炭素数1〜6のアルコキシ基からなる群から選ばれる置換基により置換された炭素数6〜10のアリール基またはアラルキル基を表し、Rfは、炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐の含フッ素アルキル基を表す。)で表されるアリール基含有含フッ素リン酸エステルと、を含有する非水電解液。
特に高電圧条件で充放電した場合のサイクル特性向上には、エステル側鎖にフッ素原子を含有することが必要である。
2.一般式(1)で表されるアリール含有含フッ素リン酸エステルとして、下記一般式(2)
【化2】


(式中、nは1または2であり、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐のアルキル基、シアノ基、炭素数2〜6の直鎖もしくは分岐のシアノアルキル基または炭素数1〜6のアルコキシ基を表し、Rfは、炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐の含フッ素アルキル基を表す。)で表される化合物を含有する1項に記載の非水電解液。
3.一般式(2)において、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、シアノ基または炭素数1〜6のアルコキシ基を表し、少なくとも1つは水素原子以外である2項に記載の非水電解液。
4.一般式(2)において、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜6のアルコキシ基を表し、少なくとも1つは炭素数1〜6のアルコキシ基である2項に記載の非水電解液。
5.非水溶媒が、鎖状カーボネート、環状カーボネートまたはそれらの混合物である1項〜4項のいずれか1項に記載の非水電解液。
6.下記一般式(3)
【化3】

(式中、mは0〜3の整数であり、Rは、炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐のアルキル基を表し、Rfは、炭素数1〜6の直鎖または分岐の含フッ素アルキル基を表す。)で表されるリン酸エステルをさらに含有する1〜5項のいずれか1項に記載の非水電解液。
リン酸エステル誘導体は高電圧で充放電を行う際にガス発生抑制等で効果があることが知られているが、上記一般式(1)の化合物と共存することで充放電サイクル特性がさらに向上する。
7.一般式(1)で表されるアリール基含有含フッ素リン酸エステルの含有量が非水溶媒に対し重量比で0.1〜10%である1〜6項のいずれか1項に記載の非水電解液。
8.非水電解液中に、更に、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート及びビニルエチレンカーボネートからなる群から選ばれる1種以上の化合物を、非水溶媒に対し重量比で0.1〜10%含有する1〜7項のいずれか1項に記載の非水電解液。
ビニレンカーボネートやフルオロエチレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネートは負極表面に被膜を形成する被膜形成剤(SEI)として知られているが、これらのSEI剤と併用すると、充放電サイクル特性を著しく向上することができる。
9.負極、正極、セパレータ及び1〜8項のいずれか1項に記載の非水電解液を含む非水系二次電池。
10.正極がリチウム金属基準で4.5V以上の電位を発現する正極活物質を含有する9項に記載の非水系二次電池。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、サイクル特性の改善された非水電解液及びこれを含む非水系二次電池が提供され、特に、リチウム金属基準で4.5V以上の高電圧条件で充放電を行った際に充放電サイクル性能が著しく向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1〜30および比較例1〜7に用いたコインセル型電池の構造を示す模式断面図である。
図2】実施例31、32及び比較例8で測定した、リニアスィープボルタノグラムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施形態の非水電解液は、電解質塩を非水溶媒に溶解させた非水電解液中に一般式(1)で表されるアリール基含有含フッ素リン酸エステルを含有させたことを特徴とする。
【0014】
【化1】
【0015】
アリール基含有含フッ素リン酸エステルのサイクル特性改善の機構は不明であるが、被膜形成に寄与するアリール基部位、イオン導電性に寄与するリン酸部位、更には、エステル側鎖にフッ素原子を有することにより、適度な分解電位(被膜形成能)と良好なイオン導電性を有することが機能に関与しているものと推定される。また、アリール基にアルコキシ基等の置換基が導入されている場合にサイクル特性がさらに改善されていることについては、リチウムと置換基とが相互作用し、リチウム透過性の高い保護被膜が電極表面に形成されるためと推定される。
【0016】
一般式(1)において、nは1または2であり、1もしくは2個のアリール基またはアラルキル基、及び2もしくは1個の含フッ素アルキル基を分子中に有する。一般式(1)において、Aは無置換またはフッ素原子、炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐のアルキル基、シアノ基、炭素数2〜6の直鎖もしくは分岐のシアノアルキル基および炭素数1〜6のアルコキシ基からなる群から選ばれる置換基により置換された炭素数6〜10のアリール基またはアラルキル基を表す。このようなAの例としては、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、ベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基、4−フェニルブチル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−n−プロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、4−n−ブチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−n−ペンチルフェニル基、4−n−ヘキシルフェニル基、2−シアノフェニル基、3−シアノフェニル基、4−シアノフェニル基、4−(2−シアノエチル)フェニル基、2,3−ジメチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル、3,4−ジメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、2−エトキシフェニル基、3−エトキシフェニル基、4−エトキシフェニル基、2−n−プロポキシフェニル基、3−n−プロポキシフェニル基、4−n−プロポキシフェニル基、2−iso−プロポキシフェニル基、3−iso−プロポキシフェニル基、4−iso−プロポキシフェニル基、2−n−ブトキシフェニル基、3−n−ブトキシフェニル基、4−n−ブトキシフェニル基、2−iso−ブトキシフェニル基、3−iso−ブトキシフェニル基、4−iso−ブトキシフェニル基、2−sec−ブトキシフェニル基、3−sec−ブトキシフェニル基、4−sec−ブトキシフェニル基、2−tert−ブトキシフェニル基、3−tert−ブトキシフェニル基、4−tert−ブトキシフェニル基、2−n−ペンチルオキシフェニル基、3−n−ペンチルオキシフェニル基、4−n−ペンチルオキシフェニル基、2−(1−メチルブチルオキシ)フェニル基、3−(1−メチルブチルオキシ)フェニル基、4−(1−メチルブチルオキシ)フェニル基、2−(2−メチルブチルオキシ)フェニル基、3−(2−メチルブチルオキシ)フェニル基、4−(2−メチルブチルオキシ)フェニル基、2−(3−メチルブチルオキシ)フェニル基、3−(3−メチルブチルオキシ)フェニル基、4−(3−メチルブチルオキシ)フェニル基、2−(1−エチルプロピルオキシ)フェニル基、3−(1−エチルプロピルオキシ)フェニル基、4−(1−エチルプロピルオキシ)フェニル基、2−(1,1−ジメチルプロピルオキシ)フェニル基、3−(1,1−ジメチルプロピルオキシ)フェニル基、4−(1,1−ジメチルプロピルオキシ)フェニル基、2−(2,2−ジメチルプロピルオキシ)フェニル基、3−(2,2−ジメチルプロピルオキシ)フェニル基、4−(2,2−ジメチルプロピルオキシ)フェニル基、2−(1,2−ジメチルプロピルオキシ)フェニル基、3−(1,2−ジメチルプロピルオキシ)フェニル基、4−(1,2−ジメチルプロピルオキシ)フェニル基、2−n−ヘキシルオキシフェニル基、3−n−ヘキシルオキシフェニル基、4−n−ヘキシルオキシフェニル基、2−(1−メチルペンチルオキシ)フェニル基、3−(1−メチルペンチルオキシ)フェニル基、4−(1−メチルペンチルオキシ)フェニル基、2−(2−メチルペンチルオキシ)フェニル基、3−(2−メチルペンチルオキシ)フェニル基、4−(2−メチルペンチルオキシ)フェニル基、2−(3−メチルペンチルオキシ)フェニル基、3−(3−メチルペンチルオキシ)フェニル基、4−(3−メチルペンチルオキシ)フェニル基、2−(4−メチルペンチルオキシ)フェニル基、3−(4−メチルペンチルオキシ)フェニル基、4−(4−メチルペンチルオキシ)フェニル基、2−(1−エチルブチルオキシ)フェニル基、3−(1−エチルブチルオキシ)フェニル基、4−(1−エチルブチルオキシ)フェニル基、2−(2−エチルブチルオキシ)フェニル基、3−(2−エチルブチルオキシ)フェニル基、4−(2−エチルブチルオキシ)フェニル基、2−(1,1−ジメチルブチルオキシ)フェニル基、3−(1,1−ジメチルブチルオキシ)フェニル基、4−(1,1−ジメチルブチルオキシ)フェニル基、2−(1,2−ジメチルブチルオキシ)フェニル基、3−(1,2−ジメチルブチルオキシ)フェニル基、4−(1,2−ジメチルブチルオキシ)フェニル基、2−(1,3−ジメチルブチルオキシ)フェニル基、3−(1,3−ジメチルブチルオキシ)フェニル基、4−(1,3−ジメチルブチルオキシ)フェニル基、2−(2,3−ジメチルブチルオキシ)フェニル基、3−(2,3−ジメチルブチルオキシ)フェニル基、4−(2,3−ジメチルブチルオキシ)フェニル基、2−(2,2−ジメチルブチルオキシ)フェニル基、3−(2,2−ジメチルブチルオキシ)フェニル基、4−(2,2−ジメチルブチルオキシ)フェニル基、2−(3,3−ジメチルブチルオキシ)フェニル基、3−(3,3−ジメチルブチルオキシ)フェニル基、4−(3,3−ジメチルブチルオキシ)フェニル基、2−(1−エチルブチルオキシ)フェニル基、3−(1−エチルブチルオキシ)フェニル基、4−(1−エチルブチルオキシ)フェニル基、2−(2−エチルブチルオキシ)フェニル基、3−(2−エチルブチルオキシ)フェニル基、4−(2−エチルブチルオキシ)フェニル基、2−(1−エチル−2−メチルプロピルオキシ)フェニル基、3−(1−エチル−2−メチルプロピルオキシ)フェニル基、4−(1−エチル−2−メチルプロピルオキシ)フェニル基、2−(2−エチル−1−メチルプロピルオキシ)フェニル基、3−(2−エチル−1−メチルプロピルオキシ)フェニル基、4−(2−エチル−1−メチルプロピルオキシ)フェニル基、2−(1−エチル−1−メチルプロピルオキシ)フェニル基、3−(1−エチル−1−メチルプロピルオキシ)フェニル基、4−(1−エチル−1−メチルプロピルオキシ)フェニル基、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基、2,3−ジフルオロフェニル基、2,4−ジフルオロフェニル基、3,4−ジフルオロフェニル基、2,4,6−トリフルオロフェニル基、3,4,5−トリフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、4−メチルベンジル基、4−フルオロベンジル基、4−メトキシベンジル基、4−シアノベンジル基、4−(2−シアノエチル)ベンジル基等を挙げることができる。