特許第6681753号(P6681753)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6681753
(24)【登録日】2020年3月26日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】グラスラン
(51)【国際特許分類】
   B60J 10/76 20160101AFI20200406BHJP
【FI】
   B60J10/76
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-47246(P2016-47246)
(22)【出願日】2016年3月10日
(65)【公開番号】特開2017-159829(P2017-159829A)
(43)【公開日】2017年9月14日
【審査請求日】2019年1月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000196107
【氏名又は名称】西川ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】倉田 幸直
(72)【発明者】
【氏名】梶川 慎一
【審査官】 高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−165340(JP,A)
【文献】 特開2004−299668(JP,A)
【文献】 特開平10−129273(JP,A)
【文献】 特開2007−308044(JP,A)
【文献】 特開2006−248255(JP,A)
【文献】 特開2009−056917(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 10/00−10/90
B60R 13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のドアフレームに取り付けられ、ドアガラスの昇降を案内するグラスランであって、
上記ドアガラスの端面と対向する基底部と、上記基底部から上記ドアガラスの中央に向けて立ち上がるように延びている側壁と、を備えており、
上記側壁の先端からは、上記ドアガラスと上記ドアフレームとの間をシールするためのシールリップ部が、上記基底部に向けて延びており、
上記シールリップ部は、上記ドアガラスに当接する当接部、および上記当接部と上記側壁とを接続する接続部が連なって形成されており、
上記当接部の上記側壁と対向する側の表面は、上記接続部より剛性が高い硬質材料により被覆されており、
上記当接部における上記接続部側の端部の表面を被覆している、上記硬質材料で構成される第1部位は、上記硬質材料で構成されるその他の第2部位より肉厚であり、
上記第1部位は、上記第2部位から上記当接部の内部に向けて突出していることを特徴とするグラスラン。
【請求項2】
上記側壁における上記ドアガラスと対向する面には、上記当接部が上記ドアガラスに当接した状態において、上記当接部を弾性的に支持するための支持リップ部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のグラスラン。
【請求項3】
上記当接部の上記側壁と対向する側の表面を被覆する上記第2部位の全域にわたって、複数個の前記第1部位が略等間隔に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のグラスラン。
【請求項4】
上記当接部の上記ドアガラスと対向する側の表面は、上記硬質材料により被覆されており、
上記当接部の上記ドアガラスと対向する側の表面を被覆する、上記硬質材料で構成される第4部位の全域にわたって、上記硬質材料で構成される上記第4部位より肉厚の複数個の第3部位が略等間隔に設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のグラスラン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のドアフレームに取り付けられるグラスランに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車のドアフレーム内には、該ドアフレームとドアガラスとの間をシールするためのグラスランが取り付けられている。このグラスランはゴム製その他樹脂材料で成形されているとともに、ドアガラスの昇降時に該ドアガラスと接触するシールリップが設けられている。