特許第6681773号(P6681773)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6681773
(24)【登録日】2020年3月26日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】燻煙剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A01N 25/18 20060101AFI20200406BHJP
   A01N 53/08 20060101ALI20200406BHJP
   A01N 43/824 20060101ALI20200406BHJP
   A01P 7/04 20060101ALI20200406BHJP
【FI】
   A01N25/18 103B
   A01N53/08 110
   A01N43/824 C
   A01P7/04
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-78151(P2016-78151)
(22)【出願日】2016年4月8日
(65)【公開番号】特開2017-186292(P2017-186292A)
(43)【公開日】2017年10月12日
【審査請求日】2018年7月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】390020019
【氏名又は名称】レック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】松田 賢治
(72)【発明者】
【氏名】萩森 敬一
(72)【発明者】
【氏名】佐野 智生
【審査官】 西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−091876(JP,A)
【文献】 特開2014−210714(JP,A)
【文献】 特開2014−101349(JP,A)
【文献】 特開2014−101348(JP,A)
【文献】 特開2012−232922(JP,A)
【文献】 特開2012−232921(JP,A)
【文献】 特開2012−176947(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/147421(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N
A01P
A01M
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分:害虫防除成分、
(B)成分:4−イソプロピル−3−メチルフェノール、
(C)成分:アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸リン酸エステル二ナトリウム、アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム、アスコルビン酸硫酸エステル二ナトリウム、アスコルビン酸グルコシド、モノパルミチン酸アスコルビル、ジパルミチン酸アスコルビル、モノステアリン酸アスコルビル、エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種
並びに、(D)成分:ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、カルメロース及びそれらの塩、カルボキシビニルポリマー、ビニルピロリドン・酢酸ビニル共重合体、ポビドン、ポリビニルアルコール、デンプンからなる群から選ばれる少なくとも1種、を含有する、燻煙剤組成物。
【請求項2】
自己反応性の燃焼剤を含有しない、請求項1に記載の燻煙剤組成物。
【請求項3】
前記(A)成分に対する前記(B)成分の質量比B/Aが、1/10〜25/1である、請求項1又は2に記載の燻煙剤組成物。
【請求項4】
前記(C)成分の配合量が1〜40質量%である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の燻煙剤組成物。
【請求項5】
顆粒剤である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の燻煙剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燻煙剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