より良好な保護被膜を形成し、サイクル特性をさらに改善できる点から、2−シアノフェニル基、3−シアノフェニル基、4−シアノフェニル基、2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、2−エトキシフェニル基、3−エトキシフェニル基、4−エトキシフェニル基、2−n−プロポキシフェニル基、3−n−プロポキシフェニル基、4−n−プロポキシフェニル基、2−iso−プロポキシフェニル基、3−iso−プロポキシフェニル基、4−iso−プロポキシフェニル基、2−n−ブトキシフェニル基、3−n−ブトキシフェニル基、4−n−ブトキシフェニル基、2−iso−ブトキシフェニル基、3−iso−ブトキシフェニル基、4−iso−ブトキシフェニル基、2−sec−ブトキシフェニル基、3−sec−ブトキシフェニル基、4−sec−ブトキシフェニル基、2−tert−ブトキシフェニル基、3−tert−ブトキシフェニル基、4−tert−ブトキシフェニル基、2−n−ペンチルオキシフェニル基、3−n−ペンチルオキシフェニル基、4−n−ペンチルオキシフェニル基、2−(1−メチルブチルオキシ)フェニル基、3−(1−メチルブチルオキシ)フェニル基、4−(1−メチルブチルオキシ)フェニル基、2−(2−メチルブチルオキシ)フェニル基、3−(2−メチルブチルオキシ)フェニル基、4−(2−メチルブチルオキシ)フェニル基、2−(3−メチルブチルオキシ)フェニル基、3−(3−メチルブチルオキシ)フェニル基、4−(3−メチルブチルオキシ)フェニル基、2−(1−エチルプロピルオキシ)フェニル基、3−(1−エチルプロピルオキシ)フェニル基、4−(1−エチルプロピルオキシ)フェニル基、2−(1,1−ジメチルプロピルオキシ)フェニル基、3−(1,1−ジメチルプロピルオキシ)フェニル基、4−(1,1−ジメチルプロピルオキシ)フェニル基、2−(2,2−ジメチルプロピルオキシ)フェニル基、3−(2,2−ジメチルプロピルオキシ)フェニル基、4−(2,2−ジメチルプロピルオキシ)フェニル基、2−(1,2−ジメチルプロピルオキシ)フェニル基、3−(1,2−ジメチルプロピルオキシ)フェニル基、4−(1,2−ジメチルプロピルオキシ)フェニル基、2−n−ヘキシルオキシフェニル基、3−n−ヘキシルオキシフェニル基、4−n−ヘキシルオキシフェニル基、2−(1−メチルペンチルオキシ)フェニル基、3−(1−メチルペンチルオキシ)フェニル基、4−(1−メチルペンチルオキシ)フェニル基、2−(2−メチルペンチルオキシ)フェニル基、3−(2−メチルペンチルオキシ)フェニル基、4−(2−メチルペンチルオキシ)フェニル基、2−(3−メチルペンチルオキシ)フェニル基、3−(3−メチルペンチルオキシ)フェニル基、4−(3−メチルペンチルオキシ)フェニル基、2−(4−メチルペンチルオキシ)フェニル基、3−(4−メチルペンチルオキシ)フェニル基、4−(4−メチルペンチルオキシ)フェニル基、2−(1−エチルブチルオキシ)フェニル基、3−(1−エチルブチルオキシ)フェニル基、4−(1−エチルブチルオキシ)フェニル基、2−(2−エチルブチルオキシ)フェニル基、3−(2−エチルブチルオキシ)フェニル基、4−(2−エチルブチルオキシ)フェニル基、2−(1,1−ジメチルブチルオキシ)フェニル基、3−(1,1−ジメチルブチルオキシ)フェニル基、4−(1,1−ジメチルブチルオキシ)フェニル基、2−(1,2−ジメチルブチルオキシ)フェニル基、3−(1,2−ジメチルブチルオキシ)フェニル基、4−(1,2−ジメチルブチルオキシ)フェニル基、2−(1,3−ジメチルブチルオキシ)フェニル基、3−(1,3−ジメチルブチルオキシ)フェニル基、4−(1,3−ジメチルブチルオキシ)フェニル基、2−(2,3−ジメチルブチルオキシ)フェニル基、3−(2,3−ジメチルブチルオキシ)フェニル基、4−(2,3−ジメチルブチルオキシ)フェニル基、2−(2,2−ジメチルブチルオキシ)フェニル基、3−(2,2−ジメチルブチルオキシ)フェニル基、4−(2,2−ジメチルブチルオキシ)フェニル基、2−(3,3−ジメチルブチルオキシ)フェニル基、3−(3,3−ジメチルブチルオキシ)フェニル基、4−(3,3−ジメチルブチルオキシ)フェニル基、2−(1−エチルブチルオキシ)フェニル基、3−(1−エチルブチルオキシ)フェニル基、4−(1−エチルブチルオキシ)フェニル基、2−(2−エチルブチルオキシ)フェニル基、3−(2−エチルブチルオキシ)フェニル基、4−(2−エチルブチルオキシ)フェニル基、2−(1−エチル−2−メチルプロピルオキシ)フェニル基、3−(1−エチル−2−メチルプロピルオキシ)フェニル基、4−(1−エチル−2−メチルプロピルオキシ)フェニル基、2−(2−エチル−1−メチルプロピルオキシ)フェニル基、3−(2−エチル−1−メチルプロピルオキシ)フェニル基、4−(2−エチル−1−メチルプロピルオキシ)フェニル基、2−(1−エチル−1−メチルプロピルオキシ)フェニル基、3−(1−エチル−1−メチルプロピルオキシ)フェニル基、4−(1−エチル−1−メチルプロピルオキシ)フェニル基、2−フルオロフェニル基、3−フル
オロフェニル基、4−フルオロフェニル基、2,3−ジフルオロフェニル基、2,4−ジフルオロフェニル基、3,4−ジフルオロフェニル基、2,4,6−トリフルオロフェニル基、3,4,5−トリフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基が好ましく、2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、2−エトキシフェニル基、3−エトキシフェニル基、4−エトキシフェニル基、2−n−プロポキシフェニル基、3−n−プロポキシフェニル基、4−n−プロポキシフェニル基、2−イソプロポキシフェニル基、3−イソプロポキシフェニル基、4−イソプロポキシフェニル基、2−n−ブトキシフェニル基、3−n−ブトキシフェニル基、4−n−ブトキシフェニル基、2−iso−ブトキシフェニル基、3−iso−ブトキシフェニル基、4−iso−ブトキシフェニル基、2−sec−ブトキシフェニル基、3−sec−ブトキシフェニル基、4−sec−ブトキシフェニル基、2−tert−ブトキシフェニル基、3−tert−ブトキシフェニル基、4−tert−ブトキシフェニル基、2−n−ペンチルオキシフェニル基、3−n−ペンチルオキシフェニル基、4−n−ペンチルオキシフェニル基、2−(1−メチルブチルオキシ)フェニル基、3−(1−メチルブチルオキシ)フェニル基、4−(1−メチルブチルオキシ)フェニル基、2−(2−メチルブチルオキシ)フェニル基、3−(2−メチルブチルオキシ)フェニル基、4−(2−メチルブチルオキシ)フェニル基、2−(3−メチルブチルオキシ)フェニル基、3−(3−メチルブチルオキシ)フェニル基、4−(3−メチルブチルオキシ)フェニル基、2−(1−エチルプロピルオキシ)フェニル基、3−(1−エチルプロピルオキシ)フェニル基、4−(1−エチルプロピルオキシ)フェニル基、2−(1,1−ジメチルプロピルオキシ)フェニル基、3−(1,1−ジメチルプロピルオキシ)フェニル基、4−(1,1−ジメチルプロピルオキシ)フェニル基、2−(2,2−ジメチルプロピルオキシ)フェニル基、3−(2,2−ジメチルプロピルオキシ)フェニル基、4−(2,2−ジメチルプロピルオキシ)フェニル基、2−(1,2−ジメチルプロピルオキシ)フェニル基、3−(1,2−ジメチルプロピルオキシ)フェニル基、4−(1,2−ジメチルプロピルオキシ)フェニル基、2−n−ヘキシルオキシフェニル基、3−n−ヘキシルオキシフェニル基、4−n−ヘキシルオキシフェニル基、2−(1−メチルペンチルオキシ)フェニル基、3−(1−メチルペンチルオキシ)フェニル基、4−(1−メチルペンチルオキシ)フェニル基、2−(2−メチルペンチルオキシ)フェニル基、3−(2−メチルペンチルオキシ)フェニル基、4−(2−メチルペンチルオキシ)フェニル基、2−(3−メチルペンチルオキシ)フェニル基、3−(3−メチルペンチルオキシ)フェニル基、4−(3−メチルペンチルオキシ)フェニル基、2−(4−メチルペンチルオキシ)フェニル基、3−(4−メチルペンチルオキシ)フェニル基、4−(4−メチルペンチルオキシ)フェニル基、2−(1−エチルブチルオキシ)フェニル基、3−(1−エチルブチルオキシ)フェニル基、4−(1−エチルブチルオキシ)フェニル基、2−(2−エチルブチルオキシ)フェニル基、3−(2−エチルブチルオキシ)フェニル基、4−(2−エチルブチルオキシ)フェニル基、2−(1,1−ジメチルブチルオキシ)フェニル基、3−(1,1−ジメチルブチルオキシ)フェニル基、4−(1,1−ジメチルブチルオキシ)フェニル基、2−(1,2−ジメチルブチルオキシ)フェニル基、3−(1,2−ジメチルブチルオキシ)フェニル基、4−(1,2−ジメチルブチルオキシ)フェニル基、2−(1,3−ジメチルブチルオキシ)フェニル基、3−(1,3−ジメチルブチルオキシ)フェニル基、4−(1,3−ジメチルブチルオキシ)フェニル基、2−(2,3−ジメチルブチルオキシ)フェニル基、3−(2,3−ジメチルブチルオキシ)フェニル基、4−(2,3−ジメチルブチルオキシ)フェニル基、2−(2,2−ジメチルブチルオキシ)フェニル基、3−(2,2−ジメチルブチルオキシ)フェニル基、4−(2,2−ジメチルブチルオキシ)フェニル基、2−(3,3−ジメチルブチルオキシ)フェニル基、3−(3,3−ジメチルブチルオキシ)フェニル基、4−(3,3−ジメチルブチルオキシ)フェニル基、2−(1−エチルブチルオキシ)フェニル基、3−(1−エチルブチルオキシ)フェニル基、4−(1−エチルブチルオキシ)フェニル基、2−(2−エチルブチルオキシ)フェニル基、3−(2−エチルブチルオキシ)フェニル基、4−(2−エチルブチルオキシ)フェニル基、2−(1−エチル−2−メチルプロピルオキシ)フェニル基、3−(1−エチル−2−メチルプロピルオキシ)フェニル基、4−(1−エチル−2−メチルプロピルオキシ)フェニル基、2−(2−エチル−1−メチルプロピルオキシ)フェニル基、3−(2−エチル−1−メチルプロピルオキシ)フェニル基、4−(2−エチル−1−メチルプロピルオキシ)フェニル基、2−(1−エチル−1−メチルプロピルオキシ)フェニル基、3−(1−エチル−1−メチルプロピルオキシ)フェニル基、4−(1−エチル−1−メチルプロピルオキシ)フェニル基がさらに好ましい。
【0017】
また、一般式(1)においてRf1は炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐の含フッ素アルキル基を表し、例えば、2−フルオロエチル基、2,2−ジフルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基、ヘキサフルオロイソプロピル基、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル基及び3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル基等を挙げることができる。また、適度な分解電位(被膜形成能)と良好なイオン導電性を両立するためには、少なくとも一つのRf1側鎖が必要である。
【0018】
