特許第6681733号(P6681733)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6681733
(24)【登録日】2020年3月26日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】太陽電池付き時計
(51)【国際特許分類】
   G04C 10/02 20060101AFI20200406BHJP
   G04G 19/00 20060101ALI20200406BHJP
   G04B 19/06 20060101ALI20200406BHJP
【FI】
   G04C10/02 A
   G04G19/00 B
   G04B19/06 C
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-28578(P2016-28578)
(22)【出願日】2016年2月18日
(65)【公開番号】特開2017-146216(P2017-146216A)
(43)【公開日】2017年8月24日
【審査請求日】2018年10月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今村 和也
(72)【発明者】
【氏名】植村 隆太郎
【審査官】 吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−350567(JP,A)
【文献】 特開平10−319145(JP,A)
【文献】 特開2014−85290(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04C 1/00−99/00
G04G 3/00−99/00
G04B 19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースムーブメントと、
光透過性を有する文字板と、
前記ベースムーブメントから外方に延びた外部操作部材と、
前記ベースムーブメントに対して半径方向の外方であって前記文字板の下方に配置された、周方向の一部に前記外部操作部材を通す切欠きが形成されて平面視でC字形状の太陽電池部材と、を備え、
前記太陽電池部材は、前記ベースムーブメントと電気的な導通を得るために用いられる接点を有し、前記太陽電池部材は、前記接点より前記切欠きに近い位置において下方に押さえられている太陽電池付き時計。
【請求項2】
前記太陽電池部材は、前記ベースムーブメントによって、下方に押さえられている請求項1に記載の太陽電池付き時計。
【請求項3】
前記太陽電池部材は、前記C字形状の内周縁のうち前記切欠きに近接した位置に、ベースムーブメントに向けて突出した突出部が形成され、
前記ベースムーブメントは、前記突出部を前記太陽電池部材の上方から押さえる庇が形成されている請求項1又は2に記載の太陽電池付き時計。
【請求項4】
前記太陽電池部材が、太陽電池と、前記太陽電池の、前記文字板から遠い側の面に積層して前記太陽電池を保持する保持部材と、により形成され、
前記突出部は、前記太陽電池部材には形成されずに、前記保持部材のみに形成されている請求項3に記載の太陽電池付き時計。
【請求項5】
前記保持部材は、磁性材料で形成されている請求項4に記載の太陽電池付き時計。
【請求項6】
前記ベースムーブメントの中心を挟んで前記切欠きと反対側の半分の領域に、前記ベースムーブメントに設けられたモータが配置されている請求項5に記載の太陽電池付き時計。
【請求項7】
ベースムーブメントと、
光透過性を有する文字板と、
前記ベースムーブメントから外方に延びた外部操作部材と、
前記ベースムーブメントに対して半径方向の外方であって前記文字板の下方に配置された、周方向の一部に前記外部操作部材を通す切欠きが形成されて平面視でC字形状の太陽電池部材と、を備え、
前記太陽電池部材は、太陽電池と、前記太陽電池の、前記文字板から遠い側の面に積層して前記太陽電池を保持する保持部材と、により形成され、
前記太陽電池部材の、前記C字形状の内周縁のうち前記切欠きに近接した位置における前記保持部材のみに、前記ベースムーブメントに向けて突出した突出部が形成され、
前記ベースムーブメントは、前記突出部を前記太陽電池部材の上方から押さえることにより前記太陽電池部材を下方に向けて押さえている太陽電池付き時計。
【請求項8】
前記保持部材は、磁性材料で形成されている請求項7に記載の太陽電池付き時計。
