(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記最大長経路が、前記箱体側空間を前記連通孔から前記隔壁部の外周面に沿って左右方向にそれぞれ周回して前記開口部へと向かう経路のうち、最短距離となる経路を遮断する遮断壁を前記箱体側空間内に設けることにより形成されたことを特徴とする請求項1に記載のスピーカー装置。
【背景技術】
【0002】
スピーカー装置は、電気信号を物理信号に変えて音楽や音声などを生み出す機械であり、一般に、磁石、コイル及び振動板を有するスピーカーユニットと、スピーカーユニットが組み込まれる箱型のエンクロージャーと、からなる。
【0003】
従来のスピーカー装置によれば、箱型のエンクロージャーにスピーカーユニットが組み込まれることとなるから、エンクロージャーが存在する容積が必須となり、スピーカー装置全体として小型化を行うニーズには対応しづらいものとなっていた。
【0004】
なお、上記小型化のニーズとしては、スピーカー装置を、車両の内装部材、映像機器、建物の壁等に埋め込む場合が考えられる。
【0005】
かかる小型化のニーズを満たすための発明が特許文献1に開示されている。具体的には、特許文献1には、
図10に示すように、有底筒状であって、図示上方に隆起する隆起部104aを備える底面部104を有するフレーム102の隆起部104aにスピーカーユニット110を載置し、スピーカーユニット110の振動板112の上端部112aをエッジ114を介してフレーム102の側壁部106の上端106aに固定したスピーカー装置100を開示する。なお、フレーム102は、振動板112の背部に密閉室を画成するエンクロージャーとして機能する。すなわち、スピーカー装置100は密閉型スピーカーである。
【0006】
特許文献1のスピーカー装置100によれば、箱型のエンクロージャーの代わりに底面部104の一部が隆起するフレーム102を採用したことでスピーカー装置の小型化が実現している。
【0007】
スピーカーの小型化は、密閉型スピーカーに限らず、エンクロージャーの前面又は背面に貫通孔(ポート)を設ける、いわゆるバスレフ型のスピーカーにおいても同様に求められている。バスレフ型のスピーカー装置によれば、スピーカーユニットの背後から出る音を利用して低音を増強することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1のスピーカー装置によれば、スピーカー装置全体として小型化が実現されるものの、密閉型スピーカーであることから低音を増強することができない。
【0010】
また、バスレフ型のスピーカー装置を単に特許文献1同様に小型化したのでは、振動板から貫通孔までの経路長を十分に長くとることができず、低音の増強効果が得られないものとなってしまう。
【0011】
本願発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、低音の増強効果を確保しつつ小型化を実現しうるバスレフ型のスピーカー装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための請求項1に記載の発明は、略コーン状の振動板と、該振動板の背面側において該振動板に固定されたボイスコイルと、該ボイスコイルが挿入された環状の磁石と、を備えるスピーカーユニットと、該スピーカーユニットの前記振動板の外周面を所定空間をおいて覆うとともに、壁部に開口部を有する箱体と、を有するスピーカー装置において、
前記箱体の内側で前記振動板の外周面を所定空間をおいて覆う隔壁部と、該隔壁部に設けられ、振動板側空間及び箱体側空間を連通する連通孔と、を有し、前記振動板の軸線方向の前記箱体の長さが、該軸線方向の前記スピーカーユニットの長さ以下で
あり、前記箱体側空間を前記連通孔から前記隔壁部の外周面に沿って左右方向にそれぞれ周回して前記開口部へと向かう経路のうち、略最大長さとなる最大長経路のみを選択的に設けたことを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、スピーカーユニットの厚みよりも箱体の厚みが小さいか、等しいことから、バスレフ型スピーカー装置全体として小型化のニーズを満たすことができる。さらに、振動板の背面から発生した音は、隔壁部で隔てられた振動板側空間から連通孔を通して箱体側空間へと移動し、箱体側空間から開口部へと伝達されるため、これらの連通空間が無い場合と比較して振動板の背面から発生した音は、開口部に至るまでに大きく迂回する。これにより、バスレフ型スピーカー装置全体の大きさを小さくした場合であっても音が伝達する経路の長さを大きくとることができ、低音の増強効果を確保することができる。