一般式(1)のアリール基含有含フッ素リン酸エステルの例として、n=1の場合、例えば、リン酸ビス(2−フルオロエチル)フェニル、リン酸ビス(2,2−ジフルオロエチル)フェニル、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)フェニル、リン酸ビス(2,2,3,3−テトラフルオロプロピル)フェニル、リン酸ビス(2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル)フェニル、リン酸ビス(ヘキサフルオロイソプロピル)フェニル、リン酸ビス(2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル)フェニル、リン酸ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル)フェニル、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)1−ナフチル、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)2−ナフチル、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)ベンジル、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(1−フェニルエチル)、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(2−フェニルエチル)、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(3−フェニルプロピル)、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(4−フェニルブチル)、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(2−メチルフェニル)、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(3−メチルフェニル)、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(4−メチルフェニル)、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(4−エチルフェニル)、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(4−n−プロピルフェニル)、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(4−イソプロピルフェニル)、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(4−n−ブチルフェニル)、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(4−tert−ブチルフェニル)、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(4−n−ペンチルフェニル)、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(4−n−ヘキシルフェニル)、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(2,3−ジメチルフェニル)、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(2,4−ジメチルフェニル)、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(3,4−ジメチルフェニル)、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(2,6−ジメチルフェニル)、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(2,4,6−トリメチルフェニル)、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(2−メトキシフェニル)、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(3−メトキシフェニル)、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(4−メトキシフェニル)、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(2−エトキシフェニル)、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(3−エトキシフェニル)、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(4−エトキシフェニル)、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(2−n−プロポキシフェニル)、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(3−n−プロポキシフェニル)、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(4−n−プロポキシフェニル)、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(2−iso−プロポキシフェニル)、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(3−iso−プロポキシフェニル)、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(4−iso−プロポキシフェニル)、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(2−n−ブトキシフェニル)、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(3−n−ブトキシフェニル)、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(4−n−ブトキシフェニル)、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(2−iso−ブトキシフェニル)、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(3−iso−ブトキシフェニル)、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(4−iso−ブトキシフェニル)、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(2−sec−ブトキシフェニル)、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(3−sec−ブトキシフェニル)、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(4−sec−ブトキシフェニル)、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(2−tert−ブトキシフェニル)、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(3−tert−ブトキシフェニル)、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(4−tert−ブトキシフェニル)、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(2−n−ペンチルオキシフェニル)、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(3−n−ペンチルオキシフェニル)、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(4−n−ペンチルオキシフェニル)、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(2−n−ヘキシルオキシフェニル)、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(3−n−ヘキシルオキシフェニル)、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(4−n−ヘキシルオキシフェニル)、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(2−フルオロフェニル)、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(3−フルオロフェニル)、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(4−フルオロフェニル)、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(2,3−ジフルオロフェニル)、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(2,4−ジフルオロフェニル)、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(2,6−ジフルオロフェニル)、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(3,4−ジフルオロフェニル)、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(2,4,6−トリフルオロフェニル)、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(3,4,5−トリフルオロフェニル)、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(ペンタフルオロフェニル)、リン酸ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)(2−シアノフェニル)、リン酸ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)(3−シアノフェニル)、リン酸ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)(4−シアノフェニル)、リン酸ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)[4−(2−シアノエチル)フェニル]、リン酸ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)(4−メチルベンジル)、リン酸ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)(4−フルオロベンジル)、リン酸ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)(4−メトキシベンジル)、リン酸ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)(4−シアノベンジル)、リン酸ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)[4−(2−シアノエチル)ベンジル]等を挙げることができる。
また、n=2の場合、例えば、リン酸ジフェニル(2−フルオロエチル)、リン酸ジフェニル(2,2−ジフルオロエチル)、リン酸ジフェニル(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸ジフェニル(2,2,3,3−テトラフルオロプロピル)、リン酸ジフェニル(2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル)、リン酸ジフェニル(ヘキサフルオロイソプロピル)、リン酸ジフェニル(2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル)、リン酸ジフェニル(3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル)、リン酸ジ−1−ナフチル(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸ジ−2−ナフチル(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸ジベンジル(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸ビス(1−フェニルエチル)(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸ビス(2−フェニルエチル)(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸ビス(3−フェニルプロピル)(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸ビス(4−フェニルブチル)(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸ビス(2−メチルフェニル)(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸ビス(3−メチルフェニル)(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸ビス(4−メチルフェニル)(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸ビス(4−エチルフェニル)(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸ビス(4−n−プロピルフェニル)(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸ビス(4−イソプロピルフェニル)(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸ビス(4−n−ブチルフェニル)(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸ビス(4−tert−ブチルフェニル)(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸ビス(4−n−ペンチルフェニル)(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸ビス(4−n−ヘキシルフェニル)(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸ビス(2,3−ジメチルフェニル)(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸ビス(2,4−ジメチルフェニル)(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸ビス(3,4−ジメチルフェニル)(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸ビス(2,6−ジメチルフェニル)(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸ビス(2−メトキシフェニル)(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸ビス(3−メトキシフェニル)(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸ビス(4−メトキシフェニル)(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸ビス(2−エトキシフェニル)(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸ビス(3−エトキシフェニル)(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸ビス(4−エトキシフェニル)(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸ビス(2−n−プロポキシフェニル)(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸ビス(3−n−プロポキシフェニル)(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸ビス(4−n−プロポキシフェニル)(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸ビス(2−iso−プロポキシフェニル)(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸ビス(3−iso−プロポキシフェニル)(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸ビス(4−iso−プロポキシフェニル)(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸ビス(2−n−ブトキシフェニル)(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸ビス(3−n−ブトキシフェニル)(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸ビス(4−n−ブトキシフェニル)(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸ビス(2−iso−ブトキシフェニル)(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸ビス(3−iso−ブトキシフェニル)(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸ビス(4−iso−ブトキシフェニル)(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸ビス(2−sec−ブトキシフェニル)(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸ビス(3−sec−ブトキシフェニル)(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸ビス(4−sec−ブトキシフェニル)(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸ビス(2−tert−ブトキシフェニル)(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸ビス(3−tert−ブトキシフェニル)(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸ビス(4−tert−ブトキシフェニル)(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸ビス(2−n−ペンチルオキシフェニル)(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸ビス(3−n−ペンチルオキシフェニル)(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸ビス(4−n−ペンチルオキシフェニル)(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸ビス(2−n−ヘキシルオキシフェニル)(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸ビス(3−n−ヘキシルオキシフェニル)(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸ビス(4−n−ヘキシルオキシフェニル)(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸ビス(2−フルオロフェニル)(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸ビス(3−フルオロフェニル)(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸ビス(4−フルオロフェニル)(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸ビス(2,3−ジフルオロフェニル)(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸ビス(2,4−ジフルオロフェニル)(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸ビス(2,6−ジフルオロフェニル)(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸ビス(3,4−ジフルオロフェニル)(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸ビス(3,4,5−トリフルオロフェニル)(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸ビス(2,4,6−トリフルオロフェニル)(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸ビス(ペンタフルオロフェニル)(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸ビス(2−シアノフェニル)(2,2,2-トリフルオロエチル)、リン酸ビス(3−シアノフェニル)(2,2,2-トリフルオロエチル)、リン酸ビス(4−シアノフェニル)(2,2,2-トリフルオロエチル)、リン酸ビス [4−(2−シアノエチル)フェニル] (2,2,2-トリフルオロエチル)、リン酸ビス(4−メチルベンジル)(2,2,2-トリフルオロエチル)、リン酸ビス(4−フルオロベンジル)(2,2,2-トリフルオロエチル)、リン酸ビス(4−メトキシベンジル)(2,2,2-トリフルオロエチル)、リン酸ビス(4−シアノベンジル)(2,2,2-トリフルオロエチル)、リン酸ビス[4−(2−シアノエチル)ベンジル](2,2,2-トリフルオロエチル)等を挙げることができる。
これらアリール基含有含フッ素リン酸エステルの中で、一般式(1)で表されるAが無置換もしくは置換基を有するフェニル基である場合に、より良好なサイクル特性が得られるため好ましい。
【0019】
また、さらにより良好なサイクル特性が得ることができる観点から、一般式(1)で表されるアリール基含有含フッ素リン酸エステルとして、一般式(2)で表される化合物が本実施形態の非水電解液に含有されることが好ましい。
【0020】
【化5】
【0021】
式(2)中、nは1または2であり、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐のアルキル基、シアノ基、炭素数2〜6の直鎖もしくは分岐のシアノアルキル基または炭素数1〜6のアルコキシ基を表し、Rfは、炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐の含フッ素アルキル基を表す。
このうち、より一層良好なサイクル特性を得ることができるため、当該一般式(2)の化合物として、R〜Rが、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、シアノ基または炭素数1〜6のアルコキシ基であり、少なくとも1つは、水素原子以外の置換基で置換されている化合物が好ましく、最も好適には、R〜Rが、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜6のアルコキシ基であり、少なくとも1つは炭素数1〜6のアルコキシ基で置換されている化合物である。
【0022】
これら一般式(1)のアリール基含有含フッ素リン酸エステルの非水電解液の添加量は、非水溶媒に対し、重量比で0.1〜10%とすることが望ましく、より好ましくは、0.5〜5%である。添加量が0.1%未満の場合は、範囲内にある場合と比較して十分なサイクル特性改善効果が得られず、また添加量が10%を超える場合は、範囲内にある場合と比較して、電解液の電気伝導度が低下し、非水系二次電池の性能が低下する場合がある。
【0023】
また、本実施形態の非水電解液に、一般式(1)のアリール基含有含フッ素リン酸エステルに加えて更にビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート及びビニルエチレンカーボネートからなる群から選ばれる1種以上の化合物を存在させると、更に改善されたサイクル特性が得られるため好ましい。なお、この際のビニレンカーボネート等の添加量は、非水溶媒に対し、重量比で0.1〜10%とすることが望ましく、より好ましくは、0.5〜5%である。
【0024】
非水電解液に含まれる非水溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート等の環状カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)カーボネート等の鎖状カーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、プロピオラクトン等の環状エステル、酢酸メチル、酪酸メチル、トリフルオロ酢酸エチル等の鎖状エステル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、メトキシエトキシエタン等のエーテル類及びアセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類等の単独又はそれら2種以上の混合物を挙げることができる。これらのうち、特に環状カーボネートと鎖状カーボネートのいずれか一方、あるいは環状カーボネートと鎖状カーボネートの混合物を含有する溶媒を使用することがイオン伝導度、電池のサイクル性能の点で好ましい。