このため、度重なるドアガラスの昇降によってシールリップの表面が摩耗し、平滑化する場合があり、シールリップの表面が平滑化した状態でドアガラスを昇降させたときに、シールリップとドアガラスとの接触箇所付近で異音が発生するという問題点があった。この問題を解決するために、様々な構造を有するグラスランの開発が進められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ドアガラスラン本体の両側部から延出されたリップ部におけるドアガラスとの接触部位に、複数種類のリブをドアガラスラン長手方向に沿って一体に形成したドアガラスラン構造が開示されている。また、特許文献2には、側壁からチャンネル部の内側へ延びるシールリップ部と、該シールリップ部の表面に被覆されたリップ部摺動材とを備え、シールリップ部とリップ部摺動材との境界が波状に形成されて積層されているガラスラン(グラスラン)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−230985号公報(2004年8月19日公開)
【特許文献2】特開2001−219746号公報(2001年8月14日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のドアガラスランは、リブとリブとの間に形成された凹部に埃、ゴミ等の異物が溜まり易く、ドアガラスの昇降時にこれらの異物がドアガラスに接触することにより、かえって異音が発生しやすくなるという問題点があった。また、特許文献2のガラスランは、ドアガラスの昇降によって、リップ部摺動材とドアガラスとの接触箇所付近に対応するシールリップ部の部位は撓むものの、該シールリップ部の根元付近の部位はほとんど撓まない。したがって、ドアガラスがシールリップ部の撓みによって強く押し付けられた状態になることから、シールリップ部自体の変形による応力が残り、よって、ドアガラスの移動方向に引き摺られた際に自己振動を生じて異音が発生するという問題点があった。
【0006】
本発明は、上記の各問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ドアガラスとシールリップ部との接触により生じる異音を効果的に抑制するグラスランを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るグラスランは、自動車のドアフレームに取り付けられ、ドアガラスの昇降を案内するグラスランであって、上記ドアガラスの端面と対向する基底部と、上記基底部から上記ドアガラスの中央に向けて立ち上がるように延びている側壁と、を備えており、上記側壁の先端からは、上記ドアガラスと上記ドアフレームとの間をシールするためのシールリップ部が、上記基底部に向けて延びており、上記シールリップ部は、上記ドアガラスに当接する当接部、および上記当接部と上記側壁とを接続する接続部が連なって形成されており、上記当接部は、上記接続部より剛性が高い。
【0008】
上記構成によれば、シールリップ部について、ドアガラスが当接した際に、当接部は接続部よりも撓みにくくなり、接続部で確実に撓む、または屈曲する。このように、シールリップ部における、当接部のドアガラスとの接触箇所で当接部自体に撓みが発生せず、接触箇所に対応する部位に不要な応力が蓄積されることがない。したがって、当接部自体が撓んでしまうという変形がなく、接続部を起点にシールリップ部が十分に屈曲する。それゆえ、ドアガラスの昇降時に該ドアガラスとシールリップ部との接触箇所付近から発生する異音を効果的に抑制することができる。
【0009】
また、上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るグラスランにおいて、上記当接部の上記側壁と対向する側の表面は、上記接続部より剛性が高い硬質材料により被覆されていることが好ましい。
【0010】
上記構成によれば、ドアガラスと当接する、シールリップ部の当接部の剛性が高まるとともに、特にドアガラスが直接に当接する表面ではなく、その裏側の表面が硬質材料で被覆されているため、シールリップ部が屈曲する際に硬質材料が当接の邪魔にならず、そして屈曲する際の姿勢を整えることができる。
【0011】
また、上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るグラスランにおいて、上記硬質材料で構成される部位は、上記当接部における上記接続部側の端部の表面を被覆していることが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、シールリップ部において、当接部が接続部と明確に分離できることから、それらの境界位置で確実に接続部を撓ませる、または屈曲させることができる。