【0015】
また、この構成によれば、振動板の背面から発生した音は、隔壁部で隔てられた振動板側空間から連通孔を通して箱体側空間へと移動し、連通孔から最大長経路を経由して開口部へと伝達される。
【0016】
これにより、装置全体としての小型化を実現しつつ、連通孔から開口部への略最大経路長が確保され、いわゆるバスレフ型スピーカーの低音の増強効果をさらに高めることができる。
【0017】
請求項
2に記載の発明は、請求項
1に記載のスピーカー装置において、前記最大長経路が、前記箱体側空間を前記連通孔から前記隔壁部の外周面に沿って左右方向にそれぞれ周回して前記開口部へと向かう経路のうち、最短距離となる経路を遮断する遮断壁を前記箱体側空間内に設けることにより形成されたことを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、連通孔から開口部へと振動板の軸線を中心に隔壁部の外周面に沿って左右方向に周回するそれぞれの経路のうち、最短距離となる経路が遮断壁によって遮断されていることから、連通孔から箱体側空間へと伝わった音は、箱体側空間内を大きく迂回して開口部へと移動する。すなわち、遮断壁を設けることにより簡易的に最大長経路を形成することができる。
【0019】
これにより、簡易的に連通孔から開口部までの略最大経路長が確保され、低音の増強効果をより効果的なものとすることができる。
【0020】
請求項
3に記載の発明は、請求項
2に記載の発明において、前記遮断壁は、前記振動板の軸線方向視で前記隔壁部側の端部から径方向外方の前記箱体の壁部側端部へと傾斜して設けられ、前記連通孔及び前記開口部は、前記連通孔から前記開口部へと向かう前記最大長経路が前記隔壁部の外周面を一周以上周回する位置関係となるように前記遮断壁を隔てて配置されていることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、箱体が隔壁部の外周面を覆うスピーカー装置において、遮断壁の態様並びに連通孔及び開口部の位置関係の工夫により、振動板側空間から箱体側空間へと移動した音は、箱体側空間内を振動板の軸線を中心に隔壁部の外周面に沿って1周以上周回可能となる。これにより、バスレフ型スピーカーの開口部までの経路長をさらに大きくとることができ、低音の増強効果を確保することができる。
【0022】
請求項
4に記載の発明は、請求項
2又は
3に記載のスピーカー装置において、前記連通孔から前記開口部へ向かう前記最大長経路上に該最大長経路を迂回させる邪魔板が設けられていることを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、箱体側空間内の、連通孔から開口部へ向かう最大長経路上に設けられた邪魔板によって音が移動する経路が曲折し、その経路長をさらに長くとることができることから、低音の増強効果をより確実なものとすることができる。
【0024】
請求項
5に記載の車両のスピーカー装置は、請求項1〜
4の何れか1項に記載のスピーカー装置が、車両のドアの外装部材と内装部材との間に配置されるとともに、前記振動板の正面及び前記開口部を車両の車室側に露出させて前記内装部材に埋設されたことを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、車両のドアの外装部材と内装部材の間の、奥行が十分に取れないスペースにスピーカー装置が配置された場合であっても振動板から開口部までの経路長を大きくとることができるので、小型化しつつ低音増強効果が損なわれないものとなっている。
【0026】