【0025】
また、本実施形態の非水電解液において、一般式(3)で表されるリン酸エステルをさらに含有することで、特にリチウム金属基準で4.5V以上の高電圧で充放電させた場合において、ガス発生やサイクル特性の面でより高性能が得られるため好ましい。
【0026】
【化3】
【0027】
一般式(3)で表されるリン酸エステルにおいて、mは0〜3の整数であり、Rは、炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐のアルキル基を表し、Rfは、炭素数1〜6の直鎖または分岐の含フッ素アルキル基を表す。
一般式(3)のリン酸エステルの例として、例えば、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリ−n−プロピル、リン酸トリ−iso−プロピル、リン酸トリ−n−ブチル、リン酸トリ−iso−ブチル、リン酸トリ−tert−ブチル、リン酸トリフェニル、リン酸トリス(2−フルオロエチル)、リン酸トリス(2,2−ジフルオロエチル)、リン酸トリス(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸トリス(2,2,3,3−テトラフルオロプロピル)、リン酸トリス(2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル)、リン酸トリス(ヘキサフルオロ−iso−プロピル)、リン酸トリス(2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル)、リン酸トリス(2,2,3,3,4,4,5,5,5−ノナフルオロペンチル)、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)メチル、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)エチル、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)n−プロピル、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)iso−プロピル、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)n−ブチル、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)tert−ブチル、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(2,2−ジフルオロエチル)、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(2,2,3,3−テトラフルオロプロピル)、リン酸ビス(2,2,3,3−テトラフルオロプロピル)(2,2,2−トリフルオロエチル)及びリン酸(2,2,2−トリフルオロエチル)(2,2,3,3−テトラフルオロプロピル)メチル等を挙げることができ、本実施形態の非水電解液においては、例えばこれらを1種または2種以上含むようにすることができる。
【0028】
本実施形態の非水電解液に含まれる電解質塩としては、広電位領域で安定なリチウム塩が用いられる。このような電解質塩として、例えば、LiBF、LiPF、LiClO、LiCFSO、LiN(FSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiC(CFSO等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。なお、電池特性を良好なものとするため、非水電解液における電解質塩の濃度は0.2〜2.5mol/Lの範囲とすることが望ましい。
【0029】
本実施形態に係る非水系二次電池は、正極、負極、セパレータ及び非水電解液を含んで構成することができる。通常、非水系二次電池のうち、負極として金属リチウムを用いる場合をリチウム二次電池、負極としてリチウムイオンをドープ・脱ドープ可能な材料を用いる場合をリチウムイオン二次電池と称する。
【0030】
正極材料としては、LiCoO2、LiMnO2、LiMn24、LiNiO2、LiFeO、LiFePO等のリチウムと遷移金属からなる複合酸化物を用いることができる。特に負極金属基準で4.5V以上の電位を発現する正極材料としては、LiNi1/3Mn1/3Co1/3またはLixMn2−yNi(0≦x≦1、0.45≦y≦0.6)等の組成の活物質を含む正極が、金属リチウム基準で4.5V以上の電位を安定して発現するため好ましい。
【0031】
負極材料としては、金属リチウム、または、LiTi12等のリチウムと遷移金属の複合酸化物もしくはグラファイト等の炭素材料の様なリチウムイオンをドープ・脱ドープ可能な材料等をそれぞれ用いることができる。
【0032】
セパレータとしては、微多孔性膜等が用いられ、材料として、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂あるいはポリフッ化ビニリデン等のフッ素系樹脂等が用いられる。
非水電解液二次電池の形状、形態としては、通常、円筒型、角型、コイン型、カード型およびラミネート型等が選択される。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例、比較例及び参考例にて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0034】
作成例1.コインセル型リチウムイオン二次電池の作成
正極活物質としてコバルト酸リチウム(LiCoO)を用い、これに導電助剤としてアセチレンブラック、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)をLiCoO:アセチレンブラック:PVDF=86:7:7となるように配合し、1−メチル−2−ピロリドンを用いてスラリー化したものをアルミ製集電体上に一定の膜厚で塗布し、乾燥させて正極を得た。負極活物質としては天然球状グラファイトを用い、バインダーとしてPVDFをグラファイト:PVDF=9:1となるように配合し、1−メチル−2−ピロリドンを用いてスラリー化したものを銅製集電体上に一定の膜厚で塗布し、乾燥させて負極を得た。
【0035】
セパレータは無機フィラー含有ポリオレフィン多孔質膜を用いた。以上の構成要素を用いて、図1に示した構造のコイン型セルを用いたリチウムイオン二次電池を作成した。リチウムイオン二次電池はセパレータ8を挟んで正極1、負極5を対向配置し、負極ステンレス製キャップ4にステンレス製板バネ7を設置し、負極5、セパレータ8および正極1からなる積層体をコイン型セル内に収納した。この積層体に非水電解液を注入した後、ガスケット9を配置後、正極ステンレス製キャップ3をかぶせ、コイン型セルケースをかしめることで作成した。
【0036】
作成例2.コインセル型リチウムイオン二次電池の作成
正極活物質としてリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物(LiNi1/3Mn1/3Co1/3)を用い、これに導電助剤としてアセチレンブラック、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)をLiNi1/3Mn1/3Co1/3:アセチレンブラック:PVDF=86:7:7となるように配合し、1−メチル−2−ピロリドンを用いてスラリー化したものをアルミ製集電体上に一定の膜厚で塗布し、乾燥させて正極を得た。負極活物質としては天然球状グラファイトを用い、バインダーとしてPVDFをグラファイト:PVDF=9:1となるように配合し、1−メチル−2−ピロリドンを用いてスラリー化したものを銅製集電体上に一定の膜厚で塗布し、乾燥させて負極を得た。
【0037】
セパレータは無機フィラー含有ポリオレフィン多孔質膜を用いた。以上の構成要素を用いて、図1に示した構造のコイン型セルを用いたリチウムイオン二次電池を作成した。リチウムイオン二次電池はセパレータ8を挟んで正極1、負極5を対向配置し、負極ステンレス製キャップ4にステンレス製板バネ7を設置し、負極5、セパレータ8および正極1からなる積層体をコイン型セル内に収納した。この積層体に非水電解液を注入した後、ガスケット9を配置後、正極ステンレス製キャップ3をかぶせ、コイン型セルケースをかしめることで作成した。
【0038】
試験例1.コインセル型リチウムイオン二次電池の充放電試験
コバルト酸リチウム(LiCoO)正極と炭素負極によって作成したコインセル型リチウムイオン二次電池を25℃の恒温条件下、0.1Cの充電電流で上限電圧を4.2Vとして充電し、続いて0.1Cの放電電流で3.0Vとなるまで放電した。
この操作を3回行った後に65℃の恒温条件下、0.2Cの充電電流で4.2Vの定電流‐低電圧充電を行い、0.2Cの放電電流で終止電圧3.0Vまで定電流放電を行った。このときの放電容量を初期放電容量とし、この操作を50回繰り返した際の放電容量を測定し、50サイクル後の放電容量/初期放電容量比を容量維持率として比較を行った。
【0039】
試験例2.コインセル型リチウムイオン二次電池の充放電試験
リチウムニッケルマンガン複合酸化物(LiNi1/3Mn1/3Co1/3)正極と炭素負極によって作成したコインセル型リチウムイオン二次電池を25℃の恒温条件下、0.1Cの充電電流で上限電圧を4.5Vとして充電し、続いて0.1Cの放電電流で3.0Vとなるまで放電した。
この操作を3回行った後に65℃の恒温条件下、0.2Cの充電電流で4.5Vの定電流‐低電圧充電を行い、0.2Cの放電電流で終止電圧3.0Vまで定電流放電を行った。このときの放電容量を初期放電容量とし、この操作を50回繰り返した際の放電容量を測定し、50サイクル後の放電容量/初期放電容量比を容量維持率として比較を行った。
【0040】
次に、実施例に用いたアリール基含有含フッ素リン酸エステルの合成法について参考例によって説明する。
アリール基含有含フッ素リン酸エステルの同定には、以下の分析方法を用いた。H−NMR及び19F−NMRの測定には、Bruker 400 ULTRASHIELD AVANCE II(400MHzおよび376MHz)を用いた。H−NMRは、重クロロホルム(CDCl)を測定溶媒とし、内部標準物質としてテトラメチルシラン(TMS)を用いて測定した。19F−NMRは、重クロロホルム(CDCl)を測定溶媒とし、内部標準物質としてベンゾトリフルオリドを用いて測定した。質量分析は、SHIMADZU社製 GCMS−QP2010 PLUSを用いて行った。融点は、ビュッヒ社製 B-545を用いて測定した。
【0041】
[参考例1]
リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)フェニルの合成
【0042】
【化4】
【0043】
窒素雰囲気下、フラスコにジクロロリン酸フェニル(500g,2.37mol)及び塩化マグネシウム(6.77g,0.0711mol)を加え、70℃まで昇温した。さらに2,2,2−トリフルオロエタノール(711g,7.11mmol)を滴下し、95℃にて26時間撹拌した。反応終了後、有機層を5%炭酸水素ナトリウム水溶液及び水で洗浄した。有機層を減圧蒸留精製することで目的のリン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)フェニルを無色液体として得た(703g,88%)。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ4.46(q,J=8.0Hz,4H),7.20−7.40(m,5H).
19F−NMR(376MHz,CDCl):δ−75.8(t,J=8.0Hz,6F).
MS(EI):m/z(%)=338(M,100),319(19),298(77),94(76),77(85).