【0013】
また、上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るグラスランにおいて、上記当接部における上記接続部側の端部の表面を被覆している、上記硬質材料で構成される部位は、上記硬質材料で構成されるその他の部位より肉厚であることが好ましい。
【0014】
上記構成によれば、当接部における接続部側の端部がより撓みにくくなることから、シールリップ部が接続部を起点に、側壁に向けてより屈曲し易くなる。それゆえ、ドアガラスの昇降時の異音をより効果的に抑制することができる。
【0015】
また、上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るグラスランにおいて、上記側壁における上記ドアガラスと対向する面には、上記当接部が上記ドアガラスに当接した状態において、上記当接部を弾性的に支持するための支持リップ部が設けられていることが好ましい。
【0016】
上記構成によれば、シールリップ部が支持リップ部に当接することによって、支持リップ部は、側壁に向けて撓むとともにシールリップ部を側壁側から弾性的に支持する。この支持リップ部がシールリップ部と側壁との間に介在することにより、ドアガラスの屋内外方向へのばたつきによる該ドアガラスとシールリップ部との繰り返しの接触を防止することができる。それゆえ、ドアガラスとシールリップ部との繰り返しの接触に起因する異音の発生を効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一態様に係るグラスランは、シールリップ部において、接続部よりも当接部の剛性を明らかに高くすることにより、ドアガラスとシールリップ部との接触により生じる異音を効果的に抑制することができるという効果を奏する。
【0018】
また、接続部の少なくとも一部は、当接部より肉薄であることが好ましく、この構成によれば、接続部がより撓み易くなることから、シールリップ部が接続部を起点に、側壁に向けてより屈曲し易くなる。それゆえ、当接部自体が撓んでしまうという変形が起こり難く、ドアガラスの昇降時の異音をより効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係るグラスランが取り付けられた自動車のドアの概略構成を表す図である。
図2】(a)は、図1に示すグラスランの概略構成を示すA−A線矢視断面図である。(b)は、図1に示すグラスランについて、車内側シールリップ部およびその付近の部位の概略構成を示す断面図である。
図3図2に示すグラスランの車内側シールリップ部がドアガラスに当接した場合における、車内側シールリップ部付近の部位の状態を示す概略図である。
図4】(a)〜(d)は、本発明の他の実施形態に係るグラスランの主要部の概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<グラスランの取り付け例>
先ず、図1を参照して、本発明に係るグラスランが取り付けられたドアの構造について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るグラスラン1が取り付けられた自動車のドア100(以下、「ドア100」と表現する)の概略構成を表す図である。
【0021】
図1に示すように、自動車のドア用開口部(図示せず)に開閉可能に設けられるドア100には、ドアフレーム101が一体成形されているとともに、昇降自在なドアガラス102が取り付けられている。また、ドアフレーム101には、ドアガラス102の昇降を案内するとともに、ドアガラス102が上昇して窓部Wが閉じられたときに、ドアガラス102の周縁部とドアフレーム101との間をシールするグラスラン1・1a・1b・1c・1dが取り付けられている。
【0022】
具体的には、ドアフレーム101の上部(ルーフ対応部およびフロントピラー対応部)に沿って上側部グラスラン1bが取り付けられているとともに、ドアフレーム101の前側部に沿って前側部グラスラン1aが取り付けられている。また、ドアフレーム101の後側部(センターピラー対応部)に沿って、本発明の一実施形態に係るグラスラン1が取り付けられている。
【0023】
さらに、前側コーナーグラスラン1cによって上側部グラスラン1bと前側部グラスラン1aとを接合し、後側コーナーグラスラン1dによって上側部グラスラン1bとグラスラン1とを接合している。
【0024】