屋内等におけるハエ、蚊、ゴキブリ等の害虫の駆除には、害虫防除成分と燃焼剤を含有する燻煙剤組成物が広く用いられている。燃焼剤としては、例えば、自己反応性の燃焼剤であるアゾジカルボンアミド(ADCA)やニトロセルロース(NC)が知られている。自己反応性の燃焼剤を用いることで害虫防除成分の揮散性が良好になる。しかし、自己反応性の燃焼剤を用いると、処理後に白色の沈殿物が溜まって屋内が汚染される問題がある。
【0003】
そこで、自己反応性の燃焼剤を用いなくても害虫防除成分の良好な揮散性が得られる燻煙剤組成物として、アスコルビン酸系化合物が配合された燻煙剤組成物が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−232922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1等の従来の燻煙剤組成物では、煙化した害虫防除成分の沈降後の残効性がまだ不十分であり、効果が長期間持続しない場合がある。また、燻煙剤組成物においては、保管期間が長くても煙化率を高く維持し、害虫防除成分の揮散性をさらに高めることが重要である。
【0006】
本発明は、保管期間が長くても害虫防除成分の煙化率が高く、かつ残効性に優れた燻煙剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の構成を有する燻煙剤組成物を提供する。
[1](A)成分:害虫防除成分、(B)成分:4−イソプロピル−3−メチルフェノール、(C)成分:アスコルビン酸系化合物、並びに、(D)成分:ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、カルメロース及びそれらの塩、カルボキシビニルポリマー、ビニルピロリドン・酢酸ビニル共重合体、ポビドン、ポリビニルアルコール、デンプンからなる群から選ばれる少なくとも1種、を含有する、燻煙剤組成物。
[2]自己反応性の燃焼剤を含有しない、[1]に記載の燻煙剤組成物。
[3]前記(A)成分に対する前記(B)成分の質量比B/Aが、1/10〜25/1である、[1]又は[2]に記載の燻煙剤組成物。
[4]前記(C)成分の配合量が1〜40質量%である、[1]〜[3]のいずれかに記載の燻煙剤組成物。
[5]顆粒剤である、[1]〜[4]のいずれかに記載の燻煙剤組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明の燻煙剤組成物は、保管期間が長くても害虫防除成分の煙化率が高く、かつ残効性に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明において、「顆粒剤」とは、日本薬局方の粒度測定法第2法「ふるい分け法」に従い、25〜100gをふるいにかけた場合、3.5号ふるい(目開き寸法5.60mm)を通過し、16号ふるい(目開き寸法1.0mm)上に残留する剤を意味する。
「粉末剤」とは、日本薬局方の粒度測定法第2法「ふるい分け法」に従い、25〜100gをふるいにかけた場合、18号ふるい(目開き寸法850μm)を通過する剤を意味する。
「自己反応性の燃焼剤」とは、その燃焼熱によって(A)成分等を揮散させることができる剤である。自己反応性の燃焼剤としては、例えば、ニトロセルロース、アゾジカルボンアミド、p,p’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン等が挙げられる。
【0010】
本発明の燻煙剤組成物は、後述する(A)〜(D)成分を含有する燻煙剤組成物である。本発明の燻煙剤組成物は、加熱することで煙化して成分が揮散する加熱型の燻煙剤組成物である。
【0011】
[(A)成分]
(A)成分は、害虫防除成分である。
(A)成分としては、特に限定されず、従来の燻煙剤組成物に配合されている成分を使用でき、防除対象の有害害虫の種類等を考慮して適宜選択できる。(A)成分の具体例としては、例えば、ピレスロイド系、カーバメイト系、オキサジアゾール系、ネオニコチノイド系等の化合物が挙げられる。(A)成分としては、フェノトリン、ペルメトリン、ピレトリン、メトキサジアゾン、エトフェンプロックス、d・d−T−シフェノトリン、プロポクスル、ジノテフランが好ましい。
(A)成分としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0012】
(A)成分の配合量は、対象害虫に応じて適宜設定でき、燻煙剤組成物の総質量に対して、0.5〜20質量%が好ましく、1〜10質量%が好ましい。(A)成分の配合量が下限値以上であれば、害虫防除効果が得られやすい。(A)成分の配合量が上限値以下であれば、相対的に(B)〜(D)成分の配合量を多くすることができるため、(A)成分の煙化率が高くなりやすく、また残効性も向上する。