【請求項9】
前記ベースムーブメントの中心を挟んで前記切欠きと反対側の半分の領域に、前記ベースムーブメントに設けられたモータが配置されている請求項8に記載の太陽電池付き時計。
【請求項10】
ベースムーブメントと、
光透過性を有する文字板と、
前記ベースムーブメントから外方に延びた外部操作部材と、
前記ベースムーブメントに対して半径方向の外方であって前記文字板の下方に配置された、周方向の一部に前記外部操作部材を通す切欠きが形成されて平面視でC字形状の太陽電池部材と、を備え、
前記太陽電池部材は、太陽電池と、前記太陽電池の、前記文字板から遠い側の面に積層して前記太陽電池を保持する保持部材と、により形成され、
前記保持部材は、磁性材料で形成されており、
前記ベースムーブメントの中心を挟んで前記切欠きと反対側の半分の領域に、前記ベースムーブメントに設けられたモータが配置されている太陽電池付き時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池を備えた太陽電池付き時計に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池で発生した電力により、指針や表示部などを駆動する太陽電池付きの時計(以下、太陽電池付き時計という。)が知られている。ここで、太陽電池は、薄板状で、動力源(モータや香箱等)や時間基準などの装置からなる時計の機械体がパッケージされたムーブメントと光透過性を有する文字板との間に配置されている。このように、太陽電池は、ムーブメントと文字板との間に積層されるため、時計の厚さが厚くなり易い。
【0003】
そこで、ソーラーセルをドーナツ状にして、時計基礎ムーブメント(ベースムーブメント)とは平面的に重ならないようにムーブメントに組み込んで、断面高さ位置の配置を考慮した時計が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−069626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、時計には、時刻指示の指針の位置修正等のために、ケースから突出したりゅうずが備えられており、りゅうずは、ベースムーブメントからケースまで延びた巻真に取り付けられている。このため、特許文献1に記載された時計は、巻真とソーラーセルとが平面視で重なり、時計の厚さ方向に積層されるため、時計を薄くする上で障害になっている。
【0006】
そこで、巻真を時計の厚さ方向の下の方(文字板から遠ざかる方向)に偏らせて配置することも考えられるが、この場合、巻真に取り付けられるりゅうずの位置も下方に偏り、りゅうずの一部がケースの下面よりも下方に突出し、結果的に、りゅうずも含めた時計の厚さが厚くなる。なお、この問題は、巻真だけに生じるものではなく、ベースムーブメントから外方に延びたがプッシュボタン等の外部操作部材についても同様である。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであって、時計の厚さを薄くすることができる太陽電池付き時計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ベースムーブメントと、光透過性を有する文字板と、前記ベースムーブメントから外方に延びた外部操作部材と、前記ベースムーブメントに対して半径方向の外方であって前記文字板の下方に配置された、周方向の一部に前記巻真を通す切欠きが形成されて平面視で略C字形状の太陽電池部材と、を備えた太陽電池付き時計である。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る太陽電池付き時計によれば、時計の厚さを薄くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る太陽電池付き時計の一実施形態である電子時計におけるムーブメントを、文字板の側から見た平面図である。
図2図1におけるI−I線に沿った面による断面を示す断面図であり、図1では記載を省略した文字板も含む。
図3図1に示した太陽電池部材における切欠きを含む部分の詳細を示す拡大図である。
図4】切欠きの無い太陽電池部材を備えた電子時計を示す、図1相当の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る太陽電池付き時計の実施形態について、図面を用いて説明する。
