特許第6681775号(P6681775)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6681775-切羽押圧力制御回転掘進機 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6681775
(24)【登録日】2020年3月26日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】切羽押圧力制御回転掘進機
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/093 20060101AFI20200406BHJP
【FI】
   E21D9/093 F
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-81850(P2016-81850)
(22)【出願日】2016年4月15日
(65)【公開番号】特開2017-190640(P2017-190640A)
(43)【公開日】2017年10月19日
【審査請求日】2019年2月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】598042574
【氏名又は名称】株式会社推研
(74)【代理人】
【識別番号】100119220
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 武彦
(74)【代理人】
【識別番号】100094787
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 卓志
(74)【代理人】
【識別番号】100139114
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 貞嗣
(72)【発明者】
【氏名】野田 彰
【審査官】 佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−227588(JP,A)
【文献】 特開2013−256842(JP,A)
【文献】 実開昭62−190784(JP,U)
【文献】 特開平06−212881(JP,A)
【文献】 特開2001−323780(JP,A)
【文献】 米国特許第04167289(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 1/00−9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動されるカッターヘッドを装備した掘進機本体と、
掘進機本体に連結される前胴と、
前胴に配置され掘進機本体の掘進方向を制御する複数の方向制御ジャッキと、
前胴に配置されカッターヘッドに切羽押圧力を付加する推力点ジャッキと、
前記推力点ジャッキによるカッターヘッドの切羽押圧力を切羽土圧及び切羽土質条件に対応した切羽押圧力に制御する制御装置と、
を備え、前記制御装置は、カッターヘッドの切羽押圧力を前記推力点ジャッキに付加される油圧値に基づき制御することを特徴とする切羽押圧力制御回転掘進機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に円筒状の孔を形成する回転掘進機に関し、特に、掘進機の切羽面への押圧力を適正に制御することが可能な切羽押圧力制御回転掘進機に関する。
【背景技術】
【0002】
地山を掘削してトンネル孔を形成する掘進機は、先端にカッターヘッドを有する掘進機本体と前胴を複数の方向制御ジャッキによって接続して構成される。掘進機は、カッターヘッドを回転駆動し、後胴の後端に接続した推進管列の最後端に配置した元押しジャッキにより付与された推進力によって計画線に沿って推進される。
【0003】
地山を掘進中に掘進機の推進方向が計画線からズレた時には、方向制御ジャッキを操作し掘進機本体と前胴を相対的に屈曲させて方向修正を行っている。このため、計画線に沿った正確な精度を維持するためには、複数の方向制御ジャッキを常に可動する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−189194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
掘進機による推進施工は、推進管列自体が弾性体であり、各継手部のクッション材が加わると、元押しジャッキによる推進力に対して推進管列が縮んで推進力の一部が吸収されるたり、管列自体の推進力抵抗が周辺地盤により変化するため切羽にかかる掘進機のカッターヘッドの押圧力の大きさが不明で不安定となる。
【0006】
土質条件が緩い砂層や砂礫層の地盤で、切羽土圧に対して押圧力が低い場合には、カッターヘッドで切羽を切削するとその周辺の土砂が大きく崩れ込みチャンバ内に流れ込み、外周地盤に空隙が生じ、地盤沈下などのトラブルが発生する。また、反対に切羽土圧に対してカッターヘッドの押圧力が高い場合には、地盤隆起や掘進負荷が増加して掘削不能となる。
【0007】
さらに、玉石や巨礫を含む地盤では、押圧力が低い場合は、カッターヘッド前面に装備したビットによって玉石や巨礫が揺動し、一度揺動が始まると玉石等には掘進機のもつ破砕力に対する反力がないため、玉石等の破砕ができなくなる。また、硬い岩盤の場合、押圧力が高い場合、カッターヘッドに配置したビットが岩盤に食い込み効率良く掘削ができなくなる。

この課題を解決するためには、掘進機を切羽に対して押圧する単独の押圧力と、押圧力を測定し最適の押圧力を付加する装置が必要になる。
【0008】
その対策として、方向制御ジャッキによって掘進機本体のカッターヘッドを切羽に押圧する方法が提案されているが、掘進中常に掘進機の方向修正が必要とされる方向制御ジャッキを、掘進中に継続して使用する掘進機押圧力管理装置として兼務することは困難である。
【0009】