また、スピーカー装置は車両の内装部材に開口を設けて埋め込まれることから、小型化のために箱体を取り払った場合には振動板を介して車外の騒音が車内に侵入してスピーカー装置全体として音の低下が免れなかったところ、本発明によれば、振動板後方の隔壁部によって車外の騒音の侵入を排除しているので、スピーカー装置全体としての音質を向上させることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、スピーカーユニットの厚みよりも箱体の厚みが小さいことから、バスレフ型スピーカー装置全体として小型化のニーズを満たすことができる。さらに、振動板の背面から発生した音は、隔壁部で隔てられた振動板側空間から箱体側空間へと移動し、箱体側空間から開口部へと伝達されるため、これらの連通空間が無い場合と比較して振動板の背面から発生した音は、開口部に至るまでに大きく迂回する。これにより、バスレフ型スピーカー装置全体の大きさを小さくした場合であっても音が伝達する経路の長さを大きくとることができ、低音の増強効果を確保することができる。
【0028】
したがって、低音効果の増強及び小型化のニーズの双方を満たすスピーカー装置を提供することができ、車両のドア内や映像機器内部、あるいは建物の壁等の厚みが小さい空間内に埋め込み可能且つ良好な音質を確保しうるスピーカー装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
[スピーカー装置及び車両のスピーカー装置]
<第1実施の形態>
次に、本発明の第1実施の形態に係るスピーカー装置10について、車両1の内装部材であるフロントドアのインナパネルに取り付けられた場合を例に
図1〜
図5を参照して説明する。
【0031】
図1は本実施の形態に係るスピーカー装置10を模式的に示す一部破断斜視図、
図2は本実施の形態に係るスピーカー装置10の正面図、
図3は
図2のIII−III線断面図、
図4は
図3のIV−IV線断面図及び
図5は振動板の背面から発生した音の移動経路を模式的に示す一部破断斜視図である。
【0032】
スピーカー装置10は、
図3に示すように、車両1のフロントドアのインナパネル2(内装部材)とアウタパネル3(外装部材)との間に配置されており、後述する振動板12及び開口部33b(
図1参照)を車室5に露出させてインナパネル2に埋設されている。なお、
図3において、インナパネル2より車室5側に設けられたドアトリムについてはその記載を省略している。
【0033】
スピーカー装置10は、
図1及び
図3に示すように、振動板12、ボイスコイル14及び磁石16を備えるスピーカーユニット15を有する。
【0034】
振動板12は、大径の大開口部12aから軸線A(
図3参照)に沿って縮径しつつ小径の小開口部12bまで連続する略コーン状の立体的形状を有する。小開口部12bにはボイスコイルボビン13の頭部13aが嵌入固定されており、ボイスコイルボビン13の基部13b側にはボイスコイル14が巻回されている。
【0035】
すなわち、ボイスコイル14は、
図3に示すように、小開口部12bから軸線Aに沿ってさらに車室5外方側に移行した位置においてボイスコイルボビン13を介して振動板12に固定されている。ボイスコイル14は、円筒状の磁石16の内部に非接触状態で挿入されている。磁石16の前端面16aには、円筒状の隔壁部20の一端20aに位置するフランジが接合している。
【0036】
隔壁部20は、
図3に示すように、他端20bから一端20a側へと軸線に沿って縮径する円錐面部21と、該円錐面部21の後端21aからさらに図示右側へと移行する円筒状の円筒部22と、を有する。
【0037】
隔壁部20は、内周がボイスコイルボビン13に接合されると共に外周が隔壁部20の円錐面部21の後端21aに固定された環状のダンパ23と、振動板12の大開口部12aを形成する端部及び隔壁部20の他端20bを接続する環状のエッジ24と、によって振動板12−ボイスコイルボビン13の結合体を揺動可能に支持している。
【0038】
次に、箱体30について説明する。箱体30は、
図1及び
図3に示すように、円形の底部壁31、円筒形状の周壁部32、及び隔壁部20の円形の他端20bと略同一の円形形状のスピーカーユニットの取付孔33aを備える略円形の天面部33を有する。天面部33には、取付孔33aとは別に、開口部33b(
図1参照)が設けられている。
【0039】
スピーカーユニット15は、この取付孔33aから箱体30内に挿入され、取付孔33aの周縁部及び隔壁部20の円錐面部21の他端20bが、並びに、底部壁31及び磁石16の後端面16bが、それぞれ接合されることで、スピーカーユニット15が箱体30内部に取り付けられている。