【0013】
[(B)成分]
(B)成分は、4−イソプロピル−3−メチルフェノール(IPMP)である。(B)成分には、加熱により(A)成分と共に白煙状に揮散した後に室内に沈降付着し、(A)成分の沈降後の残存率を高める作用がある。すなわち、燻煙剤組成物に(B)成分が配合されていることで、燻煙処理後の(A)成分の残効性が向上し、害虫防除効果がより長続きする。また、(B)成分は、燻煙剤組成物中の(C)成分の経時安定性を向上させる役割も果たす。
(B)成分としては、例えば、化粧品、医薬部外品、雑貨品等において通常使用されているグレードのIPMPを使用することができる。
【0014】
(B)成分の配合量は、燻煙剤組成物の総質量に対して、1〜50質量%が好ましく、5〜40質量%がより好ましく、5〜30質量%がさらに好ましい。
(B)成分の配合量が下限値以上であれば、燻煙後の(A)成分の残効性が向上し、効果を長期に渡って維持させやすい。(B)成分の配合量が上限値以下であれば、顆粒製造時の造粒性が十分に得られやすく、より安定して顆粒が製造できる。また、燻煙に要する熱量が高くなりすぎることが抑制されるため、(A)成分の煙化率が向上する。
【0015】
(A)成分に対する(B)成分の質量比B/Aは、1/10〜25/1が好ましく、1/1〜10/1がより好ましく、2/1〜8/1がさらに好ましい。質量比B/Aが前記範囲内であれば、(A)成分の残効性がさらに向上する。
【0016】
[(C)成分]
(C)成分は、アスコルビン酸系化合物である。燻煙剤組成物に(C)成分が配合されていることで、(A)成分の初期煙化率が向上する。また、煙化時の視認性も良くなるため、使用者が燻煙が開始されたことを認識することが容易になる。
【0017】
アスコルビン酸系化合物とは、アスコルビン酸及びその異性体に加えて、アスコルビン酸及びその異性体の誘導体、アスコルビン酸及びその異性体の塩を含む。アスコルビン酸の異性体としては、例えば、エリソルビン酸が挙げられる。
アスコルビン酸及びその異性体の誘導体としては、一般的にビタミンC誘導体として提案されているものが利用でき、例えば、アスコルビン酸又はエリソルビン酸の高級脂肪酸エステル、リン酸エステル、硫酸エステル等が挙げられる。高級脂肪酸としては、パルミチン酸、ステアリン酸等の炭素数16〜18の脂肪酸が好ましい。
アスコルビン酸及びその異性体の塩としては、例えば、ナトリウム塩、カルシウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、リン酸塩、硫酸塩等が挙げられる。
【0018】
(C)成分の具体例としては、例えば、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸リン酸エステル二ナトリウム、アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム、アスコルビン酸硫酸エステル二ナトリウム、アスコルビン酸グルコシド、モノパルミチン酸アスコルビル、ジパルミチン酸アスコルビル、モノステアリン酸アスコルビル、エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム等が挙げられる。なかでも、(C)成分としては、(A)成分の煙化率の点から、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウムが好ましく、アスコルビン酸が特に好ましい。
(C)成分としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
(C)成分の配合量は、燻煙剤組成物の総質量に対して、1〜40質量%が好ましく、5〜35質量%がより好ましく、5〜30質量%さらに好ましい。(C)成分の配合量が下限値以上であれば、(A)成分の煙化率が充分に高くなりやすくなるため、害虫防除効果が十分発揮されやすい。(C)成分の配合量が上限値以下であれば、顆粒製造時の造粒性が十分に高くなりやすく、より安定して顆粒を製造できる。
【0020】
[(D)成分]
(D)成分は、燻煙処理後の(A)成分の残効性を向上させる役割を果たす。また、(D)成分により、燻煙剤組成物を顆粒剤にすることが容易になり、(A)成分の煙化率がより高くなる。
【0021】