<電子時計の構成>
図1は、本発明に係る太陽電池付き時計の一実施形態である電子時計100におけるムーブメント1を、文字板3(後述する図2参照)の側から見た平面図である。図2は、図1におけるI−I線に沿った面による断面を示す断面図であり、図1では記載を省略した文字板3も含む。図3は、図1に示した太陽電池部材10における切欠き10cを含む部分の詳細を示す拡大図である。
【0012】
図示の電子時計100のムーブメント1は、図1,2に示すように、地板6の上に、ベースムーブメント2、太陽電池部材10及び太陽電池支持枠5を備えている。そして、電子時計100は、ムーブメント1に加えて、文字板3及び巻真4を備えている。電子時計100は、この他に、ムーブメント1や文字板3等を内部に収容するケースや、風防ガラス、指針等、一般の電子時計が備えているものを当然に備えているが、これらケース等は図示を省略している。
【0013】
ここで、ベースムーブメント2は、地板6と輪列受8とで挟んで支持された、指針を駆動する歯車輪列、輪列受8にねじ止めされた、指針の位置を修正するための裏周り(巻真4周辺の部材)、輪列受8にねじ止めされた回路部材、地板6にねじ止めされたモータ22及び二次電池21を備えている。なお、本発明におけるベースムーブメントは、これらモータ22、歯車輪列等の全てを備えたものに限定されない。
【0014】
ベースムーブメント2は、これらモータ22や歯車輪列等を全体的に、時刻指針用の軸が配置された中心C付近に集中させた配置として、中心Cからの半径方向のサイズが小さく形成されている。文字板3は光透過性を有していて太陽光などの一部を透過させ、図2に示すように、電子時計100の厚さ方向において、ベースムーブメント2よりも上方に配置されている。
【0015】
太陽電池部材10は、薄板状であり、図2に示すように、ムーブメント1の地板6の上方で、かつ文字板3の下方、すなわちベースムーブメント2が配置されている側に配置されている。太陽電池部材10は、複数のセル11sが周方向に並んだフィルム状の太陽電池11と、太陽電池11の、文字板3から遠い側の面11aから、略全面に亘って積層され、太陽電池11を保持する保持部材12とにより形成されている。保持部材12は、例えばSUSなどの磁性材料で形成された薄板である。太陽電池11と保持部材12とは、例えば接着剤により一体に接合されている。
【0016】
なお、保持部材12は、太陽電池11よりも剛性の高いものであることが好ましく、この場合、太陽電池11と保持部材12とが接合された太陽電池部材10は、仮にこの太陽電池部材10と同じ厚さの太陽電池11単体よりも、剛性を高くすることができる。また、保持部材12は、SUSに限定されるものでもなく、金属に限定されるものでもなく、さらに、磁性材料に限定されるものでもない。また、太陽電池11と保持部材12とは、接着剤で接合されているものに限定されるものではなく、他の接合方法で一体に接合されているものであってもよい。
【0017】
太陽電池部材10は、図1に示すように、ベースムーブメント2に対して中心Cの半径方向の外方に、ベースムーブメント2を略全周に亘って囲むように配置されている。つまり、太陽電池部材10は、図3に示すように、太陽電池部材10によって仕切られた半径方向の外側の領域31と内側の領域32とを通じさせる切れ目である切欠き10cが形成されていて、図1の平面視において、切欠き10cを除いて略円環状に延び、全体としてC字形状に形成されている。なお、「C字状」は、アルファベットの文字「C」を想起させるように、環状の形状のうち周方向の一部が無い形状を総称して表現したものである。したがって、環状は、円弧が周方向に繋がった円環状であってもよいし、直線の線分が周方向に繋がった矩形環状であってもよいし、円弧と直線の線分とが周方向に繋がった環状であってもよい。
【0018】
太陽電池11は、図3に示すように、ベースムーブメント2と電気的な導通を得るための接点ばね(図示せず)が図2の下方から接触する2つの接点10d,10dを有している。これらの接点10d,10dは電気的な短絡を防止する必要があるため、接点10d,10dには保持部材12が接合されていない。
【0019】
また、図1の平面視において、太陽電池部材10は、後述する突出部12aを除いてベースムーブメント2とは重ならない。太陽電池部材10は、ベースムーブメント2を略全周に亘って電子時計100の厚さ方向に関して、図2に示すように、ベースムーブメント2が配置されている高さの範囲H内に配置されている。