【0040】
これにより、箱体30は、スピーカーユニット15の振動板12の外周面12cを所定空間をおいて覆っており、隔壁部20は、箱体30の内側で振動板12の外周面12cを所定空間をおいて覆っている。
【0041】
また、スピーカー装置10は、隔壁部20によって、箱体30と振動板12の外周面12cとにより形成された空間を振動板側空間38及び箱体側空間40の二つの空間に隔てている。
【0042】
なお、振動板側空間38は、振動板12、エッジ24、ダンパ23及び隔壁部20によって形成されており、箱体側空間40は、隔壁部20、磁石16の外周面16c及び箱体30によって形成されており、振動板側空間38及び箱体側空間40は、隔壁部20の円錐面部21に穿設された連通孔20cによって連通されている。
【0043】
また、
図3に示すように、振動板側空間38の軸線A方向の長さLv及び箱体側空間40の軸線A方向の長さLbは、スピーカーユニット15の軸線A方向の長さLuよりも短い。すなわち、箱体側空間40の軸線A方向の長さLbがスピーカーユニット15の軸線A方向の長さLuよりも短いことで、軸線A方向の箱体30の長さが軸線A方向のスピーカーユニット15の長さ未満であることが担保されている。なお、軸線A方向の箱体30の長さは、軸線A方向の箱体30の長さが軸線A方向のスピーカーユニット15の長さ以下であればよい。
【0044】
本実施の形態において、連通孔20cと開口部33bとの位置関係は、
図2に示すように、軸線Aの軸を中心に約45°の角αをなす位置関係にあり、その角αの範囲内において、同図に示すように、軸線Aから径方向外方に延在して箱体側空間40内の音の移動を遮断する遮断壁41が設けられている。
【0045】
すなわち、箱体30は、
図4に示すように、振動板12の外周面12cの全周を覆うように形成されており、連通孔20cから箱体側空間40を隔壁部20の外周面20dに沿って軸線Aを中心に左右方向にそれぞれ周回して開口部33bへと向かう経路Pa,Pbのうち、最短距離となる経路Paを遮断する遮断壁41が箱体側空間40内に設けられている。この遮断壁41により、連通孔20cから開口部33bへと向かう経路Pa,Pbのうち、略最大長さとなる経路Pb、すなわち、最大長経路が形成されている。
【0046】
なお、上記角αの範囲は、180°以下である。角αの範囲が180°を超えると、最短距離が経路Paではなく経路Pbとなり、遮断壁を設ける意味がなくなることとなる。また、上記角αの範囲は、90°以下であることが好ましい。
【0047】
さらに、本実施の形態においては、
図4に示すように、箱体側空間40内における連通孔20cよりも開口部33b寄りの位置に、経路Pbの進行方向に沿って隔壁部20から径方向外方へ突出する邪魔板42a及び箱体30の周壁部32から径方向内方へ突出する邪魔板42bが交互に配置されることで、最大長経路である経路Pbを迂回させる構成となっている。
【0048】
したがって、本実施の形態に係るスピーカー装置10によれば、振動板側空間38及び箱体側空間40の軸線A方向の長さLv,Lbが、それぞれスピーカーユニット15の軸線A方向の長さLu以下であり、箱体30の厚みがスピーカーユニット15の厚みより小さいので、非常に厚みが小さいコンパクトなスピーカー装置とすることができる。
【0049】
また、スピーカー装置の小型化を実現しつつ、振動板12の背面から発生した音は、隔壁部20で隔てられた振動板側空間30から連通孔20cを通して箱体側空間40へと移動し、連通孔20cから最大長経路(経路Pb)を経由して開口部33bへと伝達される。すなわち、小型化を実現しつつ、連通孔20cから開口部33bへの略最大経路長が確保され、いわゆるバスレフ型スピーカーの低音の増強効果を確保することができる。
【0050】
したがって、低音効果の増強及び小型化のニーズの双方を満たすスピーカー装置を提供することができる。
【0051】
さらに、
図4及び
図5に示すように、連通孔20cから開口部33bへと振動板12の軸線Aを中心に隔壁部20の外周面に沿って左右方向に周回するそれぞれの経路Pa,Pbのうち、最短距離となる経路Paが遮断壁41によって遮断されていることから、連通孔20cから箱体側空間40へと伝わった音は、箱体側空間40内を大きく迂回して開口部33bへと移動する。すなわち、遮断壁41を設けることにより簡易的に最大長経路(経路Pb)を形成することができる。