【0044】
[参考例2]
リン酸ジフェニル(2,2,2−トリフルオロエチル)の合成
【0045】
【化5】
【0046】
窒素雰囲気下、フラスコにクロロリン酸ジフェニル(200g,0.745mol)、クロロホルム(400ml)及び2,2,2−トリフルオロエタノール(78.2g,0.782mol)を加え0℃に冷却した。続いて、トリエチルアミン(89.2g,0.882mol)を滴下し、0℃で1時間、さらに室温下で19時間撹拌した。反応終了後、有機層を1%水酸化ナトリウム水溶液、5%硫酸水溶液及び水で洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤をろ別後、ろ液を減圧濃縮し、粗生成物を得た。粗生成物を減圧蒸留精製する事により、目的のリン酸ジフェニル(2,2,2−トリフルオロエチル)を無色液体として得た(138g,56%)。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ4.50(qd,J=8.0Hz,J=8.0Hz,4H),7.20−7.39(m,10H).
19F−NMR(376MHz,CDCl):δ−75.7(t,J=8.0Hz,3F).
MS(EI):m/z(%)=332(M,87),170(25),94(38),77(100),65(34).
【0047】
[参考例3]
リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(3−フルオロフェニル)の合成
【0048】
【化6】
【0049】
窒素雰囲気下、フラスコにクロロリン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(Journal of Fluorine Chemistry,2002年,113巻,65−78頁に従い合成:208g,0.743mol)、塩化マグネシウム(2.83g,0.0297mol)及び3−フルオロフェノール(100g,0.892mol)を加え、80℃にて24時間撹拌した。反応終了後、有機層を2%水酸化ナトリウム水溶液及び水で洗浄した。有機層を減圧蒸留精製することで目的のリン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(3−フルオロフェニル)を無色液体として得た(186g,70%)。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ4.46(qd,J=9.4Hz,J=5.6Hz,4H),6.95−7.38(m,4H).
19F−NMR(376MHz,CDCl):δ−75.8(t,J=9.4Hz,6F),δ−109.9(q,J=7.5Hz,1F).
MS(EI):m/z(%)=356(M,83),337(21),316(63),112(100),95(79).
【0050】
[参考例4]
リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(3−メトキシフェニル)の合成
【0051】
【化7】
【0052】
窒素雰囲気下、フラスコに3−メトキシフェノール(38.7g,0.311mol)、クロロホルム(150ml)及びトリエチルアミン(37.8g,0.311mol)を加え、室温下で撹拌した。さらにクロロリン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(90.6g,0.323mol)を滴下し、60℃にて19時間撹拌した。反応終了後、有機層を2%水酸化ナトリウム水溶液、5%硫酸水溶液及び水で洗浄した後、有機層を減圧濃縮し、粗生成物を得た。粗生成物を減圧蒸留で精製することで目的のリン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(3−メトキシフェニル)を無色液体として得た(86.6g,76%)。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ3.80(s,3H),4.46(q,J=8.0Hz,4H),6.74−7.38(m,4H)
19F−NMR(376MHz,CDCl):δ−75.8(t,J=9.4Hz,6F),−109.9(q,J=7.5Hz,1F)
MS(EI):m/z(%)=368(M,100),349(8),328(35),299(15),76(53).
【0053】
[参考例5]
リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(3−シアノフェニル)の合成
【0054】
【化8】
【0055】
窒素雰囲気下、フラスコに3−シアノフェノール(70.0g,0.588mol)、トルエン(470ml)及びトリエチルアミン(101g,0.999mol)を加え、60℃まで加熱した。さらにクロロリン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(214g,0.764mol)を滴下し、110℃にて47時間撹拌した。反応終了後、有機層を水洗し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤をろ別後、ろ液を減圧濃縮し、粗生成物を得た。粗生成物を減圧蒸留することで目的のリン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(3−シアノフェニル)を無色液体として得た(110g,52%)。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ4.49(qd,J=8.0Hz,J=8.0Hz,4H),7.47−7.58(m,4H).
19F−NMR(376MHz,CDCl):δ−75.8(t,J=8.0Hz,6F).
MS(EI):m/z(%)=363(M,66),344(24),323(74),165(47),119(100).
【0056】
[参考例6]
リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(4−シアノフェニル)の合成
【0057】
【化9】
【0058】
窒素雰囲気下、フラスコに4−シアノフェノール(73.0g,0.613mol)、トルエン(450ml)及びトリエチルアミン(105g,1.04mol)を加え、60℃まで加熱した。さらにクロロリン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(206g,0.735mol)を滴下し、105℃にて44時間撹拌した。反応終了後、有機層を10%水酸化ナトリウム水溶液、2.5%硫酸水溶液及、飽和食塩水及び水で洗浄した後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤をろ別後、ろ液を減圧濃縮し、粗生成物を得た。有機層の単蒸留を行い、粗生成物を得た。粗生成物をジエチルエーテル/ヘキサンから再結晶精製を行うことにより、目的のリン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(4−シアノフェニル)を白色固体として得た(56.3g,25%)。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ4.49(qd,J=8.0Hz,J=8.0Hz,4H),7.34(d,J=8.0Hz,2H),7.71(d,J=8.0Hz,2H)
19F−NMR(376MHz,CDCl):δ−75.8(t,J=8.0Hz,6F)
MS(EI):m/z(%)=363(M,83),344(26),323(79),165(54),119(100).
融点:43〜45℃.
【0059】
[参考例7]
リン酸ビス(3−シアノフェニル)(2,2,2−トリフルオロエチル)の合成
【0060】
【化10】
【0061】
窒素雰囲気下、フラスコに3−シアノフェノール(35.0g,0.294mol)、トルエン(240ml)及びトリエチルアミン(62.5g,0.617mol)を加え、60℃まで加熱した。窒素雰囲気下、ジクロロリン酸(2,2,2−トリフルオロエチル)(Journal of Fluorine Chemistry,2000年,104巻,215−223頁に従い合成:31.1g,0.143mol)を滴下し、105℃で19時間撹拌した。反応終了後、有機層を5%炭酸水素ナトリウム水溶液、5%硫酸水溶液及び水で洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤をろ別後、ろ液を減圧濃縮し、粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/クロロホルム)および減圧蒸留精製する事により、目的のリン酸ビス(3−シアノフェニル)(2,2,2−トリフルオロエチル)を無色液体として得た(47.2g,42%)。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ4.55(qd,J=8.0Hz,J=8.0Hz,2H),7.49−7.59(m,8H).
19F−NMR(376MHz,CDCl):δ−75.6(t,J=8.0Hz,3F).
MS(EI):m/z(%)=382(M,59),244(12),220(57),119(30),102(100).