(D)成分は、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、カルメロース及びそれらの塩、カルボキシビニルポリマー、ビニルピロリドン・酢酸ビニル共重合体、ポビドン、ポリビニルアルコール、デンプンからなる群から選ばれる少なくとも1種である。ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース及びカルメロースの塩としては、例えば、ナトリウム塩、カルシウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、リン酸塩、硫酸塩等が挙げられる。
(D)成分としては、(A)成分の残効性の点から、ヒプロメロース、ポビドンが好ましい。
(D)成分としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
(D)成分の配合量は、燻煙剤組成物の総質量に対して、0.1〜10質量%が好ましく、0.5〜8質量%がより好ましく、1〜5質量%がさらに好ましい。(D)成分の配合量が下限値以上であれば、(A)成分の優れた残効性が得られやすい。また、燻煙剤組成物の強度が十分に高くなりやすく、顆粒剤とすることが容易になる。(D)成分の配合量が上限値以下であれば、燻煙剤組成物の造粒が容易になる。
なお、(A)〜(D)成分の合計の配合量は、100質量%を超えない。
【0023】
[任意成分]
本発明の燻煙剤組成物は、(A)〜(D)成分に加えて、任意成分を含有していてもよい。任意成分としては、燻煙剤組成物に使用されている公知の成分を使用でき、例えば、香料、界面活性剤、賦形剤、発熱助剤、安定剤、効力増強剤、酸化防止剤等が挙げられる。
任意成分としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
本発明の燻煙剤組成物は、家財や金属製品への影響が少なく、燻煙処理後の汚染を抑制できる点から、自己反応性の燃焼剤を含有しないことが好ましい。また、自己反応性の燃焼剤は処理後に白色の沈殿が溜まって屋内が汚染される程度でなければ含有してもよく、自己反応性の燃焼剤の配合量は、燻煙剤組成物の総質量に対して、15質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましい。
【0025】
[顆粒剤]
本発明の燻煙剤組成物は、(A)成分の煙化率の観点から、顆粒剤とすることが好ましい。燻煙剤組成物を顆粒剤とすることで、粉末剤とする場合に比べて剤が密になり、より熱が伝わりやすく効率的に昇温するため、煙化率がより高くなる。なお、本発明の燻煙剤組成物は、粉末剤としてもよい。
【0026】
本発明の燻煙剤組成物を顆粒剤とする場合、平均粒子径は、1〜5mmが好ましく、2〜4mmがより好ましい。平均粒子径が下限値以上であれば、(A)成分の煙化率がより高くなりやすい。平均粒子径が上限値以下であれば、顆粒剤として造粒しやすい。
なお、平均粒子径は、日本薬局方の粒度測定法第2法「ふるい分け法」に従い、25〜100gをふるいにかけて分級し、各目開き寸法のふるいに残留した重量より測定される。
【0027】
[製造方法]
本発明の燻煙剤組成物の製造方法は、特に限定されず、例えば、(A)〜(D)成分、及び必要に応じて任意成分を所定量となるように混合する。本発明の燻煙剤組成物を粉末状、顆粒状、錠剤等の固形製剤とする場合は、剤形に応じて公知の製造方法を採用することができる。例えば、本発明の燻煙剤組成物を顆粒剤とする場合は、押出し造粒法、圧縮造粒法、撹拌造粒法、転動造粒法、流動層造粒法等、公知の造粒方法を採用できる。
【0028】
押出し造粒法であれば、例えば、燻煙剤の各成分をニーダー等により混合し、さらに適量の溶媒を加えて練合する。次いで、得られた練合物を、一定面積の開孔を有するダイスを備える前押し出し造粒機あるいは横押し出し造粒機を用いて造粒し、乾燥する。得られた造粒物は、必要に応じて乾燥前にカッター等を用いて一定の大きさに切断してもよい。
【0029】
溶媒としては、例えば、水;エタノール、プロパノール、ベンジルアルコール等のアルコール類;流動パラフィン、n−パラフィン等のパラフィン類;ブチルジグリコール等のエーテル類;ミリスチン酸イソプロピル等のエステル類;グリセリン等の多価アルコール;N−メチルピロリドン;炭酸プロピレン等が挙げられる。
溶媒としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
乾燥温度は溶媒に応じて適宜決定すればよく、例えば水を用いる場合、60〜90℃が好ましい。
【0031】
[使用方法]
本発明の燻煙剤組成物の使用方法は、特に限定されず、公知の方法を使用できる。具体的には、例えば、金属製容器、セラミック製容器等の任意の容器に燻煙剤組成物を収容し、燻煙剤組成物を間接的に加熱することで燻煙処理を開始する方法が挙げられる。