【0052】
これにより、簡易的に連通孔20cから開口部33bまでの略最大経路長が確保され、低音の増強効果をより効果的なものとすることができる。
【0053】
そのうえ、箱体側空間40内の、連通孔20cから開口部33bへ向かう経路Pb(最大長経路)上に設けられた邪魔板42a,42bによって音が移動する経路が曲折し、その経路長をさらに長くとることができることから、低音の増強効果をより確実なものとすることができる。
【0054】
また、本実施の形態に係る車両のスピーカー装置によれば、車両1のフロントドアのアウタパネル3(外装部材)とインナパネル2(内装部材)の間の、奥行が十分に取れないスペースにスピーカー装置10が配置された場合であっても振動板12から開口部33bまでの経路長を大きくとることができるので、小型化しつつ低音増強効果が損なわれないものとなっている。
【0055】
そのうえ、スピーカー装置10は車両1のインナパネル2(内装部材)に開口を設けて埋め込まれることから、小型化のために箱体を取り払った場合には振動板を介して車外の騒音が車内に侵入してスピーカー装置全体として音の低下が免れなかったところ、本発明によれば、振動板12後方の隔壁部20によって車外の騒音の車室5内への侵入を排除しているので、スピーカー装置全体としての音質を向上させることができる。
【0056】
なお、上記実施の形態においては、箱体20が振動板12の外周面の全周を覆う周壁部32を有するものとしたが、他の態様を取ることも可能である。
【0057】
図6は、箱体の第1変形例に係るスピーカー装置10を模式的に示す一部破断斜視図である。なお、同図において上述の
図1〜
図5に示した実施の形態と同様の要素には、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0058】
図示のように、本変形例においては、箱体50の周壁部52の一部が切り欠かれた、スピーカー装置10の切欠部54を形成しており、当該切欠部54において隔壁部20の外周面が露出している。すなわち、箱体50は、軸線A方向視で周壁部52の始端及び終端から径方向内方に延在する壁部54a,54bを有する。
【0059】
また、切欠部54は、図示のように、開口部33b及び連通孔20cを隔てる位置に存在しており、したがって、連通孔20cから開口部33bへと振動板12の軸線Aを中心に隔壁部20の外周面に沿って左右方向に周回するそれぞれの経路Pa’,Pb’のうち、最短距離となる経路Pa’が切欠部54(すなわち、遮断壁としての壁部54a,54b)によって遮断されている。すなわち、切欠部54により、最大長経路(経路Pb’)が形成されている。
【0060】
したがって、本変形例によれば、振動板12の背面から発生し、振動板側空間38から箱体側空間40へと移動した音は、箱体側空間40内を振動板12の軸線Aを中心に大きく迂回した経路Pb’を通って開口部33bへと伝達されるので、開口部33bまでの経路長をさらに大きくとることができ、低音の増強効果を確保することができる。
【0061】
また、上記実施の形態においては、箱体側空間40の軸線A方向の長さLbが、スピーカーユニット15の軸線A方向の長さLuとほぼ等しい長さとなっているが、これに限られるものではない。
【0062】
図7は、箱体の第2変形例に係るスピーカー装置10を模式的に示す縦断面図である。なお、同図において上述の
図1〜
図5に示した実施の形態と同様の要素には、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0063】
図示のように、本変形例においては、箱体60の円形の底部壁61は、磁石16の後端面16bにではなく、底部壁61のフランジ61aが隔壁部20の円筒部22の外周面に接合されている。すなわち、本変形例によれば、箱体側空間40の軸線A方向の長さLb’が、スピーカーユニット15の軸線A方向の長さLuよりも小さい。
【0064】
これによれば、低音の増強効果を維持したまま、さらなるスピーカー装置10の小型化を図ることができる。
【0065】
<第2実施の形態>