上記各グラスランの成形材料としては、例えば合成ゴム、熱可塑性エストラマーが用いられ、合成ゴムではEPDM(エチレン−プロピレン−ジエン共重合体)、熱可塑性エストラマーではオレフィン系熱可塑性エストラマーまたはスチレン系熱可塑性エストラマーが用いられる。また、成形材料として、軟質のポリ塩化ビニル等、他のゴム材料ないしゴム様弾性を有する他の弾性材料を用いてもよい。
【0025】
なお、上述した各グラスランの取り付けはあくまで一例であり、例えばドアフレーム101の後側部のみならず、ドアフレーム101の前側部および上部にも本発明の一実施形態に係るグラスラン1を取り付けてもよい。また、ドア100は、例えば、パネルドア(プレスドア)であってもサッシュドアであってもよく、グラスラン1をはじめとする本発明に係るグラスランの取り付け対象となる自動車のドアについて、その種類は限定されない。
【0026】
<グラスランの構造>
次に、図2を参照して、本発明に係るグラスランの構造について説明する。図2の(a)は、本発明の一実施形態に係るグラスラン1の概略構成を示すA−A線矢視断面図である。図2の(b)は、グラスラン1について、車内側シールリップ部14およびその付近の部位を示す断面図である。図2は、ドアフレーム101およびグラスラン1の断面を示しており、紙面上側が車外側(屋外側)に、紙面下側が車内側(屋内側)に対応している。
【0027】
図2の(a)に示すように、グラスラン1は、基底部10、支持リップ部11、車内側側壁(側壁)12、車外側側壁(側壁)13、車内側シールリップ部(シールリップ部)14、車外側シールリップ部(シールリップ部)15、車内側意匠リップ部16、車外側意匠リップ部17、車内側保持部18および車外側保持部19を備えている。
【0028】
基底部10は、ドアフレーム101の後側部に設けられた断面略コ字形状のホルダー103における、車内壁部103aと車外壁部103bとを連結する連結壁部103cと対向する位置に配置された略板状の部位である。この配置位置から、基底部10はドアガラス102の端面102aと対向する。
【0029】
基底部10は、その両側縁に車内側側縁10aおよび車外側側縁10b(以下、「両側縁10a・10b」と略記する)を備えており、両側縁10a・10bからドアガラス102の中央に向けて、それぞれ略板状の車内側側壁12および車外側側壁13(以下、「両側壁12・13」と略記する)が立ち上がるように延びている。
【0030】
両側縁10a・10bの基底部10に対する位置関係から、車外側側壁13は、グラスラン1をドアフレーム101に取り付けた状態で車内側側壁12よりも車外側に配置されることとなる。また、基底部10、両側壁12・13で、断面略コ字形状の部位を形成する。
【0031】
基底部10におけるドアガラス102と対向する車内側の角部は、グラスラン1をドアフレーム101に取り付けた状態で、車内側側壁12の車外側の側面に当接する。また、基底部10におけるドアガラス102と対向する車外側の角部は、グラスラン1をドアフレーム101に取り付けた状態で、車外側側壁13の車内側の側面に当接する。このように、基底部10における車内側の角部および車外側の角部がそれぞれ、両側壁12・13に当接することにより、ドアフレーム101を構成するホルダー103に対して両側壁12・13を付勢する。
【0032】
また、車外側側壁13における車内側側壁12と対向する面上には、断面波状の異音抑制部13aが、車外側側壁13の長手方向に沿って設けられている。従来から、自動車運転中の振動等によってドアガラス102が屋内外方向にばたつき、車外側シールリップ部15が車外側側壁13に繰り返し衝突することで異音が発生するという問題があった。そこで、この異音抑制部13aを設けることにより、上記ばたつきの際の車外側シールリップ部15と異音抑制部13aとの接触面積が小さくなり、上記衝突により発生する異音を抑制することができる。
【0033】
車内側側壁12の先端には、車内側シールリップ部14が、基底部10に向けて立ち上がるように設けられている(図では湾曲している)。また、車外側側壁13の先端には、車外側シールリップ部15が、基底部10に向けて立ち上がるように設けられている(図では湾曲している)。車内側シールリップ部14は、ドアガラス102に当接するヒレ形状の車内側当接部(当接部)14a、および車内側当接部14aと車内側側壁12とを接続する車内側接続部(接続部)14bとが連なって形成されている。同様に、車外側シールリップ部15は、ドアガラス102に当接するヒレ形状の車外側当接部(当接部)15a、および車外側当接部15aと車外側側壁13とを接続する車外側接続部(接続部)15bとが連なって形成されている。