【0032】
燻煙剤組成物を間接的に加熱する方法としては、例えば、金属製の容器に燻煙剤を収容し、この金属製の容器を介して燻煙剤を加熱する方法が挙げられる。加熱方法としては、従来公知の方法を用いることができ、例えば、下記の方法(a)及び方法(b)が挙げられ、実用性の観点から、方法(a)が好ましい。
(a)水と接触して発熱する物質を水と接触させ、その反応熱を利用する方法。
(b)鉄粉と酸化剤(塩素酸アンモニウム等)とを混合し、又は金属と前記金属よりイオン化傾向の小さい金属酸化物もしくは酸化剤とを混合し、その酸化反応熱を利用する方法。
【0033】
水と接触して発熱する物質としては、例えば、酸化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、塩化カルシウム、塩化鉄等が挙げられる。なかでも、酸化カルシウムが好ましい。
【0034】
1回の燻煙処理での燻煙剤組成物の使用量は、対象空間の容積に応じて適宜設定すればよく、1mあたり0.1〜5gが好ましく、0.5〜3.5gがより好ましい。
【0035】
[作用効果]
以上説明した本発明の燻煙剤組成物においては、(A)成分に(C)成分が組み合わされているため、(A)成分の初期煙化率が高いうえ、保管期間が長くても(A)成分の煙化率が充分に確保される。また、さらに(B)成分及び(D)成分が組み合わされていることで、残効性に優れ、燻煙処理後に(A)成分が残存しやすくなるため、害虫防除効果が長期間持続しやすい。また、本発明の燻煙剤組成物は、自己反応性の燃焼剤を配合しなくても充分な煙化率が確保されるため、燻煙処理後の汚染も抑制できる。
これらのことから、本発明の燻煙剤組成物は、密閉状態での可燃性ガスの発生や、粉塵による汚れの発生等を抑制すること、及び予防的な害虫防除効果の付与の要望がより高い、押し入れ、クローゼット等の6畳未満の小空間への適用に特に有効である。
【実施例】
【0036】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
[使用原料]
本実施例で使用した原料を以下に示す。
((A)成分)
フェノトリン:商品名「スミスリン」、住友化学社製。
d・d−T−シフェノトリン:商品名「ゴキラートS」、住友化学社製。
メトキサジアゾン:商品名「エレミック」、住友化学社製。
【0037】
((B)成分)
IPMP:4−イソプロピル−3−メチルフェノール、商品名「イソプロピルメチルフェノール」、大阪化成社製。
【0038】
((C)成分)
VC:商品名「アスコルビン酸」、BASFジャパン社製。
VC−Na:商品名「アスコルビン酸ナトリウム」、和光純薬工業社製。
【0039】
((D)成分)
HPMC:ヒプロメロース、商品名「メトローズ60SH−50」、信越化学工業社製。
PVP:ポビドン、商品名「ポリビニルピロリドンK60」、東京化成工業社製。
【0040】
(燃焼剤)
ADCA:商品名「ビニホールAC#3−K7」、永和化成工業社製。
【0041】
(賦形剤)
クレー:商品名「AXカオリン」、カナヤ興産社製。
【0042】
[実施例1]
各成分を表1に示す割合で所定量計り取り、ニーダー(モリヤマ社製S5−2G型)によって十分に撹拌混合した。次いで、混合物に対して質量比で5%の水を加えてそれらを練合し、ダイス径2mmの造粒機(不二パウダル社製EXK−1)を用いて造粒した後、乾燥機(アルプ社製RT−120HL)により80℃で2時間乾燥して燻煙剤組成物を得た。
【0043】
[実施例2〜14]
組成を表1及び表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして燻煙剤組成物を得た。実施例2〜13で得られた燻煙剤組成物は顆粒剤であり、実施例14で得られた燻煙剤組成物は造粒できず粉末状であった。
【0044】
[比較例1〜4]
組成を表3に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして燻煙剤組成物を得た。比較例1、2、4で得られた燻煙剤組成物は顆粒剤であり、比較例3で得られた燻煙剤組成物は造粒できず粉末剤であった。
【0045】
[燻煙型殺虫装置の製造]
ライオン社製「水ではじめるバルサン6−8畳用」に使用されている金属缶を用意し、該金属缶の燻煙剤充填部に各例の製造直後の燻煙剤組成物を5g充填し、発熱剤充填部に酸化カルシウムを50g充填して燻煙型殺虫装置とした。
【0046】
[煙化率]