【0020】
巻真4は、図1に示すように、ベースムーブメント2から半径方向の外方に、ケースの外側まで延びていて、外側の先端には、図示しないりゅうずが取り付けられる。そして、太陽電池部材10の切欠き10cは、この巻真4を通す部分に配置されている。つまり、切欠き10cは、図1の平面視で巻真4と重なり、かつ図2の電子時計100の厚さ方向においても重なる位置に形成されている。したがって、この切欠き10cにより、太陽電池部材10は巻真4と干渉しない状態で配置されている。
【0021】
なお、ベースムーブメント2が備えるモータ22は、巻真4とは、中心Cを挟んで反対側の半分の領域(巻真4を中心とする、中心C回りの角度180[度]の領域αとは反対側の領域)βに配置されている。
【0022】
また、太陽電池部材10は、C字形状の内周縁10bのうち切欠き10cを挟んで対向する周方向の両端縁10e,10fにそれぞれ近接した2つの位置に、半径方向の内方(内側の領域32)のベースムーブメント2に向けて突出した半円状の突出部12aが形成されている。これら2つの突出部12a,12aは、いずれも保持部材12のみに形成されていて、太陽電池11には形成されていない。なお、各突出部12a,12aは、それぞれの接点10d,10dよりも、切欠き10cに近い位置に形成されている。
【0023】
一方、ベースムーブメント2の輪列受8は、外周部分のうち、図1の平面視で太陽電池部材10の2つの突出部12a,12aに重なる部分に、図2に示すように、各突出部12a,12aに電子時計100の厚さ方向の上方から接触する庇8a,8aが形成されている。庇8a,8aは、各突出部12a,12aを上方から押さえて、端縁10e,10fの内周縁10b側を上方に浮き上がらせないようにしている。つまり、太陽電池部材10の内周縁10bの端縁10e,10fの近くの部分が、下方に押さえられている。
【0024】
太陽電池支持枠5は、太陽電池部材10の半径方向外側に円環状に形成されていて、全周に亘って、半径方向内側に突出した鍔5aが形成されている。鍔5aは、太陽電池部材10の外周部10aに電子時計100の厚さ方向の上方から接触して外周部10aを上方から押さえ、外周部10aが上方に浮き上がらないようにしている。なお、太陽電池支持枠5は、電子時計100のケースの外周部分や文字板3の外周部に設けられることがある見返しリングなどの既存の部品などで兼用してもよい。
【0025】
<電子時計の作用、効果>
上述した本実施形態の電子時計100によると、文字板3に太陽光等の光が入射すると、その入射した光の一部が文字板3を透過して、文字板3の下方に配置された太陽電池部材10の太陽電池11に入射する。太陽電池11は、入射した光のエネルギにより電気エネルギを発生する。太陽電池11で発生した電気エネルギは、太陽電池11の接点10d,10dに接した接点ばね(図示省略)を通じてベースムーブメント2に供給され、ベースムーブメント2を構成するモータ22や電子回路を駆動したり、ベースムーブメント2に設けられた二次電池21(図1参照)に蓄えられたりする。
【0026】
ここで、太陽電池部材10は、ベースムーブメント2に対して半径方向の外方に配置されていて、ベースムーブメント2と太陽電池部材10とは、突出部12aを除いて、平面視で重ならず、電子時計100の厚さ方向に積層されない。したがって、ベースムーブメント2と太陽電池部材10とが厚さ方向に重なる従来の太陽電池付き時計に比べて、電子時計100の厚さを薄くすることができる。
【0027】
加えて、電子時計100は、太陽電池部材10の切欠き10cに巻真4が通された配置であるため、太陽電池部材10は、巻真4とも、平面視で重ならず、電子時計100の厚さ方向に積層されない。したがって、太陽電池部材10と巻真4とが厚さ方向に重なる、切欠き10cを有しない、周方向について完全に繋がった円環状の太陽電池部材を備えた従来の太陽電池付き時計よりも、電子時計100の厚さをさらに薄くすることができる。
【0028】
また、本実施形態の電子時計100は、太陽電池部材10の内周縁10b側に形成された突出部12a,12aの上面がベースムーブメント2の庇8a,8aに接しているため、太陽電池部材10の端縁10e,10fの内周縁10b側が上方すなわち文字板3に近づく方に浮き上がるのを防止することができる。一方、太陽電池部材10の外周部10aの上面は、太陽電池支持枠5の鍔5aに接しているため、太陽電池部材10の外周部10aが上方すなわち文字板3に近づく方に浮き上がるのを防止することができる。