次に、本発明の第2実施の形態に係るスピーカー装置70について、
図8を参照して説明する。
図8は、本実施の形態に係るスピーカー装置70の正面図である。なお、同図において、上述の
図1〜
図5に示した実施の形態と同様の要素には、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0066】
本実施の形態に係るスピーカー装置70は、遮断壁の態様並びに連通孔及び開口部の位置関係において上記第1実施の形態に係るスピーカー装置10と異なる。
【0067】
具体的には、遮断壁71は、振動板12の正面からの軸線A方向視で、隔壁部側の端部71aから箱体30の周壁部32側の端部71bへと軸線Aの径方向外方に延在するにつれて反時計回りに旋回する形状を有する。すなわち、遮断壁71は、振動板12の軸線A方向視で隔壁部20側の端部71aから箱体30の周壁部32側の端部71bへと傾斜して設けられている。
【0068】
また、隔壁部20の連通孔74と箱体30の開口部76は、
図8に示すように、軸線A方向視で略同一直線状に並ぶ配置となっている。
【0069】
本実施の形態によれば、隔壁部20の振動板側空間38から箱体側空間40へと移動した音は、箱体側空間40内を軸線Aを中心に隔壁部20の外周面に沿ってまる一周周回可能となる。これにより、バスレフ型スピーカーの開口部76までの経路長をさらに大きくとることができ、低音の増強効果をさらに高めることができる。
【0070】
<第3実施の形態>
次に、本発明の第3実施の形態に係るスピーカー装置80について、
図9を参照して説明する。
図9は、本発明の第3実施の形態に係るスピーカー装置80を、
図3のIV−IV線断面に相当する断面で示した断面図である。なお、同図において、上述の
図1〜
図5に示した実施の形態と同様の要素には、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0071】
本実施の形態に係るスピーカー装置80は、略最大長を有する最大長経路の態様において上記第1実施の形態にかかるスピーカー装置10と異なる。
【0072】
具体的には、
図9に示すように、箱体側空間40には、連通孔20cに一端82aが接続され、連通孔20cから隔壁部20の外周面20dに沿って左右方向に周回して開口部33bに向かうに際してより長い経路となる方向(本実施の形態においては、左方向、すなわち、反時計まわり方向)に周回して他端が開口部33bに接続されたホース82が設けられている。すなわち、遮断壁に変えて、ホース82が設けられることで、略最大長さとなる最大長経路(経路Pb’’)のみが選択的に設けられている。
【0073】
これにより、上記第1実施の形態と同様、スピーカー装置の小型化を実現しつつ、連通孔20cから開口部33bへの略最大経路長が確保され、いわゆるバスレフ型スピーカーの低音の増強効果を確保することができる。
【0074】
なお、上記実施の形態において、スピーカー装置10,70を車両1のインナパネル2及びアウタパネル3との間に配置されたものとしたが、これに限られるものではない。例えば、建物の壁内空間、天井内、映像機器に埋設されたものとしてもよく、スピーカー装置単体として用いられるものとしてもよい。
【0075】
また、上記第3実施の形態において、ホース82は、隔壁部20の外周面20dをあと少しで一周周回する程度の長さとなっているが、これに限られるものではない。すなわち、一端82aが連通孔20cに接続されたホース82は、隔壁部20の外周面20dを複数回周回したのちに開口部33bに接続される構成を有していてもよい。
【0076】
そのうえ、上記実施の形態においては、箱体側空間40に略細大長さとなる最大長経路を遮断壁41やホース82によって形成しているが、この最大長経路がないものとしてもよい。この場合、振動板12の背面から発生した音は、隔壁部20で隔てられた振動板側空間38から連通孔20cを通して箱体側空間40へと移動し、箱体側空間38から開口部33bへと伝達されるため、これらの連通空間が無い場合と比較して振動板12の背面から発生した音は、開口部33bに至るまでに大きく迂回する。これにより、バスレフ型スピーカー装置全体の大きさを小さくした場合であっても音が伝達する経路の長さを大きくとることができ、低音の増強効果を確保することができる。