【0034】
なお、車内側シールリップ部14を車内側接続部14bを起点に車内側側壁12に向けてのみ屈曲し易くする観点から、車内側シールリップ部14の車内側接続部14bのみが薄肉となるよう車内側シールリップ部14の根元を窪ませるにあたり、車内側側壁12の先端付近における車外側側壁13と対向する面が窪まないよう、車内側側壁12の延長方向に上記根元の窪み(後述する窪み60)が設計されている。
【0035】
車内側シールリップ部14および車外側シールリップ部15(以下、「両シールリップ部14・15」と略記する)は、ドアガラス102の車内側側面に車内側当接部14aが、ドアガラス102の車外側側面に車外側当接部15aがそれぞれ当接することで、ドアガラス102の両側面とドアフレーム101との間をシールする。
【0036】
車内側当接部14aおよび車外側当接部15a(以下、「両当接部14a・15a」と略記する)、ならびに車内側接続部14bおよび車外側接続部15b(以下、「両当接部14b・15b」と略記する)は、上述したグラスラン1を構成する他の部位の成形材料と同一の成形材料で形成されている。なお、両当接部14a・15aおよび両接続部14b・15b、すなわち両シールリップ部14・15の成形材料の材料硬度としては、ショアA60〜80が好ましい。ただし、グラスラン1は、単一材料ではなく、複数の材料から構成されていてもよく、上記の構成に拘束されない。
【0037】
また、図2の(b)に示すように、両当接部14a・15aの表面は、ドアガラス102との円滑な摺動性を考慮して滑り性に優れた被覆が、塗装または後述する押出し時の一体化成形、さらにはこれらの組合せによって施されている。本実施形態のように、被覆している材料の材料硬度が両シールリップ部14・15よりも高い、すなわち剛性が高い成形材料(硬質材料)で形成された層状の高剛性部50で被覆される場合は、一般にこの高剛性部50と両当接部14a・15aとは、グラスラン1の押出し成形時に一体化される手法が取られ、高剛性部50の成形材料としては、例えば、材料硬度がショアD30〜80の熱可塑性エストラマーまたは樹脂等が好ましいが、両シールリップ部14・15よりも剛性が高い成形材料であればよい。
【0038】
なお、本実施形態では、両当接部14a・15aにおけるドアガラス102に当接する側の表面、およびその反対側の表面(当接部の側壁と対向する側の表面)がともに、同一の成形材料で形成された高剛性部50によって被覆されている。したがって、押出し性を損なうことなくグラスラン1を製造することができる。
【0039】
両当接部14a・15aの表面を高剛性部50で被覆することで、両当接部14a・15a自体は両接続部14b・15bよりも撓みにくくなる。したがって、両シールリップ部14・15の間にドアガラス102が侵入して、両シールリップ部14・15が両側壁12・13に近接するように倒れ込み、両当接部14a・15aがドアガラス102に当接している際に、高剛性部50とドアガラス102との接触箇所に対応する両当接部14a・15aの部位自体が撓むなどといった変形がなく、それゆえ前記のような変形による不要な応力の蓄積が少なくなる。したがって、両当接部14a・15a自体はあまり撓むことなく、両接続部14b・15bを起点に両シールリップ部14・15が確実に屈曲することから、ドアガラス102の昇降時の摺動によって、両シールリップ部14・15が自己振動しない。それゆえ、ドアガラス102の昇降時に該ドアガラス102と両シールリップ部14・15との接触箇所付近から発生する、両シールリップ部14・15の昇降方向への引き摺られに起因する異音を効果的に抑制することができる。また、両当接部14a・15aはグラスラン1の長尺方向にも剛性が高くなっていることから、ドアガラス102の昇降に応じて両当接部14a・15aおよび両シールリップ部14・15がドアガラス102の摺動方向に引き摺られてしまうことを防止でき、該摺動方向での自己振動も発生しないことから、異音の発生を効果的に抑制している。
【0040】
また、両当接部14a・15aにおけるドアガラス102に当接しない側の表面が高剛性部50で被覆され、同じ側面の車内側接続部14bの表面は被覆されない、換言すれば、両当接部14a・15aにおける両接続部14b・15b側の端部の表面(当接部における接続部側の端部の表面)までが高剛性部(硬質材料で構成される部位)50で被覆されることから、両シールリップ部14・15の屈曲点が明確になり、両当接部14a・15aの部位自体が変形してしまうことによる応力の蓄積を発生させない。
【0041】