【0029】
太陽電池部材10は単体では撓み易く、仮に撓むと、光透過性を有する文字板3に近接して、文字板3を通して濃紫色の太陽電池11が透けて見えるため、外観品質の低下を招く。特に、太陽電池部材10は、接点ばねが接点10dを文字板3の方に押圧するため、この押圧力により、太陽電池部材10は変形する環境にある。
【0030】
しかも、本実施形態における太陽電池部材10は、切欠き10cによって全周が繋がっていないため、切欠き10cが無く全周が繋がっているものに比べて剛性が低く、したがって、切欠き10cが無く全周が繋がっているものに比べて撓み易い。そして、周方向の両端縁10e,10fは互いに相手側に拘束されない自由端となるため、接点ばねから接点10d,10dに受ける荷重によって、大きく変形し易い。
【0031】
しかし、本実施形態の電子時計100は上述したように、太陽電池部材10が、内周縁10bの側も外周部10aも文字板3に近づくことが防止されているため、文字板3を通して濃紫色の太陽電池11が透けて見えることがなく、外観品質の低下を防止することができる。なお、この効果は、太陽電池部材10が切欠き10cにより全周が繋がっていないものであるか、切欠き10cが無く全周が繋がっているかに拘わらず発揮されるが、相対的に変形し易い、切欠き10cがある太陽電池部材10において、より効果的である。
【0032】
図4は、切欠き10cの無い太陽電池部材110(切欠き10cの無い太陽電池11に相当する太陽電池111と、切欠き10cの無い保持部材12に相当する保持部材112とにより構成される)を備えた電子時計101を示す、図1相当の平面図である。
【0033】
上述したように、本実施形態の電子時計100における太陽電池部材10を、図4に示す切欠き10cの無い、全周が繋がった円環形状の太陽電池部材110に置き換えた電子時計101においても、太陽電池部材110の内周縁110bに、複数の突出部112a(電子時計100における突出部12aに相当)を形成し、ベースムーブメント102の輪列受108の、各突出部112aに対応する部分に庇108a(電子時計100における庇8aに相当)を形成した構成により、太陽電池部材110が、内周縁110bの側も外周部110aも文字板3(図2参照)に近づくことが防止されて、文字板3を通して濃紫色の太陽電池111が透けて見えることがなく、外観品質が低下するのを防止することができる。
【0034】
また、本実施形態の電子時計100は、突出部12aが、接点10dよりも、切欠き10cに近い位置に形成されている。したがって、接点ばねが接点10dを文字板3の方に押圧しても、各接点10d,10dと対応する自由端に相当することにより大きく撓み易い端縁10e,10fとの間に形成された突出部12aが、文字板3側への浮き上がりを防止して、端縁10e,10fが大きく撓むのを有効に防止することができる。
【0035】
また、本実施形態の電子時計100は、太陽電池部材10の突出部12aが、太陽電池11には形成されずに、保持部材12のみに形成されているため、ベースムーブメント2の庇8aを、太陽電池部材10の太陽電池11が配置される高さの範囲に形成することができる。これにより、太陽電池11に突出部12aが形成されている場合に比べて、庇8aの下面の高さ位置を低くすることができる。したがって、電子時計100は、太陽電池11に突出部12aが形成されている場合に比べて、電子時計100の厚さを一層薄くすることができる。
【0036】
また、本実施形態の電子時計100は、保持部材12が磁性材料で形成されているため、保持部材12が、ベースムーブメント2が備えているモータ22に対する外部磁界に対する耐磁板としても機能する。なお、太陽電池部材10はベースムーブメント2と平面視で重ならないため、保持部材12はベースムーブメント2に備えられたモータ22とは積層されないが、文字板3に水平な方向の磁界に対する耐磁を発揮することができる。すなわち、電子時計は一般的に文字板に水平な方向からの磁界に対して最も弱いが、上述した構成により、そのような磁界に対して十分な耐磁を図ることができる。
【0037】
なお、保持部材12が磁性材料で形成されている構成については、図4に示した電子時計101における保持部材112にも適用することができる。すなわち、電子時計101は、保持部材112が磁性材料で形成されていることにより、ベースムーブメント102に備えられたモータ22に対して、文字板3に水平な方向の磁界に対して十分な耐磁性能を発揮することができる。