直径8cm、高さ4cmのプラスチックカップに水18mLを入れ、該カップを内容積6.38mの密閉試験室の床面中央に設置した。次いで、燻煙型殺虫装置をカップ内に設置して底面を着水させ、燻煙処理を開始した。白煙が発生してから5分後に、試験室内の空気をファン(ORIX社製、MU1238A−11B)で1分間撹拌した。撹拌後、真空ポンプを用いて試験室内の空気20Lを回収用カラムに通流させ、試験室内で煙化した成分を吸着させた。該回収用カラムには、クロマト用シリカゲル(Wakogel C−100、和光純薬工業社製)を用いた。次いで、回収用カラムにアセトン100mLを通流させ、吸着した成分を抽出し、抽出溶液を200mL容量のナスフラスコに回収した。次いで、抽出溶液をエバポレーター(ヤマト科学社製、RE−46)で完全に蒸発乾固させた後、内標準溶液を加えて溶解し、試料溶液を得た。ガスクロマトグラフィー(GC)により、試料溶液中(捕集した室内空気中)の(A)成分の量W(g)を定量し、燻煙剤組成物中の(A)成分の量W(質量%)から次式により煙化率を求めた。
煙化率(%)=[W(g)/20(L)]×[100/{5(g)×W(質量%)}]×6380(L)×100
【0047】
煙化率については、製造直後の燻煙型殺虫装置の煙化率Qと、ライオン社製「水ではじめるバルサン6−8畳用」に使用されているアルミニウム製の袋体内に封入した状態で50℃の恒温槽で1ヶ月間保存した後の燻煙型殺虫装置の煙化率Qとを測定した。次式により煙化率の維持率を求め、以下の基準で評価した。
煙化率の維持率(%)=[Q(%)/Q(%)]×100
(評価基準)
◎:煙化率の維持率が90%以上である。
〇:煙化率の維持率が80%以上90%未満である。
△:煙化率の維持率が60%以上80%未満である。
▲:煙化率の維持率が40%〜60%未満である。
×:煙化率の維持率が40%未満である。
なお、煙化率の維持率が80%以上であるもの(◎及び〇)を良好と判定した。
【0048】
[残効性(床面沈降量)]
8畳相当の密閉試験チャンバーの床面に沈降量測定用のガラスシャーレを2枚並べて設置した。これとは別に、直径8cm、高さ4cmのプラスチックカップに水18mLを入れ、該カップを密閉試験チャンバーの床面中央に設置した。次いで、燻煙型殺虫装置をカップ内に設置して底面を着水させ、燻煙処理を開始した。白煙が発生してから2時間経過するまで密閉試験チャンバーを密閉した後、沈降量測定用のガラスシャーレ2枚を回収した。
ガラスシャーレ2枚のうち、1枚のガラスシャーレに沈降した成分をアセトン100mLに溶解させ、200mL容量のナスフラスコに回収した。次いで、該溶液をエバポレーター(ヤマト科学社製、RE−46)で完全に蒸発乾固させた後、内標準溶液を加えて溶解し、試料溶液を得た。ガスクロマトグラフィー(GC)により、試料溶液中の(A)成分の沈降量W(mg)を定量した。また、もう1枚のガラスシャーレは、室温(25℃)条件下に2週間静置した後、上記と同様にして試料溶液中の(A)成分の沈降量W(mg)を定量した。
【0049】
次式により沈降量の維持率を求め、以下の基準で評価した。
沈降量の維持率(%)=[W(mg)/W(mg)]×100
(評価基準)
◎:沈降量の維持率が50%以上である。
〇:沈降量の維持率が40%以上50%未満である。
△:沈降量の維持率が30%以上40%未満である。
×:沈降量の維持率が30%未満である。
なお、沈降量の維持率が50%以上であるもの(◎又は〇)を残効性が良好であると判定した。
【0050】
[室内汚染性]
上記の残効性試験の燻煙開始2時間後において、密閉試験チャンバーの床に設置してあったガラスシャーレを目視で確認し、下記の評価基準に従い室内汚染性について評価した。
(室内汚染性の評価基準)
◎:燻煙前のガラスシャーレと比較し、表面状態の差が確認されない。
○:燻煙前のガラスシャーレと比較し、表面状態の差がほとんどわからない。
△:燻煙前のガラスシャーレと比較し、若干の汚染は見られるが差が分かり難い。
×:燻煙前のガラスシャーレと比較し、容易に汚染が判別でき、汚れの付着が明らかである。
【0051】
各例の燻煙剤組成物の組成と、煙化率及び残効性の評価結果を表1〜3に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
【表3】
【0055】
表1〜3に示すように、(A)〜(D)成分を含有する実施例1〜14の燻煙剤組成物では、(B)〜(C)成分のいずれかを含有しない比較例1〜4の燻煙剤組成物に比べて、(A)成分の煙化率の維持率が高く、また残効性にも優れていた。また、実施例1〜14の燻煙剤組成物は、使用後に室内を汚染することも抑制されていた。