なお、両当接部14a・15aのドアガラス102に当接する側の表面を高剛性部50で被覆することは必須ではない。ドアガラス102に当接する側の表面は、後述する本発明の他の実施形態にも示すように、高剛性部50に替えて、低硬度で滑り性のよい素材(例えば塗装)による被覆でもよい。
【0042】
また、両当接部14a・15aの表面をそれぞれ高剛性部50で被覆することは必須ではなく、いずれか一方のドアガラス102に当接しない側の当接部の表面のみを高剛性部50で被覆してもよい。また、両当接部14a・15aの表面をともに、高剛性部50で被覆しなくてもよい。これらの場合、高剛性部50で被覆されていない当接部については、該当接部と連結している接続部よりも剛性が高い成形材料で形成されていればよい(不図示)。換言すれば、両当接部14a・15aは、両接続部14b・15bより剛性が高い構造になっていればよい。
【0043】
車内側当接部14aのドアガラス102に当接しない側の表面を被覆する高剛性部50については、車内側当接部14aにおける車内側接続部14b側の端部(車内側当接部14aの車内側接続部14bとの境目)において、車内側当接部14aの内部に向けて突出した断面略三角形状のリブ50a(当接部における接続部側の端部の表面を被覆している、接続部より剛性が高い硬質材料で構成される部位)が、グラスラン1の長手方向に沿って設けられている。このリブ50aの存在によって、グラスラン1の長尺方向全体で車内側接続部14bを起点に、車内側側壁12に向けてより確実に屈曲し易くなることから、両シールリップ部14・15の昇降方向への引き摺られに起因する異音をより効果的に抑制することができる。
【0044】
なお、リブ50aの形状は、断面略三角形状の他、断面略半円状、断面略四角形状または断面波状等であってもよい(不図示)。また、車外側当接部15aの表面を覆う高剛性部50について、前記した車内側当接部14aと同様に、その車外側当接部15aの車外側接続部15bとの境目に上記リブ50aを設けてもよい(不図示)。換言すれば、少なくとも両当接部14a・15aのいずれかにおいて、その当接部側の根元となる接続部側の端部との境目の表面を被覆している高剛性部50の部位(接続部より剛性が高い材料で構成される部位)が、該高剛性部50のその他の部位(接続部より剛性が高い材料で構成されるその他の部位)より肉厚になっていればよい。
【0045】
さらには、車内側当接部14aの表面を被覆する高剛性部50における、ドアガラス102の中央側の先端に上記リブ50aを設けてもよい(不図示)。ただし、車内側シールリップ部14を車内側側壁12に向けて屈曲し易くするという観点からは、少なくとも前記高剛性部50における車外側当接部15aの車外側接続部15bとの境目に上記リブ50aが設けられていることが好ましい。
【0046】
また、車内側接続部14bは、該車内側接続部14bにおける基底部10側の表面が長手方向に沿って窪むように、車内側当接部14aよりも肉薄になっている。つまり、車内側シールリップ部14は車内側接続部14bで最も肉薄となっている。また、車内側側壁12の肉厚が薄くならないよう、車内側側壁12の延長方向に窪み60を設けている。車内側接続部14bをこのような薄肉にすることにより、車内側接続部14bがドアガラス102の中央に向けて凸となるように撓み易くなることから、車内側シールリップ部14単独が車内側接続部14bを起点に、車内側側壁12に向けてより屈曲し易くなり、車内側当接部14a自体が撓むなど変形してしまうことを防止する。それゆえ、両シールリップ部14・15の昇降方向への引き摺られに起因する異音をより効果的に抑制することができる。
【0047】
なお、車内側接続部14bにおける基底部10側の表面は、その全域にわたって窪んでいる必要はなく、該表面の一部のみが窪んでいてもよい(不図示)。また、車内側接続部14bは、該車内側接続部14bにおけるドアガラス102の中央側の表面が長手方向に沿って窪んでいてもよい(不図示)。さらには、車外側接続部15bが車外側当接部15aよりも肉薄になっていてもよい。換言すれば、少なくとも両接続部14b・15bのいずれかにおいて、該接続部の少なくとも一部が当接部より肉薄になっていればよい。
【0048】
車内側シールリップ部14は、車外側シールリップ部15よりも長く、肉厚に形成されている。したがって、両シールリップ部14・15がドアガラス102に当接した状態においてドアガラス102を車外側(屋外側)寄りに位置させることができ、ドアフレーム101とドアガラス102との段差を少なくすることができる。それゆえ、自動車走行時の空気抵抗および風切音が減少するとともに、デザイン的にも好ましい外観が得られる。