【0038】
本実施形態の電子時計100は、ベースムーブメント2のモータ22が、巻真4とは、中心Cを挟んで反対側の半分の領域βに配置されているため、モータ22は、巻真4が配置された切欠き10cに対しても、中心Cを挟んで反対側の半分の領域βに配置されていることになる。
【0039】
耐磁板として機能する太陽電池部材10の保持部材12は、切欠き10cの部分では耐磁性能が低いが、モータ22は、切欠き10cに対して、中心Cを挟んで反対側の領域βという、切欠き10cから遠い位置に配置されている。したがって、モータ22は、耐磁性能が相対的に低くなる切欠き10cの影響を受け難く、耐磁板として機能する保持部材12は、切欠き10cがあってもモータ22に対する耐磁性能を発揮することができる。
【0040】
<変形例>
電子時計100は、太陽電池部材10が太陽電池11と保持部材12とが接合されたものであるが、本発明の太陽電池付き時計における太陽電池部材は、保持部材を有しない太陽電池の単体であってもよい。この場合、太陽電池の単体が、ガラスや金属等の基板を有しているものであれば、その基板を保持部材12とみなすこともできる。電子時計101における太陽電池部材110についても同様である。
【0041】
本実施形態の電子時計100は、太陽電池部材10の内周縁10bの側を、内周縁10bから突出した突出部12aをベースムーブメント2の庇8aに引っ掛ける構成によって、内周縁10bが文字板3に向けて浮き上がるのを防止したものであるが、本発明の太陽電池付き時計は、この構成を備えたものに限定されるものではなく、この構成を備えなくてもよい。例えば、実施形態の電子時計100における突出部12aを庇8aに引っ掛ける構成に代えて、ベースムーブメント2に、太陽電池部材10の内周縁10bの側に突出した突出部を形成して、そのベースムーブメント2に形成された突出部が太陽電池部材10の内周縁10bを下方に押さえるようにしてもよい。
【0042】
また、ベースムーブメント2とは別に備えた、鍔が付いたピンやねじなどの他の拘束手段を用いて、突出部12aをベースムーブメント2に拘束する構成により、太陽電池部材10の内周縁10bの、特に端縁10e,10fの近くの部分を下方に押さえて、文字板3に向けて浮き上がるのを防止してもよい。
【0043】
なお、太陽電池部材10の外周部10aに突出部12aを形成し、この突出部12aを太陽電池支持枠5の鍔5aに引っ掛けて、太陽電池部材10の外周側が文字板3の側に浮き上がるのを防止してもよい。
【0044】
本実施形態の電子時計100は、各突出部12aがそれぞれ、接点10dよりも切欠き10cに近い位置に形成されているが、本発明の太陽電池付き時計は、この構成に限定されるものではなく、各突出部12aがそれぞれ、接点10dよりも切欠き10cから遠い位置に形成されていてもよいし、また、接点10dが形成されていなくてもよい。
【0045】
上述した実施形態は、時刻の指針をモータ22で駆動する、いわゆる電子時計100であるが、本発明に係る太陽電池付き時計は電子時計に限定されるものではなく、時刻の指針をぜんまいなどの機械の動力源を用いて駆動する機械式時計に適用することもできる。ただし、機械式時計の場合であっても、太陽電池部材で発電された電力を用いて駆動される電子機器(液晶表示装置など)を備えているものに適用される。
【0046】
上述した実施形態は、本発明における外部操作部材の一例として巻真4を適用したものであるが、本発明に係る太陽電池付き時計は、外部操作部材として巻真を適用したものに限定されず、例えば、プッシュボタンなど、主に時計のケースに設けられてベースムーブメントまで延びた種々の外部操作部材を適用することができる。
【0047】
なお、上述した実施形態においては、ベースムーブメント2の輪列受8,108に庇8a,108aを形成した構成であるが、本発明における庇は、輪列受に形成したものに限定されず、ベースムーブメントを構成するいずれかの部品に形成されていればよい。
【符号の説明】
【0048】
1 ムーブメント
2 ベースムーブメント
3 文字板
4 巻真
5 太陽電池支持枠
5a 鍔
8 輪列受
8a 庇
10 太陽電池部材
10c 切欠き
11 太陽電池
12 保持部材
12a 突出部
100 電子時計(太陽電池付き時計)
C 中心
図1
図2
図3
図4