【0062】
[実施例1]
溶媒としてエチレンカーボネート(以下ECと略す)、ジメチルカーボネート(以下DMCと略す)を重量比50:50の割合で混合し、この混合溶媒に対し、参考例1に示す方法で合成したリン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)フェニルを重量比で2%添加した。次いで、電解質塩として六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を1.0mol/Lの濃度で溶解させ非水電解液を調製した。
【0063】
この非水電解液を用いて上述の作成例1に従いコインセル型リチウムイオン二次電池を作成し、上述の試験例1に従って50サイクルの充放電試験を実施した。結果を表1に示す。
【0064】
[実施例2]
実施例1と同様の操作で非水電解液を調製し、上述の作成例2に従いコインセル型リチウムイオン二次電池を作成し、上述の試験例2に従って50サイクルの充放電試験を実施した。結果を表1に示す。
【0065】
[実施例3]
DMCに代え、リン酸トリス(2,2,2−トリフルオロエチル)(以下TFEPと略す)を用いたこと以外は実施例1と同様の操作で非水電解液を調製し、実施例2と同様の方法でコインセル型リチウムイオン二次電池を作成し、充放電試験を実施した。結果を表1に示す。
【0066】
[実施例4]
リン酸ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)フェニルに代えて、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(4−フルオロフェニル)を重量比で2%添加したこと以外は、実施例3と同様の方法でコインセル型リチウムイオン二次電池を作成し、充放電試験を実施した。結果を表1に示す。
【0067】
[実施例5]
リン酸ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)フェニルに代えて、参考例2に示す方法で合成したリン酸ジフェニル(2,2,2−トリフルオロエチル)を重量比で2%添加したこと以外は、実施例3と同様の方法でコインセル型リチウムイオン二次電池を作成し、充放電試験を実施した。結果を表1に示す。
【0068】
[実施例6]
リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)フェニルに加え、更にビニレンカーボネート(以下VCと略す)を重量比で2%添加したこと以外実施例3と同様の操作で非水電解液を調製し、実施例2と同様の方法でコインセル型リチウムイオン二次電池を作成し、充放電試験を実施した。結果を表1に示す。
【0069】
[比較例1]
リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)フェニルを添加しなかったこと以外は実施例1と同様の操作で非水電解液を調製し、実施例1と同様の方法でコインセル型リチウムイオン二次電池を作成し、充放電試験を実施した。結果を表1に示す。
【0070】
[比較例2]
リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)フェニルを添加しなかったこと以外は実施例2と同様の操作で非水電解液を調製し、実施例2と同様の方法でコインセル型リチウムイオン二次電池を作成し、充放電試験を実施した。結果を表1に示す。
【0071】
[比較例3]
リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)フェニルを添加しなかったこと以外は実施例3と同様の操作で非水電解液を調製し、実施例3と同様の方法でコインセル型リチウムイオン二次電池を作成し、充放電試験を実施した。結果を表1に示す。
【0072】
[比較例4]
リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)フェニルに代えてVCを重量比で2%添加したこと以外実施例3と同様の操作で非水電解液を調製し、この非水電解液を用いて上述の作成例2に従いコインセル型リチウムイオン二次電池を作成し、上述の試験例2に従って50サイクルの充放電試験を実施した。結果を表1に示す。
【0073】
[比較例5]
リン酸ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)フェニルに代えて、エステル側鎖にフッ素原子を有さないリン酸ジエチルフェニルを重量比で2%添加したこと以外は、実施例1と同様の方法でコインセル型リチウムイオン二次電池を作成し、充放電試験を実施した。結果を表1に示す。
【0074】
[比較例6]
リン酸ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)フェニルに代えて、エステル側鎖にフッ素原子を有さないリン酸ジエチルフェニルを重量比で2%添加したこと以外は、実施例3と同様の方法でコインセル型リチウムイオン二次電池を作成し、充放電試験を実施した。結果を表1に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
表1から、非水溶媒としてEC−DMC混合溶媒を用い、添加剤としてアリール基含有含フッ素リン酸エステルを含有する本発明に係る非水電解液を用いた実施例1は、4.2Vでの充放電条件において、添加剤を含まない比較例1または添加剤としてリン酸ジエチルフェニルを含む比較例5に比べ高い容量維持率を示した。
【0077】
さらに、正極に4.5V以上の電位を発現する正極活物質を用いた試験では、EC−DMC混合溶媒を用い添加剤としてアリール基含有含フッ素リン酸エステルを含有する本発明に係る非水電解液を用いた実施例2は、添加剤を含まない比較例2に比べ、高い容量維持率を示した。非水溶媒2として、含フッ素リン酸エステルであるTFEPを用いた実施例3〜5は、添加剤を含まない比較例3、添加剤としてVCを用いた比較例4、及び添加剤としてリン酸ジエチルフェニルを用いた比較例6に比べ、高い容量維持率を示した。なお、4.5Vでの充放電条件では、溶媒2としてTFEPを用いた実施例3〜5は、DMCを用いた実施例2よりも高い容量維持率を示した。この機構は明らかではないが、アリール基含有含フッ素リン酸エステルがTFEPと相補的な被膜を形成する等、特異的に相互作用することで寿命が向上したと考えられる。なお、アリール基含有含フッ素リン酸エステルとVCの双方を添加した実施例6は更に高い容量維持率を示すことから、アリール基含有含フッ素リン酸エステルとVCは作用機構が異なり、相乗効果を発現することで電池寿命を向上していると考察できる。
【0078】
[実施例7]
リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)フェニルの添加量をECとTFEPを重量比50:50で混合し、この混合溶媒に対し、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)フェニルを重量比で0.1%添加した。この混合電解液を実施例2と同様の方法で充放電試験を実施した。結果を表2に示す。
【0079】
[実施例8]
リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)フェニルを重量比で5%添加した以外は、実施例6と同様の方法で充放電試験を実施した。結果を表2に示す。
【0080】
[実施例9]
リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)フェニルを重量比で10%添加した以外は、実施例6と同様の方法で充放電試験を実施した。結果を表2に示す。
【0081】
【表2】
【0082】
表2には、参考として、比較例3で実施した添加剤を含まない場合の試験結果を併記する。
【0083】
実施例7〜9では、アリール基含有含フッ素リン酸エステルの添加量を変更して検討を行った。その結果、アリール基含有含フッ素リン酸エステルを重量比で0.1%添加すると非添加に比べて容量維持率が向上することが判った。ただし、表1で記載した、実施例3に比べると、明らかに容量が低下していることから、0.1%未満では十分な効果は得られないと推察できる。
【0084】
[実施例10]
電解質塩としてリチウムビス(トリフルオロスルホニル)イミド(LiN(CFSO、以下、表中ではLiTFSAと略す)を用いた以外は実施例3と同様の方法で充放電試験を実施した。結果を表3に示す。
【0085】
[実施例11]
TFEPに代え、リン酸トリエチル(以下TEPと略す)を用いたこと以外は実施例9と同様の方法で充放電試験を実施した。結果を表3に示す。
【0086】
[実施例12]
TFEPに代え、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)エチル(以下BFEPと略す)を用いたこと以外は実施例9と同様の方法で充放電試験を実施した。結果を表3に示す。
【0087】
[実施例13]
TFEPに代え、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)メチル(以下BFMPと略す)を用いたこと以外は実施例9と同様の方法で充放電試験を実施した。結果を表3に示す。
【0088】
[比較例7]
リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)フェニルを添加しなかったこと以外は実施例9と同様の方法で充放電試験を実施した。結果を表3に示す。
【0089】
【表3】
【0090】
実施例10〜13、比較例7では、電解質として有機酸リチウム塩の一種であるLiTFSAを用いた。その結果、アリール基含有含フッ素リン酸エステルは、LiPFの様な無機酸リチウム塩だけでなく、LiTFSAの様な有機酸リチウム塩でも同様に容量維持率が向上することが確認された。
【0091】
なお、実施例11〜13では非フッ素系リン酸エステルであるTEPや含フッ素エステル側鎖と非フッ素エステル側鎖の共存したBFEPやBFMPを主溶媒として用いた場合にも同様の効果があることが判った。
【0092】
[実施例14]
溶媒としてEC、DMCを重量比50:50の割合で混合し、この混合溶媒に対し、参考例3に示す方法で合成したリン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(3−フルオロフェニル)を重量比で2%添加した。次いで、電解質塩として六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を1.0mol/Lの濃度で溶解させ非水電解液を調製した。
【0093】
この非水電解液を用いて上述の作成例2に従いコインセル型リチウムイオン二次電池を作成し、上述の試験例2に従って50サイクルの充放電試験を実施した。結果を表4に示す。
【0094】
[実施例15]
リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(3−フルオロフェニル)の代わりに、参考例4に示す方法で合成したリン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(3−メトキシフェニル)を用いた以外は、実施例14と同様の方法でコインセル型リチウムイオン二次電池を作成し、充放電試験を実施した。結果を表4に示す。
【0095】
[実施例16]
リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(3−フルオロフェニル)の代わりに、参考例5に示す方法で合成したリン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(3−シアノフェニル)を用いた以外は、実施例14と同様の方法でコインセル型リチウムイオン二次電池を作成し、充放電試験を実施した。結果を表4に示す。
【0096】
[実施例17]
リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(3−フルオロフェニル)の代わりに、参考例6に示す方法で合成したリン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(4−シアノフェニル)を用いた以外は、実施例14と同様の方法でコインセル型リチウムイオン二次電池を作成し、充放電試験を実施した。結果を表4に示す。
【0097】
[実施例18]
溶媒としてEC、TFEPを重量比50:50の割合で混合し、この混合溶媒に対し、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(3−フルオロフェニル)を重量比で2%添加した。次いで、電解質塩として六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を1.0mol/Lの濃度で溶解させ非水電解液を調製した。
【0098】
この非水電解液を用いて上述の作成例2に従いコインセル型リチウムイオン二次電池を作成し、上述の試験例2に従って50サイクルの充放電試験を実施した。結果を表4に示す。
【0099】
[実施例19]
リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(3−フルオロフェニル)の代わりに、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(3−メトキシフェニル)を用いた以外は、実施例18と同様の方法でコインセル型リチウムイオン二次電池を作成し、充放電試験を実施した。結果を表4に示す。
【0100】
[実施例20]
リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(3−フルオロフェニル)の代わりに、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(3−シアノフェニル)を用いた以外は、実施例18と同様の方法でコインセル型リチウムイオン二次電池を作成し、充放電試験を実施した。結果を表4に示す。
【0101】
[実施例21]
リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(3−フルオロフェニル)の代わりに、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(4−シアノフェニル)を用いた以外は、実施例18と同様の方法でコインセル型リチウムイオン二次電池を作成し、充放電試験を実施した。結果を表4に示す。
【0102】
[実施例22]
リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(3−フルオロフェニル)の代わりに、参考例7に示す方法で合成したリン酸ビス(3−シアノフェニル)(2,2,2−トリフルオロエチル)を用いた以外は、実施例18と同様の方法でコインセル型リチウムイオン二次電池を作成し、充放電試験を実施した。結果を表4に示す。
【0103】
[実施例23]
溶媒としてEC、TFEPを重量比50:50の割合で混合し、この混合溶媒に対し、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(3−メトキシフェニル)を重量比で2%添加し、更にVCを重量比で2%添加した。次いで、電解質塩として六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を1.0mol/Lの濃度で溶解させ非水電解液を調製した。
【0104】
この非水電解液を用いて上述の作成例2に従いコインセル型リチウムイオン二次電池を作成し、前記試験例2に従って50サイクルの充放電試験を実施した。結果を表4に示す。
【0105】
【表4】
【0106】
表4には、参考として、実施例2〜6の試験結果を併記する。
実施例14〜17と実施例2の比較、実施例4及び18〜22と実施例3の比較、実施例23と実施例6の比較から、アリール基上に置換基を持つアリール基含有含フッ素リン酸エステルは、無置換アリール基含有含フッ素リン酸エステルより容量維持率が向上することが確認された。この結果は、先に本文に述べた結果を支持しており、アリール基にリチウムと相互作用を示す置換基を導入する事で、リチウム透過性の高い保護被膜を形成する事ができ、容量維持率が向上したと推定される。
【0107】
[実施例24]
溶媒としてEC、TFEPを重量比50:50の割合で混合し、この混合溶媒に対し、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(3−メトキシフェニル)を重量比で0.1%添加した。次いで、電解質塩として六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を1.0mol/Lの濃度で溶解させ非水電解液を調製した。
【0108】
この非水電解液を用いて上述の作成例2に従いコインセル型リチウムイオン二次電池を作成し、上述の試験例2に従って50サイクルの充放電試験を実施した。結果を表5に示す。
【0109】
[実施例25]
リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(3−メトキシフェニル)を重量比で5%添加した以外は、実施例24と同様の方法でコインセル型リチウムイオン二次電池を作成し、充放電試験を実施した。結果を表5に示す。
【0110】
[実施例26]
リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(3−メトキシフェニル)を重量比で10%添加した以外は、実施例24と同様の方法でコインセル型リチウムイオン二次電池を作成し、充放電試験を実施した。結果を表5に示す。
【0111】
【表5】
【0112】
表5には、参考として、実施例7〜9及び比較例3の試験結果を併記する。
実施例24〜26と比較例3の比較から、置換されたアリール基含有含フッ素リン酸エステルを重量比で0.1%添加すると非添加に比べて容量維持率が向上することが判った。さらに実施例7〜9の試験結果との比較から、置換されたアリール基含有含フッ素リン酸エステルは、無置換アリール基含有含フッ素リン酸エステルより、効果が高い事も確認された。
【0113】
[実施例27]
溶媒としてEC、TFEPを重量比50:50の割合で混合し、この混合溶媒に対し、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(3−メトキシフェニル)を重量比で2%添加した。次いで、電解質塩としてLiTFSAを1.0mol/Lの濃度で溶解させ非水電解液を調製した。
【0114】
この非水電解液を用いて上述の作成例2に従いコインセル型リチウムイオン二次電池を作成し、上述の試験例2に従って50サイクルの充放電試験を実施した。結果を表6に示す。
【0115】
[実施例28]
溶媒にTFEPの代わりにTEPを用いた以外は、実施例27と同様の方法でコインセル型リチウムイオン二次電池を作成し、充放電試験を実施した。結果を表6に示す。
【0116】
[実施例29]
溶媒にTFEPの代わりにBFEPを用いた以外は、実施例27と同様の方法でコインセル型リチウムイオン二次電池を作成し、充放電試験を実施した。結果を表6に示す。
【0117】
[実施例30]
溶媒にTFEPの代わりにBFMPを用いた以外は、実施例27と同様の方法でコインセル型リチウムイオン二次電池を作成し、充放電試験を実施した。結果を表6に示す。
【0118】
【表6】
【0119】
表6には、参考として、実施例10〜13及び比較例7の試験結果を併記する。
実施例27〜30と実施例10〜13及び比較例7の比較から、置換されたアリール基含有含フッ素リン酸エステルは、無置換アリール基含有リン酸エステルと同様に、非フッ素系リン酸エステルであるTEPや含フッ素エステル側鎖と非フッ素エステル側鎖の共存したBFEPやBFMPを主溶媒として用いた場合にも容量維持率が向上し、無置換アリール基含有リン酸エステルより、効果が高い事が判った。
【0120】
[実施例31]
溶媒としてEC、エチルメチルカーボネートを重量比30:70の割合で混合し、この混合溶媒に対し、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)フェニルを重量比で10%添加した。次いで、電解質塩として六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を0.2mol/Lの濃度で溶解させ、非水電解液を調製した。
【0121】
この非水電解液に作用電極として白金、基準電極としてリチウム箔、対極としてリチウム箔を挿入し、電圧を5mV/sの走査速度にて3から6V(vs.Li/Li)まで上げ、リニアスィープボルタンメトリー測定を行った。装置は、マルチチャンネルポテンショスタット/ガルバノスタット(VMP−3)を用いて行った。測定の結果から、電流密度が0.1mA/cmの時の電位を、酸化分解電位とした。結果を表7に、リニアスィープボルタノグラムを図2に示す。
【0122】
[実施例32]
リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)フェニルの代わりに、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(3−メトキシフェニル)を用いた以外は、実施例31と同様の方法でリニアスィープボルタンメトリー測定を行った。測定結果から、電流密度が0.1mA/cmの時の電位を、酸化分解電位とした。結果を表7に、リニアスィープボルタノグラムを図2に示す。
【0123】
[比較例8]
溶媒としてEC、エチルメチルカーボネートを重量比30:70の割合で混合した。混合溶媒に対し、電解質塩として六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を0.2mol/Lの濃度で溶解させ、非水電解液を調製した。
【0124】
この非水電解液に作用電極として白金、基準電極としてリチウム箔、対極としてリチウム箔を挿入し、電圧を5mV/sの走査速度にて3から6.7V(vs.Li/Li)まで上げ、リニアスィープボルタンメトリー測定を行った。測定の結果から、電流密度が0.1mA/cmの時の電位を、酸化分解電位とした。結果を表7に、リニアスィープボルタノグラムを図2に示す。
【0125】
【表7】
【0126】
アリール基含有の含フッ素リン酸エステルを含む電解液によって、サイクル特性が向上した要因は明らかではないが、実施例31及び実施例32と比較例8の比較から、アリール基含有の含フッ素リン酸エステルを含む非水電解液が、含まない非水電解液よりも酸化分解電位が低くなっていることが分かる。つまり、アリール基含有の含フッ素リン酸エステルが、溶媒(ECとエチルメチルカーボネート)より低い電位で分解することで正極上に被膜を形成し、これらの被膜が、それ以上の溶媒の分解を抑制する等の効果により電池性能が向上したのではないかと推察される。特に、メトキシ基が結合したアリール基含有含フッ素リン酸エステルは、無置換アリール基含有含フッ素リン酸エステルより酸化分解電位が低い事がわかる。従って、メトキシ基が結合したアリール基含有含フッ素リン酸エステルの方が、より低い電位で正極に被膜を形成し、より溶媒の分解を抑制する効果が高いと推察される。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明の特定構造のアリール基含有含フッ素リン酸エステルを含有する非水電解液を用いることにより、サイクル特性の改善された非水系二次電池が提供することができる。特に、リチウムイオン二次電池において、リチウム金属基準で4.5V以上の高電圧条件で充放電を行った際に充放電サイクル特性が著しく向上するため、極めて有用である。
【符号の説明】
【0128】
1 正極活物質
2 正極集電体
3 正極ステンレス製キャップ
4 負極ステンレス製キャップ
5 負極物質
6 負極集電体
7 ステンレス製板バネ
8 無機フィラー含有ポリオレフィン多孔質セパレータ
9 ガスケット
図1
図2