【0049】
車内側側壁12の先端からは、車内側意匠リップ部16が、ホルダー103の車内壁部103aの先端103a−1に向けて折り返すように延設されている。この車内側意匠リップ部16と車内側側壁12の端部とで、車内壁部103aの先端103a−1を挟み込む。一方、車外側側壁13の先端からは、車外側意匠リップ部17がホルダー103の車外壁部103bの先端103b−1に向けて折り返すように延設されている。この車外側意匠リップ部17と車外側側壁13の端部とで、車外壁部103bの先端103b−1を挟み込む。
【0050】
車内側側壁12における車内側の面には、断面突起形状の車内側保持部18が2つ設けられている。ホルダー103の車内壁部103aの端部には屈曲部103a−2が形成されており、この屈曲部103a−2に一方の車内側保持部18が係止される。他方の車内側保持部18は、車内壁部103aにおける車内側側壁12と対向する面に当接する。これら2つの車内側保持部18および上述した車内側意匠リップ部16によって、車内側側壁12がホルダー103に対して保持される。
【0051】
他方、車外側側壁13における車外側の面には、断面突起形状の車外側保持部19が2つ設けられている。ホルダー103の車外壁部103bの端部には屈曲部103b−2が形成されており、この屈曲部103b−2に一方の車外側保持部19が係止される。他方の車外側保持部19は、車外壁部103bにおける車外側側壁13と対向する面に当接する。これら2つの車外側保持部19および上述した車外側意匠リップ部17によって、車外側側壁13がホルダー103に対して保持される。
【0052】
なお、両保持部18・19の大きさ・形状・個数・配置については、ホルダー103の大きさ・形状等に応じて任意に設計することができる。
【0053】
車内側側壁12におけるドアガラス102と対向する面12aには、グラスラン1の成形材料と同一の成形材料で形成されたヒレ形状の支持リップ部11が、車内側側壁12の長手方向に沿って設けられている。支持リップ部11は、車内側当接部14aがドアガラス102に当接した状態において、車内側当接部14aを弾性的に支持するための部位である。
【0054】
なお、支持リップ部11の大きさ・形状・個数・配置については、車内側シールリップ部14の大きさ・形状・配置等に応じて任意に設計することができる。ただし、車内側当接部14aがドアガラス102に当接した状態において車内側シールリップ部14を十分に屈曲させる観点からは、支持リップ部11は、基底部10側からドアガラス102の中央方向へ延伸している方が好ましい(図2の(a)および(b)等参照)。
【0055】
<車内側シールリップ部のドアガラスへの当接>
次に、図3を参照して、車内側シールリップ部14がドアガラス102に当接した場合における、車内側シールリップ部14付近の部位の状態について説明する。図3は、車内側シールリップ部14がドアガラス102に当接した場合における、車内側シールリップ部14付近の部位の状態を示す概略図である。
【0056】
図3に示すように、車内側シールリップ部14、より具体的には車内側当接部14aのドアガラス102に当接しない側の表面を被覆している高剛性部50が、車内側接続部14bとの境界まで、リップの先端から裏打ちするよう連続して施されており、車内側シールリップ部14の表面がドアガラス102の車内側側面に当接した状態において、車内側当接部14aはこれ自体が撓むことなく、倒れ込むだけの状態になる。また、図3では、ドアガラス102に当接する側の表面にも高剛性部50が被覆されており、車内側接続部14bは、車内側当接部14aより肉薄であるとともにその表面が高剛性部50で被覆されていないことから十分に伸縮し、ドアガラス102の中央側に凸となるように大きく撓む。それゆえ、車内側シールリップ部14は、車内側接続部14bを起点に、車内側側壁12に向けて大きく屈曲する。
【0057】
この時、車内側シールリップ部14が支持リップ部11に当接することによって、支持リップ部11は、車内側側壁12に向けて大きく撓むとともに車内側シールリップ部14を車内側側壁12側から弾性的に支持する。この支持リップ部11が車内側シールリップ部14と車内側側壁12との間に介在することにより、ドアガラス102の屋内外方向へのばたつきによる車内側シールリップ部14とドアガラス102との繰り返しの接触を防止することができる。それゆえ、車内側シールリップ部14とドアガラス102との繰り返しの接触に起因する異音の発生を効果的に抑制することができる。また、自身による撓み性が抑制されている車内側当接部14aのドアガラス102へのシール性(密着性)を高めている。