本発明の切羽押圧力制御回転掘進機は、簡単な構造で掘進機の切羽面への押圧力を適正に制御することが可能な切羽押圧力制御式回転掘進機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の切羽押圧力制御回転掘進機は、前記課題を解決するために、回転駆動されるカッターヘッドを装備した掘進機本体と、掘進機本体に連結される前胴と、前胴に配置され掘進機本体の掘進方向を制御する複数の方向制御ジャッキと、前胴に配置されカッターヘッドに切羽押圧力を付加する推力点ジャッキと、前記推力点ジャッキによるカッターヘッドの切羽押圧力を切羽土圧及び切羽土質条件に対応した切羽押圧力に制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、カッターヘッドの切羽押圧力を前記推力点ジャッキに付加される油圧値に基づき制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
回転駆動されるカッターヘッドを装備した掘進機本体と、掘進機本体に連結される前胴と、前胴に配置され掘進機本体の掘進方向を制御する複数の方向制御ジャッキと、前胴に配置されカッターヘッドに切羽押圧力を付加する推力点ジャッキと、前記推力点ジャッキによるカッターヘッドの切羽押圧力を切羽土圧及び切羽土質条件に対応した切羽押圧力に制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、カッターヘッドの切羽押圧力を前記推力点ジャッキに付加される油圧値に基づき制御することで、カッターヘッドの切羽押圧力を専用の推力点ジャッキにより実施できるので、切羽土圧、水圧及び切羽土質条件に応じた適正な切羽押圧力で切羽を掘削することが可能となり、安全で効率の良い推進施工が可能となる。また、玉石や巨礫地盤でも適当な切羽押圧力によって、玉石や巨礫を確実にホールドしながら破砕することが可能となり、カッターヘッドの切羽押圧力を容易に測定し制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態を示す図である。
図2】発明の実施形態を示す図である。
図3】本発明の実施形態を示す図である。
図4】本発明の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の切羽押圧力制御回転掘進機1の実施形態を図により説明する。図1は、本発明の切羽押圧力制御回転掘進機1による地中掘進の状況を示す概略図である。
【0015】
地中に発進立坑2と到達立坑3を掘削する。発進立坑2から切羽押圧力制御回転掘進機1により掘進を開始する。切羽押圧力制御回転掘進機1は、先端にカッターヘッド7を配置した掘進機本体4と、掘進機本体4に連結される前胴5と、前胴に連結される後胴6により構成される。
【0016】
切羽押圧力制御回転掘進機1による掘進が進むと後胴6に発進立坑2に配置した元押しジャッキ8により新設管9が押しこみ連結される。この作業を繰り返して到達立坑3まで新設管9を敷設する。
【0017】
図2図3図4より切羽押圧力制御回転掘進機1の詳細を説明する。掘進機本体4の
先端にカッターヘッド7が回転自在に配置される。カッターヘッド7には、図3に示されるように、センターツーコーンビット10、補助ローラビット11、ゲージカッター12、フェースローラビット13等が配置される。
【0018】
掘進機本体1に前胴5が一定角度回転可能に連結される。掘進機本体1の後部には隔壁14が設置され前胴5と区画される。掘進機本体1には、切羽土質を判定するための切羽地層サンプリング手段が配置される。切羽土質サンプリング手段により得られたサンプルは、隔壁14に設けた開閉扉を開けて回収する。
【0019】
前胴5には、カッターヘッド7を回転駆動する電動モータ15が配置され、電動モータ15の出力軸が減速機16、ユニバーサルジョイント17を介してカッターヘッド7に連結され、カッターヘッド7が回転駆動される。
【0020】
前胴5の前部には、掘進機本体1の方向を制御する方向制御ジャッキ18が配置され、前胴5の後部には、カッターヘッド7を切羽面に押圧する専用の推力点ジャッキ19が配置される。推力点ジャッキ19に関して後述する。前胴5には、掘進機本体4のカッターヘッド7で掘削された土砂を搬送するクラッシャーフィーダー20や排泥管、送水管等が配置され、掘進機本体1の隔壁14には、それらと連通する開口が形成される。隔壁14には、切羽面の土圧を測定する土圧センサー21が配置される。
【0021】
前胴5に後胴6が連結される。後胴6には、油圧ポンプ22、機内制御装置23が配置される。油圧ポンプ22からの油圧により方向制御ジャッキ18、推力点ジャッキ19が駆動される。機内制御装置23は、切羽押圧力制御回転掘進機1の各種パラメータを制御するが、ここでは、推力点ジャッキ19の制御について説明する。
【0022】
推力点ジャッキ19には、油圧ポンプ22からの油圧が制御弁と油圧計を介して供給される。油圧計による推力点ジャッキ19に供給される油圧値は機内制御装置23に送信される。また、切羽面土圧を測定する土圧センサー21からの切羽面土圧の測定データも機内制御装置23に送信される。また、機内制御装置23には、切羽土質サンプリング手段により得られた切羽土質に関するデータも入力される。
【0023】
カッターヘッド7を回転駆動して切羽面を掘削する際、機内制御装置23は、土圧センサー21からの切羽面土圧のデータと切羽土質のデータに基づいて推力点ジャッキ19による切羽押圧力を決定し、決定した切羽押圧力に対応する推力点ジャッキ19に供給する油圧値にするため制御弁を制御する。
【0024】
以上のように、本発明の切羽押圧力制御回転掘進機1によれば、カッターヘッドの切羽押圧力を専用の推力点ジャッキ19により実施できるので、切羽面土圧、水圧及び切羽土質条件に応じた適正な切羽押圧力で切羽を掘削することが可能となり、安全で効率の良い推進施工が可能となる。また、玉石や巨礫地盤でも適当な切羽押圧力によって、玉石や巨礫を確実にホールドしながら破砕することが可能となる。さらに、外周駆動タイプの掘進機においては、推力点ジャッキによる切羽押圧力が把握することができるため、回転駆動部の要となるベアリングの過負荷を防止することが可能となる。
【符号の説明】
【0025】
1:切羽押圧力制御回転掘進機、2:発進立坑、3:到達立坑、4:掘進機本体、5:前胴、6:後胴、7:カッターヘッド、8:元押しジャッキ、9:新設管、10:センターツーコーンビット、11:補助ローラビット、12:ゲージカッター、13:フェースローラビット、14:隔壁、15:電動モータ、16:減速機、17:ユニバーサルジョイント、18:方向制御ジャッキ、19:推力点ジャッキ、20:クラッシャーフィーダー、21:土圧センサー、22:油圧ポンプ、23:機内制御装置、
図1
図2
図3
図4