【0058】
<グラスランのバリエーション>
本発明に係るグラスランの実施形態としては、上述のグラスラン1のみならず、様々なバリエーションが想定されるものであり、この点について、図4の(a)、(b)、(c)および(d)を用いて説明する。図4の(a)、(b)、(c)および(d)は、本発明の他の実施形態に係るグラスラン2、3、4および5の主要部の概略構成を示す断面図である。なお、説明の便宜上、上記各図において、車外側当接部15aおよび車外側接続部15bは省略されている。
【0059】
先ず、本発明に係るグラスランは、図4の(a)に示すように、両当接部14a・15aのドアガラス102と対向する側の表面を被覆する第1高剛性部52aの成形材料と、両当接部14a・15aの各側壁12・13と対向する側(ドアガラス102に当接しない側)の表面を被覆する第2高剛性部52bの成形材料とがそれぞれ異なっている高剛性部52を構成要素として有するグラスラン2を実施形態として含む。この場合、第2高剛性部52bの剛性が第1高剛性部52aの剛性よりも高くなるように、それぞれの高剛性部52a・52bの成形材料を選定することで、両接続部14b・15bを起点としたグラスラン2の両シールリップ部の屈曲をより促進することができる。
【0060】
また、本発明に係るグラスランは、図4の(b)に示すように、両当接部14a・15aの各側壁12・13と対向する側の表面を被覆する第2高剛性部53bが、両当接部14a・15aのドアガラス102と対向する側(ドアガラス102に当接しない側)の表面を被覆する第1高剛性部53aよりも肉厚になっている高剛性部53を構成要素として有するグラスラン3を実施形態として含む。このように第2高剛性部53bを第1高剛性部53aよりも肉厚にすることで、第2高剛性部53bの剛性が第1高剛性部52aの剛性よりも高くなる。それゆえ、両接続部14b・15bを起点としたグラスラン3の両シールリップ部の屈曲をより促進することができる。
【0061】
なお、上述のグラスラン2のように、第1高剛性部53aの成形材料と第2高剛性部53bの成形材料とをそれぞれ異ならせてもよい。
【0062】
また、本発明に係るグラスランは、図4の(c)に示すように、両当接部14a・15aの各側壁12・13と対向する側(ドアガラス102に当接しない側)の表面を被覆する部位54bについて、その全域にわたって複数個のリブ50aが略等間隔に設けられている高剛性部54を構成要素として有するグラスラン4を実施形態として含む。このような高剛性部54の構造にすることで、両当接部14a・15aにおける各側壁部12・13と対向する側の部位の剛性を、その他の部位の剛性よりも高くなる。それゆえ、両接続部14b・15bを起点としたグラスラン4の両シールリップ部の屈曲をより促進させることができる。
【0063】
さらに、グラスラン4の長尺方向に連続して複数個のリブ50が設けられているため、両当接部14a・15aは、その長尺方向において極めて剛性が高く、ドアガラス102の昇降に応じて両当接部14a・15aおよび両シールリップ部が引き摺られることを防止する。
【0064】
また、本発明に係るグラスランは、図4の(d)に示すように、両当接部14a・15aのドアガラス102と対向する側の表面を被覆する部位55a、および両当接部14a・15aの各側壁12・13と対向する側の表面を被覆する部位55bについて、それらの全域にわたって複数個のリブ50aが略等間隔に設けられている高剛性部55を構成要素として有するグラスラン5を実施形態として含む。このような高剛性部55の構造にすることで、両当接部14a・15aの剛性をさらに全体的に高めることができる。それゆえ、両接続部14b・15bを起点としたグラスラン5の両シールリップ部の屈曲をより促進させ、また、両当接部14a・15aが引き摺られるのを防止することができる。
【符号の説明】
【0065】
1、2、3、4、5:グラスラン 10:基底部 11:支持リップ部
12:車内側側壁(側壁) 12a:面(ドアガラスと対向する面)
13:車外側側壁(側壁) 14:車内側シールリップ部(シールリップ部)
14a:車内側当接部(当接部) 14b:車内側接続部(接続部)
15:車外側シールリップ部(シールリップ部) 15a:車外側当接部(当接部)
15b:車内側接続部(接続部)
50a:リブ(当接部における接続部側の端部の表面を被覆している、接続部より剛性が高い材料で構成される部位) 101:ドアフレーム 102:ドアガラス
102a:端面(ドアガラスの端面)
図1
図2
